説明

偏光板用アクリル系粘着剤組成物

本発明は、アルキルの炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有する(メタ)アクリル系共重合体を含み、ゲル分率が10〜55%、膨張比が30〜110、最終粘着剤からエチルアセテートで溶出されたゾルの重量平均分子量が800,000以上であり、重量平均分子量が最大100,000の低分子量体を全体ゾル成分中の10〜40重量%で含む偏光板用アクリル系粘着剤組成物であり、本発明に係る組成物は、高温及び/又は多湿条件下でも優れた粘着耐久信頼性を示し、高いモジュラス及び応力緩和特性を效果的に付与して、偏光板を製造するとき、作業性に優れ、光漏れ現象を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系粘着剤組成物に関する。特に、長期間使用するための優れた粘着耐久信頼性を有し、粘着剤層に応力緩和特性を效果的に付与して、低光漏れ特性を顕著に向上させ、そして粘着剤のはみ出し現象を抑制して、偏光板作業性低下を最小化するアクリル系粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置を製造するために、基本的に液晶を含む液晶セルと偏光板が求められており、これを接着するための適切な接着層または粘着層を使用しなければならない。また、液晶表示装置の機能を向上させるために、位相差板、広視野角補償板または輝度向上フィルムなどを付加的に偏光板に接着することができる。
【0003】
通常、液晶表示装置を形成する主要構造は、均一に配列されている液晶層;粘着層または接着層を含む多層構造の偏光板;位相差板;及び追加の機能性フィルム層などを含む。
【0004】
このとき、偏光板は均一に配列されたヨード系化合物または二色性偏光物質を含む。これらの偏光素子を保護するために、両面にトリアセチルセルロース(TAC)系等の保護フィルムを用いて多層構造を形成する。また、偏光板は異方性分子配列を持つ形状の位相差フィルムや液晶型フィルムなどの広視野角補償フィルムをさらに、含んでいてもよい。
【0005】
上記言及された各フィルムは、異なる分子構造及び組成を有する材料で作られるため、異なる物理的特性を持っている。特に、高温及び/又は多湿条件下では、異方性分子配列を有する材料等の収縮または膨張に伴う寸法安定性が不足するようになる。従って、偏光板が粘着剤によって固定されている場合に、高温及び/又は多湿条件下での偏光板収縮または膨張による変形応力が残留した状態で残り、これにより、応力が集中した部分から光漏れが発生するようになる。
【0006】
上記光漏れ現象を改善させるための方法は、高温及び/又は多湿条件下で、偏光板の収縮現象を低減することが必要とされる。しかし、異なる物理的特性を有する物質から構成された偏光板が付着された液晶パネルから発生される応力を除去することは非常に難しい。光漏れ現象を改善するさらに別の方法は、偏光板を液晶パネルに固定する粘着剤層に優れた応力緩和機能を付与する方法である。一般に、粘着剤はゴム系、アクリル系及びシリコン系が使用される。この中で、アクリル系粘着剤が接着特性、光学的特性、耐久性、または耐候性面で有利であるので、偏光板用粘着剤組成物の製造に最も広く使用されている。
【0007】
上記の応力緩和機能を粘着層に付与するための通常的な粘着剤設計は、外部応力に対して、ずれ量(creep)が大きく、変形しやすいように設計することである。代表的な方法は、多官能架橋剤と反応可能な架橋官能基を含む高分子量重合体に、架橋可能官能基を少量含むか、又は含まない低分子量重合体を混合して粘着剤組成物に、高温及び多湿条件下で、優れた耐久性及び応力緩和機能を付与する方法である。
【0008】
例えば、特許文献1(韓国特許公開第1998−079266号)は、重量平均分子量が1,000,000以上の高分子量アクリル系共重合体100重量部、重量平均分子量が30,000以下の低分子量アクリル系共重合体20〜200重量部及び多官能性架橋剤化合物0.005〜5重量部からなる偏光板用粘着剤組成物に応力緩和特性を付与することによって、光漏れ現象を改善しようとした。
【0009】
特許文献2(日本特開第2002−47468号)は、重量平均分子量が800,000〜2,000,000の官能基を有する高分子量アクリル系共重合体100重量部、重量平均分子量が50,000以下であり、分散度が1.0〜2.5の官能基を有しない低分子量アクリル系共重合体5〜50重量部、架橋剤及びシラン化合物からなる偏光板用粘着剤組成物に応力緩和特性を付与しようとした。
【0010】
また、特許文献3(日本特開第2003−49141号)は、重量平均分子量1,000,000〜2,000,000の官能基を含む高分子量アクリル系共重合体、重量平均分子量が30,000〜300,000の官能基が2個未満含まれた中間分子量アクリル系共重合体、重量平均分子量が1,000〜20,000(分散度1.0〜2.5)である、官能基を有しない低分子量のアクリル系共重合体及び架橋剤からなる偏光板用粘着剤組成物に、応力緩和特性を付与することによって光漏れ現象を改善しようとした。
【0011】
上記特許文献は粘着剤の応力緩和性を改善するために、最終粘着剤を柔らかくするという技術的思想を具現している。即ち、添加された低分子量体によって粘着剤のモジュラス(Modulus)が減少し、外部の応力に対してずれ量が大きくなり、変形し易くなり、偏光板の収縮または膨張によって発生される局部的な応力を緩和させるように設計している。
【0012】
しかし、最近、コンピュータモニターサイズの場合19〜23インチ型、液晶TVの場合40インチ型以上へと大型化されるにつれて、偏光板の低光漏れ特性に対する要求が、さらに増加している。これに伴い、上記従来技術に比べて向上された低光漏れ特性を具現するためには、粘着剤内に低分子量体の含量を大きく増大しなければならないが、この場合、高温及び/又は多湿条件で、耐久性が低下しやくなり、多量の低分子量体によって偏光板裁断時、粘着剤のはみ出し現象などが激しく、偏光板作業性が大きく低下されるという問題がある。
