説明

個人認証機能を備えた運動量計測システム

【課題】定位置で行う歩行・走行運動の鉛直方向荷重を計測して、使用者が行った運動量を計算し、そのデータを蓄積するシステムにおいて、計測された運動が特定の個人によってなされたことを確実に保証する方法を確立することにより、蓄積されたデータをさまざまな目的で利用できるようにする。
【解決手段】運動量を計測する前に、生体的特徴により使用者を、予め登録された特定の個人として認証する過程を設け、運動を開始した後に鉛直方向荷重の測定値から使用者の特徴値を見出し、すでに記憶されている認証者の鉛直方向荷重の測定値から見出した特徴値と比較して、現在の使用者が認証者と異なる可能性を判断する。
又は、運動を開始してから任意の時間が経過した時に再び生体的特徴により使用者を認証する過程を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足踏み運動等を行った際の鉛直方向荷重を測定して運動量を計算して表示し、かつ記憶する運動量計測システムにおいて、個人を認証してデータを蓄積する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
足踏み運動等、定位置で行う歩行・走行運動は、誰でも安全に自分のペースで実施できる手軽な運動であるが、単調な運動であることや運動の強さや量が見えにくいこともあり一般的にはあまり実施されていない。
しかし、ゆっくりした体重移動から全力疾走に匹敵する運動まで非常に幅広い運動負荷が実現可能であり、省スペース、省エネルギーの観点からも、好ましい運動の形態であると言える。
【0003】
本発明者は特許文献1にて、ゴム又はこれに類する弾力性のあるマット状の本体の内部に、クッション性と反発性を調整するための空気室を設け、マット上で足踏み運動又は走行運動をした時に発生する空気圧の変動を圧力センサーで測定し、この圧力変動のデータから運動の回数や強さを計算し表示することにより、各個人に適した歩行運動又は走行運動が継続的・計画的に実施できるようにした運動量計測装置を提案した。
【0004】
また、特許文献2には、荷重の大きさを電気信号に変換する荷重変換器と、該荷重変換器出力信号を微分して荷重の変動分の電気信号を出力する微分回路と、該微分回路出力信号を整流して出力する整流回路と、該整流回路出力信号を積分して出力する回路と、該積分回路の積分値を表示する運動量表示装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、個人識別可能な身体情報により個人認証を行うトレーニング機器システムが開示されている。
【0006】
しかしながら上記特許文献1、2の技術は、運動量を測定して表示することが目的であり、個人を特定してデータを蓄積する機能が備わっていなかった。
また、特許文献3には、身体情報により個人認証を行うトレーニングシステムが提案されているが、その目的は、何も持参しなくても個人の特定が可能であり、個人のトレーニング履歴を書込み又は読出して、負荷や運動量の設定を適切に行うなど利便性を追求したものであった。
【0007】
したがって上記従来技術では、故意に運動量のデータを捏造しようとした場合には、例えば個人認証した後に代理の者が運動すれば容易にデータを捏造できるという欠点があった。
そのため、データの利用範囲が狭く、例えば、各個人が運動を継続する強い意思をサポートする効果に欠けていたし、医学的な治療に必要なデータの信頼性にも乏しく、データを公に証明する機能は無く、他人とリアルタイムで競技する場合の順位判定の公平性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−61581号公報
【特許文献2】特開昭53−115282号公報
【特許文献3】特開平10−260940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、定位置で行う歩行・走行運動の鉛直方向荷重を計測して、使用者が行った運動量を計算し、そのデータを蓄積するシステムにおいて、計測された運動が特定の個人によってなされたことを確実に保証する方法を確立することにより、蓄積されたデータをさまざまな目的で利用することを可能にするためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
