説明

偏光板の製造方法

【課題】偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合し、そこに紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化させ、偏光板を製造する方法において、偏光板に発生しやすい熱ムラを抑制する。
【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルム1に紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルム2,3を貼合して積層体4とし、そこに紫外線照射装置16から発せられる紫外線を照射して上記の接着剤を硬化させ、偏光板5を製造する方法において、紫外線照射装置16の光が発せられる側、すなわち積層体4との間に、400nm以上の波長の光をカットできる波長フィルター18を配置し、400nm以上の波長の光を実質的に遮断することによって、実質的に400nm以下の波長のみからなる紫外線を積層体4に照射し、上記の接着剤を硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置を構成する光学部品の一つとして有用な偏光板を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、消費電力が小さく、低電圧で動作し、軽量でかつ薄型の液晶表示装置が、携帯電話、携帯情報端末、コンピュータ用のモニター、及びテレビ等の情報用表示デバイスとして急速に普及してきている。
【0003】
液晶表示装置を構成する光学部品の一つとして用いられる偏光板は、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの少なくとも片面、通常は両面に透明樹脂フィルムが貼合された構成を有し、粘着剤層を介して液晶セルに貼着され、液晶パネルとして使用される。偏光フィルムの一方の面に貼合される透明樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムを保護する、いわゆる保護フィルムとしての機能を有するものであるが、偏光フィルムの両面に透明樹脂フィルムを貼合する場合、もう一方の透明樹脂フィルムは、単なる保護フィルムとしての機能のほか、液晶セルの光学補償や液晶表示装置の視野角改良を目的とした、いわゆる光学補償フィルムとしての機能を有するものとすることも多い。
【0004】
偏光フィルムと透明樹脂フィルムの貼合には、従来からポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶液が接着剤として用いられてきたが、かかる水溶液系の接着剤は、適用できる樹脂フィルムに限りがあり、また乾燥・硬化のために相応の時間を要する。そして近年では、多種多様な透明樹脂フィルムが、保護フィルムとして、また光学補償フィルムとして、偏光フィルムに貼合されることが求められている。そこで、各種の透明樹脂フィルムに適用でき、硬化時間が短く、有害物質を大気中に放散しないなどの利点を有することから、紫外線硬化型接着剤を用いる提案がなされている。例えば、特開 2004-245925号公報(特許文献1)には、芳香環を含まないエポキシ化合物を主成分とする組成物からなる接着剤を用いて偏光フィルムに透明樹脂フィルム(同文献では「保護膜」と呼称されている)を重ね合わせ、そこに紫外線を代表例とする活性エネルギー線を照射して接着剤を硬化させ、偏光板とする技術が開示されている。
【0005】
ところが、このように紫外線硬化型接着剤を用い、そこに紫外線を照射して製造される偏光板は、紫外線照射装置から発生する熱によって、紫外線が照射される透明樹脂フィルム面に「熱ムラ」と呼ばれる微小な変形を生じ、偏光板の外観を損なうといった問題があった。このような熱ムラは、例えば、偏光板の表面に蛍光灯の光を反射させたときに、熱ムラのない偏光板であれば、蛍光灯の像がそのまま映るのに対し、熱ムラが生じた偏光板では、そのムラ(凹凸)が多数の細かい白点として観察される。熱ムラが生じた偏光板を液晶表示装置に適用すると、表示される画像にも同様の白点が生じてしまう。そのため、熱ムラの発生しない偏光板の製造が望まれる。
【0006】
特開 2009-134190号公報(特許文献2)には、偏光フィルム及び透明樹脂フィルムをそれぞれ長尺状で連続的に搬送し、その偏光フィルムに接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合した後、得られる積層体をその搬送方向に沿って円弧状に形成された凸曲面、典型的にはロールに密着させながら、接着剤を重合硬化させることにより、偏光板を製造する方法が開示されている。そして、接着剤の代表的なものとして紫外線硬化型接着剤が挙げられ、その段落0021には、上記のロールを表面温度が20〜25℃に設定された冷却ロールとして作用させることが記載されている。このように冷却ロールに密着させながら紫外線の照射を行う方法を採用すれば、紫外線硬化型接着剤を用いた偏光板に生じやすい上記の熱ムラも抑制されることが期待される。しかしながら、冷却ロールに密着させる方法を採用しても、紫外線の照射強度や偏光板の搬送速度によっては、依然として熱ムラを生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−245925号公報
【特許文献2】特開2009−134190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合し、そこに紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化させ、偏光板を製造する方法において、偏光板に熱ムラが発生しにくい方法を開発し、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムが貼合された積層体に照射する紫外線を、実質的に400nm以下の波長のみからなるものとするのが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合し、そこに紫外線を照射して上記の接着剤を硬化させ、偏光板を製造する方法であって、実質的に400nm以下の波長のみからなる紫外線を照射して上記の接着剤を硬化させる、偏光板の製造方法が提供される。
