説明

偏平形電池用搬送治具

【課題】電池用搬送治具に関するものであり、1つの扁平形電池用搬送治具内に複数の電池構成部品を分離しながら収納して搬送することができ、特にコイン形電池において非水電解液を電極体に含浸させるために長い時間放置しても揮発性高い非水電解液の蒸発を搬送しながらも抑制できる偏平形電池用搬送治具を提供するものである。
【解決手段】非磁性体材料からなる本体1の内部に磁性体からなる電池や電池構成部品を収納できる円筒形状した中空部15を備え、中空部15の内側面の一横断面上に複数個の磁石2を配置した吸着部1a,1bを本体1の中心軸方向に異なる位置に少なくとも2段備えて、その吸着部1a,1bに電池構成部品を磁気吸着して保持できる扁平形電池用搬送治具にて電池構成部品を搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形電池などの製造工程における磁性体からなる電池構成部品を搬送するための搬送治具を、特に偏平形電池の搬送を効率よく搬送できるよう改良した扁平形電池の搬送治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリのバックアップや通信機器、時計等の駆動電源として、扁平形電池に代表されるコイン形電池あるいはボタン形電池等の円盤状で厚みの薄い電池が用いられている。これらの電子機器の主電源等として厳しい環境に耐えうる10年間保証という長期間の信頼性を保つことが可能なコイン形電池の需要が拡大する傾向にあり、コイン形電池においても製造過程で安定したばらつきの少ない高品質なものづくりが要求されている。特に電解液の注液量は、電池の長期間の保存性を確保するための保存特性を左右する重要な要素であり、バラツキが少ない注液量の厳しい精度としての管理基準が要求されている。 コイン形電池は、負極体と正極体とセパレータとの積層構造からなる電極体を収納した上ケースに非水電解液を注液した後、上ケースに下ケースを被せ、下ケースの開口部をかしめ封口して製造される。
【0003】
偏平形電池の搬送は、図8(a)に示す搬送治具本体71で内部にかしめ封口をした偏平形電池70を保持する電池用搬送治具により行われており、図8(b)に示す搬送治具本体71の中央部にある円筒形の内側面には、搬送治具本体71の横断面上に複数個の磁石72が備えられており、その磁束分布73が搬送治具本体71の中空部分の中心74に対して点対称になるように各磁石72を配置して、磁石72により偏平形電池70を保持して搬送する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−64496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献に示される従来技術では、封口後の電池電池構成部品を単体でしか搬送できず、1ヶの電池用搬送治具に同時に電池構成部品を収納して搬送することは困難であり、電池構成部品1つに対して搬送治具が1つ必要になることは生産性の向上の妨げになる他、特にコイン形電池では上ケースに下ケースを被せ下ケースの開口部をかしめ封口する前に、上ケースへ非水電解液を注液し高密度な活物質からなる電極体に非水電解液を含浸させるには長い時間が必要で、非水電解液を含浸させるため長い時間放置すると非水電解液は揮発性が高く、非水電解液の気化により非水電解液が蒸発し非水電解液量のバラツキや成分変化を招く。そこで非水電解液の蒸発を抑制するためには、直ぐに上ケースを覆うようにした下ケースを嵌め合わせる必要がある。
【0005】
しかし、非水電解液が十分に電極体に含浸されないうちに、上ケースと下ケースを嵌め合わせると含浸されていない非水電解液が上ケース外へ飛散して、コイン形電池の保存特性の要因である非水電解液の液量バラツキやコイン形電池の外観上の汚れが生じる。従来技術の電池搬送治具治具では非水電解液を注液した上ケースを搬送する際に非水電解液が蒸発してしまい、また上ケースに下ケースを被せることで電極体にまだ含浸されていない非水電解液が上ケースより外に飛散してしまう。
【0006】
本発明は上記従来の課題を鑑みて成されたもので、1つの搬送治具内に複数の電池構成部品を分離しながら収納して搬送することができ、特にコイン形電池での非水電解液を収納した上ケースに下ケースを分離しながら搬送できる。1つの搬送治具内で非水電解液を
収納した上ケースに下ケースで覆うことができ、非水電解液を電極体に含浸させるために長い時間放置しても揮発性高い非水電解液の蒸発を抑制できる偏平形電池用搬送治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、非磁性体材料からなる中空部を備える本体で内部に磁性体からなる電池や電池構成部品を収納して搬送する偏平形電池用の搬送治具であって、中空部の形状が円筒形で且つ、中空部の内側面の一横断面上に複数個の磁石を配置した吸着部を軸方向に異なる位置に少なくとも2段備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、扁平形電池用搬送治具の本体に備えた中空部の内側面の一横断面上には磁石が配置した吸着部を軸方向に異なる位置に少なくとも2段備えることにより、1つの搬送治具内に複数の電池構成部品を分離しながら保持して搬送することができる。さらに1段目の吸着部に電極体に非水電解液を注液した発電要素を収納した上ケースを保持し、上ケースを覆うように下ケースを2段目の吸着部に上ケースと分離した状態で保持することにより、非水電解液の蒸発を抑制しながら電池構成部品を搬送することが可能となる。さらに、1つの偏平形電池用搬送治具内の電極体に非水電解液を注液した発電要素を収納した上ケースに下ケースを覆い被せた状態で上ケースに収納した電極体に非水電解液を含浸させながら搬送することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の第1の発明においては、非磁性体材料からなる中空部を備える本体で内部に磁性体からなる電池や電池構成部品を収納して搬送する偏平形電池用の搬送治具であって、中空部の形状が円筒形で且つ、中空部の内側面の一横断面上に複数個の磁石を配置した吸着部を軸方向に異なる位置に少なくとも2段に備えたことにより、1つの偏平形電池用搬送治具内に複数の電池や電池構成部品を重なることなく分離しながらも保持して搬送することが可能となり、偏平形電池用搬送治具の1段目の吸着部に電極体に非水電解液を注液した電池発電要素を収納した上ケースを保持し、上ケースを覆うように下ケースを2段目の吸着部に上ケースと分離した状態で保持することにより非水電解液の蒸発を抑制し、非水電解液を電極体に含浸させながら電池構成部品を搬送することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の発明においては、吸着部が中空部を備える本体の中心点周りに等角度で交互にN極、S極と複数個の磁石を配置し構成したことにより、電池構成部品や電池を強い着磁力で保持することが可能となり、搬送途中に電池構成部品や電池の脱落や損傷なく搬送することが可能となる。
【0011】
本発明の第3の発明においては、吸着部に備えた磁石の配置が全ての段が同極となるように構成したことにより、上段の吸着部で保持された電池構成部品が同極のため下段の吸着部に吸い寄せられることなく、定位置に保持することが可能となる。
【0012】
本発明の第4の発明においては、吸着部に備えた磁石が中空部との間に隔壁部を設けたことにより、吸着部で保持された電池構成部品や電池の外周部分と吸着部との接触部分が直接に磁石と触れることがなく、電池構成部品や電池の外周部分に磁石によるキズ等の損傷を与えることがない。
【0013】
本発明の第5の発明においては、非磁性体材料からなる中空部を備える本体の軸方向に設けた1段目の吸着部に磁性体材料からなる電池構成部品を吸着し、2段目の吸着部に別の電池構成部品を吸着して搬送するように構成したことにより、1つの偏平形電池用搬送治具内に2ヶの電池や電池構成部品を分離して保持させながら搬送することが可能となり
、生産性の向上が図れる。
【0014】
本発明の第6の発明においては、非磁性体材料からなる中空部を備える本体の軸方向に設けた1段目の吸着部に発電要素を収納した電池構成部品を吸着し、2段目の吸着部に偏平形電池の皿形状をした電池構成部品を吸着して搬送するように構成したことにより、下ケースが蓋となり、上ケース内に注液された非水電解液の蒸発を抑制することが可能となる。
【0015】
本発明の第7の発明においては、非磁性体材料からなる中空部の形状が円筒形で且つ、中空部の内側面に複数個の磁石を配置した吸着部を2段備えた本体の外周面を円筒形にしたことにより、扁平形電池用搬送治具の搬送性が富み、生産性の向上が図れる。
【0016】
本発明の第8の発明においては、非磁性体材料からなる中空部の形状が円筒形で且つ、中空部の内側面に複数個の磁石を配置した吸着部を2段備えた本体の外周面を多角形にしたことにより、本体の外周面の平面部で位置決めすることが容易に行なわれ生産性の向上が図れる。
【0017】
本発明の第9の発明においては、本体の多角形である外周面の頂点をR形状に構成したことにより、扁平電池用搬送治具の搬送途中に引っかかることがなく搬送性が富み、生産性の向上が図れる。
【0018】
本発明の第10の発明においては、円筒形形状をした中空部の開口部が滑らかなR形状または面取り形状を有したことにより、中空部に電池構成部品や電池を収納する際、開口部のR形状または面取り形状が誘いとなり速やかに中空部に電池構成部品や電池を収納することが可能となる。
【0019】
本発明の第11の発明においては、磁石を配置した吸着部を具備した本体が上下に分離することにより、偏平形電池用搬送治具を分離させて単体のみで搬送ができ、電池構成部品を合体する際に偏平形電池用搬送治具の単体同士を合体させることで電池構成部品同士の合体の促進が可能となる。
【0020】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の偏平形電池用搬送治具を示す。偏平形電池用搬送治具4の本体1の中心に円筒形をした中空部15を設け、本体1の外周面16は円筒形をしている。また、中空部15の内側面は本体の中心軸3を中心として円周面上に外周面16から等角度で中空部15に向け放射状に穴を設け、円柱形の形をした磁石2が本体の中心軸3と磁石の中心軸17とが垂直になるようにし、且つ隣り合う磁石2の極がS極、N極と異極となるように挿入して接着剤で固定した吸着部1a、1bが設けてある。そのことで隣の磁石2との間に磁力線が走る構造となり、この磁束分布によって磁性体からなる電池や電池構成部品を傾くことなく偏平形電池用搬送治具4の搬送する面に対して水平に保持が可能となる。
【0021】
次いで、偏平形電池用搬送治具4は磁石2を中空部15の内側面に配置した1段目の吸着部1aと同様の形態を備えた2段目の吸着部1bとが上下2段で構成され、1段目の吸着部1aと2段目の吸着部1bの磁石2は同極となるよう配置されている。これにより1段目の吸着部1aに保持された電池構成部品が2段目の吸着部1bに磁力により引き寄せられることがなく、その場所に保持される。
【0022】
また、図2に示すように偏平形電池用治具4の1段目の吸着部1aに上ケース11を保持させ、2段目の吸着部1bには下ケース6を保持して搬送する。さらに、本体1の中空部15の開口部には面取り部18を備え、扁平形電池の下ケース6や上ケース11等の電
池構成部品や電池を挿入する際に中空部15の開口部に引っかかることなく挿入できる。なお、面取り部15の形状は滑らかなR形状でも挿入する際の効果は大きい。
【0023】
また、磁石2は円柱形に限定されることなく立方体や多角柱などのその他の形状の磁石も使用可能であり、挿入して接着した8個の磁石2はこれらに限定されることなく、磁石2の数は増減させても良い。さらに、偏平形電池用搬送治具4の中空部15の内側面と磁石2との間には隔壁部19を設け、電池構成部品が磁石2と直接触れない構成となっており、磁石2により電池構成部品が傷付かないよう保護を行なっている。
【0024】
また、図1には1段目の吸着部と2段目の吸着部bが2段重ね合わせた構成を示すが、これらに限定されることなく吸着部を本体の中心軸3の方向に2段以上に重ね合わせても良い。さらに本体1の外周面16を円筒形に限定されることなく、図3に示すように四角柱や多角柱(図示せず)であっても良く、扁平形電池用搬送治具20を構成している本体21の外周面26の頂点であるコーナー部23がR形状となるよう構成されている。円筒形状をした中空部25を備えた本体21には扁平形電池用搬送治具4で説明したように、極性を異なるように隣接した磁石22を配置した1段目の吸着部21aと2段目の吸着部21bを備えた構成となっている。
【0025】
また、図4に示すような扁平形電池用搬送治具30においては、中空部35を備えた扁平形電池用搬送治具30の本体31,32が上下に分離するよう構成され、図1に示したような磁石を配置した吸着部を上本体31に備え、下本体32にも吸着部が備わっている。上本体31に電池構成部品(図示せず)を収納しながら搬送し、下本体32にも電池構成部品(図示せず)を収納しながら搬送し、電池構成部品の合体が必要なときに上本体31と下本体32を接合して搬送する。なお、本体31と本体32の接合は嵌る込む嵌合を示したが、これに限定されない。
【0026】
ここで、本発明の実施の形態に使用した扁平形電池について図面を参照しながら説明する。扁平形電池にはコイン形一次電池やコイン形二次電池等があるが、ここでは扁平形電池に代表される一つであるコイン形のリチウムイオン二次電池(以下、扁平形二次電池と称する)の全体構成を示した断面図を図7に示す。負極体10と正極体13の間にセパレータ14を介在して積層した電極体5と非水電解液(図示せず)とを収納した上ケース11と下ケース6との間には絶縁ガスケット12が介在され、下ケース6の側面を縮径および下ケース6の開口部を内側に折り曲げて封口し、絶縁ガスケット12を圧縮して気密性の高い扁平形二次電池7が成形される。
【0027】
扁平形二次電池7は、電極体5を構成しているペレット状の正極体13とペレット状の負極体10と正極体13および負極体10の間に介在されたセパレータ14とからなり、正極体13と負極体10の間でリチウムイオンを移動させる非水電解液と電極体5とを収納する上ケース11と上ケース11の電極体5が収納された空間を密閉する上ケース11の開口部の周縁部にある絶縁ガスケット12と上ケース11に被せられ封口する下ケース6からなる。さらに上ケース11の開口部の外周面と絶縁ガスケット12の内周面および下ケース6の開口部の内周面との所定の位置に成膜されているシール膜(図示せず)とを備えて、より高い気密性を発揮している。
【0028】
正極体13は、ここでは、リチウム・マンガン酸化合物やリチウム・コバルト酸化合物等を用いるがこれに限定されるものではなく、例えばリチウム複合酸化物、金属硫化物、金属酸化物、金属セレン化合物等の何れか一種以上を混合して用いることも可能である。
【0029】
また、負極体10は、負極活物質となる板状の金属リチウムやリチウム合金を打ち抜いてペレット状に成形している。負極体10は、ペレット状の金属リチウムと、リチウムと
化合可能な金属若しくは化合物を貼り合わせた状態で扁平形二次電池7の内部に収納し、放置しておくことでリチウム合金化したものを負極活物質として用いる。
【0030】
次に、セパレータ14は、正極体13と負極体10との間に介在して遮断し、両極材の接触による短絡を防止しつつ非水電解液中のリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ14は、繊維樹脂状により形成された不織布であり、空孔率が10%〜50%、厚みが40μm〜200μmのものを用いる。ここでは、ポリフェニレンサルファイトを用いるが、これに限定されるものではなく、ポリエチレンテレフタート、ポリイミド、ポリアミド等が上げられ、何れか一種以上を用いることも可能である。非水電解液には、EMC、ペンタグライム、テトラグライム等が上げられ、これらのうちの何れか一種以上を用いる。
【0031】
また、下ケース6は、導電性金属からなる容器であり、正極体13と接触することで扁平形二次電池7の外部正極となる。具体的には、下ケース6には、ステンレス等からなる金属製の容器を用いるが、これに限定されるものではなく、例えばステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属を複数積層させた状態の金属製の容器等を用いることも可能である。
【0032】
上ケース11は、電極体5を収納する導電性金属からなる皿形状をした容器であり、負極体10と接することで扁平形二次電池7の外部負極となる。上ケース11には、アルミニウムとステンレスとが貼り合わされたクラッド材等を用い、第1の金属層がアルミニウムとなるように形成する。負極体10が収納される底面には、ペレット状の金属リチウムを貼り付け、二次電池の組立後にリチウム合金が形成されせる。
【0033】
また、絶縁ガスケット12は、円環状に形成されており、下ケース6と上ケース11とを封口した際に下ケース6と上ケース11との間に生じる隙間に嵌め込まれるように取り付けられることで上記隙間を封止する。この絶縁ガスケット12は、ポリフェニレンサルファイト樹脂を用いるが、これに限定されることはなく、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリチレンテレフタート樹脂、ポリアリレート樹脂等も用いることができ、何れか一種又は複数種を混合して用いてもよい。
【0034】
下ケース6の内周側面や絶縁ガスケット12の内周側面とには、シール膜としてシール剤(図示せず)が塗布されており、下ケース6や上ケース11と絶縁ガスケット12との間に生じる微小な隙間に入りこむことにより、扁平形二次電池7の内部空間の密閉性をより高めている。シール剤には具体的には、フッ素系の樹脂を用い、シール剤を調製する溶媒には、上述したフッ素系の樹脂を溶解させるもので、具体的にはシクロヘキサン等を用いる。
【0035】
上記電池構成部品からなる扁平形二次電池において、まず図5に示すように絶縁ガスケット12を周縁部に具備した上ケース11に負極体10を挿入し、その負極体10の上にセパレータ14が載せられ、正極体13が挿入され積層して電極体5が構成される。電極体5を収納した上ケース11を図2に示すように、扁平形電池用搬送治具の中空部15の1段目の吸着部1aに磁気吸着して保持する。なお、この扁平形電池用搬送治具4内で負極体10を貼り付けられた周縁部に絶縁ガスケット12を具備した上ケース11を保持し、セパレータ14、正極体13を挿入し積層して電極体5を構成しても良い。
【0036】
次に電極体5を収納した上ケース11に非水電解液を注液し、電極体5に含浸する時間放置する。この含浸時間中に非水電解液が気化して蒸発するのを防ぐため図6に示した下ケース6を図2に示すように、扁平形電池用搬送治具4の中空部15の2段目の吸着部1bに磁気吸着して覆い被せ非水電解液の蒸発を抑制しながら搬送する。含浸が完了した後
に下ケース6を上ケース11に嵌合させて下ケース6の開口部を内側に折り曲げて封口し、絶縁ガスケット12を圧縮して気密性の高い扁平形二次電池が成形される。次に以下、本発明の実施例に関わる扁平形二次電池の製造方法について図を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0037】
図7に示すような外径が4mm、高さが1.4mmの偏平形二次電池7の電池構成部品である上ケース11の周縁部に絶縁ガスケット12を組み付け、リチウム金属からなる負極体10を上ケース11の内面底に貼り付けた上ケース11を図1に示す扁平形電池用搬送治具4の中空部15にある磁石2を配置した1段目の吸着部1aに保持した。次にセパレータ14を負極体10の上に載せた後、リチウム・コバルト酸化合物からなる正極体13を挿入に電極体5を構成した。
【0038】