使用者が定位置で行う歩行・走行運動の鉛直方向荷重を測定して、仮想的な移動速度と移動距離を計算して表示し、かつ記憶する運動量計測システムにおいて、前記運動量を計測する前に、生体的特徴により使用者を、予め登録された特定の個人(以後、認証者と称す)として認証する過程を設け、運動を開始した後に鉛直方向荷重の測定値から使用者の特徴値を見出し、すでに記憶されている認証者の鉛直方向荷重の測定値から見出した特徴値と比較して、現在の使用者が認証者と異なる可能性を判断する過程を設けた。
【0011】
又は、運動量を計測する前に、生体的特徴により使用者を、予め登録された特定の個人として認証する過程を設け、運動を開始してから任意の時間が経過した時に再び生体的特徴により使用者を認証者として認証する過程を設けた。
【0012】
前記運動を開始してから任意の時間が経過した時に再び生体的特徴により使用者を認証者として認定する過程において、認証データを要求してから認証データが入力されるまでの間に時間的な制限を設けた。
【0013】
鉛直方向荷重の測定値から使用者の特徴値を見出す際の特性値として、使用者の体重、又は運動中に使用者の左右の足に加わる荷重の比を採用した。
【0014】
運動を開始した後に鉛直方向荷重の測定値から計算した使用者の運動量と使用者の身体の一部に装着した生体情報収集センサーから得た生体情報の関係が、すでに記憶されている認証者の運動量と生体情報の関係と比較して、現在の使用者が認証者と異なる可能性を判断する過程を設けた。
【0015】
鉛直方向荷重の測定方法が、左右の足それぞれで踏むための2枚の踏み板と、
前記2枚の踏み板の下方に、左右の踏み板それぞれに対応して気密的に分離された又は分離可能な支持用空気室を備え、
前記左右で分離された又は分離可能な支持用空気室は、踏み板の1枚毎に少なくとも踏み板の4隅近傍で該踏み板を下方から支持し、前記それぞれの支持用空気室の圧力を測定しつつ所定の範囲内でそれぞれの支持用空気室内の圧力を任意に設定し、使用者が前記踏み板に荷重を加えた際に、前記それぞれの踏み板の中央近傍の位置変化量を計測することにより、前記それぞれの踏み板に加えられた荷重を推定して計算する方法とした。
【0016】
前記それぞれの踏み板の中央近傍の位置変化量を計測する代わりに、前記踏み板のほぼ中央にて該踏み板を下方から支持する計測用空気室を設け、前記支持用空気室と前記計測用空気室を繋ぐ通路上に、連通状態と閉塞状態を選択的に切り替え可能な弁を設け、前記支持用空気室と前記計測用空気室を同一圧力に設定した後に、前記切り替え弁を閉塞状態にし、前記計測用空気室内の圧力変化を計測することにより、前記踏み板に加えられた荷重を推定して計算する方法とした。

【発明の効果】
【0017】
運動量を計測する前に、生体的特徴により使用者を認証し、かつ運動中の鉛直方向荷重の測定値から推定した使用者の体重や左右の足に加わる荷重の比を基に、すでに記憶されている認証者の体重値や左右の足の荷重比と比較して、現在の使用者が認証者と別人であると判断した場合には、認証者の正規データとして扱わないことにより、代理人によるデータ入力、又は、過失によって他人のデータが入力されることを防ぐことができる。
【0018】
または、使用者の身体の一部に装着して運動中の心拍数や血圧や心電図などの生体情報を収集するセンサーを備えている場合には、今回計測した心拍数や血圧や心電図などの生体情報が、過去に正規のデータとして記憶されている特定した個人の運動量と生体情報との関係と比較して明らかに傾向が異なっていると判断した場合には、正規のデータとして扱わないことで上記と同様な効果が得られる。
【0019】
あるいは、運動量を計測する前に、生体的特徴により使用者を認証し、かつ運動を開始して任意の時間(使用者が予測できないランダムな時間が好ましい)が経過した後に再び個人認証を要求し、これら複数の生体的特徴のデータがすべて予め登録されている個人データに一致したときに特定した個人の正規なデータと認定することにより、さらに個人認証の精度を向上させることができる。
すなわち、ランダムな時間が経過した時に生体認証を要求し、かつ生体認証に要する時間に制限をかけることにより、例えば最初だけ本人が認証し、その後代理人が運動してデータを捏造することを意図した場合には、本人が近くに待機している必要があるので時間の浪費を強いることになる。これによってデータを捏造しようとする安易な意図をくじくことができる。
【0020】
