説明

修飾シクロスポリンの使用

肝臓疾患の予防または処置に有用な特性を有する、非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリンを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非免疫抑制性シクロスポリンの新規な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロスポリンは、構造的に特徴的な、環状の、ポリ−Nメチル化ウンデカペプチドのクラスを含み、一般に、薬理学的活性、とりわけ免疫抑制性または抗炎症性活性を有する。シクロフィリンと強力に結合するが、免疫抑制性でないシクロスポリンが同定されている。WO2005021028 A1は、C型肝炎ウイルス(HCV)に対する阻害効果を有する非免疫抑制性シクロスポリンの使用を開示している。
【0003】
シクロスポリンは、混合リンパ球反応(MLR)においてシクロスポリンAの活性の5%以下、好ましくは2%以下の活性を有するとき、非免疫抑制性であると考えられる。混合リンパ球反応は、T. Meoによって“Immunological Methods”, L. Lefkovits and B. Peris, Eds., Academic Press, N.Y. pp. 227 - 239 (1979)に記載されている。Balb/cマウス(メス、8−10週齢)の脾臓細胞(0.5×10個)を5日間、CBAマウス(メス、8−10週齢)の放射線照射(2000reds)またはマイトマイシンC処理脾臓細胞0.5×10個と共にインキュベートする。放射線照射同種細胞はBalb/c脾臓細胞の増殖性反応を誘導し、これはDNAへの標識化前駆体取り込みによって測定することができる。刺激細胞は放射線照射(またはマイトマイシンC処理)されているので、Balb/c細胞に増殖的反応をせず、抗原性を保持する。MLRにおいて試験化合物について測定したIC50を、並行試験においてシクロスポリンAについて測定したものと比較する。さらに、非免疫抑制性シクロスポリンはCNおよび下流NF−AT経路の阻害能を欠く。
【0004】
繊維症は、修復または反応プロセスとしての、臓器または組織における過剰な繊維性結合性組織の形成または発達である。繊維症の1つの形態である肝硬変は、繊維性瘢痕(scar)組織および再生性結節(nodule)による肝臓組織の置換によって特徴付けられる慢性肝臓疾患の結果であり、肝機能の進行的喪失を導く。肝星細胞(HSC)は、特徴的な星状形態を有し、Disse類洞周囲腔に存在する肝臓非実質細胞である。肝臓傷害後、HSCは活性化筋繊維芽表現型に分化転換を起こして、α平滑筋アクチンを発現する。次に活性化HSCは増殖し、コラーゲンのような細胞外マトリックスタンパク質を生産する。シクロスポリンA(cyclosporine)およびタクロリムスのような免疫抑制剤の、HSCにおける細胞増殖およびコラーゲン生産に対するこれまでの評価は、シクロスポリンは細胞増殖およびコラーゲン生産を抑制するが、タクロリムスはかかる効果を有さないというものであり、これはシクロスポリンが潜在的に抗繊維形成効果を有することを示している。
【0005】
現在利用可能な抗繊維治療は、繊維形成を制圧するよりもむしろ、肝炎の抑制に向けられている。治療的介入の要点は、傷害性刺激を除去し、肝炎を抑制し、星状細胞活性化を下方制御し、マトリックス分解を促進する努力を含む必要がある。
【0006】
したがって、本発明は、グラフト−肝硬変、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん、例えば肝細胞癌腫のような肝臓疾患またはその進行の予防または処置における、非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリンの使用を提供する。さらに、非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリンは、例えば先天性肝繊維症を有する新生児または移植レシピエント、例えば臓器もしくは組織移植、例えば肝臓移植レシピエントの予防的処置として、使用することもできる。
【0007】
シクロスポリンは、Quesniaux in Eur. J. Immunol. 1987 17 1359 1365に記載の競合ELISA試験において、シクロスポリンAの少なくとも5分の1ヒト組換えシクロフィリンと結合すれば、シクロフィリン結合性であると考えられる。この試験において、試験するシクロスポリンをシクロフィリンと被覆BSA−シクロスポリンAのインキュベーション中に加え、そして競合剤なしでの対照反応の50%阻害を与える濃度(IC50)を計算する。この結果を、試験化合物のIC50とシクロスポリンAそれ自体の刺激試験におけるIC50の比の、10を底とした対数である結合比(BR)として表現する。したがって、BR 1.0は、試験化合物がヒトシクロフィリンと、シクロスポリンAの10倍低い倍率で結合することを示し、負の値はシクロスポリンAのものよりも強く結合することを示している。HCVに対して活性なシクロスポリンは、0.7未満、好ましくは0以下のBRを有する。
【0008】
免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリンの例は、例えば式I
【化1】

〔式中、
WはMeBmt、ジヒドロ−MeBmt、8’−ヒドロキシ−MeBmtまたはO−アセチル−MeBmtであり;
XはαAbu、Val、Thr、Nvaまたは0−メチルスレオニン(MeOThr)であり;
RはPro、Sar、(D)−MeSer、(D)−MeAlaまたは(D)−MeSer(Oアセチル)であり;
YはMeLeu、チオMeLeu、γ−ヒドロキシ−MeLeu、MeIle、MeVal、MeThr、MeAla、MeaIleまたはMeaThr;N−エチルVal、N−エチルIle、N−エチルThr、N−エチルPhe、N−エチルTyrまたはN−エチルThr(Oアセチル)であり;
ZはVal、Leu、MeValまたはMeLeuであり;
QはMeLeu、γ−ヒドロキシ−MeLeu、MeAlaまたはProであり;
は(D)AlaまたはLysであり;
はMeLeuまたはγ−ヒドロキシ−MeLeuであり;そして
はMeLeuまたはMeAlaである〕
の化合物を含む。
【0009】
好ましい式Iの化合物は、例えば式Ia
【化2】

〔式中、
W’はMeBmt、ジヒドロ−MeBmtまたは8’−ヒドロキシ−MeBmtであり;
XはαAbu、Val、Thr、Nvaまたは0−メチルスレオニン(MeOThr)であり;
R’はSar、(D)−MeSer、(D)−MeAlaまたは(D)−MeSer(Oアセチル)であり;
