説明

側枝付きの脈管管腔内器具

管腔内人工器官(520)は、幹部管腔と幹部壁を有している人工器官幹部と、第一の側枝管腔及び側枝壁を有している第一の人工器官側枝(533)と、第二の側枝管腔を有している第二の人工器官側枝(534)とを備えている。前記第一の側枝管腔と第二の側枝管腔とは、両方とも前記幹部壁を介して前記幹部管腔と流体連通しており、前記第二の側枝管腔は前記側枝壁を介して第一の側枝管腔と流体連している。付加的な器具、装置及び方法も開示されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷した脈管、管又はその他の生理学的流路の修復のために、人間又は動物の体内に移植するための人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書全体に亘って、大動脈又はその他の血管に対する本発明の適用を説明する際に、人工器官に関する“遠位”という用語は、人工器官が埋め込まれる際に血液の流れに関して更に下流の位置又は人工器官の部分を指すことが意図されており、“遠位方向に”という用語は、血液の流れの方向又は更に下流を意味している。“近位”という用語は、人工器官が埋め込まれる際に血液の流れに関して更に上流の位置又は人工器官の部分を指すことが意図されており、“近位方向に”という用語は、血液の流れと反対の方向又は更に上流を意味している。
【0003】
血管及び管のような人間及び動物の身体の機能的な脈管は、ときおり脆弱化し、さらには裂けることもある。例えば、大動脈の壁は脆弱化して動脈瘤を生じさせ得る。このような動脈瘤は、血流の力に更に曝されると破れる。ある研究によって、60歳〜75歳の西ヨーロッパ人及びオーストラリア人は、直径が29mmより大きな大動脈瘤が母集団の6.9%に見られ、40mmを超える大動脈瘤は母集団の1.8%に存在することがわかった。
【0004】
脆弱化した脈管、動脈瘤がある脈管又は破れた脈管のための一つの外科的介入としては、管腔内人工器官を使用して元の健康な脈管の幾らか又は全ての機能を提供し且つ/又は脈管内の障害のある部位に跨ってある長さの現存の脈管の壁を取り替えることによって残っている脈管の完全性を維持する方法がある。
【0005】
これらの人工器官は脈管内の障害のある部分を密封することが好ましい。脆弱化した脈管又は動脈瘤ができた脈管に対しては、人工器官の小さな漏れでさえ治療された脈管の加圧又は脈管内の流れの加圧につながり、これは人工器官によって治療することを意図されている状態を悪化させる。このタイプの人工器官は、例えば、腹大動脈、腸骨動脈又は腎動脈のような血管側枝の動脈瘤を治療することができる。
【0006】
管腔内人工器官は、一体構造とするか又は多数の人工器官モジュールによって構成することができる。モジュール型の人工器官は、外科医が、種々の大きさの人工器官の必要な在庫を減じつつ脈管の形態の広範囲の変化する態様に順応できるようにする。例えば、動脈は、長さ、直径及び腎動脈領域と大動脈側枝領域との間の角度部分が異なる。これらの相違の各々に適合する人工器官モジュールは、特注の人工器官又はこれらの相違の全ての可能な組み合わせに適応する人工器官の大量の在庫の必要性を不要にする人工器官を形成するように組み立てることができる。モジュール方式はまた、隣接のモジュールを配置させる前に一つのモジュールの適正な配置を可能にすることによって配置に適合することもできる。
【0007】
モジュール方式は、典型的には、一つのモジュールの端部が部分的に他のモジュール内側に配置されて好ましくは重なり領域を通る外周並置状態が形成されるように人工器官モジュールの管状端部同士を重ねることによって生体内で組み立てられる。この取り付け方法は“トロンボーニング(トロンボーン型の結合)”と呼ばれている。人工器官とモジュールとの間の結合は、典型的には、重なっている部分同士の摩擦力によって維持され且つこの結合は2つモジュールが重なっている位置において外側の人工器官モジュールに対して内側の人工器官モジュールによってかけられる半径方向の力によって強化される。この嵌め合いは、重なり部分においてこれらのモジュールに取り付けられるステントによって更に高められる。
【0008】
これらの人工器官によって治療される、ある長さの脈管は、1以上の脈管側枝すなわち主要脈管に吻合された脈管を有している。腹腔動脈、上腸間膜動脈、左総頚動脈及び腎動脈は例えば大動脈の血管側枝であり、下腹動脈は総腸骨動脈の血管側枝である。これらの血管側枝が人工器官によって塞がれている場合には、本来の血液循環が妨害され、患者は病気になる。例えば腹腔動脈が人工器官によって塞がっている場合には、患者は、腹痛、体重の減少、吐き気、鼓脹及び腸膜虚血に伴う軟便を感じる。血管側枝の閉塞は通常は不快な症状、さらには生命に関わる症状に関連する。
【0009】
従って、管腔内人工器官によって血管を治療する際には、主要人工器官モジュールから血管側枝へと伸長している人工器官側枝を設けることによって、本来の血液循環を維持し且つ血管側枝内への血流が妨害されないようにすることが好ましい。例えば、以後に説明するゼニス(Zenith,登録商標)腹大動脈人工器官(クック インコーポレイティッド(Cook Incorporated)、インディアナ州ブルーミントン)の大動脈部分は、腎動脈の上方に伸長し且つ腎動脈内へと伸長して腎動脈に対して血流を提供する人工器官側枝を有するように設計されている。代替的には、側枝した大動脈人工器官の腸骨側枝は、対応する下腹動脈内へと伸長し且つこの下腹動脈に血流を提供するように設計することができる。側枝伸長人工器官モジュール(“側枝伸長部”)は、動脈側枝内へと更に伸長するように人工器官側枝に対するトロンボーン型の結合を形成することができる。更に、動脈瘤のうちの幾らかは血管側枝内へと伸長する。人工器官側枝及び側枝伸長部をこれらの血管内に配備することは、これらの動脈瘤の拡大及び/又は破裂を防止する助けとなる。これらの動脈瘤は高い罹患及び罹患率を伴う。
【0010】
典型的には、現存の人工器官側枝は、主たる管腔管移植片に対して真直ぐなy字形状の又はt字形状の結合部を備えている。このような人工器官側枝及びそれらに関連する側枝伸長部の例が米国特許第6,520,988号及び第6,579,309号に示されている。これらの側枝伸長部及びそれらに関連する人工器官側枝のうちの幾つかは、外れたり、よじれたり且つ/又は不十分な血液動力学を惹き起こしたりする。これらの問題点は、人工器官側枝と側枝伸長部との連結部での血栓形成及びエンドリークにつながるかも知れない。
【発明の概要】
【0011】
本発明の一つの実施例に従って、請求項1に記載されている管腔内人工器官が提供されている。
【0012】
ある形態においては、管腔内人工器官が提供されており、該人工器官は、人工器官幹部と第一及び第二の人工器官側枝とを備えている。人工器官幹部は、貫通している幹部管腔と幹部壁とを備えている。第一の人工器官側枝は、幹部壁から伸長しており且つ貫通している第一の側枝管腔と側枝壁とを備えている。第二の人工器官側枝は、側枝壁から伸長しており且つ第二の側枝管腔を備えている。第一及び第二の側枝管腔は両方とも前記幹部壁を介して前記幹部管腔と流体連通しており、第二の側枝管腔は前記側枝壁を介して第一の側枝管腔と流体連通している。
【0013】
前記第一の人工器官側枝及び第二の人工器官側枝のうちの少なくとも一方あるいは幾つかの例において両方ともが、人工器官幹部に沿って長手方向に且つ該幹部の外周に沿って設けられている。幾つかの例においては、人工器官側枝のうちの一つが他方の人工器官側枝に沿って長手方向に且つ該側枝の周囲に沿って配置されている。人工器官側枝は、あらゆる適切な形状とすることができる。例えば、該側枝のうちの少なくとも一つはテーパーが付けられていても良い。
【0014】
本発明の別の特徴に従って、請求項13に記載されている管腔内人工器官が提供されている。
【0015】
別の特徴によれば、管腔内人工器官が提供され、該管腔内人工器官は人工器官幹部と該人工器官幹部に取り付けられているステントとを備えている。該人工器官幹部は、その中を貫通している幹部管腔と、壁と、該壁に設けられた吻合部とを備えている。ステントは、人工器官幹部に対する半径方向の支持を提供する管状のステント本体を備えている。このステント本体は、人工器官幹部の長手軸線を中心にエンドレスに第一のステントパターンと第二のステントパターンとが互い違いに形成されている。第一のステントパターンはループを備えており、該ループは吻合部の全周に接触し且つこれを支持する外形を有している。幾つかの例においては、第二のステントパターンはジグザグ形状を有している。該ループは、吻合部の外形に適合する如何なる外形を有していても良い。幾つかの例においては、ループは卵形形状を有している。
【0016】
本発明の更に別の特徴に従って、請求項16に記載されている管腔内人工器官が提供されている。
【0017】
別の特徴においては管腔内人工器官が提供されており、該管腔内人工器官は、幹部管腔を有している人工器官幹部と、側枝管腔を有している人工器官側枝と、ステントとからなる。ステントはステントパターンを有しており、該ステントパターンは、第一の軸線を中心として配置されている第一の管状ステント領域と第二の軸線を中心として配置されている第二の管状ステント領域とが該ステントの外周を取り巻いてエンドレスに互い違いになっている。第一のステント領域は人工器官幹部の少なくとも一部分に取り付けられていてこの部分を支持しており、第二にステント領域は人工器官側枝の少なくとも一部分に取り付けられていてこの部分を支持している。
【0018】
幾つかの例においては、エンドレスに互い違いに設けられているステントパターンはジグザグ形状を含んでいる。第一及び第二のステントの領域は、ほぼ同じ直径を有していても良いし又は異なる直径を有していても良い。第一のステントの軸線と第二のステントの軸線とは、人工器官幹部と人工器官側枝との配列に従って配列されている。例えば、第一のステントの軸線と第二のステントの軸線とはほぼ同一線とすることができる。幾つかの例においては、ステントは8の字形状を有している。
【0019】
幾つかの例においては、人工器官側枝は、少なくとも一部が人工器官幹部管腔の内側に設けられている。同様に、人工器官側枝は少なくとも一部が人工器官幹部管腔の外側に設けられている。ステントは、人工器官幹部と人工器官側枝との内側面及び/又は外側面上に設けられている。例えば、第一ステント領域の少なくとも一部分は人工器官幹部の内側面上に設けられている。これらの例においては、第一のステント領域の少なくとも一部分は、人工器官側枝の表面例えば人工器官側枝の外面上に設けられている。幾つかの例においては、第二のステント領域の少なくとも一部分は人工器官側枝の外面上に設けられている。
【0020】
本発明の他の特徴は、本発明の以下の説明に関連して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、y字形状の人工器官側枝を備えている管腔内人工器官の前方概略図である。
【図2】図2は、螺旋状の人工器官側枝を備えている管腔内人工器官の前方概略図である。
【図3a】図3aは、螺旋状の人工器官側枝を備えている管腔内人工器官の一実施例の側面図である。
【図3b】図3bは図3aの実施例の別の側面図である。
【図3c】図3cは伸長部モジュールの一実施例の図である。
【図4a】図4aは管腔内人工器官の一実施例の概略上面図である。
【図4b】図4bは図4aの実施例の概略前面図である。
【図4c】図4cは図4aの実施例の構造の前面図である。
【図5a】図5aは、大きな吻合部を形成する好ましいステップを示している図である。
【図5b】図5bは、大きな吻合部を形成する好ましいステップを示している図である。
【図5c】図5cは、大きな吻合部を形成する好ましいステップを示している図である。
【図5d】図5dは、大きな吻合部を形成する好ましいステップを示している図である。
【図6a】図6aは、管腔内人工器官の一つの実施例の前方概略図である。
【図6b】図6bは図6aの実施例の構造図である。
【図7a】図7aは管腔内人工器官の一実施例の前方概略図である。
【図7b】図7bは図7aの実施例の上面図である。
【図8a】図8aは、管腔内人工器官の一つの実施例の前方図である。
【図8b】図8bは図8aの実施例の上面図である。
【図8c】図8cは図8aの実施例の別の側面図である。
【図8d】図8dは図8aの実施例の後方図である。
【図9a】図9aは、管腔内人工器官の一実施例の構造の前方図である。
【図9b】図9bは図9aの実施例の概略前方図である。
【図10a】図10aは、管腔内人工器官の一実施例の概略前方図である。
【図10b】図10bは図10aの実施例の概略上面図である。
【図11a】図11aは管腔内人工器官の一実施例の図である。
【図11b】図11bは管腔内人工器官の一実施例の図である。
【図11c】図11cは管腔内人工器官の一実施例の図である。
【図12a】図12aは、管腔内人工器官の一実施例の構造の前方図である。
【図12b】図12bは図12aの実施例の概略前方図である。
【図12c】図12cは図12aの実施例の概略上面図である。
【図13a】図13aは、襞を備えている管腔内人工器官の一実施例の概略前方図である。
【図13b】図13bは図13aの実施例の構造図である。
【図13c】図13cは図13aの実施例の概略上面図である。
【図14a】図14aは管腔内人工器官の一実施例の図である。
【図14b】図14bは管腔内人工器官の一実施例の図である。
【図15a】図15aは、下腹動脈内の人工器官側枝に結合されている左腸骨動脈内に人工器官幹部モジュールを備えているモジュール型人工器官を示している図である。
【図15b】図15bは、人工器官幹部と動脈モジュールとが、介入人工器官モジュールによって結合されている図15aのモジュール型人工器官を示している図である。
【図15c】図15cは、介入人工器官モジュールを示している図である。
【図16】図16は、環状ステントを備えている螺旋状の側枝を示している図である。
【図17】図17は、螺旋状側枝の遠位の小孔に縫い付けられた管状ステントを示している図である。
【図18】図18は、螺旋状のステントを備えている螺旋状の側枝を示している図である。
【図19】図19は、側枝小孔に巻き付けられている螺旋状のステントを示している図である。
【図20】図20は、側枝吻合部におけるステントを示している図である。
【図21a】図21aは、側枝と幹部との吻合部を妨害することなく支持するために使用される改造されたZ型ステントを示している図である。
【図21b】図21bは、側枝と幹部との吻合部を妨害することなく支持するために使用される改造されたZ型ステントを示している図である。
【図21c】図21cは、側枝と幹部との吻合部を支持するためのループを備えている改造されたZ型ステントを示している図である。
【図21d】図21dは、側枝と幹部との吻合部の遠位面を支持するための非対称湾曲部を備えている改造されたZ型ステントを示している図である。
【図22a】図22aは、移植片に取り付けられ且つ側枝と幹部との吻合部を支持するように配置されている図21a〜図21bのステントを示している図である。
【図22b】図22bは移植片に取り付けられ且つ側枝と幹部との吻合部を支持するように配置されている図21cのステントを示している図である。
【図23a】図23aは、側枝と幹部との吻合部の形状を維持するように設計されているステントの図である。
【図23b】図23bは、側枝と幹部との吻合部の形状を維持するように設計されているステントの図である。
【図23c】図23cは、側枝と幹部との吻合部の形状を維持するように設計されているステントの図である。
【図23d】図23dは、側枝と幹部との吻合部の形状を維持するように設計されているステントの図である。
【図23e】図23eは、側枝と幹部との吻合部に隣接している側枝の内側に固定されている図23a〜23dのステントを示している図である。
【図23f】図23fは、側枝と幹部との吻合部に隣接している側枝の内側に固定されている図23a〜23dのステントを示している図である。
【図24a】図24aは、図23a〜23dのステントを形成するための熱硬化性固定具の斜視図である。
【図24b】図24bは、図23a〜23dのステントを形成するための熱硬化性固定具の平面図である。
【図24c】図24cは、図23a〜23dのステントを形成するために使用されている熱硬化性固定具の一部分の斜視図である。
【図24d】図24dは、図23a〜23dのステントを形成するために使用される熱硬化固定具の側面図である。
【図25】図25は、人工器官幹部から伸長している多数の人工器官側枝を示している図である。
【図26】図26は、人工器官幹部から伸長している多数の人工器官側枝を示している図である。
【図27】図27は、人工器官幹部から伸長している多数の人工器官側枝を示している図である。
【図28a】図28aは内側螺旋状の側枝を示している図である。
【図28b】図28bは内側螺旋状の側枝を示している図である。
【図28c】図28cは内側螺旋状の側枝を示している図である。
【図29】図29は、内側螺旋状側枝に固定されているじゃま板を備えている人工器官の断面図である。
【図30】図30はポケット内の内側螺旋状側枝を示している図である。
【図31】図31は、ポケット内の内側螺旋状側枝の断面図である。
【図32a】図32aは、1以上の螺旋状側枝を備えている胸郭人工器官モジュールを示している図。
【図32b】図32bは、1以上の螺旋状の側枝を備えている胸郭人工器官モジュールを示している図。
【図32c】図32cは、1以上の螺旋状の側枝を備えている胸郭人工器官モジュールを示している図。
【図33】図33は側枝及び開窓を備えている人工器官の斜視図である。
【図34】図34は側枝及び開窓を備えている人工器官の斜視図である。
【図35】図35は側枝及び開窓を備えている人工器官の斜視図である。
【図36】図36は側枝及び開窓を備えている人工器官の斜視図である。
【図37】図37は図29〜32の人工器官の骨格構造の図である。
【図38】図38は図29〜32の人工器官の骨格構造の図である。
【図39】図39は図38の矢印Aの方向の人工器官の図である。
【図40】図40は図38の矢印Bの方向の人工器官の図である。
【図41a】図41aは、側枝及び開窓を備えている大動脈人工器官の斜視図である。
【図41b】図41bは、側枝及び開窓を備えている大動脈人工器官の斜視図である。
