説明

偏光板および液晶表示装置

【課題】環境湿度が変化した場合にも大型の液晶セルへの貼り合わせが良好であり、貼り合わせ時に気泡が発生し難く、かつ、大型の液晶セルへの貼り合わせた後で環境湿度が変化した場合に液晶表示パネルのむらが生じにくい偏光板の提供。
【解決手段】二枚の保護フィルムと、前記二枚の保護フィルムで両表面を挟持された偏光子とを含み、前記二枚の保護フィルムのうち少なくとも一方がセルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムであり、前記セルロースアシレート系樹脂の総アシル置換度が2.0〜2.6であることを特徴とする偏光板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板および該偏光板を用いた液晶表示装置に関する。より詳しくは、全アシル置換度が従来よりも低いセルロースアシレート樹脂類を用いた保護フィルムを組み込んだ偏光板、および該偏光板を組み込んだ液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置のTV用途が進行し、画面サイズの大型化に伴い高画質化と低価格化が益々求められている。液晶表示装置の一般的な構成としては、2枚の偏光板で液晶セルを挟んで配置されている。また、各偏光板は、2枚の偏光板保護フィルム(位相差フィルムを兼ねることもある)で、ヨウ素などを含む偏光子を挟んであるのが一般的である。
【0003】
従来から、偏光板保護フィルムには偏光子自体を支える強度に加え、特に、高湿環境下において偏光子のヨウ素などが流れ出して偏光性能が劣化してしまうことを防ぐことが重要視されていた。そのため、無置換のヒドロキシル基が少なく透湿度や含水率が低く、総アシル置換度2.65〜2.98程度のトリアセチルセルロース(以下、TACとも言う)樹脂に各種添加剤を添加して製膜したフィルムが保護フィルムとして好ましく用いられていた(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1には、このような高アシル置換度のトリアセチルセルロースに対して各種添加剤を添加することで、偏光板保護フィルムの透湿度や平衡含水率をある程度低い範囲に制御することができることが記載されている。
【0004】
近年、液晶表示装置のパネルの大型化に伴い、液晶表示装置を製造する工程のうち、偏光板を液晶セルに貼りあわせる工程が次第に困難になってきている。特に、偏光板を液晶セルに貼りあわせる際、気泡が発生してしまう問題が生じてきていた。このような気泡の発生は、湿度変化などの環境条件の変化により偏光板がカールや変形することが原因と考えられている(特許文献2参照)。また、このような製造時の問題の結果として大型の液晶表示パネルには光学的なむらが発生しやすいという問題も生じていた。すなわち、液晶表示パネルの大型化に伴い、パネル面内に発生する従来目立たなかったレベルのムラが視認されやすくなってきており、また、液晶表示パネルの中央部と端部では端部の方が湿度変化の影響が大きいために局所的なむらも目立つようになり、いずれも改善が求められてきていた。具体的には、特に、液晶TVを設置する環境を、高温低湿から、急激に高湿環境下に変化させると、パネル黒表示時、面内にムラが生じることが問題とされており、解決が望まれていた。
【0005】
これに対し、特許文献2の実施例では、アセチル置換度2.9のセルロースアセテートフィルムである偏光板保護フィルムAと、総アシル置換度2.1〜2.7であって面内レターデーションを40〜50nm発現させた延伸セルロースアセテートプロピオネートフィルムである光学補償フィルムB(幅1.5m)の2枚のフィルムで偏光子を挟んだ偏光板が記載されている。また、このような総アシル置換度2.1〜2.7であって面内レターデーションを40〜50nm発現させた延伸フィルムを含む構成の偏光板を用いることで、液晶表示装置に偏光板を貼り付ける工程で気泡や位置ずれが生じにくく、得られる液晶表示装置の表示特性にむらが少なくなることが記載されている。
【0006】
一方、液晶表示装置のパネルの大型化が進んだ近年にあっても、面内レターデーションが小さく偏光板の保護を主目的としている保護フィルムの分野では、総アシル置換度を特許文献2に記載されている程度の低い範囲まで下げた例はほとんど知られていない。例えば、特許文献3には、環境耐候性に優れた偏光板保護フィルムとして、高アシル置換度のセルロースアシレートを用いることが好ましいことが記載されている。また、同文献の実施例では、総アシル置換度が2.85程度の高アシル置換度のセルロースアシレートが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−343528号公報
【特許文献2】国際公開WO2006/137300号公報
【特許文献3】特表2008−513836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、光学補償フィルムを含む偏光板分野とは異なり、安価であることも求められる通常の偏光板保護フィルムを含む偏光板の分野において、液晶表示装置の大型化に伴って生じてきた環境湿度が変化した場合の問題を解決することを目的として、検討を行うこととした。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、環境湿度が変化した場合にも大型の液晶セルへの貼り合わせが良好であり、貼り合わせ時に気泡が発生し難く、かつ、大型の液晶セルへの貼り合わせた後で環境湿度が変化した場合に液晶表示パネルのむらが生じにくい偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を重ねた結果、従来小型の液晶表示装置への偏光板保護フィルムとしては透湿性や含水率の観点から用いられていなかったDAC(セルロースジアセテート)などの総アシル置換度の低いセルロースアシレート樹脂を偏光板の保護フィルムを使用することで、驚くべきことに偏光子との接着性が改良され、大型の液晶セルに偏光板を貼り合わせる際に気泡などが生じにくくなることがわかった。さらに、大型の液晶セルに偏光板を貼り合わせて液晶表示装置を製造した後で、高湿環境→乾燥環境→高湿環境とサイクル試験をしたところ、従来のセルローストリアセテートを用いた保護フィルムを組み込んだ偏光板よりも、大型化した液晶表示装置の端部と中央部との間におけるムラが発生しにくくなることがわかった。具体的には、総アシル置換度が2.0〜2.6の偏光板保護フィルムを少なくとも一枚使用することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、上記課題は、以下の構成の本発明により解決することができる。
[1] 二枚の保護フィルムと、前記二枚の保護フィルムで両表面を挟持された偏光子とを含み、前記二枚の保護フィルムのうち少なくとも一方がセルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムであり、前記セルロースアシレート系樹脂の総アシル置換度が2.0〜2.6であることを特徴とする偏光板。
[2] 前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムが、下記式(1)を満たすことを特徴とする[1]に記載の偏光板。
式(1): |Re(590)|≦20nm
(式(1)中、Re(590)は、波長590nmにおけるフィルム面内方向のレターデーションReの値を表し、面内レターデーションは下記式(1’)で表される。)
式(1’):Re=(nx−ny)×d
(式(1’)中、nxおよびnyは屈折率楕円体の各主軸方位の屈折率を表し、dはフィルム膜厚を表す。)
[3] 前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの25℃、相対湿度80%における平衡含水率が3%以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の偏光板。
[4] 前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの40℃、相対湿度95%、24時間経時後の透湿度が、400g/m2であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の偏光板。
[5] 前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの膜厚が20〜60μmであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の偏光板。
[6] 前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの幅が1300mm以上であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の偏光板。
[7] 前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムがUV吸収剤を含有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の偏光板。
[8] 前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムがポリエステル系可塑剤を含有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の偏光板。
[9] 前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルム上に、機能性層が積層されていることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の偏光板。
[10] 前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムに対して、前記偏光子を挟んで対向する他方の保護フィルムの40℃、相対湿度90%、24時間経時後の透湿度が250g/m2以下であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の偏光板。
[11] 液晶セルと、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の偏光板を少なくとも1枚含むことを特徴とする液晶表示装置。
[12] 前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルム、前記偏光子、前記他方の保護フィルムおよび前記液晶セルが、この順に配置されていることを特徴とする[11]に記載の液晶表示装置。
[13] 前記液晶セルがVAモードまたはIPSモードであることを特徴とする[11]または[12]に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば環境湿度が変化した場合にも大型の液晶セルへの貼り合わせが良好であり、貼り合わせ時に気泡が発生し難く、かつ、大型の液晶セルへの貼り合わせた後で環境湿度が変化した場合に液晶表示パネルのむらが生じにくい偏光板を提供することができる。特に、液晶TVを設置する環境を、高温低湿から、急激に高湿環境下に変化させたときに生じるむらが生じにくい偏光板を提供することができ、具体的には本発明の偏光板を用いた液晶表示装置は、50℃、相対湿度10%dry、1日放置後、50℃相対湿度95%、1時間放置後の表示ムラを改良することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の偏光板やそれに用いる保護フィルムなどについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
