説明

修正されたシリコーン界面活性剤を有するポリウレタン発泡体組成物

本発明は、発泡体の硬さの修正と向上した発泡体の多孔性とのために、修正されたシリコーン界面活性剤を有し、そして遅延化された触媒作用を有する、ポリウレタン発泡体生成組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にポリウレタン発泡体生成組成物に関し、特に修正されたシリコーン界面活性剤を有し、そして遅延化された触媒作用を有するポリウレタン発泡体生成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体は、ジイソシアナートまたはポリイソシアナートを、2つもしくはそれ以上の活性水素を有する化合物と、一般に触媒、シリコーン系界面活性剤およびそのほかの補助の試剤の存在下で反応させることによって製造される。この活性水素含有化合物は、典型的にはポリオール、第一級ポリアミン、第二級ポリアミン、および水である。ポリウレタン発泡体を調製する際に、反応物のあいだでは触媒によって2つの主反応が進行する。望ましい物理的特性を持つポリウレタン発泡体を生成させる目的で、これらの反応を、同時にそして競争的に釣り合った速度でプロセスのあいだに進行させる必要がある。
【0003】
イソシアナートと、ポリオールまたはポリアミンとのあいだの反応は、通常はゲル化反応と呼ばれるが、高分子量の重合体を生成させる。この反応は、低沸点の有機化合物で専用に発泡される発泡体における主反応である。この反応の進行は、混合物の粘性を増加させ、一般に多官能性ポリオールとの架橋形成に寄与する。第二の主反応はイソシアナートと水との間で起こる。この反応は、ウレタン重合体を膨張させ、そして発泡を促進する二酸化炭素を発生するのに重要である。その結果、この反応はしばしば発泡反応と呼ばれる。この発泡反応は、補助の発泡剤の使用を回避するため、または減少させるために不可欠である。
【0004】
上述のように、良好なウレタン発泡体の構造を得るためには、ゲル化反応と発泡反応とは、同時にそして最適の釣り合った速度で進行する必要がある。例えば、二酸化炭素の発生がゲル反応に比較して速すぎるとしたら、発泡体は壊れやすくなる。その代わりに、ゲル展開反応が二酸化炭素を発生する発泡反応と比較して速すぎるとしたら、発泡体の膨張上昇が限定され、高密度発泡体が生成してしまう。また、釣り合ってない架橋反応は、発泡体の安定性に逆効果を与える。発泡体の底部に高密度部が存在しないことも重要である。
【0005】
第三級アミンとアリールオキシ置換カルボン酸とのあいだの反応によって生成する反応生成物の存在下で行なわれる、ポリイソシアナートと活性水素含有成分との反応による、ウレタン発泡体を調製するプロセスは、米国特許第6,660,781号に開示され、そして米国特許第6,395,796号、第6,387,972号および第6,423,756号は、ある種の第三級アミン、第三級アミンカルバミン酸塩、そしてヒドロキシおよび/またはハロゲン官能性を持つカルボン酸、のあいだの反応によって生成した反応生成物の存在下で行なわれる、ポリイソシアナートと活性水素含有成分とのあいだの反応による、ウレタン発泡体を調製するプロセスを開示する。酸でブロックしたアミン触媒(acid blocked amine catalysts)により調製されたポリウレタン合成は、米国特許第6,525,107号に開示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のアミンの限界は、反応混合物の温度が上昇することによって塩が解離するまでの反応の範囲内である遅延化効果、発泡体組成物に対するアミンの引締め効果、そして超低密度のTDI鋳型発泡体を製造する能力の欠落である。
【0007】
したがって、アミン触媒と錯体を生成するシリコーン界面活性剤を用いて、調合体がポリウレタンの反応性を遅延化された反応性へと修正し、これにより、特に低密度グレードTDI鋳型発泡体用に発泡体の硬さを改良でき、そして発泡体の多孔性を改良できるような触媒への必要性が、ポリウレタン産業には未だにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有機酸を有するシリコーン共重合体はアミン触媒と錯体を形成することができ、それ故にポリウレタン発泡体生成組成物のウレタン化反応(ゲル化反応)および/または尿素化反応(発泡反応)を促進するアミンの能力が遅延化する、という発見に基づく。具体的には、本発明は、
(a)少なくとも1つのポリオール;
(b)少なくとも1つのポリイソシアナート;
(c)ポリウレタン生成反応のための少なくとも1つのアミン触媒;
(d)カルボン酸官能性を有する少なくとも1つのシリコーン;および、
(e)少なくとも1つの発泡剤、
を含有するポリウレタン発泡体生成組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシリコーン界面活性剤は、ポリウレタン系の反応性に影響して、中空金型法において、よりよい流動性と、多孔性と、加工処理の自由度とを与える。硬質ポリウレタン発泡体において、本発明のシリコーン界面活性剤は、流動性、空隙充填性、熱的性能、および/または寸法安定性を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、比較例1ならびに実施例1および2の温度のプロフィールのグラフ表示である。
【図2】図2は、比較例1ならびに実施例1および2の膨張のプロフィールのグラフ表示である。
【図3】図3は、比較例3および実施例6の膨張のプロフィールのグラフ表示である。
【図4】図4は、比較例3および実施例6の温度のプロフィールのグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ポリウレタン発泡体の製造に通常に用いられる反応性の水素原子を有するポリオールを、本発明の調合物において使用してよい。ポリオールは、さまざまな分子量とヒドロキシ官能性との広い範囲の組成に及ぶヒドロキシ官能性の化学物質または重合体である。これらのポリヒドロキシ化合物は、単一のポリヒドロキシ化合物、すなわち個々の化合物、が原則として使われるが、一般的には幾つかの成分の混合物である。
【0012】
本発明は、ヒドロキシ基を有する普通は液体の重合体であるとここで定義されるポリオール(a)を含有するポリウレタン発泡体生成組成物から製造されるポリウレタン発泡体を指向する。さらに、ポリオールは、ポリウレタン発泡体を調製するために通常用いられる型の少なくとも1つ、例えば、分子量が約18から約10,000までのポリエーテルポリオール(a)でよい。「ポリオール」の用語は、直鎖および分岐の(エーテル結合を持つ)ポリエーテル、ポリエステルおよびそれらの混合物であり、少なくとも2つのヒドロキシ基を含有する。
【0013】
