説明

偏心荷重誤差調節装置を有するカプセル封入された秤量セル

【課題】偏心荷重精度に関して欠点のないカプセル封入された秤量セルを有する重量計器を提供する。
【解決手段】重量計器100は、秤量セル110、および可撓性の管形状のカプセル封止体118を含む。秤量セルは、平行案内機構111と少なくとも1つの測定変換器117を有する。カプセル封止体の一方の端部119は、固定平行四辺形脚部114に取り付けられ、他方の端部120は可動平行四辺形脚部115に取り付けられ、平行案内機構および測定変換器は外側からの汚れおよび湿気に対して保護される。重量計器は調整領域121を有する平行案内機構を有し、該調整領域によって、上部平行案内部材113の少なくとも1つの撓みピボット116と下部平行案内部材112の撓みピボットとの間の距離が調整される。この調整領域は、少なくとも1つの調整設定領域127に機械的に連結され、後者は、カプセル封止体の外側に配置され、該調整領域を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量計器、特にカプセル封入された秤量セルに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの重量計器は、平行案内機構を有する。平行案内機構は、少なくとも1つの固定平行四辺形脚部および1つの可動平行四辺形脚部、ならびに少なくとも1つの上部平行案内部材および1つの下部平行案内部材を含む。可動平行四辺形脚部によって垂直移動の際に支持され案内される秤量皿が秤量荷重を受け止め、秤量皿上の荷重によって加えられる力が、直接に、または力低減レバー機構を通して測定変換器に伝達される。平行案内機構、力伝達システム、および測定変換器は、実質的に重量計器の秤量セルを構成する。現況技術は、例えば、ひずみゲージを有する秤量セル、振動弦を有する秤量セル、電磁力補償(EMFC)を有する秤量セルなどのさまざまな動作原理の秤量セルを含む。
【0003】
EMFC秤量セルでは、荷重の重さは、直接に、または1つもしくは複数の力伝達レバーを通して電気信号を発生する電気機械測定変換器に伝達され、この電気信号は、秤量荷重を表わし、電子重み付け処理システムによってさらに処理され、視覚的に表示される。
【0004】
ひずみ変換器を有する秤量セルでは、弾性的に変形可能な本体がひずみゲージを備えている。変形可能な本体は、加えられる荷重によって弾性的にその形状を変化させる。多くの場合、この変形可能な本体は、平行四辺形状の測定要素として、詳細には、特別に形成される曲げゾーンを有する平行案内機構として構成され、それによって、画定された変形ゾーンが確立される。ひずみゲージは、これらの変形ゾーンまたは曲げゾーンの領域に配置される。可動平行四辺形脚部上の荷重による変形可能な本体の形状変化の結果として、ひずみゲージは、伸長または圧縮の状態にさらされ、それにより、可動平行四辺形脚部の無負荷状態に比べてひずみゲージの電気抵抗の変化が生じ、この抵抗変化が、加えられる荷重の大きさに対する評価の基準になる。
【0005】
弦振動秤量セルでは、機械的構成全体がEMFC−およびひずみゲージ秤量セルに大幅に類似し、その結果、振動弦トランスデューサは、電磁トランスデューサの代わりに使用されるという差異が生じる。秤量荷重は、振動弦の引張り力に影響を及ぼし、その周波数変化が、加えられる荷重に対する評価の基準になる。
【0006】
平行案内機構によって拘束される秤量皿を備えるすべての重量計器が共通に有する、上述の説明の秤量セルの1つの特徴のある特性は、秤量皿から変換器に伝達される重量力が、一般に、秤量荷重が秤量皿の中心に配置されるかまたは縁部に向かって中心をはずれて配置されるかどうかに関して僅かな依存性を示すという性質である。このことは、重量計器すなわち秤が1つおよび同一の秤量荷重に対して異なる量の重量を示し、したがって、荷重が秤量皿に配置された場所に依存するという望ましくない結果を有する場合がある。秤量荷重が偏心して秤量皿に配置される場合に生じるこれらのずれは、通常、偏心荷重誤差(あるいはまた、シフト誤差、またはコーナー荷重誤差)と呼ばれる。
【0007】
平行四辺形状の測定要素または平行案内機構、すなわち、互いに平行であり実質的に水平である2つの平行案内部材によって平行移動の際に秤量皿支持体を案内する機構において、偏心荷重誤差は、平行案内部材が理想から、すなわち完全に平行な位置合わせから僅かに外れるという事実により最初に生じる。偏心荷重誤差の相対的大きさ、すなわち、観察される秤量誤差と使用されているテストウェイトの大きさとの間の比率は、偏心荷重誤差を生じた相対的な幾何学的ずれにほぼ対応する。識別は、テストウェイトが秤の偏心荷重テストの際に秤量皿上で移動する方向に従って、平行案内機構の長手方向の偏心荷重誤差と横方向の偏心荷重誤差との間で行われる。長手方向の偏心荷重誤差は、固定平行四辺形脚部に連結される端部における平行案内部材間の垂直距離が、可動平行四辺形脚部に連結される反対側の端部における距離に必ずしも等しくない場合に生じる。他方では、横方向の偏心荷重誤差は、2つの平行案内部材が互いに対して僅かに捻られる場合、すなわち平行案内部材間の距離がこの平行案内部材の幅に沿って変化する場合に生じる。
【0008】
例えば、EP 0 990 880 A2、特開2002365125、およびWO 2005/031286などの最先端技術の文献では、偏心荷重誤差を調整するためのデバイスを含む、秤量セルの平行案内機構が開示されている。これらの秤量セルの調整機構は、固定平行四辺形脚部が平行案内部材の取付けの領域間で少なくとも1つの変形ゾーンを有する設計概念に従うものであり、この変形ゾーンは、その向きが平行案内機構の長手方向に直角である傾斜軸が規定されるように構成される。調整ねじによって互いに抗して取付けの領域を傾斜することによって、固定平行四辺形脚部に連結される上部平行案内部材の端部は、上昇され、ならびに下降され得る。これにより、長手方向の偏心荷重誤差を補正できるようにする。調整機構の設計に応じて、傾斜軸の傾斜角、すなわち取付けの領域の横方向傾斜が同様に調整されることもでき、それにより、偏心荷重誤差を秤量セルの横方向について調整できるようにするであろう。
【0009】
偏心荷重誤差の調整は、秤量セルの平行案内機構が自由にアクセス可能である限り行われ得る。しかし、米国特許第5,895,894号、または米国特許第4,957,177号に開示されるように、秤量セルが再び開かれることができないカプセル封止体に囲まれる場合、偏心荷重誤差の調整はもはや不可能である。米国特許第4,957,177号に詳細に説明される付加的な問題として、ベローズの形のカプセル封止体自体が偏心荷重精度または偏心荷重誤差に影響を持つ場合がある。この結果として、機械的に同一のカプセル封入された秤量セルは、たとえその平行案内機構がカプセル封止体を取り付ける前に調整されたとしても、その偏心荷重誤差について互いに異なるであろう。残された唯一の可能性は、変換器に接続される信号処理ユニットの費用のかかる測定を通してこれらの変化を補償することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP 0 990 880 A2
