説明

個人線量計

【課題】作業員の個人線量計の不携帯を確実に防止することができる個人線量計を提供する。
【解決手段】放射性物質を取扱う施設の作業員に携帯させ、被曝線量を測定する個人線量計1において、筐体10の動きを検知するモーションセンサ26と、警報を発生する不携帯警告ランプ14及びスピーカ28と、CPU20とを備え、CPU20に、モーションセンサ26の検知結果を監視し、当該検知結果が所定値以上に変化した否かを判定する動作判定手段、当該動作判定手段が所定値以上に変化していないと判定している状態の時間を計測するタイマ手段、及びタイマ手段の計時値が所定時間を越えた場合に、不携帯警告ランプ14及びスピーカ28に警報を発生させる制御を行う発報制御手段として機能させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質を取扱う施設の作業員の被曝線量を測定するために、作業員に携帯させる個人線量計に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等、放射性物質を取扱う施設には、「放射線管理区域」があり、その区域に入域する際には、個人線量計を携帯し、作業員が被曝した放射線量(以下、被曝線量と称する)を個人毎に管理している。個人線量計の運用は、紐又はクリップにて作業員に個人線量計を携帯させ、入退域時に専用の読取機によって個人線量計から被曝線量データを読み取り、入退域時刻や被曝線量を管理する。
【0003】
また、放射線管理区域は、汚染の程度によってA/B/C区域に分類され、特にC区域(管理区域内の汚染のある場所)に入域する際は、チェンジングプレースと呼ばれるC区域専用の入退域場所を設けて、B区域用の服(以下、B服と称する)からC区域用の服(以下、C服と称する)に着替えて入域する。
【0004】
しかしながら、C区域への入域のために、B服からC服に着替える際に、個人線量計を一旦体から離して近くに置いておく場合があり、この場合、個人線量計の携帯を忘れたままC区域に入域してしまう可能性がある。
【0005】
そこで、従来、特許文献1に記載された技術が提案されている。特許文献1には、作業員の体温、心音、心拍数、ポケット内の光量等を検知して、検知値が設定値に満たない場合に、不携帯と判定して、警報を発生する個人線量計について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−208847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の技術において、作業員の体温、心音、心拍数を検知するためには、個人線量計を作業員に密着させる必要があり、個人線量計の出し入れが非常に面倒なものとなるため携帯しにくくなる。しかも、個人線量計が作業員から離れた場合には、作業員の体温、心音、心拍数を検知することが困難になり、作業中に警報が発生するおそれがある。
【0008】
また、ポケット内の光量を検知して、個人線量計を携帯しているか否かと判定する場合には、例えば、作業員が、B服からC服を着替える際に、個人線量計を台に一時的に載置した場合に、光量センサを台に向けて個人線量計を置いたならば、光量センサが光を検知できなくなる。これにより、個人線量計が携帯されていると判定されて警報が発生しないおそれがある。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決し、作業員の個人線量計の不携帯を確実に防止することができる個人線量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0011】
(1) 筐体内に被曝線量を測定する測定手段を設け、放射性物質を取扱う施設の作業員に携帯させる個人線量計において、前記筐体の動きを検知するモーションセンサと、警報を発生する警報手段と、前記モーションセンサの検知結果を監視し、当該検知結果が所定値以上に変化した否かを判定する動作判定手段と、当該動作判定手段の検知結果に基づいて、前記動作判定手段が所定値以上に変化していないと判定している状態の時間を計測するタイマ手段を始動させるタイマ制御手段と、前記タイマ手段の計時値が所定時間を越えた場合に、前記警報手段に警報を発生させる制御を行う発報制御手段とを備えたことを特徴とする個人線量計。
【0012】
(1)によれば、モーションセンサが筐体の動きを検知している場合には、個人線量計が作業員に携帯されているとして、警報を発生させず、モーションセンサが筐体の動きを所定時間検知していない場合には、個人線量計が作業員に携帯されていないとして、警報手段に警報を発生させる。これにより、個人線量計の存在を作業員に意識付けることが可能になり、作業員の個人線量計の不携帯を防止することができる。
【0013】
