説明

偏光板およびその製造方法ならびに液晶表示装置

【課題】低ヘイズの偏光板を低い製造コストで製造できる偏光板の製造方法の提供。
【解決手段】全アシル基置換度2.7〜3.0であるセルロースアシレートを含む第一のセルロースアシレートフィルムをケン化処理する工程と、アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む層を少なくとも一方の表面に有する第二のセルロースアシレートフィルムをTg−20℃以上の温度で加熱する工程と、前記第二のセルロースアシレートフィルムの全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む層を前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化条件と同じ条件でケン化処理する工程と、前記第一のセルロースアシレートフィルムの前記ケン化処理面と前記第二のセルロースアシレートフィルムの前記ケン化処理面とで偏光子を挟持する工程を含む偏光板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板およびその製造方法ならびに液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置のTV用途が進行し、画面サイズの大型化に伴い高画質化と低価格化が益々求められている。また、液晶表示装置の視野角や色味変化改良のために、特定のレターデーション値を有する位相差フィルムおよびその組み合わせが用いられている。
【0003】
このような位相差フィルムの主原料としては、セルロースアシレートが有利であることや、フィルムの光学特性がセルロースアシレートのアシル置換度に依存することが知られている。特に、低置換度のセルロースアシレートはその固有複屈折が高いことから、アシル置換度を低減することにより、例えばVA用位相差フィルムとして適切な高い光学発現性を実現することが可能であると考えられている。
一方で、偏光板の偏光子を2枚のセルロースアシレートフィルムで挟持する場合、高い光学発現性を実現することが可能である上記の低アシル置換度のセルロースアシレートフィルムを偏光子の一方の表面に配置するとともに、高い光学特性を必要としない偏光子のもう一方の表面には製造適性上有利な高アシル置換度のセルロースアシレートフィルムフィルムを配置することが生産性の観点から求められている。
このような構成の偏光板を製造するときの問題として、通常の方法で製造したアシル置換度を低減したセルロースアシレートフィルムは、偏光子との密着性を付与するための最適なケン化条件が高置換度セルロースアシレートフィルムと異なるため、製造設備の複雑化や大型化または新たに製造設備を設置する必要が生じて製造コストや製造設備維持コストが高まってしまうといった問題があった。
【0004】
これに対し、特許文献1には、低アシル置換度の層の両面に高アシル置換度の層を設けることにより、高置換度セルロースアシレートフィルムとケン化条件を共通にしても、良好な表示性能を有する偏光板を作成できることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2および3には、高置換度セルロースアシレートフィルムのケン化条件から低置換度セルロースアセテートのケン化条件を変更し良好な表示性能を有する偏光板を作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−58331号公報
【特許文献2】WO2010/125997A1
【特許文献3】特開2010−215733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、特許文献1のように、低アシル置換度の層よりも支持体側に高アシル置換度の層を設けた場合、高アシル置換度の層の含有率が低アシル置換度の層に対して増加してしまうと、フィルムを再利用しようとすると相溶せずに得られるフィルムが白化してしまいフィルムの回収性に懸念があることがわかった。また高アシル置換度の層を薄くすると、層界面が乱れ、支持体側の層を均一に形成させることが困難となり、面状が悪化し歩留まりが悪化することがわかった。
また、特許文献2および3に記載の方法では、フィルムによってケン化条件を変更することになり、装置の複雑化や大型化などによりコストが上昇することがわかった。
本発明者が上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、置換度の高い第一のセルロースアシレートフィルムを偏光板保護フィルムとして偏光板の一方の面に貼合し、他方の面に置換度の低い第二のセルロースアシレートフィルムを貼合した偏光板の製造において、偏光板の製造コストを低減しつつそれぞれのセルロースアシレートフィルムの密着性を得るために置換度の高い第一のセルロースアシレートフィルムに必要なケン化条件に合わせてケン化したところ、それにより第二のセルロースアシレートフィルムの表面ヘイズが上昇する問題が生じることがわかった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、低アシル置換度の層を表層に有するセルロースアシレートフィルムを高アシル置換度フィルムと同一ケン化条件でケン化を実施でき、低ヘイズの偏光板を低い製造コストで製造できる偏光板の製造方法を提供することである。また、本発明は該偏光板の製造方法を用いて製造した偏光板および該偏光板を有する液晶表示装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、置換度の高い第一のセルロースアシレートフィルムを偏光板保護フィルムとして偏光板の一方の面に貼合し、他方の面に置換度の低い第二のセルロースアシレートフィルムを貼合した偏光板において偏光板の製造コストを低減し、それぞれのセルロースアシレートフィルムの密着性を得るために置換度の高い第一のセルロースアシレートフィルムに必要なケン化条件に合わせてケン化したところ、それにより第二のセルロースアシレートフィルムの表面ヘイズが上昇する問題が生じることがわかった。そこで、さらなる検討をすすめた結果、第二のセルロースアシレートフィルムをTg−20℃で加熱すると、第一のセルロースアシレートフィルムと第二のセルロースアシレートフィルムのケン化条件を同じにしても、第二のセルロースアシレートフィルムの表面ヘイズが上昇せず、偏光板の加工に必要な密着性も維持できることを見出し、以下に記載する本発明の完成に至った。
【0010】
[1] 全アシル基置換度2.7〜3.0であるセルロースアシレートを含む第一のセルロースアシレートフィルムをケン化処理する工程と、アシル基置換度が1.5〜2.6であるアシレートを含む層を少なくとも一方の表面に有する第二のセルロースアシレートフィルムをTg−20℃以上の温度で加熱する工程と(但し、Tgは第二のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(単位:℃)を表す)、前記第二のセルロースアシレートフィルムの全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む層を前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化条件と同じ条件でケン化処理する工程と、前記第一のセルロースアシレートフィルムの前記ケン化処理面と前記第二のセルロースアシレートフィルムの前記ケン化処理面とで偏光子を挟持する工程を含むことを特徴とする偏光板の製造方法。
[2] [1]に記載の偏光板の製造方法は、全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートと溶媒を含む溶液を支持体上に流延する工程と、前記流延した溶液を支持体上で乾燥させて、支持体から剥離して前記第二のセルロースアシレートフィルムを形成する工程を含むことが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の偏光板の製造方法は、支持体上に、全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートと溶媒を含むバンド層用溶液と、セルロースアシレートおよび溶媒を含むコア層用溶液と、全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートと溶媒を含むエア層用溶液とをこの順で同時または逐次で多層流延する工程と、前記多層流延した溶液を支持体上で乾燥させて、支持体から剥離して前記第二のセルロースアシレートフィルムを形成する工程を特徴とする。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法は、前記第二のセルロースアシレートフィルムの前記加熱工程を、残留溶媒量を10質量%以下に制御した後で開始することが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法は、前記第二のセルロースアシレートフィルムを延伸する工程を含むことが好ましい。
[6] [5]に記載の偏光板の製造方法は、前記加熱工程の前に、前記第二のセルロースアシレートフィルムを延伸する工程を含むことが好ましい。
[7] [5]または[6]に記載の偏光板の製造方法は、前記加熱工程を、前記第二のセルロースアシレートフィルムを延伸しながら行うことが好ましい。
[8] [1]〜[7]のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法は、前記第二のセルロースアシレートフィルムの波長590nmで測定した面内方向のレターデーション値Reが30nm〜200nmであり、波長590nmで測定した厚み方向のレターデーション値Rthが70nm〜300nmであるとことが好ましい。
[9] [1]〜[8]のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法は、前記第二のセルロースアシレートフィルムが、下記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を前記セルロースアシレートに対して0.01質量%〜20質量%含有することが好ましい。
(1)多価アルコールと多価カルボン酸がエステル結合を形成して結合した構造を含む。(2)該化合物を形成する多価アルコールと多価カルボン酸の分子数の合計が3以上である。
(3)多価カルボン酸由来の無置換のカルボキシル基を少なくとも1つ有する。
[10] [9]に記載の偏光板の製造方法は、前記第二のセルロースアシレートフィルムが、流延時に支持体に接していた層を形成する溶液にのみ前記有機酸を含有することが好ましい。
[11] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法は、前記ケン化処理の条件が下記式(A−1)〜(A−3)を満たす条件であることが好ましい。
式(A−1):18℃≦T≦90℃
(式(A−1)中、Tはケン化処理温度(単位:℃)を表す。)
式(A−2):0.5分≦S≦5分
(式(A−2)中、Sはケン化処理時間(単位:分)を表す。)
式(A−3):1.0N≦D≦5.0N
(式(A−3)中、Dはケン化溶液のアルカリ規定度(単位:N)を表す。)
[12] [1]〜[11]のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法は、前記ケン化処理の条件が、下記条件(B−1)または(B−2)を満たすことが好ましい。
条件(B−1):1N≦D<3Nの場合、45℃≦T≦90℃を満たす。
条件(B−2):3N≦D≦5Nの場合、30℃≦T≦60℃を満たす。
(条件(B−1)および(B−2)中、Dはケン化溶液のアルカリ規定度(単位:N)を表し、Tはケン化処理温度(単位:℃)を表す。)
[13] [1]〜[12]のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法で製造されたことを特徴とする偏光板。
[14] 全アシル基置換度2.7〜3.0であるセルロースアシレートを含む第一のセルロースアシレートフィルムと、セルロースアシレートを含むコア層と、該コア層の両面に配置された全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む表層とを有し、かつ、Tg−20℃以上の温度で加熱されてなる第二のセルロースアシレートフィルムを含み(但し、Tgは第二のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(単位:℃)を表す)、前記第一のセルロースアシレートフィルムおよび前記第二のセルロースアシレートフィルムの全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む表層がケン化されてなり、前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化条件と第二のセルロースアシレートフィルムのケン化条件が同じであり、前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化処理面と前記第二のセルロースアシレートフィルムの前記ケン化処理面とで偏光子が挟持されたことを特徴とする偏光板。
[15] [13]または[14]に記載の偏光板を少なくとも1枚含むことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の偏光板の製造方法によれば、低ヘイズの偏光板を低い製造コストで製造できる偏光板の製造を提供することができる。さらに本発明の偏光板の製造方法によれば、該偏光板の製造方法で製造された表面ヘイズの低い偏光板を提供することができる。また、本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、表示性能が良好な液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の液晶表示装置の一例の概略断面図である。
【図2】共流延用ダイを用いて同時共流延により3層構造の積層セルロースアシレートフィルムを流涎するときの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の偏光板やその製造方法、それに用いる添加剤などについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[偏光板およびその製造方法]
本発明の偏光板の製造方法は、全アシル基置換度2.7〜3.0であるセルロースアシレートを含む第一のセルロースアシレートフィルムをケン化処理する工程と、アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む層を少なくとも一方の表面に有する第二のセルロースアシレートフィルムをTg−20℃以上の温度で加熱する工程と、前記第二のセルロースアシレートフィルムの全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む層を前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化条件と同じ条件でケン化処理する工程と、前記第一のセルロースアシレートフィルムの前記ケン化処理面と前記第二のセルロースアシレートフィルムの前記ケン化処理面とで偏光子を挟持する工程を含むことを特徴とする。
