信号評価装置、信号評価方法、信号評価プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体
【課題】2次元再生信号をビタビ復号する際、その信号品質を信頼性高く評価することができる、エラーレートと同等な評価値を算出する。
【解決手段】入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差を出力する2次元SAM検出回路4と、2次元SAM検出回路4から出力された複数のSAM値から、SAM値を得た前記入力信号に対応する理想SAM値が所定の値範囲に属するSAM値を抽出する抽出部45と、抽出部45によって抽出されたSAM値の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価回路50とを備える。
【解決手段】入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差を出力する2次元SAM検出回路4と、2次元SAM検出回路4から出力された複数のSAM値から、SAM値を得た前記入力信号に対応する理想SAM値が所定の値範囲に属するSAM値を抽出する抽出部45と、抽出部45によって抽出されたSAM値の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価回路50とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムメモリ再生信号などの2次元信号をビタビ復号する装置において、2次元信号の信号品質を評価する信号評価装置、信号評価方法、信号評価プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホログラフィを用いて情報を2次元的に、すなわちページデータとして記録し再生するホログラムメモリが、次世代の高密度記録再生システムとして脚光を浴びつつある。図17に示すように、このシステムでは、情報データを記録する場合には、複数の画素よりなる空間光変調器60(例えば液晶パネルなど)を用いて、記録すべき情報データに基づいて記録信号光を空間光変調し、レンズ61を通した記録信号光とコヒーレントな記録参照光とを干渉させることにより2次元的な干渉縞を生成し、この干渉縞により形成される像を2次元情報としてホログラム媒体62に記録する。ホログラム媒体62としては、ニオブ酸リチウムに代表される無機系のフォトリフラクティブ結晶を用いた書き換え型媒体や、有機高分子材料であるフォトポリマーを用いた追記型媒体がある。
【0003】
一方、記録された干渉縞をホログラム媒体62から読み出すことにより情報データを再生する場合には、ホログラム媒体62に対して記録参照光と同じ入射角度にて再生参照光を照射して生成される反射光あるいは透過光を、レンズ63を通して複数の画素を有する受光素子64(例えばCCDなど)で受光して再生信号を生成し、生成された再生信号を用いて元の情報データを再生する。このように2次元のページデータ単位で再生が行われるため、1次元で再生を行う従来の光ディスクよりも再生速度を大幅に向上することが可能となる。
【0004】
ところで、ホログラムメモリシステムにおいては、その記録過程及び再生過程において種々の雑音が混入する(特に、記録媒体の不均質性に起因して雑音が発生する場合が多い)ことがあり、この雑音の影響で信号品質が悪化する。また、隣接する画素からの再生信号の影響、すなわち画素間干渉の発生もあり、これによっても信号品質が悪化する。
【0005】
そこで従来、雑音および画素間干渉の影響を低減して、正確に情報を再生する手法が検討されている。なかでも、受光素子から出力される再生信号をビタビ復号する手法が研究されている。
【0006】
特許文献1には、判定帰還ビタビ復号法が開示されている。この方法はビタビ復号の一手法であり、Decision Feedback Viterbi Algorithmと呼ばれる。
【0007】
一方、1次元的な再生信号をビタビ復号するシステムとして、ハードディスクや光ディスクなどがある。このようなシステムでは、再生信号の品質を評価するための評価値として、SAM(Sequenced Amplitude Margin)と呼ばれる値が提案されている。SAM値そのものは再生信号の局所的な品質を判断するのに用いることができるが、再生信号全体の品質を評価するためにはSAM値の度数分布に基づいて判断する必要がある。1次元の再生信号の場合、SAM値の度数分布は複数の離散的な理想SAM値を平均値とする正規分布が合わさった形状となる。また、理想SAM値とは、想定するパーシャルレスポンス(PR)特性の理想波形信号について求めたSAM値のことである。この複数の正規分布のうち、エラー発生の原因となりやすいもの、すなわち理想SAM値が小さいものだけを分類して取り出した上で、正規分布の確率密度分布関数の特性に基づいて平均値と標準偏差の比などエラーレートと理論的に同等な品質評価値を算出したり(特許文献2、3)、推定エラーレートを算出する(特許文献4)手法が提案されている。
【特許文献1】米国特許第5、740、184号公報(1998年4月14日発行)
【特許文献2】特開平10−21651号公報(公開日1998年1月23日)
【特許文献3】特開2003−141823号公報(公開日2003年5月16日)
【特許文献4】特開2003−272304号公報(公開日2003年9月26日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上説明したように、1次元の再生信号をビタビ復号するシステムにおいては、再生信号のエラーレートと同等な信号品質評価値をSAM値の度数分布から算出する手法が提案されている。しかし、2次元信号のSAM値に基づいてエラーレートと同等な信号品質評価値を算出する手法として、上記特許文献2から4のような従来手法をそのまま適用することは、下記の問題により不可能であった。
【0009】
特許文献2から4はいずれも、1次元の再生信号をビタビ復号するシステムであり、特にエラーを起こしやすい特定パターン(すなわち、値の小さい特定の理想SAM値に対応するパターン)を予め調べ上げておき、記録ビットからこの特定パターンを検出する構成が必須である。これらの特定パターンの種類は数種類から多くても数十種類であり、対応する理想SAM値の種類も1種類から多くても3種類程度であった。
【0010】
一方、トレリス線図が1次元に比べて複雑である2次元のビタビ復号におけるSAM値の場合、特にエラーを起こしやすい特定パターンの種類が非常に多くなるため、特定パターンを検出する構成を装置で実現しようとすると、回路規模が極めて大規模なものとなってしまうため、現実的には不可能である。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、2次元再生信号をビタビ復号する際、その信号品質を信頼性高く評価することができる、エラーレートと同等な評価値を算出する信号評価装置および信号評価方法、信号評価プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る信号評価装置は、上記課題を解決するために、入力信号の品質評価値を出力する信号評価装置において、前記入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号手段と、前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出されたパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価手段と、を備えることを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係る信号評価方法は、上記課題を解決するために、入力信号の品質評価値を出力する信号評価方法において、前記入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号ステップと、前記ビタビ復号ステップにて出力したパスメトリック差から、該パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップにて抽出したパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価ステップと、を含むことを特徴としている。
【0014】
ここで、所定のパーシャルレスポンス特性とは、前記理想パスメトリック差を算出するために使用され、例えば、3行3列の行列で表される2次元インパルス応答として表現される。
【0015】
また、所定の値範囲とは、想定するパーシャルレスポンス特性に対して定める所定値であり、前記理想パスメトリック差が属する群に分類するための範囲を規定するものである。
【0016】
これにより、前記抽出手段は、ビタビ復号手段によりビタビ復号された入力信号であるパスメトリック差のうち、前記抽出した理想パスメトリック差に対応するパスメトリック差の群のみを抽出することができる。このため、前記品質評価手段は、前記ビタビ復号手段によりビタビ復号されたパスメトリック差のうち、前記抽出手段により抽出された理想パスメトリック差に対応するパスメトリック差の群の品質評価値を算出することができる。
【0017】
すなわち、上記品質評価値は、上記入力信号であるパスメトリック差のうち、上記所定の値範囲に属するパスメトリック差のみから算出される。
【0018】
このため、上記品質評価値を算出するために、上記入力信号であるパスメトリック差すべてを演算の対象とする必要がない。
【0019】
したがって、2次元再生信号の記録再生に用いられる記録媒体や記録装置や再生装置などの性能を信頼性を維持しつつ、効率よく評価できるようになり、出荷前の製品の合否判定や各種調整を適切に行うことができるようになる。
【0020】
また、本発明に係る信号評価装置は、前記品質評価手段が、前記抽出されたパスメトリック差の群の度数分布の広がりの程度を表す統計値を算出し、該統計値から前記入力信号の品質評価値を算出することが好ましい。
【0021】
前記度数分布の広がりの程度を表す統計値は、上記入力信号の品質評価値と相関が強い。従って、前記品質評価手段は、信頼性を維持しつつ、効率よく前記入力信号の品質評価値を算出することができる。
【0022】
また、本発明に係る信号評価装置は、前記品質評価手段が、前記統計値として、前記抽出されたパスメトリック差の群の標準偏差を算出し、前記品質評価値として、前記標準偏差と、前記抽出されたパスメトリック差の群の平均値との比を算出することが好ましい。
【0023】
これにより、入力信号のパスメトリック差の度数分布の平均値と標準偏差に基づいてエラーレートと理論的に対応する品質評価値を算出することができるようになる。
【0024】
また、本発明に係る信号評価装置は、前記品質評価手段が、前記統計値として、前記抽出されたパスメトリック差の群の標準偏差を算出し、前記品質評価値として、前記標準偏差と、所定の定数値との比を算出することが好ましい。
【0025】
所定の定数値とは、任意で設定することができるが、例えば、対応する群の理想パスメトリック差の平均値を予め求めておいて用いることができる。これにより、平均値を求める機能を省略することができる。
【0026】
また、本発明に係る信号評価装置は、上記課題を解決するために、入力信号の品質評価値を出力する信号評価装置において、前記入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号手段と、前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の第1の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する第1抽出手段と、前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が前記第1の値範囲とは異なる所定の第2の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する第2抽出手段と、前記第1および第2抽出手段によってそれぞれ抽出されたパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価手段と、を備えることを特徴としている。
【0027】
これにより、上記品質評価手段は、第1の値範囲に属するパスメトリック差と、第2の値範囲に属するパスメトリック差とから上記品質評価値を算出することになる。このため、第1の値範囲に属するパスメトリック差のみから上記品質評価値を算出する場合と比較して、より正確に品質評価値を算出することができる。
【0028】
また、本発明に係る信号評価装置は、上記入力信号と対応付けられた理想信号を上記入力信号と対応するテストビットを、上記ビタビ復号手段において想定されたパーシャルレスポンス特性に従ってパーシャルレスポンス特性理想波形信号に変換する理想信号生成手段と、前記理想信号生成手段によって変換された前記パーシャルレスポンス特性理想波形信号に前記パーシャルレスポンス特性に従ってビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差である前記理想パスメトリック差を生成する理想パスメトリック差生成手段と、を備えていることが好ましい。
【0029】
これにより、2次元信号に対応する理想SAM値を確実に特定して、2次元信号のパスメトリック差の度数分布を理想SAM値毎に正確に分類することができる。これにより、正確な評価値を算出できる可能性をより高めることができる。
【0030】
また、本発明に係る信号評価装置は、前記ビタビ復号手段が、前記パスメトリック差に対応する復号ビットを、前記パスメトリック差とともに出力し、上記入力信号と対応する前記復号ビットを、上記ビタビ復号手段において想定されたパーシャルレスポンス特性に従ってパーシャルレスポンス特性理想波形信号に変換する理想信号生成手段と、前記理想信号生成手段によって変換された前記パーシャルレスポンス特性理想波形信号に前記パーシャルレスポンス特性に従ってビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差である前記理想パスメトリック差を生成する理想パスメトリック差生成手段と、を備えていることが好ましい。
【0031】
ここで、復号ビットは、前記ビタビ復号手段において、入力信号に対してビタビ復号を行う際、正解パスのパスメトリックを選択することに使われるものである。
【0032】
これにより、2次元信号に対応する理想SAM値を特定するために、別途、2次元信号に対応するビットを記憶するメモリなどを用意して、2次元信号の再生のタイミングに合わせて、それらのビットを読み出す仕組みを用意する必要がないため、簡易な構成によって2次元信号の品質評価値を算出できるようになる。
【0033】
なお、この場合、2次元信号と理想SAM値との対応づけが誤ってなされる可能性はあるが、その割合はほぼエラーレートに一致しており非常に小さく通常は10−2以下であるため、平均や標準偏差などの算出結果に与える影響は極めて微小である。したがって、最終的に算出されるエラーレートなどの品質評価値に含まれる誤差は、ほとんど無視できるほど小さい。
【0034】
また、本発明に係る信号評価装置は、前記抽出手段が、前記ビタビ復号手段から出力されるパスメトリック差に対応付けて、該パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するか否かを示すフラグマップを予め格納した格納部を備え、前記フラグマップに基づいて、前記ビタビ復号手段から出力されたパスメトリック差を抽出するか否かを決定することが好ましい。
【0035】
これにより、2次元信号に対応する理想SAM値を確実に特定して、2次元信号のパスメトリック差の度数分布を理想SAM値毎に正確に分類することができる。これにより、正確な評価値を算出できる可能性をより高めることができる効果を奏する。更に、理想SAM値を生成するためのビタビ復号回路を別途設ける必要がないため、非常に簡易な構成によって実現することが可能となる効果を奏する。
【0036】
なお、上記は、コンピュータによって実現してもよい。この場合、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記をコンピュータにおいて実現するビタビ復号プログラム、およびそのビタビ復号プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明に係る信号評価装置は、入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号手段と、前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出されたパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価手段と、を備える構成である。
【0038】
また、本発明に係る信号評価方法は、入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号ステップと、前記ビタビ復号ステップから出力されたパスメトリック差から、該パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップによって抽出されたパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価ステップと、を備える方法である。