(2) (1)において、前記モーションセンサの検知結果に基づいて、前記筐体の姿勢が載置不可能な姿勢であるか否かを判定する姿勢判定手段を有し、前記発報制御手段は、前記姿勢判定手段が載置不可能な姿勢であると判定した場合に、前記タイマ手段の計時値にかかわらず、警報を発生させないように前記警報手段を制御することを特徴とする個人線量計。
【0014】
(2)によれば、モーションセンサの検知結果に基づいて筐体の姿勢を求め、筐体の姿勢が、例えば、着替えの際に、個人線量計を近くの台上に載置した場合に、その時の姿勢が、台上において載置しうる姿勢であるか否かを判定する。そして、姿勢判定手段が載置可能な姿勢であると判定した場合に、警報の発生を可能にし、姿勢判定手段が載置不可能な姿勢であると判定した場合に、警報の発生を行わない。これにより、警報を発生する必要がある状態の時に、警報が発生可能な状態にすることができる。
【0015】
(3) (1)又は(2)において、電源を供給する充電電池と、当該充電電池が充電中であるか否かを判定する充電判定手段とを備え、前記発報制御手段は、前記充電判定手段が充電中であると判定している場合には、前記タイマ手段の計時値にかかわらず、警報を発生させないように前記警報手段を制御することを特徴とする個人線量計。
【0016】
(3)によれば、発報制御手段は、充電時においては、個人線量計が作業員に携帯されてなくても警報を発生させない。これにより、警報の必要がないときに警報が発生することが防止できる。
【0017】
(4) (1)〜(3)において、前記発報制御手段は、警報発生中に前記モーションセンサの検知結果が所定値以上に変化した場合に、警報を停止させることを特徴とする個人線量計。
【0018】
(4)によれば、例えば、着替えの途中で警報が発生した場合に、容易に停止させることが可能になる。
【0019】
(5) (1)〜(4)において、前記タイマ手段が計時を開始した後、前記モーションセンサの検知結果が所定値以上に変化した時点の前記タイマ手段の計時値に基づいて、前記所定時間を変更する変更手段を備えたことを特徴とする個人線量計。
【0020】
(5)によれば、例えば、着替えの際に、一時的に個人線量計を台上に置いてから、再度携帯するまでの時間に基づいて、所定時間が変更される。これにより、作業員の着替え時間に合わせて警報を発生することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、個人線量計の不携帯をより確実に低減させることができる個人線量計を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態における個人線量計の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における個人線量計の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】読取機の外観を示す斜視図である。
【図4】保管ラックの外観を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態において実行される警報発生処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態において実行される警報発生処理の他例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における個人線量計の外観を示す斜視図である。個人線量計1は、筐体10、液晶表示パネル12、不携帯警告ランプ14、インターフェース16及び充電端子18等を備えている。
【0024】
筐体10は、直方体型のケース体であり、筐体10の前面には、液晶表示パネル12が設けられている。また、筐体10の前後面には、それぞれ不携帯警告ランプ14が設けられている。また、筐体10上面には、インターフェース16が設けられており、筐体10下面には、充電端子18が設けられている。また、筐体10の内部には、CPU20やメモリ22(図2参照)を搭載した回路基板や、放射線センサ24(図2参照)、モーションセンサ26(図2参照)、スピーカ28(図2参照)及び充電電池30(図2参照)等が設けられている。
【0025】
液晶表示パネル12は、作業員の被曝線量を表示するものである。
【0026】
不携帯警告ランプ14は、詳細については後述するが、モーションセンサ26(図2参照)が所定時間、筐体10の動きを検知しなかった場合、すなわち不携帯と判断した場合に発光するものである。
【0027】
インターフェース16は、読取機50(図3参照)に接続し、個人線量計1と読取機50(図3参照)との間で、データの送受信を可能にするものである。
【0028】
充電端子18は、個人線量計1の充電電池30(図2参照)を充電するために、個人線量計1を保管ラック60(図4参照)に差し込んだ時に、充電端子18と保管ラック60とを接続するものである。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態における個人線量計の電気的構成を示すブロック図である。