Y’はMeLeu、γ−ヒドロキシ−MeLeu、Melle、MeVal、MeThr、MeAla、MeaIleまたはMeaThr;N−エチルVal、N−エチルIle、N−エチルThr、N−エチルPhe、N−エチルTyrまたはN−エチルThr(Oアセチル)であり;
ZはVal、Leu、MeValまたはMeLeuであり;そして
Q’はMeLeu、γ−ヒドロキシ−MeLeuまたはMeAlaである〕
の化合物である。
【0010】
基W’、X、Y’、Z、Q’およびR’は独立して、下記の好ましい意味を有する:
W’は好ましくはW”であり、ここでW”はMeBmtまたはジヒドロ−MeBmtである;
Xは好ましくはX’であり、ここでX’はαAbuまたはNvaであり、より好ましくはX”であり、ここでX”はαAbuである;
R’は好ましくはR”であり、ここでR”はSarである;
Y’は好ましくはY”であり、ここでY”はγ−ヒドロキシ−MeLeu、MeVal、MeThr、MeIle、N−エチルIleまたはN−エチルValである;
Zは好ましくはZ’であり、ここでZ’はValまたはMeValである;そして
Q’は好ましくはQ”であり、ここでQ”はMeLeuである。
【0011】
式Iaの化合物の好ましい群は、W’がW”であり、XがX’であり、Y’がY”であり、ZがZ’であり、Q’がQ”であり、そしてR’がR”であるものである。
【0012】
式Iaの化合物の好ましい例は、例えば:
a)[ジヒドロ−MeBmt]−[γ−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリン; BR = 0.1; IR<1%
b)[MeVal]−シクロスポリン; BR = 0.1; IR<1%
c)[MeIle]−シクロスポリン; BR = -0.2; IR<1%
d)[MeThr]−シクロスポリン
e)[γ−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリン; BR =0.4; IR<1%
f)[エチル−Ile]−シクロスポリン; BR = 0.1; IR<2%
g)[エチル−Val]−シクロスポリン; BR = 0; IR<2%
h)[Nva]−[γ−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリン;
i)[γ−ヒドロキシ−MeLeu]−[γ−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリン;
j)[MeVal]−シクロスポリン; BR = 0.4; IR = 5.3%
k)[MeOThr]−[(D)MeAla]−[MeVal]−シクロスポリン;
j)[8’−ヒドロキシ−MeBmt]−シクロスポリン、BR = 0.35; IR=1.8%
k)[MeAla]−シクロスポリン; BR = -0.4; IR= 3.2
I)[γ−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリン; BR = 0.15; IR = 2.9
である。
IR=免疫抑制比、シクロスポリンAに対する活性の割合として表現される。
【0013】
非免疫抑制性シクロスポリンのさらなる例は、WO 98/28330、WO 98/28329およびWO 98/28328(その内容を出典明示により本明細書の一部とする)に記載の化合物、例えば式II
【化3】

〔式中、W
【化4】

{式中、Raは式IcまたはId
【化5】

(式中、RはC1−4アルキルチオ、アミノC1−4アルキルチオ、C1−4アルキルアミノC1−4アルキルチオ、ジC1−4アルキルアミノ−C1−4アルキルチオ、ピリミジニルチオ、チアゾリルチオ、N−C1−4アルキルイミダゾリルチオ、ヒドロキシC1−4アルキルフェニルチオ、ヒドロキシC1−4アルキルフェノキシ、ニトロフェニルアミノまたは2−オキソピリミジン−1−イルであり、そしてR’はC1−4アルキルである)
の基である}
であり;
XaはAbuであり;
【0014】
は−NMe−CH(R)−CO−{ここで、RはHまたは−S−Alk−Rであり、ここでAlk−Rはメチルであるか;またはAlkは直鎖もしくは分枝鎖C2−6アルキレンまたはC3−6シクロアルキレンであり、RはH;OH;COOH;C2−5アルコキシカルボニル;NRであり、ここでRおよびRは各々独立して、H、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C3−6シクロアルキルおよびフェニル(各々所望によりハロゲン、C1−4アルコキシ、C2−5アルコキシカルボニル、アミノ、C1−4アルキルアミノおよび/またはジC1−4アルキル−アミノで置換されていてもよい)、ならびにベンジルおよびヘテロ環式基(当該ベンジルおよびヘテロ環式基は飽和または不飽和であり、5〜6個の環員と1〜3個のヘテロ原子を含む)から選択されるか、またはRとRはそれらが結合している窒素原子と一体となって、4−6員ヘテロ環(これは窒素、酸素および硫黄から選択される他のヘテロ原子を含んでいてもよく、そして所望によりC1−4アルキル、フェニルまたはベンジルで置換されている)を形成するか;またはRおよびRは各々独立して、式Ib
【化6】

(式中、RおよびRは上記定義のとおりであり、RはHまたはC1−4アルキルであり、nは2〜4の整数である)の基である}
であり、
はMeLeuまたはγ−ヒドロキシ−MeLeuであり;
はValであり;そして
はMeLeuである、ただし、YがMeLeuであるとき、RはHではない〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0015】
式IIにおいて、Rおよび/またはRがヘテロ環式基であるとき、これはピリジル、テトラヒドロ−ピリジル、ピペリジル、イミダゾリル、オキサゾリルまたはチアゾリルであり得る。RとRがそれらが結合している窒素原子と共にヘテロ環式基を形成するとき、一例として、該ヘテロ環式基はアゼチジニル、ピペリジル、ピペラジニル、N−メチル−ピペラジニル、N−フェニルピペラジニル、N−ベンジルピペラジニル、ピリジル、イミダゾリル、モルホリノ、チオモルホリノ、テトラヒドロピリジル、メチルテトラヒドロピリジル(例えば4−メチル−テトラヒドロピリジル)またはフェニルテトラヒドロピリジル(例えば4フェニルテトラヒドロピリジル)から選択され得る。
【0016】
式I、IaまたはIIの化合物を、以下のとおり分類され得る多様な方法で得ることができる:
1)発酵
2)生体内変化
3)誘導体化
4)部分合成
5)全合成
(例えばEP 0 484 281 A1、WO 00/01715、WO 98/28330、WO 98/28329またはWO 98/28328に記載されている。それらの内容を、出典明示により本明細書の一部とする)。
【0017】