【0013】
従って、高温及び多湿条件下だけでなく、長期間使用時に生じる耐久信頼性などの偏光板製品の主要特性を変化させずに、低光漏れ特性がさらに向上し、作業性の低下を最小化することができる粘着剤の開発及びこれを適用した偏光板に対する研究が切実に求められている現状である。
【特許文献1】韓国特許公開第1998−079266号
【特許文献2】日本特開第2002−47468号
【特許文献3】日本特開第2003−49141号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のような従来問題点を解決するために、本発明の目的は、高温及び/又は多湿条件下で、発生しうる粘着耐久信頼性などの主要特性を変化させずに、粘着剤のモジュラスを大きく低減しなく、偏光板の作業性低下を抑制しながら、応力緩和特性向上を介して光漏れ現象を改善した偏光板用アクリル系粘着剤組成物を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、上記特性を有するアクリル系粘着剤組成物を用いた偏光板を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、上記特性を有するアクリル系粘着剤組成物から製造された偏光板を含む液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有するアクリル系共重合体を含み、
下記数式(1)で示されるゲル分率が10〜55%であり、
下記数式(2)で示される膨張比が30〜110であり、
粘着剤をエチルアセテートで溶出したゾルの重量平均分子量が800,000以上であり、及び
重量平均分子量が最大100,000である低分子量体を全体ゾル成分中の10〜40重量%で含む偏光板用アクリル系粘着剤組成物を提供する:
ゲル分率(%)=B/A×100 (1)
膨張比=C/B (2)
〔式中、Aはアクリル系粘着剤組成物の質量を表し、Bは常温で、エチルアセテートに48時間、沈積後、アクリル系粘着剤組成物の不溶解分の乾燥質量を表し、Cは常温で、エチルアセテートに48時間、沈積した後、エチルアセテートにより膨張された不溶解分の質量(アクリル系粘着剤不溶解分の質量+浸透溶剤の質量)を表す〕。
【0018】
また、本発明は、上記アクリル系粘着剤組成物を、偏光フィルムの一面または両面の粘着剤層に含むことを特徴とする偏光板を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、上記偏光板を液晶セルの一面または両面に接着した液晶パネルを含むことを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0020】
本発明者らは、架橋構造を形成する高分子量体のゲル含量及び膨張比を調節して最終粘着剤のゲル含量が低く、膨張比が少ないようにすると共に、相対的に少ない量の低分子量体が未架橋高分子中に存在するように調節することによって、高温及び/又は多湿条件で、耐久信頼性を保持することができ、最終粘着剤の応力緩和特性を向上し、光漏れ現象を大幅に改善して、裁断性の悪化を最小化することができる粘着剤を製造できることを確認して、本発明の完成に至った。
【0021】
即ち、本発明は、最終粘着剤のゲル含量、膨張比、溶剤により溶出されたゾルの分子量及び分子量分布を調節することによって、高温及び/又は多湿条件で、耐久信頼性を維持し、最終粘着剤のモジュラスを偏光板作業性において問題のない水準に保持しながら粘着剤の応力緩和特性を向上し、光漏れを改善さしたことを特徴とする。
【0022】
通常的に、最終粘着剤を低含量のゲルに調節し、溶剤によって沈積させる場合、ゲルが溶剤により膨張された量(膨張比、膨張指数)は非常に大きく増加する。このような架橋構造を有する粘着剤の場合、非常に緩い架橋構造を形成する。従って、外部から応力が負荷される場合、そのずれ量が大きく、容易に変形されるため、粘着剤の応力緩和特性が非常に優れ、光漏れを改善することができるが、高温及び多湿下で、耐久性が非常に悪くなる。
【0023】
本発明者らは、このような問題点を解決するために鋭意研究した結果、最終粘着剤を、低ゲル含量を有し、また膨張比が少ないように粘着剤を設計する場合、粘着剤は応力緩和特性に優れながらも高温及び多湿下で、耐久性も保持することが分かり、本発明を完成した。理論的に制限されないが、ゲル含量が低いながら膨張比が少ない粘着剤の場合、相対的に緻密な架橋構造を形成し、このような架橋構造を粘着剤のゾル(未架橋フリーポリマー)が互いに連結し、耐久性と応力緩和特性を同時に満足することができる。従って、本発明において、架橋構造の調節は非常に重要である。類似するゲル含量であっても架橋構造が非常に緻密になれば、未架橋高分子が架橋構造間を浸透し難くなるため、耐久信頼性が大きく低下される。反面に、架橋構造が緩すぎると、未架橋高分子が架橋構造間に容易に浸透することができるが、粘着剤に力が加えられるとき、未架橋高分子が架橋構造間を容易に通り抜けられるようになり、耐久信頼性が低下される。
【0024】
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、種々形態のアクリル系、シリコン系、ゴム系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系などの光学的に用いられる諸般粘着、接着素材に制限なく適用できるが、その中でも、アクリル系粘着剤が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有するアクリル系共重合体を含み、上記数式(1)で示されるゲル分率が10〜55%であり、上記数式(2)で示される膨張比が30〜110であり、粘着剤をエチルアセテートで溶出したゾルの重量平均分子量が800,000以上であり、重量平均分子量が最大100,000の低分子量体を全体ゾル成分中、10〜40重量%で含むことを特徴とする。
