説明

偏光板用光学フィルム、その製造方法及び偏光板

【課題】樹脂フィルム基材上に1層以上の樹脂層を形成する際に、光学特性、面品質、あるいは帯電防止性能、更に耐擦傷性、密着性を改善した光学フィルム、その製造方法及び当該光学フィルムを用いる偏光板を提供することにある。
【解決手段】導電性物質と、重量平均分子量が40万を越え、かつガラス転移点(Tg)が80〜110℃の樹脂をバインダー樹脂全体の60質量%以上含有する樹脂層を少なくとも1層設けたことを特徴とする偏光板用光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用途に利用される光学フィルム及びその製造方法に関するものであり、特に液晶表示装置あるいは有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルムに利用することができる光学フィルム、その製造方法及び当該光学フィルムを用いる偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ用偏光板保護フィルム、有機ELディスプレイ等に用いられる円偏光板の保護フィルム、楕円偏光板などの光学用途に使用される光学フィルムでは、様々な機能をもたせるために樹脂フィルム基材上に樹脂層が塗設されたものである。例えば、帯電防止機能を持たせるための帯電防止層や、表面硬度を向上させるためのハードコート層、膜付き性を向上させるための下引き層、カールを防止するためのアンチカール層などである。樹脂フィルム基材上にこのような樹脂層を1層以上塗設する場合、製造時に光学特性や面品質或いは必要な特性において問題となることがあった。特に帯電防止機能を持たせるための帯電防止層の場合は、帯電防止性に問題が起こることが明らかとなった。さらに、樹脂フィルム基材上にこのような樹脂層を2層以上塗設する場合は、さらに複雑となり、耐擦傷性の低下、紫外線照射後の密着性の低下などが問題となり、その改善が求められていた。
【0003】
また、特許文献1には、透過型プロジェクションスクリーン用の光拡散層が三菱レーヨン(株)製ダイヤナールBR−106を含有し、上層にハードコート層を有することが記載されている。
【特許文献1】特開平10−160911号(段落(0021)〜(0034))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、樹脂フィルム基材上に1層以上の樹脂層を形成する際に、光学特性、面品質、あるいは帯電防止性能、更に耐擦傷性、密着性を改善した光学フィルム及びその製造方法及び当該光学フィルムを用いる偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
1.導電性物質と、重量平均分子量が40万を越え、かつガラス転移点(Tg)が80から110℃の樹脂をバインダー樹脂全体の60質量%以上含有する樹脂層を少なくとも1層設けたことを特徴とする偏光板用光学フィルム。
2.前記樹脂層の上に、更に活性光線硬化樹脂もしくは熱硬化樹脂から実質的になる層を設けたことを特徴とする1に記載の偏光板用光学フィルム。
3.重量平均分子量が40万を越え、かつガラス転移点(Tg)が80から110℃の樹脂が、セルロース誘導体、アクリル樹脂もしくはその共重合体であることを特徴とする1又は2に記載の偏光板用光学フィルム。
4.セルロースエステルフィルム又はポリカーボネートフィルムからなる基材上に前記樹脂層を設けたことを特徴とする1から3の何れか1項に記載の偏光板用光学フィルム。
5.前記導電性物質が、平均粒径5nmから10μmの導電性微粒子であることを特徴とする1から4の何れか1項に記載の偏光板用光学フィルム。
6.ヘイズ値が3.0%以下であることを特徴とする1から5の何れか1項に記載の偏光板用光学フィルム。
7.前記ヘイズ値が0.5%以下であることを特徴とする6に記載の偏光板用光学フィルム。
8.前記導電性微粒子1質量部あたりのバインダー樹脂が0.5から4質量部であることを特徴とする5から7の何れか1項に記載の偏光板用光学フィルム。
9.前記導電性微粒子及び、前記重量平均分子量が40万を越え、かつガラス転移点(Tg)が80から110℃である樹脂を溶媒中に含有してなる塗布組成物を、塗布時の含水率を5質量%以下に維持して前記基材上に塗布することにより樹脂層を設けたことを特徴とする5から8の何れか1項に記載の偏光板用光学フィルム。
10.前記含水率を2質量%以下に維持することを特徴とする9に記載の偏光板用光学フィルム。
11.前記塗布組成物の固形分濃度が0.5から50質量%であり、塗布時のウエット膜厚が15μm以下であることを特徴とする9又は10に記載の偏光板用光学フィルム。
12.前記ウエット膜厚が5から10μmであることを特徴とする11に記載の偏光板用光学フィルム。
13.重量平均分子量が40万を越え、かつガラス転移点(Tg)が80から110℃である樹脂を溶媒中に含有してなる塗布組成物を、塗布時の含水率を5質量%以下に維持してフィルム基材上に塗布することにより樹脂層を設けたことを特徴とする偏光板用光学フィルム。
14.前記塗布組成物が微粒子を含有することを特徴とする13に記載の偏光板用光学フィルム。
15.前記樹脂層の微粒子1質量部あたりの樹脂が0.5から4質量部であることを特徴とする14に記載の偏光板用光学フィルム。
16.前記含水率を2質量%以下に維持することを特徴とする15に記載の偏光板用光学フィルム。
17.前記塗布組成物の固形分濃度が0.5から50質量%であり、塗布時のウエット膜厚が15μm以下であることを特徴とする13から16に記載の偏光板用光学フィルム。
18.前記ウエット膜厚が5から10μmであることを特徴とする17に記載の偏光板用光学フィルム。
19.重量平均分子量が40万を越え、かつガラス転移点(Tg)が80から110℃である樹脂を溶媒中に含有してなる塗布組成物を、塗布時の含水率を5質量%以下に維持してフィルム基材上に塗布することにより樹脂層を設けることを特徴とする偏光板用光学フィルムの製造方法。
20.水分を除去する手段を用い、フィルム基材上の搬送速度を10から100m/minで、連続的に塗布することを特徴とする19に記載の偏光板用光学フィルムの製造方法。
21.1から18の何れか1項に記載の偏光板用光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【発明の効果】
【0006】
樹脂フィルム基材上に1層以上の樹脂層を形成し、有機ELディスプレイ等に用いられる円偏光板の保護フィルム、液晶表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルムを製造する際に、光学特性、面品質、あるいは帯電防止性能、更に耐擦傷性、密着性等を改善した高品質の光学フィルムを製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
液晶ディスプレイあるいは有機ELディスプレイに用いる偏光板用保護フィルムなどの光学用途に使用される光学フィルムでは、様々な機能を持たせるためにフィルム基材上に様々な樹脂層を塗設することがある。例えば、帯電防止機能を持たせるための帯電防止層や、表面硬度を向上させるためのハードコート層、膜付き性を向上させるための下引き層、カールを防止するためのアンチカール層などである。
【0008】
樹脂フィルム基材上にこのような樹脂層を塗設する際に、時にヘイズが高くなるという問題が発生することがあった。さらに帯電防止機能を持たせるための帯電防止層を有する光学フィルムでは表面比抵抗値が著しく高くなるという問題も併発することがあった。そこでこの問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、比較的塗布環境の湿度が高い時、即ち、連続塗布中に塗布組成物中の含水率がそれにより高くなるとこのような問題が発生することが明らかとなった。すなわち、樹脂あるいは溶媒等の原材料に含まれる水分あるいは調液中もしくは塗布中の環境下で空気中の湿気に起因して、塗布組成物中の水分があるレベル以上になると急激に問題が発生することが明らかとなった。従って、塗布組成物中の含水率を5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下に維持することによって、ヘイズが低く、帯電防止性にも優れた光学フィルムを得ることができ、さらにそれを安定に製造する方法を提供することができたのである。
【0009】
空気中より結露等により吸湿して増加する含水率を5質量%以下に維持する方法としては、塗布組成物に使用されている固形分比率を変えることなく蒸発する分の溶媒を添加することによって、相対的に含水率を低く抑えることができ、これによって含水率を規定範囲内に維持することができる。ここで添加する溶媒も含水率が1%以下好ましくは0.5%以下であることが望まれる。この方法は固形分量が大きく変化しない程度に添加していく必要があるため、制約が多い。そのため、より好ましくは塗布中、塗布組成物を塗布部の貯留槽に連続的に供給する方法が用いられる。このとき新たに供給される塗布組成物は好ましくは含水率1%以下特に好ましくは含水率0.5%以下の塗布組成物であることが望まれる。
【0010】
さらに好ましくは、塗布組成物に含まれる水分を除去手段(例えばシリカゲル、モレキュラーシーブ、塩化カルシウム等)を用いて積極的に取り除くことができる。除去手段は特にこれらに限定されるものではない。又、これらの手段を塗布時に用い(即ち塗布機への塗布組成物の供給時にインラインで、含水率を減らしながら塗布を行う)、含水率が5質量%以下好ましくは2%以下に抑えつつ、塗布することも好ましい。含水率は更に好ましくは1%以下であることが望ましく、実質的に0であることが最も望ましい。実質的に0とは、0.01〜0.5%の含水率を意味する。塗布の際にはコーターヘッドに塗布組成物が供給された後に再度、吸水してしまわないように、連続的に、10〜100m/minの搬送速度でフィルム基材上に塗布し、次いで乾燥させて樹脂層を設けることが好ましい。
【0011】
又、安定生産のためには塗布組成物に含まれる含水率を管理項目としてチェックすることも極めて有効である。
【0012】