【図41c】図41cは、側枝及び開窓を備えている大動脈人工器官の斜視図である。
【図41d】図41dは、側枝及び開窓を備えている大動脈人工器官の斜視図である。
【図42a】図42aは、側枝及び開窓を備えている大動脈人工器官の斜視図である。
【図42b】図42bは、側枝及び開窓を備えている大動脈人工器官の斜視図である。
【図42c】図42cは、側枝及び開窓を備えている大動脈人工器官の斜視図である。
【図42d】図42dは、側枝及び開窓を備えている大動脈人工器官の斜視図である。
【図43】図43は、側枝が付けられた人工器官を配備するための装置を示している図である。
【図44】図44は、側枝が付けられた血管人工器官を配備するために使用される器具の一部分を示している図である。
【実施例】
【0022】
血管側枝人工器官は、人工器官幹部に関して長手方向に沿って且つ周方向に設けられている人工器官側枝によって形成することができる。このような人工器官側枝は、“螺旋状”の人工器官側枝と称されている。側枝伸長部は、トロンボーニング(トロンボーン型の結合)によって螺旋状の人工器官側枝の遠位端に結合される。
【0023】
人工器官側枝内の螺旋状の旋回は、人工器官側枝及び側枝伸長部間の連結部から人工器官幹部へと血流力をずらすことによって側枝伸長部にかかる力を減少させる。このことにより、側枝伸長部がこれらの力によって引っ張り出されるのが防止される。螺旋状の旋回はまた、人工器官幹部の半径方向の向き(“アクセス角度”)が広範囲に変化することも許容し且つ人工器官側枝又は側枝伸長部のよじれを防止する。この設計はまた、例えば層流を促進することによって血行動態を改良することもできる。
【0024】
この説明の理解を補助するために以下の定義を規定する。
【0025】
“人工器官“という用語は、身体の一部又は身体の一部の機能を置換するものを意味している。これは生理学系の機能を高めるか又は機能を追加する器具をも意味している。
【0026】
“管腔内“という用語は、人間又は動物の体内の管腔の内側に見出されるか又は配置することができる対象物を示している。管腔は現存の管腔又は外科的介入によって形成された管腔である。該管腔としては、血管、胃腸管の一部、胆管のような脈管、呼吸器系の一部等がある。従って、“管腔内人工器官“はこれらの管腔のうちの一つの内側に配置させることができる人工器官である。
【0027】
“ステント“という用語は、人工器官に堅牢性、拡張力又は支持力を付加する器具又は構造を意味している。Z型ステントは、交互に変わる柱部と山部(即ち屈曲部)とを有しており且つ円筒形の管腔を規定しているステントである。Z型ステントの“振幅”とは、単一の柱部によって結合されている2つの屈曲部間の距離のことである。Z型ステントの“周期”とは、屈曲部の合計の数を2で割った数又は柱部の受け入れ部の数を2で割った数である。
【0028】
“引き抜き力“という用語は、モジュール型の人工器官によって付与される部分的な又は最大の引き抜き力に対する最大抵抗力を意味している。2つの連結されたモジュールを有している人工器官の引き抜き力は、MTS Alliance RT/5(登録商標)引っ張り試験機(ミネソタ州イーデンプレーリーにあるMTS Corporation)によって測定することができる。MTS試験機は、機械を制御しデータを集め且つ処理するために使用されるコンピュータ端末に接続されている。MTS試験機の引っ張りアーム上に配置されているロードセルに加圧ポンプ装置が取り付けられている。人工器官の一端がこの加圧ポンプに結合され、加圧ポンプは人工器官が生体内に配備されたときに該人工器官に血液によってかけられる半径方向の圧力をシミュレートするために60mmHgの内部圧力をかける。人工器官の他端は密封される。人工器官は、人間の平均体温をシミュレートするために試験中は37℃の水浴内に完全に浸漬される。MTS機械は、人工器官が完全に分離するまで人工器官を0.1mmずつ増加させて引っ張る。コンピュータは、とりわけ該人工器官モジュールが分離に耐える最も大きな力、すなわち引き抜き力を記録する。
【0029】
“エンドリーク”という用語は、管腔内人工器官の周囲又は中の漏れを指している。エンドリークは、とりわけ、人工器官の生地を通して又はモジュール型人工器官の連結部を通して又は該人工器官の端部近くで生じる。エンドリークは動脈瘤の再加圧を生じさせる。
【0030】
“血管側枝”という用語は、主要な血管から側枝している血管を指している。血管側枝の例としては大動脈(即ち、本明細書における主要血管)に対する血管側枝である腹腔動脈及び腎動脈がある。別の例として下腹動脈は、本明細書における主要血管である総腸骨動脈に対する血管側枝である。従って“血管側枝”と“主要血管”とは相対する用語であることがわかるはずである。
【0031】
“人工器官幹部”という用語は、主要血管内を通る血液を迂回させる人工器官の一部分を指している。“幹部管腔”は該人工器官幹部を貫通して伸長している。
【0032】
“人工器官側枝”という用語は、人工器官に吻合されており且つ血管側枝内へ流れ込み且つ/又は該血管側枝内を流れる血液を迂回させる人工器官の一部分を指している。
【0033】
“周辺人工器官側枝”は、人工器官の側部に吻合されている人工器官側枝である。これは、“ズボンの脚部”側枝によってもたらされる人工器官側枝である“対側側枝”とは区別されている。この側枝は非対象であっても良い。すなわち、この2つの“脚部”は異なる直径又は長さを有することができる。
【0034】
“側枝伸長部”という用語は、血管側枝内に配備され且つ人工器官側枝に接続することができる人工器官モジュールを指している。“螺旋状”又は“螺旋状に”という用語は、人工器官幹部の外周及び該幹部の長手方向に向けられている人工器官側枝を指している。“螺旋状”という用語は、規則正しい螺旋又は360°全周に亘る螺旋に限られない。
【0035】
“長手方向に”という用語は、基準長手軸線とほぼ平行な方向、位置又は長さを指しており且つ螺旋状の向きの長さ方向成分である。
【0036】
“外周に沿って”という用語は、基準長手軸線を取り巻く方向、位置又は長さを指しており且つ螺旋状の向きの半径方向成分である。外周は、360°全周に限定されていないし一定の半径に限定されてもいない。
【0037】
“吻合部”という用語は、2つの管腔間の結合部、例えば、人工器官幹部及び2つの管腔を相互に流体連通状態にする人工器官側枝を指している。“吻合”という用語は、吻合部を形成するプロセスを指している。
【0038】
“入射角”という用語は、人工器官側枝の長手軸線と吻合部内を長手方向に延びている人工器官幹部上の線との交差角度を指している。
【0039】
“傾斜角”という用語は、吻合部において又はその近くで測定した、人工器官の長手軸線に対する人工器官側枝の平面外回転角度を指している。
【0040】
“アクセス角”という用語は、人工器官の長手軸線を中心とする側枝された人工器官の半径方向の向きの許容可能な範囲を指している。該人工器官側枝の遠位小孔は、側枝伸長部が血管側枝内に適正に配備されて人工器官側枝との間に結合部を形成できるようにこの範囲に亘って血管側枝に十分近づけられる。
【0041】
図1は、y字形状で人工器官幹部10に吻合されている人工器官側枝12の概略図である。側枝伸長部14は、人工器官側枝12との間にトロンボーン型の結合を形成している。側枝伸長部14は、人工器官幹部10に対して45°の角度16で位置決めされていて、人工器官全体が載置される予定の解剖学的構造に適合するようになされている。側枝伸長部14の角度16は、血圧及び人工器官12と側枝伸長部14との中の血流のモーメントの結果として該側枝伸長部がy方向の力15を支えるようにしている。
【0042】
側枝伸長部14と人工器官側枝12との間に結合は摩擦力によって維持されている。従って、側枝伸長部14によって支えられるy方向の力が前記結合を維持している摩擦力を超えると、側枝伸長部14は側枝12から分離する。分離すると人工器官側枝12と人工器官幹部10とを包囲している領域の再加圧が生じ得るので、これは患者にとって危険な結果となる。
【0043】
図2は本発明の一つの実施例の概略図である。この実施例においては、人工器官側枝22は人工器官幹部20に吻合されている。側枝伸長部25は人工器官側枝22との間にトロンボーン型の結合を形成している。側枝伸長部25は、人工器官幹部20に対して約60〜70°の角度24で配置されていて人工器官全体が載置される予定とされている解剖学的構造に適合しているが、あらゆる適切な角度で配置することができる。人工器官側枝22は、人工器官幹部20の周囲を旋回して部分的な螺旋形状を形成している。
【0044】
人工器官側枝22の角度24は、ちょうど図1の人工器官と同様に、側枝22内を流れる血流のモーメント及び生理学的な血圧の結果として、y方向へ流れる力を形成する。しかしながら、図1とは異なり、人工器官側枝22は、これらのy方向の力の多くを支え且つ人工器官幹部20への取り付け部27によって支持される。従って、取り付け部27は、連結部21及び人工器官側枝22上に配置される荷重の代わりにy方向の力の少なくとも一部を負担する。このことにより、分岐した人工器官において知られている一般的な障害を防止する。人工器官の伸長モジュール25は、人工器官側枝22とのトロンボーン型の連結部を形成することができる。
【0045】
図3aは本発明の別の実施例を示している。この実施例は、他の血管にも適用できるが、左腸骨動脈内へ配備し且つ左下腹動脈内へ分岐させるのに適している。右腸骨動脈内へ配備するのに適している実施例は、図3aの人工器官40の長手方向鏡像とすることができる。人工器官40は、人工器官幹部42と周囲の人工器官側枝44とを備えている。この人工器官40及び本明細書に記載されているその他のもの用として、人工器官側枝44は、図示されているように人工器官幹部42の前方で湾曲しているのが好ましいが、代替例として人工器官幹部42の後方で湾曲していても良い。人工器官側枝44は吻合部46を介して人工器官幹部42と流体連通している。吻合部46は、図示されているように漏斗管すなわち漏斗形状とされるのが好ましい。これは典型的な生理学的吻合とよく似ており且つ人工器官側枝44内への流れの血行動態を改良する。人工器官側枝44は、人工器官幹部42に縫合されて血液密シールを形成しているのが好ましい。人工器官幹部の近位端は、以下に説明する人工器官40の配備を容易にするために内部へのホタテ貝状の切断部を有している。
【0046】
人工器官幹部42は、綾織りからなり且つ多孔率が約350ml/分/cmのポリエステル織布(英国スコットランドのレンフルーシアにあるVascutek(登録商標)Ltd.,から入手可能である)によって作られるのが好ましい。人工器官幹部42と人工器官側枝44とはまた、少なくとも生体適合性のあらゆる他の材料によって作ることもできる。このような材料としては、例えば他のポリエステルの織物、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE及び当業者に公知の他の合成材料がある。コラーゲンのような天然生体材料、特に小腸管粘膜下組織(SIS)のような細胞外基質(ECM)として知られている誘導コラーゲン材料もまた極めて望ましい。ECMの他の例としては、心膜、胃粘膜下組織、肝臓基膜、膀胱粘膜下組織、組織粘膜下組織及び硬膜がある。SISは、特に有用であり、Badylakらの米国特許第4,902,508号、Carrの米国特許第5,733,337号、Cookらの米国特許第6,206,931号、Fearnotらの米国特許第6,358,284号、17 Nature Biotechnology 1083(1999年9月号)及びPCT/US97/14855の公開出願であるCookらによる1998年5月28日のWIPO国際公開WO98/22158に記載されている形態で作ることができる。これらの参考文献はこれらに言及することにより全てが参考として本明細書に組み入れられている。この材料は生理学的な力によって漏れないか又は滲出しないように非多孔質である。
【0047】
移植片材料は、生体適合性材料からなる多孔質ポリマーをも含んでいる。多孔質シートを形成することができる生体適合性ポリマーの例としては、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリラクチド、ポリグリコライド及びこれらの共重合体のようなポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE(ePTFE)及びポリ(フッ化ビニリデン)のようなフッ化ポリマー、ポリジメチルシロキサンの含むポリシロキサン並びにポリエーテルウレタン、ポリウレタン尿素樹脂、ポリエーテルウレタン尿素樹脂、炭素結合を含んでいるポリウレタン及びシロキサン区分を有するポリウレタンを含むポリウレタンがある。更に、本質的には生体適合性ではない材料は、該材料を生体適合性にするために表面改質を施すことができる。表面改質の例としては、材料表面から生体適合性ポリマーをグラフト重合させること、表面を架橋された生体適合性ポリマーでコーティングすること、生体適合性の官能基による化学的改質させること、へパリン又はその他の物質のような親和剤を固定化することがある。従って、多孔質シート内に形成されるあらゆるポリマーが、最終的な多孔質材料が生体適合性であるという条件で移植片材料を作るために使用できる。多孔質シートに形成することができるポリマーとしては、上に列挙したポリエステル、フッ化ポリマー、ポリシロキサン、ポリウレタンに加えて、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリアミド、及びポリスルフォンがある。多孔質シートは、生体適合性にするための処理又は改質を必要としない1以上のポリマーによって作られるのが好ましい。該多孔質シートは、生体適合性ポリウレタンを含んでいることが更に好ましい。生体適合性ポリウレタンの例としては、Thoralon(登録商標)(カリフォルニア州プレザントンにあるThoratec)、Biospan(登録商標)、Bionate(登録商標)、Elasthane(登録商標)、Pursil(登録商標)、Carbosil(登録商標)(カリフォルニア州バークレイにあるPolymer Technology Group)がある。
【0048】
多孔質ポリマーシートは、ポリウレタンであるThoralon(登録商標)を含んでいるのが好ましい。本明細書に組み入れられている米国特許出願公開第2002/0065552A1号に記載されているように、Thoralon(登録商標)はシロキサン含有表面改質添加剤を配合したポリエーテルウレタン尿素樹脂である。特に、このポリマーは基本ポリマーBPS−215と添加剤SMA−300との混合物である。添加剤の濃度は、基本ポリマーの0.5〜5重量%の範囲内とすることができる。BPS−215という構成要素(Thoratec)は、軟質部分と硬質部分とを含んでいる区分化ポリエーテルウレタンである。軟質部分は酸化ポリテトラメチレン(PTMO)によって作られ、硬質部分は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とエチレンジアミン(ED)との反応によって作られる。SMA−300構成要素(Thoratec)は、軟質部分としてのポリジメチルシロキサンと、硬質部分としてのMDIと1,4−ブタネジオルとの反応生成物とを含んでいるポリウレタンである。SMA−300を合成するプロセスは、例えば、米国特許第4,861,830号及び第4,675,361号に記載されており、これらの米国特許はこれらに言及することによって本明細書に組み入れられている。多孔質ポリマーシートは、基本ポリマーと添加剤とをジメチルアセトアミド(DMAC)のような溶媒内で溶解し且つ基本ポリマーと添加剤とに対する非溶媒である液体内で溶液流延させるか又は凝固させることにより固めることによって上記の2つの構成成分によって形成することができる。
【0049】
Thoralon(登録商標)は、ある種の脈管用途において使用されており且つ耐血栓性、高い引張り強度、低い水分吸収率、低い臨界表面張力及び良好な屈曲寿命を特徴としている。Thoralon(登録商標)は、生体安定性であり且つ生体安定性及び耐漏れ性を必要とする長期に亘る血液接触用途において生体内で有用であると考えられている。Thoralon(登録商標)は、その可撓性により、弾性及びコンプライアンスが有益である腹大動脈のような比較的大きな血管内で有用である。
【0050】
Thoralon(登録商標)の他に、他のポリウレタンも多孔質性シートとして使用することができる。例えば約1.0〜約2.5の範囲のMDI/PTMOモル比を有するBPS−215構成要素を使用することができる。このようなポリウレタン尿素樹脂は、軟質部分とジイソシアネート及びジアミンによって形成された硬質部分とを含んでいるのが好ましい。例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポロシロキサン(即ち、ポリジメチルシロキサン)及び比較的高い同族列のジオールによって作られたその他のポリエーテル軟質成分を備えたポリウレタン尿素樹脂を使用しても良い。これらの軟質部分のいずれかの混合物を使用しても良い。軟質部分はまたアルコール末端基かアミン末端基かを有していても良い。これらの軟質部分の分子量は約50から約5,000g/モルまで変化しても良い。
【0051】
硬質部分の構成要素として使用されるジイソシアネートは、式OCN−R−NCOによって表わすことができる。ここで、−R−は脂肪族、芳香族、脂環族の成分と芳香族成分との混合物である。ジイソシアネートの例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、デカメチレン1,10ジイソシアネート、シクロヘキサン1,2−ジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、(及び異性体)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート−e、1−メキシルフェニール2,4−ジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート及びこれらの混合物がある。
【0052】