【0039】
それゆえ、抽出された所定の値範囲に属するパスメトリック差のみから前記入力信号の品質評価値を算出することができるので、2次元再生信号をビタビ復号する際、その信号品質を信頼性高く評価することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1から図11に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係るホログラムメモリ再生信号評価システム20の構成を示すブロック図である。ホログラムメモリ再生信号評価システム20は、ホログラムメモリ再生装置1、2次元イコライザ2、および信号評価装置3によって構成される。
【0041】
なお、図1に示す信号評価装置3は、特許請求の範囲に記載されている信号評価装置に対応している。
【0042】
信号評価装置3は、2次元SAM検出回路(ビタビ復号手段)4、理想信号生成部(理想信号生成手段)40、2次元SAM検出回路(理想パスメトリック差生成手段)7、抽出部(抽出手段、第1抽出手段)45、品質評価回路(品質評価手段)50を備えている。
【0043】
そして、理想信号生成部40は、テストビットメモリ5、PRフィルタ6とを備えている。また、抽出部45は、値範囲識別回路8と、平均値・標準偏差演算回路9とを備えている。そして、品質評価回路50は、平均値・標準偏差演算回路9と、割算器10とを備えている。
【0044】
さて、図1に示すホログラムメモリ再生信号評価システム20における再生および信号評価の動作について図2を用いて説明すると以下の通りである。図2は本実施形態1に係るホログラムメモリ再生信号評価システム20の処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
ステップS1においては、ホログラムメモリ再生装置1は既知のテストビットが記録されたホログラム媒体を再生する。すなわち、既知のテストビットに基づいて再生信号(入力信号)を出力する。ホログラムメモリ再生装置1における具体的な再生動作、すなわち、ホログラム媒体に再生参照光が照射されて受光素子から2次元の再生信号が出力される動作については、背景技術において説明されたとおりであり、また、その動作は本発明とは直接関係しないので詳細な説明は省略する。
【0046】
前記のテストビットとしては、信号品質の評価値を求めるために十分なサンプル数を持ち、評価を適切に行えるように偏りのないパターン(通常はランダムパターン)が選ばれる。また、テストビットは予めホログラム媒体に記録されていてもよいし、信号品質の評価を行う前にホログラム媒体に記録するようにしてもよい。なお、テストビットがホログラムメモリの規格書で規定されていれば、異なるメーカーの装置間で共通のテストビットを用いることができるため、互換性が高まるなどの効果がある。
【0047】
なお、テストビットメモリ5には、ホログラムメモリ再生装置1によって再生されるテストビットと同一のビットが記憶されている。そして、テストビットメモリ5にはビットを記憶するメモリなどを用意しておき、2次元再生信号の再生のタイミングに合わせて、それらのビットを読み出す。
【0048】
また、テストビットメモリ5の代わりに線形シフトレジスタを利用した擬似ランダムパターン発生回路を用いる構成にしてもよい。これによってハード量を小さくすることができる。
【0049】
また、ステップS1においては、ホログラムメモリ再生装置1から出力される2次元再生信号は、2次元イコライザ2によって波形等化が施される。2次元イコライザ2は2次元FIR(Finite Impulse Response)フィルタなどで構成され、波形間干渉の除去などを行い、2次元再生信号を想定PR特性に近づける。
【0050】
以上が、ステップS1におけるホログラムメモリ再生信号評価システム20の再生処理である。
【0051】
次に、ステップS2において、2次元SAM検出回路4は、2次元再生信号(入力信号)に対してビタビ復号を行い、ビット毎のSAM値を出力する。ステップS2における2次元SAM検出回路4の動作の具体的な説明は後述する。
【0052】
次に、ステップS3において、2次元SAM検出回路7は、ステップS2で出力されるSAM値に対応する理想SAM値を出力する。具体的な処理を説明する。2次元再生信号に対応するテストビットがテストビットメモリ5から読み出されて、PRフィルタ6を通過することによってPR理想波形(パーシャルレスポンス特性理想波形信号)が出力される。PRフィルタ6は、2次元SAM検出回路4、7において想定しているPR特性を持つFIRフィルタである。このPR理想波形に対して2次元SAM検出回路7によりビタビ復号が行われ、理想SAM値が出力される。2次元SAM検出回路7の動作説明については、2次元SAM検出回路4と同様であるので、併せて後述する。
【0053】
次に、ステップS4において、理想SAM値が所定範囲内、すなわち、V1以上V2未満(所定の値範囲)であるか否かが値範囲識別回路8により判定される。V1、V2は想定するPR特性毎に定まる所定値であり、理想SAM値を複数の群に分類するための範囲を規定する。図3に理想SAM値の度数分布の一例を示す。理想SAM値は非常に多くの種類を持っているが、幾つかの群に分類できることが分かる。SAM値<0とビタビ復号エラービット発生が対応するという性質から、値の小さな理想SAM値に対応する再生信号はエラーを起こす確率が高いと言えるため、図3の例の場合、群1(所定の第1の値範囲)の理想SAM値に対応する再生信号についてのSAM値を取り出して度数分布を作成すれば、エラーレートとの対応が高い評価を行うことができる。図3の場合、V1=3000、V2=5000程度に設定しておけば、群1の88種類の理想SAM値のみを取り出すことができる。
【0054】
ステップS4で理想SAM値が所定範囲内であると判定された場合、ステップS5に進んで、対応するSAM値が平均値・標準偏差演算回路9での演算対象とされる。具体的には、SAM値と、仮平均値μ’に対するSAM値の二乗誤差が、それぞれ平均値μと仮標準偏差σ’の算出のために累積加算されていく。一方、ステップS4で理想SAM値が所定範囲外であると判定された場合は、ステップS5の処理はスキップされる。このように、パターンに基づいて判別をするのではなく、対応する理想SAM値の範囲に基づいて特定の群に属するSAM値を判別し、取り出すことができる。
【0055】
次に、ステップS6にて、全テストビットに対するSAM値の出力が終了したか否かが判定される。未終了の場合はステップS2に戻るため、全テストビットについて終了するまでステップS2からS6の処理が繰り返される。
【0056】
ステップS6にて終了判定がなされると、ステップS7に進む。ステップS7では、平均値・標準偏差演算回路9がμとσを算出し、割算器10によってこれらの比σ/μが算出される。平均値μは、ステップS5で累積加算されたSAM値の合計を個数で割算することによって求められる。標準偏差σは、ステップS5で累積加算された仮平均値に対するSAM値の二乗誤差の合計を個数で割算して求めた仮標準偏差σ’を、正確に算出された平均値μによって式(1)で補正することによって求められる。なお、仮平均値μ’をある程度正確に見積もることができるならば、真の平均値μとμ’の誤差が小さくなりσ≒σ’となるので、仮標準偏差σ’を標準偏差σと見なして式(1)の補正を省略することによって、回路を簡略化してもよい。
【0057】
【数1】
【0058】
以上の処理によって、最終的に、ホログラムメモリの再生信号の信号品質評価値としてσ/μを得ることができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、テストビットメモリ5、PRフィルタ6、2次元SAM検出回路7、値範囲識別回路8を用いて、リアルタイムに理想SAM値を求めながらその値が所定範囲であるか否かを判定して特定の群に属するSAM値を取り出す構成であった。しかし、所定のテストビットを用いる場合、事前に理想SAM値を求めておいて、各再生信号が特定の群に属するSAM値に対応するか否かを示すフラグマップを予め用意し、再生時にはこのフラグマップに基づいて特定の群に属するSAM値を取り出す構成としてもよい。
【0060】
図4(c)にフラグマップの一例を示す。図4(a)のテストビットの理想SAM値が図4(b)のように求められたとする。図3のようにV1=3000、V2=5000程度に設定すると、フラグマップは図4(c)のように決まる。フラグの意味は、「1」が群1に属することを示し、「0」が群1に属さないことを示す。実際の信号評価装置では図4(c)のフラグマップだけあれば、上記ステップS4で行われる判定と同等の判定が可能となる。従って、テストビットメモリ5、PRフィルタ6、2次元SAM検出回路7、値範囲識別回路8が不要となり、代わりにフラグマップを記憶するフラグマップメモリ47(格納部)が必要となる。そして、フラグマップメモリ47は、2次元再生信号の再生のタイミングに合わせて、上記フラグマップを読み出す。
【0061】
図5にフラグマップメモリ47を備えた信号評価装置30の一例を示す。信号評価装置30は、2次元SAM検出回路4と、抽出部46、品質評価回路50とを備えている。
【0062】
抽出部46は、平均値・標準偏差演算回路9と、フラグマップメモリ47とを備えている。また、品質評価回路50は平均値・標準偏差演算回路9と割算器10とを備えている。
【0063】
フラグマップのデータ量はテストビットのデータ量と同じであるので、PRフィルタ6、2次元SAM検出回路7、値範囲識別回路8の分だけ回路規模を削減できる。特に2次元SAM検出回路7は回路規模が大きいので、削減効果は大きなものとなる。更に、フラグマップをメモリに記憶する構成の代わりに、フラグマップ自体をホログラム媒体にデータとして記録しておき、最初にこれを再生してフラグマップを得る構成としてもよい。
【0064】
次に、本実施形態に係る信号評価装置3によって、ビタビ復号におけるエラーレートに対応する信号品質評価値を求めることができる理由について詳細に説明する。図6(a)は、ステップS4にて取り出された群1の理想SAM値に対応するSAM値の度数分布の一例を示す図である。3つの度数分布は再生信号の品質が異なり、ビットエラーレート(BER)がそれぞれ1E−5以下、1E−4、5E−3の場合を示している。図6(a)から分かるように、いずれの度数分布も正規分布に近い分布形状を持っている。
【0065】
統計学によれば、平均値μと標準偏差σの正規分布においてx以下となる確率(累積相対度数)をF(x)とすると、標準正規分布に対する累積密度関数Φ(z)(式(2))とF(x)との間には、式(3)の関係が成立する。
【0066】
【数2】
【0067】
【数3】
【0068】
さて、SAM値<0とビタビ復号エラービット発生が対応するという性質から、SAM値の度数分布において0より小さい部分の累積相対度数はエラーレートとの相関が非常に強い。図6(a)から分かるように、SAM値がほぼ正規分布に近い分布形状を持っていることを考え合わせると、エラーレートは式(3)を用いてF(0)=Φ(−μ/σ)としてかなり正確に推測することができる。
【0069】
以上より、本実施形態に係るホログラムメモリ再生信号評価システム20によって算出されるσ/μ(標準偏差と平均値の比)がビタビ復号におけるエラーレートと原理的に対応することが理論的に説明された。
【0070】
以下では、2次元SAM検出回路4の動作について詳細に説明する(2次元SAM検出回路7の動作も全く同様である)。
【0071】
(2次元SAM検出回路4)
2次元SAM検出回路4は、入力された2次元再生信号に対して、判定帰還ビタビ復号を適用する。そこで、2次元SAM検出回路4が実行する判定帰還ビタビ復号について、以下に説明する。
【0072】
この方法では、ページデータの横方向すなわち行方向に沿って、再生信号をビタビ復号する。具体的には、1行ずつ復号ビットを決定する処理を、1行ずつ下すなわち列方向にずらしながら行う。その際、判定帰還を行う。すなわち、直前の復号結果(フィードバック行)を、次行のビタビ復号に利用する。
【0073】
判定帰還ビタビ復号法の概要を、図7および図8を参照して以下に説明する。図7は、判定帰還ビタビ復号法における想定PR特性のインパルス応答を示す図である。図8は、判定帰還ビタビ復号法を表現するトレリス線図である。
【0074】
想定PR特性を、図7に示す3行3列の行列で表される2次元インパルス応答hとして表現する。トレリス状態は、2行2列の行列として定義される。トレリス線図は図8に示すように表現される。
【0075】
なお、「2次元インパルス応答」とは、単位インパルス信号を線形システムに入力したときに当該線形システムが出力する出力信号を意味する。単位インパルス信号とは、(a)1ビットのみの信号レベルが1であり、(b)それ以外のビットの信号レベルが全て0であるような2次元ビット行列を意味する。
【0076】
図7の2次元インパルス応答hでは、信号レベルが中心の画素に生じている。それだけでなく、周辺の隣接画素においても生じている。すなわち、画素間干渉の発生が想定されている。
【0077】
(トレリス状態)
トレリス状態を[k、l;m、n]で表記すると、k、l、m、およびnは、いずれも1ビットの値を取る。すなわち、いずれも0または1である。このことから、2の4乗=16種類のトレリス状態が存在することになる。図8に示したように、トレリス状態から次のトレリス状態へのブランチは、トレリス状態ごとに4本ずつある。同じく図8に示したように、トレリス状態に入力するブランチも、トレリス状態ごとに4本ずつある。
【0078】
各ブランチが想定する想定波形レベルは、ブランチに繋がる2つのトレリス状態を結合した2行3列の行列に、その一つ上のフィードバック行を結合させた3行3列の行列によって決定される。フィードバック行の詳細については、後述する。
【0079】
(想定波形レベルの一例)
以下に、[0、0;0、1]から[0、1;1、0]に繋がるブランチについて、一例として説明する。このブランチが想定するレベルは、その一つ上のフィードバック行が[1、1、0]であったとすると、行列[1、1、0;0、0、1;0、1、0]によって決定される。このとき、インパルス応答hと、行列[1、1、0;0、0、1;0、1、0]とを2次元畳み込み演算すると、0.31になる。この値が、このブランチの想定波形レベルである。
【0080】
判定帰還ビタビ復号処理は、ページデータにおける左から右に向かって、行方向に行われる。再生信号を行方向に走査することによって得られる波形を再生信号波形とすると、再生信号波形のレベルと、各ブランチの想定波形レベルとの二乗誤差は、ブランチメトリックと呼ばれる。すなわちブランチメトリックは、ブランチごとの値となる。また、各トレリス状態に至るパスの累積ブランチメトリックは、パスメトリックと呼ばれる。
【0081】
判定帰還ビタビ復号法では、トレリス状態に入力する4本のパスのうちパスメトリックが最小のものを、生き残りパスとして残す。この処理をトレリス状態ごとに行い、かつ、行方向に繰り返す。これにより、所定時間だけ前(左方向)に遡れば、生き残りパスが1本に収束している。そこでこの生き残りパスを正解パスとして決定する。以上の処理に要する所定時間は、パスメモリ長と呼ばれる。
【0082】
以上の過程は、従来の1次元ビタビ復号法と原理的に同じである。そこで、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0083】
(正解パスの取り扱い)
ただし判定帰還ビタビ復号法は、正解パスの取り扱いが1次元ビタビ復号と異なる。すなわち1次元ビタビ復号だと、正解パスがビット系列そのものに対応する。一方、2次元ビタビ復号では、正解パスが行列になる。したがって、正解パスは複数のビット行に対応する。以上の例では2行である。
【0084】
これら2行のビット行のうち、2行目は、3行目以降のビット行からの影響が考慮されていない。すなわち画素間干渉の影響が部分的にしか考慮されてない。これにより信頼性
に乏しい。一方、1行目については、上下左右からの波形干渉が、全て考慮に入れられてビタビ復号されている。そこで1行目のみを復号ビットとして出力する。
【0085】
行方向のビタビ復号によって、1行分のビット行が得られる。この処理を1行ずつ列方向(下方向)にずらしながら繰り返す。これにより、2次元再生信号の全体を復号する。
【0086】
(判定帰還の導入)
ここに、判定帰還の考え方を導入する。判定帰還は、1つ上の行の復号結果をフィードバック行として、次の行のビタビ復号に反映させる手法である。具体的には以上に説明した通りである。すなわち1つ上の行の復号結果を、次の行のブランチの想定波形レベルを決める処理に用いる。これにより、復号結果を反映させる。
【0087】
判定帰還の手順について、以下に、さらに詳しく説明する。最上端の行の、さらに上の行は「0」だとみなせる。そこで、最上行からの再生信号に基づいて情報を再生するときには、フィードバック行を全て0とする。
【0088】
次に、上から2行目からの再生信号に基づいて情報を再生する。このとき、1行目(すなわち最上端の行)においてビット行が正確に復号されたと仮定する。そこでこれをフィードバック行として、2行目の復号に用いる。
【0089】
さらに、上から3行目の行からの再生信号に基づいて再生する。このとき、2行目においてビット行が正確に復号されたと仮定する。そこでこれをフィードバック行として、3行目の復号に用いる。
【0090】