本発明の偏光板用光学フィルム(単に、光学フィルムとも言う)上の樹脂層とは、熱可塑性樹脂、活性線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、その他の樹脂を主たる成分とする層であり、これらの樹脂を有する層をフィルム基材上に塗設するにはこの様に、塗布組成物中の含水率を5質量%以下、特に好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下に維持し、塗布を行うことが有用であることが判った。
【0013】
本発明の1つの態様では、良好な面品質をもたせるために、樹脂フィルム基材上に少なくとも1層以上の樹脂層を設けた光学フィルムにおいて、該樹脂層の少なくとも1層の樹脂が重量平均分子量40万を超え、好ましくは100万以下、かつガラス転移点(Tg)が80〜110℃の樹脂を用いるのが好ましい。
【0014】
樹脂層に使用される樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましく、適当な溶剤に溶解した状態でフィルム基材上に塗設される。ここで使用される樹脂は、例えばセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネート、又はセルロースナイトレート等のセルロースエステル類、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、又はコポリブチレン/テレ/イソフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール又はポリビニルベンザール等のポリビニルアルコール誘導体、ノルボルネン化合物を含有するノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸メチルを含む共重合体等のアクリル樹脂を用いることが出来るが特にこれらに限定されるものではない。この中でセルロース誘導体あるいはアクリル樹脂が好ましい。更にアクリル樹脂が最も好ましく用いられる。更にガラス転移点が110℃以下、更に好ましくは90℃以下の熱可塑性アクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0015】
ここで使用する樹脂は下層で使用している樹脂全体の60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であることが好ましく、必要に応じて活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂をブレンドすることもできる。これらの活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂については後述するが、好ましい強度をもたせるために上記樹脂層の上に塗布される場合もある。
【0016】
又、本発明の1つの態様としてこれらの層を下層に用いる場合、微粒子を添加し密着性を改善する方法も提供する。すなわち、該微粒子と樹脂の比率が微粒子1質量部に対し、0.5〜4質量部である下層とすることによって、微粒子を添加しても密着性が低下しないことが明らかとなった。特に樹脂として分子量40万を越える、好ましくは100万以下の熱可塑性樹脂を使用することが好ましく。更に、ガラス転移点が110℃以下の樹脂が好ましく用いられ、90℃以下の樹脂が更に好ましく用いられる。
【0017】
これらの微粒子としては、無機あるいは有機の微粒子であり、例えば、無機微粒子としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることができ、また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を挙げることができる。
【0018】
又、本発明の別の態様においては、本発明の樹脂層とは活性線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、その他の樹脂を主たる成分とする層も含有する。これについては後述するが、前記のように塗布組成物の水分含有量をコントロールすることで良好な光学特性と強度を有する塗布層を得ることが出来る。
【0019】
本発明の樹脂層を塗設するための塗布組成物は、少なくとも溶剤と前記樹脂からなる。溶剤としては、炭化水素、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒(メチレンクロライド)を適宜混合して使用することができるが特にこれらに限定されるものではない。
【0020】
具体的には、上記炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられ、
アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、
エステル類としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル等が挙げられ、
グリコールエーテル(C1〜C4)類としては、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、
又はプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、
その他の溶媒としてメチレンクロライド、n−メチルピロリドンなどがあげられる。特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒も好ましく用いられる。
【0021】
これらの溶媒のうち、沸点が低い溶媒は蒸発によって空気中の水分を結露させやすく、調液工程、塗布工程にて塗布組成物中に水分を取り込みやすい。特に、梅雨時、降雨時には外部の湿度上昇の影響を受けやすく、湿度65%RH以上の環境ではその影響が顕著となってくる。特に調液工程で樹脂の溶解時間が長時間となったり、塗布工程で塗布組成物が空気に暴露されている時間が長くなったり、塗布組成物と空気との接触面積が広い場合はその影響は大きくなる。
【0022】
特にウェット膜厚が15μm以上であったり、あるいは塗布乾燥時の作業環境の湿度が65%RH以上になる高湿度環境下では、塗布むらあるいは筋状、ひび割れ状、窪み状の故障が発生することがあったが、本発明の樹脂層の場合は、このような高湿度環境下でも良好な面品質を有する樹脂層を提供することができたのである。
【0023】
特にフィルム基材上に塗布された樹脂層の上に活性線硬化樹脂層を塗設した場合に、下層の樹脂層の面品質の悪さが増幅されてしまうことが判明し、光学フィルムの製品品質を著しく低下させることがあったが、このような層構成の光学フィルムでは、本発明の方法による面品質の改善効果は極めて顕著であった。
【0024】
例えば、従来、可塑剤又は紫外線吸収剤を含む樹脂フィルム基材上に下引き層あるいは帯電防止層等の機能を有する塗布層を少なくとも1層設け、さらにその上に活性線硬化樹脂層を設ける場合、密着性が良好で耐擦傷性(スチールウール耐性)あるいは鉛筆硬度にも優れるフィルムを得ることは困難であった。これは塗布に用いられる溶媒によって基材から可塑剤等が溶出するため、これが活性線硬化樹脂層の硬化を阻害していると考えられる。一方では、活性線硬化樹脂層の硬化を阻害しにくい可塑剤を用いた場合、今度は密着性が悪くなるという問題が生じることがわかった。
【0025】
具体的には、可塑剤としてトリフェニルフォスフェートを用いたフィルム基材では、塗布層の密着性が良好な反面、活性線硬化樹脂層の硬化が阻害され、可塑剤としてエチルフタリルエチルグリコレートを用いた場合は硬化阻害は少ない反面、密着性に劣るという事がわかった。
【0026】
塗布溶媒は塗布性あるいは異物故障低減のため、あるいはブラッシングによるヘイズの増加など光学性能を維持するために好ましい組成が選択されるが、一方でこのような溶媒には樹脂フィルム基材を膨潤もしくは溶解する成分も含まれるため、可塑剤又は紫外線吸収剤の影響を、得られた光学フィルムが受け易いという問題があった。そこで、これらの問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、樹脂フィルム基材上に少なくとも1層の樹脂層を設け更にその上に活性線硬化樹脂層を設けた光学フィルムにおいて、該樹脂層を、固形分濃度が0.5〜50質量%である塗布組成物をウェット膜厚で15μm以下で、特に好ましくは5〜10μmとなるように塗布、乾燥させ、その上に活性線硬化樹脂層を設けることによって、この問題を解決できることを見いだしたのである。これによって、前記樹脂層を塗設する際の塗布組成物に前記樹脂フィルム基材を膨潤もしくは溶解する溶媒を含む場合であっても耐擦傷性(スチールウール耐性)及び鉛筆硬度にも優れ、密着性も良好であり、しかも異物故障の少ないフィルムが得られたのである。特に活性線硬化樹脂層の硬化阻害を起こしやすい可塑剤であるリン酸エステル系可塑剤(例えばトリフェニルホスフェート等)を使用しても十分な効果があり、耐候性試験による紫外線照射後であっても密着性にも優れた光学フィルムが得られる。
【0027】
更に、この問題を解決するための別の実施態様では、可塑剤又は紫外線吸収剤を含有する樹脂フィルム基材上に少なくとも2層以上の樹脂層を設ける光学フィルムの製造方法において、樹脂フィルムを膨潤もしくは溶解することができる溶媒と熱可塑性樹脂からなる塗布組成物を塗布、乾燥させて下層を塗設した後、固形分あたり2.5〜6質量%の重合開始剤を含む活性線硬化樹脂を含む塗布組成物を塗布、乾燥させて上層を塗設することによっても耐擦傷性(スチールウール耐性)あるいは鉛筆硬度にも優れ、しかも異物故障の少ない(視覚的直径が150μm以上の大きさを有する異物が1個/m以下である)フィルムが得られたのである。さらに、これらを組み合わせることによってさらに耐擦傷性(スチールウール耐性)あるいは鉛筆硬度に優れた光学フィルムを提供することができたのである。
【0028】
本発明でいう異物の視覚的直径とは、例えば、直径100μmの異物とは、塗膜の基準面(フィルム基材面)に対して塗膜表面の厚み変化率が2μm(塗膜の厚み変化)/100μm(基準面上の距離)以上で塗膜の厚みが0.5μm以上変化した突起状故障及び/又は窪み状部分の範囲を略円形として見たときの直径が、100μmの異物であり、これを目視で100μmの大きさの異物故障としている。同様に前記の直径が150μmの故障を150μmの大きさの異物故障としている。実際には、前記の100μmの大きさの異物故障と150μmの大きさの異物故障の見本を用意し、100μmの大きさの異物故障の見本と150μmの大きさの異物故障の見本の中間の大きさを有する異物故障を直径100〜150μmの異物数としてカウントする。同様に150μmの大きさの異物故障の見本に対し、これ同等もしくはこれ以上の大きさの異物故障を150μm以上の異物としてカウントした。