【0030】
CPU20は、個人線量計1全体を制御するものである。このCPU20には、液晶表示パネル12、不携帯警告ランプ14、インターフェース16、メモリ22、放射線センサ24、モーションセンサ26、スピーカ28が接続されている。
【0031】
メモリ22は、個人線量計1を動作させるための各種のプログラムや、作業員の被曝線量のデータを記憶するものである。また、CPU20が、メモリ22の所定の記憶領域に記憶されているカウント値を、一定時間毎に一定値ずつカウントアップした値に更新することにより、メモリ22の所定の記憶領域が、タイマ手段に相当するタイマ23として機能する。
【0032】
放射線センサ24は、放射線量を検出するものであり、検知結果をCPU20に送信するものである。そして、CPU20は、現時点までの作業員の被曝線量を計算してメモリ22に保存するとともに、作業員の被曝線量を液晶表示パネル12に表示する制御を行う。
【0033】
モーションセンサ26は、物体の角度や角速度を検出するジャイロセンサ及び加速度を検出する加速度センサを備えており、個人線量計1の三次元の動き、傾きを検知するものである。モーションセンサ26の検知結果はCPU20に送信される。なお、モーションセンサ26は、感度を最大に設定しておくことにより、微小な動きでも検知できるようにする。
【0034】
スピーカ28は、詳細については後述するが、モーションセンサ26(図2参照)が所定時間、筐体10の動きを検知しなかった場合、すなわち不携帯と判断した場合に音声出力するものである。また、放射線センサ24が所定値以上の被曝線量を検出した場合にも、CPU20によって音声出力して警告を行う。ここで、個人線量計1の不携帯と判断した場合の音声出力と、放射線センサ24が所定値以上の被曝線量を検出した場合の音声出力とは、異なる音色とする。また、充電電池30は、個人線量計1の電源となるものである。
【0035】
CPU20は、動作判定手段、タイマ制御手段、姿勢判定手段、充電判定手段及び発報制御手段として機能する。
【0036】
動作判定手段(CPU20)は、モーションセンサ26によって検出された加速度が所定値以上に変化したか否かを判定するものであり、加速度が所定値以上に変化した場合には、筐体10は動いていると判定し、加速度が所定値内に維持されている場合には、筐体10は動いていないと判定するものである。
【0037】
タイマ制御手段(CPU20)は、モーションセンサ26の検出結果に基づいて、タイマ23を始動、停止させるものである。
【0038】
姿勢判定手段(CPU20)は、モーションセンサ26が傾きの方向及び角度に基づいて、現時点の筐体10の姿勢を求め、筐体10の姿勢が、特定の姿勢であるか否かを判定するものである。
【0039】
充電判定手段(CPU20)は、個人線量計1が保管ラック60(図3参照)にセットされているか否かを判定するものである。個人線量計1が保管ラック60(図4参照)にセットされている場合には、個人線量計1が保管ラック60(図4参照)に保管された状態であるとともに、充電電池30が充電状態となる。
【0040】
発報制御手段(CPU20)は、タイマ23の計時値が所定時間を越えた場合に、不携帯警告ランプ14を発光させるとともに、警報音をスピーカ28から出力させる制御を行うものである。
【0041】
図3は読取機の外観を示す斜視図である。読取機50は、個人線量計1が計測した被曝線量のデータをメモリ22から読み取り、作業員を個別に被曝管理するものである。読取機50には、個人線量計1を挿入するスロット52と、作業員のIDカードから作業員情報を読み出すカード読取装置54とが備えられている。スロット52の奥部には、個人線量計1のインターフェース16の信号入出力端子に接続する信号入出力端子(図示せず)が設けられており、スロット52に個人線量計1を挿入することによって信号入出力端子同士が接続して、個人線量計1と読取機50とが送受信可能になる。
【0042】
また、IDカードにはICチップが埋設されており、IDカードをカード読取装置54にかざすことによって、このICチップから作業員情報がカード読取装置54に読み取られる。
【0043】
図4は保管ラックの外観を示す斜視図である。保管ラック60は、複数の個人線量計1を保管するものであり、作業員が放射線管理区域へ入域する際には、保管ラック60から個人線量計1を取り出し、作業員が放射線管理区域から退域した際には、保管ラック60に個人線量計1を挿入する。
【0044】
保管ラック60には、複数のスロット62が形成されており、このスロット62の奥部には、個人線量計1の充電端子18と電気的に接続する充電端子(図示せず)が設けられている。また、充電端子(図示せず)は、充電用の電源に接続されている。このため、保管ラック60に個人線量計1を挿入することにより、充電電池30(図2参照)は充電状態となる。
【0045】
