説明

個別のペレットからなる凍結乳酸菌培養物

【課題】互いにくっ付かず、ペレット状に凍結された乳酸菌培養物の提供。
【解決手段】少なくとも50gの重量の凍結物質を有する商業用パッケージ中の凍結乳酸菌(LAB)培養物であって、ここで当該凍結培養物が、個別のペレットの形態で存在し、-46℃で7〜14日間貯蔵されたとき、凍結培養物の個別のペレットが互いにくっ付かず、その結果、実質的に個別の粒子として残る凍結乳酸菌培養物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも50gの重量の凍結物質を有する商業用パッケージ中のペレット凍結乳酸菌(LAB)に関する。ここで、当該凍結物質は、培養物の初融点(Tm’)以下の温度、例えば-46℃で7〜14日間貯蔵されたとき、凍結培養物の個別のペレットが、互いにくっつかず、それゆえ実質的に個別のペレットとして残るという事実により特徴付けられる。
【背景技術】
【0002】
微生物は、多くの乳製品を含む食品及び飼料の製造に関する。細菌培養物、特に乳酸菌と一般的に分類される細菌の培養物は、全ての発酵乳製品、チーズ及びバターの製造において必須である。かかる細菌の培養物は、スターター・カルチャーと呼ばれることもあり、そして多くの機能を発揮することにより様々な乳製品に特有な特徴を付与する。
【0003】
乳製品のスターター・カルチャーは、一般的に乳酸菌から構成される。この文脈では、「乳酸菌(LAB)”という表現は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、非運動性、非胞子形成性、微好気性又は嫌気性の細菌であって、主に産生される酸として乳酸、ギ酸、及びプロピオン酸を含む有機酸の産生を伴って糖を発酵する細菌の群を指す。この文脈では、乳酸菌は、グラム陽性細菌門の多くの細菌属から構成される。カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ラクトスファエラ属(Lactosphaera)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、メリソコッカス属(Melissococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、テトラゲノコッカス属(Tetragenococcus)、バゴコッカス属(Vagococcus)、及びウェイセラ属(Weissella)はLABとして認められている。放線菌門に属する乳酸産生グラム陽性細菌、例えばアエロコッカス属(Aerococcus)、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、及びプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、並びにビフィドバクテリウム属も、本文脈でLABと考えられている。工業的に最も有用な乳酸菌は、ラクトコッカス種(Lactococcus)、ストレプトコッカス種(Streptococcus)、エンテロコッカス種(Enterococcus)、ラクトバチルス種(Lactobacillus)、ロイコンストック種(Leuconostoc)、ビフィドバクテリウム種(Bifidobacterium)、及びペディオコッカス種(Pediococcus)の中で見つかっている。
【0004】
乳工業での使用に加えて、乳酸菌培養物はまた、食肉加工業並びに多くの他の工業において広く使用されることが知られている。
【0005】
商業用スターター・カルチャーは、凍結培養物として分配されうる。高濃縮された凍結培養物は、中間体へ移すことなく発酵培地(例えば、乳汁又は肉)に直接植菌することができるので、商業的にかなり関心が高い。言い換えると、かかる高濃縮凍結培養物は、末端利用者の自家バルク・スターター・カルチャーを不要なものとする量の菌を含む。「バルク・スターター」は、本明細書中において、発酵培地に植菌するために食品加工工場で増殖されたスターター・カルチャーとして定義される。高濃縮培養物は、ダイレクト・バット・セット(DVS)-カルチャーとよばれうる。末端利用者においてDVSカルチャーとして使用される十分な細菌を含むために、濃縮凍結培養物は、少なくとも50gの重量、そして少なくとも109コロニー形成ユニット(CFU)/gの生菌量を含まねばならない。
【0006】
従来の凍結培養物の使用における重大な問題は、培養物の実際の取り扱いにおける利便性である。「ブロック状」に凍結された培養物は取り扱いが難しい一方で、ペレット状に凍結された培養物は、製造者及び消費者の両者の取り扱いがかなり容易である。
【0007】
結果として、高濃縮ペレット状凍結培養物、いわゆる凍結ダイレクト・バット・セット(F-DVS)カルチャー、繁栄している市場が形成された。
【0008】
凍結培養物の生存率に関する多くの刊行物が出版された。
【0009】
Chavarriら、(1988)は、純粋なストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)の凍結培養物の生存率が、5%ラクトース又は5%スクロースの添加により改善されうるということを記載した。
【0010】
Carcobaら、(2000)は、純粋なラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactococcus lactis subsp. lactis)の凍結培養物が、糖(ラクトース、スクロース、及びトレハロース)、グルタミン酸、及びゼラチンなどの異なる抗凍結剤を加えることにより改善されうるということを記載した。
【0011】
米国特許第4,140,800号(Kline)は、異なる抗凍結剤の添加により、凍結乾燥培養物の生存率が改善されうるということを記載する。ラクトース、スクロース、又はマルトースを加えられた凍結培養物の生存率も記載されている。
【0012】
WO00/39281(Kringelumら)は、非凍結液体スターター・カルチャーの生存率が種々の抗凍結剤を加えることにより改善されうるということを記載する。
【0013】
WO2004/065584A1(Bisgaard-Frantzen)は、高濃縮凍結スターター・カルチャーの生存率が、様々な抗凍結剤を加えることにより改善されうるということを記載する。
【0014】
WO2004/065584A1のみが、ペレット凍結培養物を記載し、そして上記刊行物のどれも、貯蔵の間におけるペレット凍結培養物の物理的安定性について記載していない。
【発明の概要】
【0015】
