説明

健康補助食材

【課題】 多種に亘る優れた抗酸化性成分を高濃度に保持し、飲料や食品に混合若しくは配合させることで美味さも高められる健康補助食材の提供。
【解決手段】 ぶどう絞り粕を振動篩で解離分別したうえ、マグネトロンで80℃以下に加熱しブランチングを施し、且低温加熱乾燥のうえその粉径が60メッシュ以上の微細粉体に粉砕させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料や加工食品若しくは菓子等に配合使用させて、これら飲料や食品類の旨みと且抗酸化作用を著しく高め以って生活習慣病等の予防には好適な、健康補助食材に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では生活水準の著しい向上とともに食生活も家庭内調理による飯食主体から、高蛋白高脂質のバーガー類を初めインスタント食品やレトルト食品等を主体とした外食化や中食化へと変化し併せて車社会化や構築物へのエスカレーターやエレベーター等の普及に伴う運動量の激減とも相俟って虚血性心疾患や高血圧、糖尿病、脳卒中等の所謂生活習慣病が激増化しており、更には高齢化社会とともに認知症も増加の一途を辿っており、これらが医療行政にも重大な負担となり、これの対策が緊急の課題とされるに至っている。
【0003】
ところで、かかる生活習慣病や認知症は、極めて長期に亘って偏在した食生活や運動不足を主因として招来されるものであるが、一旦発症すると致命的若しくは再起不能に至る重大な危険を孕んでおり、従ってその危険が予測され若しくは予知される場合は勿論のこと発症年齢域や体形域等を知覚のうえ、即時に且長期に亘ってこれら発症危険要因の増長を抑制し且軽減化や除去を図ることが肝要とされている。
而してこれらの発症危険要因は多様な要因が複合しているものであるから、可能な限り広範囲に亘る発症危険要因への作用効果を有するものが好都合であって、これがためには体内に摂取蓄積された通称悪玉のLDLコレステロールの酸化を防止することにより、高血圧や動脈硬化の予防、及び該動脈硬化を原因とする脳血管障害や心臓病の予防、並びに血糖値を下げて糖尿病の予防を図ること等が特に要請される。
【0004】
これがためには、これらの予防に対しては抗酸化性成分の摂取が極めて好適とされ、その代表的なものとしてポリフェノールが挙げられるもので、より具体的にはフラボノイド系に分類されるフラボン類やフラボノール類、イソフラボン類、フラバン類、カテキン類、フラバノン類、フラバノール類、カルコン類及びアントシアニジン類が挙げられる。
【0005】
而してかかる抗酸化性成分が前記生活習慣病の予防に有効であるとの見地から、お茶葉に含有されてなるカテキンを抽出し濃縮して高血圧予防のためのサプリメントを初め、タンニン成分を抽出濃縮して殺菌剤としたり、生姜に含有されてなるフラボノイドに属するターメリックを抽出濃縮させて肝機能強化サプリメントや胆汁の分泌促進によるメタボリックの防止用錠剤、カカオマスよりカカオマスポリフェノールを抽出し濃縮させたアレルギー抑制剤やストレス解消剤等が積極的に喧伝されてなるものの、野菜や果物等からこれら特定成分を抽出し濃縮するには、本来的に全体重量に対して極めて微量な含有成分量であるから極めて高価となり、且サプリメント等の成形材にはデキストリンが専ら使用されるため、旨味も風味も殆ど無く積極的な摂取もなされ難い。
加えて生活習慣病は多様な発症要因が複合して発生することが多いため、かかる特定成分の抽出且濃縮よりも広範囲の成分を美味しく而も安価で積極的に摂取することが望まれる。
【0006】
そこで発明者等は数多の研究を重ねた結果、ワインの醸造に際しては膨大量のぶどうが絞られ且その絞り粕が発生するとともに、この絞り粕には多種に亘る抗酸化性成分たるポリフェノール類が高い含有率を以って含有されており、品種によっても差異があるが巨峰では略588mg/100g、甲州では略330mg/100g、赤嶺でも583mg/100gが含有されており、更に全ポリフェノール類中のカテコールタンニンとピロガロールタンニンについても、巨峰では73.5mg及び61.6mg/100g、甲州においては750mg及び87mg/100gであって、而も現状におけるこの絞り粕は専ら廃棄処分がなされているものであるから、極めて安価に入手が可能である。
【0007】