【0027】
本発明に係るアクリル系粘着剤組成物において、ゲル分率は15〜45%のものが好ましく、この場合、ゲル分率及び膨張比が下記数式(3)を満足することがより好ましい:
-2.83x + 130 ≦y≦ -2.83x + 180 (3)
(式中、xはゲル分率を表し、yは膨張比を表す)。
【0028】
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、ゲル分率が10〜55%、好ましくは15〜40%、より好ましくは15〜35%の範囲である。上記最終アクリル系粘着剤組成物のゲル分率が10%未満の場合には、高温及び/又は多湿の条件で、耐久信頼性が非常に劣るという問題があり、55%を超える場合には粘着剤の応力緩和特性が大きく低下されるという問題がある。
【0029】
一方、本発明のアクリル系粘着剤組成物は、ゲルにより測定される膨張比が30〜110のものである。上記膨張比が30未満の場合には架橋構造が緻密し過ぎ、粘着剤の応力緩和特性が不充分になるという問題があり、110を超える場合には架橋構造が緩すぎ、耐久性が劣るという問題がある。
【0030】
また、本発明のアクリル系粘着剤組成物を、溶剤(エチルアセテート)を用いて溶出されたゾル(未架橋高分子)の重量平均分子量は少なくとも800,000未満であり、これと同時にGPC分析時、重量平均分子量が最大100,000の低分子量体を全体ゾル成分中、10〜40重量%含むものである。
【0031】
上記溶出されたゾルの重量平均分子量が800,000未満の場合には耐久信頼性が不充分になるという問題がある。また、上記重量平均分子量が最大100,000の低分子量体が全体ゾル成分中、10%未満の場合には低光漏れ特性の向上効果が微小であるという問題があり、40重量%を超える場合には耐久信頼性が悪くなるという問題がある。
【0032】
上記のような本発明のアクリル系粘着剤は、架橋構造を形成する高分子量体のゲル含量及び膨張比を調節して最終粘着剤のゲル含量が低いながらも膨張比が少ないように設計することによって、粘着剤の応力緩和特性及び、高温及び/又は多湿下で耐久性を向上し、これと同時に未架橋高分子の重量平均分子量を800,000以上に調節して、上記未架橋高分子中の低分子量体(重量平均分子量が100,000以下)を10〜40重量%に調節することによって応力緩和特性を向上し、光漏れ現象を顕著に向上することができる。
【0033】
本発明に係る(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体80〜99.8重量部及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基または水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体0.01〜10重量部を含むことが好ましい。
【0034】
上記アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体は、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、またはテトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アルキル基の炭素数が上記範囲以外の場合、粘着剤のガラス遷移温度(Tg)が高まるか、又は粘着性の調節が難しいため、2〜14の範囲に限定される。上記アルキル(メタ)アクリル酸エステルは、単独又は2種類以上が併用されていてもよい。粘着力及び凝集力調節のために、全体単量体成分中、上記アルキル基が2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体80〜99.8重量部の範囲内で用いることが好ましい。
【0035】
本発明に係る(メタ)アクリル系共重合体は、粘着力及び凝集力を調節するために、多官能性架橋剤と架橋可能な水酸基またはカルボキシル基を含むビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体を共重合する。その例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸またはマレイン酸無水物などが挙げられ、これらから1種以上選択され得る。
【0036】
アクリル系共重合体中の上記多官能架橋剤と架橋可能な水酸基またはカルボキシル基含有ビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体の量が多すぎる場合、粘着性が低下され、剥離力が低下されるため、全体単量体成分中の0.01〜10重量部の使用が好ましい。
【0037】
本発明に係る(メタ)アクリル系共重合体は、粘着剤のガラス転移温度を調節するか、又はその他の機能性を付与するために、任意成分として総単量体重量対比0〜20重量部の下記一般式(1)のビニル系単量体を、さらに含んでいても良い。
【0038】
【化1】

【0039】
式中、Rは水素またはアルキルを表し、Rはシアノ、アルキルで置換されていてもよいフェニル、アセチルオキシ、またはCOR(ここで、Rはアルキルで置換されていてもよいアミノ又はグリシジルオキシを表す)を表す。式中、R〜Rの定義中、アルキルは好ましくは炭素数1〜6の低級アルキル、より好ましくはメチルまたはエチルを表す。
【0040】