一連のさらなる具体的なまたは別の態様において、本発明はまた、以下のものを提供する:
1.1 それを必要とする対象における肝臓疾患に関連した状態を予防または処置する方法であって、当該対象に治療上有効量の非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリン、例えば式I、IaまたはIIの化合物を投与することを含む方法。
【0018】
本発明によって、非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリンは、肝臓疾患に関連した兆候、症状または状態の1つ以上を緩解するか、または消失させるのに有効な量、例えば対象の生検サンプルにおいて測定したコラーゲン生産を抑制するのに有効な量で、投与することができる。
【0019】
1.2 培地におけるHSC増殖を抑制する方法であって、この培地に有効量の非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリン、例えば式I、IaまたはIIの化合物を適用することを含む方法。
【0020】
1.3 それを必要とする対象における肝臓疾患に関連した状態を抑制する方法であって、当該対象に治療上有効量の非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリン、例えば式I、IaまたはIIの化合物を投与することを含む方法。
【0021】
1.4 それを必要とする移植レシピエントにおける肝臓疾患に関連した状態の再発を予防または処置する方法であって、当該レシピエントに治療上有効量の非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリン、例えば式I、IaまたはIIの化合物を投与することを含む方法。
【0022】
2. 上記定義の何れかの方法に使用する医薬組成物の製造における、非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリン、例えば式I、IaまたはIIの化合物の使用。
【0023】
3. 上記定義の何れかの方法に使用するための医薬組成物であって、非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリン、例えば式I、IaまたはIIの化合物と、1種以上の薬学的に許容される希釈剤または担体を含む医薬組成物。
【0024】
上記疾患および状態の処置における非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリン(以下、「本発明のシクロスポリン」)の有用性を、標準的な動物試験または臨床試験で、例えば下記方法によって示すことができる。
【0025】
A.インビトロ細胞培養:
HSCは、オスWistarラットの肝臓から、Kato, et al, J. Hepatol (1999) 31:91-99に記載に従い、インサイチュコラゲナーゼ灌流、プロナーゼ消化、次いで2層化(17%/11.5%)したメトリザミド溶液(Sigma Chemical, St. Louis, MO)中での遠心分離を行う一連の操作で単離する。HSCは、10%胎児ウシ血清(FCS)を含むDulbecco修飾Eagle培地(DMEM)中で培養する。実験は、第3と第4連続継代間の細胞で行う。マウスマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP−1)およびマトリックスメタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP−1)を測定するため、Shibata, et al, Cell Transplant (2003) 12:499-507に従って作成したHSC由来のヒト細胞系であるTWNT−4細胞を、MMP−1およびTIMP−1に対するFasudilの効果を評価するために用いる。TWNT−4細胞を前出(Id)のとおり、10%FCSを含むDMEM中で培養する。NIM811(Novartis Pharma AG, Basel, Switzerland)をDMEMに溶解させ、培養物に加える。HSCの細胞生存率は、無血清条件下、24時間、2μM NIM811の存在下で、90%を超える。
【0026】
タイプ1コラーゲンアッセイ: 培養したHSCを、無血清培地中、NIM811の存在下または非存在下で24時間インキュベートする。培養培地中のタイプIコラーゲンを、Iwamoto, et al, J. Hepatol (2000) 32:762-770に記載のとおり、ELISAによって測定する。抗ラットタイプIコラーゲン抗体(LSL, Tokyo, Japan)を1次抗体として使用することができる。ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG(Organon Teknika Corporation, Durham, NC)を2次抗体として用いる。ラット尾腱コラーゲンタイプI(Advance Biofactures Corporation, Lymbrook, NY)を標準的な対照として用いる。
【0027】
MMP−1、TIMP−1およびコラゲナーゼアッセイ: 培養したTWNT−4細胞を、無血清培地中、NIM811の存在下または非存在下で24時間インキュベートする。培養培地中のMMP−1およびTIMP−1生産を、Fukushima, et al, Liver Int (2005) 25:829-838に記載の方法に従って、ヒトMMP−1のためのBiotrak ELISAシステム(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ, USA)およびhTIMP−1キット(Daiichi Fine Chemical Co. Ltd., Toyama, Japan)によるELISAによってそれぞれ測定する。培養培地中の活性MMP−1およびプロ−MMP−1を、MMP−1 Biotrak Activity Assay System (Amersham)で測定する。
【0028】