作業員が放射線管理区域に入域する際には、まず、作業員は、個人線量計1を保管ラック60から取り出し、次に、読取機50によって入域手続を行う。具体的に、作業員は、読取機50のスロット52に個人線量計1を挿入し、IDカードをカード読取装置54にかざす。さらに、テンキーを操作して、入域理由を入力する。これにより、IDカードの番号と個人線量計1とが対応付けられ、入域手続が完了する。入域手続が完了した後、スロット52から個人線量計1を抜き出して、放射線管理区域に入域する。作業員は、放射線管理区域にいる間は、常に、個人線量計1を携帯する。
【0046】
作業員が放射線管理区域から退域する際も同様に、読取機50のスロット52に個人線量計1を挿入する。さらに、IDカードをカード読取装置54にかざす。これにより、退域手続が行われ、読取機50は、個人線量計1が計測した評者線量のデータをメモリ22から読み取り、規定値以上の放射線を浴びているか否かを確認する。
【0047】
退域する場合には、スロット52から個人線量計1を抜き出し、個人線量計1を保管ラック60に差し込むことで、個人線量計1を保管ラック60に保管する。そして、次回、放射線管理区域に入退域する際にも同様の手続を行う。
【0048】
次に、個人線量計1のCPU20が実行する警報発生処理について、図5を参照しながら説明する。CPU20は、モーションセンサ26の検知結果を監視し、一定時間(例えば、10秒間)において、モーションセンサ26が検出した加速度が所定値以上に変化したか否かを判定する。そして、CPU20は、一定時間(例えば、10秒間)において、加速度が所定値以上に変化しなかった場合に、図5に示す警報発生処理を実行する。
【0049】
まず、ステップS10において、CPU20は、タイマ23を起動し、筐体10が動いていないと判定している時間を計測する。この処理が終了した場合には、ステップS12に処理を移す。
【0050】
ステップS12において、CPU20は、モーションセンサ26の検知結果に基づいて、筐体10が動いたか否かを判定する処理を行う。筐体10が動いたと判定した場合には、ステップS26に処理を移す。筐体10が動いたと判定しない場合には、ステップS14に処理を移す。
【0051】
ステップS14において、CPU20は、個人線量計1が保管ラック60に保管された状態すなわち充電状態にあるか否かを判定する処理を行う。具体的には、個人線量計1の充電端子18と保管ラック60と充電端子(図示せず)とが電気的に接続されているか否かを判定する。個人線量計1が保管ラック60に保管された状態にあると判定した場合には、ステップS26に処理を移す。個人線量計1が保管ラック60に保管された状態にあると判定しない場合には、ステップS16に処理を移す。
【0052】
ステップS16において、CPU20は、個人線量計1が読取機50にセットされた状態にあるか否かを判定する処理を行う。個人線量計1が読取機50にセットされた状態にあると判定した場合には、ステップS26に処理を移す。個人線量計1が読取機50にセットされた状態にあると判定しない場合には、ステップS18に処理を移す。
【0053】
ステップS18において、CPU20は、モーションセンサ26の検知結果に基づいて、現時点における個人線量計1の姿勢を識別する処理を行う。この処理が終了した場合には、ステップS20に処理を移す。
【0054】
ステップS20において、CPU20は、ステップS18の処理で識別した姿勢が、特定の姿勢、例えば、個人線量計1において液晶表示パネル12を有する面が、鉛直上方及び鉛直下方のいずれかの姿勢であるか否かを判定する処理を行う。なお、特定の姿勢は、前述したものに限らず、例えば、個人線量計1を平面上に載置しうる姿勢を特定の姿勢として設定すればよく、個人線量計1の形状に応じて適宜設定可能である。個人線量計1が特定の姿勢であると判定した場合には、ステップS22に処理を移す。個人線量計1が特定の姿勢であると判定しない場合には、ステップS26に処理を移す。
【0055】
ステップS22において、CPU20は、ステップS10において起動したタイマ23の値が所定時間を越えたか否かを判定する処理を行う。タイマ23の値が所定時間を越えたと判定した場合には、ステップS24に処理を移す。タイマ23の値が所定時間を越えたと判定しない場合には、ステップS12に処理を移す。
【0056】
ステップS24において、CPU20は、不携帯警告ランプ14を発光させるとともに、警報音をスピーカ28から出力させる処理を行う。例えば、タイマ23の値が所定時間を越えてから10秒間警報(不携帯警告ランプ14の発光、スピーカ28の音声出力)を発生する。警報音については、最初は音量を小さく、徐々に音量を大きくする。なお、警報の発動時間は10秒でなくてもよく、適宜設定可能である。この処理が終了した場合には、ステップS12に処理を移す。すなわち、CPU20は、モーションセンサ26が動作を検知しない状態が所定時間経過した場合に、個人線量計1が作業員に携帯されていないと判断し、警報を発生する制御を実行する。
