説明

偏光板用接着剤、偏光板および液晶表示装置

【課題】偏光板を高速で製造することが可能な偏光板用接着剤を提供する。
【解決手段】ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるウレタン(メタ)アクリレートと、ポリオール化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるポリオール(メタ)アクリレートと、を含み、偏光板保護フィルムに対して浸透性を有する基材浸透性モノマーを含有し、前記偏光板保護フィルムが、セルロース誘導体からなるものであり、前記基材浸透性モノマーが1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、イソボニルアクリレート、モルフォリンアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートの群から選ばれる1種類または2種類以上であることを特徴とする、偏光板用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子と偏光板保護フィルムとが貼り合わされた構成を有する偏光板を作製する際に、偏光子と偏光板保護フィルムとを接着するために用いられる偏光板用接着剤、および、これを用いて作製され得る偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、その省電力、軽量、薄型等といった特徴を有することから、従来のCRTディスプレイに替わり近年急速に普及している。一般的な液晶表示装置としては、図2に示すように、入射側の偏光板102Aと、出射側の偏光板102Bと、液晶セル101とを有するものを挙げることができる。偏光板102Aおよび102Bは、所定の振動方向の振動面を有する直線偏光のみを選択的に透過させるように構成されているものであり、それぞれの振動方向が相互に直角の関係になるようにクロスニコル状態で対向して配置されている。また、液晶セル101は画素に対応する多数のセルを含むものであり、偏光板102Aと102Bとの間に配置されている。さらに、偏光板102Aおよび102Bは、偏光子112A、112Bの両面に偏光板保護フィルム122A、122Bが貼り合わされた構成を有するものである。
【0003】
このような液晶表示装置は、上記液晶セルに用いられる液晶材料の配列形態により種々の駆動方式を用いたものが知られている。今日、普及している液晶表示装置の主たるものは、TN、STN、MVA、IPS、および、OCB等に分類される。なかでも上記MVA、および、IPSの駆動方式を有するものが広く普及するに至っている。
【0004】
上記液晶表示装置を構成する偏光板としては、従来、上記偏光子としてポリビニルアルコールからなるフィルムにヨウ素を含浸させ、これを一軸延伸することによってポリビニルアルコールとヨウ素との錯体を形成させたものが用いられ、上記偏光板保護フィルムとして、トリアセチルセルロースに代表されるセルロース誘導体からなるフィルムが用いられたものが一般的である。また、このような構成を有する偏光板の製造方法としては、上記偏光子の両面に、接着剤としてのポリビニルアルコール水溶液を介して、上記偏光板保護フィルムをラミネートする方法が一般的である。このような偏光板、および、その製造方法については、例えば、特許文献1〜8に開示されている。
【0005】
ところで、近年の液晶表示装置の需要拡大に伴って、上記偏光板についても需要が拡大しており、高品質な偏光板を高い生産性で製造することが求められている。しかしながら、上述したような構成を有する従来の偏光板では、上記接着剤としてポリビニルアルコール水溶液が使用されているため、偏光板製造工程において当該接着剤を乾燥するのに時間がかかり、これが律速となって生産性を向上することが困難であるという問題点があった。この点について、生産性向上と接着剤の乾燥との両立を図るため、偏光板製造装置の乾燥工程を長くする方法も検討されたが、このような方法では設備コストが大幅に増大してしまうという問題点があった。
また、上記トリアセチルセルロースからなる偏光板保護フィルムをポリビニルアルコールからなる偏光子と接着するには、ポリビニルアルコールとの接着性を向上させるために上記偏光板保護フィルムの表面をアルカリけん化することが必要とされている。このため、トリアセチルセルロースからなる偏光板保護フィルムを使用する場合、偏光子と貼り合わせる前にけん化処理工程を行う必要があり、偏光板の製造工程が煩雑になってしまうという問題点も指摘されていた。
【0006】
このような問題点に対し、上記接着剤としてポリビニルアルコール水溶液の代替品の研究が盛んに行われている。例えば、特許文献9には、偏光子と偏光板保護フィルムとが活性エネルギー線硬化性化合物からなる接着層で接着された偏光板が開示されている。また、特許文献10および11には、イソシアネート化合物等からなる接着剤によって、偏光子と偏光板保護フィルムとが接着された偏光板が開示されている。しかしながら、このような接着剤を用いて貼合された偏光板は、偏光子と偏光板保護フィルムとの接着性が乏しいという問題点があった。
【0007】
このようなことから、上記液晶表示装置に用いられる偏光板については、その需要が拡大している状況であるが、偏光子と偏光板保護フィルムとの接着性に優れ、かつ、高い生産速度で製造することができないという問題点が顕在化していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3148513号公報
【特許文献2】特許第3427130号公報
【特許文献3】特許第3525543号公報
【特許文献4】特許第3629286号公報
【特許文献5】特開平1−32203号公報
【特許文献6】特開平3−64703号公報
【特許文献7】特開平5−681号公報
【特許文献8】特開平8−271733号公報
【特許文献9】特開2004−70290号公報
【特許文献10】特許第3724792号公報
【特許文献11】特開2003−177247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、偏光子と偏光板保護フィルムとが貼り合わされた構成を有する偏光板を、高速で製造することが可能な偏光板用接着剤を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるウレタン(メタ)アクリレートと、ポリオール化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるポリオール(メタ)アクリレートと、を含むことを特徴とする偏光板用接着剤を提供する。
【0011】
本発明の偏光板用接着剤によれば、上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートを含むことにより、溶媒を用いることなく偏光子と偏光板保護フィルムを接着することができる。このため、本発明の偏光板用接着剤を用いることにより、偏光板を製造する工程において偏光子と偏光板保護フィルムとを接着する際に、溶媒を乾燥する工程を実施することが不要になる。
このようなことから、本発明によれば偏光子と偏光板保護フィルムとが貼り合わされた構成を有する偏光板を、高速で製造することが可能な偏光板用接着剤を得ることができる。
【0012】
また本発明の偏光板用接着剤によれば、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートが含まれることにより、偏光板用接着剤全体としての粘度を低いものとすることができる。このため、本発明の偏光板用接着剤は薄膜塗工性に優れたものになるため、厚みの薄い接着層を形成することができるという利点も有する。
【0013】
本発明においては、上記ウレタン(メタ)アクリレートが、イソシアネート基(NCO基)を有することが好ましい。上記ウレタン(メタ)アクリレートがイソシアネート基(NCO基)を有することにより、例えば、本発明の偏光板用接着剤がポリビニルアルコールからなる偏光子と偏光板保護フィルムとを接着するために用いられた場合に、上記イソシアネート基(NCO基)が、上記偏光子が備える水酸基と反応してウレタン結合を形成することができ、上記偏光子と上記偏光板保護フィルムとの接着性を顕著に向上させることが可能であるからである。また、偏光子、および/または偏光板保護フィルムにコロナ処理等の表面処理を行った際に生成される極性基とも反応して、同様にウレタン結合を形成することができるため、上記偏光子と上記偏光板保護フィルムとの接着性をさらに向上することが可能となるからである。
【0014】
また本発明の偏光板用接着剤は、偏光板保護フィルムに対して浸透性を有する基材浸透性モノマーを含有することが好ましい。このような基材浸透性モノマーを含有することにより、本発明の偏光板用接着剤を、偏光板保護フィルムとの接着性に優れたものにできるからである。また、このような基材浸透性モノマーを含有することにより本発明の偏光板用接着剤自体の低粘度化が可能となり、さらに薄膜塗工性に優れたものにすることができるからである。
【0015】
また本発明の偏光板用接着剤には、シランカップリング剤が含まれていてもよい。シランカップリング剤が含まれることにより、例えば、本発明の偏光板用接着剤を用いて、ポリビニルアルコールからなる偏光子が用いられた偏光板を作製した場合に、上記偏光子との接着性を向上させることができるからである。また、シランカップリング剤は同時に本発明の偏光板用接着剤自体の低粘度化にも寄与するため、シランカップリング剤を用いることにより、本発明の偏光板用接着剤をより薄膜塗工性に優れたものにすることができるからである。
【0016】
また本発明においては、上記ポリオール化合物がポリエーテルポリオールであることが好ましい。上記ポリオール化合物としてポリエーテルポリオールを用いることにより、本発明の偏光板用接着剤を用いて作製される接着層に可撓性を付与することが容易になるからである。また、例えば、本発明の偏光板用接着剤を用いて、ポリビニルアルコールからなる偏光子が用いられた偏光板を作製した場合に、上記偏光子との接着性を向上させることができるからである。
【0017】
さらに本発明においては、上記ポリイソシアネート化合物が脂環式ポリイソシアネート化合物であることが好ましい。上記ポリイソシアネート化合物が脂環式ポリイソシアネート化合物であることにより、本発明の偏光板用接着剤を偏光板保護フィルムとの接着性に優れたものにできるからである。
【0018】
本発明は、ポリビニルアルコールからなる偏光子と、上記偏光子の両面に形成された接着層と、上記偏光子の両面であり、上記接着層上に形成された偏光板保護フィルムと、を有する偏光板であって、上記接着層が、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるウレタン(メタ)アクリレートと、ポリオール化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるポリオール(メタ)アクリレートとの硬化物を含み、かつ、少なくとも上記接着層と上記偏光子との間にウレタン結合が形成されていることを特徴とする偏光板を提供する。
【0019】
本発明によれば、上記接着層が上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物を含み、かつ、少なくとも上記接着層と上記偏光子との間にウレタン結合が形成されたものであることにより、上記偏光子と上記偏光板保護フィルムとの接着性に優れた偏光板を得ることができる。
また、上記接着層に含まれる上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物は、上記接着層が上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートに光を照射することによって生成することが可能であるため、本発明の偏光板を製造する工程において、上記接着層を形成するために溶媒を用いることが不要となる。このため、本発明の偏光板を製造する工程において上記接着層を乾燥する工程を設置することが不要となる。
さらに、上記接着層が上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物を含むものであることにより、上記接着層を薄膜化することが可能になる。このため本発明によれば切断加工特性に優れた偏光板を得ることができる。
【0020】
本発明においては、上記接着層に上記偏光板保護フィルムに対して浸透性を有する基材浸透性モノマーの硬化物が含有されることが好ましい。上記接着剤にこのような基材浸透性モノマーの硬化物が含有されることにより、上記接着層と上記偏光板保護フィルムとの接着性を向上させることができるからである。
【0021】
また本発明においては、上記偏光板保護フィルムがセルロース誘導体からなるものであることが好ましい。本発明によればセルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムをけん化処理を施さないで用いることができるため、他の材料からなる偏光板保護フィルムを用いる場合と比較して、より高い生産性向上効果を得ることができるからである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の偏光板用接着剤は、偏光子と偏光板保護フィルムとが貼り合わされた構成を有する偏光板を、高生産性で製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の偏光板の一例を示す概略図である。