実時間RT−PCRを使用した遺伝子発現分析: 全RNAをTWNT−4細胞から、Trizol剤(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)で製造し、これをNIM811の存在下または非存在下、10%FCS中で24時間維持する。cDNAを1.0mg RNAから、GeneAmp(商標)RNA PCR(Applied Biosystems, Branchburg, NJ, USA)で、ランダムヘキサマーを用いて合成する。実時間PCRをLightCycler-FastStart DNA Master SYBR Green 1 (Roche, Tokyo, Japan)を用いて、Nakamuta, et al, Int J. Mol Med (2005) 16(4):631-635に記載のとおりに行う。LightCycler-FastStart DNA Master SYBR Green 1、4mM MgCl、0.5μMの上流および下流PCRプライマー、ならびにテンプレートとして2mlの第1ストランドcDNAを含む反応混合物(20μl)を用いる。反応の変化を制御するため、すべてのPCRを、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)発現に対して正規化する。使用できるプライマーは下記のとおりである:ヒトタイプIコラーゲンa1鎖について、5’−AGGGTGAGACAGGCGAACAG−3’(フォワードプライマー)(配列番号1)および5’−CTCTTGAGGTGGCTGGGGCA−3’(リバースプライマー)(配列番号2)(GenBank(商標)受託番号NM-000088)(21);ヒトa−SMAについて、5’−AATGAGATGGCCACTGCCGC−3’(フォワードプライマー)(配列番号3)および5’−CAGAGTATTTGCGCTCCGGA−3’(リバースプライマー)(GenBank(商標)受託番号NM-000088);MMP−1について、5’−GATCATCGGGACAACTCTCCT−3’(フォワードプライマー)および5’−TCCGGGTAGAAGGGATTTGTG−3’(リバースプライマー)(GenBank(商標)受託番号NM002421);TIMP−1について、5’−TTCTGCAATTCCGACCTCGT−3’(フォワードプライマー)および5’−TCCGTCCACAAGCAATGAGT−3’(リバースプライマー)(配列番号4)(GenBank(商標)受託番号NM003254);Smad7について、5’−GGATCTCAGGCATTCCTCGG−3’(フォワードプライマー)(配列番号5)および5’−CAGTATGCCACCACGCACCA−3’(リバースプライマー)(配列番号6)(Quan, et al, J Biol Chem (2005) 80:8079-8085);形質転換増殖因子β受容体I(TGFβRI)について、5’−GGCCGTTTGTATGTGCACCCTC−3’(フォワードプライマー)(配列番号7)および5’−GGGCGATCTAATGAAGGGTCC−3’(リバースプライマー)(配列番号8)(Woszcyk et al, Med Sci Monit (2004) 10:C33C37))。
【0029】
BrdU取り込み分析: BrdUのHSC取り込みを、Higashi, et al, J. Lab Clin Med (2005) 145(6):316-322に記載のとおり、細胞増殖ELISA(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を用いて測定する。簡単に言うと、亜コンフルエントのHSCを、24時間血清欠乏にする。次にこれをDMEMで洗浄して、BrdUと共に、10%FCSを含むDMEM中、NIM811の存在下または非存在下で24時間インキュベートする。細胞をBrdUで標識化した後、細胞DNAを消化し、ペルオキシダーゼと結合した抗BrdU抗体と共にインキュベートする。BrdU取り込みを、上清の蛍光強度を450nm(励起)および690nm(放出)で測定して評価する。
【0030】
アポトーシス分析: HSCをNIM811の存在下または非存在下、無血清条件で24時間維持する。細胞を4%パラホルムアルデヒド/PBS中、室温で30分間固定し、0.2%Triton X-100を含むPBS中、4℃で5分間透過処理する。細胞をHoechst 33342で染色し、In Situ Cell Death Detection Kit(Roche)を用い、製造業者の指示に従って、TUNEL法によって分析する。サンプルを、LSM 510共焦点レーザー走査顕微鏡(Zeiss)で可視化する。3つの独立した実験、そして3つの異なる細胞調製物から、少なくとも100個の細胞が、各条件について測定される。
【0031】
リン酸化および非リン酸化−MAPKについてのウェスタンブロット分析: ウェスタンブロット分析を、Uchimura, et al, Hepatology (2001) 33:91099に記載のとおりに行う。HSCを24時間飢餓状態にし、次にNIM811を用いまたは用いることなく、2時間処理する。1×10個のTWNT−4細胞を含む全細胞溶解物を、100μl SDS−PAGEサンプルバッファーで調製する。タンパク質溶解物を12% SDS−PAGEに供し、二フッ化ポリビニリデン膜(Millipore, Bedford, MA)に移し、そしてERK1/2 MAPK、リン酸化−ERK1/2 MAPK(Thr202/Tyr204)、JNK、リン酸化−JNK(Thr183/Tyr185)、p38 MAPK、またはリン酸化−p38 MAPK(Thr180/Tyr182)(New England Biolabs, Beverly, MA)について、1次抗体で探索する。結合抗体を、ペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgG(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)を2次抗体として用いて検出する。ブロットをECL−プラス(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)を用いて検出して、抗体を可視化する。ERK1/2 MAPK、リン酸化−ERK1/2 MAPK、JNK、リン酸化−JNK、p38 MAPK、およびリン酸化−p38 MAPKのレベルを、光学走査系を用いたデンシトメトリーによって定量する。比較のために、リン酸化ERK1/2、JNKおよびp38 MAPKの非リン酸化ERK1/2、JNKおよびp38 MAPKに対する比それぞれを、濃度測定データから計算する。
【0032】
リン酸化および非リン酸化−Smad2およびSmad3についてのウェスタンブロット分析: ウェスタンブロット分析を、MAPK分析について上記のとおりに行い、Smad2、リン酸化−Smad2(Thr/Tyr)、Smad3またはリン酸化Smad3(Thr/Tyr)について1次抗体で探索する(Cell Signaling Technology, Danvers, MA)。比較として、リン酸化Smad2およびSmad3の非リン酸化Smad2およびSmad3に対する比それぞれを、濃度測定データから計算する。
【0033】
統計的分析: 全ての結果を、平均±SEMとして示す。片側ANOVA、続いてScheff検定またはMann−Whitney検定を用いて、比較を行う。
【0034】
