説明

偏光子保護フィルム、ロール状偏光板、及び液晶表示装置

【課題】偏光板ロールを製造するにあたり、ロールの巻き芯と巻き外での偏光子のムラを抑制し、かつ弱いケン化条件であっても偏光子との密着性に優れ、偏光板のリワーク処理性に優れ、液晶表示装置に用いた場合にも、優れた表示安定性を有する偏光子保護フィルムを提供することである。また、当該偏光子保護フィルムが備えられたロール状偏光板及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)とを含有する偏光子保護フィルムであって、特定要件の全てを満たすことを特徴とする偏光子保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子保護フィルム、ロール状偏光板、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶テレビやパソコンの液晶ディスプレイ等の用途で、需要が拡大している。通常、液晶表示装置は、透明電極、液晶層、カラーフィルター等をガラス板で挟み込んだ液晶セルと、その両側に設けられた二枚の偏光板で構成されており、それぞれの偏光板は、偏光子(偏光膜、偏光フィルムともいう)を二枚の光学フィルム(偏光子保護フィルム)で挟まれた構成となっている。この偏光子保護フィルムとしては、通常、セルローストリアセテート等のセルロースエステルフィルムが用いられている。
【0003】
従前より、セルロースエステルフィルムが偏光子保護フィルムとして利用される理由として、一つはセルロースエステルフィルムが比較的光学的等方性に優れることが挙げられる。それに加えて、セルロースエステルフィルムは、適度な透湿性と親水性を有することから、アルカリ溶液によるケン化処理を行えば、一般的に偏光子として用いられるポリビニルアルコールフィルムに対して、水糊を用いて接着することができることが理由として挙げられる。
【0004】
セルロースエステル以外の樹脂を用いる場合、偏光子に対して十分な接着力を得る為には、粘着性の接着剤で接着する必要があり、物理的な安定性や光学的な安定性を損なう要因となる為である。特に、近年、偏光子保護フィルムに、光学補償の機能も兼ね備えた位相差フィルムとしての機能も付与することが検討されており、このような場合には、より高い光学的な安定性が求められる。
【0005】
一方、近年の技術の進歩により、液晶表示装置の大型化が加速するとともに、液晶表示装置の用途が多様化している。例えば、街頭や店頭に設置される大型ディスプレイとしての利用や、デジタルサイネージと呼ばれる表示機器を用いた公共の場における広告用ディスプレイへの利用等が挙げられる。
【0006】
このような用途においては、屋外での利用が想定されるため、偏光子保護フィルムの吸湿による光学値の変動が問題になり、偏光子保護フィルムを位相差フィルムとして用いる場合には特に高い光学的安定性が求められる。しかしながら、従来用いられているセルローストリアセテートフィルム等のセルロースエステルフィルムでは十分な光学的安定性を得ることは困難であり、耐湿性付与のためには、多量の疎水的な可塑剤を添加しなければならず、その結果フィルムの機械強度が低下する、さらには偏光板との密着性が低下するなどの問題があった。
【0007】
一方、低吸湿性の光学フィルム材料として、アクリル樹脂の代表であるポリメチルメタクリレート樹脂(以下、「PMMA」と略す。)は、光学的安定性に優れ、また、優れた透明性や寸法安定性を示すことから、光学フィルムに好適に用いられていた。
【0008】
しかし、アクリル樹脂フィルムは、セルロースエステルフィルム等と比較した場合、割れやすく脆い性質があり、取扱いが困難であり、特に大型の液晶表示装置用の光学フィルムを安定して製造することが困難であった。また、セルロースエステルフィルムに比べて、偏光子への接着性が低い為、やはり粘着性の接着剤が必要となり、それによりアクリル樹脂が本来有している光学的安定性が損なわれる場合があった。
【0009】
上述の問題に対し、セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂をブレンドすることにより、低吸湿性であり、光学的安定性に優れ、透明性を損なうことなく、脆性を著しく改善した光学フィルムが提案されている(特許文献1)。
【0010】
ところで近年、光学表示装置の製造方法として、特許文献2に記載のように、偏光子保護フィルムを有する帯状シート状偏光板製品が巻き取られたロールから直接、所望のサイズに切断加工して、この切断されたシート状製品を光学表示装置に貼り合わせる方法が提案されている。
【0011】
前記の方法により光学表示装置の製造の歩留りを向上させることが可能となったが、一方で新たに次のような問題が明らかとなった。
【0012】
特許文献1で提案されている光学フィルムは、従来のセルロースエステルフィルムと比較し、耐湿性は高いが、一方で透湿性が低いという特徴がある。このため特許文献2で提案されている光学表示装置の製造方法では、上記フィルムを偏光子保護フィルムとしたロール状に巻かれた偏光板を光学表示装置に使用した際、ロール状偏光板の巻き芯付近と巻き外(巻き芯から遠い側)では、偏光板製造の際に含んだ水分の抜け具合に差が生じ、ロール状偏光板の巻き芯付近の偏光板は水分含有量が多く、この偏光板を使用し製造された光学表示装置では、偏光子の性能が劣化し、液晶表示装置を正面及び斜めから見たときに白っぽく見えるムラが発生することが問題となった。また、巻き芯付近の偏光板は、偏光板ロールから所定寸法に裁断された製品を液晶セルや他の光学部材へ貼合する直前にセパレートフィルムが剥離除去される際に、偏光子と偏光子保護フィルムとの密着性が弱く、偏光子と偏光子保護フィルムとが剥がれてしまうということも問題となった。
【0013】
従来の光学表示装置の製造方法では、偏光板ロールから一度枚葉のシート状製品が製造され、パネル加工メーカーに輸送された後、光学表示装置に貼り合わせが行われるため、十分に偏光板の水分が除去されるため上記のような問題は生じなかった。
【0014】
さらに、特許文献1で提案されているフィルムは、セルロースエステル樹脂にアクリル樹脂をブレンドしているため、アクリル樹脂はケン化処理をした場合でも密着性が改善されないことから、セルロースエステル樹脂フィルムと同様のケン化条件では、偏光子との密着性が弱いことも明らかとなった。
【0015】
このため、上記フィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板ロールは、強い条件でケン化処理をする必要があるが、一方で強い条件でケン化処理をするとフィルム脆性が劣化し、偏光板ロールから光学表示装置に貼り合わせるため偏光板を所定寸法に裁断する工程や光学表示装置に一度貼り合わせた偏光板をリワーク処理する際に偏光板の破断が発生することが分かった。
【0016】
上記二つの問題を解決するため、特許文献1で提案されているフィルム中のセルロースエステル樹脂比率を多くすることで、透湿性を向上し、通常のケン化処理においても偏光子との密着性を向上させる検討を行ったが、セルロースエステル樹脂比率を多くすることで、偏光子と偏光子保護フィルムとの密着性は向上したが、一方で吸湿による光学値の変動が問題となり液晶表示装置に用いた場合に、視野角の変動、色味の変化が生じた。
【0017】
このため、フィルムの光学的安定性と偏光子との密着性を両立させることは非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2009/047924号
【特許文献2】特許第4307510号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、偏光板ロールを製造するにあたり、ロールの巻き芯付近と巻き外での偏光子のムラを抑制し、かつ弱いケン化条件であっても偏光子との密着性に優れ、さらには、偏光板のリワーク処理性に優れ、液晶表示装置に用いた場合にも、優れた表示安定性を有する偏光子保護フィルムを提供することである。また、当該偏光子保護フィルムが備えられたロール状偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0021】
1.アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)とを含有する偏光子保護フィルムであって、下記要件(1)〜(4)の全てを満たすことを特徴とする偏光子保護フィルム。
(1)前記アクリル樹脂(A)と前記セルロースエステル樹脂(B)の質量をそれぞれAm及びBmとしたとき、質量比(Am/Bm)が、50/50〜95/5の範囲内である。
(2)前記アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が、5000〜1000000の範囲内である。
(3)前記アクリル樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される。
一般式(1):−(X)−(Y)−(Z)
(但し、Xは共重合可能なモノマー単位を、YはXと共重合可能なモノマー単位を、ZはX及びZのいずれかと共重合可能なモノマー単位を表し、Y及びZは、それぞれの単位構造中に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基を有する。l、m、及びnは、質量分率でありl+m+n=100とする。)
(4)23≦{(m+n)/(l+m+n)}×100≦60としたとき、前記アクリル樹脂(A)の質量Amが、下記の関係を満たす。
【0022】
21≦Am×{(m+n)/(l+m+n)}≦60
2.前記セルロースエステル樹脂(B)のアシル基平均置換度が2.0〜3.0の範囲内であり、かつ重量平均分子量(Mw)が30000〜300000の範囲内であることを特徴とする前記第1項に記載の偏光子保護フィルム。
【0023】
3.前記Y及びZが、それぞれ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、又はN−ビニルピロリドンに由来するモノマー単位であることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の偏光子保護フィルム。
【0024】
4.ポリビニルアルコール樹脂フィルムがヨウ素又は二色性染料により染色されてなる偏光子の少なくとも一方の面に、前記第1項から第3項までのいずれか一項に記載の偏光子保護フィルムが備えられた偏光板が長尺方向にロール状に巻き取られていることを特徴とするロール状偏光板。
【0025】
5.前記第4項に記載のロール状偏光板を液晶パネルに貼合し、レーザーで切断して製造されたことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明の上記手段により、偏光板ロールを製造するにあたり、ロールの巻き芯と巻き外での偏光子のムラを抑制し、かつ弱いケン化条件であっても偏光子との密着性に優れ、偏光板のリワーク処理性に優れ、液晶表示装置に用いた場合にも、優れた表示安定性を有する偏光子保護フィルムを提供することである。また、当該偏光子保護フィルムが備えられたロール状偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ロール状偏光板ないし枚葉状偏光板の層構成の一例を示す断面模式図
【図2】ロール状偏光板を巻き取る状態を、一部を拡大して示す断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の偏光子保護フィルムは、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)とを含有する偏光子保護フィルムであって、下記要件(1)〜(4)の全てを満たすことを特徴とする。
(1)前記アクリル樹脂(A)と前記セルロースエステル樹脂(B)の質量をそれぞれAm及びBmとしたとき、質量比(Am/Bm)が、50/50〜95/5の範囲内である。