以上のように、判定帰還ビタビ復号法では、現在の復号対象行の一つ上の行において、復号処理が正確になされたと仮定する。そこで一つ上の行の影響を考慮に入れつつ、列方向の判定帰還を行う。同時に、現在の行からの再生信号をビタビ復号する。すなわち列方向の画素間干渉の影響がより反映されたビタビ復号処理を実行する。
【0091】
以上の処理によって、従来の1次元ビタビ復号処理、すなわち行方向のみの再生波形の変化を用いる処理をそのまま適用する処理に比べて、ビタビ復号をより正確に実行できる。
【0092】
(2次元SAM検出回路4の構成)
2次元SAM検出回路4の構成について、図9を参照して以下に説明する。この図に示すように、2次元SAM検出回路4は、2次元ビタビ復号回路11、パス選択回路12、および減算器13を備えている。
【0093】
(2次元ビタビ復号回路11)
2次元ビタビ復号回路11は、2次元再生信号を2次元ビタビ復号する。2次元再生信号における画素間干渉は、図7に示す3行3列の行列で表される、2次元インパルス応答hとして想定されている。また、トレリス状態は2行2列の行列として定義されている。
【0094】
2次元ビタビ復号回路11は、自己復号ビットに基づき正解トレリス状態を決定する。また、決定した正解トレリス状態に入力する4本のパスのパスメトリックを算出する。こうして、算出した4つのパスメトリックを、パス選択回路12に出力する。
【0095】
(パス選択回路12)
パス選択回路12は、入力された4つのパスメトリックから、正解パスのパスメトリックを選択する。このとき、2次元ビタビ復号回路11から入力される復号ビットに基づき、選択するパスメトリックを決定する。さらに、選択した正解パスのパスメトリックを、減算器13に出力する。
【0096】
パス選択回路12は、さらに、入力された4つのパスメトリックのうち、正解パスと異なる復号対象行を持つ誤りパスのうち、パスメトリックが最小のものを選択する。このときも、2次元ビタビ復号回路11から入力される復号ビットに基づき、選択する誤りパスを決定する。パス選択回路12は、このとき選択したパスメトリックを、誤りパスのパスメトリックとして、正解パスのパスメトリックと同様に減算器13に出力する。
【0097】
(減算器13)
減算器13は、入力された誤りパスのパスメトリックから、入力された正解パスのパスメトリックを減算する。これにより、SAM値を算出する。
【0098】
(トレリス線図の詳細)
本実施形態では、トレリス線図は、2次元ビタビ復号回路11の動作を表現する。このトレリス線図は、図8に示すトレリス線図と同様である。たとえば、想定応答行列hにおける画素間干渉のビット幅は、3である。また、このトレリス線図には、判定帰還ビタビ復号法が適用されている。これにより、トレリス状態が2行2列の行列として定義されている。
【0099】
2次元ビタビ復号回路11は、復号対象行の一つ上の行に、フィードバック行を用いることができる。これにより、行の幅は3−1=2となる。2行2列は合計で4ビットに相当する。そのためトレリス状態数は、2の4乗=16通りある。また、トレリス状態に入力するブランチは、トレリス状態ごとにいずれも4本である。さらに、トレリス状態から出力するブランチも、トレリス状態ごとにいずれも4本である。
【0100】
(2次元SAM検出回路4の動作)
2次元SAM検出回路4の動作について説明する。
【0101】
2次元ビタビ復号回路11は、図8のトレリス線図に基づいて、2次元再生信号を行方向にビタビ復号する。ここで、入力された記録ビットの2次元再生信号をxとする。また、2次元再生信号に対応する想定波形レベルをwとする。このとき2次元ビタビ復号回路11は、xとwとの二乗誤差(x−w)2を、ブランチメトリックとして算出する。
【0102】
さらに、トレリス状態ごとに算出したブランチメトリックを、ビタビ復号を始めてから、あるトレリス状態にパスが至る間での期間、累積する。これにより、トレリス状態ごとのブランチメトリックを累積した値である、パスメトリックを算出する。2次元ビタビ復号回路11は、算出したパスメトリックに基づき生き残りパスを決定する。この復号動作と同時に、正解トレリス状態に入力する4本のパスの、パスメトリックをそれぞれ算出する。また、算出した4つのパスメトリックを、パス選択回路12に出力する。
【0103】
(パスメトリック算出の具体例)
以上の具体例を、図10に示すトレリス線図の遷移の一例を用いて説明する。図10は、第m行・第n列の復号ビットが決定されるトレリス状態の遷移を示す図である。
【0104】
図10において、2次元ビタビ復号回路11から出力された復号ビットが、以下の状態であるとする。
【0105】
b(m、n−2)=0
b(m、n−1)=0
b(m、n)=1
b(m+1、n−2)=0
b(m+1、n−1)=0
b(m+1、n)=0
このとき、第m行・第n列における正解トレリス状態は、[0、1;0、0]となる。したがって2次元ビタビ復号回路11は、このトレリス状態[0、1;0、0]に入力する4本のパスのパスメトリックを出力する。具体的には、パスメトリックP0(n)、P1(n)、P2(n)、P3(n)を、パス選択回路12に出力する。
【0106】
パス選択回路12には、パスメトリックP0(n)〜P3(n)が入力される。同時に、2次元ビタビ復号回路11から、復号ビットb(m、n−2)、b(m、n−1)、b(m、n)、b(m+1、n−2)、b(m+1、n−1)、b(m+1、n)が入力される。パス選択回路12は、入力された各復号ビットに基づき、正解パスのパスメトリックを選択する。さらに、正解パスと異なる復号対象行を持つ誤りパスの中から、パスメトリックが最小の誤りパスを選択する。
【0107】
図10の例の場合、正解パスは、トレリス状態[0、0;0、0]から[0、1;0、0]の遷移に対応するパスである。このときパスメトリックはP0(n)である。誤りパスとして、
[0、0;1、0]から[0、1;0、0]へのパス
[1、0;0、0]から[0、1;0、0]へのパス
[1、0;1、0]から[0、1;0、0]へのパス
の3つが存在する。
【0108】
これらのうち、2番目と3番目の誤りパスは、正解パスの復号対象行[0、0、1]と異なる復号対象行[1、0、1]を持っている。そこでパス選択回路12は、P2(n)およびP3(n)のうち、値が小さい方を誤りパスのパスメトリックとして選択する。たとえばP2(n)<P3(n)であったとする。この場合、パス選択回路12は、正解パスのパスメトリックとしてP0(n)を選択する。さらに、誤りパスのパスメトリックとしてP2(n)を選択する。パス選択回路12は、選択したP0(n)およびP2(n)をいずれも減算器13に出力する。
【0109】
(SAM値の算出)
減算器13は、入力された誤りパスのパスメトリックから、入力された正解パスのパスメトリックを差し引いて出力する。たとえば、減算器13にP0(n)およびP2(n)が入力されたとする。このとき減算器13は、SAM値としてP2(n)−P0(n)を算出し、出力する。
【0110】
(2次元SAM検出回路7)
2次元SAM検出回路7の動作は2次元SAM検出回路4と全く同様である。但し、入力される信号が異なり、2次元SAM検出回路4ではホログラム媒体の再生信号が入力されるが、2次元SAM検出回路7ではPR理想波形が入力される。従って、2次元SAM検出回路4からホログラム媒体の再生信号について求められたSAM値が出力されると同時に、2次元SAM検出回路7からはそれに対応する理想SAM値が出力される。
【0111】
本実施形態の信号評価装置3を、シミュレーションによって実装した。実装した信号評価装置3に、ノイズ量を変化させた256×256のテストビットの2次元再生信号を入力し、出力された信号品質評価値σ/μと、ビタビ復号結果のビットエラーレートとの関係を図11に示す。図11から、σ/μがビタビ復号結果のビットエラーレートと相関の強い信号品質評価値であることが確認できる。これより、出荷前の記録媒体のσ/μを評価して所定基準値以下の場合に合格と判定したり、記録装置や再生装置においてσ/μができるだけ小さくなるように各種調整を行うことで最適な調整を実現することが可能となる。
【0112】
〔実施形態2〕
実施形態1においては、2次元SAM値の度数分布を特定する統計値として平均値μと標準偏差σを測定し、これらの比σ/μを信号品質評価値としていた。しかし、エラーレートとの相関が特に強いのは度数分布の広がりを示す標準偏差σであり、平均値μは、再生信号の振幅が想定PR波形レベルに合うように適切に調節されていれば、ほとんど所定値(群1の理想SAM値の平均値)に近い値となる。したがって、実施形態1の平均値・標準偏差演算回路9から平均値μを求める機能を省略し、μの代わりに所定値M(予め群1の理想SAM値の平均値として求めた所定の定数値)を用いてσ/Mを信号品質評価値としてもよい。これは、光ディスクシステムにおいて一般的に用いられているジッタの定義に近いものである。ジッタは、再生波形のエッジゆらぎを標準偏差として求め、クロック時間T(所定値)で除算して規格化した評価値であり、しきい値検出方式におけるエラーレートと理論的に相関が強い。実施形態2の構成は回路を簡略化できる長所があるので、システム設計に応じて適切な構成を選べばよい。
【0113】
〔実施形態3〕
実施形態1においては、理想SAM値の複数の群のうち、最も0に近い群(図3の例では群1)のみを分類して、それに対応する2次元SAM値の度数分布を特定する統計値として平均値μと標準偏差σを測定し、これらの比σ/μを信号品質評価値としていた。実施形態3では、理想SAM値の最も0に近い群だけでなく複数の群に対応する度数分布についてそれぞれμとσを測定し、これらから推測ビットエラーレートを算出する構成について説明する。
【0114】
図12は、実施形態3に係る信号評価装置31の構成を示すブロック図である。実施形態1に係る信号評価装置3における構成要素と同等の機能を有する構成要素については同じ符号を与えて説明を省略する。
【0115】
信号評価装置31は、信号評価装置3の構成に加えて、抽出部(第2抽出手段)48を備えている。また、品質評価回路51を備えている。
【0116】
抽出部48は、値範囲識別回路14と、平均値・標準偏差演算回路15とを備えている。また、品質評価回路51は、平均値・標準偏差演算回路9と、平均値・標準偏差演算回路15と、推定BER計算回路16とを備えている。
【0117】
値範囲識別回路14は、値範囲識別回路8と同様の機能を持つが、識別する値の範囲が異なり、V2以上V3未満であるか否かを判定する。V2、V3は想定するPR特性毎に定まる所定値であり、図3の例で説明すると、群2(所定の第2の値範囲)の理想SAM値を分類するためにV2=5000、V3=7500程度に設定する。
【0118】
平均値・標準偏差演算回路15は機能としては平均値・標準偏差演算回路9と同様であり、値範囲識別回路14によって群2に属すると判定された理想SAM値に対応するSAM値の度数分布の平均値μ2と標準偏差σ2を算出する。
【0119】
推定BER計算回路16は、μ1、σ1、μ2、σ2から推定ビットエラーレート(入力信号の品質評価値)を算出する。算出方法については、後述する。
【0120】
なお、抽出部48は第2抽出手段、値範囲識別回路14はパスメトリック差群判定手段、平均値・標準偏差演算回路15は統計値算出手段、推定BER計算回路16は品質評価値算出手段にそれぞれ対応している。
【0121】
さて、図12に示した上記構成の信号評価装置31の動作を図12および図13を用いて説明すると以下の通りである。
【0122】
図13は、本実施形態3に係る信号評価装置31における処理の流れを示すフローチャートである。図2のフローチャートで示される実施形態1と同じ処理については詳細な説明を省略する。
【0123】
ステップS21において、既知のテストビットが記録されたホログラム媒体を再生して2次元再生信号が出力される。ここでの処理は、実施形態1において説明した図2のステップS1と同じである。
【0124】
次に、ステップS22において、2次元SAM検出回路4により2次元再生信号に対してビタビ復号が行われて、ビット毎のSAM値が出力される。ステップS22における2次元SAM検出回路4の動作は図2のステップS2と同じである。
【0125】
次に、ステップS23において、ステップS2で出力されるSAM値に対応する理想SAM値が出力される。この動作は図2のステップS3と同じである。
【0126】
次に、ステップS24において、値範囲識別回路8により理想SAM値がV1以上V2未満であるか否かが判定される。これにより、図3における群1の88種類の理想SAM値のみを取り出すことができる。
【0127】
ステップS24で理想SAM値がV1以上V2未満であると判定された場合、ステップS25に進んで、対応するSAM値が平均値・標準偏差演算回路9での演算対象とされる。ステップS25の処理が終われば、ステップS28に移る。一方、ステップS24で理想SAM値がV1以上V2未満の範囲にないと判定された場合は、ステップS26に移る。
【0128】
ステップS26では、値範囲識別回路14により理想SAM値がV2以上V3未満であるか否かが判定される。これにより、図3における群2の351種類の理想SAM値のみを取り出すことができる。
【0129】
ステップS26で理想SAM値がV2以上V3未満であると判定された場合、ステップS27に進んで、対応するSAM値が平均値・標準偏差演算回路15での演算対象とされる。一方、ステップS26で理想SAM値がV2以上V3未満の範囲にないと判定された場合は、ステップS28に移る。
【0130】
次に、ステップS28にて、全テストビットに対するSAM値の出力が終了したか否かが判定される。未終了の場合はステップS22に戻るため、全テストビットについて終了するまでステップS22からS28の処理が繰り返される。
【0131】
ステップS28にて終了判定がなされると、ステップS29に進む。ステップS29では、平均値・標準偏差演算回路9がμ1とσ1を、平均値・標準偏差演算回路15がμ2とσ2を、それぞれ算出し、推定BER計算回路16にて推定ビットエラーレートが求められる。
【0132】
以上の処理によって、最終的に、ホログラムメモリの再生信号の信号品質評価値として推定ビットエラーレートを得ることができる。
【0133】
ここで、本実施形態に係る信号評価装置31によって、ビタビ復号における推定ビットエラーレートを求めることができる理由について詳細に説明する。
【0134】
図6(a)はステップS24にて取り出された群1の理想SAM値に対応するSAM値の度数分布、図6(b)はステップS26にて取り出された群2の理想SAM値に対応するSAM値の度数分布、の一例を示す図である。3つの度数分布は再生信号の品質が異なり、BERがそれぞれ1E−5以下、1E−4、5E−3の場合を示している。図6(a)(b)から分かるように、群1、群2いずれの度数分布も正規分布に近い分布形状を持っている。
【0135】
実施形態1と同様の理論により、群1の度数分布においてSAM値<0となる累積相対度数はF1(0)=Φ(−μ1/σ1)によって推測できる。また、群2の度数分布においてSAM値<0となる累積相対度数はF2(0)=Φ(−μ2/σ2)によって推測できる。
【0136】
SAM値<0とビタビ復号エラービット発生が対応するという性質から、群1に属する理想SAM値に対応するパターンでのエラーレートはF1(0)に、群2に属する理想SAM値に対応するパターンでのエラーレートはF2(0)にほぼ一致する。従って、全てのパターン、言い換えると全てのビットについてのエラーレートはF1(0)とF2(0)を合算することによって推測することができる。
【0137】
厳密に言えば、図3の群3、群4、など全ての群に属する理想SAM値に対応するパターンでのエラーレートを合算する必要があるが、エラー発生は0に近い群に属するパターンにおけるものが支配的であるので、群1と群2のみについて合算することで、十分正確に推測することができると考えられる。
【0138】
また、厳密に言えば、1つのSAM値がマイナスとなる時にビタビ復号エラーが1ビットだけ発生するとは限らず、パターンによっては複数の復号エラービットを生じることもあり得るので、群1、群2に属する理想SAM値に対応する復号エラービット数の期待値を別途測定しておいて、F1(0)とF2(0)の合算時に係数として掛けることによって反映させれば、より正確に推測が可能となる。更に合算時には、群1、群2に属するパターンの出現確率を係数として掛ける必要がある。出現確率は、使用するテストビットについて事前に調べておいて定数として実装してもよいし、再生時に値範囲識別回路8、14によって出現度数をカウントするようにしてもよい。簡易的に群1と群2での復号エラービット数の期待値を共に1とし、群1のパターンの出現確率がP1、群2のパターンの出現確率がP2であるとすると、推定ビットエラーレートは式(4)によって算出される。
【0139】
推定ビットエラーレート = P1×F1(0)+P2×F2(0) (4)
本実施形態3の信号評価装置31を、シミュレーションによって実装した。実装した信号評価装置31に、ノイズ量を変化させた256×256のテストビットの2次元再生信号を入力し、出力された推定ビットエラーレートと、ビタビ復号結果の実測ビットエラーレートとの関係を図14に示す。図14から、推測ビットエラーレートと実測ビットエラーレートが非常によく一致していることが確認できる。
【0140】