実施例1 タイプIコラーゲン蓄積、MMP−1およびTIMP−1生産、ならびにコラゲナーゼ活性化に対するNIM811の効果
HSCによるECM生産に対するNIM811の効果を評価するため、上記のとおり多くのラットHSCを調節した後、培養培地中のタイプIコラーゲン濃度を測定する。高濃度のNIM811、およびシクロスポリンA(cyclosporine)での細胞の処理は、コラーゲン蓄積の濃度依存的抑制を導く;0.5μM NIM811は、コラーゲン蓄積を約50%減少させる。この抑制は、NIM811での処置によってコラーゲン発現が抑制されるので、少なくとも転写よりも上流で制御される。Nakamuta, et al, Transplant Proc (2005) 37:4598-4602において既に報告されたとおり、シクロスポリンは0.125μM(150ng/ml)の臨床的に妥当な(clinically relevant)濃度で、コラーゲン濃度を約50%減少させるが、タクロリムスは12.5nM(10ng/ml)の臨床的に妥当な濃度でコラーゲン生産を顕著に低減させない。コラーゲン生産の速度によって決定されることに加えて、コラーゲン蓄積は、コラゲナーゼ活性によって、すなわちMMP1とTMIP−1間のバランスによって制御される。NIM811は、コラゲナーゼ活性(活性MMP−1)およびプロ−MMP−1レベルの濃度依存的増加を導き;0.5μM NIM811の存在下で、コラゲナーゼ活性はおよそ2倍増加する。しかし、NIM811は2.0μMの濃度ですら、TIMP−1生産を顕著に低減させない。
【0035】
実施例2 タイプ1コラーゲン、MMP−1およびTIMP−1遺伝子発現に対するNIM811の効果
タイプIコラーゲン、MMP−1およびTIMP−1のmRNAレベルに対するNIM811またはシクロスポリンの効果を評価するため、本明細書に記載のとおりRT−PCRを行う。タイプIコラーゲンの発現は、0.5μM NIM811の存在下でおよそ30%減少する。対照的に、0.5μM NIM811によって、MMP−1の発現がほぼ2倍増進するが、TIMP−1のそれは変化しなかった。これらの結果は、遺伝子発現に対するNIM811の効果は、そのタンパク質生産に対する効果と同様であることを示している。
【0036】
実施例3 細胞増殖およびアポトーシスに対するファスジルの効果
前の研究によって、コラーゲン生産の刺激に加えて、活性化HSCはMMP−1のような間質性コラゲナーゼによる間質性コラーゲンの分解を阻害することが示されており、このことはマトリックス分解が繊維症の進行中に阻害されることを示している(Benyon, et al, Gastroenterology (1996) 110:821-831、Iredale, et al, Hepatology (1996) 24:17-184、Iredale, et al, J. Clin Invest (1992) 90:282287参照)。TIMP−1は、マトリックス分解の阻害とは独立して、細胞増殖およびアポトーシスを制御することが報告されている(Murphy, et al, J. Biol Chem (2002) 277:1106911076参照)。NIM811は濃度依存的様式で、アポトーシスなしにHSCの細胞増殖を抑制する。
【0037】
細胞増殖に対するNIM811の効果を試験するため、BrdU取り込みを本明細書に記載のとおり測定する。定量的分析によって、2.0μM NIM811処理によって新規DNA合成がおよそ30%減少するが、より低い濃度ではそうでないことが示される。さらに、2μM NIM811の存在下で、アポトーシスは観察されない。本発明者らの結果は、NIMが、コラーゲン生産の抑制およびコラゲナーゼ活性の増加のために、肝臓繊維症についての治療能を有することを示している。
【0038】
実施例4 MAPKシグナル伝達に対するNIM811の効果
NIM811によってコラーゲン生産および細胞増殖が抑制され、コラゲナーゼ活性が増加する機構を調査するため、HSCにおいてコラーゲン生産および細胞増殖に重要な役割を果たすERK1/2、JNKおよびp38を含むMAPKのような細胞間シグナル伝達カスケード(Marr, et al, Hepatology (2000) 1:428-434)に対するNIM811の効果を、上記のとおり評価する。NIM811は濃度0.5μMでJNKおよびp38 MAPKのリン酸化を、それぞれ3.6倍および2.3倍増加させる。NIM811での処置は、濃度上昇的にJNKおよびp38 MAPKのリン酸化を顕著に増加させるが、ERK1/2を抑制しない。シクロスポリンがその免疫抑制効果を、JNKおよびp38についてカルシニューリン依存性NFAT経路とカルシニューリン非依存性活性化経路の両方によって示すことは、既に示されている(Mastuda, et al, EMPO Reports (2000) 1:428-434)。シクロスポリンA(cyclosporine)アナログであるNIM811は、シクロフィリンAと結合しないため、NFAT経路を活性化しない(Waldmeier, et al, Mol Pharmacol, (2002) 62(1):22-29)。NIM811とシクロスポリンA(cyclosporine)間のJNKおよびp38に対する効果の差は、NIM811においてNFAT経路が存在しないことに由来するかも知れない。
【0039】
実施例5 TGFβシグナル伝達経路に対するNIM811の効果
MAPKに加えて、TGF−βシグナル伝達カスケードは、HSCのコラーゲン生産を強力に刺激する(Friedman, et al, J Biol Chem (1994) 269:10551-10558)。TGF−βは細胞膜でTGFβRIIと結合し、次にTGFβRIIはグリシン/セリンリッチドメインに位置するセリンおよびスレオニン残基でTGFβRIをリン酸化する(Wrana, et al, サイトカイン Growth Factor Rev (2000) 11:5-13)。リン酸化されたTGFβRIは、Smad2およびSmad3をC末端SSXSモチーフでリン酸化し、これは共通のパートナーであるSmad4と複合体を形成する。これらのSmadタンパク質は、核に移行し、コラーゲン(Id)のような標的遺伝子の転写を活性化する。Smad2およびSmad3を介するTGFβシグナル伝達カスケードは、Friedman, et al , J Biol Chem (1994) 269:10551-10558に記載されたタイプIコラーゲン遺伝子の発現を強く制御するので、Smad2およびSmad3のリン酸化に対するNIM811の効果が評価される。NIM811での処理によって、濃縮様式でSmad2およびSmad3のリン酸化が顕著に抑制され;0.5μM NIM811はSmad2およびSmad3のリン酸化を、それぞれおよそ70%および60%抑制する。