さらに電極体5を収納した上ケース11に3mgの非水電解液を注液した後、下ケース6を上ケース11の上に分離した状態で保持するように2段目の吸着部1bに保持して被せ、図2に示すような状態で5分間の含浸を行なった非水電解液と電極体5からなる発電要素を収納した上ケース11を実施例1とした。
【実施例2】
【0039】
実施例1と同様な扁平形2次電池を用い、図4に示す扁平形電池用搬送治具30を本体31と本体32に分離した状態にし、周縁部に絶縁ガスケット12を組み付けた上ケース11にリチウム金属からなる負極体10を上ケース11の内面底に貼り付け、その上ケース11を本体32の中空部35内に保持する。次にセパレータ14を負極体10の上に載せた後、リチウム・コバルト酸化合物からなる正極体13を積載し電極体5を構成した。
【0040】
また、本体31の中空部35内に下ケース6を挿入して保持する。次に電極体5を収納した上ケース11に3mgの非水電解液を注液した後、下ケース6を収納した本体31を非水電解液と電極体5からなる発電要素を収納した上ケース11を保持している本体32の上に嵌合部を重ね結合して5分間の含浸を行なった上ケース11を実施例2とした。
【0041】
(比較例1)
図8に示す電池搬送用治具71に、実施例1と同様な偏平形2次電池を用い、周縁部に絶縁ガスケット12を組み付けた上ケース11にリチウム金属からなる負極体10を上ケース11の内面底に貼り付け、その上ケースを電池搬送用治具71に収納しセパレータ14を負極体10の上に載せた後、リチウム・コバルト酸化合物からなる正極体13を積載し電極体5を構成した。次に電極体5を収納した上ケース11に3mgの非水電解液を注液した後、5分間の含浸を行なった上ケース11を比較例1とした。
【0042】
上記実施例および比較例の同じ非水電解液の含浸時間における非水電解液の蒸発による非水電解液の損失を比較するために、それぞれ100個の上ケースに実施し下記の評価を行った結果を(表1)に示す。
【0043】
(表1)に示した非水電解液の減少率は、3mgの非水電解液を注液した直後の上ケースの重量と非水電解液を注液した後に5分間の含浸時間を経過した上ケースの重量を測定し、3mgの非水電解液を注液した直後の上ケースの重量と5分間の含浸時間を経過した上ケースの重量との差を蒸発した非水電解液量とし、その蒸発した非水電解液量を注液した3mgの非水電解液量との比率として表した。
【0044】
【表1】

(表1)より実施例1と実施例2の非水電解液を注液した後、偏平形電池用搬送治具を用いて発電要素を収納した上ケースに下ケースを覆うように被せて含浸した場合の非水電解液の減少率は0.5%以下であった。次いで比較例1の比較例1の電池用搬送治具を用いた場合の非水電解液の減少率は0.5%以上であり、これは実施例の偏平形電池用搬送治具を用いた場合、注液後の上ケースを下ケースで覆ったために、正極体やセパレータに含浸されていない非水電解液の蒸発を抑制できることで、含浸しながら搬送した後に非水電解液量のバラツキを抑制できる。
【0045】
以上より、本発明の偏平形電池用搬送治具を用い、注液した後の発電要素を収納した上ケースを覆うように下ケースを被せることにより、含浸および含浸しながらの搬送中に生じる非水電解液の蒸発を抑制することが可能となり、かしめ封口後の非水電解液量のバラツキを低減させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、非磁性体からなる円筒形をした中空部に磁性体からなる電池や電池構成部品を収納して搬送する偏平形電池用搬送治具に具備した中空部の内側面の一横断面上に複数個の磁石を配置した吸着部を少なくとも2段に備えたことにより、1ヶの偏平形電池搬送治具で複数個の電池や電池構成部品を吸着して保持させ搬送することが可能となり、特に注液直後の上ケースを覆うように下ケースを嵌合せずに分離した状態で保持しすることで非水電解液の蒸発を抑制する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態における偏平形電池搬送用治具の斜視図
【図2】本発明の発電要素を収納した上ケースと下ケースを保持した偏平形電池搬送用治具の模式断面図
