説明

信号機制御装置及びこれを用いた信号機制御システム

【課題】車両交通量に応じて信号機の切替え時間を信号機ごとに制御する信号機制御装置を得る。
【解決手段】道路1a、1bにより形成される交差点2に対応して設けられ、交差点2の車両用信号機3a〜3dを制御する信号機制御装置100は、交差点2へ流入する車両を路線毎にカメラ6a〜6dにより撮影し、画像処理部7により、カメラ6a〜6dにより撮影された映像を処理し、車両の路線ごとの通行状況及び停止車両数を認識し、次いで信号点灯時間判定部8により、各車両用信号機3a〜3dの点灯時間を算出し、この算出された点灯時間に基づき、信号制御部9が各車両用信号機3a〜3dを点灯制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交差点付近に配置し、車両や歩行者の交通に適した時間配分で信号機の切替えを行う信号機制御装置及びこれを用いた信号機制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の信号機は、車両交通量の多少にかかわらず、あらかじめ設定された時間ごとに、青色または赤色の点灯を切替え表示するようになっている。
しかしこの方法では、交通量の多い路線を停止させて、交通量の無い、または少ない方の路線を青信号にしたり、老人や身体障害者など交差点を渡るのに時間を要する人が、交差点を渡りきる前に信号機を赤色に切替えたりしてしまうと言う不具合が生じ得る。
このため、通常交通量の多い優先道路と、交通量の少ない道路の交差点信号機の場合には、感知式信号機が用いられ、優先道路は常時青信号で通行可能となっていて、交通量の少ない路線の車両が信号停止位置に停止したことを、停止位置上部に設置された赤外線センサで検出し、その時だけ、交通量の少ない路線の信号を青色するという方法がとられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−29091号公報(第2〜3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の感知式信号は、車両が停止線で停止したか否かしか判別できないため、それぞれの路線の車両交通量の多い少ないにより信号機を切替えることはできなかった。また、信号の切り替わり時間が一定のため、交通量の少ない路線から通過する車両台数が少ない場合は、青信号の時間が不要に長過ぎたり、逆に多い場合は、青信号の時間が短すぎるという状況が発生する。
また、現状においては、一定地区の各交差点の状況を1箇所に集め、総合的に信号機の最適な切替え制御を行うといった仕組みは無なく、個々の信号機が設定された時間で、赤信号または青信号の切替えを行っている。このため、ある路線は渋滞しているのに、迂回路になり得る別の路線が使われていないということも発生する。
【0005】
特許文献1には、撮像手段により道路の車両の交通量を計測して集中監視センターに送信し、集中監視センターでは、送信された交通量に基づいて、交通混雑を緩和するために各信号機の点滅時間を一斉に制御するものが記載されている。
しかしながら、特許文献1のものでは、集中監視センターで、車両の交通量を元にして、各信号機の点滅時間を一斉に制御しており、個別の信号機ごとに制御するものではなかった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、車両交通量に応じて信号機の切替え時間を信号機ごとに制御する信号機制御装置及びこれを用いた信号機制御システムを得ることを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係わる信号機制御装置においては、交差点に対応して設けられ、交差点の信号機を制御する信号機制御装置であって、交差点へ流入する車両を路線毎に撮影するカメラ部、このカメラ部によって撮影された映像を処理し、路線ごとの車両の通行状況及び停