【図2】一般的な液晶表示装置の一部を模式的に例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は偏光板用接着剤と、偏光板とに関するものである。以下、本発明の偏光板用接着剤および偏光板について順に説明する。
【0025】
A.偏光板用接着剤
まず、本発明の偏光板用接着剤について説明する。本発明の偏光板用接着剤は、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるウレタン(メタ)アクリレートと、ポリオール化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるポリオール(メタ)アクリレートと、を含むことを特徴とするものである。
【0026】
本発明の偏光板用接着剤は、上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートを含有することにより、溶媒を用いることなく偏光子と偏光板保護フィルムとを接着することができる。このため、本発明の偏光板用接着剤を用いることにより、偏光板を製造する工程において偏光子と偏光板保護フィルムとを接着する際に、溶媒を乾燥する工程を実施することが不要になる。すなわち、本発明の偏光板用接着剤を用いることにより、従来、偏光子と偏光板保護フィルムとが貼り合わされた構成を有する偏光板を製造する際に、製造速度の律速となっていた接着剤を溶解させていた水等の溶剤の乾燥工程を実施することが不要になる。このため、本発明の偏光板用接着剤を用いることにより、上述したような構成を有する偏光板を、高速で製造することができるようになる。
このようなことから、本発明によれば偏光子と偏光板保護フィルムとが貼り合わされた構成を有する偏光板を、高生産性で製造することが可能な偏光板用接着剤を得ることができる。
【0027】
また本発明の偏光板用接着剤は、上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートが含まれるものであることにより、偏光板用接着剤全体としての粘度を低いものとすることができる。このため、本発明の偏光板用接着剤は薄膜塗工性に優れたものになるため、厚みの薄い接着層を形成することができ、その結果として切断加工性が良好な偏光板を作製することができる。
【0028】
また、本発明の偏光板用接着剤を用いて作製される偏光板は、上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物によって偏光子と偏光板保護フィルムとが接着されるものとなる。このため、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する際に、トリアセチルセルロースに代表されるセルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムを用いる場合であっても、従来のようにけん化処理を行うことが不要となる。これは、従来は接着剤としてポリビニルアルコール(PVA)水溶液が用いられていたため、偏光板保護フィルムの表面に水素結合形成に寄与する水酸基を形成することが必要であったが、本発明の偏光板用接着剤は水素結合によって接着力を発現するものではないからである。
このようなことから、本発明の偏光板用接着剤を用いることにより、ポリビニルアルコール(PVA)からなる偏光子と偏光板保護フィルムとが貼り合わされた構成を有する偏光板を製造する工程において、けん化処理工程を排除することができるため、偏光板製造工程を簡略化することができる。
【0029】
また、上述したようなけん化処理工程を排除できることは次のような利点も有するものである。すなわち、従来より、付加機能を備える偏光板を得るために偏光板保護フィルムに所望の機能を有する材料を含有させたり、あるいは、所望の機能を備える機能性層を積層することが行われている。しかしながら、従来はセルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムを用いる場合、上記けん化処理工程が必要とされていたことから、上記セルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムに所望の機能を付与するために用いられる材料としては、アルカリ耐性を有するものしか用いることができないという制約があった。
この点、本発明の偏光板用接着剤を用いることにより上記けん化処理工程が不要となるため、所定の機能を有する材料として使用可能な化合物を、アルカリ耐性を有するものに限定する必要がなくなり、広い範囲から適当な材料を選択して用いることができるようになるという利点がある。
【0030】
さらに、本発明の偏光板用接着剤を用いて作製される偏光板は、上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物によって偏光子と偏光板保護フィルムとが接着されるものとなる。このため、本発明の偏光板用接着剤を用いることにより、ポリビニルアルコールからなる偏光子と偏光板保護フィルムとの接着性に優れた偏光板を作製することができる。
【0031】
さらにまた、本発明の偏光板用接着剤は次のような利点を有する。すなわち、従来のポリビニルアルコールからなる偏光子と偏光板保護フィルムとが貼り合わされた偏光板は、偏光子と偏光板保護フィルムとを接着する接着剤としてポリビニルアルコールが用いられてきた。しかしながら、ポリビニルアルコールは水溶性を示すため、このような接着剤が用いられた偏光板は、耐湿性に乏しいという問題点があった。
この点、本発明の偏光板用接着剤を用いて作製される偏光板は、偏光子と偏光板保護フィルムとが、上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物によって接着されたものとなる。ここで、上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物は耐水性に優れるものであるため、本発明の偏光板用接着剤を用いることにより、高湿雰囲気下における耐久性に優れた偏光板を製造することができる。
【0032】
なお、本発明における「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを含むことを意味するものとする。
【0033】
本発明の偏光板用接着剤は、少なくとも、上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートを含むものであり、必要に応じて他の構成を含有してもよいものである。
以下、このような本発明の偏光板用接着剤に用いられる各構成について順に説明する。
【0034】
1.ウレタン(メタ)アクリレート
まず、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートについて説明する。本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とから得られるものである。
【0035】
ここで、「ポリイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とから得られる」とは、ポリイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物との反応によって生成することが可能であることを意味するものである。したがって、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させることにより、反応生成物として得ることが可能な構造を有するものを指すことになる。
【0036】
このように、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とから得られるものであるため、その構造は、通常、上記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基が、上記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物が有する水酸基と反応することにより、これらの化合物が結合されたものとなる。したがって、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、上記ポリイソシアネート化合物および上記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の構成単位を有するものとなる。
【0037】
以下、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートを得ることが可能な、ポリイソシアネート化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物について順に説明し、次いで、これらの化合物からウレタン(メタ)アクリレートを得る方法等について説明する。
【0038】
(1)ポリイソシアネート化合物
まず、本発明に用いられるポリイソシアネート化合物について説明する。本発明に用いられるポリイソシアネート化合物としては、分子内に複数のイソシアネート基を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0039】
本発明においては、これらのポリイソシアネート化合物のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでも脂環式ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。上記ポリイソシアネート化合物として脂環式ポリイソシアネート化合物を用いることにより、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートを、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する際に用いられる偏光板保護フィルムとの接着性に優れたものにできるからである。
【0040】
本発明に好適に用いられるポリイソシアネート化合物としては、TDIベースとして住友化学製スミジュールL75、スミジュールIL、デスモジュールHL、MDIベースとして、住友化学製スミジュール44S、スミジュール44V10、スミジュール44N20、スミジュール44V40、スミジュール44V70、IPDIベースとして住友化学製デスモジュールZ4470等を挙げることができる。このような脂環式ポリイソシアネート化合物を用いることにより、本発明の偏光板用接着剤の偏光板保護フィルムに対する接着性をさらに向上することができる。
【0041】
なお、本発明に用いられるポリイソシアネート化合物は、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
【0042】
(2)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物
次に、本発明に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物について説明する。本発明に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、水酸基と、アクリレート基とを有するものであれば特に限定されるものではない。このような水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0043】
また、本発明に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、下記構造式(1)または(2)で表される化合物を挙げることもできる。
【0044】
【化1】

【0045】
ここで、上記構造式(1)または(2)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは1〜15の数を示す。
【0046】
さらに、本発明に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物も挙げることができる。
【0047】
本発明においては、これらのいずれの水酸基含有(メタ)アクリレート化合物であっても好適に用いることができるが、なかでも2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0048】
なお、本発明に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
【0049】
(3)ウレタン(メタ)アクリレート
