説明

側溝蓋用スリットカバー

【課題】 歩行者の靴等を傷付けたり、つまずいてケガをしたりするのを防止させ、水落ち穴としての機能を確保させ、集水範囲を拡大させ、比較的大きな物が落ち込むのを抑制させ、隣り合う側溝蓋の対向面同士が接触することによる破損を防止させ、上面を側溝蓋の上面と均一面に形成させて段差をなくした側溝蓋用スリットカバーの提供。
【解決手段】 側溝本体1の左右の側壁11に形成した蓋受け段差面12上に載置され、側溝蓋2の対向面に当接して間隔を一定に保持させるスペーサ部材30と、スペーサ部材の上端間に渡され、対向面との間に左右部スリット状間隙S1を形成させる架設部材31と、手掛け用切込面21によって形成される穴22に納まる状態で架設部材に取付けられ、穴部スリット状間隙S2を形成させるカバー部材32と、を備え、上面3aが均一面で、側溝蓋の上面2aと均一面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側溝本体に形成された蓋受け段差面に載置された側溝蓋において、その隣り合う側溝蓋の対向面間に設置される側溝蓋用スリットカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
側溝の開口部に設けられる側溝蓋には、一般に、その隣り合う側溝蓋の対向面の両面又は片面に手掛け用切込面が形成され、この手掛け用切込面によって隣り合う側溝蓋間に穴が形成された状態になる。
【0003】
この穴は手指を差込むことが可能な大きさで開口しているため、歩行者の靴先や踵、特に子供用靴や女性用靴のヒールが嵌り込んだり、視覚障害者の白杖が嵌り込んだりして、靴や白杖を傷付けたり、つまずいてケガをしたりすることがあるという問題があった。
【0004】
また、この穴は雨水等を側溝内に流入させる水落ち穴としても機能するものであるが、従来では、隣り合う側溝蓋を、その対向面同士が接触する状態に設置させているため、雨水の殆どがこの穴を集水口として側溝内に流入している。
このため、集水口が局部的になり、集水範囲が狭くなるという問題があった。
また、この穴から砕石や木屑等の比較的大きな物が側溝内に落ち込み、これが大量に堆積して流水の障害になるという問題もあった。
【0005】
また、上記したように隣り合う側溝蓋を、その対向面同士が接触する状態に設置させているため、この上を自動車や自転車等が通る際の振動や衝撃によって対向面同士が擦れたり、衝突したりして側溝蓋の角部が破損し、これが次第に大きくなってクラックや割れ等の破壊につながるという問題もあった。
【0006】
従来、手掛け用切込面を形成したことに伴う前記穴を塞ぐ目的で、穴にカバーを設けるようにした技術(側溝の踏み板カバー)が知られている(特許文献1参照)。
この側溝の踏み板カバーは、隣り合う側溝蓋の上面間に跨る状態で穴を完全に塞ぐように形成されている。
【0007】
このように穴を完全に塞いでしまうと、ここから雨水等を側溝内に流入させる水落ち穴としての機能が完全に無くなってしまうという問題がある。
また、踏み板カバーの上面が側溝蓋の上面よりも高くなるため段差が生じ、歩行者等がつまずいたり、歩きにくかったりするといった問題がある。
また、従来の踏み板カバーでは、隣り合う側溝蓋の対向面同士が接触することによる破損等の不具合に対しては、何らの対策が構じられていない。
【特許文献1】特開2000−199261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、隣り合う側溝蓋間に形成される穴の大部分を塞ぎながら、その側溝蓋の対向面間にスリット状間隙を形成させたものである。
これにより、歩行者の靴等を傷付けたり、つまずいてケガをしたりするのを防止させる。
また、雨水等を側溝内に流入させる水落ち穴としての機能を確保させると共に、その集水範囲を拡大させ、かつ砕石や木屑等の比較的大きな物が側溝内に落ち込むのを抑制させる。
また、隣り合う側溝蓋の対向面同士が接触することによる破損を防止させる。
更に、上面を側溝蓋の上面と均一面に形成させることで段差をなくし、歩行者等がつまずいたり、歩きにくかったりするのを改善することができる側溝蓋用スリットカバーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明(請求項1)の側溝蓋用スリットカバーは、
側溝本体(1)の左右の側壁(11),(11)に形成された蓋受け段差面(12),(12)間に、側溝長さ方向に列設された状態で側溝蓋(2)が載置され、その隣り合う側溝蓋(2),(2)の対向面(20),(20)間に設置される側溝蓋用スリットカバー(3)であって、