本発明による運動は実質的な移動を伴わない定位置における運動であり、かつ個人の意思で完全にコントロール可能な運動なので、予期しないランダムな時間に生体認証を要求された際に、使用者の意思で運動を止めたり弱めたりしながら安全に生体認証に応じることが可能である。
尚、ここでの生体認証とは、例えば、指紋認証、掌紋認証、手や指の静脈認証、虹彩認証、顔形認証などである。
【0021】
本発明に使用する鉛直方向荷重の測定方法を、左右の足それぞれで踏むための2枚の踏み板の下方に、左右で分離された又は分離可能な支持用空気室を設け、それぞれの支持用空気室の圧力を任意に設定し、前記それぞれの踏み板の中央近傍の位置変化量を計測する構造にすることにより、使用者の膝関節等に対して適度なクッション性を確保しつつ、振動を吸収し、また支持用空気室の圧力を調節することにより、体重の軽重に適した計測分解能を確保することができる。
【0022】
前記踏み板の中央近傍の位置変化量を計測する代わりに、前記踏み板のほぼ中央にて該踏み板を下方から支持する計測用空気室を設け、前記支持用空気室と前記計測用空気室を同一圧力に設定した後に、前記計測用空気室内の圧力変化を計測し、踏み板に加えられた荷重を推定して計算することにより、位置センサーを使用しなくても上記と同じ効果を得ることができる。
また計測用空気室の体積を小さく設定できるので、踏み板の鉛直方向の位置変化量に対する計測用空気室の圧力変化量が大きくなり、精度の高い計測が可能になる。
【0023】
以上のように、特定の個人のデータとして信頼性の高いデータのみを正規のデータとして記録することにより、自分及び他人に対して、ごまかしの効かないデータとして運動の実績が蓄積されることにより、本システムを利用した運動を継続して行う励みになる。
さらに、例えば生活習慣病の治療として、医師が患者の日々の運動量を正確に把握することが必要な場合にも利用できるので、より適切な指導・助言を行うことができる。
また、使用者が過去に行った運動実績がメモリーに蓄積されるので、各個人に適した運動パターン、運動量を適切に指導する機能を本運動量計測システムに組み込むことができる。
さらに、たとえば多人数がインターネット等を利用して、同時刻に運動を開始して一定距離を仮想的に走行し順位を競うような場合に、データの個人認証精度を高めることにより、公正でリアリティの高い仮想競技を実現することができる。
さらに、例えば、住民の健康維持に役立てるために、一定以上の運動量を継続して実施している人を自治体が表彰したりインセンティブを与えるなど、社会的な健康維持活動にも利用することができる。

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による運動量計測システムの構成図
【図2】本発明による運動量計測システムの個人認証方法のフローチャート
【図3】本発明請求項7に記載した運動量計測装置の平面図
【図4】図3に記載した運動量計測装置の作動説明図(図3のA−A断面図)
【図5】本発明請求項8に記載した運動量計測装置の平面図
【図6】図5に記載した運動量計測装置の作動説明図(図5のB−B断面図)
【図7】鉛直方向荷重Wと踏み板の変位Zと計測用空気室の圧力変化ΔPと設定空気圧Poの関係を測定した結果(例)
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明による運動量計測システムの構成図である。
ここでは運動量計測装置1として本願請求項7に記載した構造を示してある。
運動量計測装置1の詳細については後述するが、概要を述べれば、踏み板3上で使用者が足踏み運動などをすると、鉛直方向荷重Wが変動し、支持用空気室4a、4bに支えられた踏み板3が上下に移動するので、踏み板3の中央近傍の移動量を位置センサー12で測定することにより、支持用空気室の設定圧力値を基に、加えられた荷重Wを計算できる。
【0026】
運動量計測装置1に設けた圧力センサー8と位置センサー12の出力電圧は、信号伝達手段42によって、データ処理装置20に送られ、データ処理装置でAD変換され、これらのデジタル値を演算することにより、踏み板3上で行われている運動の強さと量を推定し、例えば、仮想的な移動速度(歩行速度または走行速度)、移動距離、消費カロリー、運動の種類(歩行か走行かなど)、運動の効果(例えば筋力が向上する運動か、あるいは脂肪が燃焼する運動かなど)、左右の足の荷重バランスなどを表示画面21に表示し、かつこれらの計算値を個人用の着脱可能なメモリー23に記録する。
【0027】