[偏光板]
本発明の偏光板は二枚の保護フィルムと、前記二枚の保護フィルムで両表面を挟持された偏光子とを含み、前記二枚の保護フィルムのうち少なくとも一方がセルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムであり、前記セルロースアシレート系樹脂の総アシル置換度が2.0〜2.6であることを特徴とする。
いかなる理論に拘泥するものでもないが、偏光板の少なくとも外側(液晶セルと反対側)の保護フィルムとして、透湿度および含水率が高い保護フィルムを使用すると、保護フィルムが緩衝効果を示し、偏光板の局所的な含水率変化が抑制されると推定している。そのため、本発明の偏光板を用いた液晶表示装置は、液晶セルとの貼り合わせが良好であり、貼り合わせ時に気泡が発生し難く、急激な湿度変化が生じた場合でもムラのような局所的な不具合が起こりにくい。
以下、本発明の偏光板の好ましい態様を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
【0014】
本発明の偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できる。本発明の偏光板の態様は、例えば、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、偏光板の幅は1500mm以上とすることが好ましい。
【0015】
<<保護フィルム>>
本発明の偏光板は、二枚の保護フィルムを含む。
前記二枚の保護フィルムのうち少なくとも一方がセルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムであり、前記セルロースアシレート系樹脂の総アシル置換度が2.0〜2.6である限り、特に制限はない。
まず、セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムであり、前記セルロースアシレート系樹脂の総アシル置換度が2.0〜2.6である保護フィルムについて説明する。
【0016】
<セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルム>
(セルロースアシレート系樹脂)
【0017】
前記セルロースアシレート系樹脂として、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.0〜2.6であるセルロースアシレートを用いる。かかるセルロースアシレートを用いて作製したフィルムは、透湿度と平衡含水率が大きくなる傾向がある。
前記セルロースアシレート系樹脂は総置換度2.0〜2.6のものを主たる組成とし、保護フィルムとしての品質・性能に影響のない範囲であれば、品質、製造条件調整や原料の回収再生等の目的で、異種のセルロース種を添加する事ができる。
【0018】
前記セルロースアシレート系樹脂のアシル置換度は、2.05〜2.55であることがさらに好ましく、2.10〜2.50であることが特に好ましい。
本発明に使用されるセルロースアシレートフィルムは、透湿度や含水率調整の観点で親水性付与をするため、置換基がアセチル基からなるものが好ましい。すなわち、前記セルロースアシレート系樹脂は、置換度が2.0〜2.6のセルロースアシレートで(いわゆるDAC)であることがさらに好ましく、その置換度の好ましい範囲は上述のとおりである。
【0019】
セルロースの水酸基に置換する炭素原子数2〜22のアシル基のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
【0020】
また、混合脂肪酸セルロースアシレートを用いてもよく、該混合脂肪酸セルロースアシレートとしては、具体的には、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0021】
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。
前記セルロースアシレートを得るには、具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。エステル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理を行う等して、前記の特定のセルロースアシレートを得ることができる。
【0022】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の特定のセルロースアシレートからなることが好ましい。『実質的に』とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。前記セルロースアシレートは、粒子状で使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で、好ましくは200〜700、より好ましくは250〜550、更に好ましくは250〜400であり、特に好ましくは250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
【0023】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため、前記セルロースアシレートとしては低分子成分を除去したものが有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロースアシレート100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており含水率2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。
前記セルロースアシレートの原料綿や合成方法は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.7−12に詳細に記載されている原料綿や合成方法を採用できる。
【0024】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムはセルロースアシレート樹脂の他にその他の樹脂を含んでいてもよい。セルロースアシレート樹脂の他に環状オレフィン樹脂を含むことも好ましい。
【0025】
(添加剤)
本発明に用いられるセルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムは、前記セルロースアシレートと必要に応じて添加剤とを有機溶媒に溶解させた溶液を用いてフィルム化することにより得ることができる。
【0026】
本発明において用いることができる添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、レターデーション(光学異方性)発現剤、レターデーション(光学異方性)減少剤、マット剤(微粒子)、剥離促進剤、赤外吸収剤などを挙げることができる。本発明においては、レターデーション発現剤を用いるのが好ましい。また、可塑剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、染料及びマット剤から選択される1種以上を用いるのが好ましい。
それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いることができ、例えば特開平2001−151901号公報などに記載されている。
【0027】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムは紫外線吸収剤(以下、UV吸収剤とも言う)を含有することが、耐光性付与の観点から好ましい。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4,4'−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等を挙げることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4,4'−メトキシベンゾフェノン、2(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールが特に好ましい。
【0028】
紫外線吸収剤は、吸収波長の異なる複数の吸収剤を複合して用いることが、広い波長範囲で高い遮断効果を得ることができるので好ましい。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。特に好ましい紫外線吸収剤は、先に上げたベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
【0029】
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
【0030】
紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対し0.001〜5質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましい。添加量が0.001質量部未満では添加効果を十分に発揮することができず、添加量が5質量部を超えると、フィルム表面へ紫外線吸収剤がブリードアウトする場合があるのが上記範囲内とするのが好ましい。
【0031】
また、紫外線吸収剤はセルロースアシレート溶解時に同時に添加しても良いし、溶解後のドープに添加してもよい。特にスタティックミキサ等を用い、流延直前にドープに紫外線吸収剤溶液を添加する形態が、分光吸収特性を容易に調整することができ、好ましい。
【0032】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムはポリエステル系可塑剤を含有することが、フィルムに熱をかけた時の揮散量が少ないという観点から好ましく、セルロースアシレートとの相溶性の観点等で可塑剤として糖エステル化合物を用いる事が好ましい。これらは1種類で使ってもよく、複数種を併用してもよい。
ポリエステル系可塑剤以外の可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルも挙げられる。また、前記可塑剤が、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートから選ばれたものであることがより好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。可塑剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して1〜30質量部とするのが好ましい。
【0033】
前記ポリエステル系可塑剤は、その化合物中に繰り返し単位を有するものであり、数平均分子量が700〜10000のものが好ましい。前記ポリエステル系可塑剤、溶液流延法において、溶媒の揮発速度を速める機能や、残留溶媒量を低減する機能も有する。さらに、機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点で、有用な効果を示す。
【0034】
ここで、前記ポリエステル系可塑剤の数平均分子量は、より好ましくは数平均分子量700〜8000であり、さらに好ましくは数平均分子量700〜5000であり、特に好ましくは数平均分子量1000〜5000である。