【0011】
実質的に400nm以下の波長のみからなる紫外線を得るためには、例えば、紫外線光源から発せられる光を、400nm以上の波長の光をカットできる波長フィルターに通して、400nm以上の波長の光を実質的に遮断する方法を採用することができる。本発明の製造方法は、偏光フィルムの両面にそれぞれ紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合し、一方の透明樹脂フィルム側から紫外線の照射を行って紫外線硬化型接着剤を硬化させる場合にも、有効に適用することができる。
【0012】
また、本発明の製造方法は、上記特許文献2(特開 2009-134190号公報)に開示されるような、偏光フィルム及び透明樹脂フィルムをそれぞれ長尺状で連続的に搬送し、その偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合した後、得られる積層体をその搬送方向に沿って円弧状に形成された凸曲面を有する接触体に巻きつけて密着させ、その積層体の上記接触体とは反対側から紫外線の照射を行って紫外線硬化型接着剤を硬化させる方法にも、有効に適用することができる。ここで用いる接触体は、典型的にはロールで構成され、その場合、ロールの凸曲面の幅方向と直交する方向が上記積層体の搬送方向となるように、換言すれば、ロールの軸が上記積層体の搬送方向と直交するように配置される。
【0013】
このように、偏光フィルム及び透明樹脂フィルムをそれぞれ長尺状で連続的に搬送し、偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合して得られる積層体をロールの外周面に巻きつけて密着させた状態で紫外線を照射する方法においても、透明樹脂フィルムを2枚用い、偏光フィルムの両面に透明樹脂フィルムが貼合された偏光板を製造することができる。その場合は、偏光フィルムの両面にそれぞれ上記の接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合し、得られる積層体の一方の透明樹脂フィルム側を上記ロールの外周面に巻きつけて密着させ、他方の透明樹脂フィルム側から紫外線の照射を行うことになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、紫外線硬化型接着剤を採用し、そこに紫外線を照射して硬化させ、偏光フィルムと透明樹脂フィルムを接着させる方法を採用しながら、熱ムラの発生が抑制された偏光板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の方法を実施するのに適した偏光板の製造装置の一例を示す概略側面図である。
【図2】後述する実施例において、紫外線光源として用いたメタルハライドランプの発光スペクトル(曲線A)、同じく波長400nm以上の光のカットに用いた波長フィルターの透過率スペクトル(曲線B)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、本発明では、偏光フィルム1に紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルム2,3を貼合して積層体4とし、その積層体4に紫外線照射装置16から紫外線を照射して上記の接着剤を硬化させ、偏光板5を製造する。
【0017】
偏光フィルム1と透明樹脂フィルム2,3の貼合には、貼合用ニップロール21,22が用いられる。透明樹脂フィルム2,3は、偏光フィルム1の片面に貼合してもよいし、偏光フィルム1の両面に貼合してもよいが、好ましくは図示のとおり、偏光フィルム1の両面に貼合される。図示の例では、貼合後の積層体4は、その搬送方向に沿って凸曲面を有する接触体23に密着され、積層体4を挟んでその反対側に配置された紫外線照射装置16から紫外線が照射されるようになっている。接触体23は、好ましくは図示のようにロールで構成される。製造された偏光板5は、搬送用ガイドロール24及び巻取り前ニップロール25,26を経て、製品ロール30に巻き取られる。偏光フィルム1の一方の面や、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3のそれぞれ接着剤が塗布されない面には、搬送用のガイドロール28,28が適宜設けられる。図中の直線矢印はフィルムの流れ方向を意味し、曲線矢印はロールの回転方向を意味する。
【0018】
そして、積層体4に照射される紫外線は、実質的に400nm以下の波長のみからなるものとする。図示の例では、紫外線照射装置16の光が発せられる側で紫外線照射装置16と積層体4との間に、400nm以上の波長の光をカットできる波長フィルター18を配置し、紫外線照射装置16から発せられる光をその波長フィルター18に通して、400nm以上の波長の光を実質的に遮断し、事実上400nm以下の波長のもののみからなる紫外線が、積層体4に照射されるように構成されている。
【0019】
紫外線照射装置16には、後述するとおり、水銀灯やメタルハライドランプなどが光源として用いられ、かかる一般の紫外線光源は、波長400nm以下の紫外線を多く含むものの、その波長領域は紫外域から可視域まで幅広く分布しており、そのため、その光源を点灯させたときには白色ないし紫色を呈する。そのような通常の紫外線光源を用いる場合には、図示のように波長フィルター18を通して、400nm以上の波長の光を実質的に遮断することになる。一方、例えばエキシマレーザー光源のように、実質的に波長400nm以下の紫外線のみを発する光源もあるので、そのような光源を用いることも可能である。しかし、このような実質的に波長400nm以下の紫外線のみを発する光源は一般に高価であるので、可視光をも発生する紫外線光源を用い、図示のように波長フィルター18を通して、400nm以上の波長の光を実質的に遮断する形態を採用するのが実用的である。