該硬質部分の構成要素として使用されるジアミンとしては、脂肪族アミン、芳香族アミン及び脂肪族成分と芳香族成分との両方を含んでいるアミンがある。例えば、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、ぺンタンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、m−キシレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、2−メチペンタメチレンジアミン、4,4’−メチレンジアニリン及びこれらの混合物がある。アミンはまた、その構造内に酸素原子及び/又はハロゲン原子を含んでいても良い。
【0053】
ポリウレタン尿素樹脂に加えて、他のポリウレタン好ましくはジオールによって伸ばされた鎖を有するものを多孔質シートとして使用しても良い。陽イオン側鎖、陰イオン側鎖及び脂肪族側鎖によって改質されたポリウレタンも使用できる。例えば米国特許第5,017,664号を参照のこと。ポリウレタンは、ジメチルホルムアルデヒド、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又はこれらの混合物のような溶媒内で溶解される必要があるかも知れない。
【0054】
これらのポリウレタンの軟質部分は、上記した軟質部分のいずれか例えばポリテトラメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリシロキサン(すなわち、ポリジメチルシロキサン)、比較的高い同族列のジオールによって作られた他のポリエーテル軟質部分及びこれらの軟質部分の混合物を含んでいても良い。この軟質部分は、アミン末端基又はアルコール末端基を有していても良い。
【0055】
硬質部分は、上に列挙したジイソシアネートのうちのいずれか、例えば、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、デカメチレン1,10ジイソシアネート、シクロヘキサン1,2−ジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート(及び異性体)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、1−メトキシフェニル2,4−ジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート及びこれらの混合物によって作ることができる。
【0056】
硬質部分は、1以上のポリオールによって作ることができる。ポリオールは、脂肪族、芳香族、脂環族とすることができ又は脂肪族成分と芳香族成分との混合物を含んでいても良い。例えばポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルアルコール、1,6−ヘキサネジオール、1,8−オクタネジオール、プロピレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、グリセロール又はこれらの混合物とすることができる。
【0057】
更に、ポリウレタンもまた、例えばポリジメチルシロキサン、フルオロポリマー、ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド又はその他の適切な基のような表面活性末端基によってエンドキャップされていても良い。例えば、本明細書に参考として組み込まれている米国特許第5,589,563号に開示されている表面活性末端基を参照のこと。
【0058】
多孔質ポリマーシートは、シロキサン−ポリウレタンとも称されるシロキサン部分を有しているポリウレタンを含んでいても良い。シロキサン部分を含んでいるポリウレタンの例としては、ポリエーテルシロキサン−ポリウレタン、ポリカーボネートシロキサンーポリウレタン及びシロキサン−ポリウレタン尿素樹脂がある。特に、シロキサン−ポリウレタンの例としては、Elast-Eon2(登録商標)及びElast-Eon3(登録商標、オーストラリアのビクトリアにあるAortech Baiomaterials)、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)及びポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリエーテル系芳香族シロキサン−ポリウレタン例えばPursil(登録商標)-10、-20及び-40 TSPU、Pursil AL-5(登録商標)及びAL-10 TSPU(登録商標)のようなPTMO及びPDMSポリエーテル系脂肪族シロキサン−ポリウレタン、Carbosil(登録商標)-10、-20及び-40 TSPU(全てがPolymer Technology Groupから入手可能である)がある。Pursil(登録商標)、Pursil-AL(登録商標)及びCarbosil(登録商標)は、軟質部分にシロキサンを含んでいる熱可塑性エラストマーウレタン共重合体であり、この共重合体のシロキサンのパーセントは等級名で呼ばれている。例えば、Pursil-10(登録商標)は10%のシロキサンを含んでいる。これらのポリマーは多段階バルク合成によって合成される。多段階バルク合成においては、DDMSがPTMO(Pursil)(登録商標))又は脂肪族ヒドロキシ末端ポリカーボネート(Carbosil(登録商標))を有するポリマーの軟質部分内に混和される。硬質部分は、芳香族ジイソシアネートであるMDIの低分子量のグリコール連鎖延長剤との反応生成物からなる。Pursil-AL(登録商標)の場合には、硬質部分は芳香族ジイソシアネートから合成される。次いで、ポリマー鎖がシロキサン又はその他の表面改質末端基によって末端処理される。シロキサン−ポリウレタンは、典型的には比較的低いガラス変態温度を有しており、これは多くの一般的な材料と比較して高い柔軟性を有するポリマー材料を提供する。更に、シロキサン−ポリウレタンは、改良された環境応力亀裂抵抗を含む高い加水分解及び酸化安定度を呈する。シロキサン−ポリウレタンの例は、本明細書に参考として組み入れられている米国特許出願公開第2002/0187288A1号に開示されている。
【0059】
多孔質のポリマーシートは、ポリテトラフルオロエチレン又は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含んでいても良い。ePTFEからなるフィルム又はシートは、典型的には更に処理する必要なく多孔質である。ePTFEの構造は、微小繊維によって相互に結合されている節(ノード)を含むことを特徴としている。多孔質のePTFEは、例えばPTFEを有機潤滑剤と混ぜ合わせて比較的低い圧力で圧縮することによって形成することができる。次いで、圧縮したポリマーをラム押出機を使用してダイから押し出し、乾燥させるか又はその他の抽出方法によって押し出したポリマーから潤滑剤を除去する。乾燥させた材料は、次いで高温で迅速に延伸させ且つ/又は拡げる。このプロセスは、微小繊維によって相互に連結された細長い節を特徴とする微細構造を有しているePTFEのためのものである。典型的には、これらの節は延伸方向に直角な長手軸線方向に配向される。延伸後に、この多孔質のポリマーは材料をその延伸状態に維持しつつその融点より高い温度まで加熱することによって焼結される。これは、微細構造をその拡張形態又は延伸形態に恒久的に固定化するためのアモルファス固定化工程であると考えることができる。ePTFEの構造及び多孔率は、例えば米国特許第6,547,815 B2号、第5,980,799号、第3,953,566号に開示されており、これらは全てこれらに言及することによって本明細書に組み入れられている。多孔質で中空の繊維の構造はPTFEによって作ることができ、これらの多孔質の中空繊維は、寄せ集めて凝集した多孔質シートを提供することができる。PTFEを含んでいる多孔質の中空繊維は例えば米国特許第5,024,671号に開示されており、該米国特許はこれに言及することにより本明細書に参考として組み入れられている。
【0060】
ポリマーは、標準的な処理方法を使用して処理することにより多孔質シートとすることができる。標準な処理方法としては、流し込み成形、吹き付け塗り、浸漬成形のような溶媒に基づく方法及び溶融押出方法がある。多孔質シートを処理するために、処理中に抽出可能な細孔形成剤を使用することができる。抽出可能な細孔形成剤の例としては、塩化カリウム(kcl)及び塩化ナトリウム(Nacl)のような無機塩類、有機塩類並びにポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリビニルピロリドン(PVP)のようなポリマーがある。細孔形成剤は、約10μm〜約500μm、約20μm〜約100μm、約10μm〜約40μmの粒子サイズを有することができる。ポリマーに対する細孔形成剤の量は、約20重量%(wt%)〜約90重量%、約40重量%〜約70重量%とすることができる。このような細孔形成剤の大きさ及び量は、細孔形成剤の抽出に従う高い多孔率をもたらすことができる。多孔率は、最終製品の約20重量%〜約90重量%及び約40重量%〜約70重量%とすることができる。
【0061】
多孔質シートは、孔同士が連結されている微孔質連続気泡構造の形態とすることができる。微孔構造は、ポリマーと1以上の発泡剤との混合物を押し出すことによって形成することができる。微孔質ポリマー発泡材は、高温高圧下でポリマーに超臨界COを曝してポリマーを超臨界COに含浸させ、次いで該ポリマーを冷却することによって製造することができる。微孔質発泡材は、例えば米国特許第4,473,665号及び第5,160,674号に記載されているようにして製造することができる。これらの米国特許は、これらに言及することによって本明細書に参考として組み入れられている。発泡プロセスは、最初に圧力下で窒素又はCOのような不活性ガスをポリマー内に溶解し、次いで圧力又は温度を変えることによってポリマー内のガスの溶解度を急速に低下させて、熱力学的不安定性を誘発することで微孔を形成することによって、押し出されたチューブ上で行なうことができる。微孔質ポリマー構造の例は、例えば米国特許第6,702,849B1号に開示されている。該特許はこれに言及することにより本明細書に参考として組み入れられている。
【0062】
多孔質Thoralon(登録商標)は、ポリエーテルウレタン尿素樹脂、表面改質添加剤及び粒状物質を溶媒内で混ぜ合わせることによって形成することができる。粒子は溶媒に対して不溶性であるのが好ましく、粒子は種々の粒子又は細孔形成剤のいずれとすることもできる。例えば、溶媒はDMACとすることができ、粒子は無機塩類とすることができる。該組成物は約5重量%〜約40重量%のポリマーを含むことができ、この範囲に含まれる種々のレベルのポリマーを所定の方法において必要とされる粘度となるように細かく調整するために使用することができる。該組成物は、幾つかの吹き付け塗り方法の実施例においては5重量%未満のポリマーを含むことができる。これらの粒子は組成物内へ混ぜられる。混合は、例えば大気圧下で約18℃〜約27℃の温度範囲で約1時間回転ブレード型ミキサーによって行うことができる。組成物全体がシートとして流し込み成形されるか又は心棒若しくは型のような部材上に塗布される。一つの例においては、該組成物は乾燥されて溶媒が除去され、乾燥された材料は、次いで蒸留水浴内に浸漬されて粒子が溶解され且つ材料内に細孔が残される。別の例においては、組成物は蒸留水の浴内で凝固される。ポリマーは水に溶けないので急速に固化して粒子の一部又は全てを捕捉する。粒子は次いでポリマーから溶解されて材料内に細孔が残される。抽出のために温水例えば約60℃の温水を使用することが望ましい。結果的に得られるボイド対体積の比率は、ポリマーと塩類との合計体積に対する塩類の比率にほぼ等しい。結果的に得られる細孔の直径もまた塩類の粒径にほぼ等しい。
【0063】
多孔質のポリマーシートは、約0.40〜約0.90のボイド対体積比を有することができる。このボイド対体積比は、約0.65〜約0.80であるのが好ましい。ボイド対体積比は、細孔の体積をある体積の細孔を含んでいるポリマー層の全体積によって割ったものとして規定される。ボイド対体積比は、AAMI(Association for the Advancement of Medical Instrumentation(医療器具開発協会))VP20−1994、Cardiovascular Implants--Vascular Prosthesis(心臓血管インプラント−血管内人工器官)第8.2.1.2章、Gravimetric Determination of Porosity(多孔率の重量による測定方法)に記載されているプロトコルを使用して測定することができる。ポリマー内の細孔の平均細孔径は、約1ミクロン〜約400ミクロンである。この平均細孔径は、約1ミクロン〜約100ミクロンであるのが好ましく、約1ミクロン〜約10ミクロンであるのが更に好ましい。平均細孔径は、走査電子顕微鏡(SEM)による像に基づいて測定される。多孔質Thoralon(登録商標)の形成は、例えば米国特許第出願公開第2003/0114917A1号及び第2003/0149471A1号に説明されている。これらの出願公開は、これらに言及することにより本明細書に参考として組み込まれている。
【0064】
人工器官側枝44は、必須ではないが、側枝伸長部に結合されるのが好ましい。人工器官側枝44と側枝伸長部55とは相補形の環状の襞を備えているのが好ましい。この襞によって捩れるおそれが減少し人工器官の開存性を維持する補助となる。トロンボーン型の連結部における相補形の襞又はその他のタイプの突出部もまた密封を維持し且つ引張り出しを防止する補助となる。互いに重なり合っているモジュール上の相補形の突出部は、相互に係合して、対向している接触面間の面接触力を最大にする。人工器官側枝44及び側枝伸長部55もまた部分的にのみ襞が付けられていても良い。
【0065】
図3aに示されている襞は、人工器官側枝44を例えばほぼ同じ直径の心棒上に取り付けることによって形成される。人工器官側枝44の周囲に、糸、ワイヤー又はその他のフィラメントが螺旋状に巻き付けられている。ここに示されているアセンブリは、次いで8時間に亘って138℃の温度まで加熱される。他の温度とすることもできる。典型的には、温度が高ければ高いほど、適切な襞付けに必要とされる時間は短くなり低ければ低いほど長くなる。このことにより、人工器官の包囲されている部分に螺旋状の湾曲が誘起される。環状の襞はまた、人工器官側枝44に環状のフィラメントを取り付けること及びこのプロセスの他のステップを行なうことによっても形成することもできる。襞の山部同士は、好ましくは10mm当たり5個の湾曲山部が存在するように適当な距離だけ隔てることができる。襞が付けられた連結部と襞を形成するための方法とは、2004年10月8日に出願された“連結可能なモジュールを備えた管腔内人工器官(Endoluminal Prosthesis with lnterconnectable Modules)”という名称の米国特許出願第10/962,001号(米国特許出願第2005/0113905号)に更に詳しく説明されている。この出願はこれに言及することにより本明細書に組み入れられている。
【0066】
人工器官モジュール40の好ましい大きさ及び形状は、移植される場所の解剖学的構造と、この人工器官モジュール40が結合される対応するモジュールとに依存する。生理学的変数、配備特性及びその他の要因もまた人工器官幹部の適正な大きさ及び形状の決定の一因となる。人工器官幹部42は、腸骨動脈内に配備されるように設計されている場合には、図示されているようにその全長に亘って直径が12mmであるのが好ましいが、テーパー、旋回又はその他の適切な幾何学構造を有していても良い。本明細書に記載されている人工器官のいずれの寸法も単に例示として提供されたものであり、特定の患者の解剖学的構造に適合するように変えられるのが好ましい。
【0067】
ステント50,52,53は、人工器官の開存性を維持し且つ周囲の血管組織に対する適切な密封を確保する。ステントの設計及び配置の一つ目的は、それが内側用のものであるか外側用のものであるかに拘わらず、金属間の接触を防止し、異種合金間の接触を防止し、微細動作を最少化することである。ステントの大きさ、間隔及び設計は、蛇行する解剖学的構造内においても、ステント同士の接触が無いように決定されるべきである。ステントは開存性を維持すると共に材料の摩耗及びステントの材料疲労を減じつつ人工器官の可撓性を最大化するように配置されるのが好ましい。更に、ステントは、人工器官側枝と干渉しないこと及び電解腐食の可能性を最少にし且つ適切な継ぎ目の安定性を確保することが好ましい。ステントの振幅、間隔、及びぐらつきは各人工器官の設計に対して最適化するのが好ましい。ここに記載されているステントのいずれもが、人工器官の移動を小さくすることの補助となる逆棘部を有している。
【0068】
Z型ステントの構造は大動脈の真直ぐな部分にとって好ましく、これは、重要な半径方向の力と何らかの長手方向の支持との両方を付与する。蛇行する解剖学的構造、側枝又は吻合においては、代替的なステント又はZ型ステントの設計に対して改造を加えたものを使用してステント同士の接触を避けることが好ましい。更に複雑な解剖学的構造の場合においては、外側ステントは、血管側枝へのアクセス、密封、固定を確保するために使用されるワイヤー及びその他の器具と撚り合わせられる状態となる可能性を有している。幾つかの例においては、ステントのうちの幾つかを人工器官の内側面に固定することが望ましい。ここに記載されているZ型ステントは、標準的な医療用等級のステンレス鋼によって作られ且つ標準的な銀蝋(鉛ゼロ/錫ゼロ)を使用して蝋付けされるのが好ましく、その他のステントは、ニチノール又はその他の形状記憶金属によって作られる。
【0069】
図3aに示されているように、ステント50,52、53は、内側50及び外側52,53の両方において人工器官40に固定されるのが好ましい。図示されているように14ゲージか16ゲージのGianturco型のZ型ステント(インディアナ州ブルーミントンにあるCook Incorporatedから市販によって入手可能である)が採用されるのが好ましい。ステント50,52、53は、山部同士間で測定して4mmの間隔であるのが好ましい。山部59は、相対的な接触が最も少ないように互いにずらされているのが好ましい。ステント50,52は、振幅41が14mmであるのが好ましい。吻合部46に最も近いステント53の振幅は、吻合部46の近くを除いて22mmであるのが好ましく、吻合部46の近くでは、振幅は吻合部46と干渉しないように11mmであるのが好ましい。このステント53は内側に固定されている。これらのステントは自己拡張型であるのが好ましいが、1つ以上はバルーン拡張型であっても良い。