本発明の偏光板は、本発明の偏光板の製造方法で製造されたことを特徴とする。また、本発明の偏光板は、全アシル基置換度2.7〜3.0であるセルロースアシレートを含む第一のセルロースアシレートフィルムと、セルロースアシレートを含むコア層と、該コア層の両面に配置された全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む表層とを有し、かつ、Tg−20℃以上の温度で加熱されてなる第二のセルロースアシレートフィルムを含み(但し、Tgは第二のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(単位:℃)を表す)、前記第一のセルロースアシレートフィルムおよび前記第二のセルロースアシレートフィルムの全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む表層がケン化されてなり、前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化条件と第二のセルロースアシレートフィルムのケン化条件が同じであり、前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化処理面と前記第二のセルロースアシレートフィルムの前記ケン化処理面とで偏光子が挟持されたことを特徴とする。
以下、本発明の用いることができるセルロースアシレートフィルムとその製造方法およびそれに用いられる添加剤などについて説明する。
【0015】
<第一のセルロースアシレートフィルム>
前記第一のセルロースアシレートフィルムは、全アシル基置換度2.7〜3.0であるセルロースアシレートを含む。前記セルロースアシレートとしては、全アシル基置換度が2.7〜3.0であること以外は後述する第二のセルロースアシレートフィルムに用いられるセルロースアシレートを好ましく用いることができる。また、前記第一のセルロースアシレートフィルムに用いることができる添加剤としては特に制限はなく、公知の偏光板保護フィルムとして用いられているセルロースアシレートフィルムの添加剤を用いることができる。
前記第一のセルロースアシレートフィルムの構成としては特に制限はないが、単層フィルムであることが好ましい。
前記第一のセルロースアシレートフィルムの製造方法としては特に制限はなく、後述する第二のセルロースアシレートフィルムを溶液流延製膜する方法と同様の方法を好ましく用いることができる。前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化処理方法についても制限はなく、従来公知の全アシル基置換度2.7〜3.0であるセルロースアシレートを含むフィルムのケン化処理方法用いることができる。
このような第一のセルロースアシレートフィルムの入手方法としては特に制限はなく、公知の偏光板保護フィルムとして用いられているセルロースアシレートフィルムを適宜製造または商業的に入手して用いることができる。商業的に入手する場合、例えば、フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製などを前記第一のセルロースアシレートフィルムとして好ましく用いることができる。
【0016】
<第二のセルロースアシレートフィルム>
本発明に用いられる前記第二のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートを含むコア層と、該コア層の両面に配置された全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む表層とを有し、かつ、Tg−20℃以上の温度で加熱されてなる第二のセルロースアシレートフィルムを含むことを特徴とする。
但し、Tgは第二のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(単位:℃)を表し、残留揮発分0%のときの第二のセルロースアシレートフィルムの動的粘弾性tanδを測定した際にtanδがピークを示す温度を意味する。
以下、第二のセルロースアシレートフィルムの好ましい態様を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
【0017】
−セルロースアシレート−
アシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0018】
本発明に用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。本発明のフィルムは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましく、炭素数2〜4のアシル基としてはプロピオニル基またはブチリル基が好ましい。これらのフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低くろ過性のよい溶液の作成が可能となる。
【0019】
まず、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がアシル化している割合(各位における100%のアシル化は置換度1)の合計を意味する。
【0020】
本発明において、第二のセルロースアシレートフィルムでは、前記セルロースアシレートの総アシル置換度が1.5〜2.6であり、1.6〜2.6であることが好ましく、2.0〜2.5であることがより好ましい。低置換度のセルロースアシレートは、安価な割に光学的特性に優れている。低置換度のセルロースアシレートフィルムを用いて偏光板を加工するとき、ケン化条件を高置換度のセルロースアシレートフィルムとは変更する必要があるため、従来は偏光板の加工にあまり用いられていなかった。本発明では、特定の温度範囲で得られた第二にセルロースアシレートフィルムを加熱して製膜することにより、このような安価なセルロースアシレートを高置換度のセルロースアシレートフィルムとケン化条件を同一として偏光板の製造に用いることができる。
前記セルロースアシレートの90質量%以上が上記総アシル置換度の範囲を満たすことがより好ましく、95質量%以上が上記総アシル置換度の範囲を満たすことが特に好ましく、96質量%以上が上記総アシル置換度の範囲を満たすことがさらに好ましく、全てのセルロースアシレートが上記層アシル置換度の範囲を満たすことがより特に好ましい。
【0021】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(アシル基が炭素原子数2〜4である場合)であり、より特に好ましくはアセチル基(セルロースアシレートが、セルロースアセテートである場合)である。
【0022】
セルロ−スのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
【0023】
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
【0024】
最も一般的なセルロ−スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
【0025】
本発明に用いるセルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
【0026】
<剥離促進剤>
((1)〜(3)の要件を満たす有機酸)
前記第二のセルロースアシレートフィルムは、下記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を該樹脂に対して0.01質量%〜20質量%含有することが好ましい。
(1)多価アルコールと多価カルボン酸がエステル結合を形成して結合した構造を含む。
(2)該化合物を形成する多価アルコールと多価カルボン酸の分子数の合計が3以上である。
(3)多価カルボン酸由来の無置換のカルボキシル基を少なくとも1つ有する。
【0027】
前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸において、無置換のカルボキシル基により溶液製膜設備(ドープを流涎するときの金属支持体)からの剥離性を改善することができ、本発明では前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を剥離促進剤として用いることができる。
さらに、無置換のカルボキシル基が支持体の金属表面に付着し、多価アルコール部分あるいはこれに置換した疎水性基部分が支持体の金属表面を酸素等の酸化剤からブロックすることにより、前記多価アルコール部分あるいはこれに置換した疎水性基部分を含まない有機酸に比べて、金属の腐食を防止することができる。
以下、前記第二のセルロースアシレートフィルムに剥離促進剤として用いることができる前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸と、その他に併用してもよいその他の剥離促進剤について説明する。
【0028】
前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸に用いられる多価カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸が好ましい。
前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸中、多価カルボン酸の分子数は1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることが特に好ましい。
【0029】
また、前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸に用いられる多価アルコールとしては、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール、グリセリン等を挙げることができる。その中でも、グリセリンが好ましい。
前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸中、多価アルコールの分子数は1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることが特に好ましい。
【0030】
前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸は、該有機酸を構成する多価アルコールと多価カルボン酸に加えて、さらに炭素数が4以上の置換基を有する一価の酸が該多価アルコールの一部のヒドロキシル基とエステル結合を形成した構造を有してもよい。前記炭素数が4以上の置換基を有する一価の酸の具体例を以下に挙げる。なお、前記炭素数が4以上の置換基を有する一価の酸における置換基とは、前記炭素数が4以上の置換基を有する一価の酸をRCOOHと表したときにおけるRを意味する。
《脂肪酸》
カプロン酸、ヘプチル酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸、ウンデカン酸。
《アルキル硫酸》
ミリスチル硫酸、セチル硫酸、オレイル硫酸。
《アルキルベンゼンスルフォン酸》
ドデシルベンゼンスルフォン酸、ペンタデシルベンゼンスルフォン酸。
《アルキルナフタレンスルフォン酸》
セスキブチルナフタレンスルフォン酸、ジイソブチルナフタレンスルフォン酸。
これらの中でも、脂肪酸である炭素数が4以上の置換基を有する一価の酸が好ましく、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸がより好ましく、オレイン酸が特に好ましい。
前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸中、炭素数が4以上の置換基を有する一価の酸の分子数は0〜4であることが好ましく、0〜3であることがより好ましく、0〜2であることが特に好ましい。
【0031】
前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸は、該化合物を形成する多価アルコールと多価カルボン酸の分子数の合計が3以上であり、3〜30であることが好ましく、3〜20であることがより好ましい。
【0032】
前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸中、多価カルボン酸、多価アルコールおよび炭素数が4以上の置換基を有する一価の酸の割合は特に制限はなく、有機酸中に2以上の無置換のヒドロキシル基が残っていてもよく、無置換のヒドロキシル基が残っていてもよい。
前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸は、多価カルボン酸由来の無置換のカルボキシル基を少なくとも1つ有し、多価カルボン酸由来の無置換のカルボキシル基を1〜40有することが好ましく、1〜30有することがより好ましい。
【0033】
前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸は、単独で用いてもよく、複数の混合物として用いてもよい。なお、前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸は場合により電離していてもよく、場合により任意の金属イオンなどと塩を形成していてもよい。
【0034】
以下に本発明に用いられる前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸の好ましい化合物例を示す。
以下のような組成からなる有機酸(有機酸の部分縮合体)が好ましい。なお、以下のような組成からなる有機酸は、例えば、縮合体A−2は理研ビタミン社製ポエムK−37Vなどを用いて調製することができる。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
前記第二のセルロースアシレートフィルムに含まれる前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸の添加量は、前記樹脂に対して0.01質量%〜20質量%の割合であり、0.05質量%〜10質量%であることが特に好ましく、0.1質量%〜5質量%であることがより特に好ましい。なお、前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸の添加量は、前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸が混合物である場合は、全ての前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸の合計量を意味する。
添加量が0.01%以上であれば偏光子耐久性改良効果および剥離性改良効果が十分となる。
なお、0.001〜0.01%程度の添加量でも、流延支持体の剥離部位冷却等の剥離性改善技術との組み合わせることにより、剥離性の向上が期待できる。
また、20質量%以下の添加量であれば、高温高湿経時において有機酸がブリードアウトし難く、偏光板の直交透過率が上昇しにくく、好ましい。
【0040】
前記第二のセルロースアシレートフィルム内における、前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸の分布については特に制限はない。
前記第二のセルロースアシレートフィルムは、一方のフィルム表面から深さ5μmの領域における前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸の濃度と、反対側のフィルム表面から深さ5μmまでの領域における前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸の濃度が、下記式(4)の関係を満たすことが、前記樹脂の分子量の低下を改善する観点から、好ましい。
式(4)
1.2≦(有機酸の濃度が高い側のフィルム表面における表面から深さ5μmまでの領域の有機酸の平均濃度)/(有機酸の濃度が低い側のフィルム表面における表面から深さ5μmまでの領域の有機酸の平均濃度)≦5.0
前記不等式(4)の下限値は、1.5であることがより好ましく、2.0であることが特に好ましい。前記不等式(4)の上限値は、4.5であることがより好ましく、4.0であることが特に好ましい。
【0041】
(その他の剥離促進剤)
前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸に加え、前記第二のセルロースアシレートフィルムに公知の剥離促進剤を添加してもよい。前記公知の剥離促進剤としては、例えば特開2006−45497号公報の段落番号0048〜0069に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0042】
前記剥離促進剤は、有機酸、多価カルボン酸エステル、界面活性剤またはキレート剤であることが好ましい。
多価カルボン酸エステルとしては、特開2006−45497号公報の段落番号0049に記載の化合物を好ましく用いることができる。
前記界面活性剤としては、特開2006−45497号公報の段落番号0050〜0051に記載の化合物を好ましく用いることができる。
キレート剤は、鉄イオンなど金属イオンやカルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンなどの多価イオンを配位(キレート)できる化合物であり、前記キレート剤としては、特公平6−8956号、特開平11−190892号、特開2000−18038号、特開2010−158640号、特開2006−328203、特開2005―68246、特開2006−306969の公報または明細書に記載の化合物を用いることができる。
前記第二のセルロースアシレートフィルムに含まれる全ての剥離促進剤の合計添加量は、前記樹脂に対して0.01質量%(100ppm)〜20質量%(200000ppm)の割合が好ましく、0.01質量%(100ppm)〜15質量%(150000ppm)であることがより好ましく、0.01質量%(100ppm)〜10質量%(100000ppm)であることが特に好ましく、0.03質量%(300ppm)〜10質量%(100000ppm)であることが特により好ましく、0.1質量%(1000ppm)〜5質量%(50000ppm)であることがさらにより特に好ましい。
【0043】
<その他の添加剤>
前記第二のセルロースアシレートフィルム中には、前記剥離促進剤以外の添加剤として、重縮合ポリマー、レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤);フタル酸エステル、リン酸エステルなどの可塑剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;マット剤などの添加剤を加えることもできる。
【0044】
(重縮合ポリマー)
前記第二のセルロースアシレートフィルムは、ヘイズ低減の観点から重縮合ポリマー(以下、重縮合エステル化合物とも言う)を含んでいてもよい。
【0045】
前記重縮合ポリマーとしては、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の高分子量添加剤を広く採用することができる。添加剤の含量は、セルロース系樹脂に対して、1〜35質量%であることが好ましく、4〜30質量%であることがより好ましく10〜25質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
前記第二のセルロースアシレートフィルムに重縮合ポリマーとして用いられる高分子量添加剤は、その化合物中に繰り返し単位を有するものであり、数平均分子量が600〜10000のものが好ましい。高分子量添加剤は、溶液流延法において、溶媒の揮発速度を速める機能や、残留溶媒量を低減する機能も有する。さらに、機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点で、有用な効果を示す。また、重縮合ポリマーは、上記有機酸とセルロースアシレートの相溶化を促進し白化を抑制するという観点でも、有用な効果を示す。
【0047】
ここで、本発明における重縮合ポリマーである高分子量添加剤の数平均分子量は、より好ましくは数平均分子量600〜8000であり、さらに好ましくは数平均分子量600〜5000であり、特に好ましくは数平均分子量700〜2000である。
以下、本発明に用いられる重縮合ポリマーである高分子量添加剤について、その具体例を挙げながら詳細に説明するが、重縮合ポリマーである高分子量添加剤がこれらのものに限定されるわけでないことは言うまでもない。
また、前記重縮合ポリマーは、非リン酸エステル系のエステル系化合物であることが好ましい。但し、前記「非リン酸エステル系のエステル系化合物」は、リン酸エステルを含まず、エステル系である、化合物を意味する。
【0048】
重縮合ポリマーである高分子系添加剤としては、ポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)、ポリエステル系成分と他の成分の共重合体などが挙げられ、脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)とアクリル系ポリマーの共重合体およびポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)とスチレン系ポリマーの共重合体が好ましく、少なくとも共重合成分の1つとして芳香族環を含有するポリエステル化合物であることがより好ましい。
【0049】
前記脂肪族ポリエステル系ポリマーとしては、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものであり、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。本発明のポリエステル系ポリマーに使用されるジカルボン酸は、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基または炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。
【0050】
(糖エステル化合物)
−糖残基−
前記糖エステル化合物とは、該化合物を構成する多糖中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基)の少なくとも1つと、少なくとも1種の置換基とがエステル結合されている化合物のことを言う。すなわち、ここで言う糖エステル化合物には広義の糖誘導体類も含まれ、例えばグルコン酸のような糖残基を構造として含む化合物も含まれる。すなわち、前記糖エステル化合物には、グルコースとカルボン酸のエステル体も、グルコン酸とアルコールのエステル体も含まれる。
前記糖エステル化合物を構成する多糖中の置換可能な基は、ヒドロキシル基であることが好ましい。
【0051】
前記糖エステル化合物中には、糖エステル化合物を構成する多糖由来の構造(以下、糖残基とも言う)が含まれる。前記糖残基の単糖当たりの構造を、糖エステル化合物の構造単位と言う。前記糖エステル化合物の構造単位は、ピラノース構造単位またはフラノース構造単位を含むことが好ましく、全ての糖残基がピラノース構造単位またはフラノース構造単位であることがより好ましい。また、前記糖エステルが多糖から構成される場合は、ピラノース構造単位またはフラノース構造単位をともに含むことが好ましい。
【0052】
前記糖エステル化合物の糖残基は、5単糖由来であっても6単糖由来であってもよいが、6単糖由来であることが好ましい。
【0053】
前記糖エステル化合物中に含まれる構造単位の数は、2〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。すなわち、前記糖エステル化合物を構成する糖が2糖類〜4糖類であることが好ましく、2糖類〜3糖類であることがより好ましく、2糖類であることが特に好ましい。
【0054】
本発明では、前記糖エステル化合物はヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を2〜4個含む糖エステル化合物であることがより好ましく、ヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を2個含む糖エステル化合物であることがより好ましい。
【0055】
前記単糖または2〜4個の単糖単位を含む糖類の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクロース、スクラロース、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、バルトペンタオース、ベルバルコース、マルトヘキサオース、キシリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
【0056】
好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロースであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
【0057】
前記糖エステル化合物の置換基の好ましい例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2−シアノエチル基、ベンジル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアシル基、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、トルイル基、フタリル基など)、アミド基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアミド、例えばホルムアミド基、アセトアミド基など)、イミド基(好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数4〜12、特に好ましくは炭素数4〜8のアミド基、例えば、スクシイミド基、フタルイミド基など)を挙げることができる。その中でも、アルキル基またはアシル基がより好ましく、メチル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(その中でもi−ブチリル基が好ましい)、ベンゾイル基がより好ましく、アセチル基およびブチリル基のうち少なくとも一方を含むことが特に好ましく、アセチル基のみを含むことまたはアセチル基とブチリル基をともに含むことがより特に好ましい。
【0058】
その他、前記糖エステル化合物としては、特開2001−247717号公報、特表2005−515285号公報、国際公開WO2007/125764号公報、国際公開WO2009/011228号公報、国際公開WO2009/031464号公報などに記載の糖エステル化合物を用いることもできる。
【0059】
前記糖エステル化合物の入手方法としては、市販品として(株)東京化成製、アルドリッチ製等から商業的に入手可能であり、もしくは市販の炭水化物に対して既知のエステル誘導体化法(例えば、特開平8−245678号公報に記載の方法)を行うことにより合成可能である。
【0060】
前記糖エステル化合物は、数平均分子量が、好ましくは200〜3500、より好ましくは420〜3000、特に好ましくは450〜2000の範囲が好適である。
【0061】
前記糖エステル化合物は、セルロースアシレートに対し2〜30質量%含有することが好ましく、5〜20質量%含有することがより好ましく、5〜10質量%含有することが特に好ましい。
【0062】
(レターデーション発現剤)
本発明のフィルムは、レターデーション値を発現するために、レターデーション発現剤を含有してもよい。前記レターデーション発現剤としては、特に制限はないが、棒状または円盤状化合物、あるいは、後述する一般式(II−1)で表される構造に特徴を有する化合物からなるものを挙げることができる。上記棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレート成分100質量部に対して0.1質量部以上3質量部未満であることが好ましく、0.5質量部以上2質量部未満であることがさらに好ましい。一方、前記円盤状化合物は、前記セルロースアシレートに対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましく、1〜4質量%であることが特に好ましい。後述する一般式(II−1)で表される構造に特徴を有する化合物の前記セルロースアシレートに対する好ましい添加量は、前記円盤状化合物の好ましい添加量の範囲と同様である。
円盤状化合と後述する一般式(II−1)で表される構造に特徴を有する化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0063】
円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、縮合ベンゼン環、ビフェニール類が好ましい。特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
【0064】
レターデーション発現剤が有する芳香族環の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0065】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
【0066】
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0067】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
【0068】
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
【0069】
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基および2−ジエチルアミノエチル基の各基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基および1−ヘキセニル基が含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基および1−ヘキシニル基が含まれる。
【0070】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基およびブタノイル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例えば、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基およびメトキシエトキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基およびエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0071】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基およびオクチルチオ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基およびエタンスルホニル基が含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基およびn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基および2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジエチルカルバモイル基が含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基およびジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基およびモルホリノ基が含まれる。
レターデーション発現剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
【0072】
本発明では、前記円盤状化合物として下記一般式(I)で表されるトリアジン化合物を用いることが好ましい。
【0073】
【化1】

【0074】
上記一般式(I)中:
201は、各々独立に、オルト位、メタ位およびパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環または複素環を表す。
201は、各々独立に、単結合または−NR202−を表す。ここで、R202は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
【0075】
201が表す芳香族環は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。R201が表す芳香族環はいずれかの置換位置に少なくとも一つの置換基を有してもよい。前記置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基およびアシル基が含まれる。
【0076】
201が表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジルまたは4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
201が単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基である
ことが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。ここで、−C49nは、n−C49を示す。
【0077】
【化2】

【0078】
202が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8がさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)およびアシルオキシ基(例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)が含まれる。
【0079】
202が表すアルケニル基は、環状アルケニル基であっても鎖状アルケニル基であってもよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがさらにまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様である。
202が表す芳香族環基および複素環基は、R201が表す芳香族環および複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基および複素環基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例にはR201の芳香族環および複素環の置換基と同様である。
【0080】
一般式(I)で表される化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。レターデーション発現剤の詳細は公開技報2001−1745の49頁に記載されている。
【0081】
本発明では、前記円盤状化合物として、下記一般式(II−1)で表される構造に特徴を有する化合物を用いることも好ましい。なお、下記一般式(II−1)で表される構造に特徴を有する化合物は、円盤状であることを必要としない。
【化3】

(一般式(II−1)中、Y1はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra31はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb31、Rc31、Rd31およびRe31はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q21は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra31と連結して環を形成してもよい。X31、X32、およびX33は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X34は、下記一般式(Q)
一般式(Q)
【化4】

(一般式(Q)中、*側が前記一般式(II−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【0082】
前記一般式(II−1)で表される化合物は、下記一般式(II−2)で表されることが特に好ましい。
【化5】

(一般式(II−2)中、Y2はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra32はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb32、Rc32、Rd32はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q22は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra32と連結して環を形成してもよい。X35は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X36は、前記一般式(Q)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【0083】
前記一般式(II−1)で表される化合物は、下記一般式(II−4)で表されることが特に好ましい。
【化6】

(一般式(II−4)中、Y4はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra34はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q24は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra34と連結して環を形成してもよい。R61、R62、R63およびR64は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。)
【0084】
前記一般式(II−1)で表される化合物は、下記一般式(II−5)で表されることが特に好ましい。
【化7】

(一般式(E−5)中、R65、R66、R67およびR68は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。Ra35はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q25は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra35と連結して環を形成してもよい。)
【0085】
前記一般式(II−5)中、前記R65、R66、R67およびR68は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基であることが好ましく、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基であることが特に好ましい。
前記Ra35はアルキル基、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基、炭素原子数6〜18のアリール基(例えば、ベンゼン環及びナフタレン環の基)、炭素原子数4〜10の複素環の基(例えば、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基)であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基であることがより好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。
前記Q25は単結合、又は−O−、−S−、−N(Xa−Rh)−、もしくは−N(Xa−Rh)−Xb−(但し、XaおよびXbはそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、Xa及びXbでそれぞれ表される2価の連結基の例には、−CO−、−COO−、−CONH−が含まれる。Rhは水素原子炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基、炭素原子数6〜10のアリール基、又は炭素原子数2〜10の複素環基を表す。−NH−Xb−の好ましい例には、−NH−CO−、−NH−COO−、−NH−CONH−、−NH−SO2−などが含まれ、−NH−CO−、−NH−COO−であることがさらに好ましい。)で表される2価の連結基であることが好ましく、中でも、単結合、又は−O−、−S−、−NH−又は−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基)であるのがより好ましく、単結合又は−O−であることがより好ましい。
【0086】
本発明のレターデーション発現剤としては、前記低分子化合物と同様に、高分子系添加剤を使用することもできる。ここで、本発明において前記重縮合エステルとして用いられているポリマーがレターデーション発現剤としての機能を兼ねていてもよい。前記重縮合エステルでもある高分子系のレターデーション発現剤としては、前記芳香族ポリエステル系ポリマーおよび前記芳香族ポリエステル系ポリマーとその他の樹脂の共重合体が好ましい。
【0087】
(レターデーション低減剤)
本発明ではレターデーション低減剤として、リン酸系であるエステル系の化合物や、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の非リン酸エステル系の化合物以外の化合物を広く採用することができる。
【0088】
高分子系レターデーション低減剤としては、リン酸系であるポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびアクリル系ポリマーおよびこれら等の共重合体から選択され、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含まれることが好ましい。
【0089】
非リン酸エステル系の化合物以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、以下を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はセルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。さらにまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
【0090】
非リン酸エステル系の化合物以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、特に限定されないが、詳細は特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に記載されている。
【0091】
特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に一般式(1)として記載される化合物は、以下の方法にて作成することができる。
該公報一般式(1)の化合物は、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。
【0092】
特開2007−272177号公報一般式(2)に記載の化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、またはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
【0093】
前記レターデーション低減剤は、Rth低減剤であることが好適なNzファクターを実現する観点からより好ましい。前記レターデーション低減剤のうち、Rth低減剤としては、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマー、特開2007−272177号公報一般式(3)〜(7)の低分子化合物などを挙げることができ、その中でもアクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーがより好ましい。
【0094】
レターデーション低減剤は、セルロース系樹脂に対し、0.01〜30質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜20質量%の割合で添加することがより好ましく、0.1〜10質量%の割合で添加することが特に好ましい。
上記添加量を30質量%以下とすることにより、セルロース系樹脂との相溶性を向上させることができ、白化を抑制させることができる。2種類以上のレターデーション低減剤を用いる場合、その合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0095】
(可塑剤)
前記第二のセルロースアシレートフィルムは可塑剤を含んでいてもよい。前記可塑剤としては、セルロースアシレートの可塑剤として知られる多くの化合物も有用に使用することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
【0096】
(劣化防止剤)
前記第二のセルロースアシレートフィルムは、公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4、4'−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1、1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2、2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2、5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3、5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。劣化防止剤の添加量は、セルロース系樹脂100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加する。
【0097】
(紫外線吸収剤)
前記第二のセルロースアシレートフィルムは、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N、N'−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1、3、5−トリメチル−2、4、6−トリス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2、2−メチレンビス(4−(1、1、3、3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2、4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3、5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1、3、5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N、N'−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1、3、5−トリメチル−2、4、6−トリス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2(2'−ヒドロキシ−3'、5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2'−ヒドロキシ−3'、5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、光学フィルム全体中に質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
【0098】
(マット剤)
前記第二のセルロースアシレートフィルムは、フィルムすべり性、および安定製造の観点からマット剤を含んでいてもよい。前記マット剤は、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
前記無機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。前記二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
前記有機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0099】
これらのマット剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法に限定されずいずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、所謂直前添加方法でありその混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましく、また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器HI−MIxer)(東レエンジニアリング製)のようなものが好ましい。なお、インライン添加に関しては、濃度ムラ、粒子の凝集等をなくすために、特開2003−053752号公報には、セルロースアシレートフィルムの製造方法において、主原料ドープに異なる組成の添加液を混合する添加ノズル先端とインラインミキサーの始端部の距離Lが、主原料配管内径dの5倍以下とする事で、濃度ムラ、マット粒子等の凝集をなくす発明が記載されている。さらに好ましい態様として、主原料ドープと異なる組成の添加液供給ノズルの先端開口部とインラインミキサーの始端部との間の距離(L)が、供給ノズル先端開口部の内径(d)の10倍以下とし、インラインミキサーが、静的無攪拌型管内混合器または動的攪拌型管内混合器であることが記載されている。さらに具体的には、セルロースアシレートフィルム主原料ドープ/インライン添加液の流量比は、10/1〜500/1、好ましくは50/1〜200/1であることが開示されている。さらに、添加剤ブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で透明性に優れた位相差フィルムを目的とした発明の特開2003−014933号にも、添加剤を添加する方法として、溶解釜中に添加してもよいし、溶解釜〜共流延ダイまでの間で添加剤や添加剤を溶解または分散した溶液を、送液中のドープに添加してもよいが、後者の場合は混合性を高めるため、スタチックミキサー等の混合手段を設けることが好ましいことが記載されている。
【0100】
<フィルムの層構造>
本発明の偏光板の製造方法では、前記第二のセルロースアシレートフィルムは、単層であっても、2層以上の積層体であってもよい。一方、本発明の偏光板では、前記第二のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートを含むコア層と、該コア層の両面に配置された全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む表層とを有する、3層以上の積層体である。
本発明の偏光板の製造方法では、前記第二のセルロースアシレートフィルムが多層構成の場合、各層ごとに機能を分けることが出来るため好ましい。また、本発明の偏光板の製造方法では、後述するとおりセルロースアシレート溶液を同時または逐次で支持体上に多層流延して製膜してもよいが、その場合でも各層が互いに混じり合って明確な界面が形成されていない状態であってもよい。
前記第二のセルロースアシレートフィルムが2層以上の積層体である場合は、2層構造または3層構造であることがより好ましい。2層以上の積層体の場合は、少なくとも一方の表面に配置された前記アシル基置換度が1.5〜2.6であるアシレートを含む層のことを表層といい、その他の層をコア層とも言う。また3層以上の積層体の場合はフィルム内部の層をコア層と言う。また、前記第二のセルロースアシレートフィルムが溶液製膜で製造する際に支持体と接する側の表層(以下、バンド層とも言う)と、支持体と接する側とは反対側の表層(以下、エア層とも言う)と、これらの表層よりも膜厚な1層のコア層を有することが好ましい。なお、前記第二のセルロースアシレートフィルムが2層の積層体の場合は、バンド層ではない方の層がコア層であることが好ましい。
【0101】
また、前記第二のセルロースアシレートフィルムが2層以上の積層体である場合、各層のセルロースアシレートは同じアシル置換度のセルロースアシレートを用いても、異なるアシル置換度のセルロースアシレートを用いてもよい。その中でも、各層のセルロースアシレートのアシル置換度が同じであることが、光学発現性、各層間の密着性および製造コストの観点から好ましい。
【0102】
前記第二のセルロースアシレートフィルムがセルロースアシレートを含む場合は、各層中におけるセルロースアシレートは1種のみを用いても、複数のセルロースアシレートを一つの層に混在させてもよいが、各層中におけるセルロースアシレートのアシル基置換度は全て一定であることが光学特性の調整の観点から好ましい。
【0103】
(レターデーション)
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、590nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定するができる。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(3)及び式(4)よりRthを算出することもできる。
【0104】
式(3)
【数1】

上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
式(3)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
式(4)
Rth={(nx+ny)/2 − nz} x d
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optIc axIs)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0105】
前記第二のセルロースアシレートフィルムは偏光板の保護フィルムとして用いられ、特に、様々な液晶モードに対応した位相差フィルムとしても好ましく用いることができる。
前記第二のセルロースアシレートフィルムに位相差フィルムとしての機能を持たせる場合、前記第二のセルロースアシレートフィルムは、下記式(1)および式(2)を満たすことが好ましい。
式(1):30nm≦|Re(590)|≦200nm
式(2):70nm≦|Rth(590)|≦300nm
(式(1)および(2)中、Re(590)およびRth(590)は、それぞれ25℃、相対湿度60%の環境下において波長590nmの光で測定した面内方向のレターデーション値および厚み方向のレターデーション値を表す。)
下記式(1')及び式(2')を満たすことがより好ましい。
式(1'): 40nm≦|Re(590)|≦100nm
式(2'): 100nm≦|Rth(590)|≦250nm
Re(590)及びRth(590)が前記式(1)および式(2)を満たすことで位相差フィルムとしてより好ましく用いることができる。
セルロースアシレートフィルムのより好ましい光学特性は液晶モードによって異なる。
VAモード用としては590nmで測定したReは30〜200nmのものが好ましく、30〜150nmのものがより好ましく、40〜100nmのものがさらに好ましい。Rthは70〜400nmのものが好ましく、100〜300nmのものがより好ましく、100〜250nmのものがさらに好ましい。
TNモード用としては590nmで測定したReは0〜100nmのものが好ましく、20〜90nmのものがより好ましく、50〜80nmのものがさらに好ましい。Rthは20〜200nmのものが好ましく、30〜150nmのものがより好ましく、40〜120nmのものがさらに好ましい。
TNモード用では前記レターデーション値を有するセルロースアシレートフィルム上に光学異方性層を塗布して光学補償フィルムとして使用できる。
前記第二のセルロースアシレートフィルムは、光学発現性が高いことを特徴とする。具体的には、膜厚当たりの|Re(590)|の値が大きいことが好ましく、下記式(5)を満たすことがより好ましい。
式(5):1.8×10-3 ≦ |Rth(590)|/d
(式(5)中、Rth(590)は、25℃、相対湿度60%の環境下において波長590nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値を表し、dはフィルムの膜厚を表す。)
前記第二のセルロースアシレートフィルムは、Rth(単位:nm)/d(nm)の値は2.5×10-3以上であることがより好ましく、2.6×10-3以上であることが特に好ましい。
【0106】
(ヘイズ)
前記第二のセルロースアシレートフィルムは、ケン化処理後の全へイズが1%以下である。
前記第二のセルロースアシレートフィルムの全ヘイズは、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることが特に好ましく、0.2%以下であることがさらに好ましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。ヘイズの測定は、ヘイズメーター"HGM−2DP"{スガ試験機(株)製}を用いJIS K−6714に従って測定することができる。
【0107】
(膜厚)
前記第二のセルロースアシレートフィルムは膜厚が80μm以下であることが好ましく、30〜70μmであることがより好ましく、40〜65μmであることがさらに好ましい。光学特性を維持しやすい。
また、前記第二のセルロースアシレートフィルムが2層以上の積層構造を有する場合、前記コア層の膜厚は78μm以下であることが好ましく、28〜68μmであることがより好ましく38〜62μmであることが特に好ましい。また、フィルムの流延時に支持体に接していた側の表面層(バンド層)の膜厚は5μm以下であることが好ましく、1〜4μmであることがより好ましく、1〜3μmであることが特に好ましい。さらに前記第二のセルロースアシレートフィルムが3層以上の積層構造を有し、フィルム流延時に支持体とは反対側の空気側にさらに表層(エア層)を有する場合、その好ましい厚みは前記バンド層の好ましい範囲と同様である。
【0108】
(フィルム幅)
前記第二のセルロースアシレートフィルムは、フィルム幅が700〜3000mmであることが好ましく、1000〜2800mmであることがより好ましく、1500〜2500mmであることが特に好ましい。
【0109】
(第二のセルロースアシレートフィルムの製造方法)
第二のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、アシル基置換度が1.5〜2.6であるアシレートを含む層を少なくとも一方の表面に有する第二のセルロースアシレートフィルムをTg−20℃以上の温度で加熱する工程を(但し、Tgは第二のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(単位:℃)を表す)含む。
前記アシル基置換度が1.5〜2.6であるアシレートを含む層を少なくとも一方の表面に有する第二のセルロースアシレートフィルムの製造方法としては特に制限はないが、ソルベントキャスト法(溶液流延製膜法)で製造されることが好ましい。
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
【0110】
前記第二のセルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法により製造されることが好ましい。ソルベントキャスト法を利用した前記第二のセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の公報を参考にすることができる。また、前記前記第二のセルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の各公報を参考にすることができる。
【0111】
<流延方法>
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。またここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
【0112】
前記第二のセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用される支持体としては、エンドレスに走行する金属支持体が好ましい。前記エンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基又は2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるドープ(樹脂溶液)の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべての溶液温度が同一でもよく、又は工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
また、前記金属支持体の材質については特に制限はないが、SUS製(例えば、SUS 316)であることがより好ましい。
【0113】
前記第二のセルロースアシレートフィルムは溶液流延時に前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を片方のフィルム表面側に偏在させることが、剥離性改良の点から好ましい。溶液流延時に前記一般式(1)で表される有機酸を支持体側のフィルム溶液表面に偏在させる方法としては、例えば以下の第一の態様と本発明の第二の態様がある。
【0114】
〔第一の態様での流延工程〕
前記第一の態様では、セルロースアシレートを含むコア層用溶液(但し、下記一般式(1)で表される有機酸該の含有量がセルロースアシレートに対して3質量%以下であることが好ましい)と、セルロースアシレートと該セルロースアシレートに対して0.1質量%〜20質量%の下記一般式(1)で表される有機酸とを含むバンド層用溶液を、同時または逐次で支持体上に多層流延し、前記コア層用溶液および前記バンド層用溶液にそれぞれ含まれる前記セルロースアシレートがいずれも全アシル置換度1.5〜2.6であり、前記コア層用溶液と支持体層用溶液の合計流延厚みに対する前記支持体層用溶液の流延厚みが0.5%以上となるように制御する。
本発明の製造方法の第一の態様では、共流延法、逐次流延法、塗布法などの多層流延法を用いることが好ましく、同時共流延法を用いることが、安定製造および生産コスト低減の観点からより好ましい。多層流延法においては、支持体層用溶液にのみ、前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を添加する方法を好ましく用いることができる。
共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(2層あるいはそれ以上でもよい)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。図2に、共流延ギーサ3を用い、流延用支持体4の上に表層用ドープ1とコア層用ドープ2を3層同時に押出して流延する状態を断面図で示した。
【0115】
複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号、特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。
【0116】
あるいは、また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらの本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
【0117】
逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。塗布法は、一般的には、コア層のフィルムを溶液製膜法によりフィルムに成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつまたは両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
【0118】
溶液流延時に前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を片方のフィルム表面側に偏在させる場合、本発明の製造方法は、少なくとも2層以上のドープを前記金属支持体上に共流延し、前記支持体面に接する層用のドープにのみセルロースアシレートに対して0.1質量%〜20質量%の前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を添加することが好ましい。このように支持体面に接する層用のバンド層用溶液にのみ前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を上記添加量の範囲で添加することで、支持体からの剥離性を大幅に改善することができる。さらに、支持体面に接する側の薄膜なバンド層に剥離性改善機能を集中してもたせ、支持体に直接接していない厚膜な前記コア層用溶液中の有機酸の含有量をできる限り低減することにより、前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸による製膜後のフィルムの光学発現性とヘイズへの悪影響を抑えることができる。
【0119】
また、薄膜な全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む表層を形成するためのバンド層用溶液にセルロースアシレートに対して0.1質量%〜20質量%の前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を含ませる場合、製膜後にフィルム中に含まれる有機酸の含有量がセルロースアシレートに対して0.01質量%以上1質量%未満となるように、支持体層用溶液とコア層用溶液それぞれの流延厚みを調整することが好ましい。すなわち、前記コア層用溶液と支持体層用溶液の合計流延膜厚に対する前記支持体層用溶液の流延膜厚が0.5%以上となるように制御することが好ましい。
バンド層用溶液とコア層用溶液それぞれの流延厚みについては上記範囲を満たす以外に特に制限はないが、得られるフィルムの各層の膜厚が前述した前記第二のセルロースアシレートフィルムが2層以上の積層体である場合の好ましい膜厚の範囲となることが好ましい。
前記支持体層用溶液におけるセルロースアシレートに対する前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸の添加量は、1〜10質量%であることが好ましく、2〜5質量%であることがより好ましい。
また、前記コア層用溶液中の前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸の含有量がセルロースアシレートに対して3質量%以下であることが、得られるフィルム中における有機酸含有量を本発明のフィルムにおいて規定される範囲内とし、そのヘイズを改善するために好ましい。
【0120】
〔第二の態様での流延工程〕
第二の態様では、前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を含む有機酸溶液を支持体に前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸が0.001mg/cm2〜0.8mg/cm2となるように適用し、その後該有機酸溶液上にアシル置換度1.5〜2.6のセルロースアシレートを含む溶液を流延することが好ましい。
前記有機酸溶液を支持体に適用する方法としては特に制限はなく、公知の溶液の適用方法を用いることができる。その中でも、塗工(塗布)および噴霧の少なくとも一方により適用する方法が好ましい。前記塗工方法としては、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号公報に記載のセルロースアシレート溶液を支持体に塗工する方法と同様の方法を用いることができる。
【0121】
前記第二の態様ではこのように有機酸溶液をあらかじめ上記範囲の量で支持体に適用しておくことで、さらにその上に流延する低アシル置換度のセルロースアシレート溶液の支持体からの剥離性を大幅に改善することができる。
また、従来セルロースアシレートフィルムに様々な特性を改善する観点から添加していた無機酸や有機酸と比較して金属への腐食性が少ない前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を用いる場合、このようにあらかじめ支持体上へ酸を適用しておく第二の態様を採用しても製造装置の劣化を抑制できる。その結果、本発明の偏光板の製造方法の製造コストを低減することができる。
【0122】
前記第二の態様では、支持体上に適用した有機酸溶液の上に流延するセルロースアシレート溶液は前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を含まないことが、製膜後のフィルム中に含まれる前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸の含有量を抑制し、前記有機酸による製膜後のフィルムの光学発現性とヘイズへの悪影響を抑える観点から好ましい。
また、前記第二の態様では、前記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を含む有機酸溶液を0.001mg/cm2〜0.8mg/cm2となるように支持体に適用することが好ましく、製膜後にフィルム中に含まれる有機酸の含有量がセルロースアシレートに対して0.001質量%以上0.1質量%未満となるように、前記セルロースアシレート溶液の流延厚みを調整することが好ましい。
前記有機酸溶液の支持体への適用量は、0.05〜0.5mg/cm2であることが好ましく、0.05〜0.2mg/cm2であることがより好ましい。
【0123】
<乾燥>
本発明の偏光板の製造方法では、前記第二のセルロースアシレートフィルムを乾燥する工程を含むことが好ましい。
【0124】
前記第二のセルロースアシレートフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラム又はベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム又はベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム又はベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0125】
<剥離>
本発明の偏光板の製造方法は、前記ドープ膜を前記支持体から剥ぎ取る工程を含むことが好ましい。本発明の製造方法における剥離の方法については特に制限はなく、公知の方法を用いた場合に剥離性を改善することができる。
【0126】
フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0127】
本発明の偏光板の製造方法では、支持体から剥離した前記第二のセルロースアシレートフィルム(ウェブ)を延伸する工程を含むことが好ましく、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
【0128】
なお、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量のさらに好ましい範囲は70質量%以下であり、より好ましくは10質量%〜50質量%、特に好ましくは12質量%〜35質量%である。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
【0129】
延伸倍率は、5%〜100%であることが好ましく、15%〜40%であることがより好ましく、20%〜35%であることが特に好ましい。ここで、一方の方向に対して5%〜100%延伸するとは、フィルムを支持しているクリップやピンの間隔を延伸前の間隔に対して1.05〜2.00倍の範囲にすることを意味している。
また、延伸はフィルム搬送方向(縦方向)に行っても、フィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に行っても、両方向に行ってもよいが、本発明の偏光板の製造方法は、後述する加熱工程の前に、前記第二のセルロースアシレートフィルムをフィルム搬送方向に直交する方向に延伸する工程を含むことが好ましい。さらに、前記第二のセルロースアシレートフィルムはフィルム搬送方向に直交する方向に延伸され、該延伸倍率が、搬送方向に対して直交する方向に5%〜100%であることが好ましい。前記搬送方向に直交する方向への延伸倍率のより好ましい範囲は上記範囲と同様である。延伸倍率を5%以上とすることにより、より適切にReを発現させることができ、ボーイングを良好なものとすることができる。また、延伸倍率を50%以下とすることにより、ヘイズを低下させることができる。
【0130】
本発明では、溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。本発明では、前記延伸工程における延伸温度は、110〜190℃であることが好ましく、120〜150℃であることがより好ましい。延伸温度が120℃以上であることが低ヘイズ化の観点から好ましく、150℃以下であることが光学発現性を高める観点(薄膜化の観点)から好ましい。
【0131】
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの光学発現性を高める観点、特にフィルムのRthの値を高める観点から、有効な方法である。前記第二のセルロースアシレートフィルムは搬送方向に対して平行な方向と直交する方向への同時または逐次延伸されて得られたものであり、該搬送方向に対して平行な方向への延伸倍率は1%〜30%であることが好ましく、3%〜20%であることがより好ましく、5%〜10%であることが特に好ましい。一方、搬送方向に対して直交する方向への延伸倍率は5%〜100%であることが好ましく、20%〜50%がより好ましく、25%〜45%が特に好ましい。搬送方向に直交する方向への延伸倍率のより好ましい範囲は上記範囲と同様である。
【0132】
一般に、2軸延伸テンターを用いてフィルム搬送方向に直交する方向(幅手方向)に5%〜100%延伸する場合、その直交方向であるフィルム搬送方向に平行な方向(長手方向)には縮まる力が働く。
したがって、一方向のみに力を与えて続けて延伸すると直角方向の幅は縮まってしまうが、これを幅規制せずに縮まる量に対して、縮まり量を抑制していることを意味しており、その幅規制するクリップやピンの間隔を延伸前に対して1.05〜2.00倍の範囲に規制していることを意味している。このとき、長手方向には、幅手方向への延伸によってフィルムが縮まろうとする力が働いている。長手方向のクリップあるいはピンの間隔をとることによって、長手方向に必要以上の張力がかからないようにしているのである。ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して長手方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて長手方向に延伸する方法、同様に幅手方向に広げて幅手方向に延伸する方法、あるいは長手幅手同時に広げて長手幅手両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
【0133】
本発明では、延伸工程において同時に2軸方向に延伸してもよいし、逐次に2軸方向に延伸してもよい。逐次に2軸方向に延伸する場合は、それぞれの方向における延伸ごとに延伸温度を変更してもよい。
同時2軸延伸する場合、延伸温度は110℃〜190℃で行った場合でも本発明のフィルムを得ることができ、同時2軸延伸する場合の延伸温度は、120℃〜150℃であることがより好ましく、130℃〜150℃であることが特に好ましい。また、同時2軸延伸することで、ヘイズはある程度高くなるものの、光学発現性をさらに高めることができる。
一方、逐次2軸延伸する場合、先にフィルム搬送方向に平行な方向に延伸し、その次にフィルム搬送方向に直交する方向に延伸することが好ましい。前記逐次延伸を行う延伸温度のより好ましい範囲は上記同時2軸延伸を行う延伸温度範囲と同様である。
【0134】
(加熱工程)
本発明の偏光板の製造方法は前記第二のセルロースアシレートフィルムをTg−20℃以上の温度で加熱する工程を含む。
前記加熱工程は、乾燥工程終了後に加熱工程を設けることが好ましく、前記加熱工程を、残留溶媒量を10質量%以下に制御した後で開始することが好ましく、5質量%以下に制御した後で開始することがより好ましく、1質量%以下に制御した後で開始することが特に好ましい。
なお、当該加熱工程における加熱は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、加熱工程だけを別途設けてもよい。本発明においては乾燥工程終了後に一旦、室温〜100℃以下まで冷却した後において改めて前記加熱工程を設けることが好ましい。これは熱寸法安定性のより優れたフィルムを得られる点で有利であるからである。
【0135】
加熱工程は、搬送中のフィルムを恒温のゾーンを通過させる方法や、所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエーブなどの加熱手段などを用いる方法により行われ、恒温のゾーンを通過させる方法が、フィルムの両表面を共に前記加熱温度に加熱できる観点から好ましい。
加熱工程は前記第二のセルロースアシレートフィルムをTg−20℃以上の温度で加熱し、Tg−15℃〜15℃の温度で行うことが好ましく、Tg−5℃〜15℃の温度で行うことがさらに好ましい。また、加熱工程は1〜10分間行うことが好ましく、1〜5分間行うことがさらに好ましい。
【0136】
なお前記加熱工程において、フィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。この収縮を可能な限り抑制しながら加熱することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましく、幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンター方式)が好ましい。
【0137】
本発明の偏光板の製造方法は、前記加熱工程を、前記第二のセルロースアシレートフィルムをフィルム搬送方向に直交する方向に延伸しながら行うことが好ましい。すなわち、前記加熱工程において、前記延伸工程とは別に高温で延伸を行うことが出来る。延伸倍率は、5%〜100%であることが好ましく、15%〜40%であることがより好ましく、20%〜35%であることが特に好ましい。
また、延伸はフィルム搬送方向(縦方向)に行っても、フィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に行っても、両方向に行ってもよいが、前記第二のセルロースアシレートフィルムはフィルム搬送方向に直交する方向に延伸され、該延伸倍率が、搬送方向に対して直交する方向に5%〜100%であることが好ましい。前記搬送方向に直交する方向への延伸倍率のより好ましい範囲は上記範囲と同様である。延伸倍率を5%以上とすることにより、より適切にReを発現させることができる。また、延伸倍率を50%以下とすることにより、ヘイズを低下させることができる。
【0138】
前記加熱工程における延伸温度は、上記加熱温度範囲と同様である。
【0139】
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの光学発現性を高める観点、特にフィルムのRthの値を高める観点から、有効な方法である。前記第二のセルロースアシレートフィルムは搬送方向に対して平行な方向と直交する方向への同時または逐次延伸されて得られたものであり、該搬送方向に対して平行な方向への延伸倍率は1%〜30%であることが好ましく、3%〜20%であることがより好ましく、5%〜10%であることが特に好ましい。一方、搬送方向に対して直交する方向への延伸倍率は5%〜100%であることが好ましく、20%〜50%がより好ましく、25%〜45%が特に好ましい。
【0140】
本発明では、延伸工程において同時に2軸方向に延伸してもよいし、逐次に2軸方向に延伸してもよい。逐次に2軸方向に延伸する場合は、それぞれの方向における延伸ごとに延伸温度を変更してもよい。
同時2軸延伸する場合、好ましい延伸温度範囲は、上記加熱工程温度範囲と同様である。また、同時2軸延伸することで、ヘイズはある程度高くなるものの、光学発現性をさらに高めることができる。
一方、逐次2軸延伸する場合、先にフィルム搬送方向に平行な方向に延伸し、その次にフィルム搬送方向に直交する方向に延伸することが好ましい。前記逐次延伸を行う延伸温度のより好ましい範囲は上記加熱工程温度範囲と同様である。
【0141】
得られたフィルムを巻き取る巻き取り機には、一般的に使用されている巻き取り機が使用でき、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。以上の様にして得られた光学フィルムロールは、フィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±2度であることが好ましく、さらに±1度の範囲であることが好ましい。又は、巻き取り方向に対して直角方向(フィルムの幅方向)に対して、±2度であることが好ましく、さらに±1度の範囲にあることが好ましい。特にフィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±0.1度以内であることが好ましい。あるいはフィルムの幅手方向に対して±0.1度以内であることが好ましい。
【0142】
[加熱水蒸気処理]
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されてもよい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造されるセルロースアシレートフィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となる。
【0143】
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。前記第二のセルロースアシレートフィルムの製造に用いる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0144】
以上のようにして得られた、前記第二のセルロースアシレートフィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
【0145】
一般的に、大画面表示装置において、斜め方向のコントラストの低下及び色味付きが顕著となるので、前記第二のセルロースアシレートフィルムを用いて製造される本発明の偏光板は、特に大画面液晶表示装置に用いるのに適している。大画面用液晶表示装置用として用いる場合は、例えば、前記第二のセルロースアシレートフィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、前記第二のセルロースアシレートフィルムには、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様のフィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様のフィルムも含まれる。後者の態様のセルロースアシレートフィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられたセルロースアシレートフィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
【0146】
(ケン化処理)
本発明の偏光板の製造方法は、前記第二のセルロースアシレートフィルムの全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む層を前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化条件と同じ条件でケン化処理する工程を含む。
本発明の偏光板の製造方法は、前記ケン化処理の条件が下記式(A−1)〜(A−3)を満たす条件であることが好ましい。
式(A−1):18℃≦T≦90℃
(式(A−1)中、Tはケン化処理温度(単位:℃)を表す。)
式(A−2):0.5分≦S≦5分
(式(A−2)中、Sはケン化処理時間(単位:分)を表す。)
式(A−3):1.0N≦D≦5.0N
(式(A−3)中、Dはケン化溶液のアルカリ規定度(単位:N)を表す。)
【0147】
前記ケン化処理温度を従来のTAC用のケン化条件よりと同様にすることが本発明の特徴の1つであり、これにより、偏光板の製造コストを大幅に低減することができる。前記第二のセルロースアシレートフィルムをTg−20℃以上の温度で加熱する工程を含むことにより、このようなケン化処理を施しても前記第二のセルロースアシレートフィルムの表面ヘイズを抑制することができる。さらに、ケン化処理温度が低すぎるとケン化反応が進行せず、生産性を落としてしまう。一方、高すぎるとフィルム面状悪化を起こしてしまう可能性がある。
前記ケン化処理温度は、30℃≦T≦90℃であることがより好ましく、下記条件(B−1)または(B−2')を満たすことが特に好ましい。
条件(B−1):1N≦D<3Nの場合、45℃≦T≦90℃を満たす。
条件(B−2'):3N≦D≦5Nの場合、30℃≦T≦70℃を満たす。
(条件(B−1)および(B−2')中、Dはケン化溶液のアルカリ規定度(単位:N)を表し、Tはケン化処理温度(単位:℃)を表す。)
さらに、本発明の偏光板の製造方法は、前記ケン化処理の条件が、下記条件(B−1)または(B−2)を満たすことがより特に好ましい。
条件(B−1):1N≦D<3Nの場合、45℃≦T≦90℃を満たす。
条件(B−2):3N≦D≦5Nの場合、30℃≦T≦60℃を満たす。
(条件(B−1)および(B−2)中、Dはケン化溶液のアルカリ規定度(単位:N)を表し、Tはケン化処理温度(単位:℃)を表す。)
【0148】
前記ケン化処理時間を0.5分以上とすることで水の接触角を好ましい範囲とすることができる。前記ケン化処理時間を5分以下とすることでフィルム表面面状を顕著に改良し、さらにヘイズを小さくすることができる上、偏光板に本発明のフィルムを組み込んだ際に偏光板耐久性も改善される。
前記ケン化処理時間は0.5〜5分であることが好ましく、0.5〜4分であることがより好ましく、0.5〜3分であることが特に好ましく、0.5〜2分であることがさらに好ましい。
【0149】
ケン化処理は、アルカリ溶液をケン化液として用いてケン化処理する。ケン化液はアルカリ剤と水からなり、場合により界面活性剤および相溶化剤が含有されていてもよい。従来、アルカリ溶液の濃度(アルカリ溶液中のアルカリ剤の含有量)は、セルロースアシレートのアシル置換度に応じて決定する必要があった。すなわち、セルロースアシレートにおいては、アシル基の炭素数増大に伴って、ケン化効率が著しく低下するため、アシル基の炭素数が大きくなるほどアルカリ濃度は高くする必要があることが知られており、アルカリ濃度が高すぎるとアルカリ溶液の安定性が損なわれ、長時間塗布において析出する場合もあるため、セルロースアシレートの一次構造に応じて適切にアルカリ溶液を選定することがポイントとなる。そのため、本発明で用いられるアルカリ溶液は規定度が1〜5Nであることが好ましく、1〜3Nであることがより好ましく、1.5〜2.5Nであることが特に好ましい。また、アルカリ溶液の濃度は、この範囲内で、使用するアルカリ剤の種類、反応温度および反応時間に応じて調整することもできる。
また、違うフィルムでケン化条件が共通化できるとケン化浴が一つですみ、設備面や維持管理の手間の観点から有利である。
【0150】
その他、ケン化工程の詳細については、特開2010−215733号公報などに記載の方法を採用することができる。
【0151】
<偏光板のその他の構成>
本発明の偏光板は、前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化処理面と前記第二のセルロースアシレートフィルムの前記ケン化処理面とで偏光子が挟持される。前記偏光子は従来から公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコールフィルムのような親水性ポリマーフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して延伸したものである。セルロ−スエステルフィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行うことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全ケン化型のポリビニルアルコ−ル水溶液が好ましく用いられる。
【0152】
本発明の偏光板の態様は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、上記した通り、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
本発明の偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008−262161号公報の図6に記載の構成を採用することができる。
【0153】
[液晶表示装置]
本発明は本発明の偏光板を有する液晶表示装置にも関する。
本発明の液晶表示装置は液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が本発明の偏光板であることを特徴とするIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。
本発明の液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば図1に記載の構成とした例を採用することができる。また、特開2008−262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
【実施例】
【0154】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0155】
[製造例1]
<溶液構成1の共流延用溶液の調製>
(セルロースアシレートの調製)
特開平10−45804号公報、同08−231761号公報、特表2010−529216号公報に記載の方法で、セルロースアシレートを合成し、その置換度を測定した。具体的には、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
【0156】
(バンド層用セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、固形分濃度が22質量%のセルロースアシレート溶液を調製した。なお、セルロースアシレート溶液の粘度は60Pa・sであった。
・セルロースアセテート(置換度2.42) 100.0質量部
・理研ビタミン製ポエムK−37V 3.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
【0157】
(コア層用セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、固形分濃度が22質量%のセルロースアシレート溶液を調製した。なお、セルロースアシレート溶液の粘度は60Pa・sであった。
・セルロースアセテート(置換度2.42) 100.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
【0158】
(エア層用セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、固形分濃度が22質量%のセルロースアシレート溶液を調製した。なお、セルロースアシレート溶液の粘度は60Pa・sであった。
・セルロースアセテート(置換度2.42) 100.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
【0159】
[製造例2〜5]
<溶液構成2〜5の共流延用溶液の調製>
下記表5に記載のように各セルロースアシレート溶液中で用いた添加剤とその量を変更した以外は製造例1と同様にして、溶液構成2〜5の共流延溶液を調製した。
ここで、下記表5中に各添加剤の種類に続けて各添加剤の添加量を記載した。なお、各添加剤の添加量は、各セルロースアシレート溶液に含まれるセルロースアセテートに対する質量%である。
下記表5中に記載の添加剤A〜Dは重縮合エステルであり、それぞれの構造を下記表6に記載した。なお、下記表6中、OAcはヒドロキシル基末端がアセチル基で封止されたことを示し、EGはエチレングリコールを、PGはプロピレングリコールを、TPAはテレフタル酸を、PAはフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸をそれぞれ示す。
【0160】
【表5】

【0161】
【表6】

【0162】
添加剤Jは有機酸である理研ビタミン製ポエムK−37Vである。
【0163】
添加剤Lはレタデーション発現剤である下記の構造の化合物である。
【化8】

【0164】
[実施例1]
(第二のセルロースアシレートフィルムの作成)
上記にて調製した溶液構成1の共流延用溶液の前記コア層用セルロースアシレート溶液を膜厚68μmになるように、また前記バンド層用セルロースアシレート溶液を膜厚が1μmのバンド層(金属支持体側の最外層)になるように、また前記エア層用セルロースアシレート溶液を膜厚が2μmのエア層(金属支持体に接する側とは反対側の最外層)になるように、それぞれ流延した。
得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し130℃で20分間乾燥させた。
フィルムの溶媒残留量が1質量%未満となった後、更にテンターを用いてフィルム搬送方向に直交する方向へ200℃で、30%延伸しながら加加熱工程を行った。
なお、残留溶媒量は下記の式にしたがって求めた。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを120℃で2時間乾燥させた時の質量である。
また、得られたセルロースアシレートフィルムのTgは、残留揮発分0%のときのフィルムの動的粘弾性tanδを測定した際にtanδがピークを示す温度を測定し、その温度をTgとした。
【0165】
(ケン化処理前の光学発現性の測定)
作製したセルロースアシレートフィルムを、25℃、相対湿度60%で2時間以上調湿し、複屈折測定装置(KOBRA 21ADH、王子計測器(株)製)を用いて、25℃、相対湿度60%で波長590nmにおけるRe値及びRth値を測定した。また、膜厚に対するRthの値を計算した。得られた結果を下記表7に示した。
【0166】
(ケン化処理)
作製したセルロースアシレートフィルムのケン化処理は以下のような条件で行った。2N(2mol/L)の水酸化ナトリウム水溶液を調製し、50℃に保温した。0.005mol/Lの希硫酸水溶液を調製し、30℃に保温した。作製したセルロースアシレートフィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に90秒間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に20秒間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
得られたセルロースアシレートフィルムを第二のセルロースアシレートフィルムとした。
【0167】
(ケン化処理後の全ヘイズ)
全ヘイズの測定は、第二のセルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%でヘイズメーター"HGM−2DP"{スガ試験機(株)製}を用いJIS K−6714に従って測定した。
【0168】
(内部ヘイズの測定法)
内部ヘイズは、得られたセルロースアシレートフィルムの両面にグリセリン数滴を滴下し、厚さ1.3mmのガラス板(MICRO SLIDE GLASS品番S9213、MATSUNAMI製)2枚で両側から挟んだ状態で測定したヘイズ値(%)から、ガラス2枚の間にグリセリンを数滴滴下した状態で測定したヘイズを引いた値(%)を表す。
(表面ヘイズの算出方法)
全ヘイズ値から内部ヘイズ値を差し引いた値を表面ヘイズ値とした。
【0169】
(第一のセルロースアシレートフィルムのケン化処理)
市販のセルローストリアシレートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製、全アシル置換度2.86)を第二のセルロースアシレートフィルムと同様にしてケン化処理を行い、第一のセルロースアシレートフィルムとした。
【0170】
(偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
第二のセルロースアシレートフィルムのケン化処理面を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。第一のセルロースアシレートフィルムのケン化処理面を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付け、70℃で10分以上乾燥した。偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した。偏光子の透過軸と市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは直交するように配置した。
得られた偏光板を実施例1の偏光板とした。
【0171】
[実施例2〜11、比較例1〜4]
下記表7に記載のように、用いた共流延用溶液構成と、加熱開始時の残留溶媒量と、加熱温度と加熱後の延伸倍率と、膜厚と、ケン化条件を変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例の偏光板を製造した。得られた第二のセルロースアシレートフィルムについて実施例1と同様に評価を行い、その結果を下記表7に示した。
【0172】
[実施例12および13]
実施例12では、比較例3の条件で延伸および製膜して得られた溶媒残留量(揮発分)が1%未満のフィルムを、ケン化する前に、製膜後そのまま一貫して下記表7に記載の条件で加熱処理およびケン化を行い、その他は実施例1と同様にして偏光板を製造した。
実施例13では、比較例4の条件で延伸および製膜し、ケン化せずに一度巻き取った溶媒残留量(揮発分)が1%未満のフィルムを用いて、別の設備で下記表7に記載の条件で加熱処理およびケン化を行い、その他は実施例1と同様にして偏光板を製造した。
実施例12および13の偏光板の製造時に得られた第二のセルロースアシレートフィルムについてそれぞれ実施例1と同様に評価を行い、その結果を下記表7に示した。
【0173】
【表7】

【0174】
上記表7より、実施例1〜13で得られた偏光板に用いられる第二のセルロースアシレートフィルムは、全アシル基置換度が2.7〜3.0である第一セルロースアシレートフィルムと同じケン化処理条件とした場合も、ケン化後の表面ヘイズが良好であることがわかった。
一方、比較例1〜4より、第二のセルロースアシレートフィルムを製造するときの加熱温度が本発明で規定する下限値を下回る場合は、全アシル基置換度が2.7〜3.0である第一セルロースアシレートフィルムと同じケン化処理条件を行うと表面ヘイズが高くなってしまうことがわかった。
【0175】
[液晶表示装置の製造]
得られた各実施例および比較例の偏光板に対して、下記パネルへの貼り合わせを実施した。
評価はシャープ社LC−32DE5の液晶表示ディスプレイからフロント側およびリア側の偏光板を取り除いたもの(以下、パネルとも言う)に対し、上記実施例1の偏光板を液晶パネルのフロント側およびリア側に配置して、実施例1の液晶表示装置を製造した。また、上記その他の実施例および各比較例の偏光板を液晶パネルのフロント側およびリア側に配置して、その他の実施例および各比較例の液晶表示装置を製造した。
【0176】
測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、装置正面からの極角0度方向、及び方位角0度方向における黒表示および白表示の輝度値を測定し、コントラスト(白輝度/黒輝度)を算出することで、液晶表示装置の正面コントラストを測定した。
【0177】
得られた液晶表示装置の正面コントラスト比を測定した結果を上記表7に示した。上記表7より、実施例の偏光板を用いた本発明の液晶表示装置は良好な性能を示した。
【符号の説明】
【0178】
1 表層用ドープ
2 コア層用ドープ
3 共流涎用ダイ
4 支持体
11 偏光子
12 偏光子
13 液晶セル
14 第二のセルロースアシレートフィルム
15 第二のセルロースアシレートフィルム
21 第一のセルロースアシレートフィルム
22 第一のセルロースアシレートフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全アシル基置換度2.7〜3.0であるセルロースアシレートを含む第一のセルロースアシレートフィルムをケン化処理する工程と、
全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む層を少なくとも一方の表面に有する第二のセルロースアシレートフィルムをTg−20℃以上の温度で加熱する工程と(但し、Tgは第二のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(単位:℃)を表す)、
前記第二のセルロースアシレートフィルムの全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む層を前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化条件と同じ条件でケン化処理する工程と、
前記第一のセルロースアシレートフィルムの前記ケン化処理面と前記第二のセルロースアシレートフィルムの前記ケン化処理面とで偏光子を挟持する工程を含むことを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項2】
全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートと溶媒を含む溶液を支持体上に流延する工程と、
前記流延した溶液を支持体上で乾燥させて、支持体から剥離して前記第二のセルロースアシレートフィルムを形成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板の製造方法。
【請求項3】
支持体上に、全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートと溶媒を含むバンド層用溶液と、セルロースアシレートおよび溶媒を含むコア層用溶液と、全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートと溶媒を含むエア層用溶液とをこの順で同時または逐次で多層流延する工程と、
前記多層流延した溶液を支持体上で乾燥させて、支持体から剥離して前記第二のセルロースアシレートフィルムを形成する工程を特徴とする請求項1または2に記載の偏光板の製造方法。
【請求項4】
前記第二のセルロースアシレートフィルムの前記加熱工程を、残留溶媒量を10質量%以下に制御した後で開始することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項5】
前記第二のセルロースアシレートフィルムを延伸する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程の前に、前記第二のセルロースアシレートフィルムを延伸する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の偏光板の製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程を、前記第二のセルロースアシレートフィルムを延伸しながら行うことを特徴とする請求項5または6に記載の偏光板の製造方法。
【請求項8】
前記第二のセルロースアシレートフィルムの波長590nmで測定した面内方向のレターデーション値Reが30nm〜200nmであり、波長590nmで測定した厚み方向のレターデーション値Rthが70nm〜300nmであるとことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項9】
前記第二のセルロースアシレートフィルムが、下記(1)〜(3)の要件を満たす有機酸を前記セルロースアシレートに対して0.01質量%〜20質量%含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
(1)多価アルコールと多価カルボン酸がエステル結合を形成して結合した構造を含む。
(2)該化合物を形成する多価アルコールと多価カルボン酸の分子数の合計が3以上である。
(3)多価カルボン酸由来の無置換のカルボキシル基を少なくとも1つ有する。
【請求項10】
前記第二のセルロースアシレートフィルムが、流延時に支持体に接していた層を形成する溶液にのみ前記有機酸を含有することを特徴とする請求項9に記載の偏光板の製造方法。
【請求項11】
前記ケン化処理の条件が下記式(A−1)〜(A−3)を満たす条件であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
式(A−1):18℃≦T≦90℃
(式(A−1)中、Tはケン化処理温度(単位:℃)を表す。)
式(A−2):0.5分≦S≦5分
(式(A−2)中、Sはケン化処理時間(単位:分)を表す。)
式(A−3):1.0N≦D≦5.0N
(式(A−3)中、Dはケン化溶液のアルカリ規定度(単位:N)を表す。)
【請求項12】
前記ケン化処理の条件が、下記条件(B−1)または(B−2)を満たすことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
条件(B−1):1N≦D<3Nの場合、45℃≦T≦90℃を満たす。
条件(B−2):3N≦D≦5Nの場合、30℃≦T≦60℃を満たす。
(条件(B−1)および(B−2)中、Dはケン化溶液のアルカリ規定度(単位:N)を表し、Tはケン化処理温度(単位:℃)を表す。)
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法で製造されたことを特徴とする偏光板。
【請求項14】
全アシル基置換度2.7〜3.0であるセルロースアシレートを含む第一のセルロースアシレートフィルムと、
セルロースアシレートを含むコア層と、該コア層の両面に配置された全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む表層とを有し、かつ、Tg−20℃以上の温度で加熱されてなる第二のセルロースアシレートフィルムを含み(但し、Tgは第二のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(単位:℃)を表す)、
前記第一のセルロースアシレートフィルムおよび前記第二のセルロースアシレートフィルムの全アシル基置換度が1.5〜2.6であるセルロースアシレートを含む表層がケン化されてなり、
前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化条件と第二のセルロースアシレートフィルムのケン化条件が同じであり、
前記第一のセルロースアシレートフィルムのケン化処理面と前記第二のセルロースアシレートフィルムの前記ケン化処理面とで偏光子が挟持されたことを特徴とする偏光板。
【請求項15】
請求項13または14に記載の偏光板を少なくとも1枚含むことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−83905(P2013−83905A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252980(P2011−252980)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】