説明

個食用容器入りヨーグルト

【課題】後発酵型のヨーグルトを容器ごと振って流動化させて飲食する、未知の個食用容器入りヨーグルトを提供する。
【解決手段】個食用容器入りヨーグルトであって、個食用容器10とヨーグルト20とを備え、ヨーグルト20は、個食用容器10に充填したヨーグルト原液を発酵させてなる、水分が70重量パーセント以上90重量パーセント以下である後発酵型ヨーグルトであり、振ることでヨーグルト20が流動化する。流動化が進行するにつれて後発酵型ヨーグルトは、より酸味が減り、甘みは増してクリーミーで濃厚な味わいに変化する。よって、振る回数や振る強度に応じて、固形の後発酵型ヨーグルトとの味覚や食感の違いの変化を楽しむことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個食用容器入りヨーグルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器を振ることで内容物のゲルを流動化させ、容器から飲むことができる、容器入りデザート飲料が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この容器入りデザート飲料の内容物は、プリン、ムース、ババロア、ゼリー等の態様をとっているが、あくまでもこれらの風味を持つ飲料にゲル化安定剤を加えてゲル化したものである。つまり、固形のプリン、ムース、ババロア、ゼリー等とは味覚や食感が元々全く異なるものである。また、容器を振ってゲルを流動化させるのは、ゲル化した飲料を容器から飲むためであり、流動化の前後での味覚や食感の変化を楽しむためではない。
【0003】
また、ヨーグルト飲料として液状ヨーグルトも知られている。液状ヨーグルトは、例えばヨーグルト原液を発酵させて固形のヨーグルトを生成し、これを物理的手段で破壊してから所望の流動性になるまで薄め、その後に容器に充填されるものである(前発酵型ヨーグルト)。つまり、液状ヨーグルトは、容器に充填される時点ですでに液状であり、容器を振っても液状ヨーグルトの味覚や食感を変化させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−268918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述の前発酵型ヨーグルトに対して、後発酵型ヨーグルトも知られている。後発酵型ヨーグルトは、ヨーグルト原液を容器に充填し、発酵させて容器内で固形ヨーグルトを生成する。後発酵型ヨーグルトは容器内で固まっているため、スプーン等ですくって食べるのが一般的である。
【0006】
発明者は、固形の後発酵型ヨーグルトを何らかの手段により流動化させると、固形状態に較べて酸味が減り、甘みは増してクリーミーで濃厚な味わいに感じるなど、流動化の前後で味覚や食感に変化が生じるという知見を得た。そして、固形の後発酵型ヨーグルトをあえて流動化してから飲むことにより、固形の後発酵型ヨーグルトとの味覚や食感の違いを楽しむことができると考えるに至った。
【0007】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、本発明の第1の課題は、後発酵型のヨーグルトを容器ごと振って流動化させて飲食する、未知の個食用容器入りヨーグルトを提供することである。
第2の課題は、振る回数や振る強度に応じて、固形の後発酵型ヨーグルトとの味覚や食感の違いの変化を楽しむことができる個食用容器入りヨーグルトを提供することである。
第3の課題は、固形の後発酵型ヨーグルトを簡単に流動化できるようにすることにより、力の弱い子供等であっても、ヨーグルトを振って流動化させてから飲食するというプロセスを楽しむことができる個食用容器入りヨーグルトを提供することである。
第4の課題は、吸引力の弱い子供等であっても、流動化したヨーグルトをストローを用いて容易に吸引飲食することができる個食用容器入りヨーグルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、第1の発明は、個食用容器入りヨーグルトであって、
個食用容器とヨーグルトとを備え、
前記ヨーグルトは、前記個食用容器に充填したヨーグルト原液を発酵させてなる、水分が70重量パーセント以上90重量パーセント以下である後発酵型ヨーグルトであり、
振ることで前記ヨーグルトが流動化する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明であって、前記個食用容器は、開口部を有する樹脂製の容器主体と、前記開口部を閉鎖する蓋部とを備え、
前記ヨーグルトの体積は、前記個食用容器の容積の65パーセント以上80パーセント以下である。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明であって、前記個食用容器には、流動化させた前記ヨーグルトを吸引して飲食するためのストローが付属しており、
前記ストローの内径は、4mm以上7mm以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
第1の発明によれば、後発酵型のヨーグルトを容器ごと振って流動化させて飲食する、未知の個食用容器入りヨーグルトを提供することができる。