上記一般式(1)の化合物の例には、スチレン、アルファメチルスチレン等のスチレン系単量体;酢酸ビニル等のカルボ酸ビニルエステル;(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどの窒素含有ビニル単量体などが挙げられる。上記アクリル系共重合体中の上記ビニル系単量体の量が多すぎる場合、粘着剤組成物の柔軟性が低下され、剥離力が低下されるため、全体単量体成分中の20重量部以下の使用が好ましい。
【0041】
上記アルキルの炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を主成分とするアクリル系共重合体を架橋させる場合、用いられる多官能性架橋剤は、アクリル系重合体のカルボキシル基及び水酸基などと反応することによって粘着剤の凝集力を高める役割を果す。上記架橋剤は、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、及び金属キレート系化合物よりなる群から1種以上選択され得る。
【0042】
上記イソシアネート系架橋剤には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、アイソフォームジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、またはこれらのトリメチロールプロパンなどのポリオールとの反応物などがある。また、エポキシ系架橋剤には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジルエチレンジアミン、またはグリセリンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。上記アジリジン系架橋剤には、N,N'−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイド)、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイド)、トリエチレンメラミン、ビスイソプロタロイル(bisprothaloyl)-1-(2-メチルアジリジン)、またはトリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイドなどがある。上記金属キレート系架橋剤には、アルミニウム、鉄、亜鉛、スズ、チタン、アンチモン、マグネシウム、またはバナジウムなどの多価金属がアセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルに配位した化合物などが挙げられる。
【0043】
本発明の粘着剤組成物で、多官能性架橋剤は、上記架橋剤の含量は(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して0.01〜10重量部で使われることが好ましい。その含量が0.01重量部未満の場合には十分な凝集力が付与されなく、耐久信頼性が脆弱になる問題があり、10重量部を超える場合には粘着性質が低下され、偏光フィルムからの剥離が容易に生じるという問題がある。
【0044】
また、本発明の組成物は、シラン系カップリング剤を、さらに含むことができ、これはガラス板と接着する場合に、接着安定性を向上して耐熱耐湿特性を更に向上させることができる。上記シラン系カップリング剤は、特に高温及び多湿下で長時間放置された場合、接着信頼性を向上させる機能を与えており、その含量はアクリル共重合体100重量部に対して0.005〜5重量部で使用することができる。上記シラン系カップリング剤化合物には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、またはγ−アセトアセテートプロピルトリメトキシシランなどであり、これらは単独または混合して使用することができる。
【0045】
また、本発明は、粘着性能を調節するために粘着性付与樹脂が更に添加されていてもよく、その含量はアクリル系共重合体100重量部に対して1〜100重量部の範囲で使用することができる。このとき、上記粘着性付与樹脂が過量使用されれば、粘着剤の相溶性または凝集力を低減させる場合があるので、注意して適切に添加しなければならない。上記粘着性付与樹脂の例には、(水添)ハイドロカーボン系樹脂、(水添)ロジン樹脂、(水添)ロジンエステル樹脂、(水添)テルペン樹脂、(水添)テルペンフェノール樹脂、重合ロジン樹脂、または重合ロジンエステル樹脂などが挙げられ、これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0046】
この他にも、本発明は特定の目的のために可塑剤、エポキシ樹脂及び硬化剤などを更に混合使用することができ、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤などを一般的な目的に応じて適宜に添加して使用することができる。
【0047】
また、本発明はアルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基または水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体を反応させて架橋構造用高分子量のアクリル系重合体を製造する段階;
アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させて未架橋構造用アクリル系重合体を製造する段階;
上記架橋構造用アクリル系重合体及び未架橋構造用アクリル系重合体を混合する段階;及び
上記混合物とアルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させて製造された低分子量のアクリル系重合体とを混合する段階;を含む本発明に係る偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法、又は
アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基または水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体を反応させて架橋用構造を含有するアクリル系重合体を製造する第1段階;
上記第1段階で得た架橋構造用アクリル系重合体の存在下でアルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を更に反応させて未架橋用構造を提供する第2段階;及び
上記第2段階で得た重合体とアルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させて製造された低分子量のアクリル系重合体とを混合する段階;を含む本発明に係る偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法に関するものである。
【0048】
上記のような本発明に係るアクリル系粘着剤組成物の製造方法は、下記によって具体化される。
【0049】
上記アクリル系粘着剤は本発明に好適な架橋構造を持たせるために、別途の2つのアクリル系重合体、即ち、架橋構造を形成する高分子量の重合体と未架橋構造を形成する高分子量の重合体とを製造した後、一定の重量比率で混合するか、又は反応器中で順次的に2つのアクリル系重合体を製造した後、これを低分子量の重合体と混合して多官能架橋剤と反応させて製造することができる。
【0050】
上記高分子量の重合体は、重量平均分子量が約1,000,000〜2,500,000であることが好ましく、低分子量の重合体は重量平均分子量が約3,000〜100,000であることが好ましい。上記高分子量の重合体の重量平均分子量が1,000,000未満であれば低い分子量によって粘着剤の耐久信頼性が低下され、2,500,000を超えれば、高い分子量によって粘着剤の応力緩和特性が低下され光学特性が低下され、上記低分子量の重合体の重量平均分子量が3,000未満であれば低分子量体が粘着剤表面に溶出され粘着物性が低下され、700,000を超えれば十分な応力緩和効果を期待することが難しい。
【0051】
一方、架橋構造を形成する重合体は、架橋可能官能基を必ず含有しており、架橋官能基量が過度に多くなれば架橋構造が緻密し過ぎて未架橋構造を形成する重合体が架橋構造間に浸透することが非常に難しくなり、耐久信頼性が大きく低下され、本発明のゲル分率と膨張比を達成することができない。反面に架橋構造を形成する重合体内に架橋官能基が一定含量以下の場合には、架橋構造が緩すぎて未架橋構造を形成する重合体が架橋構造間への浸透は容易であるが、粘着剤に力が加えられた場合、未架橋構造形成重合体が架橋構造から容易に離脱されて耐久信頼性が低下されるようになる。一方、架橋構造を形成する重合体と未架橋構造を形成する重合体との組成が大きく異なれば、2つの重合体間の完全な混合が難しいため、できる限り類似する組成が好ましい。また、2つ重合体の混合の側面から架橋官能基はカルボキシル基より水酸基が有利である。未架橋構造を形成する重合体は、架橋官能基(水酸基またはカルボキシル基)を有しないことが好ましいが、架橋官能基を有していても良い。
【0052】
上記アクリル系共重合体の製造方法は、特に限定されなく、溶液重合法、光重合法、バルク重合法、サスペンション重合法またはエマルジョン重合法によって製造され得る。好ましくは、アクリル系共重合体は溶液重合法を使用して製造し、重合温度は50℃〜140℃が好ましく、単量体が均一に混合された状態で開始剤を添加することが好ましい。
【0053】
このような重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ系重合開始剤と過酸化ベンゾイル、過酸化アセチルなどの過酸化物を単独または混合して使用することができる。
【0054】
本発明の粘着剤組成物の製造方法は、特に限定されなく、上記したアクリル系共重合体と架橋剤を常法により混合して得ることができる。
【0055】
このとき、多官能性架橋剤は粘着層の形成のために実施する配合過程で、均一なコーティング作業を行うため、架橋剤の官能基架橋反応が起きてはならない。上記コーティング作業後、乾燥及び熟成過程によって、架橋構造が形成され、強い弾性と凝集力を有する粘着層が得られる。
【0056】
また、本発明は、上記アクリル系粘着剤組成物を偏光フィルムの粘着層として含む偏光板を提供する。
【0057】
本発明の偏光板は、偏光フィルムの一方または両方面に上記粘着剤組成物から形成される粘着剤層からなる。上記偏光板を構成する偏光フィルムまたは偏光素子は特に制限されない。
【0058】
例えば、上記好適な偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムにヨウ素または二色性染料などの偏光成分を含有し、延伸することによって製造することができる。また、これらの偏光フィルムの膜厚は特に制限されなく、通常的な膜厚を形成することができる。このとき、上記ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール及びエチレン、酢酸ビニル共重合体のけん化物などが用いられる。
【0059】
上記偏光フィルムの両面には、トリアセチルセルロースなどのセルロース系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム、ポリエーテルスルホン系フィルム、ポリエチレン、ポリプロフィレン、シクロ系やノルボルネン構造を有するポリオレフィン系、エチレンプロピレン共重合体のようなポリオレフィン系などの保護フィルムが積層された多層フィルムなどを形成することができる。このとき、これらの保護フィルムの膜厚は特に制限されなく、通常的な膜厚を形成することができる。