なお、ノイズ量が小さい場合に推測ビットエラーレートと実測ビットエラーレートとの差が大きくなっている。これは、推測ビットエラーレートが、正規分布の自然な広がりにより0以下となる確率を求めている、すなわち自然なノイズに起因するエラーのみを推測しているのに対し、実測ビットエラーレートにはそれに加えてディフェクトなど不自然なノイズに起因するエラーも含まれているためである。
【0141】
通常、ディフェクトによるエラーは多くても数ビット程度なので、エラーレートが悪い状況では自然なノイズによるエラー数の方がはるかに多いため影響を無視できるが、エラーレートが良い状況では、自然なノイズによるエラーがほとんど無いため、ディフェクトによるエラーの影響が大きく出てくる。
【0142】
しかしながら、本来、再生信号品質はディフェクトの影響を除いて評価することが望ましいものである。また、このシミュレーションの例だとテストビット総数は65536ビットしかなく、1E−5以下のエラーレートは実測できない(エラー数0となる)ので、ある程度以上ノイズが少ない場合は信号品質の良し悪しが判別できなくなるが、推測ビットエラーレートなら非常に低いエラーレートも算出できる。したがって、記録装置や再生装置の各種調整などを推測ビットエラーレートに基づいて行えば、真に最適な調整を実現することが可能となる。
【0143】
〔実施形態4〕
実施形態1では、ホログラム媒体にあらかじめ所定のテストビットが記録されている。
【0144】
そしてホログラムメモリ再生装置1は、このテストビットを再生する。すなわち、ホログラム媒体には事前にテストビットを記録しておく必要がある。そのため次に示す2点の問題が生ずる。第1に、ホログラム媒体の利用効率が低くなる。第2に、実際の情報を記録したり再生したりすることによって生成した信号そのものの品質を、直接的に評価できない。
【0145】
本実施形態の信号評価装置32は、以上の2点の問題を、自らのビタビ復号結果をフィードバックして用いることによって回避する。
【0146】
図15は、信号評価装置32の構成を示すブロック図である。信号評価装置32と信号評価装置3とが異なる点を以下に記載する。すなわち、信号評価装置32は、テストビットメモリ5がなく、その代わりに2次元SAM検出回路4が復号ビットを出力する。そして、その復号ビットが理想信号生成部(理想信号生成手段)41に入力される。そして、理想信号生成部41はPRフィルタ6を含んでおり、前記復号ビットはPRフィルタ6を通過する。これにより、生成されたPR理想波形が2次元SAM検出回路7に入力される構成となっている点が信号評価装置3と異なる。PR理想波形の生成動作以外については、実施形態1で説明した信号評価装置3の動作と全く同一であるので、詳しい説明は省略する。
【0147】
この場合、2次元SAM検出回路4がビタビ復号エラーを起こすと、誤ったPR理想波形が生成され、結果として理想SAM値の群が誤分類されることになる。しかし、一般的に評価対象とする信号品質は悪くてもせいぜいエラーレート10−2台であり、その程度のエラーレートに対応して理想SAM値の群分類を誤ったとしても、平均値や標準偏差の算出結果に与える影響はごく微小であるため、最終的な信号品質評価値σ/μの算出結果に与える誤差はほとんど無視できるほどに小さいと言える。
【0148】
その一方で、このような構成とすることで、テストビットメモリ5を省略することができると共に、テストビットを予めホログラム媒体に記録しておいたり、信号品質評価を行
う前にホログラム媒体に記録したりする手間が不要となる効果が得られる。更に、信号品質評価をテストビットに限らず任意のビットを対象にして行うことができる。
【0149】
なお、実施形態1から4においては、度数分布を特定する統計値として平均値と標準偏差を用いる例で説明したが、これに限るものではなく、例えば平均値の代わりに最頻値を用いたり、標準偏差の代わりに分散を用いたりするなど、度数分布を特定できる統計値であれば何を用いてもよい。本発明の主旨は、理想SAM値を群毎に分類することによって、対応するSAM値の度数分布を分類し、それぞれの度数分布を特定する統計値に基づいて信号品質を評価することにある。
【0150】
また、実施形態1から4で説明した信号評価装置の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにコンピュータを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0151】
すなわち、信号評価装置3、信号評価装置31、および信号評価装置32は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである信号評価装置3、信号評価装置31、および信号評価装置32の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記信号評価装置3、信号評価装置31、および信号評価装置32に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0152】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0153】
また、信号評価装置3、信号評価装置31、および信号評価装置32を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0154】
このように本明細書において、手段とは必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能がソフトウェアによって実現される場合も含む。さらに、一つの手段の機能が二つ以上の物理的手段により実現されても、もしくは二つ以上の手段の機能が一つの物理的手段により実現されてもよい。
【0155】
また、上記いずれの実施形態においても、再生システムの例としてホログラムメモリシステムについて説明したが、これに限らず、2次元信号の再生を行うシステムにおいて等しくその効果を発揮することができる。すなわち、他の再生システムとしてQRコードに代表される2次元バーコード再生システムなどにも本発明を適用することができる。
【0156】
なお、先に本出願人は、2次元再生信号をビタビ復号するシステムに適したSAM値を新たに考案している(特願2006−75680)。2次元信号をビタビ復号する過程においては、図16に示すように、トレリス線図の正解状態に1本の正解パスと複数の誤りパスが入力する。トレリス線図とはビタビ復号過程に対応する状態遷移図のことである。2次元信号の場合には、1本の正解パスに対応して複数の誤りパスが存在するが、正解パスが有する復号対象行と異なる復号対象行を有する誤りパスのうち最小のパスメトリックを持つ誤りパスを選んで、これと正解パスとのパスメトリック差をSAM値として求める点が大きな特徴である(1次元の場合は、1本の正解パスに1本の誤りパスが対応するので、単純に両者のパスメトリック差がSAM値と定義される)。パスメトリックとは、パスの理想信号に対する入力信号の誤差のことである。
【0157】
図17の例の場合、正解状態[0,1;0,0]に入力する正解パスは[0、0;0、0]→[0、1;0、0]の遷移に対応するパスであり、そのパスメトリックはP0(n)である(トレリス状態を[k、l;m、n]として表記する。[k、l;m、n]は、行ベクトル[k、l]および[m、n]を、列方向(上下)に並べた行列を意味する。以下でも、行列の表現はこの表記に準じる)。これに対応する誤りパスとしては、
[0、0;1、0]→[0、1;0、0]のパス
[1、0;0、0]→[0、1;0、0]のパス
[1、0;1、0]→[0、1;0、0]のパス
の3つが存在する。
【0158】
これらのうち、2番目と3番目の誤りパスは、正解パスの復号対象行[0、0、1]と異なる復号対象行[1、0、1]を持っているので、P2(n)およびP3(n)のうち値が小さい方、すなわちP2(n)を誤りパスのパスメトリックとして選択する。結局、P2(n)とP0(n)の差である、0.34−0.27=0.07がSAM値として算出される。
【0159】
ビタビ復号過程においてエラーを発生させないためには、正解パスのパスメトリックが間違いパスのパスメトリックよりも小さい必要がある。すなわちSAM値>0である必要がある。また、SAM値が大きいほどエラーが発生しにくい。このように2次元信号をビタビ復号するシステムにおいて、SAM値に基づいて再生信号の品質を信頼性高く評価することができる。
【0160】
しかしながら、トレリス線図が1次元に比べて複雑である2次元のビタビ復号におけるSAM値の場合、特にエラーを起こしやすい特定パターンは千種類以上もあり、対応する理想SAM値も数十種類から多くて数百種類もある。従って、もしこれら千種類以上の特定パターンを検出する構成を装置で実現しようとすると、回路規模が極めて大規模なものとなってしまうため、現実的には不可能である。
【0161】
上述したように、本実施の形態の構成により、2次元信号をビタビ復号するシステムにおいて、回路規模を大規模なものとすることなく、SAM値に基づいて再生信号の品質を信頼性高く評価することができる。
【0162】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の信号評価装置及び信号評価方法によれば、2次元信号をビタビ復号する装置において、エラーレートとの相関性が非常に高い指標値を用いて、記録媒体や記録装置、再生装置を評価したり、その評価結果に基づいて出荷前製品の信頼性の高い合否判定や各種調整を行うことが可能であり、2次元信号を再生するホログラムメモリ再生装置、QRコードに代表される2次元バーコード再生装置、などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】実施形態1のホログラムメモリ再生信号評価システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1のホログラムメモリ再生信号評価システムにおいて2次元再生信号の品質評価値としてσ/μを算出する処理の流れ示すフローチャートである。
【図3】理想SAM値の度数分布の一例を示す図である。
【図4】フラグマップの一例を示す図である。
【図5】実施形態1のホログラムメモリ再生信号評価システムの他の構成を示すブロック図である。
【図6】各群の理想SAM値に対応するSAM値の度数分布の一例を示す図である。
【図7】判定帰還ビタビ復号法における想定インパルス応答を示す図である。
【図8】判定帰還ビタビ復号法を表現するトレリス線図である。
【図9】2次元SAM検出回路の構成を示すブロック図である。
【図10】トレリス状態[0、1;0、0]に入力する4本のブランチについてのトレリス状態の遷移を示す図である。
【図11】σ/μとビットエラーレートとの関係のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】実施形態3に係る信号評価装置の構成を示すブロック図である。
【図13】図12の信号評価装置において2次元再生信号の品質評価値として推定ビットエラーレートを算出する処理の流れ示すフローチャートである。
【図14】推定ビットエラーレートと実測ビットエラーレートとの関係のシミュレーション結果を示す図である。
【図15】実施形態4に係る信号評価装置の構成を示すブロック図である。
【図16】2次元ビタビ復号のトレリス線図を示す図である。
【図17】従来のホログラムメモリ記録再生装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0165】
1 ホログラムメモリ再生装置
2 2次元イコライザ
3、30、31、32 信号評価装置
4 2次元SAM検出回路(ビタビ復号手段)
5 テストビットメモリ
6 PRフィルタ
7 2次元SAM検出回路(理想パスメトリック差生成手段)
8、14 値範囲識別回路(パスメトリック差群判定手段)
9、15 平均値・標準偏差演算回路(品質評価手段、統計値算出手段)
10 割算器(品質評価手段、品質評価値算出手段)
11 2次元ビタビ復号回路
12 パス選択回路
13 減算器
16 推定BER計算回路(品質評価手段、品質評価値算出手段)
40、41 理想信号生成部(理想信号生成手段)
45 抽出部(抽出手段、第1抽出手段)
46 抽出部(抽出手段)
47 フラグマップメモリ(格納部)
48 抽出部(第2抽出手段)
50、51 品質評価回路(品質評価手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムメモリ再生信号などの2次元信号をビタビ復号する装置において、2次元信号の信号品質を評価する信号評価装置、信号評価方法、信号評価プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホログラフィを用いて情報を2次元的に、すなわちページデータとして記録し再生するホログラムメモリが、次世代の高密度記録再生システムとして脚光を浴びつつある。図17に示すように、このシステムでは、情報データを記録する場合には、複数の画素よりなる空間光変調器60(例えば液晶パネルなど)を用いて、記録すべき情報データに基づいて記録信号光を空間光変調し、レンズ61を通した記録信号光とコヒーレントな記録参照光とを干渉させることにより2次元的な干渉縞を生成し、この干渉縞により形成される像を2次元情報としてホログラム媒体62に記録する。ホログラム媒体62としては、ニオブ酸リチウムに代表される無機系のフォトリフラクティブ結晶を用いた書き換え型媒体や、有機高分子材料であるフォトポリマーを用いた追記型媒体がある。
【0003】
一方、記録された干渉縞をホログラム媒体62から読み出すことにより情報データを再生する場合には、ホログラム媒体62に対して記録参照光と同じ入射角度にて再生参照光を照射して生成される反射光あるいは透過光を、レンズ63を通して複数の画素を有する受光素子64(例えばCCDなど)で受光して再生信号を生成し、生成された再生信号を用いて元の情報データを再生する。このように2次元のページデータ単位で再生が行われるため、1次元で再生を行う従来の光ディスクよりも再生速度を大幅に向上することが可能となる。
【0004】
ところで、ホログラムメモリシステムにおいては、その記録過程及び再生過程において種々の雑音が混入する(特に、記録媒体の不均質性に起因して雑音が発生する場合が多い)ことがあり、この雑音の影響で信号品質が悪化する。また、隣接する画素からの再生信号の影響、すなわち画素間干渉の発生もあり、これによっても信号品質が悪化する。
【0005】
そこで従来、雑音および画素間干渉の影響を低減して、正確に情報を再生する手法が検討されている。なかでも、受光素子から出力される再生信号をビタビ復号する手法が研究されている。
【0006】
特許文献1には、判定帰還ビタビ復号法が開示されている。この方法はビタビ復号の一手法であり、Decision Feedback Viterbi Algorithmと呼ばれる。
【0007】
一方、1次元的な再生信号をビタビ復号するシステムとして、ハードディスクや光ディスクなどがある。このようなシステムでは、再生信号の品質を評価するための評価値として、SAM(Sequenced Amplitude Margin)と呼ばれる値が提案されている。SAM値そのものは再生信号の局所的な品質を判断するのに用いることができるが、再生信号全体の品質を評価するためにはSAM値の度数分布に基づいて判断する必要がある。1次元の再生信号の場合、SAM値の度数分布は複数の離散的な理想SAM値を平均値とする正規分布が合わさった形状となる。また、理想SAM値とは、想定するパーシャルレスポンス(PR)特性の理想波形信号について求めたSAM値のことである。この複数の正規分布のうち、エラー発生の原因となりやすいもの、すなわち理想SAM値が小さいものだけを分類して取り出した上で、正規分布の確率密度分布関数の特性に基づいて平均値と標準偏差の比などエラーレートと理論的に同等な品質評価値を算出したり(特許文献2、3)、推定エラーレートを算出する(特許文献4)手法が提案されている。
【特許文献1】米国特許第5、740、184号公報(1998年4月14日発行)
【特許文献2】特開平10−21651号公報(公開日1998年1月23日)
【特許文献3】特開2003−141823号公報(公開日2003年5月16日)
【特許文献4】特開2003−272304号公報(公開日2003年9月26日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上説明したように、1次元の再生信号をビタビ復号するシステムにおいては、再生信号のエラーレートと同等な信号品質評価値をSAM値の度数分布から算出する手法が提案されている。しかし、2次元信号のSAM値に基づいてエラーレートと同等な信号品質評価値を算出する手法として、上記特許文献2から4のような従来手法をそのまま適用することは、下記の問題により不可能であった。
【0009】
特許文献2から4はいずれも、1次元の再生信号をビタビ復号するシステムであり、特にエラーを起こしやすい特定パターン(すなわち、値の小さい特定の理想SAM値に対応するパターン)を予め調べ上げておき、記録ビットからこの特定パターンを検出する構成が必須である。これらの特定パターンの種類は数種類から多くても数十種類であり、対応する理想SAM値の種類も1種類から多くても3種類程度であった。
【0010】