また、ヨーグルトは、水分が70重量パーセント以上90重量パーセント以下である後発酵型のヨーグルトであるため、振る前は適度な硬さを有する固形であり、振る回数や振る強度に応じて流動化が進行する。このため、飲食者が振る回数や振る強度を調節することにより、ヨーグルトの一部のみを流動化させたり、全部流動化させたりすることができる。流動化が進行するにつれて後発酵型ヨーグルトは、より酸味が減り、甘みは増してクリーミーで濃厚な味わいに変化する。よって、振る回数や振る強度に応じて、固形の後発酵型ヨーグルトとの味覚や食感の違いの変化を楽しむことができる。
【0014】
第2の発明によれば、個食用容器の容器主体は樹脂製で紙製の容器と較べて強度があり、振る際に力を入れて握っても潰れにくい。このため力を入れて個食用容器を握り、振ることができる。また、ヨーグルトの体積は、個食用容器の容積の65パーセント以上80パーセント以下であるため、振ることにより固形のヨーグルトを個食用容器の内部で大きく移動させて簡単に壊し、流動化させることができる。このため、大人はもちろん力の弱い子供等であっても、ヨーグルトを振って流動化させてから飲食するというプロセスを楽しむことができる。
【0015】
第3の発明によれば、個食用容器には、流動化させたヨーグルトを吸引して飲食するためのストローが付属しており、ストローの内径は、飲料一般に用いられているストローよりも太い4mm以上7mm以下である。このため、ストローを用いて粘度の高いヨーグルトを吸引しやすく、大人はもちろん吸引力の弱い子供等であっても、流動化したヨーグルトをストローを用いて容易に吸引飲食することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係る個食用容器入りヨーグルト100を側面から見た半断面図。
【図2】個食用容器入りヨーグルト100を振る状態を示す図。
【図3】ストロー30を挿した状態を示す個食用容器入りヨーグルト100の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1に係る個食用容器入りヨーグルト100について、図1から図3を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施例の個食用容器入りヨーグルト100は、個食用容器10、ヨーグルト20、ストロー30とを備える。
【0020】
個食用容器10は、容器主体12、蓋部14、カバー16を備えている。容器主体12は、略コップ形であり、硬質の合成樹脂製である。容器主体12は、底部121と底部121に対して立設される側部122を有する。底部121を容器主体12の下部とすると上部には側部122により開口部123が構成されている。側部122の上端の周縁部、すなわち開口部123の周縁部には、フランジ124が形成されている。本実施例の容器主体12の容量は、約200mlである。容器主体12の外形は縦長形状であり、手でしっかりと握りやすい形状としている。
【0021】
蓋部14は、容器主体12の開口部123を閉鎖するものである。蓋部14は、ストロー30が貫通可能なアルミニウム箔で形成されている。蓋部14は、容器主体12のフランジ124上に貼着されて開口部123を閉鎖し、容器主体12の内部を密閉する。
【0022】
カバー16は、容器主体12のフランジ124の周囲に外嵌され、容器主体12の上部を覆うものである。カバー16は、肉厚の薄い合成樹脂製である。カバー16の上部には、ストロー30を差し込むことができるよう、円形に切り込み(図示せず)が形成されている。ストロー30の先端でこの切り込みの内側を突くことにより、円形のストロー差込孔(図示せず)が開くようになっている。
【0023】
ヨーグルト20は、後発酵型ヨーグルトである。つまり、容器主体12にヨーグルト原液を充填し、これを発酵させて製造されるヨーグルトである。ヨーグルト原液は、牛乳、砂糖、乳製品、香料等を含み、ヨーグルト20の水分が70重量パーセント以上90重量パーセント以下となるように調製される。ヨーグルト20の水分量は、ヨーグルト20の硬さを決定する上で重要な要素である。つまり、水分量が70重量パーセント未満であると硬すぎて振っても流動化しにくく、水分量が90重量パーセント超であると柔らかすぎて流通販売時に固形状態を保つことができない。このため、ヨーグルト20の水分は、70重量パーセント以上90重量パーセント以下とされている。ヨーグルト20の水分は、ヨーグルト20の硬さと柔らかさのバランスの点から、70重量パーセント以上90重量パーセント以下とすることが好ましく、80重量パーセント前後とすることが特に好ましい。
【0024】
個食用容器10に充填されるヨーグルト原液の量は、ヨーグルト20の体積が、個食用容器10の容積の65パーセント以上80パーセント以下となるように決定される。個食用容器10の容積とヨーグルト20の体積の関係は、個食用容器10を振ってヨーグルト20を流動化させる上で重要な要素である。つまり、ヨーグルト20の体積が個食用容器10の容積の65パーセント未満の場合、ヨーグルト20は個食用容器10内部で移動しやすく、流動化させるための空間は十分である。しかしながらこの場合は個食用容器10の大きさが必要以上に大きくなる。一方ヨーグルト20の体積が個食用容器10の容積の80パーセント超では、ヨーグルト20を個食用容器10内部で移動させ流動化させるための空間が不十分となり、ヨーグルト20が流動化しにくくなる。このため、ヨーグルト20の体積は、個食用容器10の容積の65パーセント以上80パーセント以下とされている。本実施例では、ヨーグルト20の体積が約140mlとなるようにヨーグルト原液が容器主体12に充填される。この場合、ヨーグルト20の体積は、個食用容器10の容積の約70パーセントである。
【0025】
ストロー30は、流動化させたヨーグルト20を吸引して飲食するためのものである。ストロー30の内径は、少なくとも流動化したヨーグルト20の粘度と、平均的な飲食者の吸引力とを条件として決定される。ヨーグルト20を吸引して飲食するのに適したストロー30の内径は、4mm以上7mm以下である。本実施例のストロー30の内径は約6mmである。ストロー30は流通販売時、及び飲食時に便利なように、容器主体12の側面に貼着される小袋に収容されている。
【0026】
次に、本実施例の個食用容器入りヨーグルト100を振ってヨーグルト20を流動化させてから飲食するプロセスについて説明する。
【0027】
図2に示すように、まず、個食用容器10にストロー30を挿す前に個食用容器10を手Hで把持し、個食用容器10ごとヨーグルト20を振る。個食用容器10にストロー30を挿した後で個食用容器10を振ると、内部のヨーグルト20が飛び出すおそれがある。最初の2、3回は強く振ることが好ましい。最初は固形のままヨーグルト20が個食用容器10内を移動するが、振り続けることで固形のヨーグルト20が壊れ、流動化が進行する。振る回数は好みに応じて5回から10回程度でよいが、更に多く振ってもよい。
【0028】
振り終えたら、図3に示すように、ストロー30を容器主体12内に挿す。カバー16には、円形の切り込みが形成されており、ストロー30の先端でこの切り込みの内側を突くことにより、円形のストロー差込孔が開く。ストロー30の先端を蓋部14に貫通させることにより、ストロー30は容器主体12内に挿し込まれ、飲食の準備が完了する。この後、ストロー30で流動化したヨーグルト20を吸引して飲食する。
【0029】
以上説明した実施例1に係る個食用容器入りヨーグルト100によれば、次のような効果を有する。
【0030】
ヨーグルト20は、水分が70重量パーセント以上90重量パーセント以下である後発酵型のヨーグルトとしたため、振る前は適度な硬さを有する固形であり、振る回数や振る強度に応じて流動化が進行する。このため、飲食者が振る回数や振る強度を調節することにより、ヨーグルト20の一部のみを流動化させたり、全部流動化させたりすることができる。流動化が進行するにつれて後発酵型ヨーグルトは、より酸味が減り、甘みは増してクリーミーで濃厚な味わいに変化する。これはヨーグルト20の流動化が進行するにつれて舌に広がり易くなり、甘味を感じ易くなるためと推測される。よって、振る回数や振る強度に応じて、固形の後発酵型ヨーグルトとの味覚や食感の違いの変化を楽しむことができる。
【0031】
個食用容器10の容器主体12は樹脂製で紙製の容器と較べて強度があり、振る際に力を入れて握っても潰れにくい。このため力を入れて個食用容器10を握り、振ることができる。また、ヨーグルト20の体積は、個食用容器10の容積の65パーセント以上80パーセント以下である、約70パーセントとした。このため、振ることにより固形のヨーグルト20を個食用容器10の内部で大きく移動させて簡単に壊し、流動化させることができる。このため、大人はもちろん力の弱い子供等であっても、ヨーグルトを振って流動化させてから飲食するというプロセスを楽しむことができる。
【0032】
個食用容器10には、流動化させたヨーグルト20を吸引して飲食するためのストロー30が付属しており、ストロー30の内径は、飲料一般に用いられているストローよりも太い4mm以上7mm以下とする。本実施例では、ストロー30の内径は約6mmである。このため、ストロー30を用いて粘度の高いヨーグルト20を吸引しやすく、大人はもちろん吸引力の弱い子供等であっても、流動化したヨーグルト20をストローを用いて容易に吸引飲食することができる。
【符号の説明】
【0033】
100 個食用容器入りヨーグルト
10 個食用容器
12 容器主体
14 蓋部
16 カバー
20 ヨーグルト
30 ストロー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個食用容器入りヨーグルトであって、
個食用容器とヨーグルトとを備え、
前記ヨーグルトは、前記個食用容器に充填したヨーグルト原液を発酵させてなる、水分が70重量パーセント以上90重量パーセント以下である後発酵型ヨーグルトであり、
振ることで前記ヨーグルトが流動化することを特徴とする個食用容器入りヨーグルト。
【請求項2】
前記個食用容器は、開口部を有する樹脂製の容器主体と、前記開口部を閉鎖する蓋部とを備え、
前記ヨーグルトの体積は、前記個食用容器の容積の65パーセント以上80パーセント以下であることを特徴とする請求項1に記載の個食用容器入りヨーグルト。
【請求項3】
前記個食用容器には、流動化させた前記ヨーグルトを吸引して飲食するためのストローが付属しており、
前記ストローの内径は、4mm以上7mm以下であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の個食用容器入りヨーグルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−139140(P2012−139140A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292791(P2010−292791)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(511002847)平林乳業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】