上述したように、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、上記ウレタン(メタ)アクリレートと、上記水酸基含有(メタ)アクリレートとから得られるものであるが、なかでも本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、イソシアネート基(NCO基)を有するものであることが好ましい。上記ウレタン(メタ)アクリレートとしてイソシアネート基を有するものを用いることにより、例えば、本発明の偏光板用接着剤をポリビニルアルコールからなる偏光子と偏光板保護フィルムとを接着するために用いた場合に、上記イソシアネート基(NCO基)が、上記偏光子が備える水酸基と反応してウレタン結合を形成することができ、上記偏光子と上記偏光板保護フィルムとの接着性を顕著に向上することが可能であるからである。また、偏光子、および/または偏光板保護フィルムにコロナ処理等の表面処理を行った際に生成される極性基とも反応して同様にウレタン結合を形成することができ、上記偏光子と上記偏光板保護フィルムとの接着性を顕著に向上することが可能となるからである。
【0050】
ここで、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートが「イソシアネート基(NCO基)を有する」とは、単に本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートがイソシアネート基(NCO基)を有するウレタン(メタ)アクリレートのみから構成されることを意味するものではなく、イソシアネート基(NCO基)を有するウレタン(メタ)アクリレートと、イソシアネート基(NCO基)を有さないウレタン(メタ)アクリレートとが混在する場合も含むものである。
【0051】
上記ウレタン(メタ)アクリレートとして、イソシアネート基(NCO基)を有するものを用いる場合、上記イソシアネート基(NCO基)の含有量としては、本発明の偏光板用接着剤全体に含まれるイソシアネート基(NCO基)の量を所望の範囲内にできる程度であれば特に限定されるものではなく、本発明の偏光板用接着剤の用途や、本発明の偏光板用接着剤中に含有される上記ウレタン(メタ)アクリレートの量に応じて適宜調整して用いることができる。なかでも本発明においては、上記ウレタン(メタ)アクリレート中のイソシアネート基(NCO基)の量が0.1モル%〜30モル%の範囲内であることが好ましく、特に0.5モル%〜20モル%の範囲内であることが好ましく、さらに1モル%〜10モル%の範囲内であることが好ましい。上記イソシアネート基の含有量が上記範囲よりも少ないと、上記ウレタン(メタ)アクリレートがイソシアネート基(NCO基)を含有することによる上記接着性向上効果を所望の程度に発現できない可能性があるからである。また上記範囲よりも多いと、本発明の偏光板用接着剤を用いて作製した偏光板において、偏光子と接着層との間で形成されるウレタン結合が多くなりすぎてしまい、接着剤の経時変化が起こり易く、また、偏光子の偏光特性が損なわれる場合があるからである。
【0052】
ここで、上記ウレタン(メタ)アクリレート中のイソシアネート基(NCO基)の含有量は、例えば、JIS K1556「ウレタン樹脂中のイソシアネートの測定」に準拠した特開平5−155977号公報に開示されている中和滴定法によって測定することができる。より具体的には、プレポリマーを含有する反応液の0.1gを、0.01規定ジ−n−ブチルアミンのジメチルホルムアミド溶液40ml中に加えて溶解した後、0.01規定塩酸のメタノール溶液でブロムフェノールブルーを指示薬として用いて中和滴定を行うことにより測定することができる。
【0053】
上述したように、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させ、その反応生成物として得ることができるものである。ここで、上記ポリイソシアネート化合物と上記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させて、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートを得る方法としては、所望の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、ポリイソシアネート化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の種類等に応じて任意の方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、ポリイソシアネート成分と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とのウレタン化反応を挙げることができる。
【0054】
また、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートとして、イソシアネート基(NCO基)を有するものを用いる場合、このようなウレタン(メタ)アクリレートを得る方法としては、例えば、ポリイソシアネートのNCO基に対し、少ないモル数の水酸基含有(メタ)アクリレートを添加したウレタン化反応を挙げることができる。
【0055】
さらに、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートを構成する上記ポリイソシアネート化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の組み合わせとしては、所望の接着性を備えるウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる組み合わせであれば特に限定されるものではない。本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートを得るために用いられるポリイソシアネート化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の好適な組み合わせとしては、例えば、IPDIおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートの組み合わせ、IPDIおよび(ポリ)エチレングリコールモノアクリレートの組み合わせ、IPDIおよび(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレートの組み合わせ、IPDIおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートの組み合わせ等を挙げることができる。
【0056】
なお、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
【0057】
2.ポリオール(メタ)アクリレート
次に、本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレートについて説明する。本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるものである。
【0058】
ここで、「ポリオール化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物とから得られる」とは、ポリオール化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物との反応、あるいは、ポリオール化合物と、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物との反応によって生成することが可能であることを意味するものである。したがって、本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させることにより、反応生成物として得ることが可能な構造を有するものを指すことになる。
【0059】
このように、本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とから得られるものであるため、通常、上記ポリオール化合物が有する水酸基が、上記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物が有する水酸基と反応することにより、これらの化合物が結合された構造を有するものとなる。したがって、本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレートは、上記ポリオール化合物、および、上記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物の反応生成物の構成単位を有するものとなる。
【0060】
以下、本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレートを得ることが可能な、ポリオール化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物について順に説明し、次いで、これらの化合物からポリオール(メタ)アクリレートを得る方法等について説明する。
【0061】
(1)ポリオール化合物
次に、本発明に用いられるポリオール化合物について説明する。本発明に用いられるポリオール化合物としては、複数の水酸基を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなポリオール化合物としては、例えば、芳香族ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリエーテルポリオール、脂環族ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリカプロラクトンポリオール等を挙げることができる。
以下、これらのポリオール化合物について、その具体例を順に説明する。
【0062】
上記芳香族ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、ナフトキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール等を挙げることができる。
【0063】
上記脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、置換テトラヒドロフラン、オキセタン、置換オキセタン、テトラヒドロピラン及びオキセバンから選ばれる少なくとも1種の化合物を開環(共)重合することにより得られるもの等を挙げることができる。これらの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、ポリイソブチレングリコール、プロピレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体ポリオール、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランの共重合体ポリオール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体ポリオール、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフランの共重合体ポリオール、エチレンオキサイドと1,2−ブチレンオキサイドの共重合体ポリオール等を挙げることができる。
【0064】
上記脂環族ポリエーテルポリオールとしては、例えば、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール等を挙げることができる。
【0065】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の多価アルコールとフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等の多塩基酸とを反応して得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。
【0066】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンポリカーボネート等を挙げることができる。
【0067】
上記ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε−カプロラクトンと、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等の2価のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオール等を挙げることができる。
【0068】
その他本発明に用いることができるポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ひまし油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ジオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ポリオール等を挙げることができる。
【0069】
本発明においては、これらのいずれのポリオール化合物であっても好適に用いることができるが、なかでもポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。その理由は次の通りである。