一方、トレリス線図が1次元に比べて複雑である2次元のビタビ復号におけるSAM値の場合、特にエラーを起こしやすい特定パターンの種類が非常に多くなるため、特定パターンを検出する構成を装置で実現しようとすると、回路規模が極めて大規模なものとなってしまうため、現実的には不可能である。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、2次元再生信号をビタビ復号する際、その信号品質を信頼性高く評価することができる、エラーレートと同等な評価値を算出する信号評価装置および信号評価方法、信号評価プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る信号評価装置は、上記課題を解決するために、入力信号の品質評価値を出力する信号評価装置において、前記入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号手段と、前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出されたパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価手段と、を備えることを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係る信号評価方法は、上記課題を解決するために、入力信号の品質評価値を出力する信号評価方法において、前記入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号ステップと、前記ビタビ復号ステップにて出力したパスメトリック差から、該パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップにて抽出したパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価ステップと、を含むことを特徴としている。
【0014】
ここで、所定のパーシャルレスポンス特性とは、前記理想パスメトリック差を算出するために使用され、例えば、3行3列の行列で表される2次元インパルス応答として表現される。
【0015】
また、所定の値範囲とは、想定するパーシャルレスポンス特性に対して定める所定値であり、前記理想パスメトリック差が属する群に分類するための範囲を規定するものである。
【0016】
これにより、前記抽出手段は、ビタビ復号手段によりビタビ復号された入力信号であるパスメトリック差のうち、前記抽出した理想パスメトリック差に対応するパスメトリック差の群のみを抽出することができる。このため、前記品質評価手段は、前記ビタビ復号手段によりビタビ復号されたパスメトリック差のうち、前記抽出手段により抽出された理想パスメトリック差に対応するパスメトリック差の群の品質評価値を算出することができる。
【0017】
すなわち、上記品質評価値は、上記入力信号であるパスメトリック差のうち、上記所定の値範囲に属するパスメトリック差のみから算出される。
【0018】
このため、上記品質評価値を算出するために、上記入力信号であるパスメトリック差すべてを演算の対象とする必要がない。
【0019】
したがって、2次元再生信号の記録再生に用いられる記録媒体や記録装置や再生装置などの性能を信頼性を維持しつつ、効率よく評価できるようになり、出荷前の製品の合否判定や各種調整を適切に行うことができるようになる。
【0020】
また、本発明に係る信号評価装置は、前記品質評価手段が、前記抽出されたパスメトリック差の群の度数分布の広がりの程度を表す統計値を算出し、該統計値から前記入力信号の品質評価値を算出することが好ましい。
【0021】
前記度数分布の広がりの程度を表す統計値は、上記入力信号の品質評価値と相関が強い。従って、前記品質評価手段は、信頼性を維持しつつ、効率よく前記入力信号の品質評価値を算出することができる。
【0022】
また、本発明に係る信号評価装置は、前記品質評価手段が、前記統計値として、前記抽出されたパスメトリック差の群の標準偏差を算出し、前記品質評価値として、前記標準偏差と、前記抽出されたパスメトリック差の群の平均値との比を算出することが好ましい。
【0023】
これにより、入力信号のパスメトリック差の度数分布の平均値と標準偏差に基づいてエラーレートと理論的に対応する品質評価値を算出することができるようになる。
【0024】
また、本発明に係る信号評価装置は、前記品質評価手段が、前記統計値として、前記抽出されたパスメトリック差の群の標準偏差を算出し、前記品質評価値として、前記標準偏差と、所定の定数値との比を算出することが好ましい。
【0025】
所定の定数値とは、任意で設定することができるが、例えば、対応する群の理想パスメトリック差の平均値を予め求めておいて用いることができる。これにより、平均値を求める機能を省略することができる。
【0026】
また、本発明に係る信号評価装置は、上記課題を解決するために、入力信号の品質評価値を出力する信号評価装置において、前記入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号手段と、前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の第1の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する第1抽出手段と、前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が前記第1の値範囲とは異なる所定の第2の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する第2抽出手段と、前記第1および第2抽出手段によってそれぞれ抽出されたパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価手段と、を備えることを特徴としている。
【0027】
これにより、上記品質評価手段は、第1の値範囲に属するパスメトリック差と、第2の値範囲に属するパスメトリック差とから上記品質評価値を算出することになる。このため、第1の値範囲に属するパスメトリック差のみから上記品質評価値を算出する場合と比較して、より正確に品質評価値を算出することができる。
【0028】
また、本発明に係る信号評価装置は、上記入力信号と対応付けられた理想信号を上記入力信号と対応するテストビットを、上記ビタビ復号手段において想定されたパーシャルレスポンス特性に従ってパーシャルレスポンス特性理想波形信号に変換する理想信号生成手段と、前記理想信号生成手段によって変換された前記パーシャルレスポンス特性理想波形信号に前記パーシャルレスポンス特性に従ってビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差である前記理想パスメトリック差を生成する理想パスメトリック差生成手段と、を備えていることが好ましい。
【0029】
これにより、2次元信号に対応する理想SAM値を確実に特定して、2次元信号のパスメトリック差の度数分布を理想SAM値毎に正確に分類することができる。これにより、正確な評価値を算出できる可能性をより高めることができる。
【0030】
また、本発明に係る信号評価装置は、前記ビタビ復号手段が、前記パスメトリック差に対応する復号ビットを、前記パスメトリック差とともに出力し、上記入力信号と対応する前記復号ビットを、上記ビタビ復号手段において想定されたパーシャルレスポンス特性に従ってパーシャルレスポンス特性理想波形信号に変換する理想信号生成手段と、前記理想信号生成手段によって変換された前記パーシャルレスポンス特性理想波形信号に前記パーシャルレスポンス特性に従ってビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差である前記理想パスメトリック差を生成する理想パスメトリック差生成手段と、を備えていることが好ましい。
【0031】
ここで、復号ビットは、前記ビタビ復号手段において、入力信号に対してビタビ復号を行う際、正解パスのパスメトリックを選択することに使われるものである。
【0032】
これにより、2次元信号に対応する理想SAM値を特定するために、別途、2次元信号に対応するビットを記憶するメモリなどを用意して、2次元信号の再生のタイミングに合わせて、それらのビットを読み出す仕組みを用意する必要がないため、簡易な構成によって2次元信号の品質評価値を算出できるようになる。
【0033】
なお、この場合、2次元信号と理想SAM値との対応づけが誤ってなされる可能性はあるが、その割合はほぼエラーレートに一致しており非常に小さく通常は10−2以下であるため、平均や標準偏差などの算出結果に与える影響は極めて微小である。したがって、最終的に算出されるエラーレートなどの品質評価値に含まれる誤差は、ほとんど無視できるほど小さい。
【0034】
また、本発明に係る信号評価装置は、前記抽出手段が、前記ビタビ復号手段から出力されるパスメトリック差に対応付けて、該パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するか否かを示すフラグマップを予め格納した格納部を備え、前記フラグマップに基づいて、前記ビタビ復号手段から出力されたパスメトリック差を抽出するか否かを決定することが好ましい。
【0035】
これにより、2次元信号に対応する理想SAM値を確実に特定して、2次元信号のパスメトリック差の度数分布を理想SAM値毎に正確に分類することができる。これにより、正確な評価値を算出できる可能性をより高めることができる効果を奏する。更に、理想SAM値を生成するためのビタビ復号回路を別途設ける必要がないため、非常に簡易な構成によって実現することが可能となる効果を奏する。
【0036】
なお、上記は、コンピュータによって実現してもよい。この場合、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記をコンピュータにおいて実現するビタビ復号プログラム、およびそのビタビ復号プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明に係る信号評価装置は、入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号手段と、前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出されたパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価手段と、を備える構成である。
【0038】
また、本発明に係る信号評価方法は、入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと、誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号ステップと、前記ビタビ復号ステップから出力されたパスメトリック差から、該パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップによって抽出されたパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価ステップと、を備える方法である。
【0039】
それゆえ、抽出された所定の値範囲に属するパスメトリック差のみから前記入力信号の品質評価値を算出することができるので、2次元再生信号をビタビ復号する際、その信号品質を信頼性高く評価することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1から図11に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係るホログラムメモリ再生信号評価システム20の構成を示すブロック図である。ホログラムメモリ再生信号評価システム20は、ホログラムメモリ再生装置1、2次元イコライザ2、および信号評価装置3によって構成される。
【0041】
なお、図1に示す信号評価装置3は、特許請求の範囲に記載されている信号評価装置に対応している。
【0042】
信号評価装置3は、2次元SAM検出回路(ビタビ復号手段)4、理想信号生成部(理想信号生成手段)40、2次元SAM検出回路(理想パスメトリック差生成手段)7、抽出部(抽出手段、第1抽出手段)45、品質評価回路(品質評価手段)50を備えている。
【0043】
そして、理想信号生成部40は、テストビットメモリ5、PRフィルタ6とを備えている。また、抽出部45は、値範囲識別回路8と、平均値・標準偏差演算回路9とを備えている。そして、品質評価回路50は、平均値・標準偏差演算回路9と、割算器10とを備えている。
【0044】
さて、図1に示すホログラムメモリ再生信号評価システム20における再生および信号評価の動作について図2を用いて説明すると以下の通りである。図2は本実施形態1に係るホログラムメモリ再生信号評価システム20の処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
ステップS1においては、ホログラムメモリ再生装置1は既知のテストビットが記録されたホログラム媒体を再生する。すなわち、既知のテストビットに基づいて再生信号(入力信号)を出力する。ホログラムメモリ再生装置1における具体的な再生動作、すなわち、ホログラム媒体に再生参照光が照射されて受光素子から2次元の再生信号が出力される動作については、背景技術において説明されたとおりであり、また、その動作は本発明とは直接関係しないので詳細な説明は省略する。
【0046】
前記のテストビットとしては、信号品質の評価値を求めるために十分なサンプル数を持ち、評価を適切に行えるように偏りのないパターン(通常はランダムパターン)が選ばれる。また、テストビットは予めホログラム媒体に記録されていてもよいし、信号品質の評価を行う前にホログラム媒体に記録するようにしてもよい。なお、テストビットがホログラムメモリの規格書で規定されていれば、異なるメーカーの装置間で共通のテストビットを用いることができるため、互換性が高まるなどの効果がある。
【0047】
なお、テストビットメモリ5には、ホログラムメモリ再生装置1によって再生されるテストビットと同一のビットが記憶されている。そして、テストビットメモリ5にはビットを記憶するメモリなどを用意しておき、2次元再生信号の再生のタイミングに合わせて、それらのビットを読み出す。
【0048】
また、テストビットメモリ5の代わりに線形シフトレジスタを利用した擬似ランダムパターン発生回路を用いる構成にしてもよい。これによってハード量を小さくすることができる。
【0049】
また、ステップS1においては、ホログラムメモリ再生装置1から出力される2次元再生信号は、2次元イコライザ2によって波形等化が施される。2次元イコライザ2は2次元FIR(Finite Impulse Response)フィルタなどで構成され、波形間干渉の除去などを行い、2次元再生信号を想定PR特性に近づける。
【0050】
以上が、ステップS1におけるホログラムメモリ再生信号評価システム20の再生処理である。
【0051】
次に、ステップS2において、2次元SAM検出回路4は、2次元再生信号(入力信号)に対してビタビ復号を行い、ビット毎のSAM値を出力する。ステップS2における2次元SAM検出回路4の動作の具体的な説明は後述する。
【0052】
次に、ステップS3において、2次元SAM検出回路7は、ステップS2で出力されるSAM値に対応する理想SAM値を出力する。具体的な処理を説明する。2次元再生信号に対応するテストビットがテストビットメモリ5から読み出されて、PRフィルタ6を通過することによってPR理想波形(パーシャルレスポンス特性理想波形信号)が出力される。PRフィルタ6は、2次元SAM検出回路4、7において想定しているPR特性を持つFIRフィルタである。このPR理想波形に対して2次元SAM検出回路7によりビタビ復号が行われ、理想SAM値が出力される。2次元SAM検出回路7の動作説明については、2次元SAM検出回路4と同様であるので、併せて後述する。
【0053】
次に、ステップS4において、理想SAM値が所定範囲内、すなわち、V1以上V2未満(所定の値範囲)であるか否かが値範囲識別回路8により判定される。V1、V2は想定するPR特性毎に定まる所定値であり、理想SAM値を複数の群に分類するための範囲を規定する。図3に理想SAM値の度数分布の一例を示す。理想SAM値は非常に多くの種類を持っているが、幾つかの群に分類できることが分かる。SAM値<0とビタビ復号エラービット発生が対応するという性質から、値の小さな理想SAM値に対応する再生信号はエラーを起こす確率が高いと言えるため、図3の例の場合、群1(所定の第1の値範囲)の理想SAM値に対応する再生信号についてのSAM値を取り出して度数分布を作成すれば、エラーレートとの対応が高い評価を行うことができる。図3の場合、V1=3000、V2=5000程度に設定しておけば、群1の88種類の理想SAM値のみを取り出すことができる。
【0054】
ステップS4で理想SAM値が所定範囲内であると判定された場合、ステップS5に進んで、対応するSAM値が平均値・標準偏差演算回路9での演算対象とされる。具体的には、SAM値と、仮平均値μ’に対するSAM値の二乗誤差が、それぞれ平均値μと仮標準偏差σ’の算出のために累積加算されていく。一方、ステップS4で理想SAM値が所定範囲外であると判定された場合は、ステップS5の処理はスキップされる。このように、パターンに基づいて判別をするのではなく、対応する理想SAM値の範囲に基づいて特定の群に属するSAM値を判別し、取り出すことができる。
【0055】