そして他方においては該ぶどう絞り粕は、フルーティーな香りとともにぶどうの保持する甘味及びタンニン成分による渋味を保持するものである。これがためかかるぶどうの絞り粕に多量に含有するポリフェノール類を分解変性させることなく低温度で乾燥せしめたうえ、少なくとも60メッシュ以上の微細粉末に粉砕し飲料に混合し若しくは加工食品や菓子等に配合することにより、ぶどうの香りや風味と且タンニン等の渋味とも相俟って美味さが発揮され、且多量のポリフェノール類も溶出拡散されることを確認し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は多種に亘る優れた抗酸化性成分を高濃度に保持するとともに、飲料や食品に混合若しくは配合させることにより、香りや風味とともに美味さを高め以って生活習慣病の予防に好適な健康補助食材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術的手段は、ぶどう酒の醸造に伴い発生する絞り粕を振動篩で解離分別のうえマグネトロンによりその内部温度が80℃以下に加熱してブランチングを施したうえ低温加熱し乾燥させて混合する飲料や配合する食品等に多様なポリフェノールの溶出を高め且香りや風味並びに旨さを付加せしめ、而も摂取に際しての違和感を除去させるため、少なくともその粉径を60メッシュ以上の微細粉体に粉砕させてなることを特徴とする健康補助食材の構成に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述の如き構成からなり、使用原料素材にぶどう酒の醸造に際してぶどうを圧搾し果汁を摂取した後のぶどう絞り粕を用いるものであるから膨大量に発生するばかりか、絞り粕には前記の如くポリフェノール、とりわけカテコールタンニンやピロガロールタンニンが極めて高濃度に、更にはアントシアニン類やイソフラバン類、フラバノール類等の多種に亘るポリフェノールも高濃度に含有されてなり且廃棄処分されてなるものであるから著しく安価に入手できる。
【0011】
そしてこのぶどうの絞り粕に、マグネトロンによりその内部温度が80℃以下に加熱されブランチングが施されるものであって、ぶどうの絞り粕中には依然として略60乃至70重量%程度の水分が含有されてなるから、嵩高な絞り粕の内部まで瞬時に透過し水分子が励起発熱してブランチングされ、酵素が失活され呼吸作用の停止と且生体内の合成、分解、置換等も阻止され、褐変や軟弱、腐敗の防止とともに素材本来の香りや色、風味も十分に保持される。
加えてブランチングが施されたうえ乾燥がなされるため長期に亘る保存性が付与されるとともに、更にその粉径を60メッシュ以上の微細粉体に粉砕されることから、飲料や食品中に混合若しくは配合されても違和感なく飲食できるとともに、微細粉体に粉砕されることから接触表面積率が極めて大きくなり、含有されてなるポリフェノールはもとより、香りや風味も積極的に飲料や食品中に溶出されて美味しく摂取され、抗酸化力により生活習慣病の予防にも大きく寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ぶどう種の醸造に際して搾汁した後のぶどう絞り粕に、マグネトロン照射で80℃以下に加熱してブランチングを施したうえ低温加熱乾燥し、而してその粉径を60メッシュ以上の微細粉体に粉砕する。
【実施例1】
【0013】
以下に本発明実施例を図とともに説明すれば、図1は本発明の原料素材として用いるぶどうの絞り粕1であって、該ぶどうの絞り粕1とはぶどう酒の醸造に際しての搾汁された後の絞り粕1であって、現状においてはその殆んどが廃棄処分に回されていることから、その廃棄費用も莫大なものが強いられている。
他方近年の如く食生活の欧米化による高蛋白高脂質摂取を初め外食化や中食化に加えて車社会化等による運動不足と且高齢化社会とも相俟って、生活習慣病患者や予備軍が膨大数に発生しており、これの対策には医療行政上からも緊急課題として提起されている。
【0014】
ところで生活習慣病の予防に対しては近年抗酸化力を保持するポリフェノールが極めて効果的であることが医学的に解明されるとともに、該ポリフェノールは植物体内において光合成に付帯して生成されることも解明されている。