【0057】
ステップS26において、CPU20は、ステップS10において起動したタイマ23を停止する処理を行う。この処理が終了した場合には、ステップS28に処理を移す。
【0058】
ステップS28において、CPU20は、タイマ23の計時値をリセットする(「0」にする)処理を行う。この処理が終了した場合には、警報発生処理を終了し、モーションセンサ26の検知結果の監視状態に移行する。
【0059】
ところで、本実施形態において個人線量計1のモーションセンサ26は、高感度に設定されているため、作業員のわずかな動きでも検知する。このため、作業員が個人線量計1を携帯している場合には、図5に示す警報発生処理が実行されることはない。
【0060】
しかし、放射線管理区域において、B区域からC区域への入域のためには、B服からC服に着替える必要がある。この着替えの際に、個人線量計1を一旦体から離して、近くに置いておく場合があり、この場合に、図5に示す警報発生処理が実行される可能性がある。したがって、図5に示すステップS22の処理で用いられる所定時間としては、B服からC服に着替えるために必要な時間、例えば、複数の作業員の着替え時間の平均値を設定するのがよい。
【0061】
以上、説明したように構成された本実施形態によれば、モーションセンサ26が筐体10の動きを検知している場合には、個人線量計1が作業員に携帯されており、モーションセンサ26が筐体10の動きを所定時間検知していない場合には、個人線量計1が作業員に携帯されていないと判断し、不携帯の場合には、不携帯警告ランプ14の発光、スピーカ28の鳴動といった警報を発生させる。これにより、個人線量計1の存在を作業員に意識付けることが可能になり、個人線量計1の不携帯を防止することができる。
【0062】
また本実施形態によれば、姿勢判定手段(CPU20)が、モーションセンサ26の検知結果に基づいて筐体10の姿勢を求め、筐体10の姿勢が、例えば、個人線量計1をロッカー上に載置可能な姿勢であるか否かを判定する。載置不可能な姿勢であると判定した場合には警報を発生せず、載置可能な姿勢の場合には警報を発生可能にする。これにより、警報を発生する必要がある状態の時に、警報が発生可能な状態にすることができる。
【0063】
また本実施形態によれば、個人線量計1が作業員に携帯されていなくても警報の必要がない時、例えば、個人線量計1を保管ラック60にセットして、充電電池30の充電とともに個人線量計1を保管している時、あるいは個人線量計1を読取機50にセットして、読取機50が個人線量計1からデータを読み取っている時に、発報制御手段(CPU20)は、警報を発生しないようにする。これにより、警報の必要がないときに警報が発生することが防止できる。
【0064】
また本実施形態によれば、発報制御手段(CPU20)は、警報発生中に前記モーションセンサの検知結果が所定値以上に変化した場合に、警報を停止させるため、作業員が個人線量計1を携帯することによって警報が停止するようになり、警報を停止させるための操作が必要なくなる。
【0065】
また本実施形態によれば、個人線量計1が保管ラック60のスロット62に十分に挿入されていない場合には、充電端子18と保管ラック60の充電端子(図示せず)が接続されていないことから、個人線量計1は警報を発生し得る状態となる(図5のS14のNO)。しかし、図4に示すように、保管ラック60のスロット62に挿入した個人線量計1の姿勢は、液晶表示パネル12が形成された面が水平方向を向いている。これにより、個人線量計1が特定の姿勢ではないため、個人線量計1は警報を発生しない状態となる(図5のS20のNO)。したがって、作業員が、個人線量計1を保管ラック60のスロット62に十分に挿入しなかった場合にも、個人線量計1は警報を発生しない状態となり、警報が発生する必要がないときに、警報が発生することを防止できる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限るものではない。例えば、前述した実施形態においては、図5に示すステップS22の処理で用いられる所定時間は一定値である。この場合、着替えが早い作業員にとっては、警報の発生タイミングが遅くなるため、個人線量計1の不携帯に気付かないおそれがある。また、着替えが遅い作業員にとっては、警報が発生しても個人線量計1を手にとって警報を止めるという動作を繰り返すため、結果として、警報に対する意識が薄れるおそれがある。そこで、作業員の着替え時間に応じて適宜変更できるようにしてもよい。
【0067】
図6は、本発明の実施形態において実行する警報発生処理の他例を示すフローチャートである。なお、図5に示す警報発生処理における処理と同一の処理については、同一のステップ番号を付して、詳細な説明は省略する。
【0068】