商業的に、ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物は、通常、適切なパッケージで提供されている(例えば、2lの紙パック製のテトラパック(登録商標))。当該培養物は、通常約-46度の貯蔵温度で貯蔵され、そして凍結物質は、比較的軽い重量の個別のペレット形態で存在する。
【0016】
本発明以前には、本発明者は、かかる商業用ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物の貯蔵に関して重大な問題がないと信じていた。
【0017】
しかしながら、様々な研究に基づき、本発明者は、約-46℃で7日間以上貯蔵された多くの商業用培養物の場合、個別のペレットが互いにくっ付き、そして大きな塊になることを同定した。工場環境では、塊の形成は、取り扱い上の問題となる。培養物が固まる場合、培養物パッケージから適切な量を加えることはかなり難しくなる。さらに、都合のよい方法でパッケージから塊となった培養物を取り出すことは難しいことがある。
【0018】
さらなる研究により、「問題のある」培養物は、約-46℃の貯蔵温度以下の、ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物のTm’値(融解の始まり、Roos(1995)に定義される)を有することにより特徴づけられると同定された。Tm’値は、食品工業及びその他において使用される標準的な物理化学的用語である。Tm’値は、Roos(1991)により記載されるように示唆走査熱量測定(DSC)技術により通常計測される。Tm’値は、食品(ここでは、凍結LAB培養物)の融解の開始温度を指す。さらなる詳細については、教科書”Food Chemistry”Fennema(1996)及び”Phase Transition in Foods”Roos(1995)を参照のこと。
【0019】
理論に束縛されることなく、凍結培養物がその貯蔵温度、例えば約-46℃以下のTm’値を有する場合、最初の相移転(融解)が起こり、そして個別のペレットが互いにくっつき、そして大きな塊を形成することが信じられている。
【0020】
要約すると、本発明者の研究により、幾つかのタイプの商業用高濃縮ペレット凍結乳酸菌培養物の物理的な外観に関して、今まで認識されなかった貯蔵の問題点が同定された。この問題がひとたび同定されると、本発明者は、問題を解決しようとした。
【0021】
可能な理論上の説明とは無関係に、本発明者は、ある適切な添加化合物を問題のペレット凍結培養物に加えることにより、-46℃で7〜14日間貯蔵したあと個別のペレットの塊を形成しないペレット凍結培養物を得ることができるということを同定した。かかる培養物は、凍結培養物の個別のペレットが互いにくっ付かず、それゆえ約-46℃での長期の貯蔵のあとでさえ、実施的に個別のペレットとして残ることにより特徴付けられた。
【0022】
概して、適切な添加化合物は、凍結培養物のTm’値を貯蔵温度、例えば-46℃以上に増加できること、例えばTm’値を-70〜-46℃の範囲から-45℃〜-15℃に上昇させることができるということにより特徴付けられうる。
【0023】
本明細書中の実施例は、適切な添加化合物の好ましい実施例を記載する。記載された化合物は、トレハロース、マルトデキストリン、シクロデキストリン、スプレー・ガム、魚ゼラチン粉、及びマルチトールを含む。一般的な知識に基づいて、当業者は、凍結培養物のTm’値を、貯蔵温度、例えば-46℃以上に増加させることができる更なる適切な添加化合物を同定できる。
【0024】
上で記載されるように、十分な細菌を含むために、商業用高濃縮凍結培養物は、一般的に少なくとも50gの重量を有し、そして少なくとも109コロニー形成ユニット(CFU)/gの生菌量を有した。Chavarri(1988)及びCarcoba(2000)の論文に記載される培養物は、ペレット凍結培養物の物理的安定性を対象にしておらず、むしろ本文脈において商業用高濃縮凍結培養物とは考えられていない凍結細菌の生存率を対象としていた。なぜなら、当該培養物はかなり小規模で作られ、そしてかなり少ないグラムの凍結培養物しか含まず、そしてさらに記載された培養物はペレット凍結培養物ではないからである。また、Chavarri(1988)及びCarcoba(2000)により記載される培養物は、ペレット凍結培養物の物理的安定性を対象としておらず、むしろ凍結細菌の生存率を対象としていた。
【0025】
従って、本発明の第一の態様は、少なくとも50gの重量の凍結物質を有する商業用パッケージ中のペレット凍結乳酸菌(LAB)に関する。ここで凍結物質は、個別のペレットの形態で存在し、少なくとも凍結物質1gあたり109コロニー形成ユニット(CFU)の生細菌量を有し、凍結物質のw/wとして計測される0.5%〜13%の添加化合物を含む。
【0026】
添加化合物は、凍結物質のw/wとして計測される10%の量の添加化合物を使用することにより、凍結乳酸菌(LAB)培養物(添加化合物を有さない当該凍結乳酸菌培養物は-70℃〜-46℃のTm’値を有する)のTm’値(融解の開始温度)を、-45℃〜-15℃に上昇できる化合物の群から選ばれる(DSCにより計測された)。
【0027】
さらに、凍結乳酸菌(LAB)培養物は、約-46℃で7〜14日貯蔵したとき、凍結培養物の個別のペレットが互いにくっ付かず、それゆえ実質的に個別のペレットとして残っていることにより特徴付けられる。ここでこのことは以下の試験により計測される:
凍結培養物の個別のペレットが、液体窒素中で凍結されたペレットであり、そして100個の個別のペレット(約5〜100gのペレット)をペトリ皿に注ぎ、そうして個別の単一ペレットの固まっていない薄層を形成させ、およそ-46℃で7〜14日間置き、そしてペレットが未だに固まっていないか、又はペレットが塊を形成する若しくは互いにくっ付くかを観察するために試験した。ここで凍結培養物の個別のペレットが、実質的に個別のペレットとして残っているかについての判断基準は、100個の個別のペレットのうちの少なくとも80個が固まっていない個別の単一のペレットとして残っていることである。
【0028】
しかしながら、スクロースを利用できるLABを含む凍結乳酸菌(LAB)培養物(ここで、当該培養物は、以下の:凍結物質のw/wとして計測される2%〜13%の量のスクロース;及び凍結物質のw/wとして計測される4%〜6%の量のトレハロース;並びに凍結物質のw/wとして計測される12%〜14%の量のトレハロース/スクロース混合物からなる群から選ばれる抗凍結剤化合物を含む)は、本発明の第一態様から特異的に除かれる。
【0029】
第一態様の最後に記載される「除く部分」は、PCT出願WO2004/065584A1に関連している。この出願は、2004年1月19日に出願された。本出願の優先権の基礎出願の出願日では、PCT出願WO2004/065584A1は開示されていなかった。
【0030】