即ち抗酸化力を保持するポリフェノールも極めて多種に亘るもので、大きくはフェニルカルボン酸系やリグナン系、クルクミン系、クマリン系やフラボノイド系及びタンニンに分類されるものであるが、特に利用し易いフラボノイド系においてもフラボン類、フラボノール類、イソフラボン類、フラバン類、フラバノール(カテキン)類、フラバノン類、フラバノール類、カルコン類及びアントシアニジン類が挙げられる。
【0015】
而してこれらポリフェノールの生体調節機能として公表されたものを見ると、フラボン類のクリシンでは抗ガン性抗プロモータや抗アレルギー性が、アピゲニンやルテオリンでも抗ガン性抗プロモータや抗変異原性抗イニシエータが、フラボノール類のガランギン、ケルセチン、ケンフェロールでは抗変異性抗イニシエータや抗ガン性プロモータ、血圧上昇抑制、抗糖尿病性、抗アレルギー性に、フラバノール(カテキン)のエピカテキンでは、抗ガン性抗プロモータや抗糖尿病性、抗アレルギー性を、更にエピカテキンガレートでは抗変異性抗イニシエータ、抗ガン性、抗プロモータ、血圧上昇抑制等、アントシアニジン類のデルフィニジンでは抗ガン性抗プロモータとして、及びタンニンは下痢防止、便秘、止血や皮膚疾患防止等に有効であることも公知されている。
【0016】
かくして前記する如く、ぶどうの絞り粕1におけるポリフェノールの含有量は品種によっても差異はあるが、全ポリフェノール含有量では、巨峰で588mg/100g、甲州で330mg/100g、赤嶺においては583mg/100g程度であり、且カテコールタンニン及びピロガロールタンニンのそれは、巨峰で73.5mgと61.6mg/100gであり、甲州で750mg/及び87mg/100gと極めて高濃度に含有されている。そしてかかるぶどう絞り粕1は産業廃棄物として廃棄されてなるものであるから極めて安価に入手でき、且多種高濃度にポリフェノールが含有されてなること等からも、原料素材としては最適のものである。
【0017】
そしてかかるぶどうの絞り粕1は図1に示すように、ぶどうを房取りしたうえ圧搾機により圧搾のうえ搾汁するものであるから、該ぶどうの絞り粕1には加成りの加圧が付加された固着状態を呈する。しかもぶどうの収穫は房取り、即ち結果毋枝とともになされたうえ圧搾されるものであるから、該ぶどう絞り粕1中には結果毋枝とともに種子も混在している。
しかしながら本発明が対象とするポリフェノールは、果皮はもとより種子にも高濃度に含有されていること等も勘案のうえ、図2に示す如く一旦粗目の振動篩2によって、果皮及び種子と結果毋枝とを分別させることが好都合である。
かかる場合に振動篩2の目合2Aとしては使用するぶどう絞り粕1の大きさにもよるが、通常はせいぜい30乃至50mm程度の目合で十分に分別がなしえる。
【0018】
かくして分別されたぶどう絞り粕1中には、依然として水分が略60乃至70重量%程度に残留しており、且酵素も活発に活動していることから呼吸作用とともに生体内で合成、分解、置換作用も働いており、短時に萎凋や褐変、腐敗が招来される。
そこで分別されたぶどう絞り粕1は、図3に示すようにマグネトロン3Aを用いて、その内部温度を80℃以下に加熱してブランチング3を施すことにより、酵素を失活させて呼吸作用とともに生体内の合成や分解及び置換作用をも停止せしめて鮮度の保持を図る。
【0019】
かかるブランチング3に際してマグネトロン3Aを用いる所以は、嵩高且複雑なぶどう絞り粕1の内部全体に亘って瞬時に透過し水分子の励起による内部発熱させて均等なブランチング3が可能であって且マグネトロン3Aの照射電力にもよるが、一般的には略10乃至30秒で十分なブランチング3がなしえる。
このブランチング3の具体的方法の一例としては、図3に示す所要の照射電力のマグネトロン3Aを所要の幅と長さを以って配設した下方に、ぶどう絞り粕1を移送しえるベルトコンベア3Bが移動可能に配置され、且該ベルトコンベア3Bの一側に設けたホッパー3Cより、ぶどう絞り粕1を該ベルトコンベア3B上に供給させたうえ、移送とともにマグネトロン3Aの照射により、実質80℃以下の温度に発熱させてブランチング3が施される。かかる場合にぶどう絞り粕1は成可く薄く広げた状態で照射させることが望ましい。
【0020】
かかる如くしてブランチング3が施されたぶどう絞り粕1は、粉砕5により微細粉体6となすうえから乾燥4が施され固形化を図るものであって、該乾燥4には低温度による乾燥すること以外には特段の制約は無く、且その実質的水分率も7.0以下にまで乾燥させれば良好に粉砕がなしえる。