【0060】
本発明で偏光フィルムに粘着剤層を形成する方法は特別な制限がなく、この偏光フィルム表面に直接バーコーターなどを使用し、上記粘着剤を塗布して乾燥させる方法、または上記粘着剤を、まず、剥離性基材表面に塗布して乾燥させた後、この剥離性基材表面に形成された粘着剤層を偏光フィルム表面に転写し、次いで、熟成させる方法を適用することができる。
【0061】
また、本発明の偏光板には、保護層、反射層、防眩層、位相差板、広視野角補償フィルム、及び輝度向上フィルムなどの追加機能を提供する層が1種以上積層されていてもよい。
【0062】
本発明の粘着剤が適用された偏光板は、通常的な液晶表示装置に皆適用可能であり、その液晶パネルの種類は特に限定されない。好ましくは、本発明は上記粘着偏光板を液晶セルの一面または両面に接着した液晶パネルを含む液晶表示装置を構成することができる。
【0063】
上記のような本発明のアクリル系粘着剤組成物は、産業用シート、特に保護フィルム、反射シート、構造用粘着シート、写真用粘着シート、車線表示用粘着シート、光学用粘着剤品、電子部品用粘着剤等に使用することができる。また、多層構造のラミネート製品、即ち、一般商業用粘着シート製品、医療用パッチ、加熱活性粘着剤等作用の概念が同様の応用分野でも適用することができる。
【0064】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するためのだけであり、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
製造例1:
窒素ガスの還流と容易な温度調節のための冷却装置付き1Lの反応器に、n−ブチルアクリレート(BA)98重量部、及び2−ヒドロキシメタクリレート(2−HEMA)2重量部の単量体混合物を投入した後、上記反応器に溶剤としてエチルアセテート(EAc)120重量部を投入した。その後、酸素を除去するために窒素ガスを60分間パージした後、温度を60℃に保持した。上記混合物を均一にした後、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03重量部を投入し、8時間、反応した後、混合物をエチルアセテートで希釈し、固形分含量が15重量%、重量平均分子量が1,700,000、分子量分布が4.9の高分子量アクリル系共重合体(A−1)を製造した。
【0066】
製造例2〜6:
上記製造例1において、表1で示されるようなアクリル系共重合体組成物の各成分を部分的に加えるか、又は部分的に加えないことによって高分子量アクリル系共重合体を製造した。
【0067】
製造例7〜9:
上記製造例1において、表1で示されるようなアクリル系共重合体組成物の各成分を部分的に加えるか、又は部分的に加えないことによって低分子量アクリル系共重合体を製造した。
【0068】
製造例10〜12
第1段階で、製造例1と同様の条件下で、 表2で示されるような水酸基含有組成で水酸基含有高分子量アクリル系共重合体を製造した。表2示される第2段階の組成を、第1段階反応で製造された重合体に加え、第1段階と同じ条件下で、混合物を反応して、最終高分子量アクリル系共重合体を製造した。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
実施例1
上記で製造した高分子量体のアクリル系共重合体(A−1)20重量部、高分子量体アクリル系共重合体(B−1)80重量部、及び低分子量体アクリル系共重合体(L−2)20重量部を混合した後、ここに、多官能性架橋剤としてイソシアネート系トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物(TDI−1)0.1重量部を投入し、適正濃度で希釈して均一に混合した後、離型紙にコーティングし、乾燥して膜厚30μmの均一な粘着層を製造した。
【0072】
(合板過程)
上記製造した粘着層を185μm膜厚のヨード系偏光板に粘着加工した。
【0073】
実施例2〜5及び比較例1〜6
表3で示されるような成分と組成比を使用したことを除いては、上記実施例1と同様にし、粘着層を製造し、これを粘着加工した。
【0074】
【表3】

【0075】
上記実施例1〜5及び比較例1〜6で製造した粘着剤がコーディングされた偏光板を用いて、下記のような方法でゾル(未架橋高分子)分析、ゲル分率、膨張比、耐久信頼性、光漏れ現象(光透過均一性)、及びはみ出し現象を実施し、その結果を下記表5に示した。
【0076】
(ゾル分析)
上記ゲル含量測定時、溶剤による溶解分(ゾル)を乾燥し、下記のような条件でゲル浸透クロマトグラフィーを利用して重量平均分子量及び全体ゾル中の重量平均分子量が100,000以下の高分子の重量百分率を測定した。
【0077】
【表4】

【0078】
(ゲル分率)
上記実施例1〜5及び比較例1〜6の配合過程で乾燥された粘着剤を、約10日間、恒温恒温室(23℃、60%RH)に放置した。その後、上記粘着剤を、それぞれ約0.3gずつ#200ステンレス金網に入れ、100mLのエチルアセテートに沈積させた後、常温、暗室で2日間、保管し、不溶解分を分離した。上記不溶解分を70℃のオーブンで4時間、乾燥した後、質量を測定し、評価した。
【0079】
(膨張比)
上記ゲル含量測定時、不溶解分を分離した後、不溶解分と不溶解分に含まれた(膨張された)溶剤の重量を測定し、乾燥後、不溶解分の質量で割り、膨張比を評価した。
【0080】
(耐久信頼性)