前記蓋受け段差面(12),(12)上に立設状態に載置され、前記対向面(20),(20)に当接してその対向面(20),(20)間の間隔を一定に保持させるスペーサ部材(30),(30)と、
前記左右のスペーサ部材(30),(30)の上端間に渡され、前記対向面(20),(20)との間に左右部スリット状間隙(S1)を形成させる架設部材(31)と、
前記対向面(20),(20)の両面又は片面に形成された手掛け用切込面(21),(21)によって隣り合う側溝蓋(2),(2)間に形成される穴(22)に納まる状態で前記架設部材(31)に取付けられ、前記手掛け用切込面(21),(21)との間に前記左右部スリット状間隙(S1)に連通した穴部スリット状間隙(S2)を形成させるカバー部材(32)と、を備え、
前記スペーサ部材(30)と、架設部材(31)と、カバー部材(32)は、その上面(3a)が均一面になるように一体に形成されると共に、その上面(3a)が側溝蓋(2)の上面(2a)と均一面に形成されている構成とした。
【0010】
また、本発明の(請求項2)の側溝蓋用スリットカバーは、
請求項1記載の側溝蓋用スリットカバーにおいて、前記スペーサ部材(30),(30)の下端に、側溝蓋(2),(2)の下端角部に係合させる突出部(35),(35)が形成されている構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明(請求項1)の側溝蓋用スリットカバーは、スペーサ部材によって、隣り合う側溝蓋の対向面間の間隔を一定に保持させ、その上で架設部材と対向面との間に左右部スリット状間隙を形成させ、かつ手掛け用切込面によって形成される穴に納まる状態でカバー部材を設けると共に、カバー部材と手掛け用切込面との間に穴部スリット状間隙を形成させた構成に特徴がある。
【0012】
このように本発明は、手掛け用切込面によって形成される穴の大部分をカバー部材によって塞ぎながら、側溝蓋の対向面間にスリット状間隙(左右部スリット状間隙及び穴部スリット状間隙)を形成させたものである。
従って、カバー部材を設けたことにより、前記穴の大部分が塞がれるため、歩行者の靴等を傷付けたり、つまずいてケガをしたりするのを防止させることができる。
また、砕石や木屑等の比較的大きな物が穴から側溝内に落ち込むのを抑制させることができる。
【0013】
又、左右部スリット状間隙及び穴部スリット状間隙によって、雨水等を側溝内に流入させる水落ち穴としての機能を確保させることができると共に、その集水範囲を側溝蓋の全幅に亘る範囲に拡大させることができる。
また、左右部スリット状間隙及び穴部スリット状間隙によって、隣り合う側溝蓋の対向面同士が接触することによる破損を防止させることができる。
【0014】
更に、本発明の側溝蓋用スリットカバーは、その上面を側溝蓋の上面と均一面に形成させたので、前記した従来の踏み板カバーとは異なり、上面が側溝蓋の上面よりも高くなって段差が生じるといったことがなく、歩行者等がつまずいたり、歩きにくかったりするのを防止できる。
【0015】
本発明(請求項2)の側溝蓋用スリットカバーは、その施工状態において、側溝蓋用スリットカバーを上に引き上げると突出部が側溝蓋の下端角部に係合し、取り外しが困難になるもので、これにより、近年、横行している鋼材の盗難に対処することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明における側溝蓋用スリットカバーの第1実施例を示す平面図、図2はその側溝蓋用スリットカバーを示す側溝の幅方向断面図、図3は図1のA−A断面図、図4は図1のB−B断面図である。
【0017】
図において、1は側溝本体で、現場打ち施工によって形成され、上面が開口し、内部に溝水路10が形成され、左右の側壁11,11の内面上端部分にそれぞれ蓋受け段差面12,12が形成されている。
なお、側溝本体1としてコンクリート二次製品を用いることができる。
【0018】
そして、前記蓋受け段差面12,12間に側溝長さ方向(図1において矢印M方向)に列設させた状態で多数の側溝蓋2が載置される。
この側溝蓋2は、コンクリート二次製品であり、隣り合う側溝蓋2,2の対向面20,20となる側溝長さ方向の両端面の中央部分にそれぞれに手掛け用切込面21,21が形成され、この手掛け用切込面21,21によって隣り合う側溝蓋2,2間に穴22が形成されるものである。