【0020】
本発明の製造方法はもちろん、枚葉に裁断された偏光フィルム及び透明樹脂フィルムを用い、紫外線硬化型接着剤を介してそれらを貼合し、そこに紫外線を照射して上記の接着剤を硬化させ、偏光板を製造する枚葉形式で適用することもできるが、特に工業的生産においては、図1に示すように、連続的に生産する方式に適用される。また、紫外線照射方式は、図示のような、好ましくはロールで構成される接触体23に密着させた状態で照射する形態に限られるものでなく、例えば、積層体4の紫外線照射装置16とは反対側に特別な支持体ないし接触体を配置しないで紫外線を照射する形態も、もちろん本発明に包含される。
【0021】
以下、偏光板5を構成する偏光フィルム1、透明樹脂フィルム2,3、及び接着剤についてまず説明し、その後、偏光板の製造方法に関する説明へと進んでいく。
【0022】
[偏光フィルム]
偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂からなり、このポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルアセタールなども用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、通常1,000〜10,000程度であり、好ましくは 1,500〜5,000の範囲である。
【0023】
ポリビニルアルコール系樹脂をフィルム状に製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されず、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムは、例えば、10〜150μm 程度の膜厚とすることができる。
【0024】
偏光フィルムは通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造される。
【0025】
延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、染色と同時に行ってもよいし、染色の後に行ってもよい。延伸を染色の後で行う場合、この延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、これらの複数の段階で延伸を行うことも可能である。延伸にあたっては、周速の異なるニップロール間で延伸してもよいし、熱ロールを用いて延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤にて膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。その延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
【0026】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、二色性色素を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。二色性色素として、具体的には、ヨウ素又は二色性の有機染料が用いられる。なお、二色性色素による染色処理の前に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、水への浸漬処理を施して、十分に膨潤させておくことが好ましい。
【0027】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素及びヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、ヨウ素が通常0.01〜1重量部であり、ヨウ化カリウムが通常0.5〜20重量部である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃であり、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒である。
【0028】
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部であり、好ましくは1×10-3〜1重量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウムのような無機塩を染色助剤として含有してもよい。染色に用いる染料水溶液の温度は、通常20〜80℃であり、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒である。
【0029】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法によって行われる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部であり、好ましくは5〜12重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸含有水溶液はさらにヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部であり、好ましくは5〜12重量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒であり、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、さらに好ましくは60〜80℃である。