WO2004/065584A1は、凍結培養物の貯蔵の間において生存率を改善することに関する。これは、本発明の「ペレットの粘着性」の問題を記載しない。一般的なメーン・クレーム1は、「スクロースを利用できるLABを含み、少なくとも50gの重さの凍結物質及び凍結物質1gあたり少なくとも109コロニー形成ユニット(CFU)の生菌量を有する凍結乳酸細菌(LAB)培養物であって、当該凍結培養物が、凍結物質のw/wとして計測される0.5%〜80%の抗凍結剤を含むことを特徴とする培養物」に関する。
【0031】
抗凍結剤を有するペレット凍結培養物がWO2004/065584A1に記載されているが、WO2004/065584A1は、スクロースを利用できる培養物を特異的に特許請求するのみであるので、当業者が不可避的にWO2004/065584A1の範囲内となる結果に到達することは、除外されうる。
【0032】
本発明の凍結培養物に関して、添加化合物は、好ましくは凍結される前に生菌に加えられるべきである。
【0033】
従って、第二態様において、本発明は、本発明の第一態様及び以下に記載される実施態様のペレット凍結乳酸細菌(LAB)培養物を作成する方法であって、以下のステップ:
(i) 添加化合物を生菌に加えて、物質1gあたり少なくとも109コロニー形成ユニット(CFU)の生菌量を有し、かつ物質のw/wとして計測される0.5%〜13%の量の添加化合物を含む、少なくとも50gの物質を得て、
(ii) ペレット凍結物質を得るために物質を凍結し、そして
(iii) 適切な方法で凍結物質をパックして、本発明の第一態様及びここに記載される実施態様の、パックされたペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物を得る
を含む方法に関する。
【0034】
本発明の第三の態様は、本発明の第二態様のペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物を作る方法により獲得されたペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物に関する。
【0035】
本発明の第四の態様は、食品又は飼料の製造方法において上記ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】融解の開始が生じる温度(Tm’)と加えられた二糖の量との間の相関を図に表す。さらなる詳細について、上記の実施例3を参照のこと。-46℃の貯蔵温度を点線で示す。
【図2】マルトデキストリン(グルシデックス12)濃度(%w/w)(X軸)の関数としての、多くの培養物の融解の開始温度(Tm’)(Y軸)。培養物名にAを付けたものは、グリセリンを培養物に加えたことを指し、Bを付けたものは、グリセリンをペレット凍結前に培養物に加えなかったことを指す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
本発明の詳細な実施態様を議論する前に、本発明の主態様に関連する特定の用語の定義を与える。
【0038】
「スクロースを利用できるLAB」という用語は、酸を産生しながら糖であるスクロースを発酵できるLABを指す。当該用語は、PCT公開番号WO2004/065584A1における定義と同一である。
【0039】
培養物の「物質」という用語は、生菌及び抗凍結物質の両者を含む培養物の適切な構成要素を指す。パッキングは含まれない。結果として、培養物の物質の重量は、パッキングの重量を含んでいない。
【0040】
「パッキング」又は「パッケージ」という用語は、広く理解されるべきである。ユーザーに提供するために、ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物はパッキングされるべきである。当該培養物は、ボトル、テトラパック(登録商標)コンテナなどにパッキングされてもよい。
【0041】
「添加化合物」という用語は、本文脈において、単一の特異的添加化合物であってもよいし、又は2以上の異なる添加化合物であってもよい。従って、培養物質内の添加化合物のw/w割合は、添加化合物の量の合計として理解されるべきである。好ましくは、当該用語は、発酵後に培養物に加えられる化合物に関する。従って、そのようなものとして、当該化合物は、培養物発酵培地に有意な量で存在しない化合物であってもよい。
【0042】
「ペレット凍結」及び「ペレット凍結培養物」という用語は、凍結培養物のペレット又は顆粒をもたらす方法の使用により凍結された培養物を指す。ペレット凍結培養物は、培養物を滴下して液体N2に加えることにより上手く作られて、培養物の凍結ペレット又は顆粒を形成する。典型的に、当該方法は、従来の工業的凍結乾燥工場におけるトレー上で行われるが、必ずしもそうではない。
【0043】
「ペレット」又は「顆粒」という用語は、小さい固体状の物体であって、0.1〜10mmの平均サイズの凍結した液体により形成される物体を指す。
【0044】
本発明の実施態様は、例示のみの様式により、以下に記載される。
【0045】
Tm’値
上に説明されるように、Tm’値は、物理化学において標準的に知られている用語であり、融解の開始が生じる温度を指す。本文脈では、Tm’は、凍結LAB培養物の融解の開始が生じる温度を指す。
【0046】
好ましくは、Tm’値は、本明細書において実施例1の「Tmの計測」と名づけられる欄において記載されるDSC法の使用により計測される。
【0047】
ペレット塊試験
本発明の第一態様に関して説明されるように、ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物が、約-46℃(本状況では、-50℃に予め設定された冷凍庫は、-46℃のサンプル温度を有した)で、7〜14日貯蔵されるとき、凍結培養物の個別のペレットは、互いにくっつかず、その結果、個別のペレットとして実質的に残ることにより特徴付けられる培養物であるかを分析する試験は、以下の試験を含む:
凍結された培養物の個別のペレットは、液体窒素中で凍結されたペレットであり、そして100個の個別のペレット(約5〜100gのペレット)を、ペトリ皿に注ぎ、そうして、固まっていない個別の単一のペレットの薄層を形成させる。当該層は、多くのペレットが、その隣のペレットの1以上と物理的に接触しており、約-46℃で7〜14日置かれ、そして当該ペレットが未だに固まっていないか、又は当該ペレットが塊を形成する若しくは互いにくっ付くかを観察するために試験した。ここで凍結培養物の個別のペレットが実質的に個別のペレットとして残るということの基準は、100個の個別のペレットのうちの少なくとも80が、個別の単一のペレットとして残っているということである。より好ましくは、100個の個別のペレットのうちの少なくとも90個が、固まっていない個別の単一のペレットとして残り、そしてさらにより好ましくは、100個の個別のペレットのうちの少なくとも95が、固まっていない個別の単一のペレットとして残る。