止車両数を認識する画像処理部、この画像処理部によって認識された路線ごとの車両の通行状況及び停止車両数から信号機の必要な点灯時間を算出する信号点灯時間算出部、及びこの信号点灯時間算出部により算出された信号機の点灯時間に応じて信号機の点灯制御を行う信号制御部を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、以上説明したように、交差点に対応して設けられ、交差点の信号機を制御する信号機制御装置であって、交差点へ流入する車両を路線毎に撮影するカメラ部、このカメラ部によって撮影された映像を処理し、路線ごとの車両の通行状況及び停止車両数を認識する画像処理部、この画像処理部によって認識された路線ごとの車両の通行状況及び停止車両数から信号機の必要な点灯時間を算出する信号点灯時間算出部、及びこの信号点灯時間算出部により算出された信号機の点灯時間に応じて信号機の点灯制御を行う信号制御部を備えたので、車両を効率よく通行させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1〜実施の形態2による信号機制御装置が配置された交差点を示す全体図である。
【図2】この発明の実施の形態1〜実施の形態2による信号機制御装置を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態3による信号機制御装置を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態4による信号機制御装置を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態4による信号機制御装置が配置された交差点を含む一定地域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による信号機制御装置が配置された交差点を示す全体図である。
図1において、道路1a、1bは、交差点2を形成する。車両用信号機3a〜3d及び歩行者用信号機4a〜4dは、交差点2に配置されている。交差点2には、横断歩道5a〜5dが設けられている。カメラ6a〜6dは、道路状況、横断歩道状況を撮影するように配置されている。
【0011】
車両用信号機3a〜3d及び歩行者用信号機4a〜4dを制御する信号機制御装置100は、次のように構成されている。
カメラ部6として、カメラ6a〜6dが配置されている。画像処理部7は、カメラ映像を取得し、画像処理を行う。信号点灯時間判定部8(信号点灯時間算出部)は、画像処理部7で処理された結果に基づき、信号機の切替え時間を判定する。信号制御部9は、信号点灯時間判定部8の判定結果を受けて、車両用信号機3a〜3d及び歩行者用信号機4a〜4dの切替え制御を行う。
【0012】
図2は、この発明の実施の形態1〜実施の形態2による信号機制御装置を示すブロック図である。
図2において、3a〜3d、4a〜4d、6a〜6d、7〜9、100は図1におけるものと同一のものである。図2では、画像処理部7には、カメラ6a〜6dからの映像が入力され、画像処理を行って、処理結果を信号点灯時間判定部8に出力するように配置されている。信号制御部9は、信号点灯時間判定部8の出力を受けて、車両用信号機3a〜3dと歩行者用信号機4a〜4dの制御を行うように配置されている。
【0013】
次に、動作について説明する。
図1のカメラ1a〜1dは、交差点2に流入する車両または停止している車両の画像を撮影する。画像処理部7は、カメラ1a〜1dで撮影された画像を取り込み、画像処理により、停止中の路線は停止車両の台数を、通行中の路線は通行車両の台数をそれぞれ検出し、その結果を、信号点灯時間判定部8へ伝達する。
この判定結果の伝達を受けた信号点灯時間判定部8は、現在通行中の路線の車両が少なくなった場合、もしくは、通行車両がなくなったら直ちに信号機6a〜6dの切替え処理を行い、停止させていた路線を通行させるようにする。
また、赤信号で停止させている路線に停止車両が無い場合は、通行量の多い路線の信号機を切替えずにそのまま通行させることで、車両を効率よく通行させることが可能となる。
【0014】
実施の形態1によれば、複数のカメラで撮影した交差点の映像を、画像処理部にて、交差点における各路線の車両交通量及び、停止車両等を検出し、その車両台数に応じた信号切替え時間で、信号機の切替え制御を行うようにしたので、交通量が少ない路線を、青信号にしたり、赤信号で停止していた車両が全て交差点を通過したのに、青信号を継続するといった非効率がなくなる。
【0015】
実施の形態2.