【0029】
以上により、フィルム基材上に少なくとも1層の樹脂層を設け、さらにその上に活性線硬化樹脂層を設ける事により、ヘイズ0.5%以下でかつ透過率が92%以上であり、かつ活性線硬化樹脂層の鉛筆硬度が2H以上であり、該活性線硬化樹脂層が、スチールウール#000にて4.9N/cmの応力をかけて10往復擦った場合に入る傷が5本以下である耐擦傷性を有し、紫外線強度100mW/cmで100時間照射後のJIS K5400記載の碁盤目試験の評価が10である密着性を有する充分に強度の高い光学特性にも優れた光学フィルムを得ることができる。
【0030】
更に、視覚的直径が150μm以上の大きさを有する異物が1個/m以下、更に好ましくは同直径が100μm以上の異物が1個/m以下である光学フィルムを得ることが出来、更に表面比抵抗値が1011Ω/cm以下の優れた帯電防止特性を付与することもできたのである。
本発明で光学フィルムの基材として用いられる樹脂フィルムは特に限定はされないが、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム(CAPフィルム)、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアリレート系フィルム等を挙げることができるが、本発明には、セルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)等のセルロースエステルフィルム、ポリカーボネート(以下PCと略すことがある)フィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム及びポリスルホン系フィルムが透明性、機械的性質、光学的異方性がない点など好ましく、特にセルロースエステルフィルム(CAPフィルム、TACフィルム)及びPCフィルムが、それらの中でも、製膜性が容易で加工性に優れているため好ましく用いられ、特にTACフィルムを使用する場合、著しい効果が認められた。
【0031】
セルロースエステルフィルムを用いる場合、本発明の各塗布層塗設前にセルロースエステルフィルムがアルカリ鹸化処理されていても、塗布後にアルカリ鹸化処理してもよい。例えば、製膜後アルカリ鹸化処理した後、帯電防止層及び/又は紫外線硬化樹脂層あるいは更に反射防止層を塗設することもできるし、バックコート層、帯電防止層、紫外線硬化樹脂層を塗設した後、アルカリ鹸化処理し、さらに反射防止層を塗設することもできる。
【0032】
次に、TACフィルムの製膜法について述べるが、CAPも同様に製膜することができる。TACフィルムは一般的に、TACフレーク原料及び可塑剤をメチレンクロライドに溶解して粘稠液とし、これに可塑剤を溶解してドープとなし、エクストルーダーダイスから、エンドレスに回転するステンレス等の金属ベルト(バンドともいう)上に流延して、乾燥させ、生乾きの状態でベルトから剥離し、ロール等の搬送装置により、両面から乾燥させて巻き取り、製造される。PCフィルムについてもTACフィルムと同様に製膜することが出来る。
【0033】
なお、巻き取られたTAC又はPCフィルムは次ぎの塗布工程で、例えば、帯電防止塗布液組成物等が塗布されるが、一般的には一つの塗布が終わる毎に巻き取り、また次の塗布を行うというように断続的に塗布を行っている。この方法であると、収率が落ちたり、輸送コストがかかったり、フィルムを痛めやすいという欠点があった。本発明者らは一つの工程内で連続して色々な塗布組成物を次々とTAC又はPCフィルム上に塗布を行うことにより、収率が上がり、コストが安くなり、フィルムの損傷もなく、フィルムとの接着性あるいは塗布層間の接着性がより優れたフィルムが得られることを発見し、連続塗布方式の方が好ましいことを見いだした。更に、TAC又はPCフィルムの製膜のラインと塗布ラインとを結合させるいわゆるインライン塗布(製膜と塗布が同一ライン内にある)は収率、コスト、接着性などが、より優れていることを見いだした。したがって、本発明のように、多種類の塗布を行うには、断続的な塗布よりも連続塗布方式が好ましく、特に連続方式よりもインライン方式の方が好ましい。
【0034】
上記可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが好ましく用いられる。リン酸エステルとしては、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)、ビフェニル−ジフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェートが含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的なものである。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、エチルフタリルエチルグリコレート等が用いられる。クエン酸エステルとしては、クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)およびクエン酸アセチルトリブチル(OACTB)が用いられる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。リン酸エステル系可塑剤(TPP、TCP、ビフェニル−ジフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート)、フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DEHP)が好ましく用いられる。このほか、ポリ酢酸ビニル共重合体、脂肪族直鎖状ポリエステル、メチルメタクリレート系共重合物などの重合平均分子量1000〜100000の高分子化合物を高分子可塑剤として添加することができる。
【0035】
又、この中でもトリフェニルフォスフェート(TPP)、エチルフタリルエチルグリコレートが特に好ましく用いられる。
【0036】
可塑剤はTACフィルムへの耐水性付与、あるいはその透湿性改善のため、重要な素材であるが、添加量が多すぎると塗布層への悪影響あるいは、製造ラインが可塑剤で汚れやすくなるという問題がある。
【0037】
可塑剤の添加量はフィルム中に通常2〜15質量%で添加され、好ましくは4〜8質量%で添加することが望ましい。
【0038】
PCフィルムにも上記可塑剤を添加することができる。
【0039】
また、本発明に有用な基材であるTAC又はPCフィルム中に、紫外線吸収剤を含有させることによって、耐光性に優れた偏光板用保護フィルムを得ることが出来る。本発明に有用な紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体(UV−1)、ベンゾフェノン誘導体(UV−2)、ベンゾトリアゾール誘導体(UV−3)、アクリロニトリル誘導体(UV−4)、安息香酸誘導体(UV−5)又は有機金属錯塩(UV−6)等があり、それぞれ(UV−1)としては、サリチル酸フェニル、4−t−ブチルフェニルサリチル酸等を、(UV−2)としては、2−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等を、(UV−3)としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−5′−ジ−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等を、(UV−4)としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、メチル−α−シアノ−β−(p−メトキシフェニル)アクリレート等を、(UV−5)としては、レゾルシノール−モノベンゾエート、2′,4′−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等を、(UV−6)としては、ニッケルビス−オクチルフェニルサルファミド、エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸のニッケル塩等を挙げることができる。
【0040】
又、すべり性を改善するために、これら基材透明フィルムを製造する際のドープ中に、シリカ等の微粒子(平均粒径0.005〜0.2μm)を0.01〜0.5質量%添加することもできる。例えば日本アエロジル社製アエロジル200V、アエロジルR972Vなどを添加することができる。すべり性は鋼球での測定で、動摩擦係数0.4以下好ましくは0.2以下であることが望まれる。すべり性の付与は後述のブロッキング防止層によっても行うことができる。
【0041】
本発明の光学フィルムでフィルム基材上に塗設される樹脂層は光学フィルムに様々な機能を付与する表面加工のための樹脂層である。この表面加工としては例えばブロッキング防止加工、防眩加工、反射防止加工、クリアハード加工、帯電防止加工、カール防止加工、易接着加工、赤外線吸収加工、等が挙げられる。ここでクリアハード加工とは樹脂フィルムの表面に耐摩擦性・耐擦傷性、耐薬品性等の耐久性を付与するものであり、具体的には後述する活性線硬化樹脂層を設けることによる方法が好ましいものとして挙げられる。
【0042】
本発明の光学フィルム上の樹脂層とは、熱可塑性樹脂の他、活性線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、その他の樹脂を主たる成分とする層である。
【0043】
本発明の樹脂フィルム基材上に1層以上の樹脂層を形成する光学フィルムとしては、下記の例があげられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0044】
樹脂フィルム/ブロッキング防止層
樹脂フィルム/帯電防止層
樹脂フィルム/光拡散層
樹脂フィルム/紫外線吸収層
クリアハード層(上層)/帯電防止層(下層)/樹脂フィルム/アンチカール層兼ブロッキング防止層
クリアハード層(上層)/下引き層(下層)/樹脂フィルム/アンチカール層兼ブロッキング防止層
クリアハード層/樹脂フィルム/帯電防止層(下層)/易接着層兼ブロッキング防止層(上層)
本発明について、樹脂フィルム基材上に帯電防止層を設ける場合とさらにその上にクリアハードコート層を設ける場合とで説明する。