【特許文献2】特開2002365125
【特許文献3】WO 2005/031286
【特許文献4】米国特許第5,895,894号
【特許文献5】米国特許第4,957,177号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、上記で説明した偏心荷重精度に関して欠点のないカプセル封入された秤量セルを有する重量計器を作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1に記載の重量計器によって満たされる。
重量計器は、秤量セルおよび可撓性の管形状のカプセル封止体を備える。秤量セルは、平行案内機構および少なくとも1つの測定変換器を備える。平行案内機構は、垂直移動の際に案内され、2つの平行案内部材によって固定平行四辺形脚部に連結される可動平行四辺形脚部を含み、撓みピボットは、平行案内部材と平行四辺形脚部との間の継手のところに形成され、または配置される。管形状のカプセル封止体の一方の端部は、固定平行四辺形脚部に取り付けられ、管形状のカプセル封止体の他方の端部は、可動平行四辺形脚部に取り付けられ、その結果、少なくとも平行案内機構および測定変換器は、カプセル封止体によって囲まれ、したがって、カプセル封止体の外側から、または重量計器の環境からの汚れおよび湿気に対して保護される。したがって、カプセル封止体は、測定変換器および平行案内部材が配置される密閉して密封される内部空間を有する。
【0013】
少なくとも1つの測定変換器は、カプセル封止体の内側、ならびにカプセル封止体の外側に配置され得る信号処理ユニットに接続される。カプセル封入された秤量セルをより広く交換可能にするために、カプセル封止体の内部に、例えば回路モジュールなどの信号処理要素の一部のみを配置することもできる。この回路モジュールは、少なくとも1つの測定変換器によって伝えられるアナログ信号を変換するための、例えばメモリモジュールおよび変換回路のみを含む。メモリモジュールおよび変換回路は、重量計器に属しかつカプセル封止体の外側に配置されるプロセッサユニットに接続リードによって接続され得る。この配置の場合、プロセッサユニットのプロセッサによって放散される熱は、カプセル封止体によって密閉して密封される狭く制限された内部空間の外側に保たれ得る。したがって、内部空間の温度上昇が大部分回避される。さらにまた、メモリモジュールは、プロセッサユニットによって呼び出され得る補償データを格納する働きをし、それを通して秤量セルの変換される原信号が補正され得る。これらの補償データは、それぞれの個々の秤量セルに特定され、製造公差によりセルごとに変化し、工場での最終検査の間に各秤量セルに対して決定されるデータである。この設計概念により、カプセル封入された秤量セルは、問題なく、重量計器全体を再調整する必要がなく交換され得る。いくつかの場合には、重量計器はまた、入力ユニットおよび/または表示ユニットを含むこともできる。
【0014】
本発明によれば、上記の説明の重量計器は、その可動平行四辺形脚部および/またはその固定平行四辺形脚部において形成される調整領域を備える平行案内機構を有し、この調整領域によって、上部平行案内部材の少なくとも1つの撓みピボットと下部平行案内部材の撓みピボットとの間の距離が調整される。この調整領域は、少なくとも1つの調整設定領域に機械的に連結され、調整設定領域は、カプセル封止体の外側に配置され、該調整領域を変化させる。
【0015】
この設計概念に基づいて、偏心荷重誤差は、カプセル封止体によって囲まれ、したがって直接にアクセスできない平行案内機構において調整され得る。本発明は、例えば可動平行四辺形脚部の変位の結果として生じる非対称に分布される反力の影響などのカプセル封止体が偏心荷重精度に及ぼす機械的影響を、調整の際に含み得るという特別な利点を有する。たとえカプセル封止体の塑性変形が偏心荷重誤差に及ぼす影響の変化があっても、偏心荷重誤差は再調整され得る。
【0016】
調整領域は、さまざまな形状構成を有することができる。例として、調整領域は、可動平行四辺形脚部または固定平行四辺形脚部を水平方向に横切る少なくとも1つの切開部によって形成される少なくとも1つの変形ゾーンを有することができる。力またはトルクを加えることによって、調整領域は、変形ゾーンによって画定されかつ平行案内機構の横方向に方向づけられるピボット軸の周りに傾斜され得る。調整領域が傾斜する結果として、調整領域で終端する平行案内部材のうちの1つの端部は、垂直方向に永久変位を受ける。垂直方向のこの変位の故に、2つの平行四辺形脚部における上部撓みピボットと下部撓みピボットとの間の距離、より詳細には、それぞれの枢動軸の間の距離は、互いに正確に等しくなり、それによって、平行案内機構の長手方向の偏心荷重誤差は実質的に補正され得る。
【0017】
本説明の文脈の範囲内では、「上部の」、「下部の」、「水平の」、「垂直の」等のような表現は、常に、その通常動作状態における平行案内機構の向き、すなわち重力の方向を指す。
【0018】
変形ゾーンは切開部によって形成されるが、このことは、変形ゾーンが、必ず固定平行四辺形脚部および/または可動平行四辺形脚部からモノリシックに刻んで造られなければならないということを意味するものではない。また、変形ゾーンならびに平行四辺形脚部は、複数の組付構成部品から成ることもできる。しかし、異なる材料の使用による平行案内機構の温度に関連する応力の問題を回避するために、平行四辺形脚部は、フライス削り、のこ引き、平削り、穴あけ、旋削、切削、侵食、または他の加工方法によって製造される切開部を有する、すなわち少なくとも1つの変形ゾーンを有するモノリシック構成であることが好ましい。
【0019】
したがって、調整領域を形成する切開部は、固定平行四辺形脚部および/または可動平行四辺形脚部の少なくとも1つの適切な位置において材料の断面積を減少させる。「適切な位置」とは、平行案内部材が互いに対して調整できること、例えば、少なくとも1つの切開部が上部平行案内部材と下部平行案内部材との間に配置されることを意味する。
【0020】
平行四辺形脚部は、上部平行案内部材および下部平行案内部材を連結する働きをするすべての部品を含み、その結果、平行案内部材は互いに固定された関係に、より詳細には互いから一定の距離のところに保たれる。
【0021】