【図3】本発明の別の一実施形態における偏平形電池搬送用治具の斜視図
【図4】本発明の一実施形態における分離型の偏平形電池搬送用治具の斜視図
【図5】本発明の一実施形態における電極体を収納した上ケースの断面図
【図6】同実施例における下ケースの断面図
【図7】同実施例における偏平形二次電池の断面図
【図8】(a)従来の電池用搬送治具の縦断面図、(b)同電池用搬送治具の横断面図
【符号の説明】
【0048】
1 本体
1a 1段目の吸着部
1b 2段目の吸着部
2 磁石
3 本体の中心軸
4 偏平形電池用搬送治具
5 電極体
6 下ケース
7 偏平形二次電池
10 負極体
11 上ケース
12 絶縁ガスケット
13 正極体
14 セパレータ
15 中空部
16 外周面
17 磁石の中心軸
18 面取り部
19 隔離部
20 扁平形電池用搬送治具
21 本体
21a 1段目の吸着部
21b 2段目の吸着部
22 磁石
23 コーナー部
25 中空部
26 外周面
30 扁平形電池用搬送治具
31 上本体
32 下本体
35 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体材料からなる中空部を備える本体で内部に磁性体からなる電池や電池構成部品を収納して搬送する偏平形電池用の搬送治具であって、前記中空部の形状が円筒形で且つ、中空部の内側面の一横断面上に複数個の磁石を配置した吸着部を軸方向に異なる位置に少なくとも2段備えたことを特徴とする偏平形電池用搬送治具。
【請求項2】
前記吸着部は、中空部を備える本体の中心点周りに等角度で交互にN極、S極と複数個の磁石を配置し構成したことを特徴とする請求項1記載の偏平形電池用搬送治具。
【請求項3】
前記吸着部に備えた磁石の配置は、全ての段が同極となるように構成したことを特徴とする請求項2記載の偏平形電池用搬送治具。
【請求項4】
前記吸着部に備えた磁石が中空部との間に隔壁部を設けたことを特徴とする請求項2記載の偏平形電池用搬送治具。
【請求項5】
非磁性体材料からなる中空部を備える本体の軸方向に設けた1段目の吸着部に磁性体材料からなる電池構成部品を吸着し、2段目の吸着部に別の磁性体材料からなる電池構成部品を吸着して搬送するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の偏平形電池用搬送治具。
【請求項6】
非磁性体材料からなる中空部を備える本体の軸方向に設けた1段目の吸着部に発電要素を収納した電池構成部品を吸着し、2段目の吸着部に偏平形電池の皿形状をした電池構成部品を吸着して搬送するように構成したことを特徴とする請求項5に記載の偏平形電池用搬送治具。
【請求項7】
非磁性体材料からなる中空部の形状が円筒形で且つ、中空部の内側面に複数個の磁石を配置した吸着部を2段備えた本体の外周面を円筒形にしたことを特徴とする請求項1記載の偏平形電池用搬送治具。
【請求項8】
非磁性体材料からなる中空部の形状が円筒形で且つ、中空部の内側面に複数個の磁石を配置した吸着部を2段備えた本体の外周面を多角形にしたことを特徴とする請求項1記載の偏平形電池用搬送治具。
【請求項9】
前記本体の多角形である外周面の頂点をR形状に構成したことを特徴とする請求項8記載の偏平形電池用搬送治具。
【請求項10】
前記円筒形形状をした中空部の開口部が滑らかなR形状または面取り形状を有したことを特徴とする請求項1記載の偏平形電池用搬送治具。
【請求項11】
磁石を配置した吸着部を具備した本体が上下に分離することを特徴とする請求項1記載の偏平形電池用搬送治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−103097(P2008−103097A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282414(P2006−282414)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】