(2)前記アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が、5000〜1000000の範囲内である。
(3)前記アクリル樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される。
一般式(1):−(X)−(Y)−(Z)
(但し、Xは共重合可能なモノマー単位を、YはXと共重合可能なモノマー単位を、ZはX及びZのいずれかと共重合可能なモノマー単位を表し、Y及びZは、それぞれの単位構造中に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基を有する。l、m、及びnは、質量分率でありl+m+n=100とする。)
(4)23≦{(m+n)/(l+m+n)}×100≦60としたとき、前記アクリル樹脂(A)の質量Amが、下記の関係を満たす。
【0029】
21≦Am×{(m+n)/(l+m+n)}≦60
上記特徴は、請求項1から請求項5までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0030】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記セルロースエステル樹脂(B)のアシル基平均置換度が2.0〜3.0の範囲内であり、かつ重量平均分子量(Mw)が30000〜300000の範囲内であることが好ましい。さらに、前記Y及びZが、それぞれ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、又はN−ビニルピロリドンに由来するモノマー単位であることが好ましい。
【0031】
本発明の偏光子保護フィルムは、ポリビニルアルコール樹脂フィルムがヨウ素又は二色性染料により染色されてなる偏光子の少なくとも一方の面に、当該偏光子保護フィルムが備えられている態様のロール状偏光板に好適に用いることができる。また、当該ロール状偏光板を液晶パネルに貼合し、レーザーで切断して製造される液晶表示装置に好適に用いることができる。
【0032】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0033】
<アクリル樹脂(A)>
本発明の偏光子保護フィルムは、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)とを含有することを特徴とする。
【0034】
また、下記要件(1)〜(4)の全てを満たすことを特徴とする。
(1)前記アクリル樹脂(A)と前記セルロースエステル樹脂(B)の質量をそれぞれAm及びBmとしたとき、質量比(Am/Bm)が、50/50〜95/5の範囲内である。
(2)前記アクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mwが、5000〜1000000の範囲内である。
(3)前記アクリル樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される。
一般式(1):−(X)−(Y)−(Z)
(但し、Xは共重合可能なモノマー単位を、YはXと共重合可能なモノマー単位を、ZはX及びZのいずれかと共重合可能なモノマー単位を表し、Y及びZは、それぞれの単位構造中に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基を有する。l、m、及びnは、質量分率を表し、l+m+n=100とする。)
(4)23≦{(m+n)/(l+m+n)}×100≦60としたとき、前記アクリル樹脂(A)の質量Amが、下記の関係を満たす。
【0035】
21≦Am×{(m+n)/(l+m+n)}≦60
本発明においては、上記要件(1)〜(4)を全て満たすように、後述するモノマーの選択、重合度の調整等をすることにより、前述した発明の効果を発現することができる。
【0036】
上記一般式(1)において、Xは共重合可能なモノマー単位を表すが、当該モノマーとしては、アクリルモノマー、メタクリルモノマー、オレフィン、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等、国際公開第2009/047924号明細書、特開2009−1744号公報、特開2009−179731号公報等に記載のモノマーが挙げられる。
【0037】
なお、本発明においては、特にXが、メタクリル酸メチルなどのメタクリルモノマーであることが好ましい。
【0038】
YはXと共重合可能なモノマー単位を、ZはX及びZのいずれかと共重合可能なモノマー単位を表し、Y及びZは、それぞれの単位構造中に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基を有することを要する。
【0039】
Y及びZで表されるモノマー単位に係る好ましいモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMA)、又はN−ビニルピロリドン(N−VP)などを挙げることができる。
【0040】
また、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルピロリジン、アクリロイルピペリジン、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、メタクリロイルピロリジン、メタクリロイルピペリジン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0041】
これらのモノマーは市販のものをそのまま使用することができる。
【0042】
前記一般式(1)において、l、m、及びnは、質量分率を表し、l+m+n=100とするが、30≦l≦80、10≦m≦80であることが好ましい。また、mは、モノマーの性質により適宜選択されるが、好ましくは20≦m≦70である。
【0043】
また、本発明においては、23≦{(m+n)/(l+m+n)}×100≦60としたとき、前記アクリル樹脂(A)の質量Amが、下記の関係を満たすように調整することを要する。
【0044】
21≦Am×{(m+n)/(l+m+n)}≦60
上記関係を満たす場合には、製造したフィルムの透湿性、偏光子と偏光子保護フィルムとの密着性が大幅に向上し、偏光板ロールとした際にロールの巻き芯と巻き外での偏光子のムラを抑制し、かつ弱いケン化条件であっても偏光子との密着性に優れ、液晶表示装置からの偏光板のリワーク処理の際にも破断することがない偏光板を製造できる。さらには、透湿性は向上するが、一方で位相差値の環境湿度に対する変動が小さく、液晶表示装置に用いた場合、視野角の変動、色味の変化が少ない偏光子保護フィルムを提供することができる。
【0045】
一方、上記関係を満たさない場合は、製造したフィルムの透湿性、偏光子と偏光子保護フィルムとの密着性が不足し、偏光板ロールから所定寸法に裁断された製品を液晶セルや他の光学部材へ直接貼合する方法による光学表示装置の製造方法では、セパレートフィルムが剥離除去される際に、偏光子と偏光子保護フィルムとが剥がれてしまうもいう欠陥を生じる。
【0046】
なお、本発明に係るアクリル樹脂は、前記モノマー単位X、Y、及びZのうち、少なくともいずれか一つのモノマー単位が、アクリル系モノマー、又はメタクリル系モノマーであることを要する。
【0047】
本発明に係るアクリル樹脂(A)は、特にセルロースエステル樹脂(B)との相溶性、脆性の改善の観点から、重量平均分子量(Mw)が5000〜1000000の範囲内であることが好ましい。
【0048】
本発明に係るアクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
【0049】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0050】
本発明におけるアクリル樹脂(A)の製造方法としては、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系及びアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。
【0051】
重合温度については、懸濁又は乳化重合では30〜100℃、塊状又は溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
【0052】
<セルロースエステル樹脂(B)>
本発明においては、特に脆性の改善やアクリル樹脂(A)と相溶させたときに透明性の観点から、セルロースエステル樹脂(B)のアシル基平均置換度が2.0〜3.0の範囲内であり、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であり、炭素数3〜7のアシル基の置換度は、2.0〜3.0であることが好ましい。
【0053】
本願において、「アシル基平均置換度」とは、セルロースを構成する無水グルコース(基本単位当たり)が有する三個のヒドロキシル基(水酸基)のうち、アシル化されているヒドロキシル基(水酸基)の数の平均値をいい、0〜3の範囲内の値を示す。
【0054】
また、セルロースエステル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)が30000〜300000の範囲内であることが好ましい。
【0055】
本発明に係るセルロースエステル樹脂は、炭素数が3〜7のアシル基により置換されたセルロースエステル樹脂であり、具体的には、プロピオニル、ブチリル等が好ましく用いられるが、特にプロピオニル基が好ましく用いられる。
【0056】
本発明に係るセルロースエステル樹脂(B)のアシル置換度は、総置換度(T)が2.0〜3.0であり、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であれば問題ないが、炭素数が3〜7以外のアシル基、即ち、アセチル基や炭素数が8以上のアシル基の置換度の総計が1.3以下とされることが好ましい。
【0057】
また、セルロースエステル樹脂(B)のアシル基の総置換度(T)は、2.5〜3.0の範囲であることが更に好ましい。
【0058】
本発明に係るセルロースエステル樹脂(B)としては、特にセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、即ち、炭素原子数3又は4のアシル基を置換基として有するものが好ましい。
【0059】
これらの中で特に好ましいセルロースエステル樹脂は、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースプロピオネートである。
【0060】
アシル基で置換されていない部分は通常ヒドロキシル基(水酸基)として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
【0061】
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
【0062】
本発明に係るセルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特にアクリル樹脂(A)との相溶性、脆性の改善の観点から、35000〜300000の範囲であることが好ましい。本発明では二種以上のセルロース樹脂を混合して用いることもできる。
【0063】
本発明に係るセルロースエステル樹脂の重量平均分子量は、上記GPCによって測定することができる。
【0064】
<アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)の混合>
本発明においては、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)の質量をそれぞれAm及びBmとしたとき、質量比(Am/Bm)が、50/50〜95/5の範囲内であることを要する。
【0065】
すなわち、本発明の偏光子保護フィルムにおいて、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)は、95:5〜50:50の質量比で、相溶状態で含有されることが好ましい。