【0045】
帯電防止加工とは、樹脂フィルムの取扱の際に、この樹脂フィルムが帯電するのを防ぐ機能を付与するものであり、具体的には、イオン導電性物質や導電性微粒子を含有する層を設けることによって行う。ここでイオン導電性物質とは電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであるが、例としてはイオン性高分子化合物を挙げることができる。
【0046】
イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号にみられるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号などにみられるような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマー;特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−7746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、同62−9346号にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー;等を挙げることができる。
【0047】
これらのうち、好ましいのは、導電性物質が微粒子状をしており、上記樹脂中にこれらを微分散し添加したものであって、これらに用いられる好ましい導電性物質として、金属酸化物やこれらの複合酸化物からなる導電性微粒子及び特開平9−203810号に記載されているようなアイオネン導電性ポリマーあるいは分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマー粒子などを含有することが望ましい。好ましい粒径としては5nm〜10μmの範囲であり、更に好ましい範囲は用いられる微粒子の種類に依存する。
【0048】
導電性微粒子である金属酸化物の例としては、ZnO、TiO、SnO、Al、In、SiO、MgO、BaO、MoO、V等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO及びSnOが好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiOに対してはNb、Ta等の添加、又SnOに対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01mol%〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1mol%〜15mol%の範囲が特に好ましい。
【0049】
また、これらの導電性を有するこれら金属酸化物粉体の体積抵抗率は10Ωcm以下特に10Ωcm以下であって、1次粒子径が100Å以上0.2μm以下で、高次構造の長径が30nm以上6μm以下である特定の構造を有する粉体を導電層に体積分率で0.01%以上20%以下含んでいることが好ましい。
【0050】
又、分散性粒状ポリマーとしての架橋型カチオン性導電性ポリマーの特徴は、粒子内のカチオン成分を高濃度、高密度に持たせることができるため、優れた導電性を有しているばかりでなく、低相対湿度下においても導電性の劣化は見られず、粒子同志も分散状態ではよく分散されているにもかかわらず、塗布後造膜過程において粒子同志の接着性もよいため膜強度も強く、また他の物質例えば支持体にも優れた接着性を有し、耐薬品性に優れている。
【0051】
帯電防止層に用いられるこれら架橋型のカチオン性導電性ポリマーである分散性粒状ポリマーは一般に約10nm〜0.3μmの粒子サイズ範囲にあり、好ましくは50nm〜0.15μmの範囲の粒子サイズが用いられる。ここで用いている“分散性粒状性ポリマー”の語は、視覚的観察によって透明またはわずかに濁った溶液に見えるが、電子顕微鏡の下では粒状分散物として見えるポリマーである。下層塗布組成物に上層の膜厚に相当する粒子径よりも大きなゴミ(異物)が実質的に含まれない塗布組成物を用いることによって、上層の異物故障を防止することができる。
【0052】
該微粒子と樹脂の比率は微粒子1質量部に対して、樹脂が0.5〜4質量部が密着性の点で好ましく、特に紫外線照射後の密着性では微粒子1質量部に対して、樹脂が1〜2質量部であることが好ましい。
【0053】
帯電防止層等の樹脂層として用いられる樹脂としては、重量平均分子量が40万を超え、ガラス転移点が80〜110℃である前述の熱可塑性樹脂が、光学特性及び塗布層の面品質の点で好ましい。
ガラス転移点はJIS K7121に記載の方法にて求めることができる。ここで使用される樹脂は、例えばセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネート、又はセルロースナイトレート等のセルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、又はコポリブチレン/テレ/イソフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、又はポリビニルベンザール等のポリビニルアルコール誘導体、ノルボルネン化合物を含有するノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体等のアクリル樹脂もしくはアクリル樹脂とその他樹脂との共重合体を用いることが出来るが特にこれらに限定されるものではない。
この中でセルロース誘導体あるいはアクリル樹脂が好ましく。更にアクリル樹脂が最も好ましく用いられる。例えば、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、 ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマーなどが好ましく用いられる。
【0054】
ここで使用する樹脂は下層で使用している樹脂全体の60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であることが好ましく、必要に応じて活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を添加することもできる。これらの樹脂はバインダーとして前述の適当な溶剤に溶解した状態で塗設される。
【0055】
帯電防止層の塗布組成物として用いられる有機溶媒としては、前述の樹脂層を塗設する溶媒として挙げられたものが好ましく用いられる。
【0056】
本発明の塗布組成物を塗布する方法は、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ロールコート、グラビアコート、ワイヤバーコート、リバースコート、カーテンコート、押し出しコートあるいは米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート方法等により0.1〜10μmの乾燥膜厚となるように塗布することが出来る。好ましくは通常0.1〜1μmの乾燥膜厚となるように塗布される。
【0057】
本発明の樹脂層を設けた光学フィルムは樹脂層が帯電防止層に限定されるものではない。使用する樹脂としては特に熱可塑性樹脂からなる樹脂層で効果が認められており、さらにポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂で特に効果がある。
【0058】
更に、前記帯電防止層である下層の上にクリアハードコート層である上層を設ける場合で説明する。本発明では、上層に用いられるバインダーは特に限定はされないが、特に活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂が用いることが好ましい。
【0059】
前述したように、本発明の光学フィルム上の樹脂層には活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂が含まれるが、ここで、これらの活性線硬化性樹脂及び特に、クリアハードコート加工のために活性線硬化性樹脂層が用いられる例について説明する。
【0060】
活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0061】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば特開昭59−151110号)。
【0062】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号)。
【0063】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種もしくは2種以上を選択して使用することが出来る。
【0064】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤又光増感剤は該組成物の2.5〜6質量%であることが特に好ましい。2.5%未満では樹脂フィルムから溶出する可塑剤及び/又は紫外線吸収剤によって硬化阻害を受け、耐擦傷性が低下し、逆に6質量%を超えると相対的に紫外線硬化性樹脂成分が減るため逆に耐擦傷性が低下したり、塗布性が悪化するなどのため塗膜の面品質を悪くすることがある。
【0065】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0066】
紫外線硬化樹脂としては、例えば、アデカオプトマーKR・BYシリーズ KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B、(以上 旭電化工業株式会社製)あるいはコーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上 広栄化学工業株式会社製)、あるいはセイカビーム PHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上 大日精化工業株式会社製)、あるいはKRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上 ダイセル・ユーシービー株式会社)、あるいはRC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上大日本インキ化学工業株式会社製)、あるいはオーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製)、あるいはサンラッド H−601(三洋化成工業株式会社製)、あるいはSP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製)、あるいはRCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成株式会社製)あるいはこの他の市販のものから適宜選択して利用することもできる。