平行案内機構の特別な実施形態では、変形ゾーンは、調整設定領域に調整力または調整トルクを加えることによって制御された塑性変形を受けることができる。少なくとも1つの変形ゾーンの塑性変形の場合、互いに対して平行案内部材の目標とする永久的な位置調整を実現することができる。したがって、偏心荷重誤差の調整は、ねじ、楔、プレート等のような固定要素を用いて調整領域を全く固定することなく、相変わらず保存される。しかし、カプセル封入された秤量セルの設計によっては、カプセル封止体に抗する衝撃力が平行案内システムに加わって調整できなくなる恐れがあるので、固定を行うことが好ましい。
【0022】
第1の実施形態の好ましいさらなる展開では、調整領域は、調整領域で終端する平行案内部材の垂直に調整可能な端部でのさらなる切込みによって分割され、この切込みは、可動平行四辺形脚部または固定平行四辺形脚部の垂直長手方向の正中面に通じて、撓みピボットまで延在する。しかし、撓みピボット自体は分割されない。さらなる切込みの結果として、別個の変形ゾーンを有する2つの別個の調整領域は、互いに隣接して形成され、したがって、
・一方では、平行力または平行トルクを加え、それによって、2つの隣接する別個の調整領域に対して平行な傾斜変位を与えることによって、弾性撓みピボットの永久的な平行垂直調整が行われることができ、それによって、平行案内機構の長手方向の偏心荷重誤差が補正されることができ、
・他方では、反平行力または反平行トルクを加え、それによって、上記調整領域に対して対向する横傾斜変位を与えることによって、平行案内部材の調整可能な端部の永久的なねじれ歪がもたらされることができ、それによって、平行案内機構の横方向の偏心荷重誤差が補正され得る。
【0023】
この設計は、撓みピボットの領域にひずみゲージを備える平行四辺形状の測定要素に特に適切である。
2つの調整領域についての平行調整、すなわち等しい大きさと等しい方向の調整は、平行案内機構の長手方向の偏心荷重誤差に最初に影響を及ぼし、一方、反平行調整、すなわち等しい大きさであるが反対方向の調整は、平行案内機構の横方向の偏心荷重誤差に最初に影響を及ぼすであろうということは、一般に、有効なステートメントである。しかし、この2つの方向の間で多少のクロスオーバー効果がある場合があり、その結果、平行調整は、横方向の偏心荷重誤差に軽微な影響を及ぼすこともあり、また、反平行調整は、長手方向の偏心荷重誤差に軽微な影響を及ぼすこともある。
【0024】
平行案内部材のねじれ変形を容易にする付加的な手段として、および高分解能重量計器のための平行案内機構の好ましい解法として、調整領域で終端する平行案内部材の垂直に調整可能な端部における撓みピボットは、平行案内部材までさらなる切込みを続けることによって分割され、それによって、撓みピボットは、調整領域のように2つに分割される。しかし、撓みピボットはまた、並んで位置する2つの別個の撓みピボットに穿孔を使って分割されることができ、さらなる切込みはこの穿孔に通じることができる。
【0025】
調整領域を調整設定領域と連結する最も簡単な方法は、例えば、これらの領域の間に少なくとも2つのレバーアームを配置することである。この場合、調整設定領域は、カプセル封止体から突出するレバー部分を含む。これらのレバーアームのうちの1つは、秤量皿、または支持構造体に連結する取り付け領域のための連結体を含むことができる。他のレバーアームのところにまたはレバーアームの間に、調整ツールが挿入され得る少なくとも1つの穴、あるいは、ねじドライバーまたはレンチを係合するための少なくとも1つの適切な面形成部、調整ねじ、調整ツール、あるいは調整楔がある場合がある。調整領域が固定平行四辺形脚部または可動平行四辺形脚部に形成されるかどうかに拘わらず、このレバーのうちの一方は、調整ゾーンへの力またはトルク、および関連する変位の導入に常に役立ち、一方、2つのレバーのうちの他方は、この力またはトルクの反力を常に吸収し、したがって固定された位置に調整領域の一部分を保持する働きをする。この方法でのみ、調整領域を変化させること、すなわちカプセル封止体の内側で調整領域の下方部に対して調整領域の上方部を傾斜することが可能である。
【0026】
本発明によれば、両方のレバーはカプセル封止体の壁を通過する。互いに対してレバーのピボット運動を可能にするために、壁は、少なくともレバーのうちの1つの領域においてある程度の弾性を有する必要があり、さもなければレバーの間で角度を変化することができないことになるからである。カプセル封止体がゴム、または適切な軟質の弾性合成材料から作られる場合には、その固有の弾性は、レバーが互いに対して枢動することができるのに十分であり、それによって、カプセル封止体は、僅かに歪められるであろう。
【0027】
カプセル封止体が、例えばステンレス鋼から作られる場合には、レバー間でピボット運動を可能にするように適切な設計を選択することが必要であろう。
カプセル封止体は、端部分と管形状の中間部分との間の気密接合部を伴う、管形状の中間部分、第1の端部分、および第2の端部分を有することが好ましい。カプセル封止体による有害な干渉なしに可動平行四辺形脚部の変位を可能にするために(カプセル封止体の弾性ばね特性)、カプセル封止体は、ベローズの形に形成される中間部分を有することが好ましい。第1の端部分は、可動平行四辺形脚部に気密に連結され、第2の端部分は、固定平行四辺形脚部に気密に連結される。この2つの端部分は薄肉の平坦なプレートであるので、これらは容易に歪められ、特に曲げられ、反らされ得る。
【0028】
偏心荷重誤差を調整する結果として生じるカプセル封止体の歪みを最小限にするために、変形ゾーンは、カプセル封止体の端部分を含む平面に配置され得る。端部分は、曲げられ同時に圧縮されるのではなくて、曲げられるのみであるので、カプセル封止体の望ましくない応力は、それによって最小限に保たれ得る。
【0029】
端部分が少なくとも1つの可撓性波形部分を含む場合には、カプセル封止体の望ましくない応力がさらにより小さい程度に生じるであろう。この可撓性波形部分の場合、一方では、変形の領域が局部的に限定され、他方では、可撓性波形部分の適切な設計の場合には、調整によりハウジング内に生じる材料応力が最小限まで低減される。
【0030】
上述の実施形態を実際に実現することは確かに可能であるが、これらは高い製造コストがかかる。例えば、カプセル封止体の内部空間が密封シールされるためには各レバーはそれだけで、ハウジングを通してレバーの通路においてハウジングに連結されなければならない。そのうえ、カプセル封止体に可撓性波形部分を型押しすることは、多くの場合、付加的な労力を必要とする。加えて、カプセル封止体に残る応力は、重量計器の測定結果の精度に影響を及ぼす場合もあり、経時的に変化する場合もある。
【0031】