【0030】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法によって行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常2〜40℃であり、浸漬時間は、通常2〜120秒である。水洗後は、乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターなどを用いて行うことができる。この乾燥処理は、40〜100℃、好ましくは50〜100℃に保たれた乾燥炉の中で、30〜600秒程度かけて行われる。乾燥炉は複数あってもよく、乾燥炉を複数設ける場合は、各々の温度が同一でも異なっていてもよい。複数の乾燥炉を設けて乾燥を行う場合は特に、乾燥炉前段から乾燥炉後段に向かって温度が高くなるように温度勾配をつけるのが好ましい。
【0031】
こうして得られる偏光フィルムの厚みは、例えば5〜40μm 程度とすることができ、好ましくは10〜35μm である。
【0032】
[透明樹脂フィルム]
本発明では、上記のようにして製造されるポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルム1の片面又は両面に、紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルム2,3を貼合して偏光板5を製造する。
【0033】
透明樹脂フィルム2,3は、透明性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムであればよく、偏光板の分野で用いられている各種のものが、本発明においても同様に使用することができる。透明樹脂フィルム2,3となりうる樹脂の例を挙げると、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースを代表例とする酢酸セルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂を代表例とする非晶性ポリオレフィン樹脂、ポリプロピレン系樹脂を代表例とする結晶性ポリオレフィン樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂を代表例とするアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を代表例とするポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などがある。
【0034】
酢酸セルロース系樹脂は、セルロースの部分又は完全エステル化物であって、例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステルなどを挙げることができる。より具体的には、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどが挙げられる。酢酸セルロース系樹脂からなるフィルムは、適宜の市販品を用いることができる。本発明で採用するのに好適な市販されている酢酸セルロース系樹脂フィルムの例を挙げると、いずれも商品名で、富士フイルム株式会社から販売されている“フジタック TD80”、“フジタック TD80UF” 及び“フジタック TD80UZ”、コニカミノルタオプト株式会社から販売されている“KC8UX2M”、“KC8UY” 及び“KC4UY”などがある。
【0035】
酢酸セルロース系樹脂フィルムは、偏光板を液晶セルに貼着するとき、液晶セル側に配置されることがある。その場合、この酢酸セルロース系樹脂フィルムには、光学補償機能を付与することが好ましい。例えば、酢酸セルロース系樹脂に位相差調整機能を有する化合物を含有させたフィルム、酢酸セルロース系樹脂フィルムの表面に位相差調整機能を有する化合物を塗布したフィルム、酢酸セルロース系樹脂フィルムを一軸又は二軸に延伸したフィルムなどが挙げられる。市販されている酢酸セルロース系光学補償フィルムの例を挙げると、富士フイルム株式会社から販売されている“WV(Wide View) フィルム WV BZ 438”及び“WV(WIDE VIEW) フィルム WV EA”、コニカミノルタオプト株式会社から販売されている“KC4FR-1”、“KC4HR-1”及び“KC4UEW”などがある。
【0036】
非晶性ポリオレフィン樹脂は、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような環状オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂であり、環状オレフィンと他の重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物との共重合体であってもよい。具体的には、ノルボルネン又はその誘導体を開環メタセシス重合し、得られる重合体に水素添加して不飽和結合をなくした熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂と呼ばれるもの、ノルボルネン又はその誘導体に鎖状オレフィン及び/又は芳香族ビニル化合物を付加重合させたものなどが挙げられる。非晶性ポリオレフィン樹脂からなるフィルムは、適宜の市販品を用いることができる。本発明で採用するのに好適な市販されている非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムの例を挙げると、いずれも商品名で、JSR株式会社から販売されている“アートンフィルム”、日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノアフィルム”、積水化学工業株式会社から販売されている“エスシーナ位相差フィルム”などがある。
【0037】