実施の形態1では、交差点において車両を効率よく通行させる方法について述べたが、実施の形態2は、同じ構成を用いて、歩行者が安全に横断歩道を横断するための歩行者用信号機の切替えについてのものである。
以下、実施の形態2について、図1、図2を援用して説明する。
図1のカメラ1a〜1bにて交差点2の横断歩道5a〜5bの歩行者横断状況を撮影する。カメラ1a〜1dで撮影された映像を、画像処理部7にて取り込み、歩行者の横断状況を監視し、横断中の歩行者があることを信号切替時間判定部8へ伝達する。
歩行者信号が青色点滅となり、次に赤色信号へ切り替わる一定時間を経過しても、まだ画像処理部7から信号切替時間判定部8へ、横断中の歩行者があることが伝達され続けた場合は、そのまま青色点滅状態を継続する。
また、その歩行者が渡り切って画像処理部7から信号で横断中の歩行者がなくなったことを確認してから、歩行者信号を赤色へ切替えることで、歩行者が安全に横断歩道を横断することが可能になる。
なお、実施の形態2は、実施の形態1と同時に用いることもできる。
【0016】
実施の形態2によれば、歩行者横断状況をカメラで撮影し、画像処理部にて歩行者の横断状況を判別して、歩行者用信号の切替えを行うようにしたので、横断に時間を要している歩行者が確認されたときには、横断が完了するまで信号切替えを行わないことが可能となり、歩行者が安全に横断することができるようになる。
【0017】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3による信号機制御装置を示すブロック図である。
図3において、3a〜3d、4a〜4d、6a〜6d、7〜9、100は図2におけるものと同一のものである。図3では、信号機制御装置100に画像蓄積部10を設けた。この画像蓄積部10は、カメラによって撮影された映像を常時録画する録画部と、画像処理部7から受信した交差点の異常状況により、その事象の前後の映像を録画部から取得し、蓄積する蓄積部とを有している。
【0018】
実施の形態1では、交差点において車両を効率よく通行させる方法について述べたが、実施の形態3は、交差点での異常状態発生前後の映像を撮影し、交通事故等の原因究明に役立てる方法についてのものである。
実施の形態3は、図3を用い、図1を援用して説明する。
図1のカメラ1a〜1bにて常時、交差点2の映像を撮影し、画像処理部7にてカメラ1a〜1dの映像を受信し、画像処理して、交差点2の異常状況の監視を行い、異常状況の発生が確認された場合には、道路状況異常発生信号を画像蓄積部10へ伝達する。
【0019】
図3の画像蓄積部10では、録画部により、カメラ1a〜1bの映像を常時、録画を行っておき、画像処理部7からの道路状況異常発生信号を受信した際に、蓄積している映像の中から、蓄積部により、異常事象発生の数分前から発生後、数分後までの映像を切り出して、常時、録画している映像とは別に蓄積しておく。
これにより、交差点2において発生した交通事故等の異常事象について、事後原因究明を行う場合に、蓄積映像を役立てることが可能となる。
なお、実施の形態3は、実施の形態1、2と同時に用いることができる。
【0020】
実施の形態3によれば、複数のカメラで撮影した交差点の映像を、画像処理し、交差点における交通事故等の異常事象を検出し、その異常事象発生前後の映像の蓄積を行うことで、事後の事故原因分析等に役立てることが可能となる。
【0021】
実施の形態4.
図4は、この発明の実施の形態1による信号機制御装置を示すブロック図である。
図4において、3a〜3d、4a〜4d、6a〜6d、7〜10、100は図3におけるものと同一のものである。図4では、信号機制御装置が各交差点A、B、C、Dにそれぞれ配置されている。中央処理装置11は、一定地域の交差点の信号機制御装置100の画像処理結果を収集し、その地域での交通が局地的に混雑しないように、複数の交差点の信号機に対する切替え時間を算出し、各交差点の信号機制御装置に対して信号切替制御指令を伝達する。
【0022】
図5は、この発明の実施の形態4による信号機制御装置が配置された交差点を含む一定地域を示す図である。
図5において、一定地域内に交差点A、B、C、D、Eがある。交差点Aで停止車両の増加がある。
【0023】
実施の形態1では、ある一つの交差点2において車両を効率よく通行させる方法について述べたが、実施の形態4は、一定地域に点在する複数の交差点の状況を一箇所の中央処理装置11に集め、地域一帯の車両の流れを総合的に調整し、局地的な混雑を緩和するようにしたものである。
実施の形態4は、図4、図5を用い、図1を援用して説明する。
図1のカメラ1a〜1dは、交差点2に流入する車両または停止している車両の画像を撮影する。画像処理部7は、カメラ1a〜1dで撮影された映像を取り込み、画像処理により、停止中の路線は停止車両の台数を、通行中の路線は通行車両の台数をそれぞれ検出し、その結果を、中央処理装置11へ伝達する。