この問題を回避するために、好ましくは、調整領域で変化を形作るために、カプセル封止体のいかなる急な曲げ、圧縮、伸長、または反りも必要としない解法を目指すべきである。したがって、本発明のさらなる実施形態では、調整領域は、少なくとも1つの膝レバーを含む。2つの膝レバー部材は、膝継手を通して互いに枢支的に一方の端部で連結され、一方、それらの他方の端部は、撓みピボットの近くに配置され、調整領域を含む平行四辺形脚部に枢支的に連結される。さらに、カプセル封止体の外側に配置される調整設定領域は、伝達要素を通して膝継手に連結される。この調整設定領域および伝達要素の場合、可動平行四辺形脚部に対する膝継手の位置は変化されることができ、したがって、膝レバーによって、上部平行案内部材の撓みピボットと下部平行案内部材の撓みピボットとの間の距離は、調整領域を広げまたは縮めることによって変化され、調整され得る。
【0032】
調整プロセスを容易にするために、無調整状態における平行四辺形脚部の一方についての撓みピボット間の距離は、他方の平行四辺形脚部の撓みピボット間の距離よりも大きい場合がある。このことは、常に調整を行うことを必要とするが、調整領域のみを一方向に変位する必要があり、したがって、調整設定領域を一方向にのみ移動する必要があるという利点を有する。
【0033】
本発明の平行案内機構の詳細は、次の概観により図面を参照してより具体的にあとで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1A】図1Aは、長手方向にのみ偏心荷重誤差の調整が可能である調整領域を有する第1の実施形態において、側面からの断面図で重量計器を示す図である。
【図1B】図1Bは、上方からの断面図で図1Aの重量計器を示す図である。
【図2A】図2Aは、長手方向、および横方向に偏心荷重誤差の調整が可能である調整領域を有する第2の実施形態において、側面からの断面図で重量計器を示す図である。
【図2B】図2Bは、上方からの断面図で図2Aの重量計器を示す図である。
【図3A】図3Aは、調整設定領域がカプセル封止体の中に形成される第3の実施形態において、側面からの断面図で重量計器を示す図である。
【図3B】図3Bは、上方からの断面図で図3Aの重量計器を示す図である。
【図4A】図4Aは、第3の実施形態に大いに類似するが、カプセル封止体の1つの端部分に可撓性波形部分を有する第4の実施形態において、側面からの断面図で重量計器を示す図である。
【図4B】図4Bは、上方からの断面図で図4Aの重量計器を示す図である。
【図4C】図4Cは、可撓性波形部分を備える図4Aおよび図4Bの重量計器の端部分の平面図である。
【図5A】図5Aは、2つの膝レバーを備える調整領域を有する第5の実施形態において、側面からの断面図で重量計器を示す図である。
【図5B】図5Bは、上方からの断面図で図5Aの重量計器を示す図である。
【図6】第6の実施形態による重量計器に調整領域を備える部分の三次元表現を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1Aは、第1の実施形態において、側面からの断面図で重量計器100を示す。重量計器100は、秤量セル110、回路モジュール130、プロセッサモジュール140、および入力/出力ユニット150を含む。秤量セル110は、平行案内機構111を有し、この平行案内機構111の固定平行四辺形脚部114は、固い地盤199の上の支持体198によって取り付けられる。秤量セル110は、例えば秤量皿のような荷重受け197に連結される可動平行四辺形脚部115をさらに含む。可動平行四辺形脚部115は、垂直移動の際に案内され、上部平行案内部材113および下部平行案内部材112によって固定平行四辺形脚部114に連結される。撓みピボット116は、平行案内部材112および平行案内部材113と平行四辺形脚部114および平行四辺形脚部115との間の連結ゾーンに形成される。測定変換器、より詳細には、ひずみゲージ117は、連結ゾーンのそれぞれに、すなわち撓みピボット116のそれぞれに配置される。もちろん、例えば電磁測定トランスデューサまたは振動弦トランスデューサなどの、固定平行四辺形脚部114と可動平行四辺形脚部との間に配置される他の測定変換器もあり得る。これらのタイプの測定変換器を備える平行案内システムのための特定の設計の可能性は、現況技術において知られており、したがって、詳細には説明しない。
【0036】
平行案内機構111の一部は、その中間部分がベローズの形に形成される管形状のカプセル封止体118によって外側から囲まれ、密封絶縁される。カプセル封止体118は、2つの端部分119および端部分120をさらに有し、第1の端部分119は固定平行四辺形脚部114に形成されるフランジに連結され、第2の端部分120は可動平行四辺形脚部115に形成されるフランジに連結される。カプセル封止体118は、気密シールを形成するように、例えばフランジに螺装され、接着接合され、溶接され、または圧着される。
【0037】
固定平行四辺形脚部114に形成される調整領域121がさらにある。調整領域は、変形ゾーン124によって互いに連結される第1のレバー122および第2のレバー123を含む。変形ゾーン124は、水平方向に固定平行四辺形脚部114を横切る第1の切開部125および第2の切開部126によって形成される。変形ゾーン124について、水平ピボット軸Dが、図1Bに示されるように規定され、その軸Dの周りに、2つのレバー122およびレバー123が、互いに対して枢動され得る。第1のレバー122は、支持体198の繋ぎ材の部分を含む。したがって、第1のレバー122は、調整力または調整トルクが第2のレバー123に加えられる場合にこの反力を吸収する。第2のレバー123が第1のレバー122に対してピボット運動または傾斜運動の際に変位する場合、第2のレバー123に隣接する撓みピボット116は、上下変位方向Vに上方または下方に調整され、したがって、上部撓みピボット116と下部撓みピボット116との間の距離は調整され得る。
【0038】
2つのレバー122およびレバー123は、第1の切開部125によって形成される第1のレバー部分がカプセル封止体118の内側に配置され、第2の切開部126によって形成される第2のレバー部分がカプセル封止体118の外側に配置されるように構成される。したがって、第2のレバー部分は、カプセル封止体118の外側に配置されしたがって重量計器の外側からアクセス可能である調整設定領域127の実質的な部分である。調整領域121の細密調整を可能にするために、調整ねじ128が、2つのレバー122およびレバー123の間に配置される。また、この調整ねじは、角変位の一方の方向にレバー122およびレバー123を固定し、一方、レバー122とレバー123との間に配置される圧縮ばね129が角変位の他方の方向にこれらを固定し、その結果、調整領域121の調整部分は、重量計器100の動作中に変化しない。