結晶性ポリオレフィン樹脂は、エチレンやプロピレンのような鎖状オレフィンを主要な構造単位とする結晶性の樹脂であり、特にポリプロピレン系樹脂が代表的である。ポリプロピレン系樹脂には、プロピレンの単独重合体のほか、プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマー、例えばエチレンやα−オレフィンとのランダム共重合体、ブロック共重合体などが包含される。ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムも、適宜の市販品を用いることができる。適当な市販されているポリプロピレン系樹脂フィルムの例を挙げると、いずれも商品名で、三井化学東セロ株式会社から販売されている“トーセロ”、東洋紡績株式会社から販売されている“パイレンフィルム”、東レ株式会社から販売されている“トレファン”、サン・トックス株式会社から販売されている“サントックス”、 FILMAX 社から販売されている“FILMAX CPP フィルム”などがある。
【0038】
アクリル系樹脂は、メタクリル酸アルキルを主要な構造単位とする樹脂であり、なかでも、メタクリル酸メチルを主要な構造単位とするメタクリル酸メチル系樹脂が代表的である。アクリル系樹脂からなるフィルムも、適宜の市販品を用いることができる。適当な市販されているアクリル系樹脂フィルムの例を挙げると、いずれも商品名で、住友化学株式会社から販売されている“テクノロイ”、三菱レイヨン株式会社から販売されている“アクリプレン”などがある。
【0039】
ポリエステル樹脂は、主鎖にエステル結合−COO−を有する樹脂であり、ポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂などがあり、なかでも、ポリエチレンテレフタレート系樹脂が代表的である。ポリエチレンテレフタレート系樹脂は通常、繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂であり、他の共重合成分に由来する構造単位を含んでいてもよい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなるフィルムも、適宜の市販品を用いることができる。適当な市販されているポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの例を挙げると、いずれも商品名で、三菱樹脂株式会社から販売されている“ダイアホイル”、帝人デュポンフィルム株式会社から販売されている“テイジンテトロンフィルム”、東洋紡績株式会社から販売されている“東洋紡エステルフィルム”及び“コスモシャイン”、東レ株式会社から販売されている“ルミラー”、ユニチカ株式会社から販売されている“エンブレット”などがある。
【0040】
ポリカーボネート樹脂は、主鎖にカーボネート結合−O−CO−O−を有する樹脂であり、例えば、ビスフェノールAを原料とする樹脂が代表的である。ポリカーボネート樹脂からなるフィルムも、適宜の市販品を用いることができる。適当な市販されているポリカーボネート樹脂の例を挙げると、いずれも商品名で、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社から販売されている“ユーピロンシート”、帝人化成株式会社から販売されている“パンライトシート”などがある。
【0041】
透明樹脂フィルム2,3には、偏光フィルム1への貼合に先立って、貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プライマ処理、アンカーコーティング処理などの易接着処理が施されてもよい。また、透明樹脂フィルム2,3の偏光フィルム1への貼合面と反対側の面は、ハードコート層、反射防止層、防眩層などの各種処理層を有していてもよい。透明樹脂フィルム2,3の厚みは、通常5〜200μm 程度の範囲であり、好ましくは10〜120μm 、さらに好ましくは10〜85μm である。
【0042】
[接着剤]
偏光フィルム1と透明樹脂フィルム2,3とを貼合するための接着剤には、耐候性や屈折率、カチオン重合性などの観点から、紫外線硬化型接着剤を用いる。紫外線硬化型接着剤には、ラジカル重合によって硬化するものと、カチオン重合によって硬化するものがあるが、特に、前記した特許文献1(特開 2004-245925号公報)に記載されるような、分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物を主成分とするカチオン重合性の接着剤が好ましく用いられる。このような、分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物としては、例えば、水素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などがある。エポキシ化合物を代表例とするカチオン重合性の化合物に、紫外線の照射によってカチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物のカチオン重合を開始させる光カチオン重合開始剤を配合して、紫外線硬化型接着剤が調製される。紫外線硬化型接着剤にはその他、加熱によってカチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物のカチオン重合を開始させる熱カチオン重合開始剤、光増感剤など、各種の添加剤を配合することもできる。
【0043】
[偏光板の製造方法]
次に図1を参照しながら、本発明に係る偏光板の製造方法について説明する。図1の装置について改めて説明すると、この例では、一定方向に搬送される偏光フィルム1の一方の面に、第一の透明樹脂フィルム2が供給され、偏光フィルム1の他方の面には、第二の透明樹脂フィルム3が供給され、これら3枚のフィルムが貼合用ニップロール21,22により貼合されて積層体4となり、紫外線照射装置16からの紫外線照射を受けた後、搬送用ガイドロール24及び巻取り前ニップロール25,26を経て、得られる偏光板5が製品ロール30に巻き取られるように、装置が構成されている。
【0044】
偏光フィルム1は、図示しない偏光フィルム製造工程において、先述した方法により、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、及び染色後のホウ酸処理を経て製造された状態でそのまま供給されることが多いが、もちろん、偏光フィルム製造工程において製造されたものを一旦ロールに巻き取った後、繰出し機により繰り出すようにしてもよい。一方、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3は、それぞれ図示しないロールから繰出し機により繰り出される。それぞれのフィルムは、同じ搬送速度で、流れ方向が同じになるように搬送される。
【0045】
第一の透明樹脂フィルム2は、その偏光フィルム1へ貼合される面に、予め第一の塗工機11から接着剤が塗布された後、その接着剤塗布面が偏光フィルム1の片面に貼合される。一方、第二の透明樹脂フィルム3は、その偏光フィルム1へ貼合される面に、予め第二の塗工機13から接着剤が塗布された後、その接着剤塗布面が偏光フィルム1の他面に貼合される。
【0046】
第一の塗工機11及び第二の塗工機13では、それぞれが備えるグラビアロール12,14から、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3にそれぞれ接着剤を塗布するようになっている。ここでグラビアロールとは、凹溝を有するロールであって、その凹溝に予め接着剤が充填され、その状態で透明樹脂フィルム2,3上を回転することにより、透明樹脂フィルム2,3上に接着剤を転写するようになっている。ここに示す例では、グラビアロール12,14が、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3のそれぞれ搬送方向に対し、それぞれの接触部で逆向きに回転するようになっている。塗工機11,13にはそのほか、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーターなど、別の塗工方式を適用することもできるが、薄膜塗工、パスラインの自由度、幅広化への対応などを考慮すると、図示のようなグラビアロール12,14を備えるグラビアコーターが好ましい。
【0047】
第一の塗工機11及び第二の塗工機13として、グラビアロール12,14を備えるグラビアコーターを用いて接着剤の塗布を行う場合、透明樹脂フィルム2,3の進行速度に相当するライン速度と、グラビアロール12,14の回転周速度との比を調整することによって、接着剤層の厚さを適宜調節することができる。接着剤層の塗布厚さは、例えば、約1〜10μm とすることが好ましい。
【0048】
接着剤が塗布された第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3は、それぞれ接着剤塗布面が偏光フィルム1に貼合され、貼合用ニップロール21,22により挟んで厚み方向に加圧され、三者の積層体4となって、接触体23へと搬送される。接触体23は、上記積層体4の搬送方向(長手方向)に沿って円弧状に形成された凸曲面を有する。そして、積層体4は、接触体23の凸曲面に密着しながら搬送され、その過程で紫外線照射装置16からの紫外線照射を受けて接着剤が重合硬化される。図示の例では、接触体23はロールで構成されている。接触体23はそのほか、例えば、無端ベルトなどで構成することもできるが、図示のようなロール、それも金属ロールで構成するのが一般的である。
【0049】
特に、接触体23を金属ロールで構成し、そこに温度調節機能を持たせ、冷却ロールとして作用させることが、紫外線の照射によって発生する熱の影響を少なくする観点から有効である。温度調節機能は、金属ロールの内部に流体通路を設け、そこに冷却用の流体、例えば水を流す方式などにより付与することができる。その場合、冷却ロールの表面温度は、20〜25℃程度とするのが好ましい。接触体23を金属ロールで構成する場合、その表面にハードクロムメッキ処理やセラミック溶射処理などを施して、表面硬度を高めておくことも有効である。
【0050】
積層体4の第二の透明樹脂フィルム3側を接触体23に密着させ、積層体4の反対側、すなわち第一の透明樹脂フィルム2側に、紫外線照射装置16から紫外線が照射される。この際、紫外線照射装置16の光が発せられる側、すなわち紫外線照射装置16と積層体4との間に、400nm以上の波長の光をカットできる波長フィルター18を配置し、紫外線照射装置16から発せられる光をその波長フィルター18に通して、400nm以上の波長の光を実質的に遮断し、事実上400nm以下の波長のもののみからなる紫外線が積層体4に照射されるようにする。この紫外線照射によって、第一の透明樹脂フィルム2と偏光フィルム1との間にある接着剤、及び偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3との間にある接着剤が、それぞれ硬化され、第一の透明樹脂フィルム2と偏光フィルム1、及び第二の透明樹脂フィルム3と偏光フィルム1とが接着される。
【0051】
波長フィルター18の材質は特に限定されないが、耐熱性の観点からは、ガラス基板上に、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法、スパッタリング法などにより誘電体膜又は金属膜を製膜したものが好ましい。波長フィルター18には、400nm以上の波長の光をカットできるようになっている適宜の市販品を用いることができるが、特に、波長が250nmから400nmの間にある光の透過率の平均値が80%以上、とりわけ85%以上であり、かつ波長400nm以上、少なくとも500nmまでの範囲にある光の透過率の平均値が5%未満、さらには2%以下、とりわけ1%以下であるものが好ましい。
【0052】
紫外線照射装置16に用いる光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。紫外線硬化型接着剤への光照射強度は、用いる接着剤の組成などに応じて決定すればよく、やはり特に限定されないが、開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜1,000mW/cm2 となるようにすることが好ましい。
【0053】