図4には低温乾燥手段が例示されてなるものであって、該低温乾燥手段は開閉自在で密閉しえるケーシング4Aの内部には、回転自在で且ぶどう絞り粕1を保持しえる網目合の乾燥ケージ4Bが設けられており、而も該乾燥ケージ4Bの側面及び底面には、その温度が70℃以下好ましくは40乃至60℃の加熱乾燥空気送風ファン4Cが配位され、乾燥ケージ4B内のぶどう絞り粕1に加熱乾燥空気が送風されるように形成されている。そして乾燥ケージ4Bの上部位には加熱乾燥空気により乾燥されて蒸散する蒸散空気を外部に排出する排気ファン4Dが配設されてなる構成のものである。
かかる場合において、乾燥温度が70℃以下、好ましくは40乃至60℃の低温度の加熱乾燥手段はぶどう絞り粕1に含有されてなる香りや色素或いは風味或いは栄養成分を滅損させぬうえから、及び乾燥コストも安価で且短時になされることによる。
【0021】
所要の加熱乾燥が施されたぶどう絞り粕1は、実用使用に際しての飲料と混合し若しくは加工食品に配合させて、健康維持に大きく寄与する抗酸化性物質たる多種のポリフェノールを効率良く溶出せしめるとともに、保持されてなる香りや風味、色等も溶出せしめて混合若しくは配合される飲料や加工食品の美味さを高めるうえから粉砕5がなされるものであって、具体的な粉砕手段には特別な制約はないが、ポリフェノールや香り、風味、色等を有効に溶出させること、及び混合され若しくは配合された飲料や加工食品等の摂取に際して違和感を与えぬうえからも、その粉径としては60メッシュ以上望ましくは80乃至100メッシュ程度が好適である。
【0022】
そして粉砕5させる加熱乾燥されたぶどう絞り粕1もせいぜい10乃至20mm程度であるから、ロール粉砕機が好適と考えられるが、場合によっては切断粉砕機との併用も提案される。
図5はロール粉砕機5Aの説明図であって、上部に加熱乾燥されたぶどう絞り粕1を供給する供給部5Bを有し、その下部位の回転の異なる1対の粉砕ロール5C、5Cの噛み合い部分に、ぶどう絞り粕1を通過させ圧扁、展開、粉化させることで、本発明の微細粉体6が形成されるものである。
しかしながら該ロール粉砕機5Aでは特に微細な粉砕を続けると摩擦熱により高温化するため、冷却手段5Dを付帯させておくことが望まれる。
【0023】
本発明の微細粉体6は、水やお湯に混合して飲用したり他の飲料中に混合のうえ飲用し、若しくはケーキや菓子類或いは加工食品類に混合したうえ摂取すれば良い。
当然の事ながら本発明の微細粉体6は、高濃度で且多種に亘るポリフェノールを含有しており、健康補助食材として適宜に飲用することも望まれます。
【産業上の利用可能性】
【0024】
適宜量を水やお湯若しくは他の飲料に混合して飲用し、或いはケーキや菓子に振りかけたり、加工食品に混合のうえ摂取できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 ぶどう絞り粕の見取図である。
【図2】 振動篩による分別の説明図である。
【図3】 ブランチング方法の説明図である。
【図4】 低温加熱乾燥方法の例示図である。
【図5】 ロール粉砕機の説明図である。
【図6】 本発明の見取り図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ぶどう絞り粕
2 振動篩
2A 振動篩の目合
3 ブランチング
3A マグネトロン
3B ベルトコンベア
3C ホッパー
4 低温加熱乾燥
4A ケーシング
4B 乾燥ケージ
4C 加熱乾燥空気送風ファン
4D 排気ファン
5 粉砕
5A ロール粉砕機
5B 供給部
5C 粉砕ロール
5D 冷却手段
6 本発明の微細粉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ぶどうの絞り粕を振動篩により解離させ且果皮と結果毋枝とを分離したうえ、果皮からなる絞り粕にマグネトロンでその内部温度を80℃以下に加熱してブランチングを施し、且低温加熱乾燥を施したうえ粉径が60メッシュ以上の微細粉体に粉砕させてなることを特徴とする健康補助食材。
【請求項2】
低温加熱乾燥の温度が40乃至60℃である、請求項1記載の健康補助食材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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