走行運動の一歩の蹴り時間は0.2秒程度なので、この間の荷重波形を正確に解析するには位置センサーのサンプリング周期は2msec以下であることが好ましい。
これに対し、メモリー23に記録するデータは、計算結果を例えば1分毎に平均して記録することが好ましい。1分毎の記録に1kバイト要したとしても、6Gバイトのメモリーで10万時間分の記録が可能であり、個人が本発明による運動量計測システムを一生涯利用したとしてもすべての結果を記録することが可能である。
【0028】
データ処理装置20は生体認証用データ入力装置22を備えており、計測の最初に使用者に対して生体認証データの入力を求める。生体認証用の情報源としては、指紋が最も適しているが、他に、掌紋、手指の静脈、虹彩、網膜、声紋、顔形などが利用可能である。
入力された生体認証用データは、個人用のメモリー23に予め格納されている登録情報と比較して、一致していれば特定した個人として認証する。
なお、生体認証用データ入力装置22の取付位置は、例えば、運動量計測装置本体2に固定した手すり部(図示しない)でも良い。
【0029】
データ処理装置20には、メニューの選択ボタン24、使用者の意思を入力するためのYesボタン25、Noボタン26、合図の音や音声案内を発音するスピーカー27が設けられており、必要に応じてインターネット接続手段45を介してインターネットに接続できる。
また、運動量計測装置本体2内に電磁弁や空気ポンプ用モーター(図示しない)を設けた場合には、これらを制御するための制御信号伝達手段44がデータ処理装置20と運動量計測装置1間に設けられる。
【0030】
ここで、個人のデータを着脱可能なメモリー23に蓄積することにより、互換性のある運動量計測装置にメモリー23を装着すれば個人認証とデータの記録が可能になる。例えば、自宅、職場、旅行先のホテルなどでも運動の実施と実績の記録が可能になるのでトレーニングを継続しやすくなる。
尚、インターネット接続が前提であれば、個人データをインターネット上のサーバーに置くことも可能である。
【0031】
次に、本発明による個人認証をより確実にする方法について、図2のフローチャートを用いて説明する(説明は各処理内容の左上に表示した処理番号を用いて行う)。
尚、図2のフローチャートには本願に記載したすべての認証方法が含まれているが、権利範囲を限定するものではない。
【0032】
装置の電源を入れるとL1にて起動処理を行った後に、L2にて使用者の指紋情報など、生体認証用データの入力を求める。
L3にて生体認証用データの入力有無を確認し、使用者がNoボタン26を押すか又は所定時間経過しても生体認証用データの入力がないか又は個人用メモリー23が挿入されていない場合には、C1に移動しゲストとして計測を開始する。この場合、運動量を計測して結果を表示するが、個人用メモリー23には記録せず、データ処理装置20又は運動量計測装置1に設けたメモリーに総稼働時間と総仮想走行距離のデータとして加算・記憶し、本運動量計測システムのメンテナンス情報として利用可能にする。
【0033】
生体認証用データの入力があった場合には、L4にて、予め個人用メモリー23に登録されている個人認証用データと比較し、一致すれば特定した個人のデータとして測定を開始する。
一致しない場合は、その旨を表示し、C1に移動してゲストとして計測を開始する。
ここで、同一人であっても生体的特徴のデータは、必ずしも不変ではないので(例えば子供は成長に伴って最初の登録データとの相違が生じやすい)多少の差を許容しつつ最新のデータを徐々に学習する機能を持たせることが好ましい。
【0034】
計測を開始した後、任意の時間が経過した時、好ましくは所定の時間範囲の中でランダムな時間が経過した時(例えば5分後から30分後の間の不特定な時間が経過した時)に、L6にて再び、使用者に対して生体認証用データの入力を求める。
特にランダムな時間を設定した場合、使用者は認証用データの入力を求められるタイミングを予期できないので、システム側の要求を使用者に確実に伝える必要がある。表示画面21及びスピーカー27を用いた警報以外に、バイブレーター(図示しない)による警報や無線ヘッドホン(音楽を聴きながら運動する場合が多いと考えられるので)に直接警報信号を送るなどの機能を追加することが好ましい。
生体認証用データの入力を求めた後、所定の待ち時間が経過する前に生体認証用データの入力があった場合にはL8に進み、入力が無い場合にはC2にて、追加の待ち時間以内に生体認証用データが入力されるか否かを判断する。追加の待ち時間内にも生体認証用データが入力されない場合にはR3に進み、個人用メモリー23に「不審データ」として加算する。