第1に、本発明の偏光板用接着剤は偏光子と偏光板保護フィルムとを貼り合せることによって偏光板を作製するために用いられるものであるが、本発明の偏光板用接着剤を用いて作製される接着層には上述したウレタン(メタ)アクリレートと、ポリオール(メタ)アクリレートとの硬化物が含有されることになる。ここで、上記ポリオール化合物としてポリエーテルポリオールを用いると、上記硬化物を軟化させることができるため、本発明の偏光板用接着剤を用いて可撓性を有する接着層を形成することが可能になる。ここで、偏光板が工業的に製造される場合、通常、長尺状のものがロール状に巻き取られた形態で製品となるが、上記接着層を可撓性を有するものにできることによって、偏光板がロール状に巻き取られた際に、クニック等によって面状が損なわれることを防止できるという顕著な効果がある。
第2に、上記ポリエーテルポリオールは、水素結合に寄与するエーテル結合部位を分子内に有することから、ポリビニルアルコールとの接着性に優れるものである。このため、上記ポリオール化合物として、ポリエーテルポリオールを用いることにより、本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレートをポリビニルアルコールからなる偏光子との接着性に優れたものにできる結果、本発明の偏光板用接着剤のポリビニルアルコールからなる偏光子に対する接着性を向上することができるからである。
第3に、ポリエーテルポリオールは、ガラス転移温度が低く、偏光板保護フィルム表面に対して濡れ広がる性質を有しており、硬化後もその性質は変わらないことから、偏光板保護フィルムの種類が変わっても安定した接着性を示すからである。
【0070】
本発明に好ましく用いられるポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、その誘導体等を挙げることができる。
【0071】
なお、本発明に用いられるポリオール化合物は、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
【0072】
本発明に用いられるポリオール化合物は、数平均分子量が500〜12000の範囲内であることが好ましく、なかでも1500〜9000の範囲内であることが好ましく、特に3500〜9000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量が上記範囲よりも小さいと、本発明の偏光板用接着剤を用いて作製した偏光板において、偏光子と偏光保護フィルムとの接着性が低下してしまう可能性があるからである。また、上記範囲よりも大きいと、本発明の偏光板用接着剤の粘度が高くなりすぎてしまい、塗工適性が損なわれてしまう場合があるからである。
【0073】
(2)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物
本発明に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、水酸基と、アクリレート基とを有するものであれば特に限定されるものではない。このような水酸基含有(メタ)アクリレート化合物については、上記「1.ウレタン(メタ)アクリレート」の項において記載したものと同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0074】
(3)カルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物
本発明に用いられるカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物としては、カルボキシル基と、アクリレート基とを有するものであれば特に限定されるものではない。本発明に用いられるカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレートやカルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸やマレイン酸、フマール酸やクロトン酸、さらに酸無水物基を有する無水マレイン酸や無水イタコン酸等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれのカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物であっても好適に用いることができるが、なかでもアクリル酸、メタクリル酸がより好ましく用いられる。
【0075】
(4)ポリオール(メタ)アクリレート
上述したように、本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物と、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物または水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させ、その反応生成物として得ることができるものである。ここで、上記ポリオール化合物とカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物または水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させて、本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレートを得る方法としては、所望の構造を有するポリオール(メタ)アクリレートを得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、ポリオール化合物、および水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物の種類等に応じて任意の方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、ポリオール化合物の水酸基に対し、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物のエステル化、若しくはエステル交換反応を挙げることができる。
【0076】
また、本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレートを構成する上記ポリオール化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物の組み合わせとしては、所望の接着性を備えるポリオール(メタ)アクリレートを得ることができる組み合わせであれば特に限定されるものではない。本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレート得るために用いられるポリオール化合物、および水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物の好適な組み合わせとしては、例えば、ポリプロピレングリコールおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートの組み合わせ、ポリエチレングリコールおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートの組み合わせ、ポリプロピレングリコールおよびアクリル酸の組み合わせ、あるいは、ポリエチレングリコールおよびアクリル酸の組み合わせ等を挙げることができる。
【0077】
本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレートは、数平均分子量が100〜100,000の範囲内であることが好ましく、なかでも200〜50,000の範囲内であることが好ましく、さらに300〜30,000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量が上記範囲よりも小さいと、本発明の偏光板用接着剤を用いて作製される偏光板において、偏光子と偏光板保護フィルムとの接着性が低下してしまう可能性があるからである。また、上記範囲よりも大きいと、本発明の偏光板用接着剤の粘度が高くなりすぎてしまい、塗工適性が損なわれてしまう場合があるからである。
【0078】
なお、本発明に用いられるポリオール(メタ)アクリレートは、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
【0079】
3.その他の化合物
本発明の偏光板用接着剤は、少なくとも上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートを含有するものであるが、必要に応じて他の化合物を含有するものであってもよい。本発明に用いられる上記他の化合物としては、本発明の偏光板用接着剤に所望の機能を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、その具体的用途に応じて適宜選択して用いることができる。なかでも上記他の化合物として本発明に好適に用いられるものの例としては、例えば、基材浸透性モノマー、光重合開始剤、および、シランカップリング剤を挙げることができる。
ここで、上記基材浸透性モノマーを含有することにより、本発明の偏光板用接着剤を、偏光板保護フィルムとの接着性に優れたものにできる。また、基材浸透性モノマーを含有することにより本発明の偏光板用接着剤自体の低粘度化が可能となり、薄膜塗工性に優れたものにすることができる。
一方、上記シランカップリング剤が含まれることにより、例えば、本発明の偏光板用接着剤を用いて、ポリビニルアルコールからなる偏光子が用いられた偏光板を作製した場合に、上記偏光子との接着性を向上させることができる。また、シランカップリング剤は同時に本発明の偏光板用接着剤自体の低粘度化にも寄与するため、シランカップリング剤を用いることにより、本発明の偏光板用接着剤をより薄膜塗工性に優れたものにすることができる。
以下、これらの他の化合物について順に説明する。
【0080】
(1)基材浸透性モノマー
まず、上記基材浸透性モノマーについて説明する。本発明に用いられる基材浸透性モノマーは、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する際に、偏光子と貼り合わされる偏光板保護フィルムに対して浸透性を有するものである。
【0081】
ここで、「偏光板保護フィルムに対して浸透性を有する」とは、モノマーの少なくとも一部が基材の内部に浸透することを意味するものとする。また、本発明に用いられる基材浸透性モノマーが、上記「偏光板保護フィルムに対して浸透性を有する」ことは、当該基材浸透性モノマー中に偏光板保護フィルムを浸漬した際に該保護フィルムの少なくとも一部が膨潤、または溶解することを確認することによって評価することができる。
【0082】
本発明に用いられる基材浸透性モノマーとしては、偏光板保護フィルムに対して浸透性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる基材浸透性モノマーは、上記ウレタン(メタ)アクリレートまたは上記ポリオール(メタ)アクリレートの少なくとも一方と相溶性を示すものであることが好ましく、特に上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートと相溶性を示すものであることが好ましい。このような基材浸透性モノマーを用いることにより、上記基材浸透性モノマーの含有量を変化させることで、本発明の偏光板用接着剤の粘度を所定の範囲に調整することが可能になるからである。
ここで、本発明に用いられる基材浸透性モノマーが、上記「相溶性を示す」とは、お互いに親和性を有することを意味するものであり、具体的には、接着層を形成した際に、相分離等により一方が凝集、析出したり塗膜が白化したりせず、可視光域においてヘイズの上昇が認められないことを意味する。
【0083】
また本発明においては、上記基材浸透性モノマーとしてアクリレート基を有する化合物を用いることが好ましい。その理由は次の通りである。すなわち、本発明に用いられる基材浸透性モノマーは、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する際に用いられる偏光板保護フィルムの表面に浸透する機能を有するものである。そして、上述したように本発明の偏光板用接着剤は、いずれもアクリレート基を有するウレタン(メタ)アクリレートおよびポリオール(メタ)アクリレートを含むものである。したがって、本発明に用いられる基材浸透性モノマーとして、アクリレート基を有する化合物を用いることにより、基材浸透性モノマーが上記ウレタン(メタ)アクリレートあるいは上記ポリオール(メタ)アクリレートと互いに重合することによって作用しやすくなる結果、本発明の偏光板用接着剤を用いて、より偏光子と偏光板保護フィルムとの接着性に優れた偏光板を作製することが可能になるからである。
【0084】
上記アクリレート基を有する基材浸透性モノマーとしては、単一のアクリレート基を有するものであってもよく、または、複数のアクリレート基を有するものであってもよい。
【0085】
本発明に用いられるアクリレート基を有する基材浸透性モノマーとしては、極性が小さい非極性アクリレートと、極性が大きい極性アクリレートとを挙げることができる。
【0086】
上記非極性アクリレートとしては、例えば、スチレン、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のモノアクリレート;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等のジアクリレート等、を挙げることができる。