【0067】
活性線硬化樹脂層の塗布組成物は固形分濃度は10〜95質量%であることが好ましく、塗布方法により適当な濃度が選ばれる。
【0068】
活性線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cmである。近紫外線領域から可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって使用出来る。
【0069】
活性線硬化樹脂層を塗設する際の溶媒として前述の樹脂層を塗設する溶媒、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒の中から適宜選択し、あるいは混合されて利用できる。好ましくは、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル又はプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステルを5質量%以上、さらに好ましくは5〜80質量%以上含有する溶媒が用いられる。
【0070】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。塗布速度は好ましくは10〜60m/minで行われる。
【0071】
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布後、速やかに乾燥された後、紫外線を光源より照射するが、照射時間は0.5秒〜5分がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率とから3秒〜2分がより好ましい。
こうして得た硬化皮膜層に、液晶表示装置パネルの表面に防眩性を与えるために、また他の物質との対密着性を防ぎ、対擦り傷性等を高めるために無機あるいは有機の微粒子を加えることもできる。例えば、無機微粒子としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることができ、また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を挙げることができ、紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.01μm〜10μmであり、紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部となるように配合することが望ましい。防眩効果を付与するには、平均粒径0.1〜1μm、樹脂組成物100質量部に対して1〜15質量部が好適である。
【0072】
このような微粒子を紫外線硬化樹脂に添加することによって、中心線表面粗さRaが0.1〜0.5μmの好ましい凹凸を有する防眩層を形成することができる。又、このよう微粒子を紫外線硬化性樹脂組成物に添加しない場合、中心線表面粗さRa 0.05μm未満、より好ましくは0.04μm未満の良好な平滑面を有するクリアハードコート層を形成することができる。これらクリアハードコート層等の上にはさらに高屈折率層(好ましくは屈折率1.65〜1.7)、低屈折率層(好ましくは屈折率1.4〜1.45)等から構成される反射防止層を形成することもできる。これらの反射防止層は445〜655nmの平均反射率で0.7%以下、この波長範囲内の最低反射率が0.2%以下の優れた反射防止層を形成することが出来る。
この他、ブロッキング防止機能を果たすものとして、上述したのと同じ成分で、体積平均粒径0.005〜0.1μmの極微粒子を樹脂組成物100質量部に対して0.1〜5質量部を用いることもできる。
【0073】
本発明の活性線硬化樹脂を有するクリアハード層等の上には更に下記の反射防止加工を施した構成の、一例を示すと、
低屈折率層(屈折率1.65〜1.7)/高屈折率層(屈折率1.4〜1.45)/クリアハード層/樹脂フィルム/帯電防止層
低屈折率層(屈折率1.65〜1.7)/高屈折率層(屈折率1.4〜1.45)/クリアハード層/樹脂フィルム/帯電防止層/アンチカール層兼ブロッキング防止層
等である。
【0074】
前述したように、帯電防止層等の樹脂層の上にこれら活性線硬化樹脂層を設ける場合、耐擦傷性が低下するという問題があった。耐擦傷性あるいは鉛筆硬度の低下は活性線硬化樹脂層の硬化阻害によること、これは樹脂フィルムからの可塑剤の溶出が原因の1つであると考えられる。そこで、本発明の別の実施態様では、可塑剤を有する樹脂フィルム基材上に少なくとも1層以上の樹脂層を設け、更にその上に活性線硬化樹脂層を設けた光学フィルムにおいて、密着性に優れ、かつ耐擦傷性、鉛筆硬度にも優れた光学フィルムを得ることを目的として、この問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、前述したように、下層の樹脂層を塗設する際の塗布組成物をウェット膜厚で15μm以下、より好ましくは5〜10μmで塗布することによって耐擦傷性、鉛筆硬度の低下がない活性線硬化樹脂層を設けることができたのである。これは下層の樹脂層を塗設する際に樹脂フィルムから溶出してくる可塑剤あるいは紫外線吸収剤等の硬化を阻害する添加物の影響が実質的に問題ないレベルまで低減されたためと推測される。
【0075】
更に耐擦傷性、鉛筆硬度を向上させるため、活性線硬化樹脂層に用いられる光開始剤の添加量を2.5〜6質量%とすることが好ましく、これによりさらに耐擦傷性、鉛筆硬度に優れた光学フィルムを提供することができた。即ち、フィルム基材上に少なくとも1層の樹脂層を設け、さらにその上に活性線硬化樹脂層を設ける事により、ヘイズ0.5%以下でかつ透過率が92%以上であり、かつ活性線硬化樹脂層の鉛筆硬度が2H以上であり、該活性線硬化樹脂層が、スチールウール#000にて4.9N/cmの応力をかけて10往復擦った場合に入る傷が5本以下である耐擦傷性を有し、紫外線強度100mW/cmで100時間照射後のJIS K5400記載の碁盤目試験の評価が10である密着性を有する充分に強度の高い光学特性にも優れた光学フィルムを得ることができた。
【0076】
更に異物故障についても150μm以上の目視で確認できる異物が1個/m以下であり、帯電防止性も付与された表面比抵抗値が1011Ω/cm以下の優れた光学フィルムを得ることが出来る。
【0077】
本発明に係る偏光板用保護フィルムを用いた偏光板を装着した液晶パネルはパソコンやワープロのように室内で使用されるものばかりではなく、カーナビゲーションのように真夏の車内に放置される場合もあり、偏光板用保護フィルムに耐光性や耐熱性が要求されることがある。そこで、紫外線硬化性樹脂組成物を含有する層に紫外線を照射し硬化させた硬化皮膜層の耐光性を高めるために、紫外線硬化性樹脂組成物の光硬化を妨げない程度に紫外線吸収剤を紫外線硬化性樹脂組成物に含ませてもよい。紫外線吸収剤としては、前記透明なフィルム基材に含有させてもよい紫外線吸収剤と同様なものを用いることが出来る。
【0078】
また硬化された層の耐熱性を高めるために、酸化防止剤を光硬化反応を抑制しないようなものを選んで用いることが出来る。例えば、ヒンダードフェノール誘導体、チオプロピオン酸誘導体、ホスファイト誘導体等を挙げることが出来る。具体的には、例えば、4,4′−チオビス(6−t−3−メチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、ジ−オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジルホスフェート等を挙げることが出来る。
【0079】
ところで、フィルムの片面だけに表面加工を施した場合や、両面に異なる種類あるいは異なる程度の付加価値を付与するために表面加工を施した場合などには、フィルムが丸まってしまうというカール現象が起こり易い。カールしてしまうとこれを用いて偏光板を作製する際に取扱いにくく不都合である。本発明の樹脂は下層に重量平均分子量40万以上好ましくは100万以下の熱可塑性樹脂を用いることで比較的カールが起こりにくい点でも優れている。
【0080】
カールによる不都合を解消し、かつ偏光板用保護フィルムとしての機能を損なわないようにするため、帯電防止層又はハードコート層を塗設した反対側にアンチカール層を設けることも出来る。すなわち、アンチカール層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせるものである。なお、アンチカール層は好ましくはブロッキング層を兼ねて塗設され、その場合、塗布組成物にはブロッキング防止機能を持たせるための前述の無機微粒子及び/又は有機微粒子を含有させることができる。
【0081】
アンチカール機能の付与は、具体的には偏光板用保護フィルムとして用いる樹脂フィルム基材を溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒の混合物の他、さらに溶解させない溶媒を含む場合もあり、これらを樹脂フィルムのカール度合や樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
【0082】
カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。このような混合組成物に含まれる、樹脂フィルム基材を溶解又は膨潤させる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムなどがある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノールなどがある。
【0083】