【0039】
図1Bは、平面図で図1Aの重量計器100を示し、カプセル封止体118のみが断面図で示される。秤量セル110は、ただ1つの調整ねじ128を有し、このことは、この実施形態において、秤量セル110の長手方向Lの偏心荷重誤差のみが調整され得るが、横方向Qについてはいかなる偏心荷重誤差の調整も不可能であるということを明白にする。
【0040】
図1Aおよび図1Bに示されるように、変形ゾーン124は、第1の端部分119の平面に配置される。この結果として、偏心荷重誤差の調整は、追加された圧縮変形または伸長変形のない、端部分119の急な曲げのみを生じる。
【0041】
図1Bから明らかなように、ひずみゲージ117は、コネクタリードを通して回路モジュール130に接続される。回路モジュール130は、例えばただ1つのメモリモジュール、およびひずみゲージ117によって発生するアナログ信号を変換する働きをする変換回路を含む。メモリモジュールおよび変換回路は、カプセル封止体118の外側に配置されるプロセッサユニット140にコネクタリードによって接続される。この配置の場合、プロセッサユニット140のプロセッサの放散熱は、カプセル封止体118によって外側から密閉して密封絶縁される制限された内部空間の外に保たれ得る。結果として、内部空間の温度上昇が大部分回避される。さらに、メモリモジュールは、プロセッサユニット140によって呼び出され得る補償データを格納する働きをし、それによって秤量セル110の変換される原信号が補正され得る。これらの補償データは、それぞれの個々の秤量セルに特定され、製造公差によりセルごとに必然的に変化することになり、工場での最終検査の間に各秤量セル110に対して決定されるデータである。この設計概念により、カプセル封入された秤量セル110は、問題なく、重量計器100全体を再調整する必要がなく交換され得る。測定信号がプロセッサユニット140で処理された後、これらは、入力/出力ユニット150に重量値として送られる。もちろん、プロセッサユニット140は、カプセル封止体118の内側に配置することもできる。そのうえ、回路モジュール130およびプロセッサユニット140は、回路基板に共に取り付けられることもでき、カプセル封止体118の内側または外側に配置され得る。
【0042】
次に来る図面の図では、重量計器に属する回路モジュール、プロセッサユニット、入力ユニット、および出力ユニットが再度図示され、説明されることはない。同様に、可動平行四辺形脚部の荷重受け、および固定平行四辺形脚部の地盤支持体も、次に続く図で再度図示され、説明されることはない。
【0043】
図2Aは、側面からの断面図で重量計器200を示し、図2Bは、上方から見た重量計器200を示し、カプセル封止体218のみは断面図で描かれる。平行案内システム211の調整領域221を除いて、この実施形態の秤量セル210は、図1Aおよび図1Bで説明した第1の実施形態と異なるものではない。調整領域221は、並んで位置する2つの調整領域に分割されることによって上記で説明した調整領域と識別され、それによって、長手方向Lおよび横方向Qの偏心荷重の調整が可能になる。図2Aおよび図2Bに示すように、このことは、第2のレバー223および変形ゾーン224を秤量セル210の長手方向に分割して、長さ方向の切込み230によって右レバー223Aおよび左レバー223Bにするという概念を通して実現され得る。
【0044】
平行調整、すなわち右レバー223Aおよび左レバー223Bの等しい大きさと等しい方向のピボット運動は、平行案内機構211の長手方向Lの偏心荷重誤差に最初に影響を及ぼすことになり、一方、反平行調整、すなわち2つのレバー223Aおよびレバー223Bの等しい大きさであるが反対方向のピボット運動は、平行案内機構211の横方向Qの偏心荷重誤差に最初に影響を及ぼすことになる。しかし、この2つの方向の間に多少のクロスオーバー効果があることがあり、その結果、平行調整は、横方向Qの偏心荷重誤差に軽微な影響を及ぼす場合もあり、また、反平行調整は、長手方向Lの偏心荷重誤差に軽微な影響を及ぼす場合もある。もちろん、2つの調整領域のそれぞれは、調整ねじ228を備えるそれ自体の調整設定領域227Aおよび調整設定領域227Bを、それぞれ有する。
【0045】
図2Aおよび図2Bで見られ得るように、変形ゾーン224は、カプセル封止体218の第1の端部分219の平面に配置されるのではなくて、むしろカプセル封止体218の内側に配置される。したがって、カプセル封止体218は、その端部分219に3つの穿孔を有し、右レバー223A、左レバー223B、および第1のレバー222はその穿孔を通して外側に通過する。偏心荷重誤差を調整するプロセスでは、第1の端部分219の領域のカプセル封止体218は、急な曲げ、圧縮および/または伸長を受ける。したがって、カプセル封止体218のこの領域は、高度の弾性および可撓性を有する必要がある。したがって、カプセル封止体218のこの部分は、ゴム、または軟質の弾性合成材料から作られることが好ましい。このことは、カプセル封止体218が単一体から作られる必要はなくて、異なる材料から成る複数の構成要素を有することができることを意味する。
【0046】
図3Aでは、第3の実施形態の重量計器300が、側面から見た断面図で示される。図3Bは、上方から見た図3Aの重量計器300を示し、カプセル封止体318のみが断面図で示される。次の説明は、両方の図面の図に当てはまる。
【0047】
本発明による重量計器300の第3の実施形態は、秤量セル310を含み、この秤量セル310の平行案内機構311は、該平行案内機構311の調整領域327および撓みピボット316の形状構成について先に説明した実施形態と再び異なる。撓みピボット316は、垂直の穿孔330および穿孔331によって分割される。撓みピボットが分割されると、秤量セル311は、全部で8個のひずみゲージ317を有する。そのうえ、固定平行四辺形脚部314の中の、第1のレバー322のみが、カプセル封止体318の第1の端部分319を越えて突出する。第2のレバー323は分割されて、端部分319まで穿孔311を延在することによって右レバー323Aおよび左レバー323Bになる。レバー323Aおよびレバー323Bのそれぞれは、調整ツールを係合するための止りボア孔を有するが、それはここでは示されていない。固定平行四辺形脚部314および可動平行四辺形脚部315に形成されるフランジは、これらが第1の端部分319の一部および第2の端部分320の一部をそれぞれ形成するように、またカプセル封止体318の一部である。図1Aおよび図1Bに示されるように、変形ゾーン324は、第1の端部分319の平面に配置される。結果として、偏心荷重誤差の調整プロセスにおいて、この端部分319は、図2Aおよび図2Bの場合のように圧縮または伸長を付加的に受けることなく、曲げられまたは反らされるのみである。したがって、調整設定領域327は、固定平行四辺形脚部314、およびカプセル封止体318の端部分319において形成される。