次に、ステップS6にて、全テストビットに対するSAM値の出力が終了したか否かが判定される。未終了の場合はステップS2に戻るため、全テストビットについて終了するまでステップS2からS6の処理が繰り返される。
【0056】
ステップS6にて終了判定がなされると、ステップS7に進む。ステップS7では、平均値・標準偏差演算回路9がμとσを算出し、割算器10によってこれらの比σ/μが算出される。平均値μは、ステップS5で累積加算されたSAM値の合計を個数で割算することによって求められる。標準偏差σは、ステップS5で累積加算された仮平均値に対するSAM値の二乗誤差の合計を個数で割算して求めた仮標準偏差σ’を、正確に算出された平均値μによって式(1)で補正することによって求められる。なお、仮平均値μ’をある程度正確に見積もることができるならば、真の平均値μとμ’の誤差が小さくなりσ≒σ’となるので、仮標準偏差σ’を標準偏差σと見なして式(1)の補正を省略することによって、回路を簡略化してもよい。
【0057】
【数1】
【0058】
以上の処理によって、最終的に、ホログラムメモリの再生信号の信号品質評価値としてσ/μを得ることができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、テストビットメモリ5、PRフィルタ6、2次元SAM検出回路7、値範囲識別回路8を用いて、リアルタイムに理想SAM値を求めながらその値が所定範囲であるか否かを判定して特定の群に属するSAM値を取り出す構成であった。しかし、所定のテストビットを用いる場合、事前に理想SAM値を求めておいて、各再生信号が特定の群に属するSAM値に対応するか否かを示すフラグマップを予め用意し、再生時にはこのフラグマップに基づいて特定の群に属するSAM値を取り出す構成としてもよい。
【0060】
図4(c)にフラグマップの一例を示す。図4(a)のテストビットの理想SAM値が図4(b)のように求められたとする。図3のようにV1=3000、V2=5000程度に設定すると、フラグマップは図4(c)のように決まる。フラグの意味は、「1」が群1に属することを示し、「0」が群1に属さないことを示す。実際の信号評価装置では図4(c)のフラグマップだけあれば、上記ステップS4で行われる判定と同等の判定が可能となる。従って、テストビットメモリ5、PRフィルタ6、2次元SAM検出回路7、値範囲識別回路8が不要となり、代わりにフラグマップを記憶するフラグマップメモリ47(格納部)が必要となる。そして、フラグマップメモリ47は、2次元再生信号の再生のタイミングに合わせて、上記フラグマップを読み出す。
【0061】
図5にフラグマップメモリ47を備えた信号評価装置30の一例を示す。信号評価装置30は、2次元SAM検出回路4と、抽出部46、品質評価回路50とを備えている。
【0062】
抽出部46は、平均値・標準偏差演算回路9と、フラグマップメモリ47とを備えている。また、品質評価回路50は平均値・標準偏差演算回路9と割算器10とを備えている。
【0063】
フラグマップのデータ量はテストビットのデータ量と同じであるので、PRフィルタ6、2次元SAM検出回路7、値範囲識別回路8の分だけ回路規模を削減できる。特に2次元SAM検出回路7は回路規模が大きいので、削減効果は大きなものとなる。更に、フラグマップをメモリに記憶する構成の代わりに、フラグマップ自体をホログラム媒体にデータとして記録しておき、最初にこれを再生してフラグマップを得る構成としてもよい。
【0064】
次に、本実施形態に係る信号評価装置3によって、ビタビ復号におけるエラーレートに対応する信号品質評価値を求めることができる理由について詳細に説明する。図6(a)は、ステップS4にて取り出された群1の理想SAM値に対応するSAM値の度数分布の一例を示す図である。3つの度数分布は再生信号の品質が異なり、ビットエラーレート(BER)がそれぞれ1E−5以下、1E−4、5E−3の場合を示している。図6(a)から分かるように、いずれの度数分布も正規分布に近い分布形状を持っている。
【0065】
統計学によれば、平均値μと標準偏差σの正規分布においてx以下となる確率(累積相対度数)をF(x)とすると、標準正規分布に対する累積密度関数Φ(z)(式(2))とF(x)との間には、式(3)の関係が成立する。
【0066】
【数2】
【0067】
【数3】
【0068】
さて、SAM値<0とビタビ復号エラービット発生が対応するという性質から、SAM値の度数分布において0より小さい部分の累積相対度数はエラーレートとの相関が非常に強い。図6(a)から分かるように、SAM値がほぼ正規分布に近い分布形状を持っていることを考え合わせると、エラーレートは式(3)を用いてF(0)=Φ(−μ/σ)としてかなり正確に推測することができる。
【0069】
以上より、本実施形態に係るホログラムメモリ再生信号評価システム20によって算出されるσ/μ(標準偏差と平均値の比)がビタビ復号におけるエラーレートと原理的に対応することが理論的に説明された。
【0070】
以下では、2次元SAM検出回路4の動作について詳細に説明する(2次元SAM検出回路7の動作も全く同様である)。
【0071】
(2次元SAM検出回路4)
2次元SAM検出回路4は、入力された2次元再生信号に対して、判定帰還ビタビ復号を適用する。そこで、2次元SAM検出回路4が実行する判定帰還ビタビ復号について、以下に説明する。
【0072】
この方法では、ページデータの横方向すなわち行方向に沿って、再生信号をビタビ復号する。具体的には、1行ずつ復号ビットを決定する処理を、1行ずつ下すなわち列方向にずらしながら行う。その際、判定帰還を行う。すなわち、直前の復号結果(フィードバック行)を、次行のビタビ復号に利用する。
【0073】
判定帰還ビタビ復号法の概要を、図7および図8を参照して以下に説明する。図7は、判定帰還ビタビ復号法における想定PR特性のインパルス応答を示す図である。図8は、判定帰還ビタビ復号法を表現するトレリス線図である。
【0074】
想定PR特性を、図7に示す3行3列の行列で表される2次元インパルス応答hとして表現する。トレリス状態は、2行2列の行列として定義される。トレリス線図は図8に示すように表現される。
【0075】
なお、「2次元インパルス応答」とは、単位インパルス信号を線形システムに入力したときに当該線形システムが出力する出力信号を意味する。単位インパルス信号とは、(a)1ビットのみの信号レベルが1であり、(b)それ以外のビットの信号レベルが全て0であるような2次元ビット行列を意味する。
【0076】
図7の2次元インパルス応答hでは、信号レベルが中心の画素に生じている。それだけでなく、周辺の隣接画素においても生じている。すなわち、画素間干渉の発生が想定されている。
【0077】
(トレリス状態)
トレリス状態を[k、l;m、n]で表記すると、k、l、m、およびnは、いずれも1ビットの値を取る。すなわち、いずれも0または1である。このことから、2の4乗=16種類のトレリス状態が存在することになる。図8に示したように、トレリス状態から次のトレリス状態へのブランチは、トレリス状態ごとに4本ずつある。同じく図8に示したように、トレリス状態に入力するブランチも、トレリス状態ごとに4本ずつある。
【0078】
各ブランチが想定する想定波形レベルは、ブランチに繋がる2つのトレリス状態を結合した2行3列の行列に、その一つ上のフィードバック行を結合させた3行3列の行列によって決定される。フィードバック行の詳細については、後述する。
【0079】
(想定波形レベルの一例)
以下に、[0、0;0、1]から[0、1;1、0]に繋がるブランチについて、一例として説明する。このブランチが想定するレベルは、その一つ上のフィードバック行が[1、1、0]であったとすると、行列[1、1、0;0、0、1;0、1、0]によって決定される。このとき、インパルス応答hと、行列[1、1、0;0、0、1;0、1、0]とを2次元畳み込み演算すると、0.31になる。この値が、このブランチの想定波形レベルである。
【0080】
判定帰還ビタビ復号処理は、ページデータにおける左から右に向かって、行方向に行われる。再生信号を行方向に走査することによって得られる波形を再生信号波形とすると、再生信号波形のレベルと、各ブランチの想定波形レベルとの二乗誤差は、ブランチメトリックと呼ばれる。すなわちブランチメトリックは、ブランチごとの値となる。また、各トレリス状態に至るパスの累積ブランチメトリックは、パスメトリックと呼ばれる。
【0081】
判定帰還ビタビ復号法では、トレリス状態に入力する4本のパスのうちパスメトリックが最小のものを、生き残りパスとして残す。この処理をトレリス状態ごとに行い、かつ、行方向に繰り返す。これにより、所定時間だけ前(左方向)に遡れば、生き残りパスが1本に収束している。そこでこの生き残りパスを正解パスとして決定する。以上の処理に要する所定時間は、パスメモリ長と呼ばれる。
【0082】
以上の過程は、従来の1次元ビタビ復号法と原理的に同じである。そこで、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0083】
(正解パスの取り扱い)
ただし判定帰還ビタビ復号法は、正解パスの取り扱いが1次元ビタビ復号と異なる。すなわち1次元ビタビ復号だと、正解パスがビット系列そのものに対応する。一方、2次元ビタビ復号では、正解パスが行列になる。したがって、正解パスは複数のビット行に対応する。以上の例では2行である。
【0084】
これら2行のビット行のうち、2行目は、3行目以降のビット行からの影響が考慮されていない。すなわち画素間干渉の影響が部分的にしか考慮されてない。これにより信頼性
に乏しい。一方、1行目については、上下左右からの波形干渉が、全て考慮に入れられてビタビ復号されている。そこで1行目のみを復号ビットとして出力する。
【0085】
行方向のビタビ復号によって、1行分のビット行が得られる。この処理を1行ずつ列方向(下方向)にずらしながら繰り返す。これにより、2次元再生信号の全体を復号する。
【0086】
(判定帰還の導入)
ここに、判定帰還の考え方を導入する。判定帰還は、1つ上の行の復号結果をフィードバック行として、次の行のビタビ復号に反映させる手法である。具体的には以上に説明した通りである。すなわち1つ上の行の復号結果を、次の行のブランチの想定波形レベルを決める処理に用いる。これにより、復号結果を反映させる。
【0087】
判定帰還の手順について、以下に、さらに詳しく説明する。最上端の行の、さらに上の行は「0」だとみなせる。そこで、最上行からの再生信号に基づいて情報を再生するときには、フィードバック行を全て0とする。
【0088】
次に、上から2行目からの再生信号に基づいて情報を再生する。このとき、1行目(すなわち最上端の行)においてビット行が正確に復号されたと仮定する。そこでこれをフィードバック行として、2行目の復号に用いる。
【0089】
さらに、上から3行目の行からの再生信号に基づいて再生する。このとき、2行目においてビット行が正確に復号されたと仮定する。そこでこれをフィードバック行として、3行目の復号に用いる。
【0090】
以上のように、判定帰還ビタビ復号法では、現在の復号対象行の一つ上の行において、復号処理が正確になされたと仮定する。そこで一つ上の行の影響を考慮に入れつつ、列方向の判定帰還を行う。同時に、現在の行からの再生信号をビタビ復号する。すなわち列方向の画素間干渉の影響がより反映されたビタビ復号処理を実行する。
【0091】
以上の処理によって、従来の1次元ビタビ復号処理、すなわち行方向のみの再生波形の変化を用いる処理をそのまま適用する処理に比べて、ビタビ復号をより正確に実行できる。
【0092】
(2次元SAM検出回路4の構成)
2次元SAM検出回路4の構成について、図9を参照して以下に説明する。この図に示すように、2次元SAM検出回路4は、2次元ビタビ復号回路11、パス選択回路12、および減算器13を備えている。
【0093】
(2次元ビタビ復号回路11)
2次元ビタビ復号回路11は、2次元再生信号を2次元ビタビ復号する。2次元再生信号における画素間干渉は、図7に示す3行3列の行列で表される、2次元インパルス応答hとして想定されている。また、トレリス状態は2行2列の行列として定義されている。
【0094】
2次元ビタビ復号回路11は、自己復号ビットに基づき正解トレリス状態を決定する。また、決定した正解トレリス状態に入力する4本のパスのパスメトリックを算出する。こうして、算出した4つのパスメトリックを、パス選択回路12に出力する。
【0095】
(パス選択回路12)
パス選択回路12は、入力された4つのパスメトリックから、正解パスのパスメトリックを選択する。このとき、2次元ビタビ復号回路11から入力される復号ビットに基づき、選択するパスメトリックを決定する。さらに、選択した正解パスのパスメトリックを、減算器13に出力する。
【0096】
パス選択回路12は、さらに、入力された4つのパスメトリックのうち、正解パスと異なる復号対象行を持つ誤りパスのうち、パスメトリックが最小のものを選択する。このときも、2次元ビタビ復号回路11から入力される復号ビットに基づき、選択する誤りパスを決定する。パス選択回路12は、このとき選択したパスメトリックを、誤りパスのパスメトリックとして、正解パスのパスメトリックと同様に減算器13に出力する。
【0097】
(減算器13)
減算器13は、入力された誤りパスのパスメトリックから、入力された正解パスのパスメトリックを減算する。これにより、SAM値を算出する。
【0098】
(トレリス線図の詳細)
本実施形態では、トレリス線図は、2次元ビタビ復号回路11の動作を表現する。このトレリス線図は、図8に示すトレリス線図と同様である。たとえば、想定応答行列hにおける画素間干渉のビット幅は、3である。また、このトレリス線図には、判定帰還ビタビ復号法が適用されている。これにより、トレリス状態が2行2列の行列として定義されている。
【0099】
2次元ビタビ復号回路11は、復号対象行の一つ上の行に、フィードバック行を用いることができる。これにより、行の幅は3−1=2となる。2行2列は合計で4ビットに相当する。そのためトレリス状態数は、2の4乗=16通りある。また、トレリス状態に入力するブランチは、トレリス状態ごとにいずれも4本である。さらに、トレリス状態から出力するブランチも、トレリス状態ごとにいずれも4本である。
【0100】
(2次元SAM検出回路4の動作)
2次元SAM検出回路4の動作について説明する。
【0101】
2次元ビタビ復号回路11は、図8のトレリス線図に基づいて、2次元再生信号を行方向にビタビ復号する。ここで、入力された記録ビットの2次元再生信号をxとする。また、2次元再生信号に対応する想定波形レベルをwとする。このとき2次元ビタビ復号回路11は、xとwとの二乗誤差(x−w)2を、ブランチメトリックとして算出する。
【0102】
さらに、トレリス状態ごとに算出したブランチメトリックを、ビタビ復号を始めてから、あるトレリス状態にパスが至る間での期間、累積する。これにより、トレリス状態ごとのブランチメトリックを累積した値である、パスメトリックを算出する。2次元ビタビ復号回路11は、算出したパスメトリックに基づき生き残りパスを決定する。この復号動作と同時に、正解トレリス状態に入力する4本のパスの、パスメトリックをそれぞれ算出する。また、算出した4つのパスメトリックを、パス選択回路12に出力する。
【0103】
(パスメトリック算出の具体例)
以上の具体例を、図10に示すトレリス線図の遷移の一例を用いて説明する。図10は、第m行・第n列の復号ビットが決定されるトレリス状態の遷移を示す図である。
【0104】
図10において、2次元ビタビ復号回路11から出力された復号ビットが、以下の状態であるとする。
【0105】
b(m、n−2)=0
b(m、n−1)=0
b(m、n)=1
b(m+1、n−2)=0
b(m+1、n−1)=0
b(m+1、n)=0
このとき、第m行・第n列における正解トレリス状態は、[0、1;0、0]となる。したがって2次元ビタビ復号回路11は、このトレリス状態[0、1;0、0]に入力する4本のパスのパスメトリックを出力する。具体的には、パスメトリックP0(n)、P1(n)、P2(n)、P3(n)を、パス選択回路12に出力する。
【0106】
パス選択回路12には、パスメトリックP0(n)〜P3(n)が入力される。同時に、2次元ビタビ復号回路11から、復号ビットb(m、n−2)、b(m、n−1)、b(m、n)、b(m+1、n−2)、b(m+1、n−1)、b(m+1、n)が入力される。パス選択回路12は、入力された各復号ビットに基づき、正解パスのパスメトリックを選択する。さらに、正解パスと異なる復号対象行を持つ誤りパスの中から、パスメトリックが最小の誤りパスを選択する。
【0107】
図10の例の場合、正解パスは、トレリス状態[0、0;0、0]から[0、1;0、0]の遷移に対応するパスである。このときパスメトリックはP0(n)である。誤りパスとして、
[0、0;1、0]から[0、1;0、0]へのパス
[1、0;0、0]から[0、1;0、0]へのパス
[1、0;1、0]から[0、1;0、0]へのパス
の3つが存在する。
【0108】
これらのうち、2番目と3番目の誤りパスは、正解パスの復号対象行[0、0、1]と異なる復号対象行[1、0、1]を持っている。そこでパス選択回路12は、P2(n)およびP3(n)のうち、値が小さい方を誤りパスのパスメトリックとして選択する。たとえばP2(n)<P3(n)であったとする。この場合、パス選択回路12は、正解パスのパスメトリックとしてP0(n)を選択する。さらに、誤りパスのパスメトリックとしてP2(n)を選択する。パス選択回路12は、選択したP0(n)およびP2(n)をいずれも減算器13に出力する。