上記実施例1〜5及び比較例1〜6で製造した粘着剤がコーディングされた偏光板(90mm×170mm)を、それぞれ、ガラス基板(110mm×190mm×0.7mm)に、両面に光学吸収軸がクロス状態で付着した。このとき、加えられた圧力は5kg/cmであり、気泡や異物が生じないようにクリーンルーム作業を行った。この試片を60℃の温度と90%の相対湿度条件下で、1000時間、放置した後、気泡や剥離の発生有無を観察し、耐湿熱特性を評価した。また、耐熱特性は80℃の温度で1000時間、放置した後、気泡や剥離の発生有無を観察し、評価した。
【0081】
このとき、試片等の状態を評価する直前に、常温で24時間、放置した後、実施した。また、上記実施例1〜5及び比較例1〜6で製造した粘着剤がコーディングされた偏光板を5ケ月以上放置した後、上記の方法で信頼性を評価した。評価された信頼性を下記の通りである。
〇:気泡や剥離現象が観察されなかった。
△:気泡や剥離現象が若干観察された。
×:気泡や剥離現象多量観察された。
【0082】
(光漏れ現象(光透過均一性))
上記耐久信頼性評価時に使用した試片と同じ試片を用いて、光透過度の均一性を調べるために、バックライトを利用して暗室で光漏れの有無を観察した。光透過均一性を試験する方法で、上記実施例1〜5及び比較例1〜6で製造した粘着剤がコーディングされた偏光板(90mm×170mm)を、それぞれ、ガラス基板(210mm×210mm×0.7mm)に、直角交差して両面に付着し、光透過性の均一性を測定した。測定された光透過性の均一性は下記の通りである。
◎:光透過性の不均一現象が肉眼では観察されなかった。
○:光透過性の不均一現象が若干観察された。
△:光透過性の不均一現象が多少観察された。
×:光透過性の不一現象が多量観察された。
【0083】
(はみ出し現象)
上記実施例1〜5及び比較例1〜6で製造した粘着剤がコーディングされた偏光板を、トムソンカッター(Thompson Cutter)を利用して切断した後、各偏光板の切断面を顕微鏡で観察し、粘着剤のはみ出し現象を測定し、下記に示した。
3点:切断面の粘着剤はみ出した程度が良好(0.2mm未満)。
2点:切断面の粘着剤はみ出した程度が多少不良(0.2〜0.5mm)。
1点:切断面の粘着剤はみ出した程度が激しい(0.5mm以上)。
【0084】
【表5】

【0085】
上記表5で示されるように、本発明によって製造した実施例1〜5の場合には、耐久信頼性を保持しながら低光漏れ特性が非常に優れており、偏光板作業時、粘着剤のはみ出し現象が大変少ないことを確認することができた。反面、低分子量体含量が本発明の範囲を超える比較例1の場合、耐久信頼性の不足を示し、低分子量体含量が本発明の範囲より少ない比較例2及び3は、低光漏れ改善効果が有意義ではなく、比較例4の場合には、低光漏れ特性は優れるが、ゾルの重量平均分子量が本発明の範囲より小さく、低分子量体の含量が本発明の範囲を超え、耐久信頼性が顕著に低いことを確認することができた。また、ゲル含量の高い構造で、低分子量体を多量混合して光漏れを改善した比較例5の場合には、実施例1〜5と比較時、その改善効果が低く、多量の低分子量体によって耐久信頼性が悪くなり、粘着剤のはみ出し現象が悪くなることを確認することができた。ゾルの重量平均分子量が800,000未満である比較例6の場合には、耐久信頼性が低いことを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係るアクリル系粘着剤組成物は、高温及び/又は多湿条件下又は長期間使用時、発生しうる粘着耐久信頼性を満足しながらも粘着剤層に応力緩和特性を效果的に付与し、低光漏れ特性を顕著に向上させることができるだけでなく、同時に偏光板裁断時、粘着剤のはみ出し現象などが低減し、作業性に優れた効果がある。
【0087】
以上で本発明の記載された具体例についてのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想範囲内で様々な変形及び修飾が可能なことは当業者にとって自明である。このような変形及び修飾は、添付された特許請求の範囲に属することはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施例に係るアクリル系粘着剤組成物のゲル分率及び膨張比の関係を図示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有するアクリル系共重合体を含み、
下記数式(1)で示されるゲル分率が10〜55%であり、
下記数式(2)で示される膨張比が30〜110であり、
粘着剤をエチルアセテートで溶出したゾルの重量平均分子量が800,000以上であり、及び
重量平均分子量が最大100,000である低分子量体を全体ゾル成分中の10〜40重量%で含む偏光板用アクリル系粘着剤組成物:
ゲル分率(%)=B/A×100 (1)
膨張比=C/B (2)
〔式中、Aはアクリル系粘着剤組成物の質量を表し、Bは常温で、エチルアセテートに48時間、沈積後、アクリル系粘着剤組成物の不溶解分の乾燥質量を表し、Cは常温で、エチルアセテートに48時間、沈積した後、エチルアセテートにより膨張された不溶解分の質量(アクリル系粘着剤不溶解分の質量+浸透溶剤の質量)を表す〕。
【請求項2】
ゲル分率が15〜45%であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項3】
ゲル分率及び膨張比が下記数式(3)
-2.83x + 130 ≦y≦ -2.83x + 180 (3)
(式中、xはゲル分率を表し、yは膨張比を表す)を満足することを特徴とする請求項2に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体80〜99.8重量部及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基または水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体0.01〜10重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項5】