適切なポリオール(a)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、アクリル成分を付加したポリオール、アクリル成分を分散したポリオール、スチレン成分を付加したポリオール、スチレン成分を分散したポリオール、ビニル成分を付加したポリオール、ビニル成分を分散したポリオール、尿素成分を分散したポリオール、そしてポリカルボナートポリオール、ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオール、混合ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンジオール、ポリオキシアルキレンジオール、ポリオキシアルキレントリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオールなどを含み、これらの総ては少なくとも2つの第一級ヒドロキシ基を有する。一つの実施態様において、ポリエーテルポリオール(a)の幾つかの具体的な例は、ポリオキシアルキレンポリオール、特に直鎖および分岐のポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、それらの共重合体、およびそれらの組合せである。グラフトまたは修正されたポリエーテルポリオールは、典型的には高分子ポリオールと呼ばれる、エチレン性の不飽和単量体を内部に分散した少なくとも1つの重合体を有するポリエーテルポリオールである。修正されたポリエーテルポリオールの典型的で非限定的な例は、ポリ(スチレンアクリロニトリル)またはポリ尿素を分散したポリオキシプロピレンポリエーテルポリオール、ならびにポリ(スチレンアクリロニトリル)またはポリ尿素を分散したポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ポリエーテルポリオールが含まれる。グラフトまたは修正されたポリエーテルポリオールは、分散した高分子固体を含有する。本発明の適切なポリエステルは、無水フタル酸(PA)、テレフタル酸ジメチル(DMT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、および脂肪族ポリエステルなどにより作製されるようなものを含むが、それらに限定されない。本発明の一つの実施態様において、ポリエーテルポリオール(a)は、Bayer AG製のARCOL(登録商標)ポリオールU−1000、Hyperlite(登録商標)E−848、Dow BASF製のVoranol(登録商標)、Stepan製のStepanpol(登録商標)、Invista製のTerate(登録商標)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0014】
適切なポリオール(a)の非限定的な例は、プロピレンオキシドと、エチレンオキシドと、アルキレンオキシドの重合反応の有機開始剤または開始剤の混合物およびそれらの組合せとから誘導されたものである。よく知られているように、ポリオールのヒドロキシル価は、1グラムのポリオールから調製された、完全にアシル化された誘導体を、完全に加水分解するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。ヒドロキシル価は、また次の式によって定義され、これはポリエーテルポリオール(a)の官能性と分子量との関係を反映する:
【数1】

式中、OHは、ポリエーテルポリオール(a)のヒドロキシル価であり;fは、平均の官能性数、すなわちポリエーテルポリオール(a)の1分子当りのヒドロキシ基の平均数であり;M.W.は、ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量である。ポリエーテルポリオール(a)のヒドロキシ基の平均数は、ポリエーテルポリオール(a)を作製する際に用いられる開始剤または開始剤の混合物の官能性の制御によって決まる。
【0015】
本発明の一つの実施態様に従えば、ポリオール(a)は、約2から約12までの官能性を有してよく、そして本発明の他の実施態様において、ポリオールは少なくとも2つの官能性を有する。これらの範囲には、そのあいだに入るすべてのサブ範囲が含まれることは当業者の理解するところである。
【0016】
本発明の一つの実施態様において、ポリウレタン発泡体生成組成物は、約10から約4,000までのヒドロキシル価を有するポリエーテルポリオール(a)を含有する。本発明の他の実施態様において、ポリエーテルポリオール(a)は、約20から約2,000までのヒドロキシル価を有する。さらに他の実施態様において、ポリエーテルポリオール(a)は、約30から約1,000までのヒドロキシル価を有する。なお他の実施態様において、ポリエーテルポリオール(a)は、約35から約800までのヒドロキシル価を有する。
【0017】
本発明のポリイソシアナート(b)は、ポリウレタン発泡体の製造用に、商業的にまたは汎用的に用いられる任意のジイソシアナートを含む。本発明の一つの実施態様において、ポリイソシアナート(b)は、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する有機化合物であってよく、一般に既知のいかなる芳香族または脂肪族のジイソシアナートであろう。
【0018】
本発明のポリウレタン発泡体生成組成物に有用なポリイソシアナートは、少なくとも2つのイソシアナート基を含む有機ポリイソシアナート化合物であり、そして一般的には既知の任意の芳香族または脂肪族のポリイソシアナートである。本発明の一つの実施態様に従えば、ポリイソシアナート(b)は、炭化水素ジイソシアナート(例えば、アルキレンジイソシアナートおよびアリーレンジイソシアナート)でよく、例えば、トルエンジイソシアナート、ジフェニルメタンイソシアナート、それの高分子体、およびそれらの組合せである。本発明の別の一つの実施態様において、ポリイソシアナート(b)は、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)、そして2,4−および2,6−トルエンジイソシアナート(TDI)のように、上記の異性体でもよく、さらに加えて既知のトリイソシアナートおよび高分子として既知でもあるポリメチレンポリ(フェニレンイソシアナート)、または粗製のMDI、およびそれらの組合せでもよい。2,4−および2,6−トルエンジイソシアナートの異性体の非限定的な例は、Mondur(登録商標)TDI、Papi27MDI、およびそれらの組合せを含む。さらに硬質のポリウレタン発泡体には、例えばMDI型のジイソシアナート、具体的には粗製の高分子MDIである、イソシアナートが用いられる。
【0019】
本発明の一つの実施態様において、ポリイソシアナート(b)は、2,4−トルエンジイソシアナートと2,6−トルエンジイソシアナートとの少なくとも1つの混合物でよく、ここで2,4−トルエンジイソシアナートは、混合物の約80から約85重量パーセントまでの量で存在し、そして、2,6−トルエンジイソシアナートは、混合物の約20から約15重量パーセントまでの量で存在する。これらの範囲には、そのあいだにあるすべてのサブ範囲が含まれることは当業者の理解するところである。
【0020】
ポリウレタン発泡体生成組成物に含まれるポリイソシアナート(b)の量は、ポリウレタン発泡体生成組成物における他の物質の量に関連して、「イソシアナート指数」の言葉で記述される。「イソシアナート指数」は、使用したポリイソシアナート(b)の実際の量を、ポリウレタン発泡体生成組成物中の総ての活性水素と反応するのに理論上必要なポリイソシアナート(b)の量で割り、これに100を掛けた値を意味する。本発明の一つの実施態様において、このプロセスで用いられるポリウレタン発泡体生成組成物のイソシアナート指数は、約60から約300までであり、そして他の実施態様において、約70から約200まで、そしてさらに他の実施態様において、約80から約120までである。これらの範囲には、そのあいだのすべてのサブ範囲が含まれることは当業者の理解するところである。
【0021】
ここでのポリウレタン発泡体の製造用の触媒(c)は、ポリウレタン発泡体を生成させるためのポリイソシアナートと、ポリオールや水との反応に触媒作用をするのに一般に用いられるような単一の触媒または触媒の混合物でよい。この目的に有機アミンと有機スズ化合物の両方を用いることが、不可欠ではないが一般的である。有機スズ化合物の代わりに、または有機スズ化合物に加えて、他の金属触媒を使用してよい。ポリウレタン発泡体生成触媒の適切で非限定的な例は、(i)(ビス(2,2’−ジメチルアミノ)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、2−{[2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エチル]メチルアミノ}エタノール、ピリジンオキシドなどのような第三級アミン;(ii)アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、フェノキシドなどのような強塩基;(iii)塩化第二鉄、塩化第一スズ、三塩化アンチモン、硝酸ビスマス、および塩化ビスマスなどのような強酸の酸性金属塩であり;(iv)アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、サルチルアルデヒド、シクロペンタノン−2−カルボキシラート、アセチルアセトンイミン、ビス−アセチルアセトン−アルキレンジイミン、サリチルアルデヒドイミンなどと、Be、Mg、Zn、Cd、Pb、Ti、Zr、Sn、As、Bi、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、Niのような様々な金属、またはMoO++、UO++などのようなイオンとから得ることができる、様々な金属のキレート化合物;(v)Ti(OR)、Sn(OR)、Sn(OR)、Al(OR)などのような種々の金属のアルコラートおよびフェノラート(式中、Rは炭素原子1から約12までのアルキルまたはアリールである)であり、そして、アルコラートと、カルボン酸、ベータジケトン、2−(N,N−ジアルキルアミノ)アルカノールとの反応生成物、例えばこの方法または同等の手順によって得られる周知のチタンキレート;(vi)例えば酢酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ヘキサン酸カルシウム、酢酸第一スズ、オクチル酸第一スズ、オレイン酸第一スズ、オクチル酸鉛、ナフテン酸マンガンとナフテン酸コバルトのような金属ドライヤー(metallic drier)などを含む、有機酸と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、Pb、Mn、Co、Bi、およびCuのような種々の金属との塩;(vii)四価のスズ、三価と五価のAs、SbおよびBiの有機金属の誘導体、そして鉄およびコバルトの金属カルボニルであり;そして、それらの組合せを含む。一つの具体的な実施態様において、カルボン酸のジアルキルスズ塩である有機スズ化合物は、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレアート、ジブチルスズマレアート、ジラウリルスズジアセタート、ジオクチルスズジアセタート、ジブチルスズ−ビス(4−メチルアミノベンゾアート)、ジブチルスズジラウリルメルカプチド、ブチルスズ−ビス(6−メチルアミノカプロアート)など、およびそれらの組合せという非限定的例を含む。同様に他の具体的な実施態様において、トリアルキルスズヒドロキシド、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズジアルコキシド、またはジアルキルスズジクロリド、およびそれらの組合せを用いてよい。これらの化合物の非限定的な例は、トリメチルスズヒドロキシド、トリブチルスズヒドロキシド、トリオクチルスズヒドロキシド、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジラウリルスズオキシド、ジブチルスズ−ビス(イソプロポキシド)、ジブチルスズ−ビス(2−ジメチルアミノペンチラート)、ジブチルスズジクロリド、ジオクチルスズジクロリドなど、およびそれらの組合せを含む。
【0022】
一つの実施態様において、触媒(c)は、第一スズオクトアート、ジブチルスズジラウラート、ジブチルスズジアセタート、第一スズオレアート、およびそれらの組合せからなる群から選択される有機スズ触媒でよい。他の実施態様において、触媒(c)は、有機アミン触媒、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス(2,2’−ジメチルアミノ)エチルエーテル、N−エチルモルホリン、ジエチレントリアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンのような第三級アミン、およびそれらの組合せでよい。他の実施態様において、触媒(c)は、Niax(登録商標)触媒C−183(GE社)のような、第三級アミンとグリコールとの混合物、Niax(登録商標)触媒D−19(GE社)のような第一スズオクトアート、およびそれらの組合せを含んでよい。
【0023】
本発明の一つの実施態様によれば、軟質スラブ材(slabstock)および鋳型発泡体の製造のため、アミン触媒(c)は、ビス(N,N−ジメチルアミノエチル)エーテルおよび1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを含む。本発明の他の実施態様において、硬質発泡体の製造のため、アミン触媒は、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)およびジメチルエタノールアミン(DMEA)などを含む。
【0024】
他の実施態様において、アミン触媒は、Niax(登録商標)触媒C−183のような第三級アミンとグリコールとの混合物、Niax(登録商標)触媒D−19のような第一スズオクトアート、およびそれらの組合せを含んでよく、これらは総てGE Advanced Materials Siliconesから入手可能である。
【0025】
本発明のカルボン酸官能性を有する少なくとも1つのシリコーン(d)は、少なくとも1つのカルボン酸官能性(COOH)と共に、アルキル基、アリール基、ポリエーテル基、ポリエステルのペンダント基を有する、シロキシの繰り返し単位を含む高分子骨格を有する。本発明のアミン触媒遅延化シリコーン(d)は、ポリウレタン発泡体生成組成物における界面活性剤として特に適する。シリコーン(d)は、アミン触媒との錯体化によってポリウレタン発泡体生成組成物の反応の初期段階において移動度を維持して、ポリウレタン発泡体の膨張と温度とを遅延化し、そして発泡体内の気泡の成長とサイズとを安定化し、最後にイソシアナートと反応することによって重合体マトリックス中へと作用して重合体マトリックスに留まる。本発明のシリコーン界面活性剤は、1つもしくはそれ以上の酸基を含んでもよく、遅延化量を制御するために他のシリコーン界面活性剤と共に用いてよい。シリコーン(d)は、任意の標準的なアミン触媒と共にポリウレタン発泡体中で用いてよく、そして任意選択で、カリウム錯体およびスズ錯体のような金属触媒と組み合せて用いてよい。
【0026】
代表的には、シリコーン界面活性剤は、ヒドロシリル化触媒(例えば、塩化白金酸)の存在下で、一般式M**D’**のポリヒドリドシロキサンを、アリル末端オキシアルキレン重合体の適切に選ばれた混合物と反応させることによって調製される。一般式において、M**は、(CH)(H)SiO1/2または(CHSiO1/2であり、Dは、(CHSiO2/2であり、そしてD’は、(CH)(H)SiO2/2である。アリル末端オキシアルキレン重合体は、末端ビニル基を有するポリエーテルであり、これは、場合によっては2位で置換されてもよく、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはその両方から誘導される繰り返し単位を含む。この試薬は、通常トルエンやジプロピレングリコールのような溶媒に混合され、約70〜85℃に加熱され、次に触媒が加えられると、約10〜15℃の温度上昇が観測され、最終的に混合物がをサンプリングされ、アルコールと塩基とが加えられ、発生する水素を測定することによってSiH基について分析する。揮発性の溶媒を用いた場合は、これを真空下で除去し、混合物は、一般にNaHCOのような弱塩基で中和され、次に濾過される。
【0027】
一般式M**DxD’yM**のポリヒドリドシロキサンは、当分野に既知の方法で調製される。M**が(CHSiO1/2の場合は、ヘキサメチルジシロキサンのようなアルキルジシロキサン、ポリヒドリドシロキサン重合体、およびオクタメチルシクロテトラシロキサンのようなアルキルシクロシロキサンを、硫酸のような強酸の存在下で反応させる。M**が(H)(CHSiO2/2の場合は、ジヒドリドテトラメチルジシロキサンのようなヒドリドアルキルジシロキサン、ポリヒドリドシロキサン重合体、およびオクタメチルシクロテトラシロキサンのようなアルキルシクロシロキサンを、硫酸のような強酸の存在下で反応させる。
【0028】
アリル末端オキシアルキレン重合体は、ポリエーテルとも呼ばれるが、これは等分野に既知の方法で同様に調製される。アリルアルコール、任意選択では1位または2位に置換基を有するが、これは、酸または塩基の存在下で、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはその両方と化合して、末端ヒドロキシ基を持つ所望のポリエーテルを生じる。これは、典型的にはハロゲン化メチルのようなアルキル化剤または無水酢酸のようなアシル化剤とそれぞれさらに反応させることによってキャップ化される。他の末端キャップ化剤をもちろん用いてもよい。
【0029】
ポリアルキレンオキシドのペンダント基を有する非加水分解性のシリコーン界面活性剤を合成する手順は、周知である。代表的な開示は、米国特許第4,147,847号および第4,855,379号に提供され、その関連する部分は、参照によりここに編入する。
【0030】
カルボキシ官能性シリコーンと、これを調製する方法は、当分野で、例えば米国特許第3,182,076号および第3,629,165号、(共に、Holdstockへのもの)、および米国特許再発行(RE)34,415号で知られている。前述の米国特許文献の全内容は、参照によりここに編入する。Holdstockの方法において、カルボキシ官能性シリコーンは、オルガノトリクロロシラン、ジオルガノジクロロシランおよびシアノアルキルジオルガノクロロシランを含む混合物液の加水分解と縮合とによって調製される。これらの反応物の加水分解と縮合のあいだに、種々のケイ素に結合した塩素原子は、ケイ素に結合したヒドロキシ基によって置き換わり、これが分子間縮合してシロキサン結合を生成する。ニトリルラジカルは、加水分解してカルボキシルラジカルになる。塩酸も加水分解反応において生成する。
【0031】
シリコーン(d)は、オレフィン末端オルガノアシロキシシラン、有機水素化ポリシロキサン、および貴金属または貴金属含有触媒、を含む成分混合物と反応させられ、次に最初の工程で生成した反応生成物を加水分解され、最終生産物、すなわち、カルボキシ官能性シリコーンを生成することによって得る事ができる。
【0032】
カルボン酸付加物の製造用の他の合成経路は、10−ウンデセン酸のような不飽和酸をトリメチルクロロシランと反応させてシリルエステルを生成させ、続いて触媒によるヒドロシリル化反応を行うことからなる。次に、不飽和酸のヒドロシリル化されたトリメチルクロロシリルエステルを加水分解してシロキシカルボン酸誘導体を得るが、これは、米国特許第4,990,643号に教示されるとおりであり、この特許を参照によりここに編入する。
【0033】
カルボキシ官能性シリコーンを提供するのに利用できる類似の反応経路は、Ryangによって米国特許第4,381,396号に教示され、参照によりここに編入するが、ここでヒドリド流動体は、白金ヒドロシリル化反応触媒の存在下で、ノルボルネンカルボン酸無水物と反応させられ、ケイ素官能性ノルボルナンの一無水物または二無水物が得られる。Ryangは、有機ケイ素ポリイミド共重合体、ポリジオルガノシロキサンポリイミドのブロック重合体およびブロック共重合体の合成用に、そのような化合物の使用を教示する。しかしながら、一無水物または二無水物の単なる加水分解反応は、カルボン酸官能性のノルボルニルシロキサンまたはシリコーンを生じてしまう。ノルボルニル化合物の使用は、周知である高レベルの毒性によって複雑になる。
【0034】
カルボン酸を有するシリコーンを調製する他の方法は、不飽和ポリエーテルとケイ素ヒドリドを有するシロキサンとの反応によってシリコーンカルビノールまたはポリエーテルシリコーンを生成させ、これは続いて酸無水物または酸ハロゲン化物と反応させてカルボン酸官能性のシリコーンまたはシロキサン誘導体を得る、と要約される。このプロセスは、Raleighらによる、参照により本明細書の一部としてここに編入される米国特許第5,447,997号に記述され、次の反応スキームによって一般には特徴づけられる;a)有機酸無水物または有機酸のハロゲン化物を反応させる、b)ヒドロキシ官能性ポリエーテルのシリコーンまたはシロキサンと反応させる、c)ポリエーテルシリコーンの重合体または共重合体のカルボン酸を得る;そして、任意選択で、d)アルカリ金属、特にリチウム、ナトリウムおよびカリウムの塩の使用することを含有する中和する。具体的にはRaleighの方法では、ヒドロキシ官能性ポリエーテルシリコーンを不飽和ポリエーテルとのヒドロシリル化反応によって調製している。
【0035】
シリコーン界面活性剤は、少なくとも1つのペンダントの酸基を含む必要があり、それは、酸含有基の直接ヒドロシリル化、または種々の反応機構による酸基の誘導体化を含む種々の方法から誘導されてよく、例えば、米国特許第6,432,864号に開示されるように典型的なモル比での、ヒドロキシと、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸のような無水物との反応を含み、この全内容は参照によりここに編入する。
【0036】
本発明の一つの実施態様によると、シリコーン(d)成分は、RCOOHで示す少なくとも1つの有機酸を含むペンダント基を有する一般式MDxD’yMzのシリコーン重合体である。
【0037】
一般式MDxD’yMzにおいて:
Mは、(CHSiO1/2を表し;
は、R(CHSiO1/2を表し;
Dは、(CHSiO2/2を表し;
D”は、(CH)(R)SiO2/2を表し;
xは、約0から約100であり;
yは、約0から約40であり;そして、
zは、0から2であり;上記の式のMとD”において、
Rは、少なくとも1つのカルボン酸(COOH)官能性を有するアルキル、アリール、ポリエーテル、ポリエステルである。
【0038】
本発明の一つの実施態様によると、xは0から約80であり、yは約0から約25までであり、そしてzは0から2である。本発明の他の実施態様において、xは約0から約60までであり、そしてyは約0から約20までであり、そしてzは0から2であり、本発明のさらに他の実施態様において、xは約0から約25までであり、そしてyは約0から約10までであり、そしてzは0から2である。
【0039】
上述のように、ポリウレタン発泡体の特性を提供するためにシリコーン骨格の長さを変えてよい。一つの具体的な実施態様において、xは約0から約30まででよく、そしてy+zは約0から約4まででよい。他の実施態様において、xは約4から約8まででよく、そしてy+zは約0から約2まででよい。これらの範囲は、そのあいだにすべてのサブ範囲を含むことは当業者の理解するところである。
【0040】
本発明において用いられるカルボン酸官能性を有するシリコーン界面活性剤(d)の量は、シリコーン界面活性剤用として標準的である。しかしながら、用いたアミン触媒の量と、必要とされる遅延化の程度とに応じて、酸官能性シリコーンの濃度を変化させてよい。望ましい結果を得るために、酸官能性シリコーン界面活性剤を官能基化されてないシリコーン界面活性剤と一緒に用いてよいことも意図されている。使用する量は、気泡の安定性と反応性との必要性に応じて大きく変化させてよい。
【0041】
所望の反応性のプロフィールを得るために界面活性剤をブレンドすることは、当分野で既知であり、本発明の一つの実施態様において、酸官能性シリコーン界面活性剤(d)は、全発泡体組成物の約0.001から約10重量パーセントまでの量の範囲である。本発明の他の実施態様において、シリコーン成分(d)は、全発泡体組成物の約0.005から約2重量パーセントまでの量の範囲である。
【0042】
本発明の実施態様に従えば、ポリウレタン発泡体生成組成物の発泡剤は、水であり、これはその場で二酸化炭素を発生させるために用いられる。物理的な発泡剤、例えば揮発性炭化水素またはハロゲン化炭化水素、そして他の非反応性気体のような発泡剤を、ポリウレタン発泡体生成組成物に使用してもよい。本発明の他の実施態様において、発泡剤は、例えば二酸化炭素およびジクロロメタン(塩化メチレン)を補助の発泡剤として使用してよい。ポリウレタン発泡体生成組成物に使用する他の有用な発泡剤は、フルオロカーボン、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)、ジクロロジフルオロメタンおよびトリクロロモノフルオロメタン(CFC−11)、またはフッ素化されてない有機発泡剤、例えばペンタンおよびアセトンを含む。
【0043】
発泡剤の量は、当業者によって認識されるように、所望の発泡体の密度と発泡体の硬さとに応じて変わる。使用するときに炭化水素型の発泡剤の量は、例えば痕跡量からポリオール100部当たり約50部(pphp)まで変化し、そしてCOは、例えば約1%から約10%まで変化する。
【0044】
本発明の他の実施態様において、ポリウレタン発泡体生成組成物は、触媒、架橋剤、界面活性剤、難燃剤、安定剤、着色剤、充填剤、抗菌剤、エクステンダー油、静電防止剤、溶媒、およびそれらの混合物のような、任意選択の成分を含有してよい。
【0045】
本発明の一つの実施態様によれば、任意選択の成分は、当業者に既知である、ポリオールとジイソシアナートとの反応に触媒作用を及ぼすために典型的に用いられる触媒を含む。ウレタン結合と共にイソシアヌラート部分を生み出す、アミン、金属塩、トリアジン、および/または第四級アンモニウム塩、の両方を使用するのは一般的である。本発明に有用な三量化触媒は、従来型のイソシアナート三量化触媒から選んでもよい。例えば、三量体化触媒は、例えば酢酸カリウム、ギ酸カリウムおよびプロピオン酸カリウムのような脂肪族、脂環式および芳香族のカルボン酸のアルカリ金属塩、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N’、N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、およびジアザ−ビス−シクロアルケンなど、そしてそれらの混合物でよい。
【0046】
本発明の適切な任意選択の架橋剤は、1つもしくはそれ以上の脱離基(すなわち、容易に加水分解されうる基)、例えばアルコキシ、アセトキシ、アセトアミド、ケトキシム、ベンズアミド、およびアミノキシを有する化合物を含む。本発明の有用な架橋剤の幾つかは、アルキルシリカート架橋剤、テトラ−N−プロピルシリカート(NPS)、テトラエチルオルトシリカート、メチルトリメトキシシラン、そして類似のアルキル置換アルコキシシラン組成物、メチルトリアセトキシシラン、ジブトキシジアセトキシシラン、メチルイソプロポキシジアセトキシシラン、メチルオキシイミノシランなどを含む。
【0047】
本発明の一つの実施態様によると、架橋剤の取込み濃度は、全組成物の約0.01重量パーセントから約20重量パーセントまで、一つの実施態様において、約0.3重量パーセントから約5重量パーセントまで、そして他の実施態様において約0.5重量パーセントから約1.5の重量パーセントまでの範囲である。
【0048】
任意選択の界面活性剤は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エトキシ化ヒマシ油、オレイン酸エトキシラート、アルキルフェノールエトキシラート、エチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)との共重合体、そしてシリコーンとポリエーテルとの共重合体(シリコーンポリエーテル共重合体)、シリコーンと、エチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合体との共重合体、およびそれらの混合物を含み、全組成物の0重量パーセントから約20重量パーセントまで、より好ましくは約0.1重量パーセントから約5重量パーセントまで、そして最も好ましくは約0.2重量パーセントから約1重量パーセントまでの範囲である。非イオン界面活性剤としてシリコーンポリエーテルの使用は、米国特許第5,744,703号に記述され、その教示は、参照により本明細書の一部としてここに具体的に編入する。
【0049】
当分野に既知であるように、他の添加剤を、ポリウレタン発泡体に特定の特性を与えるために添加してよく、これは技術上既知であり、難燃剤、安定剤、着色剤、充填剤、抗菌剤、エクステンダー油、静電防止剤、溶媒、およびそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0050】
一つの実施態様において、本発明のポリウレタン発泡体生成組成物は、1m当り約5から約100キログラムまでの密度を有する。本発明の他の実施態様において、ポリウレタン発泡体生成組成物は、1m当り約20から約75キログラムの密度を有する。本発明のさらに他の実施態様において、ポリウレタン発泡体成形は、1m当り約25から約45キログラムまでの密度を有する。
【0051】
本発明のポリウレタン発泡体生成組成物からポリウレタン発泡体を製造する方法は、特に限定されない。当分野でで一般に使われる種々の方法を用いてよい。例えば、岩田敬治著「ポリウレタン樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞(1987年)に記載される種々の方法を用いてよい。例えば、本発明の組成物は、ポリオール、アミン触媒、界面活性剤と、任意選択の成分を含む補足的な化合物とを組み合せることによって予備混合物へと調製してよい。このポリオール配合物がイソシアナートに添加される。最後に、好ましい発泡剤を混合物に導入して発泡体が気泡構造を形成するのを助ける。
【0052】
本発明の一つの具体的な実施態様によれば、ポリウレタン発泡体を調製するプロセスは、(a)少なくとも1つのポリオール;(b)少なくとも1つのイソシアナート;(c)ポリウレタン発泡体の生成反応用の少なくとも1つのアミン触媒;(d)カルボン酸官能性を有する少なくとも1つのシリコーン、および(e)少なくとも1つの発泡剤、を含有する(1)少なくとも1つのポリウレタン発泡体生成組成物を調製するステップを含有する。本発明の他の実施態様において、ポリウレタン発泡体はここに記述されるプロセスによって調製される。
【0053】
ポリウレタンの製造に有用な温度は、当業者によって申し分なく理解されるように、発泡体の種類や製造に用いる具体的な処理法に応じて変化する。軟質スラブ材発泡体は、一般に約20℃と約40℃との間の周囲温度で反応物を混合することによって製造される。発泡体はコンベヤー上で膨張し、そして硬化するが、基本的には周囲温度であり、この温度は、発泡体が作製される地理的な場所や年中の時季に応じて著しく変わる。軟質鋳型発泡体は、約20℃から30℃の間、そして多くの場合は約20℃〜25℃の間の温度で反応物を混合する事で製造される。混合された出発物質は、典型的には鋳型に注ぎ込むことによって注入される。鋳型品は、好ましくは約20℃から70℃の間、そして多く場合は約40℃から65℃の間の温度に加熱される。噴霧型硬質発泡体の出発物質は、混合して周囲温度で噴霧される。鋳型硬質発泡体の出発物質は20℃から35℃の範囲の温度で混合される。本発明の一つの実施態様に従えば、軟質スラブ材発泡体、鋳型発泡体、および硬質発泡体の製造に用いるプロセスは、出発物質が一段階で混合され、反応される「一回成形法(one-shot process)」である。
【0054】
ここに既に記述されたポリウレタン発泡体に加えて、本発明のシリコーン界面活性剤は、粘弾性ポリウレタン発泡体においても用いてよい。粘弾性ポリウレタン発泡体は、「低弾性発泡体(dead foam)」、「低回復性発泡体(slow recovery foam)」または「高制動性発泡体(high damping foam)」としても知られ、圧縮からのゆるやかで漸進的な回復によって特徴づけられる。粘弾性ポリウレタン発泡体の物理的性質の多くは、汎用のものに似ているが、粘弾性ポリウレタン発泡体の密度勾配は、はるかに低い。粘弾性ポリウレタン発泡体の適切な用途は、形状追従特性、エネルギー減衰特性および遮音特性の長所を利用する。具体的な用途で、粘弾性ポリウレタン発泡体の望ましい密度が決まる。
【0055】
粘弾性ポリウレタン発泡体に使用されるポリオールは、高いヒドロキシル価(OH)によって特徴づけられ、生成する発泡体のガラス転移点温度が室温に近い、より短い鎖長のポリウレタンブロックを生ずる傾向がある。
【0056】
粘弾性ポリウレタン発泡体を作製する方法では、特に「一回成形法」のような当分野に既知の加工技術を適用してよい。粘弾性ポリウレタン発泡体生成組成物によって作製された粘弾性ポリウレタン発泡体は、使用する具体的な成分に応じた種々の物理パラメーターを有しうる。当業者は、粘弾性ポリウレタン発泡体に必要とする性質と、粘弾性ポリウレタン発泡体の使用目的とに基づいて、具体的な成分を変えることができる。
【実施例】
【0057】
この実施例で使用される、以下の記号、用語および略語は、以下の意味を有する:
Hyperlite(登録商標)E−848は、ヒドロキシル価が30.0〜33.0mgKOH/g、分子量5,000のポリオキシアルキレンポリオールであり Bayer Corporationから入手可能である。
Hyperlite(登録商標)E−850は、ヒドロキシル価が18.2〜22.2mgKOH/gの高分子ポリオールであり、Bayer Corporationから入手可能である。
DEOA−LF:ジエタノールアミン(2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エタノール);架橋剤;Dow Chemical Companyから入手可能である。
Niax(登録商標)A−1:発泡用アミン触媒;ビス(2’,2−ジメチルアミノエチルエーテル)70重量%のジプロピレングリコール(30重量%)溶液;General Electric Advanced Materialsから入手可能である。
Niax(登録商標)C−5:アミン触媒;ペンタメチルジエチレントリアミン、(N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]N,N’,N’−トリメチル−1,2−エタンジアミン);General Electric Advanced Materialsから入手可能である。
Niax(登録商標)A−33:ゲル化用アミン触媒;トリエチレンジアミン(33重量%)のジプロピレングリコール(67重量%)溶液;General Electric Advanced Materialsから入手可能である。
Niax(登録商標)C−41:三量化触媒;1,3,5−トリス−(ジメチルアミノプロピル);General Electric Advanced Materialsから入手可能である。
TDI=トルエンジイソシアナート(T−80)
Voranol(登録商標)490:ポリエーテルポリオール;MW=490;OH数=490(mg/KOH/g);Dow Chemical Companyから入手可能である。
Voranol(登録商標)800:ポリオール;MW=278;OH数=800(mg/KOH/g);Dow Chemical Companyから入手可能である。
Papi(登録商標)27MDI:ポリメチレンポリフェニルイソシアナート;イソシアナート当量=134.0;NCO含有量=31.4;Dow Chemical Companyから入手可能である。
指数=「イソシアナート指数」は、用いたポリイソシアナートの実際の量を、反応混合物中の総ての活性水素と反応するのに必要なポリイソシアナートの理論上必要である化学量論的な量で割り、100を掛けた値を意味する。
【0058】
比較例1;実施例1および2
典型的な高弾性(HR)を持つ軟質発泡体調合物(表1に示す)を、既知で汎用の手段によって比較例1ならびに実施例1および2のポリウレタン発泡体の調製に用いた。一般式M’DyM’の酸官能性基シリコーン界面活性剤(すなわち、実施例1および2)を、有機酸とヒドロキシ含有ペンダント基とによりヒドロシリル化し、自由膨張とウレタン系で比較した。比較例1ならびに実施例1および2の膨張上昇と温度上昇のプロフィールを測定し、結果を図1および2に示した。膨張と温度のプロフィールは、有機酸ペンダントシリコーン界面活性剤が、同じ使用量で発泡体を膨張させる反応を著しく遅延化させたこと示す。この遅延化は、発泡体の温度および高さの変化の遅れにおいて示される。
【0059】
【表1】

【0060】
比較例2;実施例3〜5
比較例2および実施例3〜5により出口時間試験(exit time test)を行った。比較例2および実施例3〜5は、表1に示したHRポリウレタン発泡体調合物と表2に示したシリコーン界面活性剤とをそれぞれ使用して調製された。HRポリウレタン発泡体は、既知で汎用の手段によって調製された。
【0061】
出口時間試験データは、典型的な71℃(160°F)での等温試験と、38.1センチメートル(15インチ)×38.1センチメートル(15インチ)×10.2センチメートル(4インチ)の鋳型とを用い、発泡体が等温の鋳型から出てくるときを測定された。鋳型上部にある通気孔からの出口時間は、アルキル酸ペンダントの界面活性剤により調製した実施例3〜5が、ポリウレタン発泡体の反応を著しく遅延させたことを示す。秒で測定した出口時間の結果を表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
比較例3;実施例6
反応性の制御も、絶縁材用の硬質ウレタン発泡体の加工処理において望ましい効果である。反応性の遅延化は、入り組んだ部分での流動性を向上させることができる。代表的な発泡剤は、水、ハイドロクロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、ギ酸メチル、および炭化水素の種々の混合物を含む。表3に示すように、汎用の硬質発泡体調合物は、比較例3および実施例6の調製に用いられた。
【0064】
比較例3は、一般構造MDxD’yMのシリコーン骨格上にヒドロキシル官能性ポリエーテルペンダント基を有する界面活性剤R1を含み、以下のように調製された:四ツ口の500ml丸底フラスコに、以下の成分を入れた:187.64gの(CH−CH−O−(CO)12―(CO)−OH、112.54gのMD20D’Mで示される液状シリコーンと、0.06gのアミン緩衝液。四ツ口フラスコには熱電対と窒素導入管を備えつけた。物質はおよそ250rpmで撹拌し85℃に加熱した。混合物は、10ppmの10%塩化白金酸エタノール溶液で触媒された。反応は約12℃の発熱を伴って起こった。触媒添加の15分後に、反応容器からサンプリングして、水素ガスの発生に関する塩基溶液試験を用いて、残余のSiHがないことが分かった。
【0065】
実施例6は、カルボン酸末端基を生成させるために1:1のモル比で無水マレイン酸と反応させてヒドロキシ基を修飾したことを除いて、界面活性剤Rlと同一の同様な界面活性剤R2により調製された。R2は以下のように調製された:上に記述された手順からのR1を100gと、7.7グラムの無水マレイン酸を、熱電対、窒素導入管と、フリードリッヒ凝縮器とを備えつけた500mlの丸底フラスコに入れた。物質は、フラスコ中に無水マレイン酸(固体)が認められなくなるまで6時間、120℃に加熱され撹拌された。試験のため、物質は冷却されびんに回収された。
【0066】
【表3】

【0067】
図3および4は、ポリウレタン発泡体の比較例3および実施例6の膨張と、温度とのプロフィールをグラフで説明する。図3および4にそれぞれ示した膨張の高さと、温度とのプロフィールは、自由膨張の状態で測定した。実施例6のポリウレタン発泡体は、図3および図4にそれぞれ示されるように、膨張と温度における著しい遅延化を示した。
【0068】
発泡体の熱移動の抵抗を測定するために、比較例3および実施例6の自由膨張の発泡体調合物から、K係数用試料を調製した。実験は、3回繰り返し、そして各結果の平均が表4に示される。実施例6(酸末端シリコーン界面活性剤を含む)は、向上した流動性を示し、そして熱的挙動は影響されなかった(表4を参照)。比較例3および実施例6のポリウレタン発泡体は、類似の外観形状を示したが、しかしながら実施例6のポリウレタン発泡体は、遅延化された膨張と温度のプロフィールを示した。
【0069】
【表4】

【0070】
本発明のプロセスは、若干の実施態様に関して記載されるが、発明の範囲から外れずに、種々の変更を行ってよく、そして等価物は等価物の構成要素で置き換えられてもよいことは、当業者によって理解されよう。さらに加えて、本発明の実質的な範囲から外れずに特定の状況または物質を本発明の教示に適合させるために、多くの修正が行われよう。したがって、本発明は、発明のプロセスを行うために熟慮されたベストモードとして開示した特定の実施態様に限定されるのではなく、本発明は、添付する請求項の範囲内に入る総ての実施態様を含む、と意図されるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン発泡体を生成する組成物であって、
(a)少なくとも1つのポリオール;
(b)少なくとも1つのポリイソシアナート;
(c)ポリウレタン生成反応のための少なくとも1つのアミン触媒;
(d)カルボン酸官能性を有する少なくとも1つのシリコーン;および、
(e)少なくとも1つの発泡剤
を含有する、組成物。
【請求項2】
前記ポリオールが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、アクリル成分を付加したポリオール、アクリル成分を分散したポリオール、スチレンを付加したポリオール、スチレンを分散したポリオール、ビニルを付加したポリオール、ビニルを分散したポリオール、尿素を分散したポリオール、ポリカルボナートポリオール、ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオール、混合ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンジオール、ポリオキシアルキルエンジオール、ポリオキシアルキレントリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、脂肪族および芳香族のポリエステルポリオール、エステルポリオール、ポリヒドロキシポリカルボナート、ポリヒドロキシポリアセタール、ポリヒドロキシポリアクリラート、ポリヒドロキシポリエステルアミド、ポリヒドロキシポリチオエーテル、ポリオレフィンポリオール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項3】
前記ポリオールが、約200から約10,000までの平均分子量と、約10から約4,000までのヒドロキシル価とを有する少なくとも1つのポリオールである、請求項1に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアナート(b)が、MDI、TDIおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアナートが、トルエンジイソシアナート、ジフェニルメタンイソシアナート、メチレンジフェニルジイソシアナート、2,4−トルエンジイソシアナート、2,6−トルエンジイソシアナート、およびそれらの高分子体からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項4に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項6】
前記触媒(c)が、アミン触媒とスズ含有触媒との混合物である、請求項1に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項7】
前記シリコーン(d)が、一般式:
MDxD’’yM
〔式中、Mは、(CHSiO1/2を表し;
は、R(CHSiO1/2を表し;
Dは、(CHSiO2/2を表し:
D”は、(CH)(R)SiO2/2を表し;
xは、約0から約100までであり;
yは、約0から約40までであり;そして
zは、0から2までであり;
上記の式のMとD”において、Rは、少なくとも1つのカルボン酸官能性を有する、アルキル、アリール、ポリエーテル、ポリエステルである。〕
を有する、請求項1に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項8】
xが、約0から約80までであり、yが、約0から約25までであり、そしてzが、0から2までである、請求項7に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項9】
xが、約0から約60までであり、yが、約0から約20までであり、そしてzが、0から2までである、請求項7に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項10】
xが、約0から約25までであり、yが、約0から約10までであり、そしてzが、0から2までである、請求項7に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項11】
前記シリコーン(d)が、
n−プロパノール,3,3’−(1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチル−1,11−ヘキサシロキサンジイル)ビス−;
ドデカン酸,3,3’(1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチル−1,11−ヘキサシロキサンジイル)ビス−;
2−ブテン二酸,モノプロピルエステル,3,3’−(1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチル−1,11−ヘキサシロキサンジイル)ビス−;
ペンタン,2−メチル,3,3’−(1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチル−1,11−ヘキサシロキサンジイル)ビス−;
ペンタノイック,3,3’−(1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチル−1,11−ヘキサシロキサンジイル)ビス−;
ウンデンカン酸,3,3’−(1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチル−1,11−ヘキサシロキサンジイル)ビス−;および、
マレイン酸,3,3’−(1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチル−1,11−ヘキサシロキサンジイル)ビス−、
からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項12】
前記ポリオールが、約2から約12までの官能性を持つ、請求項1に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項13】
前記イソシアナート指数が、約60から約300までである、請求項1に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項14】
前記イソシアナート指数が、約80から約120までである、請求項13に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項15】
前記発泡剤が水である、請求項1に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項16】
触媒、架橋剤、他の界面活性剤、難燃剤、安定剤、着色剤、充填剤、抗菌剤、エクステンダー油、静電防止剤、溶媒、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分を、任意選択で含有する、請求項1に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項17】
前記ポリウレタン発泡体が、1立方メートル当り約5から約100キログラムまでの密度を有する、請求項1に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項18】
前記ポリウレタン発泡体が、1立方メートル当り約20から約45キログラムまでの密度を有する、請求項17に記載のポリウレタン発泡体を生成する組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の発泡体を生成する組成物を発泡させることを含有する、ポリウレタン発泡体を製造するプロセス。
【請求項20】
請求項19に記載のプロセスによって製造されたポリウレタン発泡体。
【請求項21】
請求項11に記載の発泡体を生成する組成物を発泡させることを含有する、ポリウレタン発泡体を製造するプロセス。
【請求項22】
請求項19に記載のプロセスによって製造された粘弾性のポリウレタン発泡体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−504399(P2010−504399A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529239(P2009−529239)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/020390
【国際公開番号】WO2008/036365
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508229301)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】