【0066】
アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)の質量比が、95:5よりもアクリル樹脂(A)が多くなると、セルロースエステル樹脂(B)による透湿性、偏光子との密着性向上効果が十分に得られず、一方、同質量比が50:50よりもアクリル樹脂が少なくなると、液晶表示装置に用いた際の光学的安定性が低下し、視野角の変動、色味の変化が生じる。
【0067】
本発明の偏光子保護フィルムにおいては、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)が相溶状態で含有されることが好ましい。光学フィルムとして必要とされる物性や品質を、異なる樹脂を相溶させることで相互に補うことにより達成している。
【0068】
アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)が相溶状態となっているかどうかは、例えばガラス転移温度Tgにより判断することが可能である。
【0069】
例えば、両者の樹脂のガラス転移温度が異なる場合、両者の樹脂を混合したときは、各々の樹脂のガラス転移温度が存在するため混合物のガラス転移温度は二つ以上存在するが、両者の樹脂が相溶したときは、各々の樹脂固有のガラス転移温度が消失し、1つのガラス転移温度となって相溶した樹脂のガラス転移温度となる。
【0070】
なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)とする。
【0071】
本発明の偏光子保護フィルムにおけるアクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)やセルロースエステル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)や置換度は、両者の樹脂の溶媒に対して溶解性の差を用いて、分別した後に、それぞれ測定することにより得られる。
【0072】
樹脂を分別する際には、いずれか一方にのみ溶解する溶媒中に相溶された樹脂を添加することで、溶解する樹脂を抽出して分別することができ、このとき加熱操作や環流を行ってもよい。
【0073】
これらの溶媒の組み合わせを2工程以上組み合わせて、樹脂を分別してもよい。溶解した樹脂と、不溶物として残った樹脂を濾別し、抽出物を含む溶液については、溶媒を蒸発させて乾燥させる操作によって樹脂を分別することができる。
【0074】
これらの分別した樹脂は、高分子の一般の構造解析によって特定することができる。本発明の偏光子保護フィルムが、アクリル樹脂(A)やセルロースエステル樹脂(B)以外の樹脂を含有する場合も同様の方法で分別することができる。
【0075】
また、相溶された樹脂の重量平均分子量(Mw)がそれぞれ異なる場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、高分子量物は早期に溶離され、低分子量物であるほど長い時間を経て溶離されるために、容易に分別可能であるとともに分子量を測定することも可能である。
【0076】
また、相溶した樹脂をGPCによって分子量測定を行うと同時に、時間毎に溶離された樹脂溶液を分取して溶媒を留去し乾燥した樹脂を、構造解析を定量的に行うことで、異なる分子量の分画毎の樹脂組成を検出することで、相溶されている樹脂をそれぞれ特定することができる。
【0077】
事前に溶媒への溶解性の差で分取した樹脂を、各々GPCによって分子量分布を測定することで、相溶されていた樹脂をそれぞれ検出することもできる。
【0078】
<その他の添加樹脂>
本発明の偏光子保護フィルムには、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)以外の樹脂を用いる際には、本発明の偏光子保護フィルムの機能を損なわない範囲で添加量を調整することが好ましい。
【0079】
好ましい樹脂としては、特開2010−32655号明細書段落(0072)〜(0123)に記載のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られた低分子アクリル樹脂(重量平均分子量Mwが500以上30000以下である重合体)を挙げることができる。
【0080】
特に好ましくは、Mwが2000〜30000である。1000以下ではブリードアウトに問題が生じ、30000を超えると透明性が悪くなる。
【0081】
また、(株)日本触媒のアミド結合を有するビニルポリマーも使用することができる。例えば、ポリビニルピロリドンK−30、K−85、及びK−90も使用することができる。
【0082】
本発明に係る低分子アクリル樹脂、アミド結合を有するビニルポリマーは、偏光子保護フィルムの全質量に対して0〜15質量%であり、0〜10質量%であることが好ましい。
【0083】
<アクリル粒子>
本発明の偏光子保護フィルムは、特許文献1に記載のアクリル粒子を含有してもよい。
【0084】
このような多層構造アクリル系粒状複合体の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製“メタブレンW−341”、鐘淵化学工業社製“カネエース”、呉羽化学工業社製“パラロイド”、ロームアンドハース社製“アクリロイド”、ガンツ化成工業社製“スタフィロイド”、ケミスノーMR−2G、MS−300X(綜研化学(株)製)及びクラレ社製“パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし二種以上を用いることができる。
【0085】
本発明の偏光子保護フィルムにおいて、該フィルムを構成する樹脂の総質量に対して、0〜30質量%のアクリル粒子を含有することが好ましく、1.0〜15質量%の範囲で含有することがさらに好ましい。
【0086】
<その他の添加剤>
本発明の偏光子保護フィルムには、リターデーションを制御することを目的とした位相差制御剤、フィルムに加工性を付与する可塑剤、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)等の添加剤を含有させることが好ましい。
【0087】
〈グリコールと二塩基酸のポリエステルポリオール〉
本発明において使用され得るポリエステルポリオールとしては、炭素数の平均が2〜3.5であるグリコールと炭素数の平均が4〜5.5である二塩基酸との脱水縮合反応、又は該グリコールと炭素数の平均が4〜5.5である無水二塩基酸の付加及び脱水縮合反応による常法により製造されるものであることが好ましい。
【0088】
〈芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールのポリエステル〉
本発明に係る位相差制御剤として、下記一般式(I)で表される芳香族末端ポリエステルを用いることができる。
【0089】
一般式(I) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基又は炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(I)中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基又はオキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基又はアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステルと同様の反応により得られる。
【0090】
本発明に係る芳香族末端ポリエステルの具体的な化合物としては、特開2010−32655号明細書段落(0183)〜(0186)を挙げることができる。
【0091】
本発明に係る芳香族末端ポリエステルの含有量は、偏光子保護フィルム中に0〜20質量%含有することが好ましく、特に1〜11質量%含有することが好ましい。
【0092】
〈多価アルコールエステル系化合物〉
本発明の偏光子保護フィルムには、多価アルコールエステル系化合物を含有させることができる。
【0093】
多価アルコールエステル系化合物としては、特開2010−32655号明細書段落(0218)〜(0170)を挙げることができる。
【0094】
〈糖エステル化合物〉
本発明に係る糖エステル化合物しては、ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した糖エステル化合物を使用することが好ましい。
【0095】
本発明に用いられる糖エステル化合物としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースなどが挙げられるが、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有するものが好ましい。例としてはスクロースが挙げられる。
【0096】
本発明に用いられる糖エステル化合物は、糖化合物の有するヒドロキシル基(水酸基)の一部又は全部がエステル化されているもの又はその混合物である。
【0097】
本発明に係る糖エステル化合物の具体的化合物としては、特開2010−32655号明細書段落(0060)〜(0070)を挙げることができる。
【0098】
〈その他の添加剤〉
本発明の偏光子保護フィルムにおいては、可塑剤、位相差制御剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、マット粒子等を併用することも可能である。
【0099】
可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
【0100】
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等を用いることができる。
【0101】
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
【0102】
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
【0103】
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
【0104】
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸及びグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
【0105】
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは600〜3000の範囲が可塑化効果が大きい。
【0106】
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000mPa・s(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
【0107】
可塑剤はアクリル樹脂を含有する組成物100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を越えると、表面がべとつくので、実用上好ましくない。またこれらの可塑剤は単独或いは二種以上混合して用いることもできる。
【0108】
〈その他の位相差制御剤〉
本発明に係る上記位相差制御剤以外としては、分子内にビスフェノールAを含有しているものが好ましい。ビスフェノールAの両端にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを付加した化合物などを用いることができる。
【0109】
例えばニューポールBP−2P、BP−3P、BP−23P、BP−5PなどのBPシリーズ、BPE−20(F)、BPE−20NK、BPE−20T、BPE−40、BPE−60、BPE−100、BPE−180などのBPEシリーズ(三洋化成(株)製)などやアデカポリエーテルBPX−11、BPX−33、BPX−55などのBPXシリーズ((株)アデカ製)がある。
【0110】
ジアリルビスフェノールA、ジメタリルビスフェノールAや、ビスフェノールAを臭素などで置換したテトラブロモビスフェーノールAやこれを重合したオリゴマーやポリマー、ジフェニルフォスフェイトなどで置換したビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェイト)なども用いることができる。
【0111】
ビスフェノールAを重合したポリカーボネートやビスフェノールAをテレフタル酸などの二塩基酸と重合したポリアリレート、エポキシを含有するモノマーと重合したエポキシオリゴマーやポリマーなども用いることができる。
【0112】
ビスフェノールAとスチレンやスチレンアクリルなどをグラフト重合させたモディパーCL130DやL440−Gなども用いることができる。
【0113】
またトリアジン構造をもつものも好ましい。特開2001−166144号公報等に記載の化合物を使用することができる。
【0114】
〈酸化防止剤〉
本発明では、酸化防止剤としては、通常知られているものを使用することができる。特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。
【0115】
例えば、BASFジャパン株式会社から、“IrgafosXP40”、“IrgafosXP60”という商品名で市販されているものを含むものが好ましい。
【0116】
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、BASFジャパン株式会社、“Irganox1076”、“Irganox1010”、(株)ADEKA“アデカスタブAO−50”という商品名で市販されているものが好ましい。
【0117】
上記リン系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“SumilizerGP”、株式会社ADEKAから“ADK STAB PEP−24G”、“ADK STAB PEP−36”及び“ADK STAB 3010”、BASFジャパン株式会社から“IRGAFOS P−EPQ”、堺化学工業株式会社から“GSY−P101”という商品名で市販されているものが好ましい。
【0118】
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、BASFジャパン株式会社から、“Tinuvin144”及び“Tinuvin770”、株式会社ADEKAから“ADK STAB LA−52”という商品名で市販されているものが好ましい。
【0119】
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、”Sumilizer TPL−R”及び“Sumilizer TP−D”という商品名で市販されているものが好ましい。
【0120】
上記二重結合系化合物は、住友化学株式会社から、“Sumilizer GM”及び“Sumilizer GS”という商品名で市販されているものが好ましい。
【0121】
さらに、酸捕捉剤として米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
【0122】
これらの酸化防止剤等は、再生使用される際の工程に合わせて適宜添加する量が決められるが、一般には、フィルムの主原料である樹脂に対して、0.05〜20質量%、好ましくは0.1〜1質量%の範囲で添加される。
【0123】
これらの酸化防止剤は、一種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。例えば、ラクトン系、リン系、フェノール系及び二重結合系化合物の併用は好ましい。
【0124】
〈着色剤〉
本発明においては、着色剤を使用することが好ましい。着色剤と言うのは染料や顔料を意味するが、本発明では、液晶画面の色調を青色調にする効果又はイエローインデックスの調整、ヘイズの低減を有するものを指す。
【0125】
着色剤としては各種の染料、顔料が使用可能だが、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料などが有効である。
【0126】
〈紫外線吸収剤〉
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。
【0127】
〈マット剤〉
本発明では、フィルムの滑り性を付与するためにマット剤を添加することが好ましい。
【0128】
本発明で用いられるマット剤としては、得られるフィルムの透明性を損なうことがなく、溶融時の耐熱性があれば無機化合物又は有機化合物どちらでもよい。これらのマット剤は、単独でも二種以上併用しても使用できる。
【0129】
粒径や形状(例えば針状と球状など)の異なる粒子を併用することで高度に透明性と滑り性を両立させることもできる。
【0130】
これらの中でも、セルロースエステルと屈折率が近いので透明性(ヘイズ)に優れる二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
【0131】
二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKEP−10、シーホスターKEP−30、シーホスターKEP−50(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック100(富士シリシア製)、ニップシールE220A(日本シリカ工業製)、アドマファインSO(アドマテックス製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。
【0132】
粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いると得られるフィルムの透明性が良好にできるので好ましい。
【0133】
粒子の大きさは、可視光の波長に近いと光が散乱し、透明性が悪くなるので、可視光の波長より小さいことが好ましく、さらに可視光の波長の1/2以下であることが好ましい。粒子の大きさが小さすぎると滑り性が改善されない場合があるので、80nmから180nmの範囲であることが特に好ましい。
【0134】
なお、粒子の大きさとは、粒子が1次粒子の凝集体の場合は凝集体の大きさを意味する。また、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
【0135】
〈粘度低下剤〉
本発明において、溶融粘度を低減する目的として、水素結合性溶媒を添加することができる。
【0136】
水素結合性溶媒とは、J.N.イスラエルアチビリ著、「分子間力と表面力」(近藤保、大島広行訳、マグロウヒル出版、1991年)に記載されるように、電気的に陰性な原子(酸素、窒素、フッ素、塩素)と電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子間に生ずる、水素原子媒介「結合」を生ずることができるような有機溶媒、すなわち、結合モーメントが大きく、かつ水素を含む結合、例えば、O−H(酸素水素結合)、N−H(窒素水素結合)、F−H(フッ素水素結合)を含むことで近接した分子同士が配列できるような有機溶媒をいう。
【0137】
これらは、セルロース樹脂の分子間水素結合よりもセルロースとの間で強い水素結合を形成する能力を有するもので、本発明で行う溶融流延法においては、用いるセルロース樹脂単独のガラス転移温度よりも、水素結合性溶媒の添加によりセルロース樹脂組成物の溶融温度を低下することができる、又は同じ溶融温度においてセルロース樹脂よりも水素結合性溶媒を含むセルロース樹脂組成物の溶融粘度を低下することができる。
【0138】
(偏光子保護フィルムの物性)
以下、本発明の偏光子保護フィルムの物性等についての特徴について説明する。
【0139】
〈透明性〉
本発明の偏光子保護フィルムの透明性を判断する指標としては、ヘイズ値(濁度)を用いる。
【0140】
特に屋外で用いられる液晶表示装置においては、明るい場所でも十分な輝度や高いコントラストが得られることが求められる為、ヘイズ値は1.0%以下であることが必要とされ、0.5%以下であることがさらに好ましい。
【0141】
また、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。
【0142】
アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)を含有する本発明の偏光子保護フィルムによれば、高い透明性を得ることができるが、別の物性を改善する目的でアクリル粒子を使用する場合は、樹脂(アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B))とアクリル粒子との屈折率差を小さくすることで、ヘイズ値の上昇を防ぐことができる。
【0143】
また、本発明の偏光子保護フィルムは、フィルム面内の直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.1個/10cm四方以下である。
【0144】
ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
【0145】
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ロール傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認する。
【0146】
なお、反射光で観察する場合に、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。
【0147】
かかる欠点頻度にて表される品位に優れたフィルムを生産性よく得るには、ポリマー溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
【0148】
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
【0149】
〈リターデーション〉
リターデーションは作製した偏光子保護フィルムから試料35mm×35mmを切り出し、25℃,55%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA WR、王子計測(株))で、590nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値より各波長におけるRo、Rtを算出した。
【0150】
本発明の偏光子保護フィルムは、下記式(I)により定義される面内リターデーション値Ro(590)が0〜100nmの範囲内であり、下記式(II)により定義にされる厚さ方向のリターデーション値Rt(590)が−100〜100nmの範囲内であるように調整することが好ましい。
式(I):Ro(590)=(nx−ny)×d(nm)
式(II):Rt(590)={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
〔上式中、Ro(590)は測定波長590nmにおけるフィルム内の面内リターデーション値を表し、Rt(590)は590nmにおけるフィルム内の厚さ方向のリターデーション値を表す。
【0151】
また、dは偏光子保護フィルムの厚さ(nm)を表し、nxは590nmにおけるフィルムの面内の最大の屈折率を表し、遅相軸方向の屈折率ともいう。nyは590nmにおけるフィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率を表し、nzは590nmにおける厚さ方向におけるフィルムの屈折率を表す。〕
面内リターデーション値Ro(590)は、好ましくは、0〜250nmの範囲内である。
【0152】
一方、厚さ方向のリターデーション値Rt(590)については、好ましくは、−50〜50nmの範囲内である。
【0153】
所望のリターデーションは組成をアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を95:5〜50:50の質量比の範囲内でそれぞれの樹脂の比率を調整し、場合に応じて、位相差制御剤の組み合わせとその添加する量を調整することで行う。
【0154】
さらに、このフィルムの組成に応じて、延伸の温度(それぞれの区画の温度の組み合わせ)、倍率、延伸する速度、延伸する順序、延伸する時のフィルムの残留溶媒量などを調整、制御することでリターデーション値を所望の値にすることができる。
【0155】
リターデーションをこのような範囲に調整することにより本発明フィルムを使用した液晶表示装置の視野角を広げ、正面コントラストを改善することができる。
【0156】
正面コントラスト=(表示装置の法線方向から測定した白表示の輝度)/(表示装置の法線方向から測定した黒表示の輝度)
視野角は液晶表示装置の観察方向を法線方向から傾けていった場合に一定レベルのコントラストを維持できる角度のことである。
【0157】
遅相軸方向の均一性も重要であり、フィルム巾方向に対して、角度が−5〜+5°であることが好ましく、さらに−1〜+1°の範囲にあることが好ましく、特に−0.5〜+0.5°の範囲にあることが好ましく、特に−0.1〜+0.1°の範囲にあることが好ましい。これらのばらつきは延伸条件を最適化することで達成できる。
【0158】
本発明の偏光子保護フィルムは、隣接する山の頂点から谷の底点までの高さが300nm以上であり、傾きが300nm/mm以上の長手方向に連続するスジがないことが好ましい。
【0159】
スジの形状は、表面粗さ計を用いて測定したもので、具体的には、ミツトヨ製SV−3100S4を使用して、先端形状が円錐60°、先端曲率半径2μmの触針(ダイヤモンド針)に測定力0.75mNの加重をかけながら、測定速度1.0mm/secでフィルムの巾方向に走査し、Z軸(厚さ方向)分解能0.001μmとして断面曲線を測定する。
【0160】
この曲線から、スジの高さは、山の頂点から谷の底点までの垂直距離(H)を読み取る。スジの傾きは、山の頂点から谷の底点までの水平距離(L)を読み取り、垂直距離(H)を水平距離(L)で除して求める。
【0161】
また本発明の偏光子保護フィルムの厚さは、20μm以上150μm以下であることが好ましい。より好ましくは30μm以上80μm以下である。
【0162】
本発明の偏光子保護フィルムは、上記のような物性を満たしていれば、大型の液晶表示装置や屋外用途の液晶表示装置用の偏光板保護フィルムとして特に好ましく用いることができる。
【0163】
<偏光子保護フィルムの製造方法>
本発明の偏光子保護フィルムは、溶液流延法で製造されたフィルムであっても溶融流延法で製造されたフィルムであっても好ましく用いることができる。
【0164】
溶液流延法において、本発明の偏光子保護フィルムの製造は、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
【0165】
(ドープ調製工程)
ドープ中のアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
【0166】
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても二種以上を併用してもよいが、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の溶解性の点で好ましい。
【0167】
良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)を単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の総アシル置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わる。
【0168】
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
【0169】
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
【0170】
また、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。
【0171】
回収溶剤中に、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)に添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
【0172】
上記記載のドープを調製する時の、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
【0173】
溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
【0174】
また、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)を貧溶剤と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
【0175】
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0176】
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)の溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
【0177】
好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
【0178】
また、冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)を溶解させることができる。
【0179】
次に、このアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。
【0180】
このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
【0181】
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
【0182】
濾過により、原料のアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)に含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
【0183】
輝点異物とは、二枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に偏光子保護フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。
【0184】
より好ましくは100個/cm以下であり、更に好ましくは50個/m以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
【0185】
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。
【0186】
好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
【0187】
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
【0188】
(ドープ流延工程)
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
【0189】
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化したりする場合がある。
【0190】
好ましい支持体温度は0〜55℃であり、25〜50℃が更に好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
【0191】
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
【0192】
フィルムを支持体から剥離する際の剥離張力は300N/m以下であることが好ましい。
【0193】
製造したフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。
【0194】
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
【0195】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0196】
また、乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
【0197】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0198】
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
【0199】
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は40〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましい。
【0200】
(共流延工程)
積層構造フィルムを作製する場合は、金属支持体としての平滑なベルト又はドラム上に、二層以上の複数のアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)ブレンド溶液を流延する方法が好ましい。
【0201】
複数のアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)ブレンド溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔をおいて設けた複数の流延口からアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)ブレンド溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく(逐次重層)、また、一つのダイスに2つ以上の流延口を設けてアクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)ブレンド溶液を同時に流延させて複層構造フィルムを作製してもよい(同時重層)。逐次重層の作製方法は、例えば特公昭60−27562号公報、特開昭61−104813号公報、特開昭61−158414号公報、特開平1−122419号公報などに記載されている方法があげられる。同時重層の作製方法は、例えば特開昭61−94724号公報、特開昭61−158413号公報、特開平6−134933号公報などに記載されている方法をあげることができる。
【0202】
製造フィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが用いられる。特に膜厚は10〜100μmであることが特に好ましい。更に好ましくは20〜60μmである。
【0203】
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、幅1〜4mで製膜され、特に幅1.4〜4mのものが好ましく、特に好ましくは1.9〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
【0204】
(延伸工程)
アクリル、セルロースブレンドフィルムに下記所望のリターデーション値Ro、Rtを付与するには、アクリル、セルロースブレンドフィルムが本発明の構成をとり、更に搬送張力の制御、延伸操作により屈折率制御を行うことが好ましい。
【0205】
例えば、長手方向の張力を低く又は高くすることでリターデーション値を変動させることが可能となる。
【0206】
また、フィルムの長手方向(製膜方向)及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次又は同時に二軸延伸もしくは一軸延伸することが好ましい。
【0207】
本発明では、上記のようにして得られたフィルムは冷却ロールに接する工程を通過後、少なくとも一方向に1.01〜3.0倍延伸することが好ましい。延伸によりスジの改良などの面品質の向上、リターデーションの調整などを行うことができる。
【0208】
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを用いることができる。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。
【0209】
また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
【0210】
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
【0211】
互いに直交する二軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に0.8〜1.5倍、幅方向に1.1〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に0.8〜1.0倍、幅方向に1.2〜2.0倍に範囲で行うことが好ましい。
【0212】
延伸温度は120℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは150℃〜200℃であり、さらに好ましくは150℃を超えて190℃以下で延伸するのが好ましい。
【0213】
フィルム中の残留溶媒は20〜0%が好ましく、さらに好ましくは15〜0%で延伸するのが好ましい。
【0214】
具体的には155℃で残留溶媒が11%で延伸する、あるいは155℃で残留溶媒が2%で延伸するのが好ましい。もしくは160℃で残留溶媒が11%で延伸するのが好ましく、あるいは160℃で残留溶媒が1%未満で延伸するのが好ましい。
【0215】
延伸は、幅手方向で制御された均一な温度分布下で行うことが好ましい。好ましくは±2℃以内、さらに好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
【0216】
また延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行ってもよく、目的とするフィルムに要求される特性を有するように適宜調整することができる。
【0217】
上記の方法で作製した偏光子保護フィルムのリターデーション調整や寸法変化率を低減する目的で、フィルムを長手方向や幅手方向に収縮させてもよい。
【0218】
長手方向に収縮するには、例えば、巾延伸を一時クリップアウトさせて長手方向に弛緩させる、又は横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。
【0219】
後者の方法は一般の同時二軸延伸機を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行うことができる。必要により任意の方向(斜め方向)の延伸と組み合わせてもよい。長手方向、巾手方向とも0.5%から10%収縮させることで偏光子保護フィルムの寸法変化率を小さくすることができる。
【0220】
延伸は、例えば偏光子保護フィルムの長手方向及びそれと偏光子保護フィルム面内で直交する方向、即ち幅方向に対して、逐次又は同時に行うことができる。
【0221】
互いに直行する二軸方向に延伸することにより、得られる偏光子保護フィルムの膜厚変動が減少できる。偏光子保護フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
【0222】
偏光子保護フィルムの膜厚変動は、±3%であることが好ましく、±1%の範囲とすることがさらに好ましい。
【0223】
本発明の位相差フィルムの遅相軸又は進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましく、−0.1°以上+0.1°以下であることがさらに好ましい。
【0224】
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制又は防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
【0225】
本発明の位相差フィルムの面内リターデーション値(Ro)及び厚さ方向のリターデーション値(Rt)は、偏光子保護フィルムとして用いる場合には、面内リターデーション値(Ro)は30〜100nmの範囲内であり、かつ厚さ方向のリターデーション値(Rt)は100〜300nmの範囲内であることを要するが、面内リターデーション値(Ro)は35〜65nmの範囲内であり、かつ厚さ方向のリターデーション値(Rt)は100〜180nmの範囲内であることが好ましい。
【0226】
また、Rtの変動や分布の幅は±50%未満であることが好ましく、±30%未満であることが好ましく、±20%未満であることが好ましい。更に±15%未満であることが好ましく、±10%未満であることが好ましく、±5%未満であることが好ましく、特に±1%未満であることが好ましい。最も好ましくはRtの変動がないことである。
【0227】
なお、リターデーション値Ro、Rtは以下の式によって求めることができる。
【0228】
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚さ(nm)、nxはフィルムの面内の最大の屈折率(遅相軸方向の屈折率ともいう)、nyはフィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率、nzは厚さ方向におけるフィルムの屈折率である。
【0229】
リターデーション値Ro、Rtは自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmで求めることができる。
【0230】
フィルムの物性は延伸温度によって大きく変わることが知られている。この傾向はフィルムのガラス転移温度(Tg)付近で、顕著にみられる。
【0231】
本発明者の検討の結果、位相差フィルムと偏光子の接着性は、延伸温度が樹脂のTg〜Tg+20(℃)である時が最も良好であることが分かった。一方で、Tgよりも高い温度で延伸すると位相差(リターデーション)の発現が不足することが分かった。位相差の発現性はTgよりも低い温度で延伸した方が良いが、延伸温度が低すぎると、延伸し難くなるため、フィルムの白濁や、延伸途中での破断などが発生するため、位相差フィルムとしては、延伸はTg−20〜Tg(℃)で行うことが好ましい。
【0232】
このため、偏光子密着性と位相差発現を両立する延伸温度の範囲は極めて狭く、Tgと同じにしなければ、所望の性能が得られないが、ピンポイントのため性能が安定しないということが分かった。
【0233】
この問題を解決するために検討した結果、位相差フィルムを三層の積層構造とし、表面層(以下スキン層とすることがある。)のガラス転移温度(Tgs)と、その内側の層(以下コア層とすることがある)のガラス転移温度(Tgc)を下記関係式(1)の関係を満たすように調節すると、偏光子密着性と位相差を両立する温度で延伸できることを見出した。
【0234】
関係式(1):Tgc−30(℃)≦Tgs(℃)≦Tgc−10(℃)
また、延伸倍率は30〜60(%)であることが好ましく、35〜50(%)であることがより好ましい。を大きくすると偏光子密着性が良化し、位相差発現も良好だが、延伸倍率が大きすぎると、フィルムの白濁や、延伸途中の破断が発生する。
【0235】
ガラス転移温度を変化させる方法は、セルロースエステルの置換度を変化させる方法、可塑剤や樹脂などの添加剤を加える方法などが上げられる。セルロースエステルの置換度を変化させる方法では、積層された層の界面での光の散乱、リサイクルした際の輝点異物の発生などがあるため、添加剤を加える方法の方が好ましい。
【0236】
二種類以上の樹脂を混合する時に、両者の樹脂のガラス転移温度が異なる場合、各々の樹脂のガラス転移温度が存在するため混合物のガラス転移温度は二つ以上存在するが、両者の樹脂が相溶したときは、各々の樹脂固有のガラス転移温度が消失し、1つのガラス転移温度となって相溶した樹脂のガラス転移温度となる。
【0237】
尚、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた。
【0238】
(その後の工程)
延伸後、偏光子保護フィルムの端部をスリッターにより製品となる幅にスリットして裁ち落とした後、エンボスリング及びバックロールよりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)を偏光子保護フィルム両端部に施し、巻取り機によって巻き取ることにより、偏光子保護フィルム(元巻き)中の貼り付きや、すり傷の発生を防止する。ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。
【0239】
なお、スリッターにより切除した偏光子保護フィルムの両端部は、原料として再利用してもよい。
【0240】
次に、偏光子保護フィルムの巻取り工程は、円筒形巻き偏光子保護フィルムの外周面とこれの直前の移動式搬送ロールの外周面との間の最短距離を一定に保持しながら偏光子保護フィルムを巻取りロールに巻き取るものである。かつ巻取りロールの手前には、偏光子保護フィルムの表面電位を除去又は低減する除電ブロア等の手段が設けられている。
【0241】
本発明の偏光子保護フィルムの製造に係る巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることができる。なお、偏光子保護フィルムの巻取り時の初期巻取り張力が90.2〜300.8N/mであることが好ましい。
【0242】
本発明の方法における偏光子保護フィルムの巻き取り工程では、温度20〜30℃、湿度20〜60%RHの環境条件にて、偏光子保護フィルムを巻き取ることが好ましい。巻き取り工程における温度が20〜30℃の範囲であれば、シワの発生がなく、偏光子保護フィルム巻品質劣化もない。また、偏光子保護フィルムの巻き取り工程における湿度が20〜60%RHであれば、吸湿による偏光子保護フィルム巻品質劣化も削減され、巻品質に優れ、貼り付き故障もなく、搬送性の劣化もない。
【0243】
偏光子保護フィルムをロール状に巻き取る際の巻きコアとしては、円筒上のコアであれはどのような材質のものであってもよいが、好ましくは中空プラスチックコアである。プラスチック材料としては加熱処理温度にも耐える耐熱性プラスチックであればどのようなものであってもよく、フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0244】
また、ガラス繊維等の充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。例えば、中空プラスチックコア:FRP製の外径6インチ(以下、1インチは2.54cmである。)、内径5インチの巻きコアが用いられる。
【0245】
本発明の偏光子保護フィルムの製造において、ロール長さは、生産性と運搬性を考慮すると、長さは10〜5000mが好ましく、より好ましくは50〜4500mである。
【0246】
このときの偏光子保護フィルムの幅は、偏光子の幅や製造ラインに適した幅を選択することができるが、0.5〜4.0m、好ましくは1.0〜3.0mの幅で偏光子保護フィルムを製造してロール状に巻き取ることが好ましい。
【0247】
本発明における偏光子保護フィルムの透明性を判断する指標としては、ヘイズ値(濁度)を用いる。特に屋外で用いられる液晶表示装置においては、明るい場所でも十分な輝度や高いコントラストが得られることが求められる為、ヘイズ値は0.5%以下であることが必要とされ、0.35%以下であることが更に好ましい。
【0248】
本発明の偏光子保護フィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは92%以上である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。
【0249】
また、製膜時のフィルム接触部(冷却ロール、カレンダーロール、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ロールなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることや、アクリル樹脂の屈折率を小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
【0250】
また、本発明の偏光子保護フィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断点伸度が30%以上であり、より好ましくは50%以上である。本発明においては、脆性の尺度として破断点伸度を用いている。脆性の尺度としては他に引裂き強度や折り曲げによる割れ易さなどが知られているが、引裂き強度は膜厚が厚いほど良く、折り曲げによる割れ易さは膜厚が薄いほど良いなど、偏光子保護フィルムの膜厚の影響が大きいため、本発明においては膜厚の影響を受けない破断点伸度を指標として用いている。破断点伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
【0251】
本発明の偏光子保護フィルムの膜厚に特に制限はないが、後述する偏光板保護フィルムに使用する場合は20〜200μmであることが好ましく、25〜100μmであることがより好ましく、30〜80μmであることが特に好ましい。
【0252】
なお、本発明の偏光子保護フィルムは、延伸後のフィルム幅が、1900mm以上であることが好ましい。
【0253】
また、流延後に剥離して乾燥されロール状に巻き取られた後、ハードコート層や反射防止層等の機能性薄膜が設けられてもよい。加工若しくは出荷されるまでの間、汚れや静電気によるゴミ付着等から製品を保護するために通常、包装加工がなされる。
【0254】
この包装材料については、上記目的が果たせれば特に限定されないが、フィルムからの残留溶媒の揮発を妨げないものが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、紙、各種不織布等が挙げられる。繊維がメッシュクロス状になったものは、より好ましく用いられる。
【0255】
<ロール状偏光板と枚葉状偏光板>
本発明の偏光子保護フィルムは、種々の態様の偏光板に用いることができるが、ポリビニルアルコール樹脂フィルムがヨウ素又は二色性染料により染色されてなる偏光子の少なくとも一方の面に、当該偏光子保護フィルムが備えられている態様のロール状偏光板に用いることが好ましい。
【0256】
なお、本願においては、ロール状に巻かれた状態で製造される偏光板を「ロール状偏光板」と呼び、そこから所定寸法に裁断されたものを「枚葉状偏光板」と呼ぶこととする。
【0257】
本発明に係る偏光板は、一般的な方法で作製することができる。本発明の偏光子保護フィルムの偏光子側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
【0258】
もう一方の面には、当該セルロースエステルフィルムを用いても、また他の偏光子保護フィルムを貼合することもできる。
【0259】
例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)も好ましく用いられる。
【0260】
液晶表示装置の表面側に用いられる偏光子保護フィルムには、防眩層あるいはクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することが好ましい。
【0261】
なお、偏光板の主たる構成要素である「偏光子」とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
【0262】
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
【0263】
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、鹸化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。
【0264】
中でも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。
【0265】
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能及び耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
【0266】
以上のようにして得られた偏光子は、通常、その両面又は片面に保護フィルムが貼合されて偏光板として使用される。貼合する際に用いられる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、中でもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。
【0267】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明に係るロール状偏光板ないし枚葉状偏光板を更に詳細に説明する。
【0268】
図1に、ロール状偏光板ないし枚葉状偏光板の層構成の一例を断面模式図で示す。
【0269】
図1に示す例では、偏光子1の片面に透明樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルム2が貼合され、偏光子1のもう片面には、偏光子保護フィルム3が貼合され、さらにその表面に外側粘着剤層6が設けられて、偏光板7が構成されている。そして、偏光子保護フィルム2の表面には剥離可能なプロテクトフィルム4が貼合され、外側粘着剤層6の表面にはセパレートフィルム5が貼合されて、ロール状偏光板ないし枚葉状偏光板8が構成されている。
【0270】
図1には、偏光子1の前記他面側に設けられる粘着剤層が一層の例を示したが、例えば、偏光子保護フィルム3は位相差機能付き偏光子保護フィルムであってもよく、また位相差機能付き偏光子保護フィルム3を二枚以上積層して、広帯域の円偏光板とすることもあり、その場合には、位相差フィルム同士も粘着剤層を介して貼合されることになるので、粘着剤層は二層以上となる。このような場合でも、最も外側の粘着剤層6の表面にセパレートフィルム5が貼合される。
【0271】
ロール状偏光板ないし枚葉状偏光板8において、偏光子保護フィルム2の外側のプロテクトフィルム4や、偏光子保護フィルム3の外側のセパレートフィルム5は、枚葉状偏光板8を検査するときや、枚葉状偏光板8を運送したり保管したりするときに、偏光板7や粘着剤層6を保護する目的で設けられる。
【0272】
すなわち、プロテクトフィルム4は、偏光板7の表面を保護する目的で設けられ、偏光板7を液晶セルに貼合する面と反対側になる。このプロテクトフィルム4は、偏光板7を液晶セルに貼り合わせた後、剥離除去される。
【0273】
また、セパレートフィルム5は、粘着剤層6をカバーする目的でその上に設けられ、この粘着剤層6は、枚葉状偏光板8を液晶セルや他の光学部材に貼合する面側となる。そして、その上に設けられたセパレートフィルム5は、液晶セルや他の光学部材へ貼合する直前に剥離除去される。
【0274】
プロテクトフィルム4は通常、透明な基材樹脂フィルムの表面に粘着剤層を設けたもので構成される。また、セパレートフィルム5は通常、離型処理が施された透明樹脂フィルムで構成され、その離型処理面が粘着剤層6に貼り合わされる。プロテクトフィルム4やセパレートフィルム5を構成する樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの如きポリエステルからなるフィルムなどを用いることができる。
【0275】
本発明では、上記のプロテクトフィルム4及びセパレートフィルム5がそれぞれ貼合された偏光板をロール状に巻き取るとき、図2に一部を拡大して表す断面模式図で示すように、プロテクトフィルム4が内側、セパレートフィルム5が外側となるようにして巻き取る。
【0276】
<レーザー切断>
上記ロール状偏光板を液晶パネルに貼合し、レーザーで切断して液晶表示装置を製造する場合、用いられるレーザーとしては、例えば、COレーザー、YAGレーザー、UVレーザー等があげられ、この中でも、厚さ範囲に適用性が高く、割れならびに印欠けが起こらないという点からCOレーザーが好ましい。
【0277】
前記レーザー照射において、出力及び速度は制限されず、一回の照射で切断しても、複数の照射で切断してもよい。前記レーザー照射の出力は、例えば、10〜800Wであって、1回の照射で切断する場合、100〜350Wが好ましく、2回の照射で切断する場合には、例えば、50〜200Wが好ましい。
【0278】
<液晶表示装置>
本発明の偏光子保護フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができるが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。本発明の偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
【0279】
本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCD又はTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型(FFS方式も含む)等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特にVA型の画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持される。
【実施例】
【0280】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0281】
実施例1
(アクリル共重合体A1〜A36の合成)
攪拌機、二個の滴下ロート、ガス導入管及び温度計の付いたガラスフラスコに、表1記載の種類及び比率のモノマーX、Y、及びZの混合液40g、連鎖移動剤のメルカプトプロピオン酸2g及びトルエン30gを仕込み、90℃に昇温した。その後、一方の滴下ロートから、表1記載の種類及び比率のモノマーX、Y、及びZ混合液60gを3時間かけて滴下すると共に、同時にもう一方のロートからトルエン14gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル0.4gを3時間かけて滴下した。その後さらに、トルエン56gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル0.6gを2時間かけて滴下した後、さらに2時間反応を継続させ、ポリマーXを得た。得られたポリマーXは常温で固体であった。次いで、連鎖移動剤のメルカプトプロピオン酸の添加量、アゾビスイソブチロニトリルの添加速度を変更して分子量の異なるポリマーXを作製した。当該ポリマーXの重量平均分子量は下記測定法により表1に示した。
【0282】
(重量平均分子量)
重合体の重量平均分子量は、前記説明したGPCのポリスチレン換算により求めた。なお、本発明に係るアクリル共重合体A1〜A36の単量体構成等は表1に示した。表1に記載した各単量体を示す略記号の意義は下記の通りである。
AA:アクリル酸
ACMO:アクリロイルモルホリン
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
DMMA:N,N−ジメチルメタクリルアミド
GLM:グリセリンモノメタクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
HPMA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
MA:メタクリル酸
MAA:アクリル酸メチル
MMA:メタクリル酸メチル
PS:スチレン
N−VP:N−ビニルピロリドン
【0283】
【表1】

【0284】
本発明に係るセルロースエステル樹脂(B)は、表2に示した。
【0285】
添加剤Cとしては以下に示した。
C1:芳香族末端エステル系可塑剤例示化合物(14)
C2:糖エステル化合物例示化合物(3)
C3:多価アルコールエステル例示化合物(16)
C4:下記トリアジン化合物
【0286】
【化1】

【0287】
【表2】

【0288】
(ドープ液の調製)
アクリル樹脂(A)A8 95質量部
セルローエステル樹脂(B)B2 5質量部
酸化ケイ素微粒子(アエロジルR972V(日本アエロジル株式会社製))
0.1質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
(光学フィルム1の作製)
日本精線(株)製のファインメットNFで上記ドープ液を作製し次いで濾過し、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルのウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターで幅手方向に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は10%であった。テンターで延伸後130℃で5分間緩和を行った後、120℃、130℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、光学フィルム1を得た。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.01倍であった。表2記載のフィルムの残留溶剤量は各々0.1%であり、膜厚は40μm、巻数は4000mであった。
【0289】
次いで、アクリル樹脂の種類、セルロースエステル樹脂の種類、添加量、添加剤の種類、添加量を表4及び6のように代えた以外は、光学フィルム1と同様にして光学フィルム2〜79を作製した。
【0290】
実施例2
作製した偏光子保護フィルムを用いて図1に示す層構成の偏光板をロール状で作製した。図1は製造される偏光板ロールないし偏光板製品の層構成の一例を示す断面模式図である。また、偏光板ロールを巻き取る状態を、一部を拡大して示す断面模式図を図2に示した。
【0291】
プロテクトフィルム5は、市販品である藤森工業(株)製“AS3−304”のものを用いた。(“ ”内は商品名)。プロテクトフィルム5は、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にアクリル系粘着剤層が形成されたものである。
【0292】
ヨウ素が吸着配向しているポリビニルアルコールからなる厚さ23μmの偏光子1の片面に、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤を介して、45℃の1.5mol/l濃度の水酸化カリウム水溶液中で30秒間処理し、水洗した後、100℃で10分間乾燥した厚さ80μmの偏光子保護フィルム2(コニカミノルタタックKC8UX(コニカミノルタオプト(株)製)を貼合し、偏光子1の他面にも同様に、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤を介して、45℃の1.5mol/l濃度の水酸化カリウム水溶液中で30秒間処理し、水洗した後、100℃で10分間乾燥した厚さ40μmの偏光子保護フィルム3(光学フィルム1)を貼合した。さらに、偏光子保護フィルム3の表面には、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートからなるセパレートフィルム7の上に厚さ25μmのアクリル系粘着剤層6が形成されたシート状粘着剤をその粘着剤層6側で貼合し、偏光子保護層2側には一般のプロテクトフィルム5を貼合して、図2に示す層構成の偏光板ロール8を作製した。なお、この時、偏光子の透過軸と偏光子保護フィルム3の遅相軸は平行になるように貼合を行った。
【0293】
次いで、偏光子保護フィルム3の種類、偏光子保護フィルム3のケン化処理条件を表4のように代えた以外は、同様にして偏光板ロール8を作製した。
【0294】
なお、比較例としては、偏光子保護フィルム3の代わりに国際公開第2009/047924号 実施例1記載の光学フィルム、ケン化処理条件を表3のように代えた以外は、同様にして偏光板ロール8を作製した。
【0295】
【表3】

【0296】
(偏光板ロールの評価)
得られた偏光板ロールの巻き芯と巻き外から一部偏光板を切り出し、下記方法で評価を行った。評価の結果を表4〜7に示す。なお、偏光板の切り出し部位については、以下のように切り出した。
A:巻き芯部分より1000m未満
B:巻き芯部分より1000m以上2000m未満
C:巻き芯部分より2000m以上
(密着性の評価)
偏光板ロールより切り出した偏光板を、手で剥離性を測定し剥離できたかどうかで確認した。
【0297】
密着性の評価基準:
○:貼合されており、手で剥離できない
△:端部のみが剥がれ、それ以上剥がすと部材が破壊される
×:容易に手で剥離できてしまう。
【0298】
(偏光板ロールの巻き芯と巻き外でのムラの評価)
垂直配向方式液晶表示装置である、ソニー製30インチ液晶テレビKDL−32S1000の予め貼合されていた偏光板を剥がし、ここに本発明の実施例の偏光板ロールから切り出した偏光板を、偏光方向を合わせ張り付けた液晶パネルを作製し、複数(10人)の評価者で目視にて、正面及び斜めから見たときの白っぽく見えるムラを観察した。なお、偏光板の切り出し部位と偏光板を構成する各フィルムの種類は表4及び6に示した。
【0299】
偏光板のムラの評価基準:
○:ムラが全く見えず
△:かすかにムラが認められる場合あるが、製品としては使えるレベル
×:多くの評価者(5人以上)で、ムラが認められる。
【0300】
(液晶表示装置からの偏光板リワーク処理の評価)
液晶表示装置に用いられるガラス板に本発明の実施例の偏光板ロールから切り出した偏光板を合わせ張り付けたガラスパネルを作製し、リワーク処理のため、張り付けた偏光板を再度剥離する処理を行い、剥離できたかどうか確認した。なお、偏光板の切り出し部位はBの部位を使用し、偏光板を構成する各フィルムの種類は表4及び6に示した。
【0301】
剥離評価基準:
○:偏光板にクラック又は、破壊、偏光子と偏光子保護フィルムとの剥離が生じることなくガラス板より剥離できる
△:偏光板の一部にクラック又は、一部フィルムが破壊、一部偏光子と偏光子保護フィルムとの剥離が生じる
×:偏光板にクラック、又は、偏光板が破壊、偏光子と偏光子保護フィルムとの剥離が生じる。
【0302】
(視野角変動)
視野角特性の評価にはELDIM社製EZ−contrastを用い黒表示及び白表示時の透過光量を測定した。視野角の評価はコントラスト=(白表示時の透過光量)/(黒表示時の透過光量)を算出し評価を行った。
【0303】
視野角機能の耐久性の評価は60℃、90%RH条件で500h処理を行った前後で視野角特性を測定しコントラスト10の視野角を示す角度の変化を観察した。なお、偏光板の切り出し部位はBの部位を使用し、偏光板を構成する各フィルムの種類は表4及び6に示した。
【0304】
評価基準:
○:上下左右とも変化なし
△:上下左右いずれかの方向に2°以上、5°未満の視野角変化あり
×:上下左右いずれかの方向に5°以上の視野角変化あり。
【0305】
(色味の変化)
上記作製した液晶表示装置を、23℃、55%RHの環境でディスプレイを黒表示にし、斜め45°の角度から観察した。続いて上記偏光板を60℃、90%RHで1000時間処理したものを同様に観察し、色変化の有無を複数(10人)の評価者で目視にて確認した。なお、偏光板の切り出し部位はBの部位を使用し、偏光板を構成する各フィルムの種類は表4及び6に示した。
【0306】
評価基準:
○:色変化が全くない
△:色変化が僅かに認められる場合あるが、製品としては使えるレベル
×:多くの評価者(5人以上)で、色変化が大きいと認められる
以上の評価結果を表4〜7に示す。
【0307】
【表4】

【0308】
【表5】

【0309】
【表6】

【0310】
【表7】

【0311】
表4〜7に示した結果から、偏光板ロールを製造するにあたり、ロールの巻き芯と巻き外での偏光子のムラを抑制し、かつ弱いケン化条件であっても偏光子との密着性に優れ、さらにはケン化処理することなく、偏光子との密着性に優れ、偏光板のリワーク処理性、液晶表示装置に用いた場合にも優れた表示安定性を有する偏光子保護フィルムを提供することができる。また、当該偏光子保護フィルムが備えられたロール状偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0312】
1 偏光子
2 偏光子保護フィルム1
3 偏光子保護フィルム2
4 プロテクトフィルム
5 セパレートフィルム
6 粘着剤層
7 偏光板
8 ロール状偏光板ロール又は枚葉状偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)とを含有する偏光子保護フィルムであって、下記要件(1)〜(4)の全てを満たすことを特徴とする偏光子保護フィルム。
(1)前記アクリル樹脂(A)と前記セルロースエステル樹脂(B)の質量をそれぞれAm及びBmとしたとき、質量比(Am/Bm)が、50/50〜95/5の範囲内である。
(2)前記アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が、5000〜1000000の範囲内である。
(3)前記アクリル樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される。
一般式(1):−(X)−(Y)−(Z)
(但し、Xは共重合可能なモノマー単位を、YはXと共重合可能なモノマー単位を、ZはX及びZのいずれかと共重合可能なモノマー単位を表し、Y及びZは、それぞれの単位構造中に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基を有する。l、m、及びnは、質量分率でありl+m+n=100とする。)
(4)23≦{(m+n)/(l+m+n)}×100≦60としたとき、前記アクリル樹脂(A)の質量Amが、下記の関係を満たす。
21≦Am×{(m+n)/(l+m+n)}≦60
【請求項2】
前記セルロースエステル樹脂(B)のアシル基平均置換度が2.0〜3.0の範囲内であり、かつ重量平均分子量(Mw)が30000〜300000の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項3】
前記Y及びZが、それぞれ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、又はN−ビニルピロリドンに由来するモノマー単位であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項4】
ポリビニルアルコール樹脂フィルムがヨウ素又は二色性染料により染色されてなる偏光子の少なくとも一方の面に、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の偏光子保護フィルムが備えられた偏光板が長尺方向にロール状に巻き取られていることを特徴とするロール状偏光板。
【請求項5】
請求項4に記載のロール状偏光板を液晶パネルに貼合し、レーザーで切断して製造されたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−47862(P2012−47862A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188015(P2010−188015)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】