【0048】
固まっていない個別の単一のペレットとして残っている個別のペレットを試験及び計数することは、視覚的に行われうる。これを継続的に行うことは当業者の能力の範囲内であり、ここで当該結果は、通常の限定された技術的不確定性の範囲内で一貫しており、そして反復可能である。本明細書の実施例1はさらに技術的詳細を提供する。
【0049】
ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物
好ましくは、「凍結乳酸菌(LAB)培養物」という用語は、本明細書中に記載されるように、添加化合物を含まないときに、-70〜-46℃のTm’値を有する培養物を指す。当該培養物は、ペレット又は顆粒の形態で凍結されることもあり、「ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物」を形成する。ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物は、当該培養物を、液体N2に滴下して加えて、当該培養物の凍結ペレット又は顆粒を形成することにより都合よく作られうる。
【0050】
培養物のLABは、適切なAPI試験キット(bioMerieux SA, Lyon, France)の利用による国際IDF基準146A:1998"微生物特徴の同定”に従ったスクロースを利用しない任意の商業用LABでありうる。APIキット「rapid ID 32 STREP」及び「50CHLMedium」を使用して、多くのLAB属についてスクロース利用状態を確立する。
【0051】
好ましくは、LABは、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium spp.)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium spp.)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium spp.)、ラクトコッカス(Lactococcus spp.)、例えばラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactococcus lactis subsp.lactis)及びラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトバチルス属(Lactobacillus spp.)、例えばラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus spp.)、エンテロコッカス属(Enterococcus spp.)、ペディオコッカス属(Pediococcus spp.)、ロイコノストック属(Leuconostoc spp.)、オエノコッカス属(Oenococcus spp.)、及び菌類(fungal spp.)、例えばペニシリウム属(Pencillium spp.)、クリプトコッカス属(Cryptococcus spp.)、デブラヨマイシス属(Debraryomyces spp.)、クリベロマイシス属(Klyveromyces spp.)、及びサッカロマイシス属(Saccharomyces spp.)を含む群から選ばれるLABである。
【0052】
これらの種の幾つかは、一般的にスクロースを利用できると記載されているけれども、スクロースを利用できない突然変異体が、単離されてきており、そして継続して単離されるであろう。このような突然変異体がどんなに単離され、又は獲得されようとも、それらは本発明の一の態様である。
【0053】
工業的に最も有用な乳酸菌は、ラクトコッカス種(Lactococcus species)、ストレプトコッカス種(Streptococcus species)、エンテロコッカス種(Enterococcus species)、ラクトバチルス種(Lactobacillus species)、ロイコノストック種(Leuconostoc species)、及びペディオコッカス種(Pediococcus species)の中から見られる。
【0054】
「混合された乳酸菌(LAB)培養物」という用語は、2以上の異なるLAB種を含む混合された培養物を指す。「純粋な乳酸菌(LAB)培養物」という用語は、単一のLAB種のみを含む純粋な培養物を指す。
【0055】
本明細書中に記載される培養物は、約30℃の最適成長温度を有する中温菌からなる中温培養物でありうる。「中温培養物」は、2以上の異なる中温LAB種を含む培養物である。
【0056】
中温菌の群に属する典型的な生物は、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシーズ・クレモリス(Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス・次亜種ジアセチラクチス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)、及びラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)を含む。
【0057】
本明細書中に記載される培養物は、スクロースを利用できないLABを含んでもよい。いわゆるO-培養物は、穴がないチーズ(チェダー・チーズ、チェシャー・チーズ、フェタチーズ)を作るために使用され、そして典型的にラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、及びラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)を含む群から選ばれる1以上の生物を含む。一般的に、O-培養物はスクロースを利用しないと考えられている。
【0058】
高濃縮ペレット凍結乳酸菌培養物
本明細書中に記載される凍結培養物は、食品工業において高濃縮ペレット凍結乳酸菌培養物と名づけられる培養物である。十分な細菌を含むようにするため、かかる培養物は、比較的高濃度の生菌と混合された比較的大きい量である(十分な重量を有する)べきである。比較的多くの細菌が必要とされるならば、生菌の重量及び/又は濃度を増加させるべきであることは明らかである。
【0059】
好ましくは、本明細書中に記載されるペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物は、少なくとも100gの凍結物質、より好ましくは少なくとも250gの重量の凍結物質、さらにより好ましくは少なくとも500gの重量の凍結物質、そして最も好ましくは少なくとも900gの重量の凍結物質を有する。好ましくは、凍結物質の重量は、500kg未満である。