【0070】
少なくとも一つのステント(図示せず)が人工器官側枝44と関連付けられており、これは、人工器官側枝44の近くの継ぎ目47のすぐ下方に取り付けられるのが好ましい。このステントは、吻合部46を開口状態に保つために且つ人工器官側枝44が曲げられるときのねじれを防止するために使用されている。Prolene(登録商標)5−0縫合糸(図示せず)が遠位の密封ステント50のために使用されるのが好ましく、一方、他の全てのステント52,53に対しては、ポリエステル4−0縫合糸(図示せず)が使用される。これら2つの一般的な縫合糸は支柱部57の各々に結び付けられるのが好ましく、各山部59に一本の縫合糸が結び付けられるのが好ましい。
【0071】
人工器官側枝44の入射角は約20°〜約60°であるのが好ましく、人工器官幹部42に対しては約45°であるのが更に好ましい。吻合部46における傾斜角は約0°〜約30°であるのが好ましい。人工器官側枝44は、吻合部約46から約4mmの距離より近づかない位置で3つの隔置された縫合糸(図示せず)によって人工器官幹部42にしっかりと固定されるのが好ましい。
【0072】
以下において更に詳細に説明するように、この人工器官を配備するために標準的な管腔内技術が使用できる。荷重に関する問題により20フレンチのような比較的大きなシースの使用を認可できない状態では、18フレンチのシースが使用される。人工器官がX線透視法によって監視される場合には、移植片の向きを補助するために標準的なX線不透過性の金マーカー(インディアナ州ブルーミントンにあるCook Incorporated)が使用されるのが好ましい。
【0073】
図3bは、図3a人工器官40の代替的な斜視図である。この図は、吻合部46の形状を示している。吻合部46の大きさ及び形状は、層流及びその他の確実な血行動態特性を促進する。この種の吻合部を形成する方法を図5に関して以下に説明する。
【0074】
人工器官40が埋め込まれた後に、人工器官側枝44の遠位の小孔54は、主要血管と血管側板との間の吻合部の近くに位置決めされるのが好ましい。次いで図3cに示されている側枝伸長部55を人工器官側枝44との間にトロンボーン型の結合を形成するように埋め込むことができる。密封連結を促進するためには、人工器官側枝44の遠位小孔54と側枝伸長部55との間の連結部に1mm以下の直径差があることが好ましい。側枝伸長部55は、対応する襞48同士の間のシール又は嵌合と干渉する可能性がより少ないステント好ましくは内部ステントを備えている。側枝伸長部55はまた、適正な大きさのViabahn(登録商標)管腔内人工器官(デラウェア州ニューアークにあるW. L. Gore & Associates, Inc.,)、Fluency(登録商標)自己拡張型ニチノールステント移植片(アリゾナ州テンピにあるBard)又はiCast(登録商標)カバー付きステント(ニューハンプシャー州ハドソンにあるAtrium)とすることができる。この側枝伸長部の一端又は両端はニチノール製のリング又はコイルを備えており、近位側のリング又はコイルは図17の螺旋状側枝内の対応するニチノール製のリング又はコイルと係合するのが好ましい。このステントは、PTFE、ePTFE、ポリエステル織布、Thoralon(登録商標)又はその他の材料によって覆われるか又は覆われていないか又は部分的に覆われることができる。これらのステントは自己拡張型とするか又はバルーン拡張型とすることができる。
【0075】
図4aは人工器官幹部62と人工器官側枝64とを備えている人工器官60の上面図である。この人工器官60は、右総腸骨動脈内及び右下腹動脈への側枝内に配備されるように設計されているが、他の血管内へ配備できるようにすることもできる。人工器官側枝64は、人工器官幹部62の外側表面に沿って長手方向且つ周方向に、すなわち長手軸線75を中心とする螺旋形態で配置されている。図4aに示されている人工器官側枝64は、図4aに示されているように、吻合部の中心点77から遠位小孔65の中心点までを測定した場合に、人工器官幹部62を中心に195°の(すなわち半円周より大きい)旋回を形成している。この図は、人工器官側枝64の遠位小孔65が30°斜めに切られていることを示している。このことによりアクセス角が増大され且つ側枝伸長部の挿入が容易にされる。図4aの人工器官60の側面図が図4b及び4cに示されている。人工器官60は、人工器官幹部62の近くに3つの外側Z型ステント66を備えている。人工器官の骨格構造図である図4cは、吻合部68を跨っている内側Z型ステント70と遠位の先端74上の内側ステント72とを示している。図5a〜5dには、大きな吻合部68を形成するための一つの方法が示されている。吻合部に隣接しているZ型ステント70は、移植片の内側又は外側に取り付けられている。人工器官幹部62の可撓性は、人工器官幹部62のステント間の織地に環状又は螺旋状の襞を付けることによって増大される。
【0076】
図5aは、拡大された又は“涙滴形状”の吻合部を形成する方法を示している。人工器官側枝80のための原材料は、典型的には、ポリエステルからなる人工器官織布のチューブ状の断片である。ある長さを有するこのチューブ状人工器官織布はまた近位端84に向かってラッパ状に広がっている。人工器官側枝80の近位端84は、図示されているように、人工器官側枝80の長手軸線に対して直角に切断するか又は斜めに切断するか若しくは別の形状とすることができる。人工器官側枝80の近位端84は線82に沿って切断されている。線82はチューブの軸線と平行である必要はない。次いで、図5bに示されているように、近位端84は外側に広げられる。外側に広げた後に、続いて近位端84は更に図5cに示されている新しい外周86を形成するように更に整形される。図5bに示されている近位端84の広げられた外周89は、図5dに示されているように、広げられた外周89に適合する形状及び大きさの人工器官幹部88の吻合部(図示せず)の外周に縫い付けられるのが好ましい。継ぎ目は血液に対して液密であるのが好ましい。この吻合部は、人工器官側枝80を斜めに向けるために、人工器官幹部88の軸線に対してどのような向きにむけることもできる。次いで、人工器官側枝80は、人工器官幹部88に対して長手方向且つ周方向に位置決めされるように人工器官幹部88に取り付けられるのが好ましい。
【0077】
図6aは人工器官90を示しており、該人工器官からは2つの螺旋状の周辺人工器官側枝92,94が伸長している。この人工器官は、人工器官側枝92,94が腎動脈へと伸長できるように動脈内に位置決めされるように設計されているが、この人工器官の構造は他の血管内で使用できるようにすることもできる。次いで、側枝伸長部は人工器官側枝92,94との間にトロンボーン型の結合を形成するように腎動脈内に位置決めされる。カバーが付けられていないステント96は副腎固定ステントであり、逆棘部(図示せず)を有していても良い。図6の人工器官90の骨格構造図が図6bに示されている。ステント97は吻合部98の近くにあるので、人工器官90の遠位端93に最も近いステント95は内側に取り付けられるのが好ましい。吻合部98は、図示されているようなものとすることができ又は図5に関して上記した大きな吻合とすることができる。人工器官側枝92,94は、図示されているように人工器官90の遠位端93から離れる方向に傾斜していても良く又は人工器官90の遠位端93に向かって傾斜していても良い。人工器官側枝92,94の開存性を保つためのステント(図示せず)が使用されても良い。付加的な人工器官側枝を人工器官90に吻合させて、血液を腹腔動脈、SMA動脈及び/又はその他の血管側枝へと迂回させることができる。
【0078】
図7aには、螺旋状の対側人工器官側枝112を備えた人工器官110の骨格構造図が示されている。人工器官110は、右腸骨動脈内に配備され且つ下腹動脈内へ分岐するように設計されている。分岐116の遠位側には、ある長さの人工器官側枝112が人工器官幹部114に対して長手方向且つ周方向に位置決めされており、該側枝はその長さに沿って継ぎ目が無い。人工器官側枝112の長手方向及び周方向の位置は、人工器官側枝112の遠位小孔120の近くで且つ更に近位側で1以上の縫合糸(図示せず)によって固定されている。この人工器官及びその他の人工器官に対しては、人工器官側枝112は分岐116の近位側の人工器官幹部114内へと伸長していて、側枝管腔(図示せず)が人工器官幹部114の管腔(図示せず)内から始まるようになされている。
【0079】
人工器官110は、上記したポリエステル織布によって作られているのが好ましく、人工器官側枝112は襞が付けられているのが好ましい。ステントは、Prolene(登録商標)5-0縫合糸を使用して取り付けられている。X線透視法によって人工器官110の位置及び向きを示すために、金マーカー(図示せず)が種々の位置で人工器官110に取り付けられているのが好ましい。
【0080】
人工器官側枝112を開存状態に保ち且つ捩れを防止するために、内側ステント123が、人工器官側枝112内の継ぎ目118の若干下方で且つ分岐116の近くに使用されている。このステント123は人工器官110の内側にあるのが好ましいが、外側に配置することもできる。ステント123は、直径が6ゲージで振幅が8mmで繰返し数が6であるのが好ましい。2つの人工器官幹部ステント126が分岐116の近位側に取り付けられており、これらのステント126は、振幅が17mmで直径が20ゲージで繰返し数が9であるのが好ましい。人工器官110はまた分岐116の遠位側に配置されている4つのステントをも備えており、これらのステント128は、振幅が14mmで直径が14ゲージで繰返し数が7であるのが好ましい。ステント126,128は相対的に約4mm隔てられており、遠位のステント128の山部同士はこれらの間の接触を最少にするようにずらされている。人工器官幹部114上にある最も遠位にある二つのステント125は、側枝伸長部の配置の障害を防ぐように内面側に取り付けるようにできる。
【0081】
人工器官側枝112の遠位小孔120は直径が6mmであるのが好ましい。人工器官幹部114の遠位端122は直径が14mmであるのが好ましく、人工器官幹部114の近位小孔130は直径が20mmであるのが好ましい。人工器官幹部114の直径は12mmまで小さくすることができる。人工器官幹部114の近位端124と人工器官側枝112の遠位端132との間の距離は約65mmであるのが好ましい。これらの寸法は単に例示的に示されたものであり、特定の患者の解剖学的構造に適合するように変えることができる。
【0082】
図7bは、図7aの人工器官の上面図である。人工器官側枝112は、人工器官幹部114の長手軸線139を中心として151°だけ回転しているのが好ましい。
【0083】
図8a〜8dは、図7a〜7bに示されている側枝が設けられている人工器官に似た対側の側枝が設けられている人工器官140の種々の斜視図である。この人工器官140は、右腸骨動脈内に配置され且つ右下腹動脈内へと分岐するように設計されている。放射線不透過性のマーカー142が人工器官140に縫い付けられている。人工器官側枝144は、襞が付けられたポリエステル織布によって作られているのが好ましい。図8dにおいて、人工器官側枝144と人工器官幹部141との間の継ぎ目146がはっきりと見える。人工器官幹部141の遠位端145に最も近いステント(図示せず)は内側に取り付けられている。継ぎ目146の遠位側に配置されている外側ステント143の一部又は全ては内側へと動かすことができる。継ぎ目146における人工器官側枝144もまた斜めに切断されて比較的大きな小孔を提供している。
【0084】
図9a〜9bは、図7に関して示されているものと似た対側の側枝が設けられた人工器官の付加的な実施例を示している。図9aは、内側ステント160と外側ステント162との両方を示している骨格構造図である。図9の人工器官は人工器官側枝161を備えており、この人工器官側枝161は、分岐168から垂直方向下方へと伸長し、次いで人工器官幹部170の周囲に沿って湾曲している。第二の最も遠位のステント163もまた内側に固定することができる。
【0085】
図10a〜10bは、以下において図11a〜11cに示されている人工器官の概略図であり、対側の側枝が設けられている人工器官210の別の実施例を示している。この人工器官210は、総腸骨動脈内に配備され且つ下腹動脈内へと分岐するように設計されているが、あらゆる血管側枝内で使用できるようにすることができる。人工器官212の長手方向及び周方向の位置は、人工器官側枝212の遠位端220の近くで且つ遠位端220から更に近位側の1以上の縫合によって固定されている。人工器官210はポリエステル織布によって作られるのが好ましく、人工器官側枝212は襞が付けられたポリエステルによって作られるのが好ましい。図10bは、人工器官幹部214に対する人工器官側枝212の相対的な向きを示しており、人工器官側枝212は人工器官幹部214の周囲を螺旋状に151°旋回しているのが好ましい。
【0086】
図11a〜11cは、右腸骨動脈内に配備し且つ下腹動脈内へと分岐するのに適した側枝が設けられた対側の人工器官211を示している。人工器官幹部233は、直径が約20mmの近位部分217と直径が約12mmの遠位部分219とを備えている。人工器官側枝213は、直径が約20mmの近位部分217から始まっており且つ直径約12mmの遠位部分219の周囲に螺旋状の経路を有している。人工器官側枝213の螺旋状経路は周方向が約180°であり且つ継ぎ目225から長手方向に約60mmである。ピッチは約45°であるのが好ましい。人工器官側枝213は、その全長に亘って直径が6mmであり且つ襞が付けられたポリエステル移植片材料によって作られているのが好ましい。
【0087】
図11aに示されている内側ステント223は、継ぎ目225に若干重なっていて分岐227と同面上にあって人工器官側枝213が曲げられたときに小孔を開口状態に保ち且つ捩れるのを防止するようになされている。このステント223は、人工器官211の内側面に取り付けられるのが好ましいが、外側に配置することもできる。ステント223は、厚みが6ゲージであり高さが8mmであり繰返し数が6であるのが好ましい。2つのステント226が分岐227の近位側に取り付けられており、これらのステント226は、振幅が18mmであり直径が20ゲージであり繰返し数が10であるのが好ましく且つ相対的に2mmだけ隔てられているのが好ましい。人工器官211はまた分岐227の遠位側に配置されている4つのステント228をも備えており、これらのステント228は、好ましい14ゲージの厚みと14mmの振幅と7の繰返し数とを有しており且つ3mmだけ相互に隔てられている。2つの最も遠位のステント229は内側に取り付けられるのが好ましい。これらのステントは、Prolene(登録商標)5-0を使用して取り付けられるのが好ましい。X線透視法によって人工器官211の位置を示すために、金マーカー215が人工器官211の種々の位置に取り付けられている。
【0088】
人工器官側枝213の遠位小孔220は直径が6mmであるのが好ましく、人工器官幹部214の遠位端222は直径が12mmであるのが好ましく、人工器官幹部214の近位小孔230は直径が20mmであるのが好ましい。この人工器官211の寸法は、本明細書に記載した他の人工器官と同様に特定の患者の解剖学的構造に適合しているのが好ましい。人工器官幹部のステント226,228の山部231同士は、これらの間の接触を最少にするようにずらされている。人工器官幹部214の近位端224から人口器官側枝212の遠位小孔222までの距離は約70mmであるのが好ましい。この人工器官211の配備は螺旋状の構造によって比較的容易になされる。この螺旋状の構造はy字形状又はt字形状の側枝付きの人工器官の約3倍の“アクセス角度“を可能にする。
【0089】
図12aは周辺側枝が付けられた人工器官250の骨格構造図である。この人工器官250の人工器官側枝252は、人工器官幹部254の側部からある角度で伸長しており、次いで、人工器官幹部254に向かって後方へ曲がって該幹部に縫合糸によって固定されている。人工器官側枝252と人工器官幹部254との間には隙間256が存在している。人工器官側枝252は襞が付けられているのが好ましく(図示せず)、継ぎ目が無く且つその全長に亘る直径が約6mmである。人工器官幹部254は継ぎ目が無くその全長に亘る直径が12mmである。人工器官側枝252は、第一の近位のステント253と第二の近位のステント255との間で人工器官幹部254に吻合されている。
【0090】
図12bは図12aの人工器官の外面図である。図示されているように、頂部の2つのステント253,255のみが人工器官250の外側に取り付けられている。図12aに示されている他のステントは内側に取り付けられている。吻合部259の近くのステント253,255は、これらが人工器官250の配備において使用されるガイドワイヤ(図示せず)に引っ掛からないように内側に固定されている。図12cは図12a及び12bの人工器官の上面図である。人工器官側枝252は、人工器官幹部254の周りを137°に亘って旋回しており且つ位置261において人工器官幹部254に取り付けられている。
【0091】
周辺側枝が付けられた人工器官300の外面図が図13aに示されている。人工器官幹部302と人工器官側枝304とは、両方ともポリエステルによって作られているのが好ましい。人工器官側枝304は襞が付けられており(図示せず)且つ継ぎ目無しであるのが好ましい。振幅が14mmと22mmの両方のZ型ステントが縫合(図示せず)によって人工器官300に取り付けられているのが好ましい。図13bに示されている内側遠位のステントを取り付けるためにProlene(登録商標)5-0が使用され、近位のステント310を取り付けるためにポリエステル4-0が使用されている。人工器官幹部302のステント306間には襞301が設けられているのが好ましく、これらは幹部302の可撓性を増し且つ捩れを減じる。金マーカー(図示せず)が採用されていても良い。Z型ステントの上方において人工器官幹部302にニチノール製のリング又はコイルが取り付けられており、対応するニチノール製のリング又はコイルが脚部の遠位部分に取り付けられ、該遠位部分に周辺側枝が付けられた人工器官300がはめ合っている。