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、押し出しコーター等を用いて樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μm塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであると良い。ここで用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体あるいは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロースエステル系樹脂、マレイン酸および/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合体、メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂、ブタジエン/アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマーなどが好ましく用いられる。特に好ましくはジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂層が用いられる。
【0084】
アンチカール層を塗設する順番は樹脂フィルム基材の反対側に光学的機能性層(例えば帯電防止層あるいはクリアハードコート層等)を塗設する前でも後でも構わないが、アンチカール層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
【0086】
まず、実施例で用いる各組成物等を説明する。
〈樹脂フィルム1の作製〉
(ドープ組成物(イ))
セルローストリアセテート(平均酸化度61.0%) 100質量部
トリフェニルフォスフェート 8質量部
2−〔5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4−メチル−6−(t−ブチル)フェノール
1質量部
2−〔(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェノール
1質量部
メチレンクロライド 430質量部
メタノール 90質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解してドープ組成物(イ)を得た。
【0087】
次にこのドープ組成物(イ)を濾過し、冷却して33℃に保ちステンレスバンド上に均一に流延し、剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させたところで、ステンレスバンド上から剥離し、多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ膜厚80μmのフィルムを得た。
【0088】
ステンレスバンドに接している面をb面とし、もう一方の面をa面とする。
〈樹脂フィルム2の作製〉
(ドープ組成物(ロ))
セルローストリアセテート(平均酸化度61.0%) 100質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
トリフェニルフォスフェート 8.5質量部
2−〔5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4−メチル−6−(t−ブチル)フェノール
1質量部
2−〔(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェノール
1質量部
メチレンクロライド 430質量部
メタノール 90質量部
超微粒子シリカ(アエロジル200)
(日本アエロジル(株)製) 0.01質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解してドープ組成物(ロ)を得た。
【0089】
次にドープ組成物(ロ)を濾過し、冷却して33℃に保ちステンレスバンド上に均一に流延し、剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させたところで、ステンレスバンド上から剥離し、多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ膜厚80μmのフィルムを得た。
【0090】
ステンレスバンドに接している面をb面とし、もう一方の面をa面とする。
〈樹脂フィルム3の作製〉
(ドープ組成物(ハ))
ポリカーボネート樹脂
(粘度平均分子量4万、ビスフェノールA型) 100質量部
2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
1.0質量部
メチレンクロライド 430質量部
メタノール 90質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹拌しながら完全に溶解して、ドープ組成物(ハ)を得た。
【0091】
次にこのドープ組成物(ハ)を濾過し、冷却して33℃に保ち、ステンレスバンド上に均一に流延し、33℃で5分間乾燥した。次に65℃でレタデーション5nmになるように乾燥時間を調整し、ステンレスバンド上から剥離後、多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ膜厚80μmのポリカーボネートフィルムを得た。このとき、ステンレスバンドに接していた側をb面とし、その反対面をa面とする。
【0092】
下記の組成物を調整した。
塗布組成物(1)
ポリメチルメタアクリレート
(重量平均分子量55万、Tg 90℃) 0.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 60質量部
メチルエチルケトン 16質量部
乳酸エチル 5質量部
メタノール 8質量部
導電性ポリマー樹脂P−1(0.1〜0.3μm粒子) 0.5質量部
【0093】
【化1】

【0094】
塗布組成物(2)
ポリメチルメタアクリレート
(重量平均分子量48万、Tg 105℃) 0.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 60質量部
メチルエチルケトン 16質量部
乳酸エチル 5質量部
メタノール 8質量部
導電性ポリマー樹脂P−1(0.1〜0.3μm粒子) 0.5質量部
塗布組成物(3)比較例
ポリメチルメタアクリレート
(重量平均分子量36万、Tg 20℃) 0.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 60質量部
メチルエチルケトン 16質量部
乳酸エチル 5質量部
メタノール 8質量部
導電性ポリマー樹脂P−1(0.1〜0.3μm粒子) 0.5質量部
塗布組成物(4)
ポリメチルメタアクリレート
(重量平均分子量55万、Tg 90℃) 1質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 51質量部
メチルエチルケトン 16質量部
乳酸エチル 5質量部
メタノール 15質量部
導電性ポリマー樹脂P−1(0.1〜0.3μm粒子) 1質量部
塗布組成物(5)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分
20質量部
ジエトキシベンゾフェノン光反応開始剤 4質量部
シリコーン系界面活性剤 1質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部
メチルエチルケトン 75質量部
塗布組成物(6)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分
20質量部
ジエトキシベンゾフェノン光反応開始剤 2質量部
シリコーン系界面活性剤 1質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部
メチルエチルケトン 75質量部
塗布組成物(7)(比較例)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分
20質量部
ジエトキシベンゾフェノン光反応開始剤 10質量部
シリコーン系界面活性剤 1質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部
メチルエチルケトン 75質量部
塗布組成物(8)
メチルエチルケトン 36質量部
メタノール 40質量部
乳酸エチル 5質量部
ジアセチルセルロース 0.5質量部
超微粒子シリカ2%アセトン分散液(アエロジル 200)
(日本アエロジル(株)製) 0.3質量部
塗布組成物(9)
アセトン 32質量部
酢酸エチル 50質量部
イソプロピルアルコール 4質量部
ジアセチルセルロース 0.5質量部
超微粒子シリカ2%アセトン分散液(アエロジル 200)
(日本アエロジル(株)製) 0.1質量部
塗布組成物(10)
ポリメチルメタアクリレート
(重量平均分子量55万、Tg 90℃) 0.33質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 60質量部
メチルエチルケトン 16質量部
乳酸エチル 5質量部
メタノール 8質量部
導電性ポリマー樹脂P−1(0.1〜0.3μm粒子) 0.33質量部
評価方法
〈偏光板用保護フィルム単体としての特性評価〉
1.硬化塗膜層の耐擦傷性
(1)鉛筆硬度:JISK5400を準用し、荷重100gにて測定した。
(2)耐擦傷性:スチールウール(#0000)で4.9N/cmの応力をかけて10cmの距離を10往復摩擦する(一往復/sec)
(判定基準)
◎:面上に傷なし
○:1〜5本の傷あり
△:6〜10本の傷あり
×:11本以上の傷あり
2.ヘイズ、透過率
JISK7105を準用し、測定器東京電色工業(株)社製T−2600DA型を使用した。
3.硬化塗膜層と支持体との接着性
(1)紫外線照射後の密着性(碁盤目試験)
試料に紫外線強度100mW/cmで100時間照射した後、23℃、55%RHの室内に24時間放置し、JIS K5400の碁盤目試験に準じて、塗膜の密着性を測定した。
【0095】
(紫外線照射条件)
岩崎電気(株)製 アイスーパーUVテスター SUV−F1
光源 メタルハライドランプ
紫外線強度 100mW/cm
照射時間 100時間
試料温度 20℃
(碁盤目試験の評価点数)JIS K5400より
評価点数
10:切り傷の1本ごとが、細くて両端が滑らかで、切り傷の交点を正方形の1目1目にはがれがない。
【0096】
8 :切り傷の交点にわずかなはがれがあって正方形の一目一目にはがれがなく、欠損部の面積は全正方形面積の5%以内
6 :切り傷の両側と交点とにはがれがあって、欠損部の面積は全正方形面積の5〜15%