【0048】
図4Aでは、第4の実施形態の重量計器400が、側面から見た断面図で示される。図4Bは、上方から見た図4Aの重量計器400を示し、図4Cは、図4Aおよび図4Bの重量計器400の端部分を直接見た図を示す。次の説明は、図面の図の3つすべてに当てはまる。
【0049】
図4A、図4B、および図4Cに示される重量計器400は、第3の実施形態に大いに類似しており、したがって、完全な説明は必要とされない。ただ1つの差異は、カプセル封止体418の端部分419が可撓性波形部分435を有することである。この可撓性波形部分435により、平行案内機構411は、著しくより小さな労力で調整され得る。なぜならば、可撓性波形部分の折り畳んだ部分により、カプセル封止体418の材料を変形させることがより容易になるからである。この概念は、カプセル封止体418の材料応力の低減をさらに可能にし、それにより、重量計器400の動作の間中ずっと弛緩させることができ、その結果、秤量結果に影響を及ぼすことができる。加えて、調整プロセスの結果として生じる変形は、可撓性波形部分435に大いに拘束される。同時に、可撓性波形部分435は、端部分419を堅くする。この設計の特徴を用いることによって、重量計器400の動作中にカプセル封止体418に加わる恐れがある衝撃力は、調整領域421から隔離されることができ、したがって、撓みピボット416の調整される位置は、衝撃力の結果として変化されることはない。
【0050】
図5Aおよび図5Bに示される重量計器500は、分割された撓みピボットを備える先行の実施形態に大いに類似しており、したがって、完全な説明は必要とされない。しかし、秤量セル510の調整領域521の形状構成には著しい差異がある。後者は、2つの膝レバー536Aおよび膝レバー536Bを有する。膝レバー536Aおよび膝レバー536Bのそれぞれは、互いに上部膝レバー部材538および下部膝レバー部材539を枢支的に連結する膝継手537を含む。上部平行案内部材513の撓みピボット516は、固定平行四辺形脚部514に直接隣接するのではなくて、上部中間部分542および上部変形ゾーン540によって後者に連結される。同一のことが下部平行案内部材512に当てはまり、その撓みピボット516は、下部中間部分543および下部変形ゾーン541によって固定平行四辺形脚部514に連結される。上部膝レバー部材538は、上部中間部分542に枢支的に連結され、下部膝レバー部材539は、下部中間部分543に枢支的に連結される。調整領域521の既述の部分が互いに対して有する移動性により、中間部分542および中間部分543は、互いから遠ざかるように、または互いに向かって旋回され得る。この角変位により、中間部分542および中間部分543に隣接する撓みピボット516の間の垂直距離Yの変化が生じる。変形ゾーン540および変形ゾーン541はカプセル封止体518の内側に配置されるので、調整により、カプセル封止体518の変形は生じない。また、カプセル封止体518から調整領域521まで伝達されるいかなる反力および応力についても、全く懸念はない。
【0051】
膝継手537の直線変位を行うために、伝達要素550は、カプセル封止体518の外側に配置される調整設定領域527と膝レバー535Aおよび膝レバー536Bのそれぞれとの間に配置する必要がある。伝達要素550ついての可能な設計が、図5Bに詳細に示される。
【0052】
伝達要素550は、膝継手537に形成される雌ねじに係合するスピンドル駆動部に類似のねじ付き要素を有する。伝達要素550は、その非固定の状態にある場合に回転する自由を有して、固定平行四辺形脚部514に形成されるボア孔554に支持される。伝達要素550のリング状のカラー551は、固定平行四辺形脚部514に対して長手方向に後者を拘束する働きをする。ボア孔554の内側に、可動平行四辺形脚部の方へ向かうカラー551の側面が、固定平行四辺形脚部514に押し当たっている。可動平行四辺形脚部515から離れる方向に面するカラー551の側面は、ボア孔554の中に螺装され得るねじ付きスリーブ552の端面に押し当たっている。ねじ付きスリーブ552によって、カラー551は圧締されることができ、それによって、伝達要素550は、ボア孔554にロックされ、回転に対して固定され得る。加えて、シール553は、汚れおよび湿気がボア孔554を通してカプセル封止体518の内部空間に達することを防止する。
【0053】
図5Aの膝レバー536Aおよび膝レバー536Bの幾何学的関係の場合、平行案内システムは、非常に高い精度で調整され得る。膝レバー部材538および膝レバー部材539と秤量セル510の長手方向との間の大きな角度αにより、非常に大きな減速比が実現され、したがって、膝継手537の相当な直線変位が、中間部分542および中間部分543のピボット運動を生じるために必要である。
【0054】
調整プロセスを容易にするために、無調整状態における固定平行四辺形脚部514の撓みピボット516の間の距離Yは、可動平行四辺形脚部515の撓みピボット516の間の距離Xよりも大きいように設計されることが好ましい。このことは、常に調整を行うことを必要にするが、調整設定領域527を回転させる方向が予め定められるという利点を有する。距離Yは常に減らされる必要があるので、膝継手537は、固定平行四辺形脚部514の方へ引っ張られなければならず、したがって、膝継手537の方へ向かうカラー551の側面は、平行四辺形脚部514に常に押し当たっている。したがって、その後ねじ付きスリーブ552を締め付けることによって調整が固定される場合、膝継手537のさらなる変位は全く生じない。
【0055】
図6は、第6の実施形態の重量計器600の一部についての三次元図を示す。重量計器600は平行案内機構611を有し、この平行案内機構611の固定平行四辺形脚部614は調整領域621を含む。固定平行四辺形脚部614は、図1に示される変形ゾーンに類似する、2つの長手方向の切開部651および切開部652により形成される第1の変形ゾーン624を有する。したがって、第1の変形ゾーン624の水平ピボット軸は、平行案内機構611の長手方向に対して直角に方向づけられる。この第1の変形ゾーン624の下方に、第2の変形ゾーン625が、2つの長手方向に直角な切開部653および切開部654によって形成される。第2の変形ゾーンの水平ピボット軸は、平行案内機構の長手方向に方向づけられ、それにより、下部平行案内部材612に対して上部平行案内部材613を捻ることが可能になる。
【0056】