Smad7の発現は、TGFβRIIリン酸化の阻害によってTGFβシグナル伝達経路を負に制御する(Hayashi, et al, Cell (1997) 1165-1173)。0.5μM NIM811によって、Smad7の発現がおよそ2倍に増加し、TGFβRIをおよそ50%抑制する。これらの結果は、NIM811がTGFβRIIおよび/またはTGFβR1キナーゼ活性を阻害し得ることを示唆している。Smad7(Id)、イムノフィリンFKBP(FK506結合タンパク質)12(40)およびSARA(受容体活性化のためのSmadアンカー)(41)は、TGFβRに関連しており、TGFβシグナル伝達を制御する。NIM811はSmad7の発現を増進し、そしてTGFRIのそれを抑制し、このことはNIM811がTGFβシグナル伝達経路を、受容体レベルでの阻害によって少なくとも部分的に阻害することを示している。シクロスポリンA(cyclosporine)も、Smad2、Smad3、Smad7およびTGFβRIに対する同様の効果を有する(データは公開せず)。
【0040】
上記のとおり、NIM811はJNKおよびp38に対してシクロスポリンAとは反対の効果を有するが、いずれもがコラーゲン生産および細胞増殖に対して同様の効果を示し、このことはNIMおよびシクロスポリンAが抗繊維形成効果、主としてTGFβシグナル伝達経路の阻害を示すことを示唆している。
【0041】
シクロフィリンは、ペプチド結合アミノ末端のプロリンへのcis−trans相互変換を触媒してタンパク質コンホメーションの変化を促進する、PPIアーゼファミリーである(Waldmeier, supra)。10個以上のシクロフィリンサブタイプが存在しており、それらは、転写制御、免疫応答、タンパク質分泌およびミトコンドリア機能を含む多様な細胞プロセスに関与している(Waldmeier supra, Duina, et al, Science (1996) 274:1713-1715)。Watashi et al., Hepatology (2003) 38:1282-1288は、近年、NIM811がインビトロでのHCV複製を抑制するが、一方タクロリムスはこの効果を示さないことを報告した。NIM811はシクロフィリンA(14)との結合能を欠くため、NIM811はシクロフィリンBまたはDのような他のシクロフィリンとの結合によって薬理学的効果を示すと考えられる。特に、NIM811は、HCV RNAポリメラーゼの機能的レギュレーターであるシクロフィリンBとの結合を介して、抗ウイルス効果を示す(Watashi, et al, Mol Cell (2005) 19:111-122)。NIM811は、ミトコンドリア透過性転移を制御するシクロフィリンDとの相互作用の阻害に基づいて、細胞保護作用を有することも報告されている(Waldmeier, et al, Mol Pharmacol (2002) 62:22-29)。Kon et al, Hepatology (2004) 40:1170-1179は、NIM811がアセトアミノフェン誘導性壊死および培養マウス肝細胞のアポトーシスを阻止すると報告した。
【0042】
B.臨床試験
肝繊維症/肝硬変を有する計15患者を、2週間の試験に組み込む。核患者に本発明のシクロスポリン、例えば[Melle]−シクロスポリンを7〜15mg/kgの用量で経口投与する。C型肝炎抗原の血清レベルを各患者において0日目〜14日目に測定する。
【0043】
肝繊維症/肝硬変、とりわけ肝傷害を有する患者は、下記兆候または症状の1種以上を示し得る:(a)ALTの上昇、(b)抗HCV抗体試験で陽性、(c)HCV−RNAについての陽性試験によって示されるHCVの存在、(d)慢性肝疾患の臨床的兆候、(e)肝細胞損傷。かかる基準は肝炎性肝繊維症/肝硬変の診断に使用できるのみならず、薬剤処置に対する患者の応答を評価するために使用することもできる。
【0044】
血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇は、非制御C型肝炎において生じることが知られており、処置に対する完全応答は、一般に、これらの血清酵素、とりわけALTの正常化として定義される(Davis et al., 1989, New Eng. J. Med. 321:1501 - 1506)。ALTは、肝細胞が破壊されると放出される酵素であり、HCV感染の兆候である。
【0045】
薬剤処置に応答する対象におけるHCV複製の経過を追跡するために、血清サンプル中のHCV RNAを、例えばHCVゲノムのN53およびN54非構造的遺伝子領域由来の2セットのプライマーを用いる重複(nested)ポリメラーゼ連鎖反応アッセイによって測定することができる。Farci et al., 1991, New Eng. J. Med. 325:98 - 104。Ulrich et al., 1990, J. Clin. Invest., 86:1609-1614。
【0046】
肝臓生検サンプルの組織学的試験は、評価の第2の基準として使用することができる。例えば、Knodell et al., 1981, Hepatology 1:431-435参照、この組織学的活性指標(門脈炎症、ピースミール壊死もしくは架橋壊死、小葉傷害および繊維症)は、疾患活性のスコア方法を提供する。
【0047】
本発明の方法を実施するのに必要な1日用量は、例えば使用する非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリン、宿主、投与形態、処置する状態の重症度に依存して変化する。好ましい1日用量範囲は、単回用量または複数回用量として、約1〜50mg/kg/日である。
【0048】
患者にとって好適な1日用量は、例えば経口または静脈内で1〜20mg/kgのオーダーである。経口投与に好適な単位投与形態は、約0.25〜10mg/kgの有効成分、例えば[MeIle]−シクロスポリンと、1種以上の薬学的に許容される希釈剤または担体を含む。
【0049】
本発明のシクロスポリンを、何れかの常套の経路、とりわけ経腸的に、例えば経口的に、例えば飲用液、錠剤もしくはカプセル剤の形態で、または非経腸的に、例えば注射液または懸濁液の形態で、投与することができる。好ましい医薬組成物は、例えばUK 2,222,770 Aに記載のミクロエマルジョンを利用したものであってもよい。
【0050】
本発明のシクロスポリンは、単独の有効成分として、または他の薬剤、例えば下記のものと組み合わせて投与することができる:抗HCV活性を有する薬剤、例えばインターフェロン、例えばインターフェロン−α2aまたはインターフェロン−α2b、例えばIntron(登録商標)A、Roferon(登録商標)、Avonex(登録商標)、Rebif(登録商標)もしくはBetaferon(登録商標)、または水溶性ポリマーもしくはヒトアルブミンと結合したインターフェロン、例えばアルブフェロン、抗ウイルス剤、例えばリボビリン、ラミブジン、NV08もしくはNM283、NS3/4Aプロテアーゼ、ヘリカーゼもしくはRNAポリメラーゼのようなHCVコード化因子の阻害剤、もしくはかかる阻害剤のプロドラッグ、抗繊維剤、例えばN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、例えばイマチニブ、免疫調節剤、例えばミコフェノール酸、その塩もしくはプロドラッグ、例えばミコフェノール酸ナトリウムもしくはミコフェノール酸モフェチル、またはS1P受容体アゴニスト、例えばFTY720または所望によりリン酸化されたそのアナログ、例えばEP627406A1、EP778263A1、EP1002792A1、WO02/18395、W002/76995、WO 02/06268、JP2002316985、WO03/29184、W003/29205、W003/62252 および W003/62248に記載のもの。
【0051】
インターフェロンと水溶性ポリマーの複合体は、とりわけポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールのようなポリアルキレンオキシドホモポリマー、ポリオキシエチレンポリオール、そのコポリマーおよびそのブロックコポリマーとの複合体を含むことを意味する。ポリアルキレンオキシドに基づくポリマーとは別のものとして、実質的に非抗原性物質、例えばデキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、炭水化物に基づくポリマー等を用いることができる。かかるインターフェロン−ポリマー複合体は、米国特許第4,766,106号、第4,917,888号、欧州特許出願第0 236987号、欧州特許出願第0 510 356号および国際公開公報第WO 95/13090号に記載されている。ポリマー性修飾によって抗原性応答が十分に減少するので、外来インターフェロンは完全に自己である必要はない。ポリマー複合体を製造するために使用するインターフェロンを、哺乳類抽出物、例えばヒト、反すう動物またはウシインターフェロンから製造するか、または組換え的に製造することができる。好ましいのは、ペグ化インターフェロンとしても知られているインターフェロンとポリエチレングリコールの複合体である。
【0052】
とりわけ好ましいインターフェロンの複合体は、ペグ化アルファ−インターフェロン、例えばペグ化インターフェロン−α−2a、ペグ化インターフェロン−α−2b;ペグ化コンセンサスインターフェロンまたはペグ化精製インターフェロン−α製品である。ペグ化インターフェロン−α−2aは、例えば欧州特許第593868号に記載されており、例えばPEGASUS(Hoffmann-La Roche)の商品名で商業的に入手可能である。ペグ化インターフェロン−α−2bは、例えば欧州特許第975,369号に記載されており、例えばPEG−INTRON An(Schering Plough)の商品名で商業的に入手可能である。ペグ化コンセンサスインターフェロンはWO 96/11953に記載されている。好ましいペグ化α−インターフェロンは、ペグ化インターフェロン−α2aおよびペグ化インターフェロン−α−2bである。ペグ化コンセンサスインターフェロンも好ましい。
【0053】
使用する共薬剤についての1日用量は、例えば使用する化合物、宿主、投与形態、および処置する状態の重症度に依存して変化する。例えば、ラミブジンは、1日用量100mgで投与することができる。
【0054】
ペグ化インターフェロンを非経腸的に、1〜3回/週、好ましくは週1回、合計週間用量2,000,000〜10,000,000IU、より好ましくは5,000,000〜10,000,000IU、最も好ましくは8,000,000〜10,000,000IUの範囲で投与することができる。
【0055】
上記に従って、本発明はさらにさらなる局面において、下記のものを提供する:
4.例えば上記定義の何れかの方法に使用するための医薬組合せ剤であって、a)非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリン、例えば式I、IaまたはIIの化合物である第1の薬剤と、b)共薬剤、例えば上記定義の第2の薬剤を含む、組合せ剤。
【0056】
5.治療上有効量の非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリン、例えば式I、IaまたはIIの化合物と、共薬剤、例えば上記定義の第2の薬剤の、例えば同時的または逐次的共投与を含む、上記定義の方法。
【0057】
「共投与」または「組合せ投与」等の用語は、本明細書において使用するとき、選択した治療薬剤を1人の患者に投与することを含み、そして該薬剤を必ずしも同じ投与経路または同時に投与する必要がない処置レジメンを含むことを意図する。
【0058】
本発明の医薬組合せ剤の投与によって、薬学的有効成分を1種のみ適用する単独療法と比較して、有利な効果、例えば相乗的治療効果が得られる。好ましい相乗的組合せは、非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリンと、所望によりポリマーと複合化したインターフェロンとの組合せである。
【0059】
さらに好ましい組合せは、非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリンとミコフェノール酸、その塩もしくはプロドラッグとの、またはS1P受容体アゴニスト、例えばFTY720との組合せである。
【0060】
[MeIle]−シクロスポリンまたは[MeVal]−シクロスポリンが、本発明において使用するのに好ましい非免疫抑制性シクロフィリン結合性シクロスポリンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓疾患に関連した状態の予防または処置用医薬組成物の製造におけるシクロスポリンの使用であって、当該シクロスポリンが、
(i)ヒト組換えシクロフィリンと結合比(BR)0.7未満で結合し、ここでBRは競合ELISA試験で測定した刺激試験におけるシクロスポリンAのIC50に対する当該シクロスポリンのIC50の比の、10を底とした対数であり;そして
(ii)混合リンパ球反応において、シクロスポリンAの活性の5%以下の活性を有する
使用。
【請求項2】
肝臓疾患の抑制用医薬組成物の製造における、請求項1に記載のシクロスポリンの使用。
【請求項3】
移植レシピエントにおける肝臓疾患の再発の予防用医薬組成物の製造における、請求項1に記載のシクロスポリンの使用。
【請求項4】
シクロスポリンが式I
〔式中、
WはMeBmt、ジヒドロ−MeBmt、8’−ヒドロキシ−MeBmtまたはO−アセチル−MeBmt4であり;
XはαAbu、Val、Thr、Nvaまたは0−メチルスレオニン(MeOThr)であり;RはPro、Sar、(D)−MeSer、(D)−MeAlaまたは(D)−MeSer(Oアセチル)であり;YはMeLeu、チオMeLeu、γ−ヒドロキシ−MeLeu、Melle、MeVal、MeThr、MeAla、MealleまたはMeaThr;N−エチルVal、N−エチルile、N−エチルThr、N−エチルPhe、N−エチルTyrまたはN−エチルThr(Oアセチル)であり、ZはVal、Leu、MeValまたはMeLeuであり、QはMeLeu、γ−ヒドロキシ−MeLeu、MeAlaまたはProであり、Tは(D)AlaまたはLysであり、TはMeLeuまたはγ−ヒドロキシ−MeLeuであり、そしてTはMeLeuまたはMeAlaである〕
化合物;式Ia
−15W’−XR’Y’Z−Q’−Ala−(D)Ala−MeLeu−MeLeu−MeVal−1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 Ia
〔式中、W’はMeBmt、ジヒドロ−MeBmtまたは8’−ヒドロキシ−MeBmtであり;XはαAbu、Val、Thr、Nvaまたは0−メチルスレオニン(MeOThr)であり;R’はSar、(D)−MeSer、(D)−MeAla、または(D)−MeSer(Oアセチル)であり;Y’はMeLeu、γ−ヒドロキシ−MeLeu、Melle、MeVal、MeThr、MeAla、MealleまたはMeaThrであり;N−エチルVal、N−エチルile、N−エチルThr、N−エチルPhe、N−エチルTyrまたはN−エチルThr(Oアセチル)であり、ZはVal、Leu、MeValまたはMeLeuであり;そしてQ’はMeLeu、γ−ヒドロキシ−MeLeuまたはMeAiaである〕
の化合物、または式II
WXa Ra Ya Za Qa Ala−(D)Ala−MeLeu−MeLeu−MeVal− 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 II
〔式中、WaはRa HO/,,,,,CH CH I I CH3 OH2であり
ここでRaは式IcまたはId
CH2−CH−CH CH2 R4 IcまたはCH2 Sl I R’4 Id
(ここで、R4はC’4アルキルチオ、アミノC4アルキルチオ、C4アルキルアミノC’4アルキルチオ、ジC’4アルキルアミノ−C4アルキルチオ、ピリミジニルチオ、チアゾリルチオ、N−C4アルキルイミダゾリルチオ、ヒドロキシC4アルキルフェニルチオ、ヒドロキシC’4アルキルフェノキシ、ニトロフェニルアミノまたは2−オキソピリミジン−1−イルであり、そしてR’4はC’4アルキルである)
の基であり、
XaはAbuであり;−16Raは−NMe−CH(Rb)−CO−{ここで、RbはHまたは−S−Alk−R0であり、ここでAlk−Roはメチルであるか;またはAlkは直鎖もしくは分枝鎖C2 6アルキレンまたはCalシクロアルキレンであり、RoはH;OH;COOH;C2 5アルコキシ−カルボニル;NRR2であり、ここでRおよびR2は各々独立して、H、C’−アルキル、C2アルケニル、C3 6シクロアルキルおよびフェニル(各々所望によりハロゲン、C、アルコキシ、C25アルコキシカルボニル、アミノ、C−アルキルアミノおよび/またはジC’−アルキル−アミノで置換されていてもよい)、ならびにベンジルおよびヘテロ環式基(当該ベンジルおよびヘテロ環式基は飽和または不飽和であり、5〜6個の環員および1〜3個のヘテロ原子を含む)から選択されるか、またはRとR2はそれらが結合している窒素原子と一体となって、4−6員ヘテロ環(これは窒素、酸素および硫黄から選択される他のヘテロ原子を含んでいてもよく、そして所望によりC−アルキル、フェニルまたはベンジルで置換されている)を形成するか;またはRおよびR2は各々独立して、式lb i:’) /.t (ここで、RおよびR2は上記定義のとおりであり、R3はHまたはC’アルキルであり、nは2〜4の整数である)の基である}
であり;YaはMeLeuまたはγ−ヒドロキシ−MeLeuであり;ZaはValであり;そしてQaはMeLeuである、ただし、YaがMeLeuであるとき、RbはHではない〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1、2または3に記載の使用。
【請求項5】
肝臓疾患の予防または処置用医薬組成物であって、請求項1に記載のシクロスポリンと、1種以上の薬学的に許容される希釈剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項6】
a)請求項1に記載のシクロスポリンである第1の薬剤と、b)抗繊維形成特性を有する共薬剤を含む、医薬組合せ剤。
【請求項7】
肝硬変の予防または処置に使用するための医薬組合せ剤であって、a)請求項1に記載のシクロスポリンである第1の薬剤と、b)抗HCV特性を有する薬剤、抗繊維形成剤、免疫調節剤またはS1P受容体アゴニスト−17から選択される共薬剤を含む、医薬組合せ剤。
【請求項8】
それを必要とする対象における肝臓疾患を予防または処置する方法であって、当該対象に治療上有効量の請求項1に記載のシクロスポリンを投与することを含む方法。
【請求項9】
培地中のHSC増殖を抑制する方法であって、この培地に有効量の請求項1に記載のシクロスポリンを適用することを含む方法。
【請求項10】
それを必要とする患者における肝臓疾患を抑制する方法であって、この対象に治療上有効量の請求項1に記載のシクロスポリンを投与することを含む方法。
【請求項11】
それを必要とする移植レシピエントにおける肝臓疾患の再発を予防する方法であって、当該レシピエントに治療上有効量の請求項1に記載のシクロスポリンを投与することを含む方法。
【請求項12】
治療上有効量の請求項1に定義のシクロスポリンと、抗HCV特性を有する薬剤、抗繊維形成剤、免疫調節剤またはS1P受容体アゴニストから選択される共薬剤を同時的または逐次的に共投与することを含む、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2010−505912(P2010−505912A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531841(P2009−531841)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060794
【国際公開番号】WO2008/043797
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】