【0087】
また、上記極性アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート等のモノアクリレート;モルフォリンアクリレート、2−エチル−2−ブチループロパンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等のジアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、トリメチロールプロパントリアクリレート等のポリアクリレート等を挙げることができる。
【0088】
本発明に用いられる基材浸透性モノマーとしては、上記非極性アクリレート、または、上記極性アクリレートのいずれであっても好適に用いることができる。例えば、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する際に、セルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムを用いる場合は、上記非極性アクリレート、および、上記極性アクリレートを好適に用いることができる。このような場合に特に好適に用いられる基材浸透性モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、イソボニルアクリレート、モルフォリンアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を挙げることができる。また、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する際にシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムを用いる場合は、上記極性アクリレートを好適に用いることができる。このような場合に特に好適に用いられる基材浸透性モノマーとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、モルフォリンアクリレート等を挙げることができる。
【0089】
なお、本発明に用いられる基材浸透性モノマーは、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
【0090】
本発明の偏光板用接着剤にこのような基材浸透性モノマーが含まれる場合、その含有量としては、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光子と偏光板保護フィルムとが所望の接着強度で接着された偏光板を作製することができる範囲であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明における上記基材浸透性モノマーの含有量は、上述したウレタン(メタ)アクリレートおよびポリオール(メタ)アクリレートの混合物100重量部に対して、10重量部〜200重量部の範囲内であることが好ましく、特に30重量部〜150重量部の範囲内であることが好ましく、さらに50重量部〜100重量部の範囲内であることが好ましい。上記基材浸透性モノマーの含有量が上記範囲よりも少ないと、本発明の偏光板用接着剤の粘度が高くなりすぎてしまい、塗工適性が損なわれる場合があるからである。また、上記範囲よりも多いと、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製した際に、偏光子と偏光板保護フィルムとの接着性が所望の範囲に達しない場合があるからである。
【0091】
(2)光重合開始剤
次に、上記光重合開始剤について説明する。本発明に用いられる光重合開始剤は、紫外線が照射されることにより上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化反応を誘起する機能を有するものである。
【0092】
本発明に用いられる光重合開始剤としては、所定の波長領域の光を吸収することより、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化反応を誘起できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる光重合開始剤は、500nm以上の波長領域に吸収を示さないものであることが好ましく、特に480nm以上の波長領域に吸収を示さないものであることが好ましく、さらには、450nm以上の波長領域に吸収を示さないものであることが好ましい。光重合開始剤が上記波長領域に吸収を示すものであると、本発明の偏光板用接着剤を用いて作製される偏光板の着色が強くなってしまう場合があるからである。
ここで、本発明において、「吸収を示さない」とは、光重合開始剤をトルエンに5質量%の濃度で溶解した溶液の吸光度を分光光度計を用いて測定した際に、上記波長範囲の光に対する吸光度が0.5%以下であることを意味するものとする。
【0093】
また、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作成する場合、通常、偏光板保護フィルムを介して光重合開始剤に紫外線が照射されることになるため、本発明に用いられる上記光重合開始剤としては、上記偏光板保護フィルムが吸収する波長領域以外の波長領域の光を吸収して硬化反応を誘起できるものであることが好ましい。ここで、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する際に用いられる偏光板保護フィルムには、通常、偏光板保護フィルム自体が紫外線によって劣化してしまうことを防止したり、あるいは、偏光子が紫外線によって劣化してしまうことを防止するために、紫外線吸収剤を含有されることが多いものである。このような場合は、本発明に用いられる光重合開始剤として、上記紫外線吸収剤が吸収する波長領域よりも長波長側の光を吸収することによって硬化反応を誘起できるものを用いることが好ましい。例えば、上記紫外線吸収剤が400nm以下の光を吸収するものである場合、上記光重合開始剤としては、400nmよりも長波長側の光を吸収することにより上述した硬化反応を誘起できるものを用いることが好ましい。
【0094】
上記着色の観点と、上記偏光板保護フィルムの吸収特性の観点とを合わせると、本発明に用いられる光重合開始剤は、上記偏光板保護フィルムが吸収する波長領域よりも長波長側であり、かつ、500nmよりも短波長側の光を吸収することによって硬化反応を誘起できるものを用いることが好ましい。本発明においてはこのような光重合開始剤として、通常、波長領域が400nm〜500nmの範囲内の光を吸収することにより、硬化反応を誘起できるものが好適に用いられる。
【0095】
このような光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ社製N1717、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等を例示できる。
【0096】
本発明の偏光板用接着剤中における上記光重合開始剤の含有量としては、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する際に、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートを所望の時間内に硬化することができる範囲であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては上記光重合開始剤の含有量が0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましく、特に1質量〜7質量%の範囲内であることが好ましく、さらに2質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0097】
なお、本発明に用いられる光重合開始剤は、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
【0098】
(3)シランカップリング剤
次に、上記シランカップリング剤について説明する。本発明に用いられるシランカップリング剤としては、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製した際に、偏光子あるいは偏光板保護フィルムと、接着層との接着性向上に寄与できるものであれば特に限定されるものではない。このような、シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル-N-(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。本発明においては、これらのいずれのシランカップリング剤であっても好適に用いることができるが、なかでもアミノ基、またはメルカプト基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0099】
また、本発明の偏光板用接着剤にシランカップリング剤が含まれる場合、その含有量としては、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.3質量%〜7質量%の範囲内であることが好ましく、特に0.5質量〜3質量%の範囲内であることが好ましい。
【0100】
なお、本発明に用いられるシランカップリング剤は、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
【0101】
4.偏光板用接着剤
本発明の偏光板用接着剤は、少なくとも上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートを含むものであるが、本発明の偏光板用接着剤中に含有される上記ウレタン(メタ)アクリレートと、上記ポリオール(メタ)アクリレートとの含有比としては、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光子と偏光板保護フィルムとが所望の接着力で接着された偏光板を作製できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対する上記ポリオール(メタ)アクリレートの含有量が5重量部〜300重量部の範囲内であることが好ましく、特に10重量部〜200重量部の範囲内であることが好ましく、さらに20重量部〜150重量部の範囲内であることが好ましい。上記ポリオール(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲よりも少ないと基材に対する接着剤の濡れ広がりが不十分になり接着性に劣る場合があり、上記範囲より多いと、各種耐久性試験の過程で吸湿した場合に接着強度が低下することが懸念されるからである。
【0102】
また、本発明の偏光板用接着剤は上記ウレタン(メタ)アクリレートと、上記ポリオール(メタ)アクリレートとを含むことにより、偏光板用接着剤全体としての粘度を低くすることができるという利点を有するものである。このように偏光板用接着剤全体としての粘度を低くできるということは、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する際に、接着層を薄膜化することができ、切断加工適性に優れた偏光板を得ることに資するものである。
ここで、本発明の偏光板用接着剤の粘度としては、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する際に、本発明の偏光板用接着剤を塗工する塗布方式等に応じて適宜調整すればよいものであるが、なかでも本発明の偏光板用接着剤の粘度は0.1cps〜10,000cpsの範囲内であることが好ましく、特に0.5cps〜7,000cpsの範囲内であることが好ましく、さらに1cps〜5,000cpsの範囲内であることが好ましい。粘度が上記範囲よりも低いと、貼り合せ前に基材に接着剤を乗せた際に液だれ等により均一な接着層が得られにくくなる可能性があり、上記範囲よりも高いと、高い圧力で引き伸ばす必要があり、基材が破壊される危険があるからである。
また、好ましい粘度にする温度範囲は用いる基材の軟化温度に依存するが、通常は10℃〜80℃、好ましくは23℃〜60℃の範囲が好ましい。10℃以下では温度の制御が困難で、80℃以上の場合は偏光子のダメージが懸念されるからである。
なお、本発明の偏光板用接着剤の粘度は、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートの少なくとも一方の分子量を大きくすることによって増加させることができ、また、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートの少なくとも一方の分子量を小さくすることによって低下させることができる。
【0103】
さらに、上記ウレタン(メタ)アクリレートとしてイソシアネート基(NCO基)を有するものを用いる場合、本発明の偏光板用接着剤中に含有されるイソシアネート基の量としては、本発明の偏光板用接着剤の用途や、本発明の偏光板用接着剤中に含有される上記ウレタン(メタ)アクリレートの量に応じて適宜調整して用いることができる。なかでも本発明の偏光板用接着剤においては、上記イソシアネート基(NCO基)の量が0.1モル%〜30モル%の範囲内であることが好ましく、特に0.5モル%〜20モル%の範囲内であることが好ましく、さらに1モル%〜10モル%の範囲内であることが好ましい。上記イソシアネート基の含有量が上記範囲よりも少ないと、上記ウレタン(メタ)アクリレートとしてイソシアネート基(NCO基)を含有する化合物を用いることによる接着性向上効果を所望の程度に発現できない可能性があるからである。また上記範囲よりも多いと、本発明の偏光板用接着剤を用いて作製した偏光板において、偏光子と接着層との間で形成されるウレタン結合が多くなりすぎてしまい、偏光子の偏光特性が損なわれる場合があるからである。
なお、上記イソシアネート基(NCO基)の含有量を測定する方法については、上述した方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0104】
5.偏光板用接着剤の用途
本発明の偏光板用接着剤は、液晶表示装置等に用いられる偏光子と偏光板保護フィルムとが貼り合わされた構成を有する偏光板を作製する際に、偏光子と偏光板保護フィルムとを接着するために用いられるものである。
【0105】
本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する方法について説明する。本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を製造する方法としては、偏光子と、偏光板保護フィルムとが本発明の偏光板用接着剤からなる接着層を介して接着された構成を有する偏光板を製造できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、本発明の偏光板用接着剤を偏光板保護フィルムの片面に塗工する工程と、偏光子の両面に、本発明の偏光板用接着剤が塗設された偏光板保護フィルムを貼り合わせる工程と、上記偏光板保護フィルムを介して本発明の偏光板用接着剤に紫外線を照射することにより、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートを硬化させる工程とを有する製造方法を挙げることができる。
【0106】
本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する際に用いられる偏光子としては、所定の偏光特性を備えるものであれば特に限定さえるものではないが、通常、ポリビニルアルコールからなるフィルムにヨウ素を含浸させ、これを一軸延伸することによってポリビニルアルコールとヨウ素との錯体を形成させたものが用いられる。
【0107】
また、本発明の偏光板用接着剤を用いて偏光板を作製する際に用いられる偏光板保護フィルムとしては、偏光子が空気中の水分等に曝されることを防止する機能や、偏光子の寸法変化を防止する機能等を有するものであれば特に限定されるものではない。このような偏光板保護フィルムとしては、従来広く用いられてきたセルローストリアセテートに代表されるセルロース誘導体からなるフィルムを用いることができるのは勿論のこと、シクロオレフィン系樹脂からなるフィルムも用いることができる。
【0108】
上記シクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、例えば、Ticona社製 Topas、ジェイエスアール社製 アートン、日本ゼオン社製 ZEONOR、日本ゼオン社製 ZEONEX、三井化学社製 アペル等を挙げることができる。
【0109】
B.偏光板
次に、本発明の偏光板について説明する。本発明の偏光板は、ポリビニルアルコールからなる偏光子と、上記偏光子の両面に形成された接着層と、上記偏光子の両面であり、上記接着層上に形成された偏光板保護フィルムとを有する偏光板であって、上記接着層が、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるウレタン(メタ)アクリレートと、ポリオール化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるポリオール(メタ)アクリレートとの硬化物を含み、かつ、少なくとも上記接着層と上記偏光子との間にウレタン結合が形成されていることを特徴とするものである。
【0110】
このような本発明の偏光板について図を参照しながら説明する。図1は本発明の偏光板の一例を示す概略図である。図1に例示するように本発明の偏光板10は、ポリビニルアルコールからなる偏光子1と、上記偏光子1の両面に形成された接着層2と、上記偏光子1の両面であって、上記接着層2上に形成された偏光板保護フィルム3と、を有するものである。
このような例において、本発明の偏光板10は、上記接着層2が上記ウレタン(メタ)アクリレートと、上記ポリオール(メタ)アクリレートとの硬化物を含み、かつ、少なくとも上記接着層2と上記偏光子1との間にウレタン結合が形成されていることを特徴とするものである。
【0111】
本発明によれば、上記接着層が上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物を含み、かつ、少なくとも上記接着層と上記偏光子との間にウレタン結合が形成されたものであることにより、上記偏光子と上記偏光板保護フィルムとの密着性に優れた偏光板を得ることができる。
また、上記接着層に含まれる上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物は、上記接着層が上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートに光を照射することによって生成することが可能であるため、本発明の偏光板を製造する工程において、上記接着層を形成するために溶媒を用いることが不要となる。このため、本発明の偏光板を製造する工程において上記接着層を乾燥する工程を設置することが不要となる。
【0112】
また、上記接着層が上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物を含むものであることにより、本発明の偏光板においては上記接着層を薄膜化することが可能になる。このため本発明によれば切断加工特性に優れた偏光板を得ることができる。
ここで、上記接着層が上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物を含むものであることにより、切断加工特性に優れた偏光板を得ることができる理由は次の通りである。
すなわち、本発明の偏光板は偏光板用接着剤として上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートを含有するものを用いることによって容易に製造することが可能であるが、ここで上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートを含有する偏光板用接着剤は粘度が低く、薄膜塗工性を備えるものとなる。このため、このような偏光板用接着剤を用いて上記接着層を形成することにより厚みの薄い接着層を形成することが可能になる結果、切断加工特性に優れた偏光板を得ることができるのである。
【0113】
また本発明においては、上記接着層に上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物が含まれるものであるため、上記偏光板保護フィルムとして、トリアセチルセルロースに代表されるセルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムを用いる場合であっても、従来のように偏光板保護フィルムに対してけん化処理を行うことが不要となる。これは、従来は接着剤としてPVA水溶液が用いられていたため、偏光板保護フィルムの表面に水素結合の形成に寄与する水酸基を形成することが必要であったが、本発明に用いられる接着剤は水素結合によって接着力を発現するものではないからである。このようなことから、本発明の偏光板は、セルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムを用いる場合であってもけん化処理工程を行うことなく製造することができ、偏光板製造工程を簡略化することができるという利点を有する。
【0114】
また、上述したけん化処理工程を行うことなく本発明の偏光板を製造できるということは、次のような利点も有するものである。すなわち、付加機能を備える偏光板を得るために上記偏光板保護フィルムに所望の機能を有する材料を含有させたり、あるいは、所望の機能を備える機能性層を積層することが従来より行われている。しかしながら、従来は、セルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムを用いる場合、上記けん化処理工程が必要であったことから、上記セルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムに所望の機能を付与するために用いられる材料としては、アルカリ耐性を有する化合物しか用いることができないという制約があった。この点、本発明の偏光板は、上記けん化処理工程を行うことなく製造することが可能であるため、所定の機能を有する材料として使用可能な化合物をアルカリ耐性を有するものに限定する必要がなくなり、広い範囲から適当な材料を選択して用いることができるようになる。
【0115】
さらに、上記効果に加えて、本発明の偏光板は次のような利点を有する。すなわち、従来の偏光板は偏光子と偏光板保護フィルムとを接着する接着剤としてポリビニルアルコールが用いられてきた。ポリビニルアルコールは水溶性を示すため、このような接着剤が用いられた偏光板は、耐湿性に乏しいという問題点があった。
この点、本発明に用いられる接着層は、上記ウレタン(メタ)アクリレート、および、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物を含有するものであるため、高湿雰囲気下においても接着力の耐久性に優れたものとなる。このため、本発明の偏光板は高湿雰囲気下における耐久性に優れるという利点を有する。
【0116】
なお、本発明における「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを含むことを意味するものとする。
【0117】
本発明の偏光板は、少なくとも上記偏光子、上記接着層、および、上記偏光板保護フィルムを有するものである。
以下、このような本発明の偏光板に用いられる各構成について順に説明する。
【0118】
1.接着層
まず、本発明に用いられる接着層について説明する。本発明に用いられる接着層は、後述する偏光子の両面に形成されるものであり、後述する偏光子と偏光板保護フィルムとを接着する機能を有するものである。そして、本発明に用いられる接着層は、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるウレタン(メタ)アクリレートと、ポリオール化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるポリオール(メタ)アクリレートの硬化物を含むことを特徴とするものである。本発明の偏光板は、このような接着層が用いられていることにより、後述する偏光子と偏光板保護フィルムとの接着性に優れ、生産性に優れたものになるのである。
以下、本発明に用いられる接着層について詳細に説明する。
【0119】
なお、本発明における接着層に用いられるウレタン(メタ)アクリレートおよびポリオール(メタ)アクリレートについては、上記「A.偏光板用接着剤」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0120】
本発明に用いられる接着層は、少なくとも、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物が含まれるものであるが、上記接着層中に含まれる上記ウレタン(メタ)アクリレートの構成単位と、上記ポリオール(メタ)アクリレートの構成単位との比率としては、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートの種類、あるいは、本発明に用いられる偏光板保護フィルムの種類等に応じて、上記接着層に所望の接着性を付与できる範囲で適宜調整することができる。なかでも本発明においては、上記接着層中に含まれる上記ウレタン(メタ)アクリレートの構成単位と、上記ポリオール(メタ)アクリレートの構成単位との比率(ウレタン(メタ)アクリレートの構成単位:ポリオール(メタ)アクリレートの構成単位)が、1:0.05〜1:3の範囲内であることが好ましく、特に1:0.1〜1:2の範囲内であることが好ましく、さらに1:0.2〜1:1.5の範囲内であることが好ましい。上記比率がこのような範囲内であることにより、上記接着層の接着性をより高くすることができるからである。
ここで、上記比率は元素分析法により求めることができる。
【0121】
また、上述したように本発明に用いられる接着層は、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物が含まれるものであることにより、厚みを薄くすることができるものである。ここで、本発明に用いられる接着層の厚みとしては、本発明の偏光板の可撓性を所望の範囲内とすることができ、かつ、本発明の偏光板の光学特性を所望の範囲内にすることができる範囲であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記接着層の厚みが0.01μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に0.05μm〜70μmの範囲内であることが好ましく、さらに0.08μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。厚みが上記範囲よりも厚いと、本発明の偏光板の可撓性が損なわれてしまい、例えば、本発明の偏光板を製造する際に、製造された偏光板をロール状に巻き取ることが困難となることが懸念されるからである。また、本発明の偏光板の色味が変化してしまう場合があるからである。一方、厚みが上記範囲よりも薄いと、後述する偏光子と偏光板保護フィルムとの接着性が不十分となる可能性があるからである。
【0122】
本発明に用いられる接着層は、少なくとも上記ウレタン(メタ)アクリレートと、上記ポリオール(メタ)アクリレートの硬化物を含有するものであるが、必要に応じて他の化合物をするものであってもよい。本発明に用いられる上記他の化合物としては、上記接着層に所望の機能を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の偏光板の具体的態様に応じて任意の化合物を採用して用いることができる。なかでも上記他の化合物として本発明に好適に用いることができるものの例としては、例えば、基材浸透性モノマーの硬化物、および、シランカップリング剤等を挙げることができる。
以下、これらの他の化合物について順に説明する。
【0123】
(1)基材浸透性モノマーの硬化物
まず、上記基材浸透性モノマーの硬化物について説明する。本発明に用いられる基材浸透性モノマーの硬化物は、後述する偏光板保護フィルムに対して浸透性を有する基材浸透性モノマーの硬化物である。上記接着層にこのような基材浸透性モノマーの硬化物が含有されることにより、本発明の偏光板を上記接着層と上記偏光板保護フィルムとの接着性により優れたものにできる。
【0124】
本発明に用いられる基材浸透性モノマーの硬化物は、上記基材浸透性モノマーが硬化されてなるものである。
ここで、上記基材浸透性モノマーについては上記「A.偏光板用接着剤」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0125】
また、本発明に用いられる基材浸透性モノマーの硬化物は、上記基材浸透性モノマーが硬化されてなるものであるが、上記基材浸透性モノマーが硬化される態様としては、上記基材浸透性モノマー同士が反応することによって硬化された態様であってもよく、あるいは、上記基材浸透性モノマーが上記ウレタン(メタ)アクリレートまたは上記ポリオール(メタ)アクリレートと反応することによって硬化された態様であってもよい。
【0126】
なお、本発明に用いられる基材浸透性モノマーは、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
【0127】
本発明に用いられる接着層に上記基材浸透性モノマーの硬化物が含まれる場合、上記接着層中に含有される上記基材浸透性モノマーの構成単位の含有量としては、本発明の偏光板において接着層と後述する偏光板保護フィルムとの接着力を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも、本発明においては、接着層中に含まれる上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートの重合物100重量部に対して0.1重量部〜200重量部の範囲内であることが好ましく、特に0.5重量部〜100重量部の範囲内であることが好ましく、さらに1重量部〜70重量部の範囲内であることが好ましい。
なお、接着層中における上記基材浸透性モノマーの構成単位の含有量は、例えば、元素分析法によって求めることができる。
【0128】
(2)シランカップリング剤
次に、上記シランカップリング剤について説明する。本発明に用いられるシランカップリング剤としては、上記接着層の接着機能の向上に寄与できるものであれば特に限定されるものではない。
ここで、本発明に用いられるシランカップリング剤としては、上記「A.偏光板用接着剤」の項に記載したものと同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0129】
本発明に用いられる接着層にシランカップリング剤が含まれる場合、接着層中に含まれるシランカップリング剤量は、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.3質量〜7質量%の範囲内であることが好ましく、特に0.5質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0130】
なお、本発明に用いられるシランカップリング剤は、1種類であってもよく、または、2種類であってもよい。
【0131】
2.偏光板保護フィルム
次に、本発明に用いられる偏光板保護フィルムについて説明する。本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、後述する偏光子の両面であって、上述した接着層上に形成されるものであり、本発明の偏光板において後述する偏光子が空気中の水分等に曝されることを防止する機能や、偏光子の寸法変化を防止する機能等を有するものである。
【0132】
本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、本発明の偏光板において上記偏光子を保護することができ、かつ、所望の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、可視光領域における透過率が80%以上であるものが好ましく、90%以上であるものがより好ましい。
ここで、上記偏光板保護フィルムの透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0133】
本発明に用いられる偏光板保護フィルムを構成する材料としては、例えば、セルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類等を挙げることができる。なかでも本発明においては、上記樹脂材料としてセルロース誘導体またはシクロオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0134】
上記セルロース誘導体としては、本発明の偏光板において後述する偏光子が空気中の水分等に曝されることを防止する機能と、偏光子の寸法変化を防止する機能とを有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記セルロース誘導体としてセルロースエステル類を用いることが好ましく、さらにセルロースエステル類の中でもセルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
【0135】
上記セルロースアシレート類としては、炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであってもよい。
【0136】
また本発明においては、上記低級脂肪酸エステルの中でもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5%〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。このようなトリアセチルセルロールは光学的等方性に優れるからである。
ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。なお、トリアセチルセルロースフィルムを構成するトリアセチルセルロースの酢化度は、フィルム中に含まれる可塑剤等の不純物を除去した後、上記の方法により求めることができる。
【0137】
なお、従来、セルロース誘導体からなるフィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、表面をけん化処理することによってポリビニルアルコールからなる偏光子との接着性を向上することが必要とされていた。しかしながら、本発明においては、上述したような接着層が用いられていることにより、ポリビニルアルコールからなる偏光子を用いる場合であっても、セルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムをけん化処理を施さないで用いることができる。このため、本発明においてはセルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムを用いることによって、他の材料からなる偏光板保護フィルムを用いる場合よりも、より高い生産性向上効果を得ることができることになる。
【0138】
一方、上記シクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。このような上記環状オレフィンからなるモノマーとしては、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等を挙げることができる。
また、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであっても好適に用いることができる。
【0139】
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂は上記環状オレフィンからなるモノマーの単独重合体であってもよく、または、共重合体であってもよい。
【0140】
また、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂は、23℃における飽和吸水率が1質量%以下であるものが好ましく、なかでも0.1質量%〜0.7質量%の範囲内であるものが好ましい。このようなシクロオレフィン系樹脂を用いることにより、本発明の偏光板を吸水による光学特性の変化や寸法の変化がより生じにくいものとすることができるからである。
ここで、上記飽和吸水率は、上記吸水率は、ASTMD570に準拠し23℃の水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められる。
【0141】
さらに、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂は、ガラス転移点が100℃〜200℃の範囲内であるものが好ましく、特に100℃〜180℃の範囲内であるものが好ましく、なかでも100℃〜150℃の範囲内であるものが好ましい。ガラス転移点が上記範囲内であることにより、本発明の偏光板を耐熱性および加工適性により優れたものにできるからである。
【0142】
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、例えば、Ticona社製 Topas、ジェイエスアール社製 アートン、日本ゼオン社製 ZEONOR、日本ゼオン社製 ZEONEX、三井化学社製 アペル等を挙げることができる。
【0143】
本発明に用いられる偏光板保護フィルムの構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。また、複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
【0144】
また、本発明に用いられる偏光板保護フィルムの厚みは、本発明の偏光板の可撓性を所望の範囲内にすることができ、かつ、後述する偏光子と貼り合わせることにより、偏光子の寸法変化を所定の範囲内にできる範囲であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる偏光板保護フィルムの厚みは、5μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、特に15μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、さらに30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。厚みが上記の範囲よりも薄いと、本発明の偏光板の寸法変化が大きくなってしまう場合があるからである。また、厚みが上記の範囲よりも厚いと、例えば、本発明の偏光板を裁断加工する際に、加工屑が増加したり、裁断刃の磨耗が早くなってしまう場合があるからである。
【0145】
本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、位相差性を有するものであってもよい。位相差性を有する偏光板保護フィルムを用いることにより、本発明の偏光板を液晶表示装置の視野角補償機能を有するものにできるという利点がある。
【0146】
本発明に用いられる偏光板保護フィルムが位相差性を有する態様としては、所望の位相差性を発現できる態様であれば特に限定されるものではない。このような態様としては、例えば、単一の層からなる構成を有し、位相差性を発現する光学特性発現剤を含有することにより位相差性を有する態様と、上述した樹脂材料からなる透明基板上に、屈折率異方性を有する化合物を含有する位相差層が積層された構成を有することにより位相差性を有する態様とを挙げることができる。本発明においては、これらのいずれの態様であっても好適に用いることができる。
【0147】
なお、上述したように本発明の偏光板には、上記セルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムをけん化処理を施すことなく用いることができるため、上記位相差性を発現させるために用いることができる材料の制約が少なくなるという利点がある。すなわち、上述したように、従来、セルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムを用いる場合には、けん化処理が必要とされていたため、偏光板保護フィルムに位相差性を付与するために用いられる材料は、けん化処理に耐え得るアルカリ耐性を備えるものでなければならないという制約があった。しかしながら、本発明においては、上記セルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムをけん化処理を施すことなく用いることができるため、このような制約がなく、所望の位相差性を発現できる材料をより広く選択することが可能になるという利点を有する。
【0148】
3.偏光子
次に、本発明に用いられる偏光子について説明する。本発明に用いられる偏光子はポリビニルアルコールからなるものであり、本発明の偏光板に偏光特性を付与する機能を有するものである。
【0149】
本発明に用いられる偏光子ポリビニルアルコールからなるものであり、本発明の偏光板に所望の偏光特性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に液晶表示装置の偏光板に用いられる偏光子を特に制限なく用いることができる。このような偏光子としては、通常、ポリビニルアルコールからなるフィルムにヨウ素を含浸させ、これを一軸延伸することによってポリビニルアルコールとヨウ素との錯体を形成させたものが用いられる。
【0150】
4.偏光板
本発明の偏光板は、少なくとも上記接着層と上記偏光子との間にウレタン結合が形成されていることを特徴とするものである。このように上記接着層と上記偏光子との間にウレタン結合が形成されていることにより、本発明の偏光板は上記接着層と上記偏光子との接着性に優れたものになるのである。
ここで、本発明の偏光板において上記接着層と上記偏光子との間にウレタン結合が形成されていることについては、例えば元素分析法によって確認することができる。
【0151】
本発明において、上記接着層と上記偏光子とのウレタン結合が形成されている態様としては特に限定されるものではない。なかでも本発明は上記接着層にウレタン(ポリ)アクリレートの硬化物を含有するものであることから、通常、上記ウレタン(ポリ)アクリレート中に残留するイソシアネート基と、上記偏光子を構成するポリビニルアルコールの水酸基とが縮合することによって形成された態様となる。
【0152】
本発明の偏光板において上記ウレタン結合が形成される態様としては、少なくとも上記接着層と上記偏光子との間にウレタン結合が形成される態様であれば特に限定されるものではない。したがって、上記ウレタン結合が上記接着層と上記偏光子との間にのみ形成される態様であってもよく、あるいは、上記接着層と上記偏光子との間、および、上記接着層と上記偏光板保護フィルムとの間に形成される態様であってもよい。
【0153】
上記ウレタン結合が上記接着層と上記偏光板保護フィルムとの間にも形成される例としては、例えば、上記偏光板保護フィルムとしてトリアセチルセルロースからなるものを用い、上記トリアセチルセルロース中に残留する水酸基と、上記ウレタン(ポリ)アクリレート中に残留するイソシアネート基とが縮合することによって形成されるものを挙げることができる。
【0154】
なお、本発明においては上記接着層と上記偏光板保護フィルムとの間にもウレタン結合を形成させるために、上記偏光板保護フィルムとして、表面にウレタン結合の形成に寄与する水酸基が付与されたものを用いてもよい。表面にウレタン結合の形成に寄与する水酸基が付与された上記偏光板保護フィルムとしては、例えば、表面がけん化処理されたセルロース誘導体からなる偏光板保護フィルムを挙げることができる。
【0155】
本発明の偏光板は上記偏光子の両面に2層の接着層を有するものであるが、上記2層の接着層は同一の組成からなるものであってもよく、あるいは、互いに異なる組成からなるものであってもよい。また、本発明の偏光板は2枚の偏光板保護フィルムが用いられたものであるが、上記2枚の偏光板用保護フィルムは同じものであってもよく、あるいは、異なるものであってもよい。
【0156】
5.偏光板の製造方法
次に、本発明の偏光板を製造する方法について説明する。本発明の偏光板を製造する方法としては、上記構成を有する偏光板を製造できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、上述したウレタン(メタ)アクリレートおよびポリオール(メタ)アクリレートを含有し、さらに光重合開始剤を含有する偏光板用接着材を用い、上記偏光板用接着材を上述した偏光板保護フィルムの片面に塗工する工程と、上述した偏光子の両面に上記偏光板用接着剤が塗設された偏光板保護フィルムを貼り合わせる工程と、上記偏光板保護フィルムを介して、上記偏光板用接着剤に紫外線を照射することにより、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび上記ポリオール(メタ)アクリレートを硬化させる工程とを有する製造方法を挙げることができる。
なお、本発明の偏光板は、上記偏光板用接着剤として上記本発明に係る偏光板用接着剤を用いることにより容易に製造することができる。
【0157】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0158】
次に、実施例を示すことにより本発明についてさらに具体的に説明する。
【0159】
(ウレタン(メタ)アクリレートの調製)
撹拌機を備えた反応容器にイソホロンジイソシアネート32.9gを添加し容器を40℃〜55℃に加熱してジブチル錫ジラウレート0.39gと2−ヒドロキシエチルアクリレート5.3gを添加して、55〜70℃で90分撹拌した。得られたウレタン(メタ)アクリレートの残留イソシアネート量は5.3%であった。
【0160】
(偏光板用接着剤Iの調製)
上記で得られたウレタン(メタ)アクリレート 10.0gに対し、ポリオール(メタ)アクリレートとしてポリエチレングリコール400のジアクリレート(PEG400DA−D 商品名:ダイセル・サイテック株式会社)を10.0g混合し、液温度を50℃〜60℃に保ちながらルシリンTPO(BASF株式会社製)を90.8gを加え均一な樹脂液になるまで撹拌した。これにより、本発明の偏光板用接着剤Iを得た。
【0161】
(偏光板用接着剤IIの調製)
上記のようにして調整した偏光板用接着剤Iに、更に基材浸透性モノマーとしてアクリロイルモルホリン(興人株式会社製 ACMO)10.0gを加え、偏光板用接着剤IIを得た。
【0162】
1.実施例1
40℃に加温した上記偏光板用接着剤Iを、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム株式会社製)上に塗工し、ポリビニルアルコールからなる偏光子の両面からラミネートした後、トリアセチルセルロースフィルム面からUV照射装置(フュージョンUVシステムズ製Hバルブ)で200mJ/cmの紫外線を照射した。この操作を両面について行うことにより偏光板を作製した。
【0163】
2.実施例2
上記偏光板用接着剤Iの代わりに、上記偏光板用接着剤IIを用いたこと以外は実施例1と同様の方法により偏光板を作製した。
【0164】
3.比較例
上記偏光板用接着剤Iの代わりに上記ウレタン(メタ)アクリレートのみを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法で偏光板を作製した。
【0165】
4.評価
上記実施例および比較例において作製した偏光板について偏光子と偏光板保護フィルムとの間での剥離試験を行った。剥離試験は、幅25mm、長さ150mmとした偏光板を用い、JIS Z0237に準じ、オリエンテック製のテンシロン引張試験機により300mm/min、180度で剥がした時の剥離強度を測定した。
その結果、実施例1、2において作製した偏光板では偏光子と偏光板保護フィルムとの境界間での剥がれは起こらず、荷重を加え続けた場合、偏光板保護フィルムが破断した。
一方、比較例において作製した偏光板では、偏光子と偏光板保護フィルムとの境界間で剥離した。
【符号の説明】
【0166】
1 … 偏光子
2 … 接着層
3 … 偏光板保護フィルム
10 … 偏光板
101 … 液晶セル
102A,102B … 偏光板
112A,112B … 偏光子
122A,122B … 偏光板保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるウレタン(メタ)アクリレートと、
ポリオール化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるポリオール(メタ)アクリレートと、を含み、
偏光板保護フィルムに対して浸透性を有する基材浸透性モノマーを含有し、
前記偏光板保護フィルムが、セルロース誘導体からなるものであり、
前記基材浸透性モノマーが1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、イソボニルアクリレート、モルフォリンアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートの群から選ばれる1種類または2種類以上であることを特徴とする、偏光板用接着剤。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート化合物が、脂環式ポリイソシアネート化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の偏光板用接着剤。
【請求項3】
ポリビニルアルコールからなる偏光子と、前記偏光子の両面に形成された接着層と、前記偏光子の両面であり、前記接着層上に形成された偏光板保護フィルムと、を有する偏光板であって、
前記接着層が、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるウレタン(メタ)アクリレートと、
ポリオール化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるポリオール(メタ)アクリレートと、の硬化物を含み、かつ、少なくとも前記接着層と前記偏光子との間にウレタン結合が形成され、
前記接着層が、偏光板保護フィルムに対して浸透性を有する基材浸透性モノマーの硬化物を含有し、
前記偏光板保護フィルムが、セルロース誘導体からなるものであり、
前記基材浸透性モノマーが1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、イソボニルアクリレート、モルフォリンアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートの群から選ばれる1種類または2種類以上であることを特徴とする、偏光板。
【請求項4】
ポリビニルアルコールからなる偏光子と、前記偏光子の両面に形成された接着層と、前記偏光子の両面であり、前記接着層上に形成された偏光板保護フィルムと、を有し、
前記接着層が、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるウレタン(メタ)アクリレートと、
ポリオール化合物、および、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物から得られるポリオール(メタ)アクリレートと、の硬化物を含み、かつ、少なくとも前記接着層と前記偏光子との間にウレタン結合が形成され、
前記接着層が、偏光板保護フィルムに対して浸透性を有する基材浸透性モノマーの硬化物を含有し、
前記偏光板保護フィルムが、セルロース誘導体からなるものであり、
前記基材浸透性モノマーが1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、イソボニルアクリレート、モルフォリンアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートの群から選ばれる1種類または2種類以上である偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−256064(P2012−256064A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−177173(P2012−177173)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【分割の表示】特願2007−95138(P2007−95138)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】