【0092】
人工器官幹部302は、真直ぐで且つ全体の直径が一貫して12mmであるのが好ましい。人工器官側枝302に当接しているステント314は、図13bに示されているように吻合部320の近くの振幅が11mmである場所を除き、振幅が22mmである。ステント314は、図示されているように外側に取り付けられるのが好ましいが、内側に取り付けられても良い。吻合部320における人工器官幹部302への人工器官側枝304の入射角度は、約20°〜60°の範囲内とすることができ、約45°であるのが好ましく、長手軸線324に対する傾きは約0°〜約20°であるのが好ましく、約0°であるのがより好ましい。ある長さの人工器官側枝304が人工器官幹部302に隣接しており、このことにより、人工器官300の配備中の包装密度を減らすように材料の分布が改良される。人工器官側枝304は、およそ3箇所の縫合を使用して吻合部320から約4mmのところで人工器官幹部302に固定されている。前記の縫合は吻合部320の可撓性を確保するように更に遠くに固定しても良い。
【0093】
最も近位のステント322は、振幅14mmで且つ人工器官300の外側に取り付けられるのが好ましい。最も近位のステント322の下側の材料は近位の人工器官に対して優れたはめ合わせを提供するように襞が付けられており、ステント322もまた人工器官300の内側面に取り付けられている。図5に関して上記した大きな吻合部320が人工器官側枝304を人工器官幹部302に結合するために使用されている。3つの遠位のステント312は内側に取り付けられている。
【0094】
図13cは、図13a〜13bの人工器官の上面図である。人工器官側枝304は、人工器官幹部302を周囲約150°に亘って巻き付いているのが好ましい。人工器官側枝304の遠位小孔330は約30°だけ斜めに切断されているのが好ましい。
【0095】
図14a〜14bは、図13に関して示されたものと似ている人工器官350を示している。人工器官側枝352は襞が付けられたポリエステル織布によって作られているのが好ましい。近位のステント358の下方領域は襞が付けられている。吻合部354は図5に関して上記したように大きいのが好ましい。人工器官側枝352は、人工器官350の長手軸線356に対して斜めにされていて、好ましくは約30°〜約40°の入射角度を有している。人工器官側枝352の斜面は、頂部のステント358に対して比較的大きな隙間を付与するように整えられている。
【0096】
図15aは、動脈瘤ができている大動脈402内に移植されている側枝付きの管腔内人工器官400の概略図である。側枝が設けられた管腔内人工器官400の例としてはZenith(登録商標)AAAステント移植片(インディアナ州ブルーミントンにあるCook Incorporated)がある。人工器官400は腸骨動脈404,405内へと伸長している。腸骨動脈肢407のうちの一つは、本明細書においては人工器官幹部である腸骨動脈伸長部409との間にトロンボーン型の結合を形成している。前記腸骨動脈伸長部(即ち、人工器官幹部)409は螺旋状の人工器官側枝408に吻合されている。螺旋状の人工器官側枝408は、下腹動脈406内に位置している下腹動脈側枝伸長部410との間にトロンボーン型の連結部を形成している。螺旋状の人工器官側枝408はまた腸骨動脈伸長部409と反対側(後側)へと湾曲している。
【0097】
図15bには、図15aに似たモジュール型の人工器官が示されている。しかしながら、図15bの腸骨動脈伸長部409は間にある人工器官モジュール403を介して腸骨動脈脚部407に結合されている。中間人工器官モジュール413の例が図15cに示されている。中間人工器官モジュール413の遠位端423は襞が付けられており且つ内側ステント420を備えている。外側ステント422はモジュール413の外側に取り付けられている。中間人工器官モジュール403は大動脈ステント移植片400の後方に配置されるのが好ましく、腸骨動脈伸長部409は、中間人工器官モジュール403が両端において重なるように配備されている。遠位端423上の襞は、腸骨動脈伸長部409の近位端上の対応する襞と係合するのが好ましい。大動脈移植片400又は腸骨動脈伸長部409の一方が最初に配備される。
【0098】
1以上のステントによって人工器官側枝を支持するのが好ましい。図16に示されているように、人工器官側枝414は環状のステント415を備えている。これらのステント415は、ステンレス鋼か又はニチノール製のワイヤー若しくはその他の形状記憶金属によって作られるのが好ましい。好ましくは約0.15〜0.23ミリメートル(約0.006〜0.009インチ)の直径のあらゆる適切な太さのワイヤーを使用することができる。ステント415は、自由端を備えた閉ループリングかコイルとすることができ且つ縫合又はその他の適当な方法を使用して取り付けることができる。これらは、幹部412の近くの位置から遠位小孔416まで種々の間隔で配置することができる。図17は、縫合糸417を使用して人工器官側枝414の遠位小孔416に固定されている環状のステント415を示している。
【0099】
図18に示されているように、螺旋状の側枝414を支持するために螺旋状のステント418をも使用することができる。螺旋状のステント418はニチノール又はその他の形状記憶金属によって作られているのが好ましい。好ましくは外径が0.15〜0.23ミリメートル(0.006〜0.009インチ)のあらゆる適切な太さのワイヤーを使用することができる。図19に示されているように、螺旋状のステント418の端部は、側枝414の遠位小孔416を支持することができるように閉ループ419に作ることができる。図20は、作動状態で小孔を保持するように側枝414の近位小孔に取り付けられているニチノール製のコイルを示している。
【0100】
図21a〜21dは2つの好ましくはエンドレスのZ型ステントを示しており、このZ型ステントは、2つの領域すなわち管状の移植片を包囲しているジグザク領域437と、側枝−幹部間吻合部の少なくとも一部分に適合し且つ/又は支持するように設計されている部分とを備えている。図21aのステントは吻合部の近位側を支持する形状とされている部分438を備えている。図21bのステントは、吻合部の遠位側を支持する形状とされている部分439を備えている。側枝−幹部吻合部を支持するように作用している図21a〜21bのステントが図22aに示されている。
【0101】
図22aに示されているように、エンドレスのZ型ステントは人工器官幹部に取り付けられており、各ステントは、吻合部の外周の2つの異なる部分のうちの一方の周囲に沿って湾曲している。図21bのステントが吻合部の近位側に配置されているときに図21aのステントもまた吻合部の遠位側に配置することができる。図22bは、ステント移植片に取り付けられている図21cに示されているものと似たステントを示している。
【0102】
図21cは、側枝−幹部吻合部の外周に沿うように設計されているループ440を含んでいるZ型ステント437を示している。図21dは、吻合部の遠位側を支持する形状とされている部分441を備えている。
【0103】
図23a〜23dは、側枝−幹部吻合部の形状を維持するように設計されているステントを示している。ステント470は、3つの主要部分、すなわち遠位の輪部分472、近位の輪部分471及び卵形のステント外周部分473を備えている。図23eは、側枝−幹部吻合部の内側に取り付けられているステント470を示している。ステント470は、縫合を含むあらゆる一般的な方法で取り付けることができる。卵形の外周部分473は人工器官幹部に縫合されるのが好ましく、輪部分471,472は外周部分473から離れて人工器官側枝側に伸長し且つ人工器官側枝に縫合されるのが好ましい。ステント470は解剖学的構造の形状を維持するのが好ましい。
【0104】
図23a〜23fのステントは、単一のニチノール製ワイヤー又はそれと類似の形状記憶金属によって作られるのが好ましい。ワイヤーに図23a〜23eに示されている形状を“記憶”させるために、ワイヤーは、この形状である間に熱処理されるのが好ましい。この熱処理は、図24a〜24dの装置474又はこれに類似の熱処理機又は型を使用することによって達成することができる。装置474の平面図が図24bに示されている。卵型の外周部分473は、柱486の周囲にニチノールワイヤーを巻き付けることによって形成される。遠位の輪部分472は、基部483の遠位のアーチ状部分485の外周に沿ってワイヤーを輪にすることによって形成される。近位の輪部分471は基部483の近位のアーチ状部分484の外周に沿ってワイヤーを輪にすることによって形成される。輪部分471,472は、装置のキャビティ481が基部483に取り付けられたときに、装置キャビティ481上のアーチ状の面478,479によって定位置に保持される。基部483は、穴480内を通り且つ柱486内へと通るねじ又はボルトによって取り付けられている。
【0105】
大動脈内に埋め込むように設計されている人工器官幹部に対しては、上腸間膜動脈、腹腔動脈及び両方の腎臓動脈内への血流を迂回させるために人工器官側枝が形成されても良い。図25〜27に示されているように、これらの多くの側枝のための種々の可能な構造及び向きが存在する。図25は、2つの腎枝524,525を備えている大動脈モジュール520を示しており、これらは両方とも人口器官幹部に対して近位方向への流れを迂回させる。図25においては、腹腔枝522とSMA枝521とは両方とも人工器官幹部に対して遠位方向への流れを迂回させる。図26に示されているように、腹腔枝523は近位方向へ伸長するように配置することができる。
【0106】
図27aに示されているように、腹腔枝526は幹部520のSMA枝521と同じ側から遠位方向へ伸長することができる。腎枝はまた遠位方向へ伸長するように配置することもできる。図27bは、人工器官幹部520に対して近位方向に伸長している螺旋状の腎枝524,525を備えている。腹腔枝533とSMA枝534とは、それらの各々の血管に分かれる前に共通の吻合部519を共有している。図27cは、共通の吻合部535を備えている腎枝538,539のための構造を示している。
【0107】
図27dにおいては、人工器官は、人工器官幹部壁に形成されている共通の吻合部519を介して人工器官幹部520と流体連通している腹腔枝533とSMA枝534とを備えている。この例においては、腹腔枝533は、SMA枝の壁に形成されている吻合部537を介してSMA枝534と流体連通している。従って、腹腔枝入口端部は別個であり且つSMA枝の入口端部から下流に配置されている。
【0108】
側枝533,534の入口端部同士を切り離すことによる一つの利点は、幹部の吻合部519の大きさを小さくできることである。このことにより、吻合部519における移植片材料の量と給送シース内への移植片の詰め込み密度を減らすことができる。例えば、図27bに示されているように、各々が共通の吻合部519を共有している腹腔枝533とSMA枝534とを備えている2つの人工器官を形成することができる。この例においては、腹腔枝533の遠位端とSMA枝534との遠位端は各々直径が8mmである。第一の移植片においては、腹腔枝533とSMA枝とは、これらが吻合部519の隣で側枝へと分岐し且つ各々の直径がほぼ8mmであるように作られている。第一の移植片には吻合部519が形成されており、吻合部519は、両方の側枝533,534の入口端部の大きさに適合するのに十分な大きさ例えばほぼ16mmである。
【0109】
第二の移植片には、例えば図27d及び27eに示されているように、切り離されている側枝533,534の入口端部が形成されている。吻合部519は、SMA枝534の入口端部に適合するのに十分な大きさであることのみが必要であり、従って、第二の移植片には、流体の流れを損なうことなく比較的小さい吻合部519を形成することができる。例えば第二の移植片は直径がほぼ10mmの吻合部519を備えることができる。SMA枝534の直径は、図27eに示されているようにその長さによってテーパーが付けられていても良い。
【0110】
この例は限定的なものではなく例示的なものであり、移植片及び該移植片の構成部品の絶対的及び相対的な寸法は変えることができることは理解されるべきである。例えば、上記した第一の移植片内の吻合部519は直径が16mmより小さくても良いし又は大きくても良い。同様に、上記した第二の移植片内の吻合部519は直径が10mmより小さくても良いし又は大きくても良い。
【0111】
側枝533,534の少なくとも一つは、図27bおよび27dに示されているように、幹部520に沿って長手方向に且つ幹部520の外周に沿って配置することができる。図27eは人工器官の一つの例を示しており、この例においては、腹腔枝533はSMA枝534に沿って長手方向に且つ周方向に配置されている。側枝の大きさ、形状及び向きは、本明細書を通して説明されているように、患者の解剖学的構造及び層流の促進のような種々の考慮すべき要件に基づいて決定される。
【0112】
側枝のいずれも近位方向又は遠位方向に伸長する向きとすることができ、同様に側枝のいずれも幹部の両側に配置することができる。配置は患者の解剖学的構造と共に配備及び機能についての考慮すべき要件に応じて選択することができる。
【0113】
図28aは、人工器官幹部527の内側面に沿って周方向及び長手方向に伸長しており且つ遠位小孔529で終端している内側螺旋状側枝528を示している。図28bに示されているように、この方法は、特に内側側枝528が血流に対してある角度をなしている場所に乱流を生じさせる。流れ特性を改良するために、バッフル530,531が図29に示されるように内側側枝528を跨ぐようにされている。これらのバッフル530,531は上記した材料のいずれかによって作られており且つ側枝528が幹部527に接している位置で側枝528の両側の隙間532を充填し又は覆うことによって機能する。これらのバッフルは、血流の乱流がより少なくなるように、血流の方向に対してある角度をなしている内側螺旋状側枝の部分の流れを偏向するように機能するのが好ましい。
【0114】
内側側枝528の近くの乱流に対する別の解決方法は、図30及び31の両方に示されているように、ポケット536内に側枝528を包含する方法である。図31に示されている断面図は、内側の螺旋状側枝が血流の方向に対してある角度で延びているポケット536に沿った層流を示している。ポケット536は、上記したポリエステル織布の綾織物によって又はその他の適切な材料によって作られている。内側側枝は開口したままであるように広げられているのが好ましい。これらのステントは、外側の螺旋状側枝に関して記載し且つ図示したステントに似ている。図28cに示されている内側の8の字形状のZ型ステント535もまた側枝管腔533及び幹部管腔534の両方を開口状態に保つために使用できる。8の字形状のステント535は単一の長さのステンレス鋼ワイヤーによって作られるのが好ましい。
【0115】
人工器官伸長モジュールを人工器官側枝内に配備する補助とするために、予め装填されたワイヤーを主要人工器官の内側から人工器官側枝内へと伸長させることが必要であるかも知れない。人工器官側枝の形状に応じて、このようなワイヤーは、人工器官の主要本体から人工器官側枝内へと通過するときに過剰に曲がらなければならない(即ち、小さい半径の屈曲部を有しなければならない)かも知れない。この状況によって、ワイヤー若しくは人工器官に損傷が生じるか又は配備が妨げられるかも知れない。図32aに示されているように、人工器官幹部540と人工器官側枝545との間の大きい吻合部541によって、配備ワイヤー543が大きい半径の湾曲を有することができる。
【0116】
このタイプの大きい吻合部541は、左鎖骨下動脈、左総頚動脈及び無名動脈を含む動脈弓の血管側枝において特に重要である。ガイドワイヤーに適合する尾部を有している無名動脈内へ伸長している螺旋状側枝545が図32aに示されている。吻合部541の大きさは人工器官側枝545の半径に関連して測定することができる。吻合部541の半径は、人工器官側枝545又は該側枝545の遠位小孔546の平均半径の2倍(又はそれ以上)の大きさとすることができる。図32aに示されている吻合部541はワイヤー543が通る尾部542を付加することによって大きくされており、このこともまた回転半径を大きくする。尾部を備えた吻合部は、広い部分と尾部である狭い部分との両方を備えている吻合部であることがわかるであろう。図32aの胸大動脈のステント移植片はまた、本明細書の別の場所に記載されている側枝及び/又は開窓のうちの幾つかを備えている腹大動脈内へと更に伸長することもできる。Y字形状の側枝内でのガイドワイヤーの回転半径を大きくするために尾部が設けられた吻合部もまた使用できる。
【0117】
図32b及び32cは、人工器官幹部540から伸長している胸血管側枝のための種々の構造を示している。図32aに示されている大きな吻合部はまた図32b及び32cに示されている胸動脈用人工器官側枝内で使用することもできる。図32bにおいては、無名動脈、左総頚動脈及び左鎖骨下動脈に対して別々の螺旋状側枝547,567,569が各々設けられている。弓型移植片は、動脈弓の曲線に適合するように湾曲しているのが好ましい。図32cは、共通の吻合部548を有している左総頚動脈用人工器官側枝551と左鎖骨下動脈用人工器官側枝553とを示している。図32b〜32cに示されている側枝のいずれかは開窓と選択的に置換できる。
【0118】
図32cは、人工器官幹部540内に近位の歪み解放のための襞579と遠位の歪み解放用襞581とを備えている。これらは、拍動性の流れの作用により胸大動脈が軸線方向の伸縮を受けた際に幾らかの歪みの解放を提供するために人工器官幹部540の端部に選択的に配置される。襞579,581は、移植片が胸大動脈と共にタンデム(縦列)内で更に容易に伸長し、短縮し、曲がるのを可能にする。遠位のステント582と近位のステント583とは、幹部540の端部での密封を改良し、固定力を高めるために逆棘部(図示せず)を備えていても良い。
【0119】
大動脈又はその他の血管の種々の血管側枝への血流は、上記した一体の螺旋状側枝を含む開窓と人工器官側枝とのあらゆる組み合わせを使用することによって適合させることができる。このような組み合わせのうち一つが図33〜40に示されている。図33〜40は、血流を腎動脈、対側腎臓開窓558(血液が腎動脈のうちの一つ内へと流れるようにさせる人工器官の壁に形成されている穴)及び上腸間膜動脈開窓556(血液がSMAへと流れるようにさせる人工器官の壁に形成された穴)を備えている管腔内人工器官549の種々の図面である。広がることができるカバーされているか又はされていないステントを開窓556,558のうちのいずれか又は両方の内部に配備することができる。この配備方法は、米国特許出願第10/984,040号、第10/984,416号、第10/984,417号、第10/984,131号、第10/984,520号、及び第10/984,167号に記載されている。これらの特許出願は全て2004年11月8日に出願されたものであり、これらに言及することによって本明細書に参考として組み入れられている。
【0120】
図33は、テーパーが付けられている人工器官幹部550に沿って該人工器官幹部550に対して近位方向にすなわち人工器官549の遠位端555から離れる方向に向かって伸長している螺旋状の側枝552を示している。図示されているように、螺旋状の側枝552は、人工器官幹部550の長手軸線に対して約44°のピッチ(すなわち傾斜)を有しており且つ6個の等間隔の縫合によって取り付けられるのが好ましい。側枝552は幹部550に縫い付けられるときに伸長も圧縮もされないのが好ましい。幹部550と側枝552との両方に放射線不透過性のマーカー557,559が取り付けられている。幹部550上の放射線不透過性マーカー559は、幹部550の長手軸線に整合されているのが好ましい。副腎ステント562が人工器官549の近位端562に配置されており、このステントは直径が32mmで高さが25mmで周期が10のZ型のステントであるのが好ましい。SMA用開窓556は図33に見ることができる。SMA用開窓に加えて又はその代わりに、腹腔動脈のための開窓を設けることもできる。螺旋状の側枝552は捩れに耐える補助とするために襞が付けられているのが好ましい(図示せず)。
【0121】
図34〜36は、同じ器具を種々の回転位置で示している。図34は、腎臓開窓558とSMA開窓556との相対的な向きを示している。側枝と開窓との相対的な向きは、特定の患者の解剖学的構造に適合するように改造することができる。図35は、側枝552と幹部550との間の大きな吻合部564を示している。図36は側枝552の斜めに切断されている小孔565を示している。
【0122】
図37及び38は、図33〜36に図示されている器具の骨格構造図である。遠位の内側ステント559と近位の内側ステント560とがこれらの図で見ることができる。遠位の内側ステント559は直径が24mmで高さが14mmで周期が10のZ型ステントであるのが好ましい。近位の内側ステント560は直径が32mmで高さが22mmで繰返し数が12のZ型ステントであるのが好ましい。外側ステント561は、直径が32mmで高さが17mmで周期が11の振幅と高さが8.5mmで繰返し数が22の振幅との2つの振幅を有しているZ型ステントであるのが好ましく、これらのステント561は好ましくは外径が約0.330mmのニチノール製のワイヤーによって作られている。これらの寸法のいずれも特定の患者の解剖学的構造用に仕立てることができる。図39は図38に示されている矢印“A”の方向から見た図であり、図40は図38に示されている矢印“B”の方向から見た図である。
【0123】
図41a〜41dは、螺旋状の人工器官側枝614と3つの開窓すなわち左腎用開窓606と右腎用開窓636と補助開窓604とを備えたステント移植片600の種々の図面である。螺旋状の側枝614は、SMAに入り込み且つ大きな吻合部622から長手方向且つ周方向に伸長している。ステント移植片600の近位端626もまた、腹腔動脈に適合するためのスカラップ(扇形の切欠き)630をも備えている。1つ以上の開窓を1つ以上の螺旋状の側枝と結合させることによって、1以上の血管側枝への流れが確保される一方でステント移植片装置の配備特性及び配備用シース内へのステント移植片の詰め込み外形が最適化される。
【0124】
ステント移植片600の近位端626と遠位端624との近くの放射線不透過性のマーカー602,612は、螺旋状の側枝614上のマーカー620と同様に、外科医が配備中におけるステント移植片600の回転を確認する補助となる。螺旋状の側枝614は、斜めに切断された遠位の吻合部618を有していても良い。ステント移植片600は、該ステント移植片600の近位端626近くの外側に配置されたステント610と内側に配置されたステント608との両方によって支持されている。図41cに示されているように、吻合部622の近くの領域632,634は、例えば図21a〜21dに示されているもののような吻合部622を妨げるのを避け且つ支持するように設計されたものであるのが好ましいあらゆる形状のステントによって占められている。図41dは遠位端624から見たステント移植片600の軸線方向の図である。
【0125】
図42a〜42dは、開窓と螺旋状の側枝移植片との両方を備えている別のステント移植片650を示している。このステント移植片650は、中間部分にテーパー部670を有していて遠位端656及び遠位部分668内の直径が近位端658及び近位部分666内の直径より小さくなされている。移植片には3つの開窓すなわちSMA用開窓662と左腎用開窓664と右腎用開窓672とが設けられている。螺旋状の側枝660は腹腔動脈への流れを提供する。ステント移植片650は外側Z型ステント654と内側Z型ステント676とによって支持されている。テーパー部670は、好ましくは図21a〜図21dに示されているもののような側枝−幹部吻合670の妨害を避けるように設計されたもののようなあらゆる形状のステントによって支持される。カバーがされていない近位のステント652が設けられており、該近位ステント652は、逆棘部(図示せず)が該ステントから入口固定部まで伸長しているのが好ましい。
【0126】
動脈の解剖学的構造及び動脈瘤の局所解剖学は患者間で異なっており、上記の人工器官の設計のいずれもが特定の患者における要求に適合するように改造されるのが好ましい。第一のステップは患者のCT走査画像を精密に調べることである。各患者に必要とされる器具に対する人工器官の設計のための重要なパラメータ(配備部位、近位及び遠位の密封箇所)が決められる。動脈瘤の三次元(3−D)モデルが当業者に公知の技術を使用して作成される。
【0127】
動脈瘤モデルは、Solid Works(登録商標)又はその他の適当な固体及び表面モデル化ソフトウエア内に組み入れられる。このソフトウエアによって、3−D管腔内人工器官が動脈瘤モデル及び規定された重要パラメータに基づいて設計される。この3−D機器によって機械図面が作成される。次いで、この機械図面の仕様を使用して人工器官の織布及びステントを含むプロトタイプの人工器官のための構成要素材料が形成される。次いで、この材料及びステントが組み立てられて最終的な人工器官が形成される。
【0128】
モジュール型の人工器官及び導入器
下行胸大動脈及び腹大動脈の動脈瘤を治療する際に使用するためのモジュール型人工器官が知られており、この人工器官においては、近位端に大動脈内に配置するための単一の管腔が規定されており、他端は腸骨動脈内へと伸長するために分岐されている。腸骨伸長人工器官モジュールは分岐の端部に結合することができる。このような人工器官の概略図がPCT出願第WO98/53761号に更に詳細に示されている。
【0129】
WO98/53761号には人工器官が開示されている。この人工器官は、単一の管腔部分と分岐部とを規定しているポリエステル織布又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような生体適合性人工器官材料からなるスリーブ又はチューブを備えており、更に、幾つかのステントが前記スリーブ又はチューブに沿って固定されている。該人工器官は、2つの腸骨動脈から近位方向に大動脈に沿って伸長している動脈瘤を跨ぐように設計されている。この参考文献には、導入器アセンブリを使用して患者の体内にステント人工器官を配備する方法も開示されている。
【0130】
WO98/53761号出願においては、人工器官の単一管腔からなる近位端の材料によって覆われた部分が動脈瘤の上方の大動脈の壁に当接して腎動脈への入口から遠位方向に隔てられている位置で動脈瘤を密封している。近位の取り付けステントの細いワイヤーからなる柱が、人口器官を大動脈内の定位置に係留しながら腎動脈入口を塞ぐことなく該腎動脈入口を横切っている。
【0131】
伸長モジュールは人工器官の脚部のうちの一つに固定されていて各々の腸骨動脈に沿って伸長し、任意的には該伸長部は両方の脚部に固定される。これらの伸長部モジュールはトロンボーニングによって取り付けられる。モジュール型管腔内人工器官を配備器具又は導入器を使用して遠隔位置から患者の管腔内へ配備する方法は、上記と同じ特許出願に開示されている。PCT出願WO98/53761号はこれに言及することによって本明細書に参考として組み入れられている。
【0132】
WO98/53761号に記載されているものと似た一つのモジュール型人工器官、すなわちCook Incorporatedによって販売されているZenith(登録商標)AAA管腔内移植片は、大動脈瘤を治療するための食品医薬局(Food and Drug Administration (FDA))によって承認されている。このZenith(登録商標)AAA管腔内移植片は、3つの人工器官モジュールすなわち主本体モジュールと2つの脚部モジュールとによって作られている。脚部は腸骨動脈内に配置され且つ前記の主本体に結合されている。従って、該人工器官は腎動脈下方の大動脈から両方の腸骨動脈内へ伸長する。人工器官自体は、開腹外科手術において使用されるものと似たポリエステル材料によって作られている。標準的な外科的縫合技術が使用されて移植片材料がステンレス鋼製のステントの枠に縫い付けられる。これらの自己拡張性ステントは移植片材料のための支持を提供する。
【0133】
図43は、Zenith(登録商標)自己拡張型側枝付き人工器官720(インディアナ州ブルーミントンにあるCook Incorporatedから入手可能な製品コード番号TFB1〜TFB5)と、医療処置中に患者の管腔内に人工器官720を配備するための導入器700としても知られている血管内配備装置700とを示している。これらの部材は、各々、PCT出願公開WO98/53761号に更に詳しく記載されている。図13bに関連して説明されたものと似た自己拡張型の側枝付きの人工器官750もまた示されている。
【0134】
側枝付きの人工器官720は逆Y字形状を有している。人工器官720は、本体723と比較的短い脚部760と比較的長い脚部732とを備えている。側枝付きの人工器官720は、自己拡張型ステント719が取り付けられているポリエステルのような管状の移植片材料からなる。自己拡張型ステント719は導入器700からの解放に続いて人工器官720を拡張させる。人工器官720はまた、その近位端から伸長している自己拡張型のZ型ステント721をも備えている。自己拡張型Z型ステント721は、遠位方向に伸長している逆棘部751を備えている。自己拡張型ステント721は、導入器700から解放されると逆棘部751従って人工器官720の近位端を患者の管腔に係留させる。図43に示されている人工器官720に対する代替例として図6に示されているような人工器官を配備することができ、腎枝伸長部がこれに続く。これは、腎臓動脈内の動脈瘤組織を排除すると言う付加的な利点を有し、大動脈移植片を更に近位方向へ伸長させる。自己拡張型の側枝付き人工器官750は、図13bに関して記載した側枝付きの人工器官と似ており、分岐された人工器官720の短い方の脚部760及び側枝伸長部との間にトロンボーン型の結合を形成する構造とされている。側枝付きの人工器官750の近位端に切り欠きすなわちスカラップを切り込んでモジュールの配備を補助しても良い。
【0135】
導入器700は、外部操作部分780と遠位の取り付け部分782と近位の取付け部分784とを備えている。遠位の取付け部分782と近位の取付け部分784とは、各々、人工器官720の遠位及び近位の端部を固定している。人工器官720を配備させる医療処置中に、遠位及び近位の取付け部分782及び784は、管腔内を通って所望の配備部位へと移動される。導入器を操るためにユーザーによって操作される外部操作部分780は、処置の初めから終わりまで患者の体外に維持されたままである。
【0136】
導入器700の近位の取付け部分784は筒状のスリーブ710を備えている。筒状のスリーブ710は、その近位端から伸長している長いテーパーが付けられた可撓性の伸長部分711を備えている。可撓性の伸長部分711は内側長手方向穴(図示せず)を備えている。この長手方向の穴は、テーパーが付けられている可撓性の伸長部分711が挿入ワイヤー(図示せず)に沿って進入するのを補助する。この長手方向の穴はまた薬剤を導入するための流路をも提供する。例えば、医療処置の配置段階及び配備段階において血管造影が行なわれるようにするために造影剤を供給することが望ましい。
【0137】
薄壁の金属管715が伸長部分711に取り付けられている。薄壁の金属管715は、導入器700が大腿動脈のような比較的蛇行している血管に沿って進入し且つ遠位の取付け部分782が長手方向及び回転方向に操作されるように可撓性とされている。薄壁の金属管715は、導入器700内を操作部分780に向かって伸長して結合装置716において終端している。結合装置716は、薄壁金属管715内への試薬の導入を補助するために注射器を収容できるようになされている。薄壁の金属管715は可撓性の伸長部分711の穴712と流体連通している。従って、結合装置716内へ導入された試薬は穴712へと流れ且つ該穴から出る。
【0138】
プラスチック製のチューブ741は薄壁の金属管715と同軸であり且つ該金属管の半径方向外方にある。プラスチック製のチューブ741は厚壁であり、その壁は薄壁の金属管715の7倍の厚みであるのが好ましい。シース730はプラスチック製のチューブ741と同軸で且つ半径方向外方にある。厚壁のプラスチック製のチューブ741とシース730とは操作部分780に向かって遠位方向に伸長している。
【0139】
この医療処置の位置決め段階中、人工器官720はシース730によって圧縮状態に維持される。シース730は、外部操作部分780の把持及び止血密封装置735に向かって遠位方向に伸長している。導入器700の組立中、人工器官720は外力によって圧縮状態に保持されている状態にある間に、シース730は近位の取り付け部分784の筒状スリーブ710の外周に沿って進入される。遠位の取り付け(保持)部分740は薄壁のプラスチック製チューブ741に結合されている。遠位の取付け部分740は、この処置中、人工器官720の遠位端742に留まったままである。同様に、筒状スリーブ710は自己拡張性Z型ステント721を保持する。
【0140】
人工器官720の遠位端742は遠位の取付け部分740によって保持されている。人工器官720の遠位端742はループ(図示せず)を備えており、該ループ内を遠位のトリガーワイヤー(図示せず)が伸長している。遠位のトリガーワイヤーは、遠位の取付け部分740の穴(図示せず)内を通って薄壁のチューブ715と厚壁のチューブ741との間の環状部分内へと伸長している。遠位のトリガーワイヤーは該環状空間内を操作部分780に向かって伸長している。遠位のトリガーワイヤーは遠位のワイヤー解放機構725において環状空間から出て行く。
【0141】
外部操作部分780は止血密封装置735を備えている。止血密封装置735は止血シール(図示せず)と側方チューブ729とを備えている。止血密封装置735はまた、シース730を止血シールにクランプしているクランプカラー(図示せず)と厚壁のプラスチック製チューブ741の周囲に止血シールを形成しているシリコーンゴムシールリング(図示せず)をも備えている。側方チューブ729は、厚壁のチューブ741とシース730との間への医療試薬の導入を容易にしている。
【0142】
外部操作部分780の近位部分は、本体736を備えている解放ワイヤー起動部分を備えている。本体736は厚壁のプラスチック製チューブ741上に取り付けられている。薄壁の管715は本体736内を通されている。遠位のワイヤー解放機構725と近位のワイヤー解放機構724とは、本体736上を摺動できるように取り付けられている。
【0143】
近位のワイヤー解放機構724と遠位のワイヤー解放機構725との配置は、遠位のワイヤー解放機構725が動かされる前に近位のワイヤー解放機構724を動かさなければならないようになされている。従って、人工器官720の遠位端742は、自己拡張性Z型ステントが解放され且つ逆棘部751が管腔に係留されるまで解放することができない。クランプねじ737は人工器官720の不用意な早期の解放を防止している。解放ワイヤーが医療処置中の不必要な血液の損失がない状態で本体736から伸長して出て行くように、止血シール(図示せず)が備えられている。
【0144】
外部操作部分780の遠位部分はピン用バイス739を備えている。ピン用バイス739は本体736の遠位端上に設けられている。ピン用バイス739はねじ込みキャップ746を備えている。ピン用バイス739のバイス掴み部材(図示せず)は、ねじ込まれると薄壁の金属管715にクランプするか又は係合する。バイスの掴み部材が係合されると、薄壁の管715は本体736と一緒にのみ動くことができるのであり、従って、薄壁管715は厚壁管741と一緒にのみ動くことができる。ねじ込みキャップ746が締め付けられると、アセンブリ全体が一体部品として一緒にのみ動くことができる。
【0145】
螺旋状側枝付きの人工器官750を導入し且つトロンボーン型の結合を形成するために、第二の導入器が使用されても良い。この第二の導入器は、上記した導入器700と同じ原理に基づいているが、より簡素化することができる。例えば、第二の導入器は、圧縮状態で側枝付きの人工器官750を収容するためのシースを含んでいて、目標とされている解剖学的構造内へ導入され、次いで解放されて自己拡張するか又はバルーンによって能動的に拡張されるようになされている。第二の導入器には、図44に示されているように送り込み先端800を設けて大動脈分岐内へのガイドワイヤー802の配備を可能にすることができる。側枝伸長部を配備するために第三の導入器を使用しても良い。
【0146】
配備方法
人工器官モジュールは順次配備されるのが好ましい。側枝付きの人工器官750と分岐された人工器官720との間のモジュール間結合は生体内で形成される。最初に、分岐された人工器管720が配備され、次いで、側枝付きの人工器管750が配備される。例えば、WO98/53761号に記載されている分岐された大動脈人工器官720を腹大動脈内に配備することができる。分岐された人工器官720は逆Y字形状を有しており、この構造は本体部分723と短い方の脚部760と長い方の脚部732とを備えている。この人工器官の本体は織られたポリエステル織布によって作られている。人工器官720の近位端には自己拡張型ステント721が設けられており、該ステントは人工器官の端部を越えて伸長しており且つ遠位方向に伸長している逆棘部751を備えている。短い方の脚部760と長い方の脚部732とは、それらの遠位の終端から伸長している内側突出部を備えている。
【0147】
この分岐された人工器官720は、当該技術において知られているあらゆる方法好ましくはWO98/53761号に記載されている方法で配備させることができる。前記WO98/53761号に記載されている方法においては、器具は外科的に形成された切開部から大腿動脈内へ導入器によって挿入され、次いで管腔内介入技術を使用して堅牢なガイドワイヤーの外周に沿って所望の位置へと進入される。例えばガイドワイヤー(図示せず)は最初に患者の大動脈内へ導入され、その先端が人工器官720の所望の配備部分を越えるまで進入される。この段階で、導入器アセンブリ700は完全に組み立てられて患者の体内へ導入する準備がなされた状態にある。人工器官720は、一端が円筒形のスリーブ710によって保持されており、他端は遠位の取付け部分740によって保持されており且つシース730によって圧縮されている。大動脈瘤が修復されるべきである場合には、導入器アセンブリ700をここでは説明されていないX線透視技術によって大腿動脈からガイドワイヤーの外周に沿って挿入でき且つ位置決めできる。
【0148】
いったん導入器アセンブリ700が所望の配備位置に配置されると、シース730がちょうど遠位の取付け部分740の近位側まで引き抜かれる。この作用により、人工器官720の中間部分が解放されて径方向に拡張できる。しかしながら、近位の自己拡張型ステント721は依然として円筒形スリーブ710内に保持されている。同じく、人工器官720の遠位端742も依然として外側シース730内に保持されている。
【0149】
次に、ピン用バイス739が緩められて厚壁チューブ741に対する薄壁管715の小さな動きが許容される。これらの動きは、管腔内の所望の位置へ正確に配置するために人工器官720の伸長、短縮、回転、または圧縮を可能とする。放射線不透過性マーカー(図示せず)を人工器官720に沿って配置して人工器官の配置を容易にすることができる。
【0150】
人工器官720の近位端が定位置に配置されると、近位のトリガーワイヤーが近位のワイヤー解放機構724を遠位方向へ動かさすことによって引き抜かれる。近位のワイヤー解放機構724と近位のトリガーワイヤーとは、ピン用バイス739、ねじ込みキャップ746及び結合装置716を越えるように近位のワイヤー解除機構724を通過させることによって完全に取り外すことができる。
【0151】
次に、ピン用バイス739のねじ込みキャップ746が緩められる。このように緩めた後に、薄壁の管715を近位方向へ押して円筒形スリーブ710を近位方向へ動かすことができる。円筒形スリーブ710がもはや自己拡張型ステント721を包囲しない位置に達すると、自己拡張型ステント721は拡張する。自己拡張型ステント721が拡張すると、逆棘部751が管腔の壁を把持して人工器官720の近位端を定位置に保持する。この段階以後、人工器官720の近位端を再び動かすことはできない。
【0152】
人工器官720の近位端がひとたび係留されると、外側シース730は遠位の取付け部分740の遠位側へと引き抜かれる。このように引き抜くことによって、対側脚部760と人工器官720の長い方の脚部732とが拡張できるようになる。この時点では、人工器官720の遠位端の742は依然として動かすことができる。結果として、人工器官720は依然として回転させるか伸長させるか短縮させることによって正しい位置決めができる。人工器官720のこのような位置決めによって、短い方の脚部760が対側動脈の方向に伸長することが確保される。
【0153】
短い方の脚部760が対側腸骨動脈の方向に伸長した後に側枝付きの人工器官750が配備される。側枝付きの人工器官750は、該人工器官が短い方の脚部760との間にトロンボーン結合を形成し且つ短い方の脚部760から対側動脈内へ伸長する。人工器官720と側枝付きの人工器官750との結合は、本明細書の別の部分で更に詳しく説明されている。
【0154】
側枝付き人工器官モジュール750の導入方法は以下の通りである。ガイドワイヤ(図示せず)を、対側大腿動脈内から導入され且つその先端が人工器官を配置すべき領域の上方に位置するまで進入させる。次いで、第二の導入器が振動及び回転動作によってガイドワイヤーの外周に沿って進入させて伸長人工器官が対側側枝760内の一つの完全なステントに重ねられる。次いで、厚壁のチューブを定位置に保持しながらシースが抜き取られる前に最終的な位置の点検が行なわれる。下腹血管側枝の移植片モジュールを配備するための類似の方法が、米国特許出願公開第2005/0182476号に記載され且つ図示されている。この米国特許出願公開はこれに言及することにより本明細書に参考として組み入れられている。
【0155】
ガイドワイヤーは、捕捉されている第二の導入器の先端から配備され且つ同側へと寄せられて同側から対側への第三導入器の配備を容易にして、側枝伸長部を下腹動脈内へ配備する。人工器官側枝の脚部内へ予め装填されているワイヤー又はスネア(締結部材)によって、複雑な配置、側枝へのカテーテル挿入及びシースを介してワイヤーを別個に挿入する必要性が排除されるのが好ましい。この方法は、多くの側枝が存在する場合に特に重要である。該給送装置の遠位のハンドルには、この構造に適合するように付加的なトリガーワイヤーが備えられていても良い。第二及び第三の導入器及びこれらの導入器を使用する方法は、2003年10月14日に出願された“腸管側枝器具のための導入器(Introducer for an Iliac Side Branch Device)“という名称の米国特許出願第60/510,823号に更に詳細に説明されている。該米国特許出願は、これに言及することにより本明細書に参考として組み込まれている。
【0156】
上記の導入器及び配備方法は、他の部分への埋め込みに適合するようにすることができる。例えば、第一の人工器官モジュールは大動脈内に配置され、結合人工器官モジュールは、腎動脈、腸骨動脈、上腸管膜動脈、腹腔動脈、又はその他の動脈内に配置してトロンボーン型の連結を形成することができる。第一の人工器官モジュールが胸大動脈内に配置される場合には、結合人工器官モジュールは、胸大動脈、左鎖骨下動脈、左総頚動脈、無名動脈又はその他の動脈の別の部分内に配置することができる。更に、同じ動脈内に埋め込まれる人工器官モジュールを相互に結合することができる。これらの実施例の各々の重なり部分は、関連する解剖学的構造の大きさ及び該人工器官がこの関連する解剖学的構造内で曝される力に適合せしめられるのが好ましい。
【0157】
例1
分岐した脚部にかかる血流による力は、分岐点及び人工器官側枝の最終的な屈曲角部分にかかる荷重に依存する。人工器官から側枝伸長部を分離させる力は特に重要である。y方向への流れによる力は、これが十分に大きい場合には、側枝伸長部と人工器官側枝とを相互に保持する摩擦力よりも大きくなって分離を生じさせ得る。分離がかなり大きい場合には、III型のエンドリークが生じ、もはや動脈瘤を締め出すことはできないであろう。
【0158】
上記した人工器官に対して生体内漏れ圧力試験を行うことができる。この試験の目的は、2つの人工器官内のはめ合い点における漏れを生じさせるのに必要な最小内部圧力を判定することである。
【0159】
この試験は、圧力変換器、圧力監視装置、水/グリセリン混合物(染色されている)@3.64cP、水浴、浸水形ヒーター、水力ポンプ、温度コントローラ、接合表面熱電対及び水銀温度計を必要とする。
【0160】
人工器官側枝と側枝伸長部とは、適当なトロンボーン型の結合が形成されるように好ましくは1.5〜2cmの重なり及び1mm以下の直径差を有する適切なトロンボーン型の結合が形成されるようにはめ合わせられる。これらの器具は、適当な大きさのバルーン拡張カテーテルを使用して30秒間膨らまされる。
【0161】
互いにはめ合った器具内の内部圧力は、圧力変換機及び圧力監視装置を使用して測定される。これらの装置は、互いにはめ合った器具内に手動制御された圧力を付与する注射器に結合される。加圧液体は、青色食用着色料によって染色された3.64 centiPoise (cP)に対するグリセリン/水混合物である。器具を37℃の水浴内に配置し、漏れの有無は青色に染色したグリセリン/水混合物の漏れによって規定され且つ確認される。漏れの視認による評価及び漏れ圧力の記録は手動によって記録した。
【0162】
例2
上記の人工器官は人間ではない哺乳動物内で生体試験することができる。試験及び治療目的のための人工器官の移植に適した一つの動物は畜産牛である。試験目的で、生後6〜10週間の雄の子牛を使用した。
【0163】
外科手術前の準備として、各動物に血小板阻害の目的で処置の前日から毎日325mgのアスピリンを与えた。各動物は、約8〜12時間食物を与えず、各処置の前約2時間は水を与えない状態に保った。手術前の基準ACTをHemochron Jr. Signature Series Machine(登録商標、ニュージャアジー州エディソンにあるITCから入手可能である)において測定した。
【0164】
子牛の各々をXylazine(1.0mg/10lbs、IM)によって鎮静させた。動物を若かに鎮静させるとすぐに、誘導マスクを使用してイソフルラン(2〜4%)を給送した。吸入麻酔薬が給送されている間に子牛の顔をマスク内に配置した。動物は標準的な形態で挿管することができる。気管内チューブを配置してすぐに該チューブを固定した。ベンチレ―タをオンに切換え動物に接続して麻酔深度を増し且つ動物を機械的に通気した。イソフルラン投与範囲は約0.8〜1,25%であったが、関連のある要因に応じた如何なるパーセンテージとしても良い。この外科手術前の準備中に、各動物はまた、benzathine procaine penicillin(30,000-50,000U/kg IM)の注射をも受けさせた。
【0165】
動物をその右後脚を上方へ伸ばし且つガーゼの紐で固定した状態で左側面を下にして配置した。接地パッドとEKGリード線とを動物の上に配置した。静脈内カテーテル(IV)を脚部末梢静脈内に配置しテープで固定した。処置期間中、乳酸リンゲル液(LR)をカテーテルによって注入して適切な水和を提供した。両方の鼠径部を剃り且つ70%のアルコール及びベタジンによって滅菌して試験準備した。
【0166】
この側枝付きの血管器具の埋め込みは基本的な血管内技術を含んでいる。左脚の大腿を切開して大腿血管へのアクセスを確保した。腹膜後を切開して右腸骨動脈へのアクセスを提供した。第三のアクセスポイントは、切開によって右頚動脈を露出させることによって確保した。動脈上の近位側と遠位側とに止血血管ループを配置した。単一の壁穿刺針を使用して左大腿動脈へアクセスし、針ハブからの拍動性血流の存在によってカニューレの挿入を確認した。
【0167】
拍動性の流れが確認されるとすぐに、ワイヤーを下行腹部大動脈内に配置した。動物は、キログラム当たり200IUのブタヘパリンでヘパリン化した。ヘパリン投与後3〜10分以内に活性凝固時間が得られ、適当な抗凝固を確保し、基準ACTの1.5〜2倍の好ましい最少量を達成した。8フレンチの導入管シースを左動脈管腔内へと進入させた。配置前及び配置後に、各シースの側方孔を0.9%の生理食塩水によって洗い流した。
【0168】
5フレンチのピッグテールカテーテルを導入器シース内のワイヤーの外周に沿って挿入し且つX線透視誘導法を使用して大動脈弓領域内へと進入させた。適当量の造影剤を使用して下行胸大動脈の基準デジタル局部造影図を得た。基準造影図が得られるとすぐに、ピッグテールカテーテル内にワイヤーを挿入し且つ胸大動脈内へ進入させた。次いでカテーテルを取り外した。12.5MHzのBoston Scientific IVUS(血管内超音波)プローブをワイヤーの外周に沿ってモノレール式に挿入して基準IVUSを得た。これらの測定結果は三分岐の近位側約9cmの遠位腹大動脈の断面直径を含んでいた。
【0169】
図11に関して図示し且つ説明したものと似た外側螺旋状器具を使用した。この特別な人工器官は、延伸PTEFによって作られているViabahn(登録商標)Endoprosthesis(デラウェア州ニューアークにあるW. L. Gore & Associates, Inc.,)によって製造した。これを、主要器具を介する0.035インチのワイヤーアクセス及び側枝脚部内を通る予め装填された0.018インチワイヤーを提供する4フレンチのカテーテルによって18フレンチのカートリッジ内に装填した。
【0170】
単一の壁穿刺針を使用して右腸骨動脈にアクセスした。Amplatzガイドワイヤーを配置して、20フレンチのCheck-Flo(登録商標)(インディアナ州ブルーミントンにあるCook Incorporated)導入管シースを大動脈分岐の上方9cmのところまで進入させ且つ給送装置として使用した。予め装填した0.018インチのワイヤーを剥離シースを使用してCheek-Flo(登録商標)シースの弁を介して進入させた。この予装填装置カートリッジを、次いでプッシャーとしての拡張器を使用して20フレンチのCheck-Flo(登録商標)内へ挿入した。0.0018インチのワイヤーを頚動脈から係蹄して除去して血管側枝ワイヤーのための全貫通アクセスを提供した。次いで、この人工器官を人工器官側枝の小孔が露出された場所に配備した。次いでこの人工器官を対側大動脈内を通して進入させた。
【0171】
この人工器官は、人工器官側枝内に2.0cm重なり合わせて配備した。この人工器官の全長は7mm×4mmのバルーンによってバルーン拡張させた。術後造影及びIVUS評価を実施した。小孔に沿ったステント移植片の近位点、中間点及び遠位点の最終的なIVUS評価を行い、一方、造影によってエンドリークの存在並びにステント移植片の位置を評価した。所望の場合には、人工器官を生体から分離し且つ術後分析をしても良い。
【0172】
例3
一つの螺旋状の血管側枝ステント移植片は、側枝が内腸骨動脈に対して適正な向きとなるように配備させる。側枝の遠位端上の4つのマーカーを内腸骨動脈のおよそ5mm上方に配置する。当該器具を収容しているシースが引き抜かれて側枝の脚部が露出されて外腸骨動脈内でシース内に拘束されたままの状態とする。対側脚部内でのワイヤーの場所が操縦可能なガイドワイヤーに置き換えられ、次いで、このガイドワイヤーが遠位動脈内へと進められ且つ対側大腿動脈から導入されたスネア器具によって係蹄にかけられて取り出される。これによって、対側鼠径から腸骨側枝の基端側を通り腸骨脚部内へ入り次いで遠位区分の外側部分(外腸骨動脈部分)に沿って同側の鼠径部に達するアクセスが得られる。
【0173】
この全貫通ワイヤーの外周に沿って10F又は12FのBalkin シース(インディアナ州ブルーミントンにあるCook Incorporated)を導入し且つ側枝脚部内へと進入させる。全貫通ガイドワイヤーに沿って操作可能なカテーテルとワイヤーとの結合物を進入させ且つ内腸骨動脈内にカニューレを選択的に挿入するために使用される。
【0174】
ひとたび妥当な取得がなされると、比較的堅牢なワイヤーが配置され、はめ合い部材を所望の位置へと進入させる。このはめ合い部材は、Viabahn(登録商標)移植片とすることができ、この移植片は、好ましくは螺旋状の側枝と2cmの最少の重なりを有するように下腹動脈内へと進入させる。ひとたびはめ合い移植片が配備され且つ適切にバルーン拡張されると、外側腸骨脚部の残りの部分が配備される。この構成要素は、図3cに示されている改造された12mmの伸長部を備えているZenith(登録商標)移植片の残りの部分とはめ合わせられる。
【0175】
以上、本発明を特定の例示的な実施例に関連して説明し図示したけれども、本発明は、これらの例示的な実施例に限定されることは意図されていない。当業者は、特許請求の範囲に規定されている本発明の真の範囲及び精神から逸脱することなく変更及び改造を施すことができることがわかるであろう。従って、添付の特許請求の範囲及びその等価物に包含されるこのような変更及び改造の全てを本発明に包めることが意図されている。
【符号の説明】
【0176】
10 人工器官幹部、 12 人工器官側枝、 14 側枝伸長部、
20 人工器官幹部、 21 連結部、 22 人工器官側枝、
25 側枝伸長部、 27 取り付け部、 40 人工器官、
42 人工器官幹部、 44 人工器官側枝、 46 吻合部、
47 継ぎ目、 48 襞、 50,52,53 ステント、
54 遠位の小孔、 55 側枝伸長部、 60 人工器官、
62 人工器官幹部、 64 人工器官側枝、 65 遠位小孔、
66 外側Z型ステント、 68 吻合部、
70 内側Z型ステント、 72 内側ステント、 74 遠位の先端、
75 長手軸線、 80 人工器官側枝、 84 近位端、
86 外周、 88 人工器官幹部、 89 外周、
90 人工器官、 92,94 人工器官側枝、
93 人工器官の遠位端、 95 ステント、 96 ステント、
97 ステント、 98 吻合部、 110 人工器官、
112 対側人工器官側枝、 114 人工器官幹部、 116 分枝、
118 継ぎ目、 120 遠位小孔、
122 人工器官幹部の遠位端、 123 内側ステント、
124 人工器官幹部の近位端、 126 人工器官幹部ステント、
128 ステント、 130 近位小孔、
132 人工器官側枝の遠位端、 140 人工器官、
141 人工器官幹部、 142 放射線不透過性のマーカー、
143 外側ステント、 144 人工器官側枝、
145 人工器官幹部の遠位端、 146 継ぎ目、
160 内側ステント、 161 人工器官側枝、
162 外側ステント、 163 遠位のステント、 168 分岐、
170 人工器官幹部、 210 人工器官、
211 対側の人工器官、 212 人工器官、 213 人工器官側枝、
214 人工器官幹部、 215 金マーカー、 217 近位部分、
219 遠位部分、 220 遠位小孔、
222 遠位端、人口器官側枝の遠位小孔、
223 内側ステント、 224 人工器官幹部の近位端、
225 継ぎ目、 226 ステント、 227 分岐、
228 ステント、 229 遠位のステント、 230 近位小孔、
231 山部、 250 人工器官、 252 人工器官側枝、
253 第一の近位のステント、 254 人工器官幹部、
255 第二の近位のステント、 256 隙間、 259 吻合部、
300 人工器官、 301 襞、 302 人工器官幹部、
304 人工器官側枝、 306 ステント、
310 近位のステント、 314 ステント、 320 吻合部、
322 近位のステント、 330 遠位小孔、 350 人工器官、
352 人工器官側枝、 354 吻合部、
358 近位のステント、 400 人工器官、 402 大動脈、
403 人工器官モジュール、 404,405 腸骨動脈、
406 下腹動脈、 407 腸骨動脈肢、 408 人工器官側枝、
409 腸骨動脈伸長部、 410 下腹動脈側枝伸長部、
412 幹部、 413 中間人工器官モジュール、
414 人工器官側枝、 415 環状のステント、
416 遠位小孔、 417 縫合糸、 418 ステント、
419 閉ループ、 420 内側ステント、 422 外側ステント、
423 中間人工器官モジュールの遠位端、
437 Z型ステント、 440 ループ、 470 ステント、
471 近位の輪部分、 472 遠位の輪部分、
473 卵形のステント外周部分、
474 装置、 478,479 アーチ状の面、
480 穴、 481 装置のキャビティ、
483 基部、 484 アーチ状部分、
485 遠位のアーチ状部分、 486 柱、
519 吻合部、 520 大動脈モジュール、人工器官幹部、
521 SMA枝、 522 腹腔枝、 524,525 腎枝、
523 腹腔枝、 526 腹腔枝、 527 人工器官幹部、
528 内側螺旋状側枝、 529 遠位小孔、
530,531 バッフル、 532 隙間、 533 腹腔枝、
533 側枝管腔、 534 SMA枝、幹部管腔、
535 Z型ステント、 536 ポケット、 537 吻合部、
538,539 腎枝、 540 人工器官幹部、
541 吻合部、 542 尾部、 543 配備ワイヤー、
545 人工器官側枝、 546 遠位小孔、
547,567,569 側枝、 548 吻合部、
549 管腔内人工器官、 550 人工器官幹部、
551 左総頚動脈用人工器官側枝、 552 側枝、
553 左鎖骨下動脈用人工器官側枝、 555 遠位端、
556 上腸間膜動脈開窓、SMA用開窓、
557,559 放射線不透過性のマーカー、
558 腎臓開窓、 559 遠位の内側ステント、
579,581 襞、 560 近位の内側ステント、
561 外側ステント、 562 近位端、 564 吻合部、
565 小孔、 582 遠位のステント、
583 近位のステント、 600 ステント移植片、
602,612 放射線不透過性のマーカー、
604 補助開窓、 606 左腎用開窓、 608 ステント、
610 ステント、 614 人工器官側枝、 618 吻合部、
620 マーカー、 622 吻合部、 624 遠位端、
626 ステント移植片の近位端、 630 スカラップ、
632,634 領域、 636 右腎用開窓、
650 ステント移植片、 652 近位のステント、
654 外側Z型ステント、 656 遠位端、 658 近位端、
660 側枝、 662 SMA用開窓、
664 左腎用開窓、 666 近位部分、 668 遠位部分、
670 テーパー部、 672 右腎用開窓、
676 内側Z型ステント、 670 側枝−幹部吻合、 720 人工器官、
700 導入器、 710 筒状のスリーブ、
711 可撓性の伸長部分、 712 穴、
715 薄壁の金属管、 716 結合装置、
719 自己拡張型ステント、 720 人工器官、
721 Z型ステント、 723 本体部分、
724 近位のワイヤー解放機構、 725 遠位のワイヤー解放機構、
729 側方チューブ、 730 シース、 732 長い脚部、
735 把持及び止血密封装置、 736 本体、
737 クランプねじ、 739 ピン用バイス、
741 プラスチック製のチューブ、 742 人工器官の遠位端、
746 ねじ込みキャップ、 750 人工器官、
751 逆棘部、 760 短い脚部、
780 外部操作部分、 782 遠位の取り付け部分、
784 近位の取付け部分、 800 送り込み先端、 802 ガイドワイヤー、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通して延びている幹部管腔および幹部壁を有する人工器官幹部と、
貫通して伸長している第一の側枝管腔および側枝壁を有する、前記幹部壁から伸長している第一の人工器官側枝と、
貫通して伸長している第二の側枝管腔を有する、前記側枝壁から伸長している第二の人工器官側枝と、
を備えており、
前記第一の側枝管腔は、前記幹部壁を介して前記幹部管腔と流体連通し、
前記第二の側枝管腔は、前記側枝壁を介して前記第一の側枝管腔と流体連通する、人工器官。
【請求項2】
前記第一および第二の人工器官側枝のうちの少なくとも1つが、前記人工器官幹部に沿って長手方向に且つ該人工器官幹部の周りに周方向に設けられている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項3】
前記第一の人工器官側枝と前記第二の人工器官側枝との両方が、前記人工器官幹部に沿って長手方向に且つ該人工器官幹部の周りに周方向に設けられている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項4】
前記第二の人工器官側枝が前記第一の人工器官側枝に沿って長手方向に且つ該第一の人工器官側枝の周りに周方向に設けられている、請求項1又は2に記載の人工器官。
【請求項5】
前記第一および第二の人工器官側枝のうちの少なくとも1つは、その長さに沿ってテーパーが付けられている、請求項1乃至4のいずれかに記載の人工器官。
【請求項6】
前記第一の人工器官側枝は、その長さに沿ってテーパーが付けられている、請求項1乃至5のいずれかに記載の人工器官。
【請求項7】
前記第一の人工器官側枝が前記人工器官幹部の長手方向に沿って且つ該人工器官幹部の周りに周方向に設けられていること、
前記第二の人工器官側枝が前記人工器官幹部の長手方向に沿って且つ該人工器官幹部の周りに周方向に設けられていること、
前記第二の人工器官側枝が前記第一の人工器官側枝の長手方向に沿って且つ該第一の人工器官側枝の周りに周方向に設けられていること、及び
前記第一の人工器官側枝がその長さに沿ってテーパーが付けられていること、
のうちの2以上の特徴を更に備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項8】
前記第二の人工器官側枝が前記第一の人工器管側枝の壁に形成されている吻合部を介して該第一の人工器官側枝と流体連通しており、前記吻合部の直径が約10mmである、請求項1乃至7のいずれかに記載の人工器官。
【請求項9】
前記第一の人工器官側枝が、前記人工器官幹部の壁に形成される吻合部を介して該人工器官幹部と流体連通しており、前記吻合部の直径が約16mmである、請求項1乃至8のいずれかに記載の人工器官。
【請求項10】
前記第一および第二の人工器官側枝のうちの少なくとも1つが近位方向に伸長している、請求項1乃至9のいずれかに記載の人工器官。
【請求項11】
前記第一および第二の人工器官側枝のうちの少なくとも1つが遠位方向に伸長している、請求項1乃至10のいずれかに記載の人工器官。
【請求項12】
前記第一の人工器官側枝が患者の上腸間膜動脈内へ挿入できるようになされており、前記第二の人工器官側枝が患者の腹腔動脈内へ挿入できるようになされている、請求項1乃至11のいずれかに記載の人工器官。
【請求項13】
貫通して伸長している幹部管腔、壁、及び該壁内の吻合部を有する人工器官幹部と、
前記吻合部に隣接して前記人工器官幹部に取り付けられたステントと、を備えており、
前記ステントは前記人工器官幹部に対して半径方向の支持を提供する管状のステント本体を有しており、前記ステント本体は第一のステントパターンと第二のステントパターンとの間で前記人工器官幹部の長手軸線を中心にエンドレスに互い違いになっており、
前記第一のステントパターンが、前記吻合部の外周全体に接触し且つこれを支持する外形形状を有するループを備える、人工器官。
【請求項14】
前記第二のステントパターンがジグザグ形状を有する、請求項13に記載の人工器官。
【請求項15】
前記ループが卵形形状を有する、請求項13に記載の人工器官。
【請求項16】
貫通して伸長している幹部管腔を有する人工器官幹部と、
貫通して伸長している側枝管腔を有する人工器官側枝と、
第一の軸線を中心に配置されている第一の管状ステント部分と第二の軸線を中心に配置されている第二の管状ステント部分との間の外周でエンドレスに互い違いになっているステントパターンを有するステントと、を備えており、
前記第一の管状ステント部分は前記人工器官幹部の少なくとも一部分に取り付けられてこれを支持しており、前記第二の管状ステント部分は前記人工器官側枝の少なくとも一部分に取り付けられてこれを支持している、人工器官。
【請求項17】
前記ステントパターンがジグザグ形状を有する、請求項16に記載の人工器官。
【請求項18】
前記第一の管状ステント部分が前記第二の管状ステント部分と異なる直径を有する、請求項16に記載の人工器官。
【請求項19】
前記第一の管状ステントの軸線が前記第二の管状ステントの軸線と同一線上にある、請求項16に記載の人工器官。
【請求項20】
前記人工器官側枝は、少なくとも一部が前記人工器官幹部管腔の内側に配置される、請求項16に記載の人工器官。
【請求項21】
前記人工器官側枝は、少なくとも一部が前記人工器官幹部管腔の外側に配置される、請求項16に記載の人工器官。
【請求項22】
前記ステントが8の字形状を有する、請求項16に記載の人工器官。
【請求項23】
前記第一の管状ステント部分の少なくとも一部分が、前記人工器官幹部の内面上に配置されている、請求項16に記載の人工器官。
【請求項24】
前記第一の管状ステント部分の少なくとも一部分が、前記人工器官側枝の外面上に配置されている、請求項23に記載の人工器官。
【請求項25】
前記第二の管状ステント部分の少なくとも一部分が、前記人工器官側枝の外面上に配置されている、請求項16に記載の人工器官。
【請求項26】
前記ステントパターンがジグザグ形状を有していること、
前記第一の管状ステント部分が前記第二の管状ステント部分と異なる直径を有していること、
前記第一の管状ステント部分の軸線が前記第二の管状ステント部分の軸線と同一線上にあること、
前記人工器官側枝が前記人工器官幹部管腔の内側に少なくとも一部が配置されていること、
前記人工器官側枝が前記人工器官幹部管腔の外側に少なくとも一部が配置されていること、
前記ステントが8の字形状を有していること、
前記第一の管状ステント部分の少なくとも一部分が、前記人工器官幹部の内面上に配置されていること、
前記第一の管状ステント部分の少なくとも一部分が、前記人工器官側枝の外面上に配置されていること、及び
前記第二の管状ステント部分の少なくとも一部分が、前記人工器官側枝の外面上に配置されていること、のうちのいずれか2以上の特徴を更に備えている、請求項16に記載の人工器官。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15a】
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【図15b】
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【図15c】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21a】
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【図21b】
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【図21c】
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【図21d】
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【図22a】
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【図22b】
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【図23a】
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【図23b】
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【図23c】
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【図23d】
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【図23e】
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【図23f】
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【図24a】
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【図24b】
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【図24c】
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【図24d】
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【図25】
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【図26】
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【図27a】
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【図27b】
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【図27c】
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【図27d】
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【図27e】
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【図28a】
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【図28b】
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【図28c】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32a】
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【図32b】
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【図32c】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41a】
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【図41b】
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【図41c】
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【図41d】
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【図42a】
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【図42b】
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【図42c】
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【図42d】
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【図43】
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【図44】
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【公表番号】特表2011−528258(P2011−528258A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518731(P2011−518731)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/004124
【国際公開番号】WO2010/008570
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(504291867)ザ クリーヴランド クリニック ファウンデーション (11)
【氏名又は名称原語表記】THE CLEVELAND CLINIC FOUNDATION
【Fターム(参考)】