【0035】
追加の待ち時間以内に生体認証用データの入力があった場合には、C3にて登録されている個人認証用データと比較し、一致すれば特定した個人の「参考データ」として個人用メモリーに加算する。ここで正規データとしない理由は、L7の所定の待ち時間以内に生体認証用データが入力されなかったためである。
C3にて、生体認証用データが登録データと一致しなかった場合には、R3に進み、個人用メモリーに「不審データ」として加算する。
【0036】
さらに、2回の生体認証用データが登録された個人の認証データと一致した場合も、現在運動を行っている使用者が、登録された個人でない可能性を排除するために、荷重測定結果から体重を計算し(L9)、個人用メモリー23に記録されている最近の体重データと比較して矛盾がないかを判断する(L10)。この結果、前回測定日との日数差も加味して通常ではありえない程度の体重の差異が認められた場合には、C5に進み「参考データ」として記録する。
計測した鉛直方向荷重から体重を推定する場合、歩行運動であれば片足に静的な体重がかかる期間があるので体重を推定しやすいが、走行運動中は荷重波形がフラットにならないので体重を推定することが難しい。体重を推定できない場合は、次のL11にスキップする。
【0037】
歩行運動又は走行運動において、左右の足に加わる最大蹴り力には、移動速度に応じてそれぞれ個人特有の比があり、一般に効き足の方が強くなる。
個人データに蓄積された左右の荷重比の最近の傾向と、現在の測定結果を比較し(L12)、通常ではありえない程度の差異が認められた場合には、C5に進み「参考データ」として記録する。
【0038】
さらに、本運動量計測システムに、使用者の生体情報(個人認証用のデータでなく、身体の機能状態をモニターするための情報。心拍数、血圧、心電図波形など)を収集するためのセンサー30を装備して、使用者が行う運動の強さと量と生体情報から判断して、より目的に応じた運動をアドバイスし、場合によっては過度な運動を抑制するように助言する機能を付加することができる。
この機能を具備しているシステムにおいては、使用者個人に対して、過去に行った運動の強さ(たとえば速度10km/時のジョギング)と量(ジョギング開始後10分後)と例えば心拍数(心拍数120など)の関係が個人用メモリー記録されているので、現在行っている運動と最近実施した運動条件が近似している部分のデータと比較し(L14)、通常ではありえない程度の差異が認められた場合には、C5に進み「参考データ」として記録する。
【0039】
上記いずれの個人確認結果においても矛盾が見つからなかった場合には、特定した個人の「正規データ」として、個人用メモリー23に記録する(L16)。
尚、1回の運動時間が長い(例えば1時間以上)の場合には、生体認証用データによる認証を含め、繰り返し個人確認を行うのが好ましい。
【0040】
上記のように計測した結果を、例えば「正規データ」と「参考データ」と「不審データ」に分類することにより、通常の使用者に対してはなるべく正規データが蓄積されるように努力するように促す効果があるのでデータの信頼性が高くなる。
尚、「参考データ」や「不審データ」に分類されても排除する必要は無く、特に正当な理由があれば(例えば病気で体重が激変した場合など)データを相応に理解すればよい。
【0041】
次に、図3〜図7を用いて、請求項7、8に記載した鉛直方向荷重の測定方法の具体的構造について説明する。
尚、以下に述べる方法に限らず、例えば左右それぞれの踏み板の4隅に荷重センサーを取り付けて、これら4個の荷重センサーの合計値を踏み板に加えられた全荷重値とする方法も可能であるが、センサーが多数必要になることや、クッション性を別に付与する必要がある点は考慮しなければならない。
【0042】
図3は本発明請求項7に記載した運動量計測装置1の構造を示す平面図、図4はA−A断面で示した作動説明図である。
運動量計測装置本体2の上面に、右足用踏み板3aと左足用踏み板3bがそれぞれ嵌り、かつ上下に摺動する開口部を設け、それぞれの踏み板3a、3bの4隅近傍を下から支える位置に、支持用空気室4a、4bが設置され、支持用空気室4a−4a、4a−4bは通路5によって連結されている。
【0043】
右足用踏み板3aを支える支持用空気室と左足用踏み板3bを支える支持用空気室は、それぞれ電磁弁7a、7bを介して圧力センサー8(ゲージ圧センサーが好ましい)と逆止弁9と締切弁10に繋がった絞り11に連結されている。
電磁弁7a、7bを両方とも開いた状態で、圧力センサー8の出力値をモニターしながら外部の空気ポンプ(図示しない)から逆止弁9を介して空気を充填して、支持用空気室の圧力を所望の値に設定する。その後電磁弁7a、7bを閉じれば、左右の支持用空気室の圧力が既知の同一圧力に保たれることになる。
もし、右の支持用空気室の圧力を下げたければ、電磁弁7aのみを開いて、締切弁10を開いて空気を徐々に漏らして、所望の圧力になったときに締切弁10を閉じ、その後電磁弁7aを閉じれば良い。このとき右の支持用空気室の設定圧力は電磁弁7aを閉じる直前の圧力センサー8の検出値を採用する。
【0044】
もちろん圧力センサーを右・左の支持用空気室にそれぞれに装着しても良い。これら空気回路のレイアウトは、圧力センサーと電磁弁と逆止弁等のコストと、使用者の利便性を考慮して決めれば良い。
【0045】
図4(a)に示したように、踏み板3a、3bのほぼ中央下部に位置センサー12を設置して、それぞれの踏み板の中央近傍の鉛直方向の変位量を検出する。
図4(b)に示したように、荷重Wが踏み板3aのほぼ中央に作用した場合には、支持用空気室は均等に変形して、踏み板3aが下方向に平行移動するので、踏み板中央の位置変化量を計測すれば、そのときの支持用空気室の設定空気圧を基に計算し、加えられた荷重Wを推定することができる。
【0046】
図4(c)に示したように、荷重Wが踏み板3aの前方寄りに作用した場合には、前側の支持用空気室4aの変形量が後側の支持用空気室4bの変形量より大きくなり、踏み板3aが前方に傾く。
このとき一般には、荷重Wが同じであっても、図4(b)より図4(c)の方が支持用空気室内の平均圧力が高くなる(この理由については段落番号0054に記載した)。
しかし、踏み板中央の位置変化量は図4(b)と図4(c)で大差は無く、従って踏み板中央近傍の変位量を基に加えられた荷重Wを計算することによって、使用者が踏み板の中央を踏まなくても、踏み板に加えられた荷重をほぼ正確に推定することが可能になる。
【0047】
図4の構造は上記のように、踏み板が傾くことを許容するので、摺動面の機械的な高精度を必要としない。すなわち、踏み板側面形状を踏み板中央から側面までの距離が半径となる円弧にし、側面に摩擦係数が低い素材をコーティングすることにより、踏み板がロックする現象を防ぎ、かつ十分な耐久性を得ることができる。
【0048】
図5は本発明請求項8に記載した運動量計測装置1の構造を示す平面図、図6はB−B断面で示した作動説明図である。
踏み板の中央近傍を下方から支持する計測用空気室14を設け、該計測用空気室に圧力センサー8(ゲージ圧センサーが好ましい)を取り付け、支持用空気室4a、4bと計測用空気室14を繋ぐ通路15に電磁弁16を設けてある。
ここで圧力センサー8は計測用空気室14に直接装着するのが好ましい。もし圧力センサーと計測用空気室の間を細長い通路で連結すると、検出圧力の応答性が悪くなり、荷重Wが作用しなくなっても設定圧力まで瞬時には戻らなくなり、変動成分を検出する際の基準となる圧力値が判断できなくなるので都合が悪い。
【0049】
電磁弁16を開いた状態で、圧力センサー8の出力値をモニターしながら外部の空気ポンプ(図示しない)から逆止弁9を介して空気を充填して、計測用空気室の圧力を所望の値に設定する。ポンプの作動を停止後に電磁弁16を閉じれば、支持用空気室と計測用空気室の圧力が既知の同一圧力に保たれることになる。
【0050】
運動量を計測する際には、電磁弁16を閉じた状態で行う。
図6(b)に示したように、荷重Wが踏み板3aのほぼ中央に作用した場合には、支持用空気室と計測用空気室は均等に変形して、踏み板3aが下方向に平行移動する。このとき、踏み板中央の位置変化量に応じて計測用空気室内の圧力が上昇するので、この圧力の変化量を計測し、先の支持用空気室と計測用空気室の設定圧力を基に計算し、加えられた荷重Wを推定することができる。
【0051】
図6(c)に示したように、荷重Wが踏み板3aの前方寄りに作用した場合には、前側の支持用空気室4aの変形量が後側の支持用空気室4bの変形量より大きくなり、踏み板3aが前方に傾く。
このとき一般には、荷重Wが同じであっても、図6(b)より図6(c)の方が支持用空気室内の平均圧力が高くなる(この理由については段落番号0054に記載した)。
しかし、踏み板中央の位置変化量は図6(b)と図6(c)で大差は無く、従って計測用空気室の圧力変化量を基に加えられた荷重Wを計算することによって、使用者が踏み板の中央を踏まなくても、踏み板に加えられた荷重をほぼ正確に推定することが可能になる。
【0052】
図7は、図5、6に近似した構造において、中央に荷重W(kgf)を加えた際の、計測用空気室の圧力変化量ΔP(kPa)と、踏み板の位置変化量Z(mm)の関係を計測した例である。
支持用空気圧及び計測用空気室の設定圧力Poをゲージ圧で、50kPa、100kPa、200kPaとし、計測時には電磁弁16を閉じている。
【0053】
図7より、設定圧力Poが低い方が、同じ荷重Wを加えても圧力変化量ΔPも位置変化量Zも大きいことがわかる。すなわち、体重の軽い人には、設定圧力を低めにした方が計測精度が高くなることがわかる。
また、荷重Wが小さい範囲(たとえば10kgf以下)では圧力変化量ΔPが小さく、感度が低いことがわかる。これは、外力を加えて空気室を変形させるには局部的に設定圧力Poを上回る大きさの面圧を加えなければ変形しないからである。
したがって一般的に、同じ荷重を加えて空気室を変形させる際に、広い面積に均一に荷重を加えるより、狭い面積に集中して荷重を加えた方が空気室の変形量が大きくなり、内部の圧力変化量も大きくなる。
【0054】
上記の現象が、図3〜図6に示した構造において、支持用空気室内の圧力が、踏み板の中央に荷重をかけたときより、前後左右のいずれかに偏って荷重をかけたときの方が圧力変化量が大きくなる理由である(段落番号0046、0051に記載)。
請求項7又は請求項8に記載した発明では、踏み板中央近傍の位置変化量を計測するか、あるいは踏み板中央近傍を支える計測用空気室内の圧力変化量を計測することにより、たとえ踏み板に偏荷重が加わって踏み板が傾いて移動したとしても、ほぼ正確に加えられた荷重Wの値を推定することができる。
【0055】
図3、4に示した構造においては、設定圧力Poをパラメーターとして荷重Wと踏み板の変位Zの関係を予め計測し、結果をマップデータとしてデータ処理装置20に記憶しておくことにより、設定圧力Poと計測した変位Zにより、加えられた荷重を計算することができる。
同様に、図5、6に示した構造においては、設定圧力Poをパラメーターとして荷重Wと計測用空気室の圧力変化量ΔPの関係を予め計測し、結果をマップデータとしてデータ処理装置20に記憶しておくことにより、設定圧力Poと計測した圧力変化量ΔPにより、加えられた荷重を計算することができる。

【符号の説明】
【0056】
1 運動量計測装置
2 運動量計測装置本体
3 踏み板
3a 踏み板(右足用)
3b 踏み板(左足用)
4a 支持用空気室(前側)
4b 支持用空気室(後側)
5 支持用空気室間の通路
6 左右の支持用空気室を繋ぐ通路
7a 支持用空気室(右)と空気出入り口を連通/分離する電磁弁
7b 支持用空気室(左)と空気出入り口を連通/分離する電磁弁
8 圧力センサー
9 逆止弁
10 締切弁
11 絞り
12 位置センサー
13a 右足用空気回路
13b 左足用空気回路
14 計測用空気室
15 支持用空気室と計測用空気室を繋ぐ通路
16 支持用空気室と計測用空気室との間に設けた電磁弁
20 データ処理装置
21 表示画面
22 生体認証用データ入力装置
23 着脱可能な個人用メモリー
24 選択ボタン
25 Yesボタン
26 Noボタン
27 スピーカー
30 生体情報収集センサー
41 電力供給線
42 運動量計測装置からデータ処理装置への信号伝達手段
43 生体情報収集センサーからデータ処理装置への信号伝達手段
44 データ処理装置から運動量計測装置への制御信号伝達手段
45 ネットワーク接続手段
R 踏み板前後側面の曲率半径
W 荷重(kgf)
Z 踏み板の変位(mm)
Po 設定空気圧力(kPa)
ΔP 計測用空気室内の圧力変化量(kPa)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定位置で行う歩行・走行運動の鉛直方向荷重を測定して、仮想的な移動速度と移動距離を計算して表示し、かつ記憶する運動量計測システムにおいて、前記運動量を計測する前に、生体的特徴により使用者を、予め登録された特定の個人(以後、認証者と称す)として認証する過程を設け、
運動を開始した後に鉛直方向荷重の測定値から使用者の特徴値を見出し、すでに記憶されている認証者の鉛直方向荷重の測定値から見出した特徴値と比較して、現在の使用者が認証者と異なる可能性を判断する過程を設けたことを特徴とする運動量計測システム。
【請求項2】
定位置で行う歩行・走行運動の鉛直方向荷重を測定して、仮想的な移動速度と移動距離を計算して表示し、かつ記憶する運動量計測システムにおいて、前記運動量を計測する前に、生体的特徴により使用者を、予め登録された特定の個人(以後、認証者と称す)として認証する過程を設け、
運動を開始してから任意の時間が経過した時に再び生体的特徴により使用者を認証者として認証する過程を設けたことを特徴とする運動量計測システム。
【請求項3】
請求項2に記載した、運動を開始してから任意の時間が経過した時に再び生体的特徴により使用者を認証者として認定する過程において、認証データを要求してから認証データが入力されるまでの間に時間的な制限を設けたことを特徴とする請求項2に記載した運動量計測システム。
【請求項4】
請求項1に記載した鉛直方向荷重の測定値から見出した使用者の特徴値が、使用者の体重であることを特徴とする請求項1に記載した運動量計測システム。
【請求項5】
請求項1に記載した鉛直方向荷重の測定値から見出した使用者の特徴値が、運動中に使用者の左右の足に加わる荷重の比であることを特徴とする請求項1に記載した運動量計測システム。
【請求項6】
定位置で行う歩行・走行運動の鉛直方向荷重を測定して、仮想的な移動速度と移動距離を計算して表示し、かつ記憶する運動量計測システムにおいて、前記運動量を計測する前に、生体的特徴により使用者を、予め登録された特定の個人(以後、認証者と称す)として認証する過程を設け、
運動を開始した後に鉛直方向荷重の測定値から計算した使用者の運動量と使用者の身体の一部に装着した生体情報収集センサーから得た生体情報の関係が、すでに記憶されている認証者の運動量と生体情報の関係と比較して、現在の使用者が認証者と異なる可能性を判断する過程を設けたことを特徴とする運動量計測システム。
【請求項7】
鉛直方向荷重の測定方法が、左右の足それぞれで踏むための2枚の踏み板と、
前記2枚の踏み板の下方に、左右の踏み板それぞれに対応して気密的に分離された又は分離可能な支持用空気室を備え、
前記左右で分離された又は分離可能な支持用空気室は、踏み板の1枚毎に少なくとも踏み板の4隅近傍で該踏み板を下方から支持し、前記それぞれの支持用空気室の圧力を測定しつつ所定の範囲内でそれぞれの支持用空気室内の圧力を任意に設定し、使用者が前記踏み板に荷重を加えた際に、前記それぞれの踏み板の中央近傍の位置変化量を計測することにより、前記それぞれの踏み板に加えられた荷重を推定して計算する方法であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載した運動量計測システム。
【請求項8】
鉛直方向荷重の測定方法が、左右の足それぞれで踏むための2枚の踏み板と、
前記2枚の踏み板の下方に、左右の踏み板それぞれに対応して気密的に分離された又は分離可能な空気回路を備え、
前記左右で分離された又は分離可能な空気回路は、踏み板の1枚毎に少なくとも踏み板の4隅近傍で該踏み板を下方から支持する支持用空気室と、
前記踏み板のほぼ中央にて該踏み板を下方から支持する計測用空気室と、
前記支持用空気室と前記計測用空気室を繋ぐ通路と、
該通路の連通状態と閉塞状態を選択的に切り替え可能な弁とで構成され、
前記弁を連通状態にして前記計測用空気室の圧力を測定しつつ所定の範囲内で左右それぞれの支持用空気室及び計測用空気室の圧力を任意に設定し、
その後、前記弁を閉塞状態にして、使用者が前記踏み板に荷重を加えた際に、
前記計測用空気室内の圧力変化を計測することにより、前記それぞれの踏み板に加えられた荷重を推定して計算する方法であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載した運動量計測システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−254954(P2011−254954A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131168(P2010−131168)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(504216217)
【Fターム(参考)】