4 :切り傷によるはがれの幅が広く、欠損部の面積は全正方形面積の15〜35%
2 :切り傷によるはがれの幅は4点よりも広く、欠損部の面積は全正方形面積の35〜65%
0 :はがれの面積し全正方形面積の65%以上。
(2)剥離試験
硬化皮膜層の表面に片刃のカミソリの刃を面に対して90°の角度で切り込みを幅30mm、深さは透明なプラスチックフィルムの表面に僅か達する程度に入れ、市販の25mm幅のセロファンテープを切れ込み部分をまたいでテープの一端を残して貼り、曲面の有るプラスチックあるいは金属でその上を擦ってよく接着させ、貼られてないテープのその一端を手で持ってなるべく垂直に力強く引張って剥がし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する硬化皮膜層が剥がされた面積の割合を下記の如く評価した。
【0097】
A:全く剥離されなかった
B:剥離された面積割合が10%未満であった
C:剥離された面積割合が10〜30%未満であった
D:剥離された面積割合が30%以上であった。
4.表面比抵抗
偏光板用保護フィルムを23℃、55%RHの条件のもとで、6時間調湿した後、同条件で塗膜の表面の表面比抵抗値を絶縁抵抗測定器(川口電気社製VE−30型)を用いて測定した。測定に用いた電極は、2本の電極(試料と接触する部分が1cm×5cm)を間隔を1cmで平行に配置し、該電極に試料を接触させて測定し、測定値を5倍にした値を表面比抵抗値Ω/cmとした。
5.異物故障検査
塗膜の目視検査により直径100〜150μm未満もしくは直径150μm以上に見える突起状故障及び/又は窪み状故障を1mあたりの個数で示した。
【0098】
直径100μmの異物故障とは塗膜の基準面に対して塗膜表面の厚み変化率が2μm(塗膜の厚み変化)/100μm(基準面上の距離)以上で塗膜の厚みが0.5μm以上変化した突起状故障及び/又は窪み状部分の範囲を略円形として見たときの直径が100μmの故障であり、これは目視で100μmの大きさの異物故障としている。同様に前記の直径が150μmの故障を150μmの大きさの異物故障としている。実際の異物故障検査では、前記の100μmの大きさの異物故障と150μmの大きさの異物故障の見本を用意し、100μmの大きさの異物故障の見本と150μmの大きさの異物故障の見本の中間の大きさを有する異物故障を直径100〜150μmの異物数としてカウントした。同様に150μmの大きさの異物故障の見本に対し、これ以上の大きさの異物故障を150μm以上の異物としてカウントした。
【0099】
又、異物故障の突起状或いは窪み状故障の断面の様子は光干渉式の表面粗さ計等で観察することが出来る。
実施例1
ここでは、塗布組成物の含水量の効果を例示する。
【0100】
下記に従って、本発明の光学フィルムA1、A2、B1、B2と比較試料C1、C2を作製した。
〈本発明の光学フィルム及び比較例の作製〉
樹脂フィルム1の作製の方法で作製したトリアセチルセルロースフィルムの片面(a面)に塗布組成物(9)をウェット膜厚13μmとなるようにグラビアコートし、乾燥温度80℃にて乾燥させた。
【0101】
このトリアセチルセルロースフィルムの片面(b面)に塗布組成物(4)を23℃、78%RHの環境下でウェット膜厚で7μmとなるようにフィルムの搬送速度30m/minで塗布幅1mで塗布し、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥して乾燥膜厚で約0.2μmの樹脂層を設けた。塗布は、樹脂フィルム1に塗布組成物(4)を7μmより厚くディップコートし、やや離れたところに設置されたワイヤーバーによってウェット膜厚7μmとなるように膜厚を制御した。ワイヤーバーでかき取られた余分の塗布組成物(4)は受け皿で回収した後、塗布組成物貯留槽に戻し再利用した。塗布中、大気開放されている塗布組成物貯留槽に入れられた40Lの塗布組成物(4)に300ml/minの添加速度で新しい塗布組成物4(含水率0.2%)を供給し続け、この条件下で1時間連続的に塗布を行い、本発明の光学フィルムA1を作製した。連続塗布終了後、塗布組成物貯留槽内の塗布組成物に含まれる水分は2.5%であった。
【0102】
上記の塗布中の新液供給の代わりに、塗布組成物の水分除去手段を設けた。すなわち、塩化カルシウムを内蔵したカートリッジ及びその下流に2μmのアブソリュートフィルタを設置し、塗布中に塗布組成物貯留槽中の塗布組成物を循環処理した。新液供給の代わりに上記水分除去手段を設けた以外は同様の方法で1時間連続的に塗布を行い、本発明の光学フィルムB1を作製した。1時間の連続塗布終了後の塗布組成物中に含まれる水分は1.5%であった。
【0103】
新しい塗布組成物(含水率0.2%)の供給を行わなかった以外は、本発明の光学フィルムA1を作製した方法と同様の方法で、樹脂フィルム1に塗布組成物(4)を塗布乾燥し、比較の光学フィルムC1を作製した。このとき、塗布組成物に含まれる水分は未使用の液(塗布開始直後)が0.2%の含水率であったのに対し、連続塗布1時間後に5.1%になっていた。
【0104】
上記含水率の測定はカールフィッシャー法によって行った。測定装置としては、三菱化学(株)製の水分測定装置CA−03、同試料乾燥装置VA−05を用いた。カールフィッシャー試薬としては、同社製のAKS、CKSを用いた。
【0105】
更に以下の方法で、本発明の光学フィルムA1、B1及び比較の光学フィルムC1の上にクリアハードコート層を設けた本発明の光学フィルムA2、B2及び比較の光学フィルムC2を作製した。すなわち、本発明の光学フィルムA1の樹脂層を塗設した面(b面側)にグラビアコートにより塗布組成物(5)をウェット膜厚で13μmとなるように塗設し、乾燥温度90℃にて乾燥させた後、紫外線を150mJ/cmとなるように照射して、乾燥膜厚で5μmのクリアハードコート層を設けた。これを本発明の光学フィルムA2とする。同様の方法で本発明の光学フィルムB1上にクリアハードコート層を設けた本発明の光学フィルムB2及び比較の光学フィルムC1上にクリアハードコート層を設けた比較の光学フィルムC2を作製した。
【0106】
表1には本発明の光学フィルムA1、B1及び比較の光学フィルムC1の評価結果、表2には本発明の光学フィルムA2、B2及び比較の光学フィルムC2の評価結果を示す。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
このようにして作製した本発明の光学フィルムA1、A2、B1、B2はヘイズも低く、表面比抵抗も帯電防止性として十分なレベルである1011Ω/cm以下を維持していることが確認された。更に、目視検査により異物故障も少なく、高い品質の光学フィルムが得られた。これに対して、比較例C1、C2については、連続塗布の間に性能が悪化していくことが確認された。すなわち、本発明の製造方法によれば安定した性能の光学フィルムを製造できることがわかる。
実施例2
ここでは、樹脂層の重量平均分子量の効果を例示する。
〈本発明の光学フィルム及び比較例の作製〉
樹脂フィルム3の作製の方法で作製したポリカーボネートフィルムの片面(b面)に、23℃80%RHの環境下で塗布組成物(1)をウェット膜厚13μmとなるようにワイヤーバーで塗布し、次いで80℃にて乾燥して樹脂層(乾燥膜厚0.2μm)を設け、本発明の光学フィルムD1を作製した。
【0110】
塗布組成物(2)を用いた以外は同様の方法で、本発明の光学フィルムE1を作製した。
【0111】
又、塗布組成物(3)を用いた以外は同様の方法で、本実施例における比較の光学フィルムF1を作製した。
【0112】
それぞれの樹脂層の面品質を確認したところ、比較の光学フィルムF1では塗布層に微細なひび割れ状の模様が認められた。さらに、直径5mm程度のわずかなはじき状の故障が認められた。それに対して、本発明の光学フィルムD1、E1ではこのような塗布故障は認められず極めて良好な面品質の塗布層であった。
【0113】
更に以下の方法で、本発明の光学フィルムD1、E1及び比較の光学フィルムF1の上にクリアハードコート層を設けた本発明の光学フィルムD2、E2及び比較の光学フィルムF2を作製した。すなわち、本発明の光学フィルムD1の樹脂層を塗設した面(b面側)にグラビアコートにより塗布組成物(5)をウェット膜厚で13μmとなるように塗設し、乾燥温度90℃にて乾燥させた後、紫外線を150mJ/cmとなるように照射して、乾燥膜厚で5μmのクリアハードコート層を設けた。これを本発明の光学フィルムD2とする。同様の方法で本発明の光学フィルムE1上にクリアハードコート層を設けた本発明の光学フィルムE2及び比較の光学フィルムF1上にクリアハードコート層を設けた比較の光学フィルムF2を作製した。
【0114】
それぞれのフィルムの面品質を確認したところ、比較の光学フィルムF2ではF1で認められた微細なひび割れ状の模様あるいは直径5mm程度のはじき状の故障がよりはっきりと目立つようになっていた。それに対して、本発明の光学フィルムD2、E2ではこのような塗布故障は認められず極めて良好な面品質のフィルムが得られた。
【0115】
樹脂フィルム3の作製の方法で作製したポリカーボネートフィルムに代えて、樹脂フィルム2の作製の方法で作製したトリアセチルセルロースフィルムを用いて、同様のフィルムを作製した。その結果、樹脂フィルム3を用いた場合と同様に樹脂層に重量平均分子量が40万を超えて、ガラス転移点が80〜110℃の樹脂を用いた本発明の光学フィルムが面品質に優れることが確認された。
実施例3
ここでは、下層のウエット膜厚の活性線硬化樹脂層に対する効果を例示する。
【0116】
樹脂フィルム1の作製の方法で作製したトリアセチルセルロースフィルムの片面(a面)に塗布組成物(8)をウェット膜厚13μmとなるようにリバースロールコートし、乾燥温度80℃にて乾燥させた。
【0117】
このトリアセチルセルロースフィルムの片面(b面)に塗布組成物(1)を23℃、60%RHの環境下でウェット膜厚で13μmとなるようにリバースロールコートにて搬送速度20m/minで塗布し、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥して乾燥膜厚で約0.2μmの樹脂層を設けた。次いで、塗布組成物(6)をウェット膜厚で13μmとなるようにグラビアコートにて塗設し、80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、紫外線を120mJ/cm照射して硬化させ、乾燥膜厚で5μmの樹脂層を設け、本発明の光学フィルムG2を作製した。