図6に示す警報発生処理は、図5に示す警報発生処理に対し、ステップS27の処理を追加したものである。すなわち、ステップS12の処理において、モーションセンサ26の検知結果に基づいて、筐体10が動いたか否かを判定する処理を行い、筐体10が動いたと判定した場合には、ステップS27に処理を移す。筐体10が動いたと判定しない場合には、ステップS14に処理を移す。ステップS14以降の処理は、図5に示す警報発生処理と同一である。
【0069】
ステップS27において、CPU20は、所定時間を変更する処理を行う。例えば、CPU20は、タイマ23の計時値が所定時間よりも1分以上早い場合には、所定時間を1分早い時間に変更し、タイマ23の計時値が所定時間よりも1分以上遅い場合には、所定時間を1分遅い時間に変更する処理を行い、タイマ23の計時値が所定時間に対して前後1分内であれば、所定時間を変更しない。この処理が終了した場合には、ステップS26に処理を移す。このように、CPU20は、所定時間を変更する変更手段に相当する。ステップS26以降の処理は、図5に示す警報発生処理と同一である。
【0070】
このような警報発生処理を行うことにより、ステップS22の処理で用いられる所定時間として、前回、個人線量計1を例えばロッカー上に置いてから、着替えを行い、再度、個人線量計1を携帯するまでの時間に基づいて、次回の、警報発生の基準となる所定時間が変更される。これにより、作業員が、毎回同じ個人線量計1を携帯することにより、作業員の着替えが終了する頃に警報を発生させることが可能になり、作業員に個人線量計1の不携帯をより確実に警告することが可能になる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、前述した実施形態に限るものではない。例えば、前述した実施形態によれば、放射線管理区域におけるB区域からC区域への入域の際の着替え時において、個人線量計1の不携帯を警告するものであるが、それに限るものではなく、着替えの他にも放射線管理区域において個人線量計1が不携帯となる可能性がある全ての場合に、個人線量計1の不携帯を警告することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 個人線量計
10 筐体
12 液晶表示パネル
14 不携帯警告ランプ
16 インターフェース
18 充電端子
20 CPU
22 メモリ
23 タイマ
24 放射線センサ
26 モーションセンサ
28 スピーカ
30 充電電池
50 読取機
52、62 スロット
54 カード読取装置
60 保管ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に被曝線量を測定する測定手段を設け、放射性物質を取扱う施設の作業員に携帯させる個人線量計において、
前記筐体の動きを検知するモーションセンサと、
警報を発生する警報手段と、
前記モーションセンサの検知結果を監視し、当該検知結果が所定値以上に変化した否かを判定する動作判定手段と、
当該動作判定手段の検知結果に基づいて、前記動作判定手段が所定値以上に変化していないと判定している状態の時間を計測するタイマ手段を始動させるタイマ制御手段と、
前記タイマ手段の計時値が所定時間を越えた場合に、前記警報手段に警報を発生させる制御を行う発報制御手段とを備えたことを特徴とする個人線量計。
【請求項2】
前記モーションセンサの検知結果に基づいて、前記筐体の姿勢が載置不可能な姿勢であるか否かを判定する姿勢判定手段を有し、
前記発報制御手段は、前記姿勢判定手段が載置不可能な姿勢であると判定した場合に、前記タイマ手段の計時値にかかわらず、警報を発生させないように前記警報手段を制御することを特徴とする請求項1記載の個人線量計。
【請求項3】
電源を供給する充電電池と、
当該充電電池が充電中であるか否かを判定する充電判定手段とを備え、
前記発報制御手段は、前記充電判定手段が充電中であると判定している場合には、前記タイマ手段の計時値にかかわらず、警報を発生させないように前記警報手段を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の個人線量計。
【請求項4】
前記発報制御手段は、警報発生中に、前記モーションセンサの検知結果が所定値以上に変化したと前記動作判定手段が判定した場合に、警報を停止させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の個人線量計。
【請求項5】
前記タイマ手段が計時を開始した後、前記モーションセンサの検知結果が所定値以上に変化した時点の前記タイマ手段の計時値に基づいて、前記所定時間を変更する変更手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の個人線量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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