【0060】
好ましくは、本明細書中に記載されるペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物は、少なくとも5×109コロニー形成ユニット(CFU)/g凍結物質の生菌量、より好ましくは少なくとも1010のコロニー形成ユニット(CFU)/g凍結物質の生菌量、そして最も好ましくは少なくとも2×1010コロニー形成ユニット(CFU)/g凍結物質の生菌量を有する。
【0061】
LABの発酵及び適切な発酵培地は、当該技術分野に知られており、そして当業者は、特定のLABについて適切な培地及び発酵条件を選ぶことができる。適切な培地及び発酵を本明細書の実施例において与える。
【0062】
十分な量の細菌を得るために、本文脈において、適切な巨大発酵タンク中で比較的大規模の発酵を行うことが好ましい。少なくとも50l、好ましくは90l、さらにより好ましくは500l、又はそれ以上の発酵タンクが好ましい。
【0063】
適切な発酵の後に、生菌は、好ましくは、(例えば遠心により)発酵培地の液体(上清)を取り除くことにより単離される。単離された生菌は、単離バイオマスと名づけられうる。単離された生菌は、好ましくは少なくとも109コロニー形成ユニット(CFU)/g凍結物質の生菌量、より好ましくは5×109CFU/g凍結物質の生菌量、そして最も好ましくは少なくとも1010CFU/g凍結物質の生菌量を有するべきである。
【0064】
添加化合物(以下を参照のこと)を濃縮培養物に加えた後に、培養物は、当該混合物を液体N2中に滴下して加えることにより都合よく凍結されて、当該混合物の凍結ペレット又は顆粒を形成しうる。適した凍結方法は、DE2805676及びFR2393251に記載されている。
【0065】
ペレット凍結培養物は、次に、使用者に提供するために適切な方法でパッケージされる。
【0066】
添加化合物
上で記載されるように、好ましくは適切な添加化合物は、凍結培地のTm’値を貯蔵温度、例えば-46℃より高い値に増加させる、例えば、-45℃〜-15℃のTm’値、より好ましくは-43℃から-15℃Tm’値、そしてさらにより好ましくは-39℃から-15℃のTm’値に増加させることができるということにより特徴付けられる。
【0067】
本明細書の実施例2は、適切な添加化合物を同定するための迅速な実験戦略を記載する。様々な適切な化合物(10%w/w)を-46℃未満のTm’値を有する「モデル」凍結培養物(実施例2では、「モデル」培養物は、-54℃のTm’値を有する)に加え、そして添加前後においてTm’値をDSCにより計測した。
【0068】
実施例2の「モデル」培養物及び実施例2の試験プロトコルは、好ましくは、関心の特定の添加化合物が凍結培養物のTm’値を-46℃を越える値、例えば-45℃〜-15のTm’値、より好ましくは-43℃〜-15℃のTm’値、さらに好ましくは-39℃〜-15℃のTm’値に増加できるということにより、当該添加化合物が特徴付けられるかを評価するために使用される。
【0069】
実施例2において、シクロデキストリンが、Tm’を-44℃に増加させ、マンニトールがTm’値を-42℃に増加させ、トレハロースがTm’を-38℃に増加させ、魚ゼラチンがTm’値を-37℃に増加させ、マルトデキストリンがTm’値を-32℃に増加させ、そしてスプレー・ガムがTm’値を-31℃に増加させることを見ることができる。
【0070】
好ましくは添加化合物は、150〜100000g/mol、より好ましくは250〜100000g/mol、さらにより好ましくは300〜40000g/mol、そして最も好ましくは500〜15000g/molの分子量(MW)を有する化合物である。
【0071】
好ましい実施態様では、添加化合物は、抗凍結剤である。
【0072】
「抗凍結剤」という用語は、培養物の生存率により計測される凍結培養物の貯蔵安定性を改善することができる物質を指す。本文脈では、抗凍結剤は、一の特異的抗凍結薬剤であってもよいし、又は2以上の異なる薬剤であってもよい。従って、培養物質中の抗凍結物質のw/wパーセントは、抗凍結剤の量の合計として理解されるべきである。
【0073】
抗凍結剤は、タンパク質又はタンパク質加水分解物から選ばれてもよい。好ましい適切な抗凍結剤の例は、小麦抽出物、スキムミルク粉末、乳清粉末、酵母抽出物、グルテン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、ケラチン、及びアルブミンからなる群から選ばれる物質を含む。
【0074】
より好ましくは、抗凍結剤は、炭水化物又は核酸の清合成に関与する化合物である。好ましい適切な炭水化物は、ペントース(例えば、リボース、キシロース)、ヘキソース(例えば、フルクトース、マンノース、ソルボース)、二糖類(例えば、スクロース、トレハロース、メリビオース、ラクチュロース)、オリゴ糖(例えば、ラフィノース)、オリゴフルクトース(例えば、アクチライト(Actilight)、フリブロロース(Fribroloses))、多糖類(例えば、マルトデキストリン、キサンタン・ガム、ペクチン、アルギネート、微結晶セルロース、デキストラン、PEG)、及び糖アルコール(ソルビトール、マンニトール)からなる群から選ばれる炭水化物を含む。最も好ましくは、当該炭水化物は、150〜100000g/mol、より好ましくは、250〜100000g/mol、さらにより好ましくは300〜40000g/mol、及び最も好ましくは500〜15000g/molを有する炭水化物である。
【0075】
かなり好ましい実施態様では、添加化合物は、シクロデキストリン、マルチトール、魚ゼラチン、マルトデキストリン、(好ましくは、マルトデキストリンDE2〜マルトデキストリンDE19)、スプレー・ガム(例えば、スプレー・ガムIRX51693)、イノシン-5'-モノホスフェート(IMP)、及びイノシンからなる群から選ばれる添加化合物である。
【0076】
凍結培養物は、凍結物質のw/wとして計測される0.5%〜13%の添加化合物を含み、凍結物質のw/wとして計測される1%〜12%の添加化合物、より好ましくは凍結物質のw/wとして計測される2%〜10%の添加化合物、そしてさらにより好ましくは、凍結物質のw/wとして計測される添加化合物の5%〜10%を含む。
【0077】
発酵後における添加化合物(当該化合物は抗凍結剤であってもよい)の単離生菌(バイオマス)への添加は、適切な温度にて例えば30分間バイオマスと固体添加化合物とを混合することにより行われてもよい。或いは、添加化合物の滅菌溶液は、バイオマスと混合されてもよい。
【0078】
ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物の製造法
上で記載されるように、本発明の第二態様は、本発明の第一態様のペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物の製造方法であって、以下のステップ:
(i) 添加化合物を生菌に加えて、少なくとも109コロニー形成ユニット(CFU)/g物質の生菌量を有する少なくとも50gの物質を取得し、
(ii) 当該物質を凍らせて、ペレット凍結物質を取得し、
(iii) 当該ペレット凍結物質を適切な方法でパッキングする
を含む、前記方法に関する。
【0079】
上で記載されるように、ここで最も適切な「問題の」培養物は、ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物であって、本明細書中に記載される添加化合物を含まない場合に、-70℃〜-46℃のTm’値を有する、前記培養物である。
【0080】
従って、好ましい実施態様では、上記ステップ(i)に従って添加化合物を加える前に、添加化合物を含まない凍結乳酸菌(LAB)培養物のTm’値を計測し、そして-70℃〜-46℃、又はそれ以下のTm’値を有することを同定する。
【0081】
上記ステップ(i)に従って添加化合物を加える前に、ペレット塊試験(上の記載を参照のこと)を行い、そして凍結培養物の個別のペレットが-46℃での貯蔵で互いにくっ付くことを同定する。
【0082】
好ましくは、添加化合物を加えた後の、添加化合物を含む凍結乳酸菌(LAB)培養物のTm’値を計算し、そしてTm’値が-46℃を超えているか、好ましくは-45℃〜-15℃、より好ましくは-43℃〜-15℃、そしてさらにより好ましくは-39℃〜-15℃であるかを確かめる。
【0083】
最後に、添加化合物を加えた後に、培養物をペレット凍結し、そして、100個の個別のペレットのうちの少なくとも80個が、固まっていない個別の単一ペレットとして残っていることを保証するペレット塊試験(上の記載を参照のこと)を行う。
【0084】
凍結乳酸菌(LAB)培養物の使用
本明細書中に記載される凍結乳酸菌(LAB)培養物は、当該技術分野に従って、食品又は飼料の製造方法において使用されうる。
【実施例】
【0085】
実施例1:
R604-E(商業用凍結O-培養物、Chr.Hansen A/S, Denmark)は、凍結貯蔵の間粘着性のペレットを形成する傾向がある。本研究において、融点について詳細に調べること、そしてカゼイン塩、スクロース、又はマルトデキストリンを加えることにより融点を増大する試みによって、この問題に取り組む。
【0086】
目的:
R604−EのF-DVSの融点を、添加物を用いることにより高めることが可能であるかを評価することを目的とする。添加物を用いてR604-Eの融点を増大させる効果が、視覚的に評価され、そして試験製剤の各々についてDSCによりTm’を計測することにより評価される。
【0087】
i) 材料:
市販の培養物であるF-DVS R 604-E(Chr. Hansen A/S, Hoersholm, Denmark, Batch 2441258, 物質番号616581)、2キロ
ii) 融点を上昇させるために製剤について使用される添加溶液
50%(w/w)スクロース溶液(Danisco, Denmark)。
10%(w/w)カゼイン酸Na溶液(Arla, Denmark)
30%(w/w)マルトデキストリンDE10溶液(Glucidex10, Roquette Feres, Lestrem, France)。
30%(w/w)マルトデキストリンDE2溶液(Glucidex2, Roquette Feres, Lestrem, France)。
【0088】
iii)F−DVS・R604−Eの製法
凍結濃縮物を融解し、そして以下の表1に記載の添加物と混合する:
【表1】

【0089】
F−DVS R604の融点の視覚的な評価
F−DVS R604Eの6個の製剤を、液体窒素中でペレット凍結し、そして100の個別のペレット(約20〜30g)をペトリ皿に移し、そうして固まっていない単一ペレットの薄層を形成した。
【0090】
各製剤の一のサンプルを、−50℃に設定された冷凍庫に配置した。実際のサンプル温度は−46℃であった。貯蔵から7日後、サンプルが未だに固まっていないか、又はペレットが塊を形成する若しくは粘着性でありそうかを観察するためにサンプルを試験し、そしてもしそのような場合、揺すって固まっていない粒子に再び戻るかを試験した。
【0091】
【表2】

【0092】
Tm’の計測:
サンプルを100μlのアルミナるつぼの中で調製し、そして液体窒素中で凍結した。各製剤の一のサンプル及びF−DVS R604を6日間−46℃で置いた。
【0093】
相転移を、100μlのアルミナるつぼ、温度プログラム、インサート温度−90℃、実行温度プログラム:5℃/分−130℃〜0℃を備えたMettler Toledo 822e示差走査熱量形(DSC)で計測した。
【0094】
Tm’値(融解の開始、Roos(1995)により定義される)を計測した。結果を表2に示す。
【0095】
我々は、6%超のスクロース及び6%のマルトデキストリン(2又は10)の使用が、凍結ペレットのTm’値を増大させることを観測した。カゼイン酸Naの効果を見ることができなかった。目視検査から、10%スクロース及び2の異なるマルトデキストリンが、粘着性のペレットを形成する傾向に対して、正の効果を示した。
【0096】
実施例2:
目的
どの種類の添加物が凍結培養物の融点を増加できるかを同定するために、スクリーニング研究を行った。以下の添加物を試験した:
トレハロース、マルトデキストリン12、シクロデキストリン、スプレー・ガム、PEG、魚ゼラチン、マルチトール、塩化ナトリウム、グリセロール。
【0097】
i) 材料
F-DVS R 604(バッチ2471755、物質616581)詳細については実施例を参照のこと。
ii) 融点を上昇させるために製剤に使用する添加溶液
50%(w/w)トレハロース
30%(w/w)マルトデキストリンDE12(グルシデックス12(Glucidex12)、Roquette Freres、Lestrem, France)
30%(w/w)シクロデキストリン
30%(w/w)スプレー・ガム(IRX51693、CNI)
30%(w/w)PEG(PEG6000、Merck Germany)
30%(w/w)魚ゼラチン粉200(SKW Biosystems, France)
30%(w/w)マルチトール
30%(w/w)塩化ナトリウム
30%(w/w)グリセロール
【0098】
F-DVS R604-Eの製造方法:
凍結F-DVS R604-E濃縮物を融解し、そして様々な添加物と混合して最終製剤の10%(w/w)にした。