【0118】
各塗布組成物及び塗布膜厚を変更した以外は、同様にして表3に示した本発明の光学フィルムH2−J2、比較の光学フィルムK2を作製した。
【0119】
【表3】

【0120】
本発明の光学フィルムH2−J2、本実施例での比較の光学フィルムK2について、評価を実施し、表4の結果を得た。
【0121】
【表4】

【0122】
この結果から下層のウェット膜厚を15μ以下好ましくは10μm以下とすることによって耐擦傷性に優れ、及び鉛筆硬度も優れ、優れた帯電防止特性を有し、他の光学特性や品質にも優れた光学フィルムを得ることができた。これに対して、本実施例で比較となる、下層のウエット膜厚が厚く、上層の塗布組成物中の光反応開始剤の量が少ないものを用いた比較の光学フィルムK2では耐擦傷性、及び鉛筆硬度が悪くなっていることがわかる。
実施例4
ここでは、活性線硬化樹脂層の重合開始剤量の効果について例示する。
【0123】
樹脂フィルム2の作製の方法で作製したトリアセチルセルロースフィルムの片面(b面)に塗布組成物(10)を23℃、55%RHの環境下でウェット膜厚で20μmとなるようにワイヤーバーコートにて搬送速度20m/minで塗布し、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥して乾燥膜厚で約0.2μmの樹脂層を設けた。次いで、塗布組成物(5)をウェット膜厚で15μmとなるようにグラビアコートにて塗設し、80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、紫外線を160mJ/cm照射して硬化させ、乾燥膜厚で5μmの樹脂層を設け、本発明の光学フィルムL2を作製した。
【0124】
塗布組成物(5)を塗布組成物(6)に変更した以外は、同様にして表5に示した本実施例で比較の光学フィルムM2を作製した。更に塗布組成物(6)を塗布組成物(7)に変更した以外は、同様にして表5に示した比較の光学フィルムN2を作製した。
【0125】
【表5】

【0126】
表6にこれらの光学フィルムの評価結果を示す。
【0127】
【表6】

【0128】
本発明の光学フィルムL2は耐擦傷性に優れ、及び鉛筆硬度も優れ、他の光学特性や品質に優れた光学フィルムを得ることができた。これに対して、比較の光学フィルムM2では耐擦傷性、及び鉛筆硬度が悪くなっていることがわかる。又、本実施例での比較である光学フィルムN2では逆に耐擦傷性が低下する傾向が認められ、さらに紫外線硬化樹脂層の異物が多くなり、光学フィルムとしての品質が低下することも明らかとなった。
実施例5
〈偏光板としての評価〉
先の実施例で作製した本発明の光学フィルムJ2、及び比較の光学フィルムK2を偏光板用保護フィルムとして下記の方法に従って偏光板を作製した。
【0129】
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1部、ヨウ化カリウム2部、ホウ酸4部を含む水溶液に浸漬し50℃で4倍に延伸し偏光膜を得た。
【0130】
下記1.〜5.の工程で、偏光膜と偏光板用保護フィルムとをはり合わせて偏光板を作製した。
〈偏光板の作製方法〉
1.長手方向30cm、巾手方向18cmに切り取った本発明の光学フィルムJ2を1枚と樹脂フィルム2(トリアセチルセルロースフィルム)1枚を保護フィルムとし、これらを2mol/lの水酸化ナトリウム溶液に60℃で2分間浸漬し、さらに水洗、乾燥した。
3.偏光板用保護フィルム試料と同サイズの上記偏光膜を固形分濃度2%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬する。
4.上記3.の偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、上記1.で処理された本発明の光学フィルムJ2のa面上にのせ、更にその上に上記1.で処理された樹脂フィルム2のa面が偏光膜に接する様に積層し配置する。
5.ハンドローラで上記4.で積層された偏光膜と保護フィルムとの積層物に圧力をかけ密着させた後、積層物の端部から過剰の接着剤及び気泡を取り除きはり合わせる。ハンドローラで20〜30N/cmの応力をかけて、ローラスピードは約2m/minとした。
6.80℃の乾燥器中に5.で得た試料を2分間放置する。
【0131】
本発明の光学フィルムJ2を比較の光学フィルムK2に変更した以外は同様にして比較の偏光板を作成した。
【0132】
このようにして作製した偏光板について、目視による故障を確認したところ、本発明の偏光板用保護フィルムJ2を使用した偏光板は故障は認められず、液晶ディスプレイなどの画像表示装置用の偏光板として優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性物質と、重量平均分子量が40万を越え、かつガラス転移点(Tg)が80から110℃の樹脂をバインダー樹脂全体の60質量%以上含有する樹脂層を少なくとも1層設けたことを特徴とする偏光板用光学フィルム。
【請求項2】
前記樹脂層の上に、更に活性光線硬化樹脂もしくは熱硬化樹脂から実質的になる層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項3】
重量平均分子量が40万を越え、かつガラス転移点(Tg)が80から110℃の樹脂が、セルロース誘導体、アクリル樹脂もしくはその共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項4】
セルロースエステルフィルム又はポリカーボネートフィルムからなる基材上に前記樹脂層を設けたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項5】
前記導電性物質が、平均粒径5nmから10μmの導電性微粒子であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項6】
ヘイズ値が3.0%以下であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項7】
前記ヘイズ値が0.5%以下であることを特徴とする請求項6に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項8】
前記導電性微粒子1質量部あたりのバインダー樹脂が0.5から4質量部であることを特徴とする請求項5から7の何れか1項に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項9】
前記導電性微粒子及び、前記重量平均分子量が40万を越え、かつガラス転移点(Tg)が80から110℃である樹脂を溶媒中に含有してなる塗布組成物を、塗布時の含水率を5質量%以下に維持して前記基材上に塗布することにより樹脂層を設けたことを特徴とする請求項5から8の何れか1項に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項10】
前記含水率を2質量%以下に維持することを特徴とする請求項9に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項11】
前記塗布組成物の固形分濃度が0.5から50質量%であり、塗布時のウエット膜厚が15μm以下であることを特徴とする請求項9又は10に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項12】
前記ウエット膜厚が5から10μmであることを特徴とする請求項11に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項13】
重量平均分子量が40万を越え、かつガラス転移点(Tg)が80から110℃である樹脂を溶媒中に含有してなる塗布組成物を、塗布時の含水率を5質量%以下に維持してフィルム基材上に塗布することにより樹脂層を設けたことを特徴とする偏光板用光学フィルム。
【請求項14】
前記塗布組成物が微粒子を含有することを特徴とする請求項13に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項15】
前記樹脂層の微粒子1質量部あたりの樹脂が0.5から4質量部であることを特徴とする請求項14に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項16】
前記含水率を2質量%以下に維持することを特徴とする請求項15に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項17】
前記塗布組成物の固形分濃度が0.5から50質量%であり、塗布時のウエット膜厚が15μm以下であることを特徴とする請求項13から16に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項18】
前記ウエット膜厚が5から10μmであることを特徴とする請求項17に記載の偏光板用光学フィルム。
【請求項19】
重量平均分子量が40万を越え、かつガラス転移点(Tg)が80から110℃である樹脂を溶媒中に含有してなる塗布組成物を、塗布時の含水率を5質量%以下に維持してフィルム基材上に塗布することにより樹脂層を設けることを特徴とする偏光板用光学フィルムの製造方法。
【請求項20】
水分を除去する手段を用い、フィルム基材上の搬送速度を10から100m/minで、連続的に塗布することを特徴とする請求項19に記載の偏光板用光学フィルムの製造方法。
【請求項21】
請求項1から18の何れか1項に記載の偏光板用光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。

【公開番号】特開2009−69847(P2009−69847A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290772(P2008−290772)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【分割の表示】特願2000−232774(P2000−232774)の分割
【原出願日】平成12年8月1日(2000.8.1)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】