より明確な図を得るために、カプセル封止体の第1の端部分619のみが図面に示される。端部分619の個々の領域は偏心荷重調整のプロセスにおいて伸長されまたは圧縮されるので、端部分619は、例えば、ゴムまたは合成材料などの高弾性材料から作られることが好ましい。しかし、いくつかの可撓性波形部分または折り畳んだ部分の場合、金属から作られる端部分619でさえも、十分に曲げやすくされ得る。調整ツール(図示せず)の保持を行なうために、固定平行四辺形脚部614は、適切な場所に止り孔633を有する。
【0057】
本発明は実施形態の特定の例を示すことによって説明されたが、例えば、互いに個々の実施形態の特徴を組み合わせることによって、または実施形態の個々の機能ユニットを交換することによって、非常に多くの一層さまざまな実施形態を本発明の知識から作り出すこともできることが明らかであると思われる。例えば、図5に示される膝レバーは、楔によって交換されることもできる。そのうえ、カプセル封止体の外側に調整設定領域を有する、本発明によるカプセル封入された平行案内システムの付加的な実施形態が、特に膝レバーの設計およびカプセル封止体の設計に関して可能である。また、図面に示されるタイプの平行案内機構は、必ずしもモノリシック構造である必要はなくて、多くの異なる構成要素から成ることもできる。そのうえ、最も多様な材料または材料の組み合わせ、並びに伝達要素の異なる設計が考えられる。もちろん、調整領域はまた、可動平行四辺形脚部にまたは両方の平行四辺形脚部にさえも形成され得る。
【符号の説明】
【0058】
100、200、300、400、500、600 重量計器
110、210、310、510 秤量セル
111、211、311、411、511、611 平行案内機構
112、512、612 下部平行案内部材
113、513、613 上部平行案内部材
114、314、514、614 固定平行四辺形脚部
115、315、515 可動平行四辺形脚部
116、316、416、516 撓みピボット
117、317 ひずみゲージ/測定変換器
118、218、318、418、518 カプセル封止体
119、219、319、419、619 第1の端部分
120、320 第2の端部分
121、221、421、521、621 調整領域
122、222、322 第1のレバー
123、223、323 第2のレバー
124、224、324 変形ゾーン
125 第1の切開部
126 第2の切開部
127、227A、227B、327、527 調整設定領域
128、228 調整ねじ
129 圧縮コイルばね
130 回路モジュール
140 プロセッサモジュール
150 入力/出力ユニット
197 荷重受け
198 支持体
199 固い地盤
223A、323A 右レバー
223B、323B 左レバー
230 長さ方向の切込み/さらなる切開部
330、331 穿孔
333、633 止り孔
435 可撓性波形部分
536A、536B 膝レバー
537 膝継手
538 上部膝レバー部材
539 下部膝レバー部材
540 上部変形ゾーン
541 下部変形ゾーン
542 上部中間部分
543 下部中間部分
550 伝達要素
551 カラー
552 ねじ付きスリーブ
553 シール
554 ボア孔
624 第1の変形ゾーン
625 第2の変形ゾーン
651、652 長手方向の切開部
653、654 長手方向に直角な切開部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
秤量セル(110、210、310、510)および可撓性の管形状のカプセル封止体(118、218、318、418、518)を備え、前記秤量セル(110、210、310、510)が、平行案内機構(111、211、311、411、511)および少なくとも1つの測定変換器(117、317)を備え、前記平行案内機構(111、211、311、411、511)が、垂直移動の際に案内され2つの平行案内部材(112、113、512、513)によって固定平行四辺形脚部(114、314、514)に連結される可動平行四辺形脚部(115、315、515)を含み、撓みピボット(116、316、416、516)が、前記平行案内部材(112、113、512、513)と前記平行四辺形脚部(114、115、314、315、514、515)との間の継手のところに形成され、または配置され、前記管形状のカプセル封止体(118、218、318、418、518)の一方の端部(119、219、319、419)が、前記固定平行四辺形脚部(114、314、514)に取り付けられ、前記管形状のカプセル封止体(118、218、318、418、518)の他方の端部(120、320)が、前記可動平行四辺形脚部(115、315、515)に取り付けられ、したがって、少なくとも前記平行案内機構(111、211、311、411、511)および前記測定変換器(117、317)が、前記カプセル封止体(118、218、318、418、518)によって囲まれ、したがって重量計器(100、200、300、400、500)の環境からの汚れおよび湿気に対して保護される重量計器(100、200、300、400、500)において、調整領域(121、221、421、521)が、前記可動平行四辺形脚部(115、315、515)および/または前記固定平行四辺形脚部(114、314、514)のところに形成され、前記調整領域(121、221、421、521)によって、前記上部平行案内部材(113、513)の少なくとも1つの撓みピボット(116、316、416、516)と前記下部平行案内部材(112、512)の撓みピボット(116、316、416、516)との間の距離が調整され、前記調整領域(121、221、421、521)が、前記カプセル封止体(118、218、318、418、518)の外側に配置され前記調整領域(121、221、421、521)を変化させる少なくとも1つの調整設定領域(127、227A、227B、327、527)に機械的に連結されることを特徴とする重量計器(100、200、300、400、500)。
【請求項2】
前記調整領域(121、221、421、521)が、前記可動または前記固定平行四辺形脚部(114、115、314、315、514、515)を水平方向に横切る少なくとも1つの切開部(125、126)によって構成される少なくとも1つの変形ゾーン(124、224、324)を含み、力またはトルクを加えることによって、前記調整領域(121、221、421、521)が、前記変形ゾーン(124、224、324)によって画定され前記平行案内機構(111、211、311、411、511)の横方向(Q)に方向づけられるピボット軸(D)の周りに傾斜されることができ、前記傾斜の結果として、前記調整領域(121、221、421、521)で終端する前記平行案内部材(112、113、512、513)のうちの1つの端部が、垂直方向(V)に永久変位を受け、それによって、前記平行案内機構(111、211、311、411、511)の長手方向(L)の偏心荷重誤差が、実質的に補正され得ることを特徴とする、請求項1に記載の重量計器(100、200、300、400、500)。