【0099】
Tm’の計測:
サンプルを100μlのアルミナるつぼ中に調製し、そして液体窒素中で凍結させた。相転移曲線をMettler Toledo 822e Differential Scanning Caloriometerで、9の製剤について記録し、そしてレファレンス・サンプル(添加物を含まないR604E)と比較した。-90℃でサンプルをDSCに挿入し、そして以下の温度プログラム:挿入温度-90℃;温度スキャン-130℃〜0℃において7℃/分を使用して実行した。
【0100】
結果
相転移曲線を作成し、そしてRoos(1991)により記載されるようにTm’値を測定した。当該値を以下の表3に与える。
【表3】

【0101】
レファレンス・サンプルについてのTm’は、-54℃であることが分かった(氷融解の開始)。
以下の添加物はTm’を増加させる:
PEG(-53℃)
シクロデキストリン(-44℃)
マルチトール(-42℃)
トレハロース(-38℃)
魚ゼラチン(-37℃)
マルトデキストリン12(-32℃)
スプレー・ガム(-31℃)。
グリセロール及び塩化ナトリウムは凍結培養物ペレットの融点を増加させなかった。
【0102】
実施例3
この試験に、添加物の量とDSCで測ったTm’の増加との間の関係を評価することが含まれる。
i)材料
F-DVS CH N 19(バッチ2421868) (市販の凍結LD-培養物、Chr. Hansen A/S, Denmark)。
【0103】
【表4】

【0104】
ii) 融点を上昇させるために製剤に用いた添加溶液
1gのバイオマスあたりのスクロースの濃度を、3%(w/w)〜13%(w/w)で変化させた。トレハロースは、5%(w/w)レベルでのみ試験した。全てのスクロース濃度を、50%スクロース溶液をバイオマスに加えることから調製した。トレハロース濃度は、40%(w/w)溶液から調製した。
【0105】
Tm’値の計測:
凍結F-DVS R604-Eの濃縮物を融解し、そして表4に記載されるように様々な添加物と混合した。次にサンプルを100μlのアルミナるつぼに移し、そして液体窒素中で凍結させ、そして分析するまで-46℃で貯蔵した。相転移曲線を8の製剤についてDSCで記録し、そしてレファレンス・サンプル(添加物を含まないR604E)と比較した。当該サンプルをDSCに-90℃で挿入し、そして以下の温度プログラム:挿入温度-90℃;温度スキャン:5℃/分で130℃〜0℃を用いて実行した。
【0106】
相転移曲線からTm’と添加された二糖類の量との間の相関を図1において見ることができる。図1から、8%以上のスクロースにより、凍結培養物が-46℃の貯蔵において融解を開始しないということが保証されるということが分かる。
【0107】
実施例4
Chr. Hansen A/S, Denmarkから市販される培養物(HP、HPS、HP−1、LP、LL−2)をマルトデキストリン (グルシデックス12、Roquette Freres, Lestrem, France) の添加前後において初融点を分析した。当該製品は凍結ペレットとして販売されており、そしてこれらはかたまらない状態を維持すべきであり、当該状態は貯蔵温度より高い初融点により保証される。
【0108】
目的:
本発明の研究の目的は、固まっていないペレットを得るために、貯蔵温度より高く初融点を上昇させることである。
【0109】
材料と方法
i) 材料
グルシデックス12(Roquette Freres, Lestrem, France)を添加化合物として使用した。
以下の表5に記載される100gの各培養物を用いた。Bは、グリセリンが培養物に加えられていないことを示し、一方、Aは、10%v/vのグリセリンがペレット凍結前に加えられたことを示す。
【0110】
【表5】

【0111】
ii) サンプルの製剤の製法:
凍結濃縮培養物を融解し、そして様々な量のグルシデックス12溶液と混合して、最終製剤の3.5%〜10.1%(w/w)とした。
様々な製剤を以下の表6に記載する。
【0112】
iii) Tm’の計測
サンプルを、100μlアルミナるつぼ中で調製した。相転移曲線を全ての製剤についてMettlet DSCで記録した。サンプルをDSCに-90℃で挿入した。スキャン温度プログラムは、7℃/分で100℃〜0℃であった。
【0113】
iiii) F−DVS R604の融点の目視評価
製剤を、液体窒素中でペレット凍結し、そして100の個別のペレット(約20〜30g)をペトリ皿に移し、そうして固まっていない単一のペレットの薄い層を形成した。各製剤の一のサンプルを-46℃で置いた。14日間の貯蔵後、サンプルがいまだに固まっていないか、又はサンプルが塊を形成する若しくは粘着性でありそうかを観察するために試験した。もしそのような場合、揺すって固まっていない粒子に戻るかを観察するために試験した。
【0114】
結果:
様々な量でマルトデキストリン(グルシデックス12)を様々な培養物へと加えた結果を図1に示す。マルトデキストリンの濃度を増加させることがTm’値を増加させることが明らかである。表2において、粘着性/塊形成の評価についての結果が記載されている。-46℃の貯蔵温度より高いTm’を有するサンプルは、固まっていないペレットであり、一方、-46℃より低いTm’を有するサンプルは互いにくっ付いた。
【0115】
【表6】

【0116】
結果を表6及び図2に示す。マルトデキストリンが、10%v/vグリセリンを含む培養物(A-シリーズ)並びにグリセリンを含まない培養物(B-シリーズ)において、Tm’を増加させるために有効な薬剤であるということが示される。この実験により、既知の抗凍結剤(つまり、グリセリン)が、ペレット凍結培養物の貯蔵の間、物理的安定性を増大させるためには使用できないということがさらに示される。
【0117】
参考文献