実施例では、手掛け用切込面21,21が略台形で対向面20,20の両面に形成されているため、側溝蓋2,2間の穴22は略亀甲形状に形成される。
【0019】
側溝蓋用スリットカバー3は前記隣り合う側溝蓋2,2の対向面20,20間に設置されるもので、前記蓋受け段差面12,12上に立設状態に載置される左右のスペーサ部材30,30と、前記左右のスペーサ部材30,30の上端間に渡された架設部材31と、隣り合う側溝蓋2,2間に形成される穴22に納まる状態で前記架設部材31に取付けられたカバー部材32,32と、を備え、その全長が側溝蓋2の全幅と同一(ほぼ同一を含む)になるように形成されている。
【0020】
前記スペーサ部材30は、前記対向面20,20に当接してその対向面20,20間の間隔を一定に保持させるためのもので、細幅板材が用いられ、その側溝長さ方向の両端面30a,30aが対向面20,20との当接面になる。
【0021】
前記架設部材31は、一端が前記スペーサ部材30,30の側溝長さ方向の中央部に連結された細幅板材による左右バー部材31a,31aと、この左右バー部材31aの他端部同士を連結させた細幅板材による一対の連結バー部材31b,31bとを備え、側溝幅方向(図1おいて矢印N方向)の中央部分に連結バー部材31b,31bと左右バー部材31a,31aとで囲まれるスリット状通水口31cが形成されている。
そして、前記左右バー部材31a,31aの側溝長さ方向の厚みL2を、前記スペーサ部材30,30の側溝長さ方向の幅L1よりも小さくさせることで、架設部材31と前記対向面20,20との間に左右部スリット状間隙S1が形成されるものである。
【0022】
前記カバー部材32,32は、一対の略台形板で形成され、前記スリット状通水口31cを塞ぐことがないように、前記一対の連結バー部材31b,31bの上面にそれぞれ取付けられている。
このように、カバー部材32,32間にスリット状通水口31cを開口させると、それだけ雨水の流入量を増加させることができるし、集水範囲も拡大できる。
【0023】
そして、前記カバー部材32,32の側溝長さ方向の幅L3を、穴22の側溝長さ方向の幅L4よりも小さくさせることで、カバー部材32,32と前記手掛け用切込面21,21との間に前記左右部スリット状間隙S1に連通した穴部スリット状間隙S2が形成されるものである。
なお、前記左右部スリット状間隙S1及び穴部スリット状間隙S2のスリット幅は、女性用のヒールや杖が嵌り込まないように9mm以下とし、雨水の流入をスムーズにさせる上では5mm以上にするのが好ましい。
又、前記左右部スリット状間隙S1、穴部スリット状間隙S2、スリット状通水口31cは、その上面開口部が雨水流入口になり、その下面開口部が雨水流出口になるもので、この雨水流出口を雨水流入口よりも幅広く形成させることで、土砂等が詰りに難いようにしている。
【0024】
また、前記スペーサ部材30,30と、架設部材31と、カバー部材32,32は、その上面が均一面になるように溶接により一体に形成されると共に、その上面3aが側溝蓋2の上面と均一面に形成され、段差が生じないようにしている。
【0025】
また、前記スペーサ部材30の下端に、側溝蓋2の下端角部に係合させる突出部35が形成されており、実施例では、細棒35aをスペーサ部材30の下端に取り付け、この細棒35aの両端部をスペーサ部材30の両端面30a,30aから突出させることで突出部35,35を形成させている。
この場合、突出部35となる細棒35aの両端部を、上面が端に向けて下り傾斜になるように傾斜面に形成させることで、側溝蓋2の下端角部に対する干渉を小さくさせている。
この突出部35は、その施工状態において、側溝蓋用スリットカバー3を上に引き上げると側溝蓋2の下端角部に係合して取り外しを困難にさせるためのもので、近年、横行している鋼材の盗難に対処することができる。
【0026】
なお、側溝蓋用スリットカバー3はスペーサ部材30の下端が前記蓋受け段差面12上に載置されているだけで固定されていないため、清掃作業等に伴う取り外しに際しては、側溝蓋2,2を先に取り外して手で持ち上げるだけの作業で簡単に取り外すことができる。
【0027】
次に、図5は本発明における側溝蓋用スリットカバーの第2実施例を示す平面図、図6は図5のC−C断面図である。
【0028】
この第2実施例の側溝蓋用スリットカバー3は、カバー部材32が一枚の略亀甲形板材により形成され、カバー部材32に前記第1実施例で示したスリット状通水口31cが開口されていない点で第1実施例と異なっている。
その他の構成は、前記第1実施例と同様である。