【請求項3】
前記変形ゾーン(124、224、324)は、前記調整設定領域(127、227A、227B、327、527)に調整力または調整トルクを加えることによって、制御された塑性変形を受けることができ、前記少なくとも1つの変形ゾーン(124、224、324)の前記塑性変形を通して、互いに対して前記平行案内部材(112、113、512、513)の目標とする永久的な位置調整が実現され得ることを特徴とする、請求項2に記載の重量計器(100、200、300、400、500)。
【請求項4】
前記調整領域(121、221、421、521)が、前記調整領域(121、221、421、521)で終端する前記平行案内部材(112、113、512、513)の垂直に調整可能な端部のさらなる切開部(230)によって分割され、前記切込みが、前記可動平行四辺形脚部(115、315、515)または前記固定平行四辺形脚部(114、314、514)の垂直長手方向の正中面に通じて、前記撓みピボット(116、315、416、516)まで延在し、したがって、さらなる切開部(230)の結果として、別個の変形ゾーン(124、224、324)を有する2つの別個の調整領域(121、221、421、521)が互いに隣接して形成され、したがって、
a.一方では、平行力または平行トルクを加え、それによって、前記2つの隣接する別個の調整領域(121、221、421、521)に対して平行な傾斜変位を与えることによって、弾性撓みピボット(116、316、416、516)の永久的な平行垂直調整が行われることができ、それによって、前記平行案内機構(111、211、311、411、511)の長手方向(L)の偏心荷重誤差が補正されることができ、
b.他方では、反平行力または反平行トルクを加え、それによって、前記2つの隣接する別個の調整領域(121、221、421、521)に対して対向する傾斜変位を与えることによって、前記平行案内部材の前記調整可能な端部の永久的なねじれ歪がもたらされることができ、それによって、前記平行案内機構(111、211、311、411、511)の前記横方向(Q)の偏心荷重誤差が補正され得ることを特徴とする、請求項2または3に記載の重量計器(100、200、300、400、500)。
【請求項5】
前記弾性撓みピボット(116、316、416、516)が、前記調整領域(121、221、421、521)で終端する前記平行案内部材(112、113、512、513)の前記垂直に調整可能な端部において、前記平行案内部材(112、113、512、513)までさらなる切開部(230)を続けることによって、または前記弾性撓みピボット(116、316、416、516)の穿孔(330、331)によって2つの別個の隣接する弾性撓みピボット(116、316、416、516)に分割されることを特徴とする、請求項4に記載の重量計器(500)。
【請求項6】
前記調整領域(521)が、少なくとも1つの膝レバー(536A、536B)を含み、その2つの膝レバー部材(538、539)が、膝継手(537)を通して互いに一方の端部において枢支的に連結され、一方、それらの他方の端部が、前記撓みピボット(516)の近くに配置され、前記調整領域(521)を含む前記平行四辺形脚部(514、515)に枢支的に連結され、前記調整設定領域(527)が、伝達要素(550)を通して前記膝継手(537)に連結されることを特徴とする、請求項4または5に記載の重量計器(500)。
【請求項7】
無調整状態における前記平行四辺形脚部(114、314、514)の一方の前記撓みピボット(116、316、416、516)の間の距離が、前記他方の平行四辺形脚部(115、315、515)の前記撓みピボット(116、316、416、516)の間の距離よりも大きいことを特徴とする、請求項1から6のうちの一項に記載の重量計器(100、200、300、400、500)。
【請求項8】
前記調整設定領域(127、227A、227B、327、527)が、調整ツールを係合するための止り孔(333)、ねじドライバーまたはレンチを係合するための適切な面形成部、調整ねじ、または調整楔を備えることを特徴とする、請求項1から7のうちの一項に記載の重量計器(100、200、300、400、500)。
【請求項9】
前記カプセル封止体(118、218、318、418、518)が、管形状の中間部分、第1の端部分(119、219、319、419)、および第2の端部分(120、320)を有し、前記端部分(119、120、219、319、320、419)と前記管形状の中間部分との間の気密接合部、前記第1の端部分(119、219、319、419)と前記可動平行四辺形脚部(115、315、515)との間の気密接合部、および前記第2の端部分(119、219、319、419)と前記固定平行四辺形脚部(114、314、514)との間の気密接合部を伴う、ことを特徴とする、請求項1から8のうちの一項に記載の重量計器(100、200、300、400、500)。
【請求項10】
前記変形ゾーン(124、224、324)が、前記カプセル封止体(118、218、318、418、518)の1つの端部分(119、120、219、319、320、419)を含む平面に配置されることを特徴とする、請求項9に記載の重量計器(100、200、300、400、500)。
【請求項11】
前記端部分(119、120、219、319、320、419)が、少なくとも1つの可撓性波形部分(435)を備えることを特徴とする、請求項9に記載の重量計器(100、200、300、400、500)。
【請求項12】
前記カプセル封止体(118、218、318、418、518)が、ゴム、合成材料、またはステンレス鋼から作られることを特徴とする、請求項1から11のうちの一項に記載の重量計器(100、200、300、400、500)。
【請求項13】
前記カプセル封止体(118、218、318、418、518)が、ベローズの形に形成される中間部分を備えることを特徴とする、請求項1から12のうちの一項に記載の重量計器(100、200、300、400、500)。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−276350(P2009−276350A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−117188(P2009−117188)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland