説明

偏光フィルム、表示装置、及びその製造方法

【課題】二色比の高い偏光フィルムの提供。
【解決手段】基板と、その上に、光配向膜及び光吸収異方性膜がこの順で順次積層された偏光フィルムであって、該光吸収異方性膜が、液晶性の非着色性低分子化合物の占める割合が30質量%以下であり、且つネマチック液晶性を有するアゾ系二色性色素の少なくとも一種を含む二色性色素組成物の配向を固定してなり、X線回折測定において、配向軸垂直方向の周期構造に由来する回折ピークを示し、該回折ピークの少なくとも一つが表す周期が3.0〜15.0Åであり、且つ該回折ピークの強度が、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で極大値を示さないことを特徴とする偏光フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルム及び該偏光フィルムを用いた表示装置に関し、特に偏光解消が低減された偏光フィルム及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光や自然光を含む照射光の減衰機能、偏光機能、散乱機能、遮光機能等が必要となった際には、従来は、それぞれの機能毎に異なった原理によって作動する装置を充当していた。それ故に、それら機能に対応する製品も、それぞれの機能別に異なった製造工程によって製造されていた。例えば、LCD(液晶素子)では表示における旋光性や複屈折性を制御するために直線偏光板や円偏光板が用いられている。OLED(有機エレクトロルミネッセンス素子)においても外光の反射防止のために円偏光板が使用されている。従来、これらの偏光板(偏光素子)にはヨウ素が二色性物質として広く使用されてきた。ヨウ素偏光子は、ヨウ素をポリビニルアルコールのような高分子材料に溶解又は吸着させ、その膜を一方向にフィルム状に延伸して多ヨウ素錯体を配向させることにより作製される。しかしながら、ヨウ素は昇華性が大きいために偏光素子に使用した場合、その耐熱性や耐光性が十分ではなかった。
【0003】
そのため、有機系の色素を二色性物質に使用する偏光素子が検討されている。しかし、これら有機系の色素においてはヨウ素に比べると二色性がかなり劣る程度の偏光素子しか得られないなどの問題点があった。また、該方法では延伸処理等のプロセスに手間がかかる等の問題点もあった。
【0004】
そこで、最近では他の方法が着目されるようになってきた。例えば、湿式製膜法で、ガラスや透明フィルムなどの基板上に有機色素分子の分子間相互作用などを利用して二色性色素を配向させる方法がある。配向した二色性色素の二色比を高める方法として、特許文献1では、二色性色素を、高配向秩序を有する相で配向させている。また、特許文献2及び3では結晶構造を含む偏光素子が開示されている。しかしこれらの偏光素子は、いずれも対称性の低い高次構造を含むため、ドメインと粒界を生じやすく、散乱や偏光解消を起こすという問題があった。また、特許文献2に記載のスルホ基、カルボキシル基などの水溶性を与える置換基を有するアゾ色素はリオトロピック液晶であるため、サーモトロピック液晶のように加熱熟成による均一配向処理を実施することが困難であり、平滑な表面を有する塗布膜の形成が難しく、散乱や偏光解消の原因となっていた。
【0005】
一方、二色性色素の配向処理方法として、蒸着法、ラビング法、光配向法が知られている。例えば、特許文献4では、配向膜上に有機色素分子を気相から蒸着し配向させている。しかしながら、該文献に記載の方法では、製造上、プロセス自体が煩雑であるという問題点があった。また、特許文献5には、ラビングした配向膜上に液晶性アゾ色素をスピンコートし配向させる方法が開示されている。このラビング法は、従来、液晶化合物を配向させる方法として広く用いられているが、静電気や埃を発生させるため、配向処理後の洗浄工程が必要となり歩留まりが低下するという、製造プロセス的な問題点や、コントラストが低下するという性能上の問題があった。
【0006】
一方、このラビング法に代わる配向処理法として、近年、配向処理後の洗浄工程が不要であることから、光配向法が注目されている。例えば、特許文献6では、光活性分子を有する層(いわゆる光配向膜)に、スルホン酸基、アミノ基、又は水酸基等の親水性置換基を有する二色性分子を塗布配向してなる偏光素子が開示されている。また、特許文献7及び8では、光配向膜に、紫外線硬化性液晶に、黒色の二色性色素を溶解してなる組成物(いわゆるゲスト−ホストタイプ)を塗布配向させて形成する偏光素子が開示されている。しかしながら、これらの方法で得られた偏光素子は、いずれも、ヨウ素偏光子に比べると二色性がかなり劣り、液晶表示装置用途には利用することができない。
【0007】
一方、近年、表示性能などの向上を目的に新たな偏光素子の用途開発が進められている。特許文献9では、カラーフィルタ層と液晶材料層との間に偏光層(いわゆる、インセル偏光層)を設けることにより、カラーフィルタの偏光解消(いわゆる、消偏度)を抑制することが提案されている。しかしながら、液晶セル内に配置される偏光層は、より薄い膜厚で所望の偏光度を達成する必要があり、より高い二色性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4404606号
【特許文献2】特開2006−79030号
【特許文献3】特許第3667637号
【特許文献4】特許第3687130号
【特許文献5】特開2005−189393号公報
【特許文献6】特開平7−261024号公報
【特許文献7】特開2001−330726号公報
【特許文献8】特開平11−101964号公報
【特許文献9】特開2008−90317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者が検討したところ、特許文献1に記載されている、ヘキサチック相又はクリスタル相を利用して偏光層を形成すると、その対称性が低いためグレインバウンダリ(いわゆる結晶粒界)が生じる。この粒界に起因して生じる散乱光により偏光解消が起こり、コントラストが低下することがわかった。さらに、特許文献1では、配向膜としてポリビニルアルコール膜をラビング処理したラビング膜が使用されている。ラビング膜は、膜表面の平坦性が損なわれるため、偏光子との界面で散乱が生じ、コントラストが低下する。一方、特許文献5では光配向膜が使用されているが、紫外線硬化性液晶の配向揺らぎに起因して生じる散乱光により偏光解消が起こり消偏性が悪化する。
【0010】
本発明は、上記の背景技術に鑑みなされたものであり、以下に示す目的を達成することを課題とする。
本発明は、二色性が高く、且つ散乱光による偏光解消が低減された、高いコントラストの偏光フィルム及び該偏光フィルムを具備してなる表示装置を提供すること、並びに、前記偏光フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
<1> 基板と、その上に、光配向膜及び光吸収異方性膜がこの順で順次積層された偏光フィルムであって、
該光吸収異方性膜が、液晶性の非着色性低分子化合物の占める割合が30質量%以下であり、且つネマチック液晶性を有するアゾ系二色性色素の少なくとも一種を含む二色性色素組成物の配向を固定してなり、X線回折測定において、配向軸垂直方向の周期構造に由来する回折ピークを示し、該回折ピークの少なくとも一つが表す周期が3.0〜15.0Åであり、且つ該回折ピークの強度が、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で極大値を示さないことを特徴とする偏光フィルム。
<2> 前記光吸収異方性膜の回折ピークの少なくとも一つが、面内方向の周期構造に由来する回折ピークであることを特徴とする<1>の偏光フィルム。
<3> 前記光吸収異方性膜がX線回折測定において、配向軸平行方向の周期構造に由来する回折ピークを示すことを特徴とする<1>又は<2>の偏光フィルム。
<4> 前記回折ピークの少なくとも一つが表す周期が、3.0〜50.0Åである<3>の偏光フィルム。
<5> 前記回折ピークの少なくとも一つの半値幅が、1.0Å以下であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかの偏光フィルム。
<6> 前記二色性色素組成物が、二種以上の二色性色素を含むことを特徴とする<1>〜<5>のいずれかの偏光フィルム。
【0012】
<7> 前記少なくとも一種の二色性色素が、下記一般式(I)、下記一般式(II)、下記一般式(III)、又は下記一般式(IV)で表わされる化合物であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれかの偏光フィルム。
【化1】

(式中、R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;L11は、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、又は−CH=CH−を表し;A11は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し;B11は、置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基を表し;nは1〜5の整数を表し、nが2以上のとき複数のB11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

(式中、R21及びR22はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基を表すが、但し、少なくとも一方は、水素原子以外の基を表し;L22は、アルキレン基を表すが、アルキレン基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はそれぞれ−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−NRCOO−、−OCONR−、−CO−、−S−、−SO2−、−NR−、−NRSO2−、又は−SO2NR−(Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)に置換されていてもよく;Yは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、又は重合性基を表し;L21はそれぞれ、アゾ基(−N=N−)、カルボニルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)、イミノ基(−N=CH−)、及びビニレン基(−C=C−)からなる群から選ばれる連結基を表し;Dyeはそれぞれ、下記一般式(IIa)で表されるアゾ色素残基を表し;
【化3】

式(IIa)中、*はL21との結合部を表し;X21は、ヒドロキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、無置換アミノ基、又はモノもしくはジアルキルアミノ基を表し;Ar21は、それぞれ置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し;nは1〜3の整数を表し、nが2以上の時、2つのAr21は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化4】

(式中、R31〜R35はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R36及びR37はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;Q31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はシクロヘキサン環基を表し;L31は2価の連結基を表し;A31は酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【化5】

(式中、R41及びR42はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していてもよく;Ar4は、置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し;R43及びR44はそれぞれ、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を表し、互いに結合して複素環を形成していてもよい。)
【0013】
<8> 前記少なくとも一種の二色性色素が、スクアリリウム色素であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれかの偏光フィルム。
<9> 前記スクアリリウム色素が、下記一般式(VI)で表わされる化合物であることを特徴とする<8>の偏光フィルム。
【化6】

(式中、A1及びA2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の、炭化水素環基又は複素環基を表わす。)
【0014】
<10> <1>〜<9>のいずれかの偏光フィルムを有することを特徴とする表示装置。
<11> 少なくとも次の[1]〜[3]:
[1]基板上に形成された光配向膜を光照射処理する工程と、
[2]光配向膜上に、有機溶媒に溶解した、二色性色素組成物を塗布する工程と、
[3]該二色性色素組成物の塗布膜を50℃以上250℃以下で加熱し、配向させ光吸収異方性層とする工程とをこの順で少なくとも含む<1>〜<9>のいずれかの偏光フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二色性が高く、且つ散乱光による偏光解消が低減された、高いコントラストの偏光フィルム、及びそれを利用した表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】比較例1のX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
1.偏光フィルム
本発明は、基板上に、光配向膜及び光吸収異方性膜がこの順で順次積層された偏光フィルムであって、該光吸収異方性膜が、液晶性の非着色性低分子化合物の占める割合が30質量%以下であり、且つネマチック液晶性を有するアゾ系二色性色素の少なくとも一種を含む二色性色素組成物の配向を固定してなることを特徴とする偏光フィルムに関する。
(1)−1 光吸収異方性膜
本発明でいう光吸収異方性膜とは、色素膜の厚み方向および任意の直交する面内2方向の立体座標系における合計3方向から選ばれる任意の2方向における電磁気学的性質に異方性を有する色素膜である。電磁気学的性質としては、吸収、屈折などの光学的性質、抵抗、容量などの電気的性質などが挙げられる。吸収、屈折などの光学的異方性を有する膜としては、例えば、直線偏光膜、円偏光膜、位相差膜、抵抗率異方性膜などがある。すなわち、本発明の光吸収異方性膜は、偏光膜、位相差膜あるいは抵抗率異方性膜に使用できる。特に、本発明の光吸収異方性膜は、可視光領域全体にわたって高い吸光度を示すため、偏光膜に有用である。
【0018】
本発明の偏光フィルムでは、前記光吸収異方性膜が、X線回折測定において、配向軸垂直方向の周期構造に由来する回折ピークを示し、該回折ピークの少なくとも一つが表す周期が3.0〜15.0Åであり、且、該回折ピークの強度が、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で極大値を示さないことを特徴とする。
【0019】
ここで配向軸とは、光吸収異方性膜が直線偏光に対してもっとも大きな吸光度を示す方向を意味し、通常、配向処理を行なった方向と一致する。例えば、二色性色素組成物の水平配向を固定した膜では、配向軸は、膜面内の軸であって、配向処理方向(本発明では光配向膜を利用しているので、光配向膜への光照射により発現する複屈折率の最も大きい方向)と一致する。
【0020】
一般に、光吸収異方性膜を形成するアゾ系二色性色素はアスペクト比(=分子長軸長/分子短軸長)の大きな棒状分子であり、分子長軸方向とほぼ一致する方向に、可視光を吸収する遷移モーメントが存在する(非特許文献 Dichroic Dyes for Liquid Crystal Displays)。そのため、二色性色素の分子長軸と配向軸のなす角度が平均して小さく、ばらつきが小さいほど、光吸収異方性膜は高い二色比を示す。
【0021】
本発明の光吸収異方性膜は、配向軸垂直方向の周期に由来する回折ピークを示す。該周期は、例えば、分子長軸を配向軸方向にそろえて配向した二色性色素の、分子短軸方向の分子間距離に対応し、本発明では、その範囲は3.0〜15.0Åであり、好ましくは3.0〜10.0Åであり、より好ましくは3.0〜6.0Åであり、さらに好ましくは3.3〜5.5Åである。
【0022】
本発明の光吸収異方性膜は、上記回折ピークについて、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で強度分布を測定したとき、極大値を示さない。該測定において回折ピークの強度が極大値を示した場合、それは配向軸垂直方向すなわち分子短軸方向のパッキングに異方性があることを示している。このような集合状態として具体的には、結晶、ヘキサチック相、クリスタル相などが挙げられる(液晶便覧)。パッキングに異方性があると、不連続なパッキングによってドメインと粒界を生じ、ヘイズの発生やドメインごとの配向乱れ、偏光解消を招く恐れがあり好ましくない。本発明の光吸収異方性膜は配向軸垂直方向のパッキングに異方性がないため、ドメインと粒界を生じることなく、均一な膜を形成する。このような集合状態として具体的には、ネマチック相、スメクチックA相、これらの相の過冷却状態などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、複数の集合状態が混在して、全体として、上記回折ピークの特徴を示す態様であってもよい。
なお、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で強度分布を測定したとき、極大値を示すか否かについては、通常のX線回折装置を用いた測定により確認することができ、例えば、「X線回折要論」(CULLITY,B.D、アグネ、1961年)、「Thin Film Analysis by X-Ray Scattering:X線散乱による薄膜分析」(Birkholz, Mario、Wiley、2006年)、「X線結晶構造解析」(大橋裕二、裳華房、2005/09/25)、「X線解析入門 (第2版)」(角戸正夫 笹田義夫 (共著)、東京化学同人、1973年)等に記載の方法に準じて測定を行うことで、確認することができる。
【0023】
光吸収異方性膜は、一般に膜に垂直または垂直に近い角度で入射する光に対して用いられるため、面内方向に高い二色比を有することが好ましい。そのため、光吸収異方性膜は面内方向に周期構造を有し、該周期構造に由来する回折ピークを示すことが好ましい。
【0024】
本発明の光吸収異方性膜は、配向軸平行方向の周期に由来する回折ピークを示すことが好ましい。特に、配向軸垂直方向に隣接した分子が層を形成し、該層が配向軸平行方向に積層していることが好ましい。このような集合状態は、ネマチック相より高秩序なスメクチック相に類似のものであり、高い二色比が得られる。該周期は例えば、分子長またはその2倍に対応する場合を含み、その範囲は3.0〜50.0Åであり、好ましくは10.0〜45.0Åであり、より好ましくは15.0〜40.0Åであり、さらに好ましくは25.0〜35.0Åである。
【0025】
本発明の光吸収異方性膜が示す回折ピークは、半値幅が1.0Å以下であることが好ましい。
ここで半値幅とは、X線回折測定の一つの回折ピーク内において、ベースラインを基準としたピーク頂点の強度を求め、ピーク頂点の左右に一つずつある、該強度の半分の強度を示す2点をとり、2点のそれぞれが示す周期の値の差をとった値のことである。
【0026】
X線回折測定において回折ピークを示し、その半値幅が1.0Å以下である光吸収異方性膜は、以下の理由により高い二色比を示すと推測される。
二色性色素の分子長軸と配向軸のなす角度のばらつきが大きいと、分子間距離のばらつきも大きくなる。すると、周期構造がある場合、その周期の値もばらつき、X線回折測定で得られる回折ピークはブロードになって大きな半値幅を示すことになる。
これに対し、回折ピークの半値幅が一定値以下であるシャープなピークであるということは分子間距離のばらつきが小さく、二色性色素の分子長軸と配向軸のなす角度が平均して小さいこと、すなわち高秩序に配向していることを意味し、高い二色比を発現すると推測される。
【0027】
本発明では、前記回折ピークの半値幅は、1.0Å以下であり、好ましくは0.90Å以下、より好ましくは0.70Å以下、さらに好ましくは0.50Å以下であり、好ましくは0.05Å以上である。半値幅が上限を上回ると、色素の分子間距離のばらつきが大きくなり、高秩序な配向が阻害され好ましくない。またこれが下限を下回ると、配向ひずみを生じやすくなってドメインと粒界を生じ、ヘイズの発生やドメインごとの配向乱れ、偏光解消を招く恐れがあり好ましくない。
【0028】
光吸収異方性膜の回折ピークの周期および半値幅は、薄膜評価用X線回折装置(リガク社製、商品名:「ATX−G」インプレーン光学系)、又はこれと同等の装置で測定されるX線プロファイルから得られる
【0029】
本発明に係る光吸収異方性膜のX線回折測定は、例えば次の手順により行われる。
まず、光吸収異方性膜について、15°刻みで全方向のインプレーン測定を実施する。ピークが観測された角度を固定したまま、サンプルを基板に平行な面内で回転して測定する所謂φスキャンにより、ピーク強度が大きい基板平面内における向きを決定する。得られた向きにおけるインプレーン測定のピークを用いて、周期、半値幅を求めることができる。
【0030】
二色性色素の配向を固定してなる光吸収異方性膜であって、かつ、回折ピークの周期や半値幅について、上記特徴のある本発明の光吸収異方性膜は、二色比が高く、偏光膜として有用である。
【0031】
以下、X線回折測定において、上記特性を満足する光吸収異方性膜の作製に利用可能な材料等について詳細に説明する。
本発明では、光吸収異方性膜は、液晶性の非着色性低分子化合物の占める割合が30質量%以下であり、ネマチック液晶性を有するアゾ系二色性色素の少なくとも一種を含む二色性色素組成物の配向を固定してなる。
本発明で利用する二色性色素組成物において、液晶性の非着色性低分子化合物の占める割合は30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、よりさらに好ましくは5質量%以下である。即ち、本発明で使用する二色性色素組成物では、二色性色素分子は自らの配向能によって、又は他の色素と併用することで配向し、その状態が固定されることで、偏光膜等の光吸収異方性膜として機能するのが好ましい。例えば、二色性色素とともに、主成分として非着色性の液晶化合物を含有する組成物を利用して、液晶化合物の分子の配向に沿って、二色性色素の分子を配向させ、所定の二色比を達成している、いわゆるゲストホスト(GH)タイプの組成物として調製することもできるが、GHの態様よりも、前記態様のほうが高い二色比を達成可能であり、好ましい。本発明において使用する二色性色素組成物は、液晶性の非着色性低分子化合物の占める割合が低いかあるいは全く含まないことで高い色素濃度を得ることができ、光吸収異方性膜を薄膜化することができる。
ここで非着色性の液晶化合物とは、可視光の分光領域即ち400〜700nmの分光領域において吸収を示さず、かつ、ネマチック液晶相またはスメクチック液晶相を発現する化合物を言い、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第154〜192頁および第715〜722頁に記載の液晶化合物が挙げられる。
【0032】
本発明では、ネマチック液晶性を有するアゾ系二色性色素の少なくとも一種を含む二色性色素組成物を用いる。本発明において、「二色性色素」とは、方向によって吸光度が異なる色素を意味する。また、「二色性」および「二色比」は、二色性色素組成物を光吸収異方性膜としたときの、偏光軸方向の偏光の吸光度に対する、吸収軸方向の偏光の吸光度の比で計算される。
本発明における二色性色素組成物は、下記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素の少なくとも一種を含有することが特に好ましい。下記一般式(I)〜(IV)で表される二色性色素は、ネマチック液晶性を有するのが好ましい。
【0033】
【化7】

【0034】
式中、R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;L11は、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、又は−CH=CH−を表し;A11は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し;B11は、置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基を表し;nは1〜5の整数を表し、nが2以上のとき複数のB11は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0035】
上記一般式(I)において、R11〜R14で表される置換基としては以下の基を挙げることができる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリール基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,5−ジトリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
【0036】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、オキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜15、特に好ましくは2〜10であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは2〜6であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0037】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基(−CH=N−もしくは−N=CH−)、アゾ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。
これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0038】
11〜R14で表される基としては、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、さらに好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0039】
15及びR16で表される置換基を有していてもよいアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−オクチル基などが挙げられる。R15及びR16で表されるアルキル基の置換基としては、前記R11〜R14で表される置換基と同義である。R15又はR16がアルキル基を表す場合、R12又はR14と連結して環構造を形成してもよい。R15及びR16は、好ましくは水素原子、アルキル基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、又はエチル基である。
【0040】
11は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
該フェニル基又は該ナフチル基が有していてもよい置換基としては、アゾ化合物の溶解性やネマチック液晶性を高めるために導入される基、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性や電子吸引性を有する基、又は配向を固定化するために導入される重合性基を有する基が好ましく、具体的には、前記R11〜R14で表される置換基と同義である。好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルホニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいスルホニル基、置換基を有していてもよいウレイド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イミノ基、アゾ基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、ニトロ基、イミノ基、アゾ基である。これらの置換基のうち、炭素原子を有するものについては、炭素原子数の好ましい範囲は、R11〜R14で表される置換基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0041】
該フェニル基又は該ナフチル基は、これら置換基を1〜5個有していてもよく、好ましくは1個有していることである。フェニル基についてより好ましくは、L1に対してパラ位に1個置換基を有していることである。
【0042】
芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジル基、キノリル基、チオフェニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアジアゾリル基、キノロニル基、ナフタルイミドイル基、チエノチアゾリル基などが挙げられる。
【0043】
芳香族複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリ基、チアジアゾリル基、又はチエノチアゾリル基が好ましく、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、チアジアゾリル基、又はチエノチアゾリル基がより好ましく、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、又はチエノチアゾリル基がさらに好ましい。
【0044】
11は、特に好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、又はチエノチアゾリル基である。
【0045】
11は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、又は2価の芳香族複素環基を表す。nは1〜4を表し、nが2以上のとき、複数のB11は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0046】
該芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましい。該芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、及びシアノ基が挙げられる。該芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子が好ましく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子がより好ましく、メチル基、又はハロゲン原子がさらに好ましい。
【0047】
該芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾチアジアゾール基、フタルイミド基、チエノチアゾール基等が挙げられる。中でも、チエノチアゾール基が特に好ましい。
該芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、メチル基、及びエチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;無置換あるいはメチルアミノ基等のアミノ基;アセチルアミノ基、アシルアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの置換基のうち、炭素原子を有するものについては、炭素原子数の好ましい範囲は、R11〜R14で表される置換基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0048】
前記一般式(I)で表されるアゾ色素の好ましい例には、下記一般式(Ia)及び(Ib)のいずれかで表されるアゾ色素が含まれる。
【0049】
【化8】

【0050】
式中、R17a及びR18aはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し;L11aは、−N=N−、−N=CH−、−O(C=O)−、又は−CH=CH−を表し;A11aは、下記一般式(Ia−I)又は(Ia−III)で表される基を表し;B11a及びB12aはそれぞれ独立に、下記式(Ia−IV)、(Ia−V)、又は(Ia−VI)で表される基を表す;
【0051】
【化9】

【0052】
式中、R19aは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、又は置換基を有していてもよいアシルオキシ基を表す。
【0053】
【化10】

【0054】
式中、mは0〜2の整数を表す。
【0055】
【化11】

【0056】
式中、R17b及びR18bはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し;L11bは、−N=N−又は−(C=O)O−を表し;L12bは、−N=CH−、−(C=O)O−、又は−O(C=O)−を表し;A11bは、下記式(Ib−II)又は(Ib−III)で表される基を表し;mは0〜2の整数を表す;
【化12】

【0057】
式中、R19bは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基を表す。
【0058】
前記一般式(Ia)及び(Ib)中、各基が有する置換基の例には、一般式(I)中のR11〜R14で表される置換基の例と同様である。また、アルキル基等の炭素原子を有する基については、炭素原子数の好ましい範囲は、R11〜R14で表される置換基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0059】
なお、上記一般式(I)、(Ia)及び(Ib)で表される化合物は置換基として、重合性基を有していてもよい。重合性基を有していると、硬膜性が良化されるので好ましい。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。エチレン性不飽和重合性基の例には、アクリロイル基、及びメタクリロイル基が含まれる。
重合性基は分子末端に位置するのが好ましく、即ち、式(I)中では、R15及び/又はR16の置換基として、並びにAr11の置換基として、存在するのが好ましい。
【0060】
以下に、式(I)で表されるアゾ色素の具体例を示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0061】
【化13】

【0062】
【化14】

【0063】
【化15】

【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
【化18】

【0067】
【化19】

【0068】
【化20】

【0069】
【化21】

【0070】
【化22】

【0071】
【化23】

【0072】
【化24】

【0073】
【化25】

【0074】
【化26】

【0075】
【化27】

【0076】
【化28】

【0077】
式中、R21及びR22はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基を表すが、但し、少なくとも一方は、水素原子以外の基を表す。L22は、アルキレン基を表すが、アルキレン基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はそれぞれ−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−NRCOO−、−OCONR−、−CO−、−S−、−SO2−、−NR−、−NRSO2−、又は−SO2NR−(Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)に置換されていてもよい。Yは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、又は重合性基を表す。
【0078】
中でも、R21及びR22の一方が、水素原子又はC1〜C4程度の短鎖の置換基であり、R21及びR22の他方が、C5〜C30程度の長鎖の置換基であると、溶解性がより改善されるので好ましい。一般的に、液晶性の発現に関しては、その分子形状及び分極率の異方性等が大きく影響することがよく知られており、液晶便覧(2000年、丸善(株))等に詳しく記載されている。棒状液晶分子の代表的な骨格は、剛直なメソゲンと分子長軸方向の柔軟な末端鎖から成っており、式(II)中のR21及びR22に相当する分子短軸方向の側方置換基は、分子の回転を阻害しない小さな置換基とするか、又は置換していないのが一般的である。側方置換基に特徴を持たせた例としては、親水性(例えばイオン性)の側方置換基を導入することで、スメクチック相の安定化した例が知られているが、安定なネマチック相を発現する例はほとんど知られていない。特に、ネマチック相を発現する棒状液晶性分子の特定の置換位置に、長鎖の置換基を導入することで、配向秩序度を低下させることなく、溶解性を向上させた例は、全く知られていない。
【0079】
21及びR22がそれぞれ表すアルキル基としては、C1〜C30のアルキル基が挙げられる。上記短鎖のアルキル基の例としては、C1〜C9が好ましく、C1〜C4がより好ましい。一方、上記長鎖のアルキル基としては、C5〜C30が好ましく、C10〜C30がより好ましく、C10〜C20がさらに好ましい。
【0080】
21及びR22がそれぞれ表すアルコキシ基としては、C1〜C30のアルコキシ基が挙げられる。上記短鎖のアルコキシ基の例としては、C1〜C8が好ましく、C1〜C3がより好ましい。一方、上記長鎖のアルコキシ基としては、C5〜C30が好ましく、C10〜C30がより好ましく、C10〜C20がさらに好ましい。
【0081】
21及びR22がそれぞれ表す−L22−Yで表される置換基のうち、L22が表すアルキレン基は、C5〜C30が好ましく、C10〜C30がより好ましく、C10〜C20がさらに好ましい。前記アルキレン基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はそれぞれ−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−NRCOO−、−OCONR−、−CO−、−S−、−SO2−、−NR−、−NRSO2−、及び−SO2NR−(Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)からなる2価基の群から選択された1以上によって置換されていてもよい。勿論、前記2価基の群から選択される2以上の基によって置換されていてもよい。また、L22の末端であって、Yと結合するCH2が、上記2価の基のいずれかで置換されていてもよい。また、L22の先端であって、フェニル基と結合するCH2が、上記2価の基のいずれかで置換されていてもよい。
【0082】
特に、溶解性向上の観点では、L22がアルキレンオキシ基である、又はアルキレンオキシ基を含んでいるのが好ましく、L22が、−(OCH2CH2p−(但し、pは3以上の数を表し、3〜10であるのが好ましく、3〜6であるのがより好ましい)で表されるポリエチレンオキシ基であるか、又はポリエチレンオキシ基を含んでいるのがさらに好ましい。
以下に、−L22−の例を示すが、以下の例に限定されるものではない。下記式中、qは1以上の数であり、1〜10であるのが好ましく、2〜6であるのがより好ましい。また、rは5〜30であり、好ましくは10〜30であり、より好ましくは10〜20である。
−(OCH2CH2p
−(OCH2CH2p−O−(CH2q
−(OCH2CH2p−OC(=O)−(CH2q
−(OCH2CH2p−OC(=O)NH−(CH2q
−O(CH2r
−(CH2r
【0083】
21及びR22がそれぞれ表す−L22−Yで表される置換基のうち、Yは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくはC1〜C10、より好ましくはC1〜C5のアルコキシ基である)、カルボキシル基、ハロゲン原子、又は重合性基を表す。
22とYとの組合せにより、−L22−Yの末端は、例えばカルボキシル基やアミノ基、アンモニウム基などの分子間相互作用を強める置換基となり得るし、またスルホニルオキシ基、ハロゲン原子等の脱離基にもなり得る。
また、−L22−Yの末端は、架橋性基、重合性基など、他分子と共有結合を形成する置換基であってもよく、例えば、−O−C(=O)CH=CH2、及び−O−C(=O)C(CH3)=CH2等の重合性基であってもよい。
【0084】
硬化膜用の材料として利用する場合は、Yは、重合性基であることが好ましい(但し、前記式(II)の化合物が重合性基を有していなくても、併用される化合物が重合性であれば、当該他の化合物の重合反応を進行させることで、式(II)の化合物の配向を固定することができる)。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。前記式で表される重合性基の例には、下記式(M−1)で表されるアクリレート基、及び下記式(M−2)で表されるメタクリレーと基が含まれる。
【0085】
【化29】

【0086】
また、開環重合性基も好ましく、例えば、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基又はオキセタニル基がより好ましく、エポキシ基が特に好ましい。
【0087】
前記一般式(II)中、L21はそれぞれ、アゾ基(−N=N−)、カルボニルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)、イミノ基(−N=CH−)、及びビニレン基(−C=C−)からなる群から選ばれる連結基を表す。中でも、ビニレン基が好ましい。
【0088】
前記前記一般式(II)中、Dyeはそれぞれ、下記一般式(IIa)で表されるアゾ色素残基を表す。
【0089】
【化30】

【0090】
式(IIa)中、*はL21との結合部を表し;X21は、ヒドロキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、無置換アミノ基、又はモノもしくはジアルキルアミノ基を表し;Ar21は、それぞれ置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し;nは1〜3の整数を表し、nが2以上の時、複数あるAr21は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0091】
21で表されるアルキル基は、好ましくはC1〜C12、より好ましくは、C1〜C6のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が含まれる。アルキル基は置換基を有していてもよく、該置換基の例には、ヒドロキシ基、カルボキシル基、及び重合性基が含まれる。重合性基の好ましい例は、上記Yが表す重合性基の好ましい例と同様である。
【0092】
21で表されるアルコキシは、好ましくはC1〜C20、より好ましくはC1〜C10、さらに好ましくはC1〜C6のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、ブトキシ基、ペンタオキシ基、ヘキサオキシ基、ヘプタオキシ基、オクタオキシ基などが挙げられる。アルコキシ基は置換基を有していてもよく、該置換基の例には、ヒドロキシ基、カルボキシル基、及び重合性基が含まれる。重合性基の好ましい例は、上記Yが表す重合性基の好ましい例と同様である。
【0093】
21で表される置換もしくは無置換のアミノ基は、好ましくはC0〜C20、より好ましくはC010、さらに好ましくはC0〜C6のアミノ基である。具体的には、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチル・ヘキシルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる。
【0094】
中でも、X21はアルコキシ基であるのが好ましい。
【0095】
前記一般式(II)中、Ar21は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基の例には、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、ピリジン環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、キノリン環基、チオフェン環基、チアゾール環基、チアジアゾール環基、チエノチアゾール環基などが含まれる。中でも、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、チエノチアゾール環基が好ましく、1,4−フェニレン基が最も好ましい。
【0096】
Ar21が有してもよい置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、シアノ基などが好ましく、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好ましい。
【0097】
nは、1又は2であるのが好ましく、1がより好ましい。
【0098】
前記一般式(II)で表される化合物の例には、以下の一般式(IIb)で表される化合物が含まれる。式中の各記号の意義は、式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0099】
【化31】

【0100】
式中、X21は互いに同一又は異なり、C1-12のアルコキシ基を表すのが好ましく;R21及びR22は互いに異なっているのが好ましく、R21及びR22の一方が、水素原子又はC1〜C4の短鎖の置換基(アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基)であり、R21及びR22の他方が、C5〜C30の長鎖の置換基(アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基)であるのが好ましい。あるいは、R21及びR22はそれぞれ、−L22−Yで表される置換基であり、L22がアルキレンオキシ基である、又はアルキレンオキシ基を含んでいるのも好ましい。
【0101】
以下に、前記一般式(II)で表される化合物の具体例を示すが、以下の化合物例に限定されるものではない。
【0102】
【化32】

【0103】
【化33】

【0104】
【化34】

【0105】
【化35】

【0106】
式中、R31〜R35はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R36及びR37はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;Q31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はシクロヘキサン環基を表し;L31は2価の連結基を表し;A31は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0107】
31〜R35で表される置換基の例としては、前記式(I)中のR11〜R14がそれぞれ表す置換基の例と同様である。好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、最も好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0108】
前記一般式(III)において、R36及びR37で表される置換基を有していてもよいアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−オクチル基などが挙げられる。R36及びR37で表されるアルキル基の置換基としては、前記R31〜R35で表される置換基と同義である。R36及びR37がアルキル基を表す場合、互いに連結して環構造を形成してもよい。R36又はR37がアルキル基を表す場合、それぞれR32又はR34と連結して環構造を形成してもよい。
36及びR37で表される基としては、特に好ましくは水素原子又はアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0109】
前記一般式(III)において、Q31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン環基を表す。
31で表される基が有していてもよい置換基としては、アゾ化合物の溶解性やネマチック液晶性を高めるために導入される基、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性や電子吸引性を有する基、又は配向を固定化するために導入される重合性基を有する基が好ましく、具体的には、前記R31〜R35で表される置換基と同義である。好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルホニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいスルホニル基、置換基を有していてもよいウレイド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イミノ基、アゾ基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、ニトロ基、イミノ基、アゾ基である。これらの置換基のうち、炭素原子を有するものについては、炭素原子数の好ましい範囲は、R31〜R35で表される置換基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0110】
該芳香族炭化水素基、該芳香族複素環基又は該シクロヘキサン環基は、これら置換基を1〜5個有していてもよく、好ましくは1個有していることである。Q31がフェニル基である場合は、L31に対してパラ位に1個置換基を有しているのが好ましく、シクロヘキサン環基である場合は、L31に対して4位にトランス配置となるように1個置換基を有しているのが好ましい。
【0111】
31で表される芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジル基、キノリル基、チオフェニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアジアゾリル基、キノロニル基、ナフタルイミドイル基、チエノチアゾリル基などが挙げられる。
芳香族複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリ基、チアジアゾリル基、又はチエノチアゾリル基が好ましく、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、チアジアゾリル基、又はチエノチアゾリル基が特に好ましく、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、又はチエノチアゾリル基が最も好ましい。
【0112】
31で表される基としては、特に好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、チエノチアゾリル基又はシクロヘキサン環基であり、より好ましくは、フェニル基、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基又はシクロヘキサン環基である。
【0113】
前記一般式(III)において、L31で表される連結基としては、単結合、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基などが挙げられる)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、エテニレン基などが挙げられる)、アルキニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、エチニレン基などが挙げられる)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチレンオキシ基などが挙げられる)、アミド基、エーテル基、アシルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−OC(=O)−)、イミノ基(−CH=N−もしくは−N=CH−)、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、カルボニル基、−NR−基(ここで、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、アゾ基、アゾキシ基、又はこれらを2つ以上組合せて構成される炭素数0〜60の2価の連結基が挙げられる。
【0114】
31で表される基としては、特に好ましくは単結合、アミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、イミノ基、アゾ基又はアゾキシ基であり、よりさらに好ましくはアゾ基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、又はイミノ基である。
【0115】
前記一般式(III)において、A31は酸素原子又は硫黄原子を表し、好ましくは硫黄原子である。
【0116】
前記一般式(III)で表される化合物は、置換基として、重合性基を有していてもよい。重合性基を有していると、硬膜性が良化されるので好ましい。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。エチレン性不飽和重合性基の例には、アクリロイル基、及びメタクリロイル基が含まれる。
重合性基は分子末端に位置するのが好ましく、即ち、式(III)中では、R36及び/又はR37の置換基として、並びにQ1の置換基として、存在するのが好ましい。
【0117】
前記一般式(III)で表される化合物のうち、特に好ましいものは、下記一般式(IIIa)で表される化合物である。
【0118】
【化36】

【0119】
式中、R31〜R35については、上記式(III)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。B31は窒素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子を表し;L32はアゾ基、アシルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−OC(=O)−)、又はイミノ基を表す。
【0120】
前記一般式(IIIa)において、R35は水素原子又はメチル基を表すのが好ましく、より好ましくは水素原子である。
【0121】
前記一般式(IIIa)において、B31が炭素原子の場合に有していてもよい置換基は、前記一般式(III)においてQ31が有していてもよい置換基と同義であり、好ましい範囲も同一である。
前記一般式(IIIa)において、L32はアゾ基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、又はイミノ基を表し、好ましくはアゾ基又はアシルオキシ基、オキシカルボニル基であり、より好ましくはアゾ基である。
【0122】
以下に、式(III)で表される化合物の具体例を示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0123】
【化37】

【0124】
【化38】

【0125】
【化39】

【0126】
【化40】

【0127】
【化41】

【0128】
【化42】

【0129】
【化43】

【0130】
【化44】

【0131】
【化45】

【0132】
式中、R41及びR42はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していてもよく;Ar4は、置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し;R43及びR44はそれぞれ、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を表し、互いに結合して複素環を形成していてもよい。
【0133】
一般式(IV)において、R41及びR42がそれぞれ表す置換基の例としては、前記一般式(I)中のR11〜R14がそれぞれ表す置換基の例と同様である。R41及びR42としては、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルホ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、シアノ基であり、よりさらに好ましくは水素原子、メチル基、シアノ基である。
【0134】
41とR42は互いに連結して環を形成することも好ましい。特に芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を形成することが好ましい。芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノロン環、ナフタルイミド環、チエノチアゾール環などが挙げられる。
41とR42が互いに連結して形成する環状基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であり、より好ましくはベンゼン環又はピリジン環であり、もっとも好ましくはピリジン環である。
41とR42は互いに連結して形成する環状基は置換基を有していてもよく、その範囲はR1、R2で表される基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0135】
前記一般式(IV)で表される化合物の例には、以下の一般式(IV’)で表される化合物が含まれる。
【化46】

【0136】
式中、式(IV)中と同一の符号は、それぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。A42は、N又はCHを表し、R47及びR48はそれぞれ、水素原子又は置換基を表す。R47及びR48のいずれか一方は置換基であるのが好ましく、双方が置換基であるのも好ましい。置換基の好ましい例は、R41及びR42が表す置換基の例と同様であり、即ち、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルホ基であるのが好ましく、より好ましくは、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基であり、さらに好ましくはアルキル基、シアノ基であり、最も好ましくはメチル基、シアノ基である。例えば、R47及びR48のいずれか一方が炭素原子数1〜4のアルキル基であり、他方がシアノ基である化合物例も好ましい。
【0137】
一般式(IV’)において、Ar4で表される芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノロン環、ナフタルイミド環、チエノチアゾール環などが挙げられる。
Ar4で表される基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、チオフェン環であり、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、チオフェン環であり、もっとも好ましくはベンゼン環である。
Ar4は置換基を有していてもよく、その範囲は前記R41、R42で表される基と同様である。
Ar4が有していてもよい置換基は、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、よりさらに好ましくは、メチル基である。Ar4は無置換であるのも好ましい。
【0138】
Ar4とアミノ基の結合は、Ar4とアゾ基の結合と平行であることが、分子の直線性を高め、より大きな分子長及びアスペクト比を得られるため好ましい。例えばAr4がアゾ基及びアミノ基と結合した6員環を含む場合、アミノ基はアゾ基に対して4位に結合していることが好ましく、アゾ基及びアミノ基と結合した5員環を含む場合、アミノ基はアゾ基に対して3位又は4位に結合していることが好ましい。
【0139】
一般式(IV')において、R43及びR44で表されるアルキル基の範囲は前記R41、R42で表されるアルキル基と同様である。該アルキル基は置換基を有していてもよく、当該置換基の例は、R41、R42で表される置換基の例と同様である。R43及びR44が置換されていてもよいアルキル基を表す場合、互いに結合して複素環を形成していてもよい。また、可能な場合にはAr4が有する置換基と結合して環を形成していてもよい。
【0140】
43とR44は互いに連結して環を形成することが好ましい。好ましくは6員環又は5員環であり、より好ましくは6員環である。該環状基は、炭素とともに、炭素以外の原子を構成原子として有していてもよい。炭素以外の構成原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。該環状基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
43とR44からなる環状基として具体的には、3−ピロリン環、ピロリジン環、3−イミダゾリン環、イミダゾリジン環、4−オキサゾリン環、オキサゾリジン環、4−チアゾリン環、チアゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、アゼパン環、アゾカン環などが挙げられる。
43とR44からなる環状基は、好ましくはピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環であり、より好ましくはピペリジン環、ピペラジン環であり、もっとも好ましくはピペラジン環である。
【0141】
43とR44からなる環状基は置換基を有していてもよく、その範囲はR41及びR42で表される基と同様である。該環状基は剛直な直線状の置換基を一つ有し、該環状基と該置換基の結合は、該環状基とAr4の結合と平行であることが、分子の直線性を高め、より大きな分子長及びアスペクト比を得られるため好ましい。
【0142】
一般式(IV)で表される二色性色素のうち、特に好ましいものは、下記一般式(IVa)で表される二色性色素である。
【0143】
【化47】

【0144】
式中、R41及びR42はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していてもよく;Ar4は、置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し;A41は炭素原子又は窒素原子を表し;L41、L42、R45、及びR46は単結合又は2価の連結基を表し;Q41は、置換されていてもよい、環状炭化水素基又は複素環基を表し;Q42は、置換されていてもよい、2価の環状炭化水素基又は複素環基を表し;nは0〜3の整数を表し、nが2以上の時、複数あるL42及びQ42は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0145】
一般式(IVa)において、R41及びR42で表される基の範囲は、一般式(IVa)におけるR41及びR42と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(IVa)において、Ar4で表される2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の範囲は、一般式(IV)におけるAr4と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(IVa)において、A41は好ましくは窒素原子である。
【0146】
一般式(IVa)において、L41、L42、R45、及びR46で表される連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基などが挙げられる)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、エテニレン基などが挙げられる)、アルキニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、エチニレン基などが挙げられる)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチレンオキシ基などが挙げられる)、アミド基、エーテル基、アシルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−OC(=O)−)、イミノ基(−CH=N−もしくは−N=CH−)、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、カルボニル基、−NR−基(ここで、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、アゾ基、アゾキシ基、又はこれらを2つ以上組合せて構成される炭素数0〜60の2価の連結基が挙げられる。
【0147】
41で表される連結基としては、好ましくは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキレンオキシ基、オキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基であり、さらに好ましくは単結合、エチレン基である。
42で表される連結基としては、好ましくは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、イミノ基、アゾ基、アゾキシ基であり、より好ましくは単結合、オキシカルボニル基、アシルオキシ基、イミノ基、アゾ基、アゾキシ基であり、さらに好ましくは単結合、オキシカルボニル基、アシルオキシ基である。
【0148】
45、R46で表される連結基としては、好ましくは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキレンオキシ基、アシル基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基であり、さらに好ましくは単結合、メチレン基である。
一般式(IVa)中、窒素原子、メチレン基、R45、R46、A41で形成される環の構成原子数は、R45及びR46によって決定し、例えば、R45及びR46がいずれも単結合である場合は、4員環になり得;いずれか一方が単結合であり、他方がメチレン基である場合は、5員環になり得;さらに、R45及びR46いずれもメチレン基である場合は、6員環になり得る。
一般式(IVa)中、窒素原子、メチレン基、R45、R46、A41で形成される環は、好ましくは6員環又は5員環であり、より好ましくは6員環である。
【0149】
一般式(IVa)において、Q41で表される基は、好ましくは芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、芳香族複素環基、シクロヘキサン環基である。
41で表される芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノロン環、ナフタルイミド環、チエノチアゾール環などが挙げられる。
41で表される基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノリン環、チエノチアゾール環、シクロヘキサン環であり、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、シクロヘキサン環であり、もっとも好ましくはベンゼン環、ピリジン環、シクロヘキサン環である。
【0150】
41は置換基を有していてもよく、その範囲は前記R41、R42で表される基と同様である。
41が有していてもよい置換基は、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルホニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいスルホニル基、置換基を有していてもよいウレイド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イミノ基、アゾ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、ニトロ基、イミノ基、アゾ基である。これらの置換基のうち、炭素原子を有するものについては、炭素原子数の好ましい範囲は、前記R41、R42で表される基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0151】
41は置換基を一つ有し、Q41と該置換基の結合は、Q41とL41又はL42の結合と平行であることが、分子の直線性を高め、より大きな分子長及びアスペクト比を得られるため好ましい。特にn=0の場合は、Q41が前記位置に置換基を有するのが好ましい。
【0152】
一般式(IVa)において、Q42は、置換されていてもよい、2価の環状炭化水素基又は複素環基を表す。
42で表される2価の環状炭化水素基は、芳香族性であっても、非芳香族性であってもよい。2価の環状炭化水素基の好ましい例には、芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、及びシクロヘキサン環基が含まれる。
42で表される2価の環状複素環基も、芳香族性であっても非芳香族性であってもよい。複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。複素環基として具体的には、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノロン環、ナフタルイミド環、チエノチアゾール環、3−ピロリン環、ピロリジン環、3−イミダゾリン環、イミダゾリジン環、4−オキサゾリン環、オキサゾリジン環、4−チアゾリン環、チアゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、アゼパン環、アゾカン環などが挙げられる。
42で表される基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、キノリン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノロン環、ナフタルイミド環、チエノチアゾール環、シクロヘキサン環であり、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、チアゾール環、チアジアゾール環、シクロヘキサン環であり、よりさらに好ましくは、ベンゼン環、シクロヘキサン環、ピペラジン環である。
【0153】
42は置換基を有していてもよく、その範囲は前記R41、R42で表される基と同様である。
42が有していてもよい置換基の範囲は、前記Ar4が有していてもよい置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
42とL41及びL42、又は二つのL42との結合は、平行であることが、分子の直線性を高め、より大きな分子長及びアスペクト比を得られるため好ましい。
【0154】
一般式(IVa)中、nは0〜3の整数を表し、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1であり、最も好ましくは1である。
【0155】
一般式(IVa)で表される二色性色素のうち、特に好ましいものは、下記一般式(IVb)で表される二色性色素である。
【0156】
【化48】

【0157】
式中、R41及びR42はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し;A41は炭素原子又は窒素原子を表し;L41及びL42はそれぞれ、単結合又は2価の連結基を表し;Q41は、置換されていてもよい、環状炭化水素基又は複素環基を表し;Q42は、置換されていてもよい、2価の環状炭化水素基又は複素環基を表し;nは0〜3の整数を表し、nが2以上の時、複数あるL42及びQ42は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0158】
一般式(IVb)において、R41、R42、L41、L42、Q41、Q42で表される基の範囲は、一般式(IV)におけるR41、R42、L41、L42、Q41、Q42と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(IVb)において、A41は好ましくは窒素原子である。
【0159】
以下に、式(IV)で表される化合物の具体例を示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0160】
【化49】

【0161】
【化50】

【0162】
【化51】

【0163】
【化52】

【0164】
【化53】

【0165】
【化54】

【0166】
【化55】

【0167】
【化56】

【0168】
【化57】

【0169】
【化58】

【0170】
【化59】

【0171】
【化60】

【0172】
前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される化合物(アゾ色素)は、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Display」(A. V. Ivashchenko著、CRC社、1994年)、「総説合成染料」(堀口博著、三共出版、1968年)およびこれらに引用されている文献に記載の方法を参考にして合成することができる。
また、本発明における前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素は、Journal of Materials Chemistry (1999), 9(11), 2755-2763等に記載の方法に準じて容易に合成することができる。
【0173】
前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素は、その分子構造から明らかなように、分子形状が平板で直線性がよく、剛直なコア部分と柔軟な側鎖部分を有しており、且つアゾ色素の分子長軸末端に極性なアミノ基を有するため、それ自身液晶性、特にネマチック液晶性を発現しやすい性質を有しているという特徴を有する。
このようにして、本発明において、上記(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される二色性色素の少なくとも一種を含有する二色性色素組成物は、液晶性を有するものとなる。
さらに、前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素は、分子の平面性が高いため強い分子間相互作用が働き、分子同士が会合状態を形成しやすい性質も有している。
【0174】
本発明に係る前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素を含有する二色性色素組成物は、会合形成により可視の広い波長領域において高い吸光度を表すということだけでなく、この色素を含有した組成物が、具体的にはネマチック液晶性を有するため、例えば、ラビングしたポリビニルアルコール配向膜表面への塗布などの積層プロセスを経ることによって、高次の分子配向状態を実現できる。したがって、本発明に係る前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素を含有する二色性色素組成物を光吸収異方性膜として使用すれば、偏光特性の高い偏光素子を作製することができる。
本発明の二色性色素組成物は、後述する実施例に記載の方法で算出した二色比(D)を15以上に高めることができ、好ましい(D)は18以上である。
【0175】
前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素の液晶性については、好ましくは10〜300℃、より好ましくは100〜250℃でネマチック液晶相を示す。
【0176】
本発明における二色性色素組成物は一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素を1種以上含有することが好ましい。アゾ色素の組み合わせについては特に制限はないが、製造される偏光子が高い偏光度を達成するためには、黒色となる組み合わせで2種以上を混合するのが好ましい。
本発明の一般式(Ia)で表わされるアゾ色素は、マゼンタのアゾ色素であり、一般式(Ib)及び(II)で表わされるアゾ色素は、イエロー又はマゼンタのアゾ色素であり、一般式(III)及び(IV)で表わされるアゾ色素は、シアンのアゾ色素である。
前記二色性色素組成物が含有する2種以上の二色性色素のうち、少なくとも1種は、一般式(Ia)、(Ib)、又は(II)で表されるアゾ色素であることが好ましい。
また、前記二色性色素組成物は、一般式(III)又は(IV)で表されるアゾ色素を含有することが好ましい。
また、前記二色性色素組成物は、少なくとも1種の一般式(Ia)、(Ib)、又は(II)で表されるアゾ色素、及び少なくとも1種の一般式(III)又は(IV)で表されるアゾ色素を含有することが好ましい。
なお、前記二色性色素組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素以外の色素等である着色材料をさらに含有していてもよい。一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素以外の色素も、液晶性を示す化合物から選択されるのが好ましい。併用可能な色素としては、例えば、アゾ系色素、シアニン系色素、アゾ金属錯体、フタロシアニン系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、スクアリリウム系色素、キノン系色素、トリフェニルメタン系色素、及びトリアリルメタン系色素等を挙げることができる。好ましくは、アゾ系色素またはスクアリリウム系色素である。特に、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Display」(A. V. Ivashchenko著、CRC社、1994年)に記載のものも用いることができる。
【0177】
本発明に使用可能なスクアリリウム系色素は、下記一般式(VI)で表されることが特に好ましい。
【0178】
【化61】

【0179】
式中、A1及びA2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の、炭化水素環基又は複素環基を表わす。
【0180】
炭化水素環基は、5〜20員の単環又は縮合環の基であるのが好ましい。炭化水素環基は、芳香族環であっても、非芳香族環であってもよい。炭化水素環を構成している炭素原子は、水素原子以外の原子で置換されていてもよい。例えば、炭化水素環を構成している1以上の炭素原子は、C=O、C=S又はC=NR(Rは水素原子又はC1-10のアルキル基)であってもよい。また、炭化水素環を構成している1以上の炭素原子は、置換基を有していてもよく、置換基の具体例については、後述する置換基群Gから選択することができる。前記炭化水素環基の例には、以下の基が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0181】
【化62】

【0182】
上記式中、*は、スクアリリウム骨格に結合する部位を示し、Ra〜Rgはそれぞれ水素原子又は置換基を表し、可能であれば互いに結合して環構造を形成していてもよい。該置換基は、後述する置換基群Gから選択することができる。
特に、以下の例が好ましい。
式A−1中、Rcは−N(Rc1)(Rc2)であり、Rc1及びRc2はそれぞれ、水素原子、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、Rb及びRdが水素原子であり、即ち、下記式A−1aで表される基である。
式A−2中、Reがヒドロキシ基であり、即ち、下記式A−2aで表される基である。
式A−3中、Reがヒドロキシ基であり、Rc及びRdが水素原子であり、即ち、下記式A−3aで表される基である。
式A−4中、Rgがヒドロキシ基であり、Ra、Rb、Re及びRfが水素原子であり、即ち、下記式A−4aで表される基である。
式A−5中、Rgがヒドロキシ基であり、即ち、下記式A−5aで表される基である。
【0183】
【化63】

【0184】
上記式A−1a中、Rc1及びRc2は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基を表わし;上記式中のその他の記号は、上記式A−1〜A−5中のそれぞれと同義である。アルキル基の置換基の例としては、後述の置換基群Gが挙げられ、好ましい範囲も同様である。Rc1及びRc2が、置換もしくは無置換のアルキル基である場合、互いに連結して、含窒素複素環基を形成してもよい。また、Rc1及びRc2の少なくとも一方が、式A−1a中のベンゼン環の炭素原子と結合して、縮合環を形成していてもよい。例えば、以下の式A−1b及びA−1cであってもよい。
【0185】
【化64】

【0186】
式中、*は、スクアリリウム骨格に結合する部位を示し、Rhは、水素原子又は置換基を表す。該置換基の例には、後述の置換基群Gが含まれる。Rhは、ベンゼン環を1以上含む置換基であるのが好ましい。
【0187】
複素環基は、5〜20員の単環又は縮合環の基であるのが好ましい。複素環基は、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つを環構成原子として有する。また、環構成原子として1以上の炭素原子を含んでいてもよく、複素環を構成している、ヘテロ原子又は炭素原子は、水素原子以外の原子で置換されていてもよい。例えば、複素環を構成している1以上の硫黄原子は、例えば、S=O又はS(O)2であってもよく、また複素環を構成している1以上の炭素原子は、C=O、C=S又はC=NR(Rは水素原子又はC1-10のアルキル基)であってもよい。また、複素環基は、芳香族環であっても、非芳香族環であってもよい。複素環基を構成している1以上のヘテロ原子及び/又は炭素原子は、置換基を有していてもよく、置換基の具体例については、後述する置換基群Gから選択することができる。前記複素環基の例には、以下の基が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0188】
【化65】

【0189】
【化66】

【0190】
上記式中、*は、スクアリリウム骨格に結合する部位を示し、Ra〜Rfはそれぞれ水素原子又は置換基を表し、可能であれば互いに結合して環構造を形成していてもよい。該置換基は、後述する置換基群Gから選択することができる。
A−6〜A−43中、Rcはヒドロキシ基(OH)又はヒドロチオキシ基(SH)であるのが好ましい。
【0191】
好ましい炭化水素環基は、A−1、A−2、及びA−4で表される炭化水素環基である。より好ましくは、A−1a、A−2a及びA−4aである。特に好ましくは、A−1及びA−2で表される炭化水素環基であり、より好ましくはA−1a及びA−2aである。さらに好ましくは、A−1aであり、中でも、Ra及びReが水素原子又は水酸基を表わすA−1aで表される炭化水素環基である。
【0192】
好ましい複素環基は、A−6、A−7、A−8、A−9、A−10、A−11、A−14、A−24、A−34、A−37及びA−39で示される複素環である。特に好ましくは、A−6、A−7、A−8、A−9、A−11、A−14、A−34及びA−39で示される複素環である。これらの式中、Rcはヒドロキシ基(OH)又はヒドロチオキシ基(SH)であるのがより好ましい。
【0193】
前記式(VI)中、A1及びA2の少なくとも一方が、A−1(より好ましくはA−1a)であることが特に好ましい。
【0194】
前記炭化水素環基及び複素環基は1以上の置換基を有していてもよく、該置換基の例としては、下記の置換基群Gが含まれる。
置換基群G:
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、メトキシエチル、エトキシカルボニルエチル、シアノエチル、ジエチルアミノエチル、ヒドロキシエチル、クロロエチル、アセトキシエチル、トリフルオロメチル等);炭素数7〜18(好ましくは炭素数7〜12)の置換もしくは無置換のアラルキル基(例、ベンジル、カルボキシベンジル等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルケニル基(例、ビニル等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルキニル基(例、エチニル等);炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜10)の置換もしくは無置換のアリール基(例、フェニル、4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−カルボキシフェニル、3、5−ジカルボキシフェニル等);
【0195】
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシル基(例、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、クロロアセチル等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルまたはアリールスルホニル基(例、メタンスルホニル、p−トルエンスルホニル等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルスルフィニル基(例、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル、オクタンスルフィニル等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)のアルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等);炭素数7〜18(好ましくは炭素数7〜12)のアリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル、4−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェニルカルボニル等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、n−ブトキシ、メトキシエトキシ等);炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜10)の置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例、フェノキシ、4−メトキシフェノキシ等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ等);炭素数6〜10のアリールチオ基(例、フェニルチオ等);
【0196】
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシルオキシ基(例、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルキシ、ベンゾイルオキシ、クロロアセチルオキシ等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ等);無置換のアミノ基又は炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換アミノ基(例、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、アニリノ、メトキシフェニルアミノ、クロロフェニルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、n−ブトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、メチルカルバモイルアミノ、フェニルカルバモイルアミノ、エチルチオカルバモイルアミノ、メチルスルファモイルアミノ、フェニルスルファモイルアミノ、アセチルアミノ、エチルカルボニルアミノ、エチルチオカルボニルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、クロロアセチルアミノ、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等);
【0197】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイル基(例、無置換のカルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、モルホリノカルバモイル、ピロリジノカルバモイル等);無置換のスルファモイル基、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換スルファモイル基(例、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等);ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素等);水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基;ヘテロ環基(例、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、インドレニン、ピリジン、スルホラン、フラン、チオフェン、ピラゾール、ピロール、クロマン、クマリンなど)。
【0198】
式(VI)で表される二色性スクアリリウム色素の例には、以下の例示化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0199】
【化67】

【0200】
【化68】

【0201】
【化69】

【0202】
【化70】

【0203】
本発明における前記一般式(VI)で表され二色性スクアリリウム色素は、Journal of Chemical Society, Perkin Trans. 1 (2000), 599-603、 Synthesis (2002), No.3, 413-417等に記載の方法に準じて容易に合成することができる。
【0204】
本発明に使用する二色性色素は、遷移モーメントと分子長軸のなす角度が0度以上20度以下であることが好ましく、より好ましくは0度以上15度以下であり、さらに好ましくは0度以上10度以下であり、特に好ましくは0度以上5度以下である。ここで分子長軸とは、化合物中で原子間距離が最大となる2つの原子を結ぶ軸を言う。遷移モーメントの方向は分子軌道計算により求めることができ、そこから分子長軸となす角度も計算することができる。
【0205】
本発明に使用する二色性色素は、剛直な直線状の構造であることが好ましい。具体的には、分子長は好ましくは17Å以上であり、より好ましくは20Å以上であり、さらに好ましくは25Å以上である。また、アスペクト比は好ましくは1.7以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは2.5以上である。これによって良好な一軸配向が達成され、偏光性能の高い光吸収異方性膜及び偏光子を得ることができる。
ここで分子長とは、化合物中で最大の原子間距離に両端の2原子のファンデルワールス半径を加えた値である。アスペクト比とは分子長/分子幅であり、分子幅とは、分子長軸に垂直な面に各原子を投影したときの最大の原子間距離に両端の2原子のファンデルワールス半径を加えた値である。
【0206】
前記二色性色素組成物は、1種以上の前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素を主成分として含有する。具体的には、前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素の含有量は、含有される全色素の合計の含有量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。上限値は100質量%であり、即ち、含有される色素が全て、一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素であっても勿論よい。
【0207】
前記二色性色素組成物は、前記一般式(VI)で表されるスクアリリウム系色素を含有することも好ましい。具体的には、前記一般式(VI)で表されるスクアリリウム系色素の含有量は、含有される全色素の合計の含有量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。
【0208】
また、前記二色性色素組成物に含まれる、溶剤を除く全固形分において、1種以上の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、又は(VI)で表される二色性色素の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。上限値は特に制限されないが、下記の界面活性剤等、他の添加剤を含有する態様では、それらの効果を得るためには、前記二色性色素組成物に含まれる、溶剤を除く全固形分における、1種以上の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、又は(VI)で表される二色性色素の含有量は、95質量%以下であるのが好ましく、90質量%以下であるのがより好ましい。
【0209】
本発明における二色性色素組成物は、サーモトロピック液晶性、即ち、熱によって液晶相に転移して、液晶性を示すのが好ましい。好ましくは10〜300℃、より好ましくは100〜250℃でネマチック液晶相を示す。特に、ネマチック液晶相より低温領域にスメクチックA液晶相を示すことが好ましく、その好ましい温度範囲は、10〜200℃、より好ましくは50〜200℃である。
【0210】
前記二色性色素組成物は、上記二色性色素以外に、1種以上の添加剤を含有していてもよい。前記二色性色素組成物は、ラジカル重合性基を有する非液晶性の多官能モノマー、重合開始剤、風ムラ防止剤、ハジキ防止剤、配向膜のチルト角(光吸収異方性膜/配向膜界面での液晶性色素のチルト角)を制御するための添加剤、空気界面のチルト角(光吸収異方性膜/空気界面での色素のチルト角)を制御するための添加剤、糖類、防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤等を含有していてもよい。
【0211】
1−(2) 光配向膜
本発明の偏光フィルムは、光配向膜を有する。光配向膜は、前記二色性色素組成物の配向を規制するため用いられる。本発明では、光配向膜を用いることにより、ラビング膜を配向膜として利用するのと比較して、粉塵等を除去する工程が不要になる点で、及びより均一な配向制御が可能になる点で、好ましい。
光配向膜とは、光照射により配向規制力が発現される配向膜をいう。光照射により形成される配向層に用いられる光配向材料としては、光反応性基を有する光配向性ポリマーであるのが好ましい。ここで、「光反応性基」とは、例えば、単一方向からの光の照射によって官能基の化学構造または該官能基を有する分子の配向状態に変化が起こり、これにより配向膜表面に配置された液晶性化合物の分子を所定の方向に配向させることができる官能基を意味する。具体的には、アゾベンゼン誘導体、桂皮酸誘導体、カルコン誘導体、スチルベン類、スチリルピリジン誘導体、α-ヒドラゾノ-β-ケトエステル類、クマリン誘導体、ベンジリデンフタルイミジン類、レチノイン酸誘導体、スピロピラン類、スピロオキサジン類、アントラセン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ポリイミドなどが挙げられる。このうち、好ましいのはクマリン誘導体、スチリルピリジン誘導体、アゾベンゼン誘導体、桂皮酸誘導体、カルコン誘導体であり、さらに好ましくはアゾベンゼン誘導体、桂皮酸誘導体、カルコン誘導体である。
【0212】
光配向材料は低分子化合物であっても高分子であっても良い。前記の高分子の種類としては、「改訂 高分子合成の化学」(大津隆行著、発行:株式会社化学同人、1968)1〜4ページに記載があるポリマー種のいずれであってもよく、例えば、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスルホン類、ポリカーボナート類、ポリエーテル類、ポリアセタール類、ポリケトン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリアリレート類、四フッ化エチレン(PTFE)類、ポリビニリデンフロライド類、セルロース誘導体などが挙げられる。ポリオレフィン類であることが好ましい
【0213】
前記光配向材料としては、多数の文献等に記載がある。本発明の配向層では、例えば、特開2006−285197号公報、特開2007−76839号公報、特開2007−138138号公報、特開2007−94071号公報、特開2007−121721号公報、特開2007−140465号公報、特開2007−156439号公報、特開2007−133184号公報、特開2009−109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002−229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002−265541号公報、特開2002−317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003−520878号公報、特表2004−529220号公報、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステルが好ましい例として挙げられる。より好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステルである。
【0214】
前記光配向材料として、特に好ましいのは下記一般式(1)で表されることを特徴とする低分子アゾ化合物、又は下記一般式(2)で表されるモノマーの少なくとも一種から導かれる繰り返し単位を含む重合体である。
【0215】
【化71】

【0216】
式中、R51〜R54はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表すが、但し、R51〜R54で表される基の少なくとも一つは、カルボキシル基又はスルホ基を表し;mは1〜4の整数を表し、nは1〜4の整数を表し、oは1〜5の整数を表し、pは1〜5の整数を表すが、m、n、o、及びpが2以上の整数を表すとき、複数個ある、R51〜R54は、同一でも異なっていてもよい。
【0217】
前記式(1)中、R51〜R54でそれぞれ表される置換基としては以下の基を挙げることができる。
カルボキシル基(アルカリ金属と塩を形成していてもよく、好ましくは塩を形成していないか、ナトリウム塩を形成しているカルボキシル基であり、より好ましくはナトリウム塩を形成しているカルボキシル基である)、スルホ基(アルカリ金属と塩を形成していてもよく、好ましくは塩を形成していないか、ナトリウム塩を形成しているスルホ基であり、より好ましくはナトリウム塩を形成しているスルホ基である)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリール基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,5−ジトリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
【0218】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは2〜6であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは2〜6であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0219】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。
これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0220】
51〜R54で表される基は、重合性基又は重合性基を含む置換基であってもよい。重合性基又は重合性基を含む置換基は、分子末端に存在するのが好ましく、即ちR53及び/又はR54が重合性基又は重合性基を含む置換基であるのが好ましく、特に、重合性基又は重合性基を含む置換基は、アゾ基に対してパラ位に置換しているR53及び/又はR54であるのが好ましい。重合性基としては特に限定されないが、重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。換言すれば、重合性基は付加重合反応又は縮合重合反応が可能な重合性基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【化72】

【0221】
重合性基としては、ラジカル重合又はカチオン重合する重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、(メタ)アクリレート基を挙げることができる。カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。なかでも脂環式エーテル基、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が特に好ましい。
【0222】
前記式(1)中、R51〜R54で表される基としては、好ましくは水素原子、カルボキシル基、スルホ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、より好ましくは水素原子、カルボキシル基、スルホ基、ハロゲン原子、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシカルボニル基であり、特に好ましくは水素原子、カルボキシル基、スルホ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基である。
【0223】
51〜R54で表される基の少なくとも一つは、カルボキシル基又はスルホ基である。カルボキシル基又はスルホ基の置換位置については特に制限はないが、光活性作用の観点では、少なくとも1つのR51及び/又は少なくとも1つのR52がスルホ基であるのが好ましく、少なくとも1つのR51及び少なくとも1つのR52がスルホ基であるのがより好ましい。
また、同観点から、少なくとも1つのR53及び/又は少なくとも1つのR54がカルボキシル基であるのが好ましく、少なくとも1つのR53及び少なくとも1つのR54がカルボキシル基であるのがより好ましい。カルボキシル基は、アゾ基に対してメタ位に置換したR53及びR54であるのがさらに好ましい。
【0224】
前記一般式(1)において、mは1〜4の整数を表し、nは1〜4の整数を表し、oは1〜5の整数を表し、pは1〜5の整数を表す。好ましくは、mは1〜2の整数、nは1〜2の整数、oは1〜2の整数、pは1〜2の整数である。
【0225】
上記一般式(1)で表される化合物の例には、以下の化合物が含まれるが、以下の例に限定されるものではない。
【0226】
以下に、前記式(II)で表される化合物の具体例を挙げるが、以下の具体例に制限されるものではない。
【0227】
【化73】

【化74】

【0228】
上記した通り、前記光配向材料の他の例として、下記一般式(2)で表されるモノマーの少なくとも一種から導かれる繰り返し単位を含む重合体が挙げられる。
【0229】
【化75】

【0230】
式中、R61は水素原子またはメチル基を表し、L61は単結合または2価の連結基を表し、A6は光反応性基を表す。また、Y61は−NRa−(Raは炭素原子数1〜5のアルキル基または水素原子を表す。)または−O−を表す。
【0231】
上記一般式(2)においてL61は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基である場合には、アルキレン基、アルケニレン基、2価の芳香族基、2価のヘテロ環残基、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基または水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基であることが好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、可能であれば、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アシルオキシ基などによって置換されていてもよい。一般式(2)におけるL61としては単結合、−O−、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基または水素原子)またはアルキレン基を含んでいることが好ましく、単結合、−O−、またはアルキレン基を含んでいることが特に好ましい。
【0232】
以下にL61の具体的な構造を例示するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。また、下記具体例の組み合わせも好ましい。具体例中、L61は、好ましくは、L−1〜L−12であり、より好ましくはL−1、L−2、L−4、L−7〜L−12である。
【0233】
【化76】

【0234】
一般式(2)中のA6は、光反応性基であり、好ましくは、クマリン誘導体、スチリルピリジン誘導体、アゾベンゼン誘導体、桂皮酸誘導体又はカルコン誘導体の残基であり、さらに好ましくはアゾベンゼン誘導体、桂皮酸誘導体又はカルコン誘導体の残基である。特に好ましいのはアゾベンゼン誘導体又は桂皮酸誘導体の残基である。
【0235】
前記光反応性基は、としては、下記一般式C−1で表される桂皮酸誘導体の残基であるのが好ましい。
【0236】
【化77】

【0237】
上記一般式(C−1)において、Ar61及びAr62はそれぞれ、置換基を有していてもよい、炭素数6〜10の芳香環又は炭素数5〜10の複素環を表す。Ar61及びAr62はそれぞれ、置換もしくは無置換の、ベンゼン環、ナフタレン環、フラン環またはチオフェン環であるのが好ましく、置換もしくは無置換のベンゼン環であるのが特に好ましい。X6及びY6はそれぞれ、単結合又は二価の連結基を表す。X6及びY6はそれぞれ、単結合、又はC=C、C≡C、COO、OCO、CONH、NHCO、OCOO、OCONH及びNHCOOからなる群より選ばれる二価の連結基であるのが好ましく、単結合であるのがより好ましい。R61及びR62はそれぞれ、Ar61およびAr62の置換基である。R61及びR62はそれぞれ、アルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン基等であるのが好ましく、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルカノイルオキシ基又はシアノ基等であるのが特に好ましい。また、R61又はR62が重合性基を有していることも好ましい。好ましい重合性基の例としては、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、グリシジル基及びオキセタン基等を挙げることができる。R61又はR62の一方が、L61に連結し、側鎖型高分子を形成する。R63及びR64はそれぞれ、ベンゼン環の置換基を示し、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基又はハロゲン基等を挙げることができる。n及びmは独立して0〜3の整数を示す。好ましくは、0又は1であり、少なくともn及びmのいずれかが1であることが特に好ましい。o及びpは独立して0〜4の整数を示す。o及びpはそれぞれ、0〜2であることが好ましく、o及びpがそれぞれ0〜2であり、かつo+pが1〜3であることが特に好ましい。また、q及びrは、それぞれ0〜4の整数を示し、0又は1であるのが好ましい。
【0238】
前記光反応性基としては、下記一般式C−2で表されるアゾベンゼン誘導体の残基が好ましい。
【0239】
【化78】

【0240】
上記一般式(C−2)において、R71及びR72は、前記一般式(C−1)におけるR61及びR62で表わされる置換基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0241】
以下に、前記一般式(2)で表される化合物の具体例を挙げるが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0242】
【化79】

【0243】
【化80】

【0244】
前記光配向材料は、前記一般式(2)で表される繰り返し単位を1種のみ含むポリマーであってもよいし、2種以上含むポリマーであってもよい。また、上記各繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を1種または2種以上有していてもよい。上記以外の繰り返し単位については特に制限されず、通常のラジカル重合反応可能なモノマーから誘導される繰り返し単位が好ましい例として挙げられる。
以下、他の繰り返し単位を誘導するモノマーの具体例を挙げる。本発明において、光配向素材として用いられるポリマーは、下記モノマー群から選ばれる1種または2種以上のモノマーから誘導される繰り返し単位を含有していてもよい。
【0245】
(モノマー群)
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど;
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、1−クロロブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ−1,3−ブタジエンおよび2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサンなど;
【0246】
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど);
【0247】
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2〜100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど;
【0248】
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、タコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど;
【0249】
(3d)α、β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミドなど;
【0250】
(4)不飽和ニトリル類
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;
(5)スチレンおよびその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど;
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど;
【0251】
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテル、フルオロブトキシエチルビニルエーテルなど;
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリンなどが挙げられる。
【0252】
本発明における光配向素材中、上記一般式(2)で表されるモノマーは、該光配向素材の構成モノマー総量の50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、80質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0253】
本発明における光反応性基を有する光配向素材の質量平均分子量は1,000〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜500,000であることがより好ましく、5,000〜100,000であることがさらに好ましい。上記質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定できる。
【0254】
光反応性基を有する光配向素材が前記一般式(2)で表されるモノマー由来の繰り返し単位を有するポリマーである場合、該ポリマーの製造方法については特に限定されるものではない。例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、または、アニオン重合などの重合方法を用いることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用でき、特に好ましい。ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤やラジカル光重合開始剤などの公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。ここで、ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなど)ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなど)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなど)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイドなど)パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレートなど)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリルなど)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなど)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、一種を単独で使用することもできるし、或いは二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0255】
上記ラジカル重合方法は、特に制限されるものではなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などを取ることができる。典型的なラジカル重合方法である溶液重合については、さらに具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子化学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)などに記載されている。
【0256】
上記溶液重合を行うためには有機溶媒を使用する。これらの有機溶媒は本発明の目的、効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機溶媒が望ましい。好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、一種単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
【0257】
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で10分〜30時間加熱することが望ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも不活性ガスパージを行うことが望ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
【0258】
本発明における光反応性基を有する光配向素材を好ましい分子量範囲で得るためには、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法が特に有効である。上記連鎖移動剤としては、メルカプタン類(例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノールなど)、ポリハロゲン化アルキル(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタンなど)、低活性モノマー類(α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマーなど)のいずれも用いることができるが、好ましくは炭素数4〜16のメルカプタン類である。これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、重合条件などにより著しく影響され、精密な制御が必要であるが、通常は使用するモノマーの全モル数に対して0.01mol%〜50mol%程度であり、好ましくは0.05mol%〜30mol%、特に好ましくは0.08mol%〜25mol%である。これらの連鎖移動剤は、重合過程において重合度を制御するべき対象のモノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーと別途に添加することも可能である。
【0259】
以下に、前記光配向材料の他の例として、上記一般式(2)で表されるモノマーの少なくとも一種から導かれる繰り返し単位を含む重合体の例をあげるが、以下の例に限定されるものではない。
【0260】
【化81】

【0261】
【化82】

【0262】
【化83】

【0263】
【化84】

【0264】
1−(3) 基板
本発明の偏光フィルムが有する基板は、偏光フィルムの用途に応じて種々のものから選択することができる。例えば、液晶表示素子、OLED素子等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス;固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板;シリコン基板;プラスチック基板;並びに、これらに透明導電膜、カラーフィルタ膜、電極、TFT等の機能層を形成した基板が挙げられる。これらの基板上には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されていたり、密着促進等のために透明樹脂層を設けたりしていてもよい。プラスチック基板には、その表面にガスバリヤー層及び/又は耐溶剤性層を有していることも好ましい。
【0265】
本発明に使用する基板の光透過率は、80%以上であるのが好ましく、即ち透明であるのが好ましい。また、プラスチック基板は光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。ポリマーの具体例及び好ましい態様は、特開2002−22942号公報の段落番号[0013]の記載を適用できる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開WO00/26705号公報に記載の分子を修飾することで該発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0266】
1−(4) 偏光フィルムの製造方法
本発明の偏光フィルムは、例えば、以下の工程[1])〜[3]を少なくとも含む方法で製造することができる。
[1]基板上に形成された光配向膜を光照射処理する工程と、
[2]光配向膜上に、有機溶媒に溶解した、二色性色素組成物を塗布する工程と、
[3]該二色性色素組成物の塗布膜を50℃以上250℃以下で加熱し、配向させ光吸収異方性層とする工程を含む偏光フィルムの製造方法により製造することができる。
【0267】
光配向膜の製造工程[1]:
前記光配向膜は、上述の式(1)または(2)の光配向性材料を含む光配向膜形成用組成物を塗布液として調製し、該塗布液を、基板表面に塗布し、該塗布膜に光を照射して、前記光反応性基を有する化合物を光配向させることで製造できる。
前記光配向膜形成用組成物は、前記光配向性材料を主成分として含有するのが好ましく、より具体的には、光配向膜形成用組成物の溶剤を除く全固形分において占める割合は、二色性色素への配向性を保持する観点から50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。上限値は100質量%であり、即ち、光配向膜形成用組成物の溶剤を除く全固形分が全て、前記光配向性材料であっても勿論よい。
【0268】
前記光配向膜形成用組成物は、前記光配向性材料以外の他の添加剤の1種以上を含んでいてもよい。例えば、添加剤は、前記組成物を均一に塗布し、膜厚の均一な光配向膜を得ることを目的として添加される。添加剤としては、例えば、レベリング剤、チキソ剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、表面処理剤、等が挙げられ、併用されるネマチック液晶性アゾ色素の配向能を著しく低下させない程度添加することができる。
【0269】
前記光配向膜形成用組成物は、塗布液として調製されるのが好ましい。該塗布液の調製に使用する溶剤としては特に限定はないが、通常は前記光活性化合物が溶解するような溶媒を使用する。例えば、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール等のジオール系溶剤、テトラヒドロフラン、2−メトキシエターノール、2−ブトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のエーテル系溶剤、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
前記組成物は、全固形分の濃度が、0.2質量%以上の塗布液として調製されるのが好ましく、0.5〜10質量%程度とするのがより好ましい。
【0270】
塗布液として調製した前記光配向膜形成用組成物を、表面に塗布して塗膜を形成する。塗布法としては、スピンコーティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、ディッピング等、公知慣用の方法を行うことができる。通常は、有機溶剤で希釈した溶液を塗布するので、塗布後は乾燥させ、光配向膜用塗膜を得る。
【0271】
次に、光配向膜用塗膜に、異方性を有する光を照射(以下、光異性化工程と略す)して、液晶配向能を生じさせ、光配向層とする。光異性化工程で使用する、異方性を有する光としては、直線偏光及び楕円偏光等の偏光が挙げられる。また非偏光であっても、塗膜面に対して斜めの方向から照射してもよい。
【0272】
光異性化工程に利用する偏光は、直線偏光、及び楕円偏光のいずれでもよいが、効率よく光配向を行うためには、偏光度の高い直線偏光を使用することが好ましい。また、光源からの光を偏光フィルタやグラントムソン、グランテーラー等の偏光プリズムを通すことで、直線偏光を得ることができる。
一方、光異性化工程において、膜面に対して斜め方向から非偏光を照射する態様では、非偏光の入射角は基板法線に対して10°〜80°の範囲が好ましく、照射面における照射エネルギー−の均一性、得られるプレチルト角、配向効率等を考慮すると、20°〜60°の範囲が更に好ましく、45°が最も好ましい。
なお、非偏光を斜め方向から照射する態様では、光照射装置に偏光フィルタ等を必要とせず、大きな照射強度が得られ、光配向のための照射時間を短縮することができるという利点がある。
【0273】
照射する光の波長は、使用する光活性化合物の光活性基が吸収を有する波長領域とするのが好ましい。例えば、光活性基がアゾベンゼン構造を有する場合は、アゾベンゼンのπ→π*遷移による強い吸収がある、波長330〜500nmの範囲の紫外線が特に好ましい。
照射光の光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArF等の紫外光レ−ザ−等が挙げられる。光活性基がアゾベンゼン構造である場合は、365nmの紫外線の発光強度が特に大きい超高圧水銀ランプを有効に使用することができる。
【0274】
また、前記光異性化工程において、偏光及び非偏光のいずれを使用する態様でも、照射する光は、ほぼ平行光であることが特に好ましい。また、偏光を照射する際に、フォトマスクを使用すれば、光配向膜にパターン状に2以上の異なった方向に液晶配向能を生じさせることができる。具体的には、前記光配向膜用組成物を塗布乾燥した後に、基板にフォトマスクを被せて全面に偏光もしくは非偏光を照射し、パターン状に露光部分に液晶配向能を与える。必要に応じてこれを複数回繰り返すことで、複数方向に液晶配向能を生じさせることができる。
【0275】
また、前記光異性化工程の後に光配向膜を冷却することもできる。冷却方法としては、光異性化した光配向膜用塗膜が冷却されればよく、例えば、コールドプレート、チャンバー、低温恒温器等、公知慣用の冷却装置で基板ごと冷却を行う。
冷却条件としては、冷却温度が20℃で1分以上であるが、冷却温度が20℃よりも低い場合は、その限りではない。冷却温度としては、使用する溶剤の融点以上であればよいが、通常−40℃〜20℃の範囲が好ましい。液晶配向機能が向上した、より安定な光配向膜を得るには10℃以下が好ましく、冷却時間としては5分以上が好ましい。さらに冷却時間を短縮させるには冷却温度は5℃以下が好ましい。
また、結露防止のため、冷却をする際に乾燥空気や窒素、アルゴン雰囲気下で行ってもよいし、乾燥空気や窒素等を基板に吹きかけながら冷却してもよい。
【0276】
この様にして、光配向膜を形成することができる。形成される光配向膜の厚みは、一般的には、0.01〜10μm程度であることが好ましく、0.01〜1μm程度であることがさらに好ましい。
【0277】
塗布工程[2]:
形成した光配向膜上に、有機溶媒に溶解した、二色性色素組成物を塗布する。二色性色素組成物は塗布液として調製するのが好ましい。該塗布液の調製に用いる溶剤は、有機溶媒が好ましい。使用可能な有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。炭化水素、アルキルハライド及びケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0278】
上記二色性色素組成物の塗布液の調製方法については特に制限はない。前記1種以上の二色性色素、及び所望により添加される1種以上の上記添加剤(例えば、界面活性剤、水平配向剤等)を、溶剤で溶解することによって調製される。なお、塗布液は各成分が完全に溶解していなくても、分散等した状態であってもよい。
【0279】
前記二色性色素組成物は、全固形分の濃度が、0.1〜10質量%程度の塗布液として調製されるのが好ましく、0.5〜5質量%程度とするのがより好ましい。この濃度範囲の塗布液として調製すると、安定的に湿式製膜法により、偏光層を形成することができる。
【0280】
塗布液として調製した前記二色性色素組成物を、光配向膜表面に塗布して塗膜を形成する。塗布法としては、スピンコーティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ダイコーティング法、スリットダイコーティング法、キャップコーティング法、ディッピング等、公知慣用の方法を行うことができる。通常は、有機溶剤で希釈した溶液を塗布するので、塗布後は乾燥させ、塗膜を得る。
【0281】
光吸収異方性膜の形成工程[3]:
次に、前記二色性色素組成物の塗布膜を50℃以上250℃以下で加熱し、配向させ光吸収異方性層を形成する。前記二色性色素組成物の塗膜から有機溶媒等の溶質を蒸発させて、前記二色性色素組成物を配向させる。好ましくは室温において自然乾燥することが好ましい。塗布により形成された当該アゾ色素分子の配向状態を乱さない(熱緩和等を避ける)ようにするのが好ましい。なお、減圧処理において、溶媒を蒸発させ、より低温で乾燥することも好ましい。
【0282】
ここでいう減圧処理とは、塗膜を有する基板を減圧条件下におき、溶媒を蒸発除去することを言う。このとき、膜を有する基板は高部から底部に流れないよう、水平にしておくことが好ましい。
塗布後、塗膜の減圧処理を始めるまでの時間は、短ければ短いほどよく、好ましくは1秒以上30秒以内である。
減圧処理の方法としては、例えば以下の様な方法が挙げられる。塗布液を塗布して得られた塗膜を、その基板とともに減圧処理装置に入れて減圧処理する。例えば特開2006−201759の図9や図10のような減圧処理装置を使用することができる。減圧処理装置の詳細については、特開2004−169975号公報に記載されている。
【0283】
減圧処理の条件としては、塗膜の存在する系内の圧力が、好ましくは2×104Pa以下、さらに好ましくは1×104Pa以下、特に好ましくは1×103Pa以下である。また、好ましくは1Pa以上、更に好ましくは1×101Pa以上である。通常、系内が最終的に到達する圧力が前記の通りであることが好ましい。上限を上回ると乾燥できず配向が乱れる恐れがあり、下限を下回ると乾燥が急速過ぎて欠陥が発生する恐れがある。
また、減圧処理時間は、好ましくは5秒以上180秒以内である。上限を上回ると配向緩和前に急速に塗膜を乾燥できず配向が乱れる恐れがあり、下限を下回ると乾燥できず配向が乱れる恐れがある。
【0284】
また、減圧処理する際の系内の温度は、好ましくは10℃以上60℃以下である。上限を上回ると乾燥時に対流が起こり塗膜に不均一性の発生の恐れがあり、下限を下回ると乾燥できず配向が乱れる恐れがある。
【0285】
前記塗膜を乾燥させて、二色性色素組成物を配向させるとき、配向を促進させるために加温してもよい。温度は好ましくは50℃以上250℃以下、さらに好ましくは100℃以上250℃以下である。なお、特に好ましくはネマチック液晶相温度に加熱して配向させたのち、室温まで降温しガラス化することである。この配向温度を低下させるために、二色性色素組成物に可塑剤等の添加剤を併用してもよい。
【0286】
例えば、前記二色性色素組成物を、前記光配向膜表面に塗布すると、1種以上の二色性色素の分子は、配向膜との界面では配向膜のチルト角で配向し、空気との界面では空気界面のチルト角で配向する。高い偏光度の偏光層を製造するためには、いずれの界面においてもアゾ色素を水平配向させ、その配向状態に固定するのが好ましい。
なお、本明細書では、「チルト角」とは、アゾ色素の分子の長軸方向と界面(配向膜界面あるいは空気界面)のなす角度を意味する。偏光性能の観点から、好ましい配向膜側のチルト角は0°〜10°、さらに好ましくは0°〜5°、特に好ましいのは0°〜2°、よりさらに好ましくは0°〜1°である。また、好ましい空気界面側のチルト角は0°〜10°、さらに好ましくは0〜5°、特に好ましいのは0〜2°である。
【0287】
前記二色性色素の分子の空気界面側のチルト角を上記範囲まで減少させるために、前記組成物は、フルオロ脂肪族基含有化合物;又はフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位、及びアミド基含有モノマーの重合単位からなる群から選択される少なくとも一種の重合単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体;を含有しているのが好ましい。これらの少なくとも1種の存在下で、二色性色素分子を配向させることにより、空気界面側のチルト角を、上記範囲まで軽減することができる。
なお、配向膜側チルト角は、空気界面側チルト角と比較して、配向膜の作用により低減される傾向があるが、前記組成物中に上記した配向膜チルト制御剤を添加することで、配向膜側チルト角をより軽減して、アゾ色素分子を安定的に水平配向状態にすることができる。
【0288】
前記二色性色素組成物が、前記非液晶性のラジカル重合性多官能モノマー、及び前記重合開始剤、等の硬化性成分を含有する態様では、アゾ色素分子を所望の配向状態とした後、光照射(好ましくは紫外線照射)又は加熱、或いはこれらの組合せにより重合硬化を進行させるのが好ましい。
なお、重合のための光照射エネルギーの値等については、特開2001−91741号公報の段落[0050]〜[0051]の記載を参照することができる。
【0289】
以上のようにして光吸収異方性膜を形成することができる。該膜の厚さは、0.01〜2μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。
【0290】
前記二色性色素組成物の配向を固定することにより、光吸収の異方性を有し、かつ、回折ピークの周期や半値幅により特徴付けられる特性の高い偏光膜としての機能を有する素子(偏光素子)を形成することができる。
形成された吸収異方性膜には、さらに保護層、粘着層、反射防止層を形成してもよい。
また、上記異方性膜を使用して液晶素子を形成するには、上記した(1)〜(3)の工程において、支持体(基板)にITO等の透明電極を形成しておき、当該電極上に異方性色素膜(偏光膜)を形成すればよい。
【0291】
1−(5) その他の機能層
本発明の偏光フィルムは、基板と前記光吸収異方性膜との間に、カラーフィルタ層を有しているのが好ましい。カラーフィルタ層の他、透明導電膜、カラーフィルタ膜、電極、TFT等の他の機能層を有していてもよい。また、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されていてもよい。
また、本発明の偏光フィルムは、光吸収異方性膜の上に、透明樹脂硬化層を有していてもよい。
【0292】
2. 表示装置
本発明の表示装置は、本発明の偏光フィルムを少なくとも一つ具備する。その構成等については特に制限はない。具体的には、TN、STN、VA、ECB、IPS、OCB、ブルーフェイズ等の種々のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置、OLEDなどが挙げられる。特に好ましくは、本発明の偏光フィルムを、基板の内面側に設置してなる(いわゆる、インセル偏光子)表示装置であり、さらに好ましくは、カラーフィルタ基板に積層してなる表示装置である。かかる構成にすることにより、カラーフィルタ層による偏光解消に起因して生じる散乱光によるコントラストの低下を軽減することができる。
【実施例】
【0293】
以下に実施例に基づき、さらに比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、以下の実施例中、光吸収異方性膜の光学特性に関する測定は下記の通り実施した。
【0294】
<光吸収異方性膜の二色比>
二色比は、ヨウ素系偏光素子を入射光学系に配した分光光度計で光吸収異方性膜の吸光度を測定した後、次式により計算した。
二色比(D)=Az/Ay
Az:光吸収異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay:光吸収異方性膜の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
【0295】
<偏光フィルムの消偏度>
液晶テレビを分解し、バックライトモジュールを用意し、光源とした。光源から鉛直方向に70cm離れたところに、(株)トプコン社製輝度計BM−5を設置し、1°視野で輝度を測定できるようにした。
測定用ヨウ素系偏光素子の偏光度の測定は、次の通り行った。光源に密着させて、測定用偏光素子1と測定用偏光素子2の順番に密着させて積層した。測定用偏光素子1と測定用偏光素子2の透過軸の相対方位を、0度、すなわちパラ配置の場合と90度、すなわちクロス配置の場合について輝度を測定し、以下の式により、偏光度Pを計算した。
【0296】
【数1】

【0297】
本発明の偏光フィルムの偏光度P’の測定については、測定用偏光素子の偏光度の測定と同様に行った。
本発明の偏光フィルムの消偏度DI’の測定については、次の通り行った。光源に密着させて、測定用偏光素子1と偏光フィルムと測定用偏光素子2の順番に密着させて積層した。測定用偏光素子1に対して、偏光フィルムと測定用偏光素子2の透過軸の相対方位を、0度、即ちパラ配置の場合と、90度、即ちクロス配置の場合について輝度を測定し、以下の式により、消偏度DI’を計算した。ここで、Pは測定用偏光素子の偏光度、P’は偏光フィルムの偏光度である。
【0298】
【数2】

【0299】
<光吸収異方性膜の周期構造>
光吸収異方性膜の周期及び半値幅は、薄膜評価用X線回折装置(リガク社製、商品名:「ATX−G」インプレーン光学系)を用いたインプレーン測定プロファイルとφスキャンプロファイルにより求めた。両測定ともに、CuKαを用いて、入射角0.18°で実施した。
回折角と距離との関係は、
d=λ/(2*sinθ)
(d;距離、λ;入射X線波長(CuKα;1.54Å)
により換算した。
【0300】
(実施例1)
下記構造の光配向材料E−1 1質量部に、N−メチルピロリドン49.5質量部、及び2−ブトキシエタノール49.5質量部を加え、得られた溶液を0.45μmメンブレンフィルターで加圧ろ過した。得られた光配向膜用塗布液をガラス基板上にスピンコート塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度140mW、照射時間35秒、照射量5J/cm2)を照射した。
【0301】
【化85】

【0302】
得られた光配向膜付きガラス基板上に、下記構造のマゼンタアゾ色素A−16(一般式(I)の化合物) 1質量部をクロロホルム99質量部に溶解した二色性色素溶液をスピンコート塗布し、光吸収異方性膜を形成した。この様にして、偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの二色比、偏光度、消偏度、並びに光吸収異方性膜の周期構造(周期及び半値幅)を表1に示す。この光吸収異方性膜は、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で極大値を示さなかった。なお、光配向膜の膜厚は100nmであり、光吸収異方性膜の膜厚は170nmであった。
【0303】
【化86】

【0304】
(実施例2)
下記構造の光配向材料II−1 2質量部に、1,1,2−トリクロロエタン98質量部を加え、得られた溶液を0.45μmメンブレンフィルターで加圧ろ過した。得られた光配向膜用塗布液をガラス基板上にスピンコート塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度140mW、照射時間35秒、照射量5J/cm2)を照射したのち、230℃で5分間加熱した。
【0305】
【化87】

【0306】
得られた光配向膜付きガラス基板上に、下記構造のマゼンタアゾ色素C−9(一般式(I)の化合物) 1質量部をクロロホルム99質量部に溶解した二色性色素溶液をスピンコート塗布し、光吸収異方性膜を形成した。この様にして、偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの二色比、偏光度、消偏度、並びに光吸収異方性膜の周期構造(周期及び半値幅)を表1に示す。この光吸収異方性膜は、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で極大値を示さなかった。なお、光配向膜の膜厚は100nmであり、光吸収異方性膜の膜厚は170nmであった。
【0307】
【化88】

【0308】
(実施例3)
下記構造の光配向材料II−12 1質量部に、テトラヒドロフラン99質量部を加え、得られた溶液を0.45μmメンブレンフィルターで加圧ろ過した。得られた光配向膜用塗布液をガラス基板上にスピンコート塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度140mW、照射時間35秒、照射量5J/cm2)を照射した。
【0309】
【化89】

【0310】
得られた光配向膜付きガラス基板上に、前記マゼンタアゾ色素A−16(一般式(I)の化合物) 0.5質量部及び下記構造のマゼンタアゾ色素B−4(一般式(I)の化合物) 0.5質量部をクロロホルム99質量部に溶解した二色性色素溶液をスピンコート塗布し、光吸収異方性膜を形成した。この様にして、偏光フィルムを作製した。得られた光吸収異方性膜の二色比、偏光度、消偏度、並びに光吸収異方性膜の周期構造(周期及び半値幅)を表1に示す。この光吸収異方性膜は、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で極大値を示さなかった。なお、光配向膜の膜厚は100nmであり、光吸収異方性膜の膜厚は170nmであった。
【0311】
【化90】

【0312】
(実施例4)
下記構造の光配向材料II−36 1質量部に、テトラヒドロフラン99質量部を加え、得られた溶液を0.45μmメンブレンフィルターで加圧ろ過した。得られた光配向膜用塗布液をガラス基板上にスピンコート塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度140mW、照射時間35秒、照射量5J/cm2)を照射した。
【0313】
【化91】

【0314】
得られた光配向膜付きガラス基板上に、下記構造のイエローアゾ色素A2−3(一般式(II)の化合物) 0.87質量部及び下記構造のシアンスクアリリウム色素VI−2 0.13質量部をクロロホルム99質量部に溶解した二色性色素溶液をスピンコート塗布し、光吸収異方性膜を形成した。この様について、偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの二色比、偏光度、消偏度、並びに光吸収異方性膜の周期構造(周期及び半値幅)を表1に示す。この光吸収異方性膜は、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で極大値を示さなかった。なお、光配向膜の膜厚は100nmであり、光吸収異方性膜の膜厚は170nmであった。
【0315】
【化92】

【0316】
(実施例5)
前記光配向材料II−1を使用し、実施例2に従い光配向膜付きガラス基板を作製した。
【0317】
得られた光配向膜付きガラス基板上に、前記イエローアゾ色素A2−3(一般式(II)の化合物) 0.15質量部、下記構造のマゼンタアゾ色素A−46(一般式(I)の化合物) 0.30質量部、下記構造のシアンアゾ色素A3−1(一般式(III)の化合物) 0.15質量部、及び下記構造のシアンアゾ色素A4−120(一般式(IV)の化合物) 0.40質量部をクロロホルム99質量部に溶解した二色性色素溶液をスピンコート塗布し、180℃で30秒間加熱した後、室温に冷却し、光吸収異方性膜を形成した。この様にして、偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの二色比、偏光度、消偏度、並びに光吸収異方性膜の周期構造(周期及び半値幅)を表1に示す。この光吸収異方性膜は、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で極大値を示さなかった。なお、光配向膜の膜厚は100nmであり、光吸収異方性膜の膜厚は170nmであった。
【0318】
【化93】

【0319】
(実施例6)
前記光配向材料II−1を使用し、実施例2に従い光配向膜付きガラス基板を作製した。
【0320】
得られた光配向膜付きガラス基板上に、前記イエローアゾ色素A2−3(一般式(II)の化合物) 0.87質量部及び下記構造のシアンスクアリリウム色素VI−5 0.13質量部をクロロホルム99質量部に溶解した二色性色素溶液をスピンコート塗布し、光吸収異方性膜を形成した。この様にして、偏光フィルムを作製した。得られた光吸収異方性膜の二色比、偏光度、消偏度、並びに光吸収異方性膜の周期構造(周期及び半値幅)を表1に示す。この光吸収異方性膜は、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で極大値を示さなかった。なお、光配向膜の膜厚は100nmであり、光吸収異方性膜の膜厚は170nmであった。
【0321】
【化94】

【0322】
(比較例1)
【化95】

【0323】
クロロホルム80質量部に上記棒状液晶(B)20質量部を撹拌溶解させて光吸収異方性膜用溶液を得た。当該溶液を、ラビングによりホモジニアス配向処理を施したポリビニルアルコール配向膜(日産化学工業社製、商品名:PVA−103)付ガラス基板上にスピンコートにより塗布し、自然乾燥させて光吸収異方性膜を得た。
得られた光吸収異方性膜の二色比は6、消偏度は1.2*10-2であった。当該膜の配向軸垂直方向から得られたX線回折パターンを図1に示す。配向軸垂直方向に1つのピークが検出された。ピークから求められた周期と半値幅を下記表に示す。また、当該膜の配向軸平行方向には、X線回折パターンが認められなかった。
【0324】
(比較例2)
特開2001−330726号公報(上記特許文献7)記載の実施例の方法に従って、偏光フィルムを作製した。
具体的には、ガラス基板上にポリビニルシンナメートの2質量%トルエン溶液をバーコータで塗布し、室温で乾燥後、厚さ100nmの光配向膜を得た。超高圧水銀灯を光源として、紫外線用偏光フィルタを通して直線偏光を取り出し、前記得られた光配向膜に偏光紫外線を照射した。この配向処理された光配向膜上に、紫外線硬化性液晶UCL−001−K1(大日本インキ化学工業社製)に、黒色の二色性色素S−428(三井東圧化学社製)を2質量%溶解したものを、バーコータで塗布した後、無偏光紫外線を照射することによって硬化させた。
得られた偏光フィルムの二色比、偏光度、消偏度、周期構造(周期及び半値幅)を表1に示す。なお、光吸収異方性膜の膜厚は2000nmであった。
【0325】
(比較例3)
水91質量部に、下記(A)に示す、特開2006−79030号公報の実施例16に記載の二色性色素化合物のナトリウム塩9質量部加え、撹拌溶解後、濾過して二色性色素組成物塗布液を得た。次に、ガラス基板上に形成しラビングした配向膜上に、前記塗布液を塗布し、自然乾燥して偏光フィルムを作製した。配向膜としては、ポリイミド配向膜を使用した。なお、下記(A)の色素は、サーモトロピック液晶性を有さず、リオトロピック液晶性の色素であった。
得られた偏光フィルムの二色比は9、偏光度は89、消偏度は1.1*10-3であった。なお、配向膜の膜厚は300nmであり、光吸収異方性膜の膜厚は450nmであった。また、この膜の平面平滑性は、ラビング方向に対して平行方向に数十nm周期の凹凸が認められ、実施例と比較して劣っていた。
【0326】
【化96】

【0327】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、その上に、光配向膜及び光吸収異方性膜がこの順で順次積層された偏光フィルムであって、
該光吸収異方性膜が、液晶性の非着色性低分子化合物の占める割合が30質量%以下であり、且つネマチック液晶性を有するアゾ系二色性色素の少なくとも一種を含む二色性色素組成物の配向を固定してなり、X線回折測定において、配向軸垂直方向の周期構造に由来する回折ピークを示し、該回折ピークの少なくとも一つが表す周期が3.0〜15.0Åであり、且つ該回折ピークの強度が、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で極大値を示さないことを特徴とする偏光フィルム。
【請求項2】
前記光吸収異方性膜の回折ピークの少なくとも一つが、面内方向の周期構造に由来する回折ピークであることを特徴とする請求項1に記載の偏光フィルム。
【請求項3】
前記光吸収異方性膜がX線回折測定において、配向軸平行方向の周期構造に由来する回折ピークを示すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の偏光フィルム。
【請求項4】
前記回折ピークの少なくとも一つが表す周期が、3.0〜50.0Åである請求項3に記載の偏光フィルム。
【請求項5】
前記回折ピークの少なくとも一つの半値幅が、1.0Å以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
【請求項6】
前記二色性色素組成物が、二種以上の二色性色素を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
【請求項7】
前記少なくとも一種の二色性色素が、下記一般式(I)、下記一般式(II)、下記一般式(III)、又は下記一般式(IV)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
【化1】

(式中、R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;L11は、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、又は−CH=CH−を表し;A11は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し;B11は、置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基を表し;nは1〜5の整数を表し、nが2以上のとき複数のB11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

(式中、R21及びR22はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基を表すが、但し、少なくとも一方は、水素原子以外の基を表し;L22は、アルキレン基を表すが、アルキレン基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はそれぞれ−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−NRCOO−、−OCONR−、−CO−、−S−、−SO2−、−NR−、−NRSO2−、又は−SO2NR−(Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)に置換されていてもよく;Yは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、又は重合性基を表し;L21はそれぞれ、アゾ基(−N=N−)、カルボニルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)、イミノ基(−N=CH−)、及びビニレン基(−C=C−)からなる群から選ばれる連結基を表し;Dyeはそれぞれ、下記一般式(IIa)で表されるアゾ色素残基を表し;
【化3】

式(IIa)中、*はL21との結合部を表し;X21は、ヒドロキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、無置換アミノ基、又はモノもしくはジアルキルアミノ基を表し;Ar21は、それぞれ置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し;nは1〜3の整数を表し、nが2以上の時、2つのAr21は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化4】

(式中、R31〜R35はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R36及びR37はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;Q31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はシクロヘキサン環基を表し;L31は2価の連結基を表し;A31は酸素原子又は硫黄原子を表す)
【化5】

(式中、R41及びR42はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していてもよく;Ar4は、置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し;R43及びR44はそれぞれ、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を表し、互いに結合して複素環を形成していてもよい。)
【請求項8】
前記少なくとも一種の二色性色素が、スクアリリウム色素であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
【請求項9】
前記スクアリリウム色素が、下記一般式(VI)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項8に記載の偏光フィルム。
【化6】

(式中、A1及びA2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の、炭化水素環基又は複素環基を表わす。)
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の偏光フィルムを有することを特徴とする表示装置。
【請求項11】
少なくとも次の[1]〜[3]:
[1]基板上に形成された光配向膜を光照射処理する工程と、
[2]光配向膜上に、有機溶媒に溶解した、二色性色素組成物を塗布する工程と、
[3]該二色性色素組成物の塗布膜を50℃以上250℃以下で加熱し、配向させ光吸収異方性層とする工程とをこの順で少なくとも含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−215336(P2011−215336A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82742(P2010−82742)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】