【0029】
次に、図7は本発明における側溝蓋用スリットカバーの第3実施例を示す平面図、図8は図7のD−D断面図である。
【0030】
この第3実施例の側溝蓋用スリットカバー3は、隣り合う側溝蓋2,2の対向面20,20の片面に手掛け用切込面21が形成されている場合に適用するものである。
架設部材31が左右のスペーサ部材30,30間に架設された細幅板材による長尺バー部材31dと、この長尺バー部材31dの片面に取付けた細幅板材による短尺バー部材31eとを備え、この短尺バー部材31eの上面に一枚の略台形板によるカバー部材32が取付けられている点で前記第1実施例と異なっている。
その他の構成は、前記第1実施例と同様である。
【0031】
本発明において、側溝蓋用スリットカバーを構成するスペーサ部材、架設部材、カバー部材、細棒の材質としては、スチール材を用いる他に強化プラスチックを用いることができる。
また、表面にメッキ加工を施すことができるし、上面に滑り止め加工、例えば、滑り止めテープを接着、セラミック片を付着、滑り止め色塗装、凹凸加工等を施すことができるし、色や模様を施すことも任意にできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明における側溝蓋用スリットカバーの第1実施例を示す平面図
【図2】その側溝蓋用スリットカバーを示す側溝の幅方向断面図
【図3】図1のA−A断面図
【図4】図1のB−B断面図
【図5】本発明における側溝蓋用スリットカバーの第2実施例を示す平面図
【図6】図5のC−C断面図
【図7】本発明における側溝蓋用スリットカバーの第3実施例を示す平面図
【図8】図7のD−D断面図
【符号の説明】
【0033】
1 側溝本体
10 溝水路
11 側壁
12 蓋受け段差面
2 側溝蓋
2a 上面
20 対向面
21 手掛け用切込面
22 穴
3 側溝蓋用スリットカバー
3a 上面
30 スペーサ部材
30a 両端面
31 架設部材
31a 左右バー部材
31b 連結バー部材
31c スリット状通水口
31d 長尺バー部材
31e 短尺バー部材
32 カバー部材
35 突出部
35a 細棒
S1 左右部スリット状間隙
S2 穴部スリット状間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝本体(1)の左右の側壁(11),(11)に形成された蓋受け段差面(12),(12)間に、側溝長さ方向に列設された状態で側溝蓋(2)が載置され、その隣り合う側溝蓋(2),(2)の対向面(20),(20)間に設置される側溝蓋用スリットカバー(3)であって、
前記蓋受け段差面(12),(12)上に立設状態に載置され、前記対向面(20),(20)に当接してその対向面(20),(20)間の間隔を一定に保持させるスペーサ部材(30),(30)と、
前記左右のスペーサ部材(30),(30)の上端間に渡され、前記対向面(20),(20)との間に左右部スリット状間隙(S1)を形成させる架設部材(31)と、
前記対向面(20),(20)の両面又は片面に形成された手掛け用切込面(21),(21)によって隣り合う側溝蓋(2),(2)間に形成される穴(22)に納まる状態で前記架設部材(31)に取付けられ、前記手掛け用切込面(21),(21)との間に前記左右部スリット状間隙(S1)に連通した穴部スリット状間隙(S2)を形成させるカバー部材(32)と、を備え、
前記スペーサ部材(30)と、架設部材(31)と、カバー部材(32)は、その上面(3a)が均一面になるように一体に形成されると共に、その上面(3a)が側溝蓋(2)の上面(2a)と均一面に形成されていることを特徴とする側溝蓋用スリットカバー。
【請求項2】
請求項1記載の側溝蓋用スリットカバーにおいて、前記スペーサ部材(30),(30)の下端に、側溝蓋(2),(2)の下端角部に係合させる突出部(35),(35)が形成されている側溝蓋用スリットカバー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−71023(P2010−71023A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242112(P2008−242112)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(504127887)エムシー産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】