【0024】
中央処理装置11は、地域一帯の交差点の画像処理部7から、画像処理結果を受信し、各交差点の車両台数の把握を行う。その上で、停止車両が増加し始めた交差点があれば、その流入側交差点及び通過先交差点の信号機制御装置に対して信号切替え時間を伝達して信号切替え制御を指示する。
例えば、図5において、交差点Aで停止車両の増加が確認された場合に、交差点Aに対する流入側交差点である交差点Eの信号機制御装置100へは、交差点Aへの流入を抑制する信号切替え制御を指示し、通過先交差点である交差点B〜Dの信号機制御装置100に対しては、交差点Aからの車両を多く通過させるように信号切替え制御を指示する。
こうすることにより、地域一帯で車両の通行を円滑にすることが可能となる。
なお、実施の形態4は、実施の形態1〜実施の形態3と同時に用いることができる。
【0025】
実施の形態4によれば、一定地域の交差点状況を一元監視する中央処理装置へ、各交差点の画像処理部で検出した、車両交通量及び停止車両の台数を転送し、中央処理装置にて地域内の混雑に関連する信号機を制御することで、地域全体で車両過密地区から、車両の少ない地区へ車両を誘導し、地域全体の交通流を円滑に保つことが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 道路
2 交差点
3 車両用信号機
4 歩行者用信号機
5 横断歩道
6 カメラ部
7 画像処理部
8 信号点灯時間判定部
9 信号制御部
10 画像蓄積部
11 中央処理装置
100 信号機制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に対応して設けられ、上記交差点の信号機を制御する信号機制御装置であって、
上記交差点へ流入する車両を路線毎に撮影するカメラ部、
このカメラ部によって撮影された映像を処理し、路線ごとの車両の通行状況及び停止車両数を認識する画像処理部、
この画像処理部によって認識された上記路線ごとの車両の通行状況及び停止車両数から上記信号機の必要な点灯時間を算出する信号点灯時間算出部、
及びこの信号点灯時間算出部により算出された上記信号機の点灯時間に応じて上記信号機の点灯制御を行う信号制御部を備えたことを特徴とする信号機制御装置。
【請求項2】
上記カメラ部は、上記交差点に配置された横断歩道の歩行者横断状況を撮影するように配置されており、
上記画像処理部は、上記カメラ部により撮影された上記横断歩道の歩行者横断状況の画像を処理し、横断中の歩行者の有無を認識し、
上記信号点灯時間算出部は、上記横断中の歩行者が存在する場合には、上記歩行者が横断を完了できるように、上記信号機の青色点灯時間を算出し、
上記信号制御部は、上記信号点灯時間算出部によって算出された上記信号機の青色点灯時間に応じて上記信号機の制御を行うことを特徴とする請求項1記載の信号機制御装置。
【請求項3】
交差点に対応して設けられ、上記交差点の信号機を制御する信号機制御装置であって、
上記交差点に配置された横断歩道の歩行者横断状況を撮影するカメラ部、
このカメラ部により撮影された上記横断歩道の歩行者横断状況の画像を処理し、横断中の歩行者の有無を認識する画像処理部、
上記横断中の歩行者が存在する場合には、上記歩行者が横断を完了できるように、上記信号機の青色点灯時間を算出する信号点灯時間算出部、
及びこの信号点灯時間算出部によって算出された上記信号機の青色点灯時間に応じて上記信号機の制御を行う信号制御部を備えたことを特徴とする信号機制御装置。
【請求項4】
上記カメラ部によって撮影された画像を録画する録画部、
及び上記カメラ部によって撮影された画像が上記画像処理部により処理され、車両通行の異常状況が認識された場合に、上記異常状況に対応する録画画像を上記録画部から取得し、蓄積する蓄積部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の信号機制御装置。
【請求項5】
一定地域の各交差点に配置された請求項1または請求項2または請求項4記載の信号機制御装置から、路線ごとの車両の通行状況及び停止車両数を収集する中央処理装置を備え、
上記中央処理装置は、上記地域内に渋滞が発生しないように上記各信号機制御装置に各信号機の切替え時間を指示することを特徴とする信号機制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−221091(P2012−221091A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84419(P2011−84419)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】