以下、本発明に用いられる前記ポリエステル系可塑剤について、その具体例を挙げながら詳細に説明するが、本発明で用いられる前記ポリエステル系可塑剤がこれらのものに限定されるわけでないことは言うまでもない。
【0035】
前記ポリエステル系可塑剤としては、ポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)、ポリエステル系成分と他の成分の共重合体などが挙げられ、脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)とアクリル系ポリマーの共重合体およびポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)とスチレン系ポリマーの共重合体が好ましく、少なくとも共重合成分の1つとして芳香族環を含有するポリエステル系可塑剤であることがより好ましい。
【0036】
前記脂肪族ポリエステル系ポリマーとしては、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものであり、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。本発明のポリエステル系ポリマーに使用されるジカルボン酸は、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基または炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。
【0037】
前記炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0038】
これらの中でも好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸成分としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸である。
【0039】
前記高分子量添加剤に利用されるジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれるものである。
【0040】
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
【0041】
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
【0042】
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics)レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
【0043】
本発明においては、特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された前記ポリエステル系可塑剤であることも好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
前記ポリエステル系可塑剤の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
【0044】
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
【0045】
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上を使用することができる。
【0046】
かかる前記ポリエステル系可塑剤の合成は、常法により上記脂肪族ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのポリエステル系添加剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0047】
前記芳香族ポリエステル系ポリマーは、前記ポリエステルポリマーに芳香環を有するモノマーを共重合することによって得られる。芳香環を有するモノマーとしては、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のモノマーである。
炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。これらの中でも好ましい芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、である。
【0048】
炭素数6〜20の芳香族ジオールとしては、特に限定されないがビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールである。
【0049】
前記芳香族ポリエステル系ポリマーは前述のポリエステルに芳香族ジカルボン酸または芳香族ジオールのそれぞれの少なくとも一種類を組み合わせて用いられるが、その組み合わせは特に限定されるものではなく、それぞれの成分を数種類組み合わせても問題ない。前述のように、特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された高分子量添加剤であることが好ましく、封止には前述の方法を使用することができる。
【0050】
本発明では非リン酸エステル系の化合物以外のレターデーション低減剤として、例えば、リン酸エステル系の化合物や、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知のエステル系以外の化合物を広く採用することができる。
【0051】
高分子系レターデーション低減剤としては、リン酸ポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびアクリル系ポリマーおよびこれら等の共重合体から選択され、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含まれることが好ましい。
【0052】
非リン酸エステル系以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、以下を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はセルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。さらにまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
【0053】
非リン酸エステル系以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、特に限定されないが、詳細は特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に記載されている。
【0054】
特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に一般式(1)として記載される化合物は、以下の方法にて作成することができる。
該公報一般式(1)の化合物は、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。
【0055】
特開2007−272177号公報一般式(2)に記載の化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、またはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
【0056】
前記レターデーション低減剤は、Rth低減剤であることが好適なNzファクターを実現する観点からより好ましい。前記レターデーション低減剤のうち、Rth低減剤としては、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマー、特開2007−272177号公報一般式(3)〜(7)の低分子化合物などを挙げることができ、その中でもアクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーがより好ましい。
【0057】
レターデーション低減剤は、セルロース系樹脂に対し、0.01〜30質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜20質量%の割合で添加することがより好ましく、0.1〜10質量%の割合で添加することが特に好ましい。
上記添加量を30質量%以下とすることにより、セルロース系樹脂との相溶性を向上させることができ、白化を抑制させることができる。2種類以上のレターデーション低減剤を用いる場合、その合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0058】
前記糖エステル化合物とは、該化合物を構成する単糖または多糖中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基)の少なくとも1つと、少なくとも1種の置換基とがエステル結合されている化合物のことを言う。すなわち、ここで言う糖エステル化合物には広義の糖誘導体類も含まれ、例えばグルコン酸のような糖残基を構造として含む化合物も含まれる。すなわち、前記糖エステル化合物には、グルコースとカルボン酸のエステル体も、グルコン酸とアルコールのエステル体も含まれる。
【0059】
前記糖エステル化合物を構成する単糖または多糖中の置換可能な基は、ヒドロキシル基であることが好ましく、その置換基としては、置換または無置換のアシル基、置換または無置換のアリール基、あるいは、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアミノ基の中から選択されることが好ましく、置換または無置換のアシル基、置換または無置換のアルキル基、あるいは置換または無置換のアリール基であることがより好ましく、無置換のアシル基、置換または無置換のアルキル基、あるいは、無置換のアリール基であることが特に好ましい。
また、その置換率については、セルロースアシレートとの相溶性等を勘案して適宜選択する事ができる。
【0060】
前記糖エステル化合物中には、糖エステル化合物を構成する単糖または多糖由来の構造(以下、糖残基とも言う)が含まれる。前記糖残基の単糖当たりの構造を、糖エステル化合物の構造単位と言う。前記糖エステル化合物の構造単位は、ピラノース構造単位またはフラノース構造単位を含むことが好ましく、全ての糖残基がピラノース構造単位またはフラノース構造単位であることがより好ましい。また、前記糖エステルが多糖から構成される場合は、ピラノース構造単位またはフラノース構造単位をともに含むことが好ましい。
【0061】
前記糖エステル化合物中に含まれる構造単位の数は、1〜12であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1または2であることが特に好ましい。
本発明では、前記糖エステル化合物はヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を1個〜12個含む糖エステル化合物であることがより好ましく、ヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を1または2個含む糖エステル化合物であることがより好ましい。
【0062】
前記単糖または2〜12個の単糖単位を含む糖類の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクロース、スクラロース、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、バルトペンタオース、ベルバルコース、マルトヘキサオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
【0063】
好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。前記糖エステル化合物は、グルコース骨格またはスクロース骨格を有することが、特開2009−1696号公報の[0059]に化合物5として記載されていて同文献の実施例で用いられているマルトース骨格を有する糖エステル化合物などと比較して、ポリマーとの相溶性の観点からより特に好ましい。
【0064】
(レターデーション発現剤)
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムは、光学異方性を大きく発現させる必要はないが、所望によりレターデーション発現剤を用いてもよい。
前記レターデーション発現剤としては、棒状又は円盤状化合物からなるものを挙げることができる。
上記棒状又は円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1乃至30質量部であることが好ましく、0.5乃至20質量部であることがさらに好ましい。
円盤状のレターデーション発現剤は、前記セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して、0.05乃至20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2乃至5質量部の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5乃至2質量部の範囲で使用することが最も好ましい。
円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。
二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
棒状または円盤状化合物からなる前記レターデーション発現剤は、250乃至400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0065】
円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が円盤状化合物として好ましく用いられる。
【0066】
前記円盤状化合物が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至8であることがさらに好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0067】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
【0068】
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0069】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
【0070】
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
【0071】
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基および2−ジエチルアミノエチル基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基および1−ヘキセニル基が含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基および1−ヘキシニル基が含まれる。
【0072】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基およびブタノイル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基およびメトキシエトキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基およびエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0073】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基およびオクチルチオ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基およびエタンスルホニル基が含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミド基が含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基およびn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基および2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジエチルカルバモイル基が含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基およびジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基およびモルホリノ基が含まれる。
円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい。
【0074】
本発明では前述の円盤状化合物の他に、直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上であることを意味する。
【0075】
棒状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有するものが好ましく、少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0076】
一般式(1):Ar1−L1−Ar2
上記一般式(1)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
アリール基および置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子または硫黄原子がさらに好ましい。
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0077】
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例、N−メチルウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N,N,N'−トリメチルウレイド基)、アルキル基(例、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(例、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基)、アルキニル基(例、エチニル基、ブチニル基)、アシル基(例、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ラウリル基)、アシルオキシ基(例、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウリルオキシ基)、アルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基)、アリールオキシ基(例、フェノキシ基)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例、ブトキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルチオ基(例、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基)、アリールチオ基(例、フェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基)、アミド基(例、アセトアミド基、ブチルアミド基、ヘキシルアミド基、ラウリルアミド基)および非芳香族性複素環基(例、モルホリル基、ピラジニル基)が含まれる。
【0078】
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアルキル基が好ましい。
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分およびアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基および非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分およびアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシ基が好ましい。
【0079】
一般式(1)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、より好ましくは1乃至15であり、さらに好ましくは1乃至10であり、さらに好ましくは1乃至8であり、最も好ましくは1乃至6である。
【0080】
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2乃至10であり、より好ましくは2乃至8であり、さらに好ましくは2乃至6であり、さらに好ましくは2乃至4であり、最も好ましくは2(ビニレンまたはエチニレン)である。
アリーレン基は、炭素原子数は6乃至20であることが好ましく、より好ましくは6乃至16であり、さらに好ましくは6乃至12である。
【0081】
一般式(1)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
棒状化合物としては、下記式一般式(2)で表される化合物がさらに好ましい。
【0082】
一般式(2):Ar1−L2−X−L3−Ar2
【0083】
上記一般式(2)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義および例は、一般式(1)のAr1およびAr2と同様である。
【0084】
一般式(2)において、L2およびL3は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基より選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、より好ましくは1乃至8であり、さらに好ましくは1乃至6であり、さらに好ましくは1乃至4であり、1または2(メチレンまたはエチレン)であることが最も好ましい。
L2およびL3は、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。
【0085】
一般式(2)において、Xは、1,4-シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。
一般式(1)又は(2)で表される化合物の具体例としては、特開2004−109657号公報の〔化1〕乃至〔化11〕に記載の化合物が挙げられる。
【0086】
その他、好ましい化合物を以下に示す。
【0087】
【化1】

【0088】
【化2】

【0089】
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法により合成できる。文献としては、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J. Am. Chem. Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J. Org. Chem.,40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
【0090】
次に、前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムを製造するときに用いるセルロースアシレート溶液を調製するときに用いられる有機溶媒について記述する。
有機溶媒として、塩素系有機溶媒を主溶媒とする塩素系溶媒と塩素系有機溶媒を含まない非塩素系溶媒とのいずれをも用いることができる。
【0091】
(塩素系溶媒)
本発明に用いられるセルロースアシレートの溶液を作製するに際しては、主溶媒として塩素系有機溶媒が好ましく用いられる。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りはその塩素系有機溶媒の種類は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロロメタンは有機溶媒全体量中少なくとも50質量%使用することが必要である。本発明で塩素系有機溶剤と併用される他の有機溶媒について以下に記す。すなわち、好ましい他の有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテート等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等が挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
また塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。
塩素系有機溶媒と他の有機溶媒との組合せ例としては以下の組成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
・ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/10/10/5/7、質量部)
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/10/5/8、質量部)
・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール (70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール (60/20/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (70/10/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール (65/20/10/5、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5、質量部)、
などを挙げることができる。
【0093】
次に、セルロースアシレートの溶液を作製するに際して好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
【0094】
以上のセルロースアシレートに用いられる非塩素系有機溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。すなわち、非塩素系溶媒としては、前記非塩素系有機溶媒を主溶媒とする混合溶媒が好ましく、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいは或いはそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールから選ばれる、混合溶媒である。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合溶媒であってもよい。
【0095】
第3の溶媒であるアルコールは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
【0096】
以上の3種類の混合溶媒の混合割合は、混合溶媒全体量中、第1の溶媒が20〜95質量%、第2の溶媒が2〜60質量%さらに第3の溶媒が2〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜50質量%、さらに第3のアルコールが3〜25質量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜30質量%、第3の溶媒がアルコールであり3〜15質量%含まれることが好ましい。以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.12−16に詳細に記載されている。
好ましい非塩素系有機溶媒の組合せは以下挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6、質量部)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/10/10/5/7、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/10/5/8、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(85/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(60/15/15/5/6、質量部)、
・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/1、3−ジオキソラン/メタノール/エタノール (70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール (60/20/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、
【0098】
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、
・アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール (65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/1,3−ジオキソラン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5、質量部)、
・1、3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール (55/20/10/5/5/5、質量部)
などをあげることができる。
更に下記の方法で調整したセルロースアシレート溶液を用いることもできる。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加する方法
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(84/10/4/2、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加する
方法
・酢酸メチル/アセトン/エタノール(84/10/6、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加する方法
本発明に用いるドープには、上記非塩素系有機溶媒以外に、ジクロロメタンを全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
【0099】
(レターデーション)
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムは、フィルム面内方向のレターデーションReが20nmより大きくなっても、本発明の効果はでも同じであるが、下記観点から等方性であることが好ましい。
まず、Rear側(液晶表示装置を視認する側から見て、液晶セルよりも背面側)偏光板に本発明の偏光板を使用する場合、Re>20nmの保護フィルムを使用した偏光板は、液晶表示装置に使用した際、白表示時の透過率が下がり色付きが生じる。
次に、Front側(液晶表示装置を視認する側から見て、液晶セルよりも視認者側)偏光版に本発明の偏光板を使用する場合、Re>20nm保護フィルムを使用した偏光板は、3Dディスプレイに使用した際、色付きが生じる。
すなわち、前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムが、下記式(1)を満たすことが好ましい。
式(1): |Re(590)|≦20nm
(式(1)中、Re(590)は、波長590nmにおけるフィルム面内方向のレターデーションReの値を表し、面内レターデーションは下記式(1’)で表される。)
式(1’):Re=(nx−ny)×d
(式(1’)中、nxおよびnyは屈折率楕円体の各主軸方位の屈折率を表し、dはフィルム膜厚を表す。)
【0100】
本明細書におけるRe(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、590nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0101】
【数1】

【0102】
ここで、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表し、nx、ny、nzは、屈折率楕円体の各主軸方位の屈折率を表し、dはフィルム厚を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d 式(B)
なおこの際、パラメータとして平均屈折率nが必要になるが、これはアッベ屈折計((株)アタゴ社製の「アッベ屈折計2−T」)により測定した値を用いた。
【0103】
(含水率)
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの25℃、相対湿度80%における平衡含水率は3%以上であることが、液晶表示パネルを大画面化した際に環境湿度変化に対して、該保護フィルムが緩衝体となって偏光板内部の湿度変化を中央部と端部で均質化でき、好ましい。
25℃、相対湿度80%における平衡含水率は、3.0%以上10.0%以下であることが好ましい。3.0%以上9.0%以下であることがさらに好ましく、3.0%以上8.0%以下であることが特に好ましく、4.0%を超え8.0%以下であることがより特に好ましい。
【0104】
(透湿度)
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの40℃、相対湿度90%、24時間経時後の透湿度は、400〜3000g/m2であることが、保護フイルムを偏光子に貼合する際に、溶媒(水)の抜けを良くし、乾燥にかかる時間を短くし、偏光子と保護フィルムの接着性を改善する観点から好ましい。また、液晶表示装置に組み込んだあとに、偏光子(特に偏光子として一般に用いられるポリビニルアルコールフィルム)が含んだ水分を透過させて放出しやすくする観点から好ましい。本発明の偏光板では、このように平衡含水率と透湿度が共に高い前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムを偏光板保護フィルムとして用いることで、環境湿度変化に対して緩衝剤として吸湿しにくくし、かつ一度偏光板内部に吸湿してしまった後に放湿しやすくすることができる。その結果、液晶表示装置に組み込んだときの局所的なむらが生じにくくすることができる。
本発明に使用する、前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの40℃、相対湿度90%、1dayにおける透湿度は、450g/m2・day以上3000g/m2・day以下であることが好ましい。480g/m2・day以上2500g/m2・day以下であることがさらに好ましく、500g/m2・day以上2000g/m2・day以下であることが特に好ましく、750〜2000g/m2・dayであることがより特に好ましい。
なお、本明細書では、JIS Z−0208に従って、透湿度を算出するものとする。サンプルの透湿度測定の際は、恒温恒湿装置に入れたカップを適当な時間間隔で取り出して秤量する操作を繰り返し、二つの連続する秤量で、それぞれ単位時間あたりの質量増加を求め、それが5%以内で一定になるまで評価を続ける。また、サンプルの吸湿等による影響を除外するため、吸湿剤の入れていないブランクのカップを測定し、透湿度の値を補正する。また、ビニルアルコール系重合体を含む樹脂層を有する保護フィルムの透湿度を測定する場合には、透明基材フィルム上に設けた該樹脂層が測定カップに接する様な向きでサンプルをセットし、上記と同様の方法で、透明基材フィルム側からの透湿度を測定する。
【0105】
一方、透湿度および含水率が高くなりすぎると偏光子の耐久性が劣るようになるため、高湿環境下での光漏れの原因となりやすい。そのため、偏光板保護フィルムの透湿度及び含水率を最適な範囲でコントロールすることがより好ましい。
【0106】
(膜厚)
本発明に使用する前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの膜厚は、20〜80μmであることが好ましい。
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの透湿度を高くするためには、フィルムの膜厚は薄いほど良いが、薄くしすぎるとハンドリングが困難になるため、膜厚は20〜80μmであることが好ましい。30〜70μmであることが好ましく、35〜65μmであることが特に好ましい。
【0107】
(フィルム幅)
高温低湿から高湿への急激な変化により発生するムラは、液晶表示パネルが大きなサイズになった時に特に問題となる。本発明の偏光板に使用される前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの幅は広い程好ましい。前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの幅は、具体的には、1300mm以上であることが好ましく、1400mm以上であることがより好ましく、1800mm以上であることが特に好ましい。
【0108】
(機能性層)
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムは単層フィルムであっても、2層以上の積層構造を有していてもよい。
本発明の偏光板は、前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルム上に、機能性層が積層されていることが好ましい。
前記機能性層としては、本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はないが、例えば従来この分野において公知のハードコート層、反射防止層、帯電防止層を挙げることができる。
【0109】
<偏光子を挟んで対向する他方の保護フィルム>
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムに対して、前記偏光子を挟んで対向する他方の保護フィルムは、前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムと同一であっても、異なっていてもよく、種々のポリマーフィルムを用いることができる。具体的には、セルロースアシレート、ポリエステル、ポリカーボネート、飽和脂環式構造含有重合体、アクリル系ポリマー、メラミン系ポリマー、ポリエチレン等の種々のポリマーを主成分とするポリマーフィルムを用いることができる。中でも、セルロースアシレート、又は飽和脂環式構造含有重合体を主成分とするポリマーフィルムが好ましい。
【0110】
偏光子を挟んで対向する他方の保護フィルムとしては市販品を用いてもよい。例えば、偏光子を挟んで対向する他方の保護フィルムとして使用可能なセルロースアシレートフィルムの市販品としては、富士フイルム社製TAC−TD80U及びTD80ULなどがある。また、偏光子を挟んで対向する他方の保護フィルムとして使用可能なノルボルネン系樹脂フィルムの市販品としては、JSR社製のアートンなどがある。偏光子を挟んで対向する他方の保護フィルムとして使用可能な非晶質ポリオレフィンのフィルムとしては、日本ゼオン社製のゼオネックス(ZEONOR)などがある。また、日東電工社製のARC270なども使用することができる。
【0111】
(保護フィルムの組合せ例)
上記した通り、本発明では、前記二枚の保護フィルムとして、透湿度や含水率が異なる保護フィルムを利用してもよい。
ある程度高透湿性のポリマーフィルムの例には、セルローストリアセテートイフィルムが含まれる。また、市販品としては、FUJITACTD80UL(富士フイルム製)などが含まれる。一方、低透湿性のポリマーフィルムの例には、前記防眩層と低屈折率層を有する防眩性反射フィルムが含まれ、例えば、それらの層とともに、セルロースアシレートフィルムを有する防眩性反射フィルムが挙げられる。また、市販品としては、ZEONOR−ZF−14(日本ゼオン社製)、及びARC270(日東電工社製)が挙げられる。
本発明では、前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムに対して、前記偏光子を挟んで対向する他方の保護フィルムの40℃、相対湿度90%、24時間経時後の透湿度が低いことが、偏光子のヨウ素などが偏光板中または偏光板に侵入してくる水分により移動し過ぎないようにする観点から好ましい。
前記偏光子を挟んで対向する他方の保護フィルムは、40℃、相対湿度90%、24時間経時後の透湿度が0〜250g/m2であることが好ましく、0〜200g/m2であることがより好ましく、0〜150g/m2であることが特に好ましい。以上の観点から、前記偏光子を挟んで対向する他方の保護フィルムは、低透湿性のポリマーフィルムであることが好ましい。
【0112】
<<偏光子>>
偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明には、いずれの偏光子を用いてもよい。
【0113】
<<本発明の偏光板の製造方法>>
本発明の偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。
例えば、まず、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して偏光子を作製する。
次に、保護フィルムとして用いる2枚のポリマーフィルム等を表面処理して、偏光子との接着性を改善する。その処理面を偏光子の表面と、接着剤を用いて、貼り合わせ、偏光板を得る。
なおポリマーフィルムが面内遅相軸を有する場合は、偏光子の吸収軸とポリマーフィルムの面内遅相軸とを直交にして貼り合せることが好ましい。
【0114】
前記ポリマーフィルムがセルロースアシレートフィルムの場合は、偏光子との接着性を改善するために、アルカリ鹸化処理を実施するのが好ましい。また、アルカリ鹸化処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号の各公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。また、ポリマーフィルムの種類によっては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、及び紫外線照射処理なども有効である。
また、保護フィルムの処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成してもよい。
【0115】
プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶セルへ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶セルへ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。
【0116】
前記保護フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムは、公知のセルロースアシレートフィルムの製造方法を用いて製造することができる。
【0117】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムは、ソルベントキャスト法により製造されるのが好ましい。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートを含有する光学フィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の公報を参考にすることができる。また、前記光学フィルムは、Tg−50℃〜Tgの延伸温度において、延伸を開始するときの残留溶剤量が前記フィルム全体の質量に対して5質量%以上の条件で延伸処理を施されており、その他の延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の各公報を参考にすることができる。
【0118】
<流延方法>
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。またここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
【0119】
セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムを製造するのに使用される支持体としては、エンドレスに走行する金属支持体として、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられることが好ましい。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基又は2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべての溶液温度が同一でもよく、又は工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
【0120】
<延伸処理>
セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムは、延伸処理を行っても行わなくても本発明に記載される効果は得られるが、延伸されない方が、光学的等方性を保つ観点から好ましい。一方、前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムに対して前記偏光子を挟んで対向する他方の保護フィルムは製膜された未延伸フィルムを延伸処理してもよく、所望の物性やレターデーションを付与してもよい。
【0121】
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。長手方向の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。幅方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
【0122】
<乾燥>
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの製造方法では、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、得られたフィルムを乾燥する工程を含むことが好ましい。
【0123】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラム又はベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム又はベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム又はベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、本発明の趣旨に反しない限り、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよいが、前記延伸温度以下であることが好ましい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0124】
フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0125】
以上のようにして得られた、前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
【0126】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムは、特に大画面液晶表示装置に用いるのに適している。大画面用液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いる場合は、例えば、フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムには、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の光学フィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様の光学フィルムも含まれる。後者の態様の光学フィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられた光学補償フィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
【0127】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、本発明の偏光板を少なくとも1枚含むことを特徴とする。
本発明の液晶表示装置は、本発明の偏光板を少なくとも1枚用いた液晶表示装置である。本発明の偏光板は、様々な表示モードの液晶セルに用いることができ、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードのセルと組み合わせて使用することができる。その中でも、本発明の液晶表示装置は、前記液晶セルがVAモードまたはIPSモードであることが好ましい。
【0128】
本発明の液晶表示装置は、前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルム、前記偏光子、前記他方の保護フィルムおよび前記液晶セルが、この順に配置されていることが好ましい。すなわち、本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込む場合は、高透湿性の前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムを、液晶セルからみて外側にして配置するのが好ましい。
【実施例】
【0129】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0130】
[測定法]
(含水率の測定)
フィルムの含水率は、25℃、相対湿度80%環境下に2時間以上放置した後、JIS K 0068(カールフィッシャー法)にて測定した。
【0131】
(透湿度の測定)
フィルム透湿度は、JIS Z 0208(カップ法)に従って測定した。条件は、40℃、相対湿度90%環境下における24時間の水蒸気の透過量を測定し、透湿度として用いた。
【0132】
(フィルムのレターデーション)
前述の方法により自動複屈折計KOBRA−WR(王子計測器(株)製)を用いて波長590nmにおいて3次元複屈折測定を行い、面内のレターデーションRe(590)、および傾斜角を変えてReを測定することで得られる膜厚方向のレターデーションRth(590)を求めた。ReおよびRthの値を下記表に示した。
【0133】
<保護フィルムの作製>
[製造例1]
(保護フィルムAの製造)
下記表2中に記載の割合となるように、各成分を混合して、セルロースエステル溶液をそれぞれ調製した。各セルロースエステル溶液を、バンド流延機を用いて流延し、得られたウェブをバンドから剥離し、下記表1中に示した膜厚になるように作製した。また、巻き取った後の最終的な保護フィルムの幅を1960mmとなるようにフィルム端部を処理した。得られた総アシル置換度が2.0〜2.6であるセルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムを保護フィルムAとした。
【0134】
下記表2中、Cel−1〜Cel−4はセルロース系ポリマーを表し、TPPは、トリフェニルフォスフェートを表し、BDPは、ビフェニルフォスフェートを表し、添加剤4はポリビニルピロリドンを表す。
【0135】
UV吸収剤1および2、ポリエステル系可塑剤1〜3は、それぞれ以下の構造の化合物を表す。
【0136】
UV吸収剤1:商品名TINUVIN 326(BASF社製)
【化3】

【0137】
UV吸収剤2:商品名TINUVIN 109(BASF社製)
【化4】

【0138】
本実施例に用いたポリエステル系可塑剤の組成を表1に示す。
【0139】
【表1】

【0140】
表1中、EGはエチレングリコールを、PGはプロピレングリコールを、TPAはテレフタル酸を、PAはフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸をそれぞれ示している。
【0141】
保護フィルムAの作製方法および得られた結果を下記表2に示す。
【0142】
【表2】

【0143】
[製造例2]
(保護フィルムBの製造)
(1)保護フィルムB1〜B4の作製
下記表3中に記載の割合となるように、各成分を混合して、セルロースエステル溶液をそれぞれ調製した。各セルロースエステル溶液を、バンド流延機を用いて流延し、得られたウェブをバンドから剥離し、その後、下記表3に記載の条件でそれぞれ延伸した。なお、下記表3中、TD方向とは、搬送方向に対して垂直な方向(即ち幅方向)を意味する。延伸後、乾燥して、下記表3中に記載の厚みのセルロースアシレート系フィルムをそれぞれ作製し、保護フィルムB1〜B4とした。また、巻き取った後の最終的な保護フィルムの幅を1960mmとなるようにフィルム端部を処理した。
【0144】
【化5】

【0145】
【化6】

【0146】
【化7】

【0147】
(2)保護フィルムB5の作製
市販されているシクロオレフィン系ポリマーフィルム“ZEONOR”(日本ゼオン製)を、下記表3中に記載の条件で延伸して、シクロオレフィン系ポリマーフィルムを作製し、保護フィルムB5として用いた。また、巻き取った後の最終的な保護フィルムの幅を1490mmとなるようにフィルム端部を処理した。
【0148】
【表3】

【0149】
(偏光板の製造)
[実施例1〜31、比較例1〜7]
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。実施例Aで作製したセルロースアシレートフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。なお、ケン化処理は以下のような条件で行った。
1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.005mol/Lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。製造例1で作製した保護フィルムAを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。 最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
製造例2で作製した保護フィルムBにケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付け、70℃で10分以上乾燥した。
偏光子の透過軸と製造例2で作製したフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した。
このようにして作製した偏光板を、その一部はそのまま防湿袋に入れて保管し、もう一部は25℃・相対湿度60%で2時間調湿後に防湿袋に入れて保管した。防湿袋はポリエチレンテレフタレート/アルミ/ポリエチレンの積層構造からなる包装材であり、透湿度は0.01mg/m2(24時間)以下であった。
上記のようにして保護フィルムAおよび保護フィルムBを用いて、下記表4に記載の構成の偏光板を作製した。このとき、作製した偏光板の幅は1960mmであった。
【0150】
【表4】

【0151】
[液晶表示装置の作製]
(VAモードの液晶表示装置の作製)
VAモードの液晶TV(LC46−LX1、シャープ(株)製)の表裏の偏光板を剥がして、液晶セルとして用いた。作製した偏光板を、下記表5に示す組みあわせで液晶セルに貼り合せた。このとき、本発明の液晶表示装置は、リア側およびフロント側偏光板ともに、作製した偏光板の保護フィルムBが液晶セルに接するように接着剤を用いて貼り付けを行った。すなわち、作製した偏光板の保護フィルムAは、いずれも液晶セルとは偏光子を挟んで反対側となるように配置した。
【0152】
<サイクル試験の評価方法>
液晶表示装置を、50℃、相対湿度95%環境下に24時間放置した後、50℃、dry(相対湿度10%)環境下に1時間放置し、TVを点灯したときの、黒表示時のムラを評価した。
×;光漏れ箇所が面内で3箇所以上ある。
△;光漏れ箇所が面内で2箇所ある。
○;光漏れ箇所が面内で1箇所ある。
◎;光漏れ箇所が視認されない。
【0153】
【表5】

【0154】
上記表5より、保護フィルムAに置換度2.0〜2.6のセルロースアシレート系樹脂を含むフィルムを使用する偏光板を用いると、50℃、相対湿度95%環境下に24時間放置した後、50℃、dry(相対湿度10%)環境下に1時間放置した後のムラの発生が抑止されていることがわかった。
なお、実施例の偏光板を液晶セルに貼り合わせたときに、気泡の発生も生じていないことについても確認した。
また、保護フィルムAを構成するセルロースアシレート系樹脂が、同一アシル置換度同士であった場合、アシル基のみから構成される保護フィルムA6と保護フィルムB1〜B5をそれぞれ組み合わせた実施例6、15〜17および19の場合の方が、プロピオニル基を導入した保護フィルムA15と保護フィルムB1〜B5をそれぞれ組み合わせた実施例27〜31の場合に比べ、湿度変化時の表示ムラが発生しにくいことがわかった。いかなる理論に拘泥するものでもないが、表2の保護フィルムA6とA15の物性を比較すると、プロピオニル基を導入したことにより、保護フィルムAの平衡含水率が5%から4%に下がり、透湿度が1100g/m2・dayから700g/m2・dayに下がったことが湿度変化時の表示ムラが発生しやすくなった原因となっている可能性がある。
【0155】
[実施例101〜114、比較例101〜103]
(IPS用偏光板の作製)
VAモードの液晶表示装置に用いた実施例1〜31および比較例1〜7の偏光板の作成と同様にして、下記表6に示す様に偏光板を作製した。
【0156】
【表6】

【0157】
(IPSモードの液晶表示装置の作製)
IPSモード液晶表示装置(VIERA TH−37−G1、パナソニック(株)社製)の表裏の偏光板を剥がして液晶セルとして用いた。作製した偏光板を、下記表7に示す組みあわせで、保護フィルムBが液晶セル側となるように液晶セルに貼り合せた。
【0158】
【表7】

【0159】
上記表7から、保護フィルムAに置換度2.0〜2.6のセルロースアシレート系樹脂を含むフィルムを使用する偏光板を用いると、50℃、相対湿度95%環境下に24時間放置した後、50℃、dry(相対湿度10%)環境下に1時間放置した後のムラの発生が抑止されていることがわかった。
なお、実施例の偏光板を液晶セルに貼り合わせたときに、気泡の発生も生じていないことについても確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の保護フィルムと、
前記二枚の保護フィルムで両表面を挟持された偏光子とを含み、
前記二枚の保護フィルムのうち少なくとも一方がセルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムであり、
前記セルロースアシレート系樹脂の総アシル置換度が2.0〜2.6であることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムが、下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の偏光板。
式(1): |Re(590)|≦20nm
(式(1)中、Re(590)は、波長590nmにおけるフィルム面内方向のレターデーションReの値を表し、面内レターデーションは下記式(1’)で表される。)
式(1’):Re=(nx−ny)×d
(式(1’)中、nxおよびnyは屈折率楕円体の各主軸方位の屈折率を表し、dはフィルム膜厚を表す。)
【請求項3】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの25℃、相対湿度80%における平衡含水率が3%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの40℃、相対湿度95%、24時間経時後の透湿度が、400g/m2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの膜厚が20〜60μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項6】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムの幅が1300mm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項7】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムがUV吸収剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項8】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムがポリエステル系可塑剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項9】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルム上に、機能性層が積層されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項10】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルムに対して、前記偏光子を挟んで対向する他方の保護フィルムの40℃、相対湿度90%、24時間経時後の透湿度が250g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項11】
液晶セルと、請求項1〜10のいずれか一項に記載の偏光板を少なくとも1枚含むことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
前記セルロースアシレート系樹脂を含む保護フィルム、前記偏光子、前記他方の保護フィルムおよび前記液晶セルが、この順に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記液晶セルがVAモードまたはIPSモードであることを特徴とする請求項11または12に記載の液晶表示装置。

【公開番号】特開2011−237474(P2011−237474A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106316(P2010−106316)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】