積層体4への紫外線の照射時間は、使用する紫外線硬化型接着剤の組成などに応じて決定され、やはり特に限定されないが、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が10〜2,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。図示のように積層体4を接触体23に密着させた状態で紫外線を照射する形態を採用する場合には、積層体4が接触体23を通過する間に、この積算光量10〜2,000mJ/cm2が達成されるようにすることが、接着剤を十分に重合硬化させるうえで特に好ましい。このときの積算光量が少なすぎると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、接着剤の硬化が不十分となる可能性がある。一方で、その積算光量が大きすぎると、照射される紫外線によって、透明樹脂フィルム、偏光フィルム及び/又は接着剤に劣化を生じることがある。
【0054】
積層体4のライン速度も特に限定されないが、搬送方向(長手方向)に100〜800Nの張力をかけながら、積算光量が10〜2,000mJ/cm2となるように、ライン速度を10〜50m/分程度の範囲内で設定することが好ましい。紫外線照射装置16と積層体4の間の距離も特に限定されないが、積算光量が10〜2,000mJ/cm2となるように、紫外線照射装置16を構成する紫外線光源から積層体4までの距離(図1のように積層体4を接触体23に密着させる場合は両者の最短距離)を10〜500mm程度の範囲内で設定することが好ましい。紫外線照射装置16側に位置する透明樹脂フィルム2は、照射される紫外線によって接着剤を有効に硬化させるため、接着剤を構成する開始剤の活性化に有効な波長領域の一部又は全領域における透過率が60%以上となるものであることが好ましい。
【0055】
紫外線の照射を受け、接着剤が硬化された後の積層体4は、偏光板5となり、搬送用ガイドロール24及び巻取り前ニップロール25,26を経て、製品ロール30に巻き取られる。
【0056】
[その他の説明]
本発明では、先述のとおり、偏光フィルム1の片面又は両面に透明樹脂フィルム2,3を貼合し、偏光板5とすることができるが、好ましくはこれまで説明してきたように、偏光フィルム1の両面に透明樹脂フィルム2,3が貼合される。一方で、偏光フィルム1の片面にのみ透明樹脂フィルムを貼合して偏光板とする形態については、以上の説明から一方の透明樹脂フィルムに関する説明を省くことにより、当業者であれば容易に実施可能な程度に理解できるであろう。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
概ね図1に示すように配置された装置を用いて、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚さ約30μm の偏光フィルム1を連続的に搬送し、その片面に、日本ゼオン株式会社から入手した厚さが60μmで幅が1,330mmの非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムである“ゼオノアフィルム”を第一の透明樹脂フィルム2として、他面には、富士フイルム株式会社から入手した厚さが80μmで幅がやはり1,330mmのトリアセチルセルロースフィルムである“フジタック TD80” を第二の透明樹脂フィルム3として、それぞれ供給した。そして、第一の透明樹脂フィルム2の偏光フィルム1への貼合面には、グラビアロール12を備える第一の塗工機11(富士機械株式会社製の“マイクロチャンバードクター”)から、また第二の透明樹脂フィルム3の偏光フィルム1への貼合面にも、やはりグラビアロール14を備える第二の塗工機13(同じく富士機械株式会社製の“マイクロチャンバードクター”)から、それぞれエポキシ化合物と光カチオン重合開始剤が配合された紫外線硬化型接着剤を、厚さが約2μm となるように塗工した。
【0059】
次に、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3のそれぞれ接着剤塗布面を偏光フィルム1の両面に重ね、貼合用ニップロール21,22で挟んで貼合し、積層体4とした。積層体4は引き続き、その第二の透明樹脂フィルム3であるトリアセチルセルロースフィルム側を、表面温度が23℃に設定された冷却ロール23の外周面に巻きつけて密着させながら、ライン速度20m/分で、長手方向に600Nの張力をかけて搬送した。
【0060】
冷却ロール23に密着しながら搬送される積層体4の冷却ロール23と反対側(第一の透明樹脂フィルム2である非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム側)には、紫外線照射装置16(株式会社GSユアサ製)を配置した。そして、それが備えるメタルハライドランプ2灯から出射される紫外線を、波長フィルター18に通してから積層体4に照射し、接着剤を硬化させた。紫外線照射装置16中のランプから積層体4までの最短距離は、200mmに設定した。ここで用いた波長フィルター18は、京浜光膜工業株式会社から入手したもので、波長250nmから400nmまでの間の光の平均透過率が88%、波長400nmから500nmまでの間の光の平均透過率が1%であった。
【0061】
紫外線光源として用いたメタルハライドランプの波長250nmから500nmまでの発光スペクトルを図2に太い曲線Aで、また、波長フィルター18の波長250nmから800nmまでの透過率スペクトルを図2に細い曲線Bで、それぞれ示した。図2において、横軸はA、B共通で波長(nm)を表し、曲線Aに対応する左縦軸はメタルハライドランプの発光強度を表し、曲線Bに対応する右縦軸は透過率(%)を表す。なお、ランプの発光強度は、最大値を与える波長における強度を100とする相対値で表示した。
【0062】