上記アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体が、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレートよりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項6】
架橋性単量体は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸、及びマレイン酸無水物よりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項7】
(メタ)アクリル系共重合体は、共重合可能なビニル系単量体20重量部以下を、さらに含むことを特徴とする請求項4に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項8】
多官能性架橋剤は、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物及び金属キレート系化合物よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項9】
上記アクリル系共重合体100重量部に対して、シラン系カップリング剤0.005〜5重量部、及び粘着性付与樹脂1〜100重量部を、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項10】
上記アクリル系粘着剤組成物が、可塑剤、エポキシ樹脂、硬化剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、及び界面活性剤よりなる群から選択される添加剤を、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項11】
アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基又は水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体を反応させ、架橋構造用高分子量アクリル系重合体を製造する段階;
アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させ、未架橋構造用アクリル系重合体を製造する段階;
上記架橋構造用アクリル系重合体及び未架橋構造用アクリル系重合体を混合する段階;及び、
上記混合物と、アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させ、製造された低分子量のアクリル系重合体とを混合する段階;
を含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
【請求項12】
アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基又は水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体を反応させ、架橋構造用アクリル系重合体を製造する第1段階;
上記第1段階で得た架橋構造用アクリル系重合体の存在下で、アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体をさらに反応させ、未架橋構造用アクリル系重合体を製造する第2段階;及び、
上記第2段階で得た重合体と、アルキル基の炭素数2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させ、製造された低分子量のアクリル系重合体とを混合する段階;
を含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
【請求項13】
反応が溶液重合法、光重合法、バルク重合法、サスペンション重合法、及びエマルジョン重合法よりなる群から選択される重合反応であることを特徴とする請求項11又は12に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
【請求項14】
ビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体は、水酸基を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
【請求項15】
偏光フィルムの一面又は両面に、粘着剤層として請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物を含むことを特徴とする粘着偏光板。
【請求項16】
上記粘着偏光板は、保護層、反射層、位相差板、広視野角補償フィルム及び輝度向上フィルムよりなる群から選択される1種以上の層を、さらに含むことを特徴とする請求項15に記載の粘着偏光板。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の粘着偏光板を、液晶セルの一面又は両面に接着する液晶パネルを含むことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公表番号】特表2009−516048(P2009−516048A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541081(P2008−541081)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004839
【国際公開番号】WO2007/058493
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】