【0109】
(SAM値の算出)
減算器13は、入力された誤りパスのパスメトリックから、入力された正解パスのパスメトリックを差し引いて出力する。たとえば、減算器13にP0(n)およびP2(n)が入力されたとする。このとき減算器13は、SAM値としてP2(n)−P0(n)を算出し、出力する。
【0110】
(2次元SAM検出回路7)
2次元SAM検出回路7の動作は2次元SAM検出回路4と全く同様である。但し、入力される信号が異なり、2次元SAM検出回路4ではホログラム媒体の再生信号が入力されるが、2次元SAM検出回路7ではPR理想波形が入力される。従って、2次元SAM検出回路4からホログラム媒体の再生信号について求められたSAM値が出力されると同時に、2次元SAM検出回路7からはそれに対応する理想SAM値が出力される。
【0111】
本実施形態の信号評価装置3を、シミュレーションによって実装した。実装した信号評価装置3に、ノイズ量を変化させた256×256のテストビットの2次元再生信号を入力し、出力された信号品質評価値σ/μと、ビタビ復号結果のビットエラーレートとの関係を図11に示す。図11から、σ/μがビタビ復号結果のビットエラーレートと相関の強い信号品質評価値であることが確認できる。これより、出荷前の記録媒体のσ/μを評価して所定基準値以下の場合に合格と判定したり、記録装置や再生装置においてσ/μができるだけ小さくなるように各種調整を行うことで最適な調整を実現することが可能となる。
【0112】
〔実施形態2〕
実施形態1においては、2次元SAM値の度数分布を特定する統計値として平均値μと標準偏差σを測定し、これらの比σ/μを信号品質評価値としていた。しかし、エラーレートとの相関が特に強いのは度数分布の広がりを示す標準偏差σであり、平均値μは、再生信号の振幅が想定PR波形レベルに合うように適切に調節されていれば、ほとんど所定値(群1の理想SAM値の平均値)に近い値となる。したがって、実施形態1の平均値・標準偏差演算回路9から平均値μを求める機能を省略し、μの代わりに所定値M(予め群1の理想SAM値の平均値として求めた所定の定数値)を用いてσ/Mを信号品質評価値としてもよい。これは、光ディスクシステムにおいて一般的に用いられているジッタの定義に近いものである。ジッタは、再生波形のエッジゆらぎを標準偏差として求め、クロック時間T(所定値)で除算して規格化した評価値であり、しきい値検出方式におけるエラーレートと理論的に相関が強い。実施形態2の構成は回路を簡略化できる長所があるので、システム設計に応じて適切な構成を選べばよい。
【0113】
〔実施形態3〕
実施形態1においては、理想SAM値の複数の群のうち、最も0に近い群(図3の例では群1)のみを分類して、それに対応する2次元SAM値の度数分布を特定する統計値として平均値μと標準偏差σを測定し、これらの比σ/μを信号品質評価値としていた。実施形態3では、理想SAM値の最も0に近い群だけでなく複数の群に対応する度数分布についてそれぞれμとσを測定し、これらから推測ビットエラーレートを算出する構成について説明する。
【0114】
図12は、実施形態3に係る信号評価装置31の構成を示すブロック図である。実施形態1に係る信号評価装置3における構成要素と同等の機能を有する構成要素については同じ符号を与えて説明を省略する。
【0115】
信号評価装置31は、信号評価装置3の構成に加えて、抽出部(第2抽出手段)48を備えている。また、品質評価回路51を備えている。
【0116】
抽出部48は、値範囲識別回路14と、平均値・標準偏差演算回路15とを備えている。また、品質評価回路51は、平均値・標準偏差演算回路9と、平均値・標準偏差演算回路15と、推定BER計算回路16とを備えている。
【0117】
値範囲識別回路14は、値範囲識別回路8と同様の機能を持つが、識別する値の範囲が異なり、V2以上V3未満であるか否かを判定する。V2、V3は想定するPR特性毎に定まる所定値であり、図3の例で説明すると、群2(所定の第2の値範囲)の理想SAM値を分類するためにV2=5000、V3=7500程度に設定する。
【0118】
平均値・標準偏差演算回路15は機能としては平均値・標準偏差演算回路9と同様であり、値範囲識別回路14によって群2に属すると判定された理想SAM値に対応するSAM値の度数分布の平均値μ2と標準偏差σ2を算出する。
【0119】
推定BER計算回路16は、μ1、σ1、μ2、σ2から推定ビットエラーレート(入力信号の品質評価値)を算出する。算出方法については、後述する。
【0120】
なお、抽出部48は第2抽出手段、値範囲識別回路14はパスメトリック差群判定手段、平均値・標準偏差演算回路15は統計値算出手段、推定BER計算回路16は品質評価値算出手段にそれぞれ対応している。
【0121】
さて、図12に示した上記構成の信号評価装置31の動作を図12および図13を用いて説明すると以下の通りである。
【0122】
図13は、本実施形態3に係る信号評価装置31における処理の流れを示すフローチャートである。図2のフローチャートで示される実施形態1と同じ処理については詳細な説明を省略する。
【0123】
ステップS21において、既知のテストビットが記録されたホログラム媒体を再生して2次元再生信号が出力される。ここでの処理は、実施形態1において説明した図2のステップS1と同じである。
【0124】
次に、ステップS22において、2次元SAM検出回路4により2次元再生信号に対してビタビ復号が行われて、ビット毎のSAM値が出力される。ステップS22における2次元SAM検出回路4の動作は図2のステップS2と同じである。
【0125】
次に、ステップS23において、ステップS2で出力されるSAM値に対応する理想SAM値が出力される。この動作は図2のステップS3と同じである。
【0126】
次に、ステップS24において、値範囲識別回路8により理想SAM値がV1以上V2未満であるか否かが判定される。これにより、図3における群1の88種類の理想SAM値のみを取り出すことができる。
【0127】
ステップS24で理想SAM値がV1以上V2未満であると判定された場合、ステップS25に進んで、対応するSAM値が平均値・標準偏差演算回路9での演算対象とされる。ステップS25の処理が終われば、ステップS28に移る。一方、ステップS24で理想SAM値がV1以上V2未満の範囲にないと判定された場合は、ステップS26に移る。
【0128】
ステップS26では、値範囲識別回路14により理想SAM値がV2以上V3未満であるか否かが判定される。これにより、図3における群2の351種類の理想SAM値のみを取り出すことができる。
【0129】
ステップS26で理想SAM値がV2以上V3未満であると判定された場合、ステップS27に進んで、対応するSAM値が平均値・標準偏差演算回路15での演算対象とされる。一方、ステップS26で理想SAM値がV2以上V3未満の範囲にないと判定された場合は、ステップS28に移る。
【0130】
次に、ステップS28にて、全テストビットに対するSAM値の出力が終了したか否かが判定される。未終了の場合はステップS22に戻るため、全テストビットについて終了するまでステップS22からS28の処理が繰り返される。
【0131】
ステップS28にて終了判定がなされると、ステップS29に進む。ステップS29では、平均値・標準偏差演算回路9がμ1とσ1を、平均値・標準偏差演算回路15がμ2とσ2を、それぞれ算出し、推定BER計算回路16にて推定ビットエラーレートが求められる。
【0132】
以上の処理によって、最終的に、ホログラムメモリの再生信号の信号品質評価値として推定ビットエラーレートを得ることができる。
【0133】
ここで、本実施形態に係る信号評価装置31によって、ビタビ復号における推定ビットエラーレートを求めることができる理由について詳細に説明する。
【0134】
図6(a)はステップS24にて取り出された群1の理想SAM値に対応するSAM値の度数分布、図6(b)はステップS26にて取り出された群2の理想SAM値に対応するSAM値の度数分布、の一例を示す図である。3つの度数分布は再生信号の品質が異なり、BERがそれぞれ1E−5以下、1E−4、5E−3の場合を示している。図6(a)(b)から分かるように、群1、群2いずれの度数分布も正規分布に近い分布形状を持っている。
【0135】
実施形態1と同様の理論により、群1の度数分布においてSAM値<0となる累積相対度数はF1(0)=Φ(−μ1/σ1)によって推測できる。また、群2の度数分布においてSAM値<0となる累積相対度数はF2(0)=Φ(−μ2/σ2)によって推測できる。
【0136】
SAM値<0とビタビ復号エラービット発生が対応するという性質から、群1に属する理想SAM値に対応するパターンでのエラーレートはF1(0)に、群2に属する理想SAM値に対応するパターンでのエラーレートはF2(0)にほぼ一致する。従って、全てのパターン、言い換えると全てのビットについてのエラーレートはF1(0)とF2(0)を合算することによって推測することができる。
【0137】
厳密に言えば、図3の群3、群4、など全ての群に属する理想SAM値に対応するパターンでのエラーレートを合算する必要があるが、エラー発生は0に近い群に属するパターンにおけるものが支配的であるので、群1と群2のみについて合算することで、十分正確に推測することができると考えられる。
【0138】
また、厳密に言えば、1つのSAM値がマイナスとなる時にビタビ復号エラーが1ビットだけ発生するとは限らず、パターンによっては複数の復号エラービットを生じることもあり得るので、群1、群2に属する理想SAM値に対応する復号エラービット数の期待値を別途測定しておいて、F1(0)とF2(0)の合算時に係数として掛けることによって反映させれば、より正確に推測が可能となる。更に合算時には、群1、群2に属するパターンの出現確率を係数として掛ける必要がある。出現確率は、使用するテストビットについて事前に調べておいて定数として実装してもよいし、再生時に値範囲識別回路8、14によって出現度数をカウントするようにしてもよい。簡易的に群1と群2での復号エラービット数の期待値を共に1とし、群1のパターンの出現確率がP1、群2のパターンの出現確率がP2であるとすると、推定ビットエラーレートは式(4)によって算出される。
【0139】
推定ビットエラーレート = P1×F1(0)+P2×F2(0) (4)
本実施形態3の信号評価装置31を、シミュレーションによって実装した。実装した信号評価装置31に、ノイズ量を変化させた256×256のテストビットの2次元再生信号を入力し、出力された推定ビットエラーレートと、ビタビ復号結果の実測ビットエラーレートとの関係を図14に示す。図14から、推測ビットエラーレートと実測ビットエラーレートが非常によく一致していることが確認できる。
【0140】
なお、ノイズ量が小さい場合に推測ビットエラーレートと実測ビットエラーレートとの差が大きくなっている。これは、推測ビットエラーレートが、正規分布の自然な広がりにより0以下となる確率を求めている、すなわち自然なノイズに起因するエラーのみを推測しているのに対し、実測ビットエラーレートにはそれに加えてディフェクトなど不自然なノイズに起因するエラーも含まれているためである。
【0141】
通常、ディフェクトによるエラーは多くても数ビット程度なので、エラーレートが悪い状況では自然なノイズによるエラー数の方がはるかに多いため影響を無視できるが、エラーレートが良い状況では、自然なノイズによるエラーがほとんど無いため、ディフェクトによるエラーの影響が大きく出てくる。
【0142】
しかしながら、本来、再生信号品質はディフェクトの影響を除いて評価することが望ましいものである。また、このシミュレーションの例だとテストビット総数は65536ビットしかなく、1E−5以下のエラーレートは実測できない(エラー数0となる)ので、ある程度以上ノイズが少ない場合は信号品質の良し悪しが判別できなくなるが、推測ビットエラーレートなら非常に低いエラーレートも算出できる。したがって、記録装置や再生装置の各種調整などを推測ビットエラーレートに基づいて行えば、真に最適な調整を実現することが可能となる。
【0143】
〔実施形態4〕
実施形態1では、ホログラム媒体にあらかじめ所定のテストビットが記録されている。
【0144】
そしてホログラムメモリ再生装置1は、このテストビットを再生する。すなわち、ホログラム媒体には事前にテストビットを記録しておく必要がある。そのため次に示す2点の問題が生ずる。第1に、ホログラム媒体の利用効率が低くなる。第2に、実際の情報を記録したり再生したりすることによって生成した信号そのものの品質を、直接的に評価できない。
【0145】
本実施形態の信号評価装置32は、以上の2点の問題を、自らのビタビ復号結果をフィードバックして用いることによって回避する。
【0146】
図15は、信号評価装置32の構成を示すブロック図である。信号評価装置32と信号評価装置3とが異なる点を以下に記載する。すなわち、信号評価装置32は、テストビットメモリ5がなく、その代わりに2次元SAM検出回路4が復号ビットを出力する。そして、その復号ビットが理想信号生成部(理想信号生成手段)41に入力される。そして、理想信号生成部41はPRフィルタ6を含んでおり、前記復号ビットはPRフィルタ6を通過する。これにより、生成されたPR理想波形が2次元SAM検出回路7に入力される構成となっている点が信号評価装置3と異なる。PR理想波形の生成動作以外については、実施形態1で説明した信号評価装置3の動作と全く同一であるので、詳しい説明は省略する。
【0147】
この場合、2次元SAM検出回路4がビタビ復号エラーを起こすと、誤ったPR理想波形が生成され、結果として理想SAM値の群が誤分類されることになる。しかし、一般的に評価対象とする信号品質は悪くてもせいぜいエラーレート10−2台であり、その程度のエラーレートに対応して理想SAM値の群分類を誤ったとしても、平均値や標準偏差の算出結果に与える影響はごく微小であるため、最終的な信号品質評価値σ/μの算出結果に与える誤差はほとんど無視できるほどに小さいと言える。
【0148】
その一方で、このような構成とすることで、テストビットメモリ5を省略することができると共に、テストビットを予めホログラム媒体に記録しておいたり、信号品質評価を行
う前にホログラム媒体に記録したりする手間が不要となる効果が得られる。更に、信号品質評価をテストビットに限らず任意のビットを対象にして行うことができる。
【0149】
なお、実施形態1から4においては、度数分布を特定する統計値として平均値と標準偏差を用いる例で説明したが、これに限るものではなく、例えば平均値の代わりに最頻値を用いたり、標準偏差の代わりに分散を用いたりするなど、度数分布を特定できる統計値であれば何を用いてもよい。本発明の主旨は、理想SAM値を群毎に分類することによって、対応するSAM値の度数分布を分類し、それぞれの度数分布を特定する統計値に基づいて信号品質を評価することにある。
【0150】
また、実施形態1から4で説明した信号評価装置の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにコンピュータを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0151】
すなわち、信号評価装置3、信号評価装置31、および信号評価装置32は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである信号評価装置3、信号評価装置31、および信号評価装置32の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記信号評価装置3、信号評価装置31、および信号評価装置32に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0152】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0153】
また、信号評価装置3、信号評価装置31、および信号評価装置32を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0154】
このように本明細書において、手段とは必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能がソフトウェアによって実現される場合も含む。さらに、一つの手段の機能が二つ以上の物理的手段により実現されても、もしくは二つ以上の手段の機能が一つの物理的手段により実現されてもよい。
【0155】
また、上記いずれの実施形態においても、再生システムの例としてホログラムメモリシステムについて説明したが、これに限らず、2次元信号の再生を行うシステムにおいて等しくその効果を発揮することができる。すなわち、他の再生システムとしてQRコードに代表される2次元バーコード再生システムなどにも本発明を適用することができる。
【0156】
なお、先に本出願人は、2次元再生信号をビタビ復号するシステムに適したSAM値を新たに考案している(特願2006−75680)。2次元信号をビタビ復号する過程においては、図16に示すように、トレリス線図の正解状態に1本の正解パスと複数の誤りパスが入力する。トレリス線図とはビタビ復号過程に対応する状態遷移図のことである。2次元信号の場合には、1本の正解パスに対応して複数の誤りパスが存在するが、正解パスが有する復号対象行と異なる復号対象行を有する誤りパスのうち最小のパスメトリックを持つ誤りパスを選んで、これと正解パスとのパスメトリック差をSAM値として求める点が大きな特徴である(1次元の場合は、1本の正解パスに1本の誤りパスが対応するので、単純に両者のパスメトリック差がSAM値と定義される)。パスメトリックとは、パスの理想信号に対する入力信号の誤差のことである。
【0157】
図17の例の場合、正解状態[0,1;0,0]に入力する正解パスは[0、0;0、0]→[0、1;0、0]の遷移に対応するパスであり、そのパスメトリックはP0(n)である(トレリス状態を[k、l;m、n]として表記する。[k、l;m、n]は、行ベクトル[k、l]および[m、n]を、列方向(上下)に並べた行列を意味する。以下でも、行列の表現はこの表記に準じる)。これに対応する誤りパスとしては、
[0、0;1、0]→[0、1;0、0]のパス
[1、0;0、0]→[0、1;0、0]のパス
[1、0;1、0]→[0、1;0、0]のパス
の3つが存在する。
【0158】
これらのうち、2番目と3番目の誤りパスは、正解パスの復号対象行[0、0、1]と異なる復号対象行[1、0、1]を持っているので、P2(n)およびP3(n)のうち値が小さい方、すなわちP2(n)を誤りパスのパスメトリックとして選択する。結局、P2(n)とP0(n)の差である、0.34−0.27=0.07がSAM値として算出される。
【0159】
ビタビ復号過程においてエラーを発生させないためには、正解パスのパスメトリックが間違いパスのパスメトリックよりも小さい必要がある。すなわちSAM値>0である必要がある。また、SAM値が大きいほどエラーが発生しにくい。このように2次元信号をビタビ復号するシステムにおいて、SAM値に基づいて再生信号の品質を信頼性高く評価することができる。
【0160】
しかしながら、トレリス線図が1次元に比べて複雑である2次元のビタビ復号におけるSAM値の場合、特にエラーを起こしやすい特定パターンは千種類以上もあり、対応する理想SAM値も数十種類から多くて数百種類もある。従って、もしこれら千種類以上の特定パターンを検出する構成を装置で実現しようとすると、回路規模が極めて大規模なものとなってしまうため、現実的には不可能である。
【0161】
上述したように、本実施の形態の構成により、2次元信号をビタビ復号するシステムにおいて、回路規模を大規模なものとすることなく、SAM値に基づいて再生信号の品質を信頼性高く評価することができる。
【0162】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の信号評価装置及び信号評価方法によれば、2次元信号をビタビ復号する装置において、エラーレートとの相関性が非常に高い指標値を用いて、記録媒体や記録装置、再生装置を評価したり、その評価結果に基づいて出荷前製品の信頼性の高い合否判定や各種調整を行うことが可能であり、2次元信号を再生するホログラムメモリ再生装置、QRコードに代表される2次元バーコード再生装置、などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】実施形態1のホログラムメモリ再生信号評価システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1のホログラムメモリ再生信号評価システムにおいて2次元再生信号の品質評価値としてσ/μを算出する処理の流れ示すフローチャートである。
【図3】理想SAM値の度数分布の一例を示す図である。
【図4】フラグマップの一例を示す図である。
【図5】実施形態1のホログラムメモリ再生信号評価システムの他の構成を示すブロック図である。
【図6】各群の理想SAM値に対応するSAM値の度数分布の一例を示す図である。
【図7】判定帰還ビタビ復号法における想定インパルス応答を示す図である。
【図8】判定帰還ビタビ復号法を表現するトレリス線図である。
【図9】2次元SAM検出回路の構成を示すブロック図である。
【図10】トレリス状態[0、1;0、0]に入力する4本のブランチについてのトレリス状態の遷移を示す図である。
【図11】σ/μとビットエラーレートとの関係のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】実施形態3に係る信号評価装置の構成を示すブロック図である。
【図13】図12の信号評価装置において2次元再生信号の品質評価値として推定ビットエラーレートを算出する処理の流れ示すフローチャートである。
【図14】推定ビットエラーレートと実測ビットエラーレートとの関係のシミュレーション結果を示す図である。
【図15】実施形態4に係る信号評価装置の構成を示すブロック図である。
【図16】2次元ビタビ復号のトレリス線図を示す図である。
【図17】従来のホログラムメモリ記録再生装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0165】
1 ホログラムメモリ再生装置
2 2次元イコライザ
3、30、31、32 信号評価装置
4 2次元SAM検出回路(ビタビ復号手段)
5 テストビットメモリ
6 PRフィルタ
7 2次元SAM検出回路(理想パスメトリック差生成手段)
8、14 値範囲識別回路(パスメトリック差群判定手段)
9、15 平均値・標準偏差演算回路(品質評価手段、統計値算出手段)
10 割算器(品質評価手段、品質評価値算出手段)
11 2次元ビタビ復号回路
12 パス選択回路
13 減算器
16 推定BER計算回路(品質評価手段、品質評価値算出手段)
40、41 理想信号生成部(理想信号生成手段)
45 抽出部(抽出手段、第1抽出手段)
46 抽出部(抽出手段)
47 フラグマップメモリ(格納部)
48 抽出部(第2抽出手段)
50、51 品質評価回路(品質評価手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の品質評価値を出力する信号評価装置において、
前記入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号手段と、
前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出されたパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価手段と、を備えることを特徴とする信号評価装置。
【請求項2】
前記品質評価手段は、前記抽出されたパスメトリック差の群の度数分布の広がりの程度を表す統計値を算出し、該統計値から前記入力信号の品質評価値を算出することを特徴とする請求項1に記載の信号評価装置。
【請求項3】
前記品質評価手段は、前記統計値として、前記抽出されたパスメトリック差の群の標準偏差を算出し、前記品質評価値として、前記標準偏差と前記抽出されたパスメトリック差の群の平均値との比を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の信号評価装置。
【請求項4】
前記品質評価手段は、前記統計値として、前記抽出されたパスメトリック差の群の標準偏差を算出し、前記品質評価値として、前記標準偏差と所定の定数値との比を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の信号評価装置。
【請求項5】
入力信号の品質評価値を出力する信号評価装置において、
前記入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号手段と、
前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の第1の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する第1抽出手段と、
前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が前記第1の値範囲とは異なる所定の第2の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する第2抽出手段と、
前記第1および第2抽出手段によってそれぞれ抽出されたパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価手段と、を備えることを特徴とする信号評価装置。
【請求項6】
上記入力信号と対応するテストビットを、上記ビタビ復号手段において想定されたパーシャルレスポンス特性に従ってパーシャルレスポンス特性理想波形信号に変換する理想信号生成手段と、
前記理想信号生成手段によって変換された前記パーシャルレスポンス特性理想波形信号に前記パーシャルレスポンス特性に従ってビタビ復号を行うことにより、正解パスと誤りパスとのパスメトリック差である前記理想パスメトリック差を生成する理想パスメトリック差生成手段と、を備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の再生信号評価装置。
【請求項7】
前記ビタビ復号手段は、前記パスメトリック差に対応する復号ビットを、前記パスメトリック差とともに出力するものであり、かつ、
上記入力信号と対応する前記復号ビットを、前記ビタビ復号手段において想定されたパーシャルレスポンス特性に従ってパーシャルレスポンス特性理想波形信号に変換する理想信号生成手段と、
前記理想信号生成手段によって変換された前記パーシャルレスポンス特性理想波形信号に前記パーシャルレスポンス特性に従ってビタビ復号を行うことにより、正解パスと誤りパスとのパスメトリック差である前記理想パスメトリック差を生成する理想パスメトリック差生成手段と、を備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の再生信号評価装置。
【請求項8】
前記抽出手段は、
前記ビタビ復号手段から出力されるパスメトリック差に対応付けて、該パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するか否かを示すフラグマップを予め格納した格納部を備え、
前記フラグマップに基づいて、前記ビタビ復号手段から出力されたパスメトリック差を抽出するか否かを決定することを特徴とする請求項1に記載の信号評価装置。
【請求項9】
入力信号の品質評価値を出力する信号評価方法において、
前記入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号ステップと、
前記ビタビ復号ステップにて出力したパスメトリック差から、該パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにて抽出したパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価ステップと、を含むことを特徴とする信号評価方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の信号評価装置を動作させる信号評価プログラムであって、コンピュータを上記の各手段として機能させるための信号評価プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載の信号評価プログラムを記録しているコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
入力信号の品質評価値を出力する信号評価装置において、
前記入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号手段と、
前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出されたパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価手段と、を備えることを特徴とする信号評価装置。
【請求項2】
前記品質評価手段は、前記抽出されたパスメトリック差の群の度数分布の広がりの程度を表す統計値を算出し、該統計値から前記入力信号の品質評価値を算出することを特徴とする請求項1に記載の信号評価装置。
【請求項3】
前記品質評価手段は、前記統計値として、前記抽出されたパスメトリック差の群の標準偏差を算出し、前記品質評価値として、前記標準偏差と前記抽出されたパスメトリック差の群の平均値との比を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の信号評価装置。
【請求項4】
前記品質評価手段は、前記統計値として、前記抽出されたパスメトリック差の群の標準偏差を算出し、前記品質評価値として、前記標準偏差と所定の定数値との比を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の信号評価装置。
【請求項5】
入力信号の品質評価値を出力する信号評価装置において、
前記入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号手段と、
前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の第1の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する第1抽出手段と、
前記ビタビ復号手段から出力された複数のパスメトリック差から、パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が前記第1の値範囲とは異なる所定の第2の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する第2抽出手段と、
前記第1および第2抽出手段によってそれぞれ抽出されたパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価手段と、を備えることを特徴とする信号評価装置。
【請求項6】
上記入力信号と対応するテストビットを、上記ビタビ復号手段において想定されたパーシャルレスポンス特性に従ってパーシャルレスポンス特性理想波形信号に変換する理想信号生成手段と、
前記理想信号生成手段によって変換された前記パーシャルレスポンス特性理想波形信号に前記パーシャルレスポンス特性に従ってビタビ復号を行うことにより、正解パスと誤りパスとのパスメトリック差である前記理想パスメトリック差を生成する理想パスメトリック差生成手段と、を備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の再生信号評価装置。
【請求項7】
前記ビタビ復号手段は、前記パスメトリック差に対応する復号ビットを、前記パスメトリック差とともに出力するものであり、かつ、
上記入力信号と対応する前記復号ビットを、前記ビタビ復号手段において想定されたパーシャルレスポンス特性に従ってパーシャルレスポンス特性理想波形信号に変換する理想信号生成手段と、
前記理想信号生成手段によって変換された前記パーシャルレスポンス特性理想波形信号に前記パーシャルレスポンス特性に従ってビタビ復号を行うことにより、正解パスと誤りパスとのパスメトリック差である前記理想パスメトリック差を生成する理想パスメトリック差生成手段と、を備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の再生信号評価装置。
【請求項8】
前記抽出手段は、
前記ビタビ復号手段から出力されるパスメトリック差に対応付けて、該パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するか否かを示すフラグマップを予め格納した格納部を備え、
前記フラグマップに基づいて、前記ビタビ復号手段から出力されたパスメトリック差を抽出するか否かを決定することを特徴とする請求項1に記載の信号評価装置。
【請求項9】
入力信号の品質評価値を出力する信号評価方法において、
前記入力信号に所定のパーシャルレスポンス特性を想定したビタビ復号を行うことにより、正解パスと誤りパスとのパスメトリック差を出力するビタビ復号ステップと、
前記ビタビ復号ステップにて出力したパスメトリック差から、該パスメトリック差を得た前記入力信号に対応する理想パスメトリック差が所定の値範囲に属するパスメトリック差を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにて抽出したパスメトリック差の群に基づいて、前記入力信号の品質評価値を算出する品質評価ステップと、を含むことを特徴とする信号評価方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の信号評価装置を動作させる信号評価プログラムであって、コンピュータを上記の各手段として機能させるための信号評価プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載の信号評価プログラムを記録しているコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−305457(P2008−305457A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149595(P2007−149595)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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