紫外線照射装置16の出力を120Wとしたとき、200〜400nmの波長域における積算光量は510mJ/cm2 であり、紫外線を照射したときの積層体4の冷却ロール23付近の雰囲気温度は110℃であった。紫外線照射後、引き続き、搬送用ガイドロール24及び巻取り前ニップロール25,26をこの順で通過させて、偏光フィルム1の片面に非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム2が、他面にはトリアセチルセルロースフィルム3がそれぞれ貼合され、厚さが約174μm の偏光板5を得、これを製品ロール30に巻き取った。得られた偏光板に蛍光灯の光を反射させて目視観察したところ、蛍光灯の像がそのまま映っており、熱ムラは観察されなかった。
【0063】
[実施例2]
実施例1において、非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムである“ゼオノアフィルム”の代わりに、三菱樹脂株式会社から入手した厚さが38μmで幅が1,330mmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである“ダイアホイル”を第一の透明樹脂フィルム2として用い、トリアセチルセルロースフィルム“フジタック TD80” の代わりに、実施例1では第一の透明樹脂フィルム2として用いた非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムである“ゼオノアフィルム”を第二の透明樹脂フィルム3として用い、また紫外線照射装置16の出力を140Wとし、その他は実施例1と同様にして偏光板を製造した。このとき、積層体4に照射された200〜400nmの波長域における積算光量は、630mJ/cm2 であり、紫外線を照射したときの積層体4の冷却ロール23付近の雰囲気温度は、132℃であった。得られた偏光板に蛍光灯の光を反射させて目視観察したところ、蛍光灯の像がそのまま映っており、熱ムラは観察されなかった。
【0064】
[比較例1]
紫外線照射装置16から照射される紫外線を、波長フィルター18に通すことなく、積層体4に照射したこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を製造した。このとき、積層体4に照射された200〜400nmの波長域における積算光量は510mJ/cm2 であり、紫外線を照射したときの積層体4の冷却ロール23付近の雰囲気温度は、223℃であった。得られた偏光板に蛍光灯の光を反射させて目視観察したところ、蛍光灯の像に多数の細かい白点が観察され、熱ムラが発生していた。
【0065】
[比較例2]
紫外線照射装置16から照射される紫外線を、波長フィルター18に通すことなく、積層体4に照射したこと以外は、実施例2と同様にして偏光板を製造した。このとき、積層体4に照射された200〜400nmの波長域における積算光量は630mJ/cm2 であり、紫外線を照射したときの積層体4の冷却ロール23付近の雰囲気温度は、265℃であった。得られた偏光板に蛍光灯の光を反射させて目視観察したところ、蛍光灯の像に多数の細かい白点が観察され、熱ムラが発生していた。
【符号の説明】
【0066】
1……偏光フィルム、
2……第一の透明樹脂フィルム、
3……第二の透明樹脂フィルム、
4……硬化前の積層体、
5……偏光板、
11……第一の塗工機、
12……第一の塗工機が備えるグラビアロール、
13……第二の塗工機、
14……第二の塗工機が備えるグラビアロール、
16……紫外線照射装置、
18……波長フィルター、
21,22……貼合用ニップロール、
23……接触体(冷却ロール)、
24……搬送用ガイドロール、
25,26……巻取り前ニップロール、
28……ガイドロール、
30……製品ロール、
A……メタルハライドランプの発光スペクトル、
B……波長フィルターの透過率スペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合し、そこに紫外線を照射して前記接着剤を硬化させ、偏光板を製造する方法であって、
実質的に400nm以下の波長のみからなる紫外線を照射して前記接着剤を硬化させることを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項2】
紫外線照射装置から発せられる光を、400nm以上の波長の光をカットできる波長フィルターに通し、400nm以上の波長の光が実質的に遮断された紫外線を照射する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
偏光フィルムの両面にそれぞれ前記接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合し、一方の透明樹脂フィルム側から前記紫外線の照射を行う、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
偏光フィルム及び透明樹脂フィルムをそれぞれ長尺状で連続的に搬送し、該偏光フィルムに前記接着剤を介して該透明樹脂フィルムを貼合した後、得られる積層体をその搬送方向に直交する軸を有するロールの外周面に巻きつけて密着させ、該積層体の前記ロールとは反対側から前記紫外線の照射を行う、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
偏光フィルム及び2枚の透明樹脂フィルムをそれぞれ長尺状で連続的に搬送し、該偏光フィルムの両面にそれぞれ前記接着剤を介して該透明樹脂フィルムを貼合し、得られる積層体の一方の透明樹脂フィルム側を前記ロールの外周面に巻きつけて密着させ、他方の透明樹脂フィルム側から前記紫外線の照射を行う、請求項4に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−208187(P2012−208187A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71905(P2011−71905)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】