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも50gの重量の凍結物質を有する商業用パッケージ中のペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物であって、 当該凍結物質が個別のペレット形態で存在し、 1gの凍結物質あたり少なくとも109コロニー形成ユニットの生菌量を有し、そして 凍結物質のw/wとして計測される0.5%〜13%の添加化合物であって、凍結物質のw/wとして計測される10%の量の当該添加化合物を使用することにより、添加化合物を伴わない場合に(DSCにより計測された)-70℃〜-46℃のTm’値を有する凍結乳酸菌(LAB)培養物のTm’(融解の開始温度)を、-46℃を超えるTm’値、例えば-45℃〜-15℃に増加できる化合物の群から選ばれる上記添加化合物を含み、 そしてここで、当該凍結乳酸菌(LAB)培養物が約−46℃で、7〜14日間貯蔵された場合に、凍結培養物の個別のペレットが互いにくっ付かず、それゆえ実質的に個別のペレットとして残ることにより特徴付けられ、ここで当該特徴決定は、以下の試験: 当該凍結培養物の個別のペレットが液体窒素中で凍結されたペレットであり、そして100個の個別のペレット(約5〜100gのペレット)が、ペトリ皿に入れられ、こうして固まっていない個別の単一ペレットの薄層であって、当該ペレットの多くが1以上のその近隣のペレットと物理的に接触していることにより特徴付けられる上記薄層を形成し、約−46℃で7〜14日間置かれ、そしてペレットが未だに固まっていないか、又はペレットが塊を形成する若しくは互いにくっ付くかを観察するために試験され、当該試験において、凍結培養物の個別のペレットが個別のペレットとして残るという判断基準は、100個の個別のペレットの内の少なくとも80個が個別の固まっていない単一ペレットとして残るということである により測定される、前記ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物。 但し、スクロースを利用できるLABを含む凍結乳酸菌(LAB)培養物であって、凍結物質のw/wとして計測される2%〜13%の量のスクロース;及び凍結物質のw/wとして計測される4%〜6%の量のトレハロース;並びに凍結物質のw/wとして計測される13%の量のトレハロース/スクロース両方の混合物からなる群から選ばれる抗凍結薬剤化合物を含む、前記培養物を除く。
【請求項2】
前記培養物が、約30℃にて最適増殖温度を有する中温性細菌からなる、混合された中温性の培養物である、請求項1に記載のペレット凍結培養物。
【請求項3】
前記LABが、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium spp.)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium spp.)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium spp.)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactococcus lactis subsp.lactis)及びラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)を含むラクトコッカス属(Lactococcus spp.)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)を含むラクトバチルス属(Lactobacillus spp.)、ストレプトコッカス属(Streptococcus spp.)、エンテロコッカス属(Enterococcus spp.)、ペディオコッカス属(Pediococcus spp.)、オエノコッカス属(Oenococcus spp.)、並びにペニシリウム属(Pencillium spp.)、クリプトコッカス属(Cryptococcus spp.)、デブラヨマイシス属(Debraryomyces spp.)、クリベロマイシス属(Klyveromyces spp.)、及びサッカロマイシス属(Saccharomyces spp.)を含む菌類(fungal spp.)を含む群から選ばれるLABである、請求項1又は2に記載のペレット凍結培養物。
【請求項4】
前記凍結乳酸菌(LAB)培養物が、請求項1に記載の添加化合物を含まない場合に-70℃〜-46℃のTm’を有する培養物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペレット凍結培養物。
【請求項5】
前記凍結乳酸菌培養物が、凍結物質のw/wとして計測される5%〜10%の添加化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペレット凍結培養物。
【請求項6】
前記添加化合物が、シクロデキストリン、マルチトール、トレハロース、魚ゼラチン、マルトデキストリン、酵母抽出物、及びスプレー・ガムからなる群から選ばれる添加化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のペレット凍結培養物。
【請求項7】
以下のステップ: (i) 添加化合物を生菌に加えて、物質1gあたり少なくとも109コロニー形成ユニット(CFU)の生菌量を有する少なくとも50gの物質を得て、そして物質のw/wとして計測される0.5%〜13%の量で当該添加化合物を含み、 (ii) 当該物質を凍結して、ペレット凍結物質を獲得し、そして (iii) ペレット凍結物質を適切な方法でパッキングして、請求項1〜6のいずれか一項に記載のパックされた凍結乳酸菌(LAB)培養物を得る を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物の製造方法。
【請求項8】
請求項7のステップ(i)に記載の添加化合物を加える前に、添加化合物を含まない凍結乳酸菌(LAB)のTm’値を計測し、そして当該培養物が-70℃〜−46℃のTm’値を有することを同定し;そして 添加化合物を加えた後に、添加化合物を含む凍結乳酸菌(LAB)培養物のTm’値を計測し、そしてTm’値が−49℃〜−15℃、より好ましくは−39℃〜−15℃であることを確認する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の凍結乳酸菌(LAB)培養物の製造方法により獲得できる、ペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物。
【請求項10】
食品又は飼料の製造工程における、請求項1〜6、及び9のいずれか一項に記載のペレット凍結乳酸菌(LAB)培養物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−234725(P2011−234725A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−138546(P2011−138546)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【分割の表示】特願2006−553439(P2006−553439)の分割
【原出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(501216034)セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ (8)
【Fターム(参考)】