説明

偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法

【課題】本発明は偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法に関し、熱溶融性インクリボンを用いて被転写材上にステルス熱転写記録自体は直接目視できないが、赤外光検知手段でステルス情報を認識することができ、さらに簡易かつ安価な方法で、明確な真贋判断ができる偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法を得ることなどを課題とする。
【解決手段】被転写体上に、少なくとも赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しない熱溶融性物質と赤外蛍光物質を配合した熱溶融性インクリボンにより印字されたステルス熱転写記録と、該ステルス熱転写記録を覆うように、可視光視認できる色調に着色され、かつ前記赤外蛍光物質の励起光を透過する薄膜を設けたことを特徴とする、ステルス性の偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法に関し、さらに詳しくは、熱溶融性インクリボンを用いて、被転写材上にステルス熱転写記録を行う偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から熱溶融性インクリボンを用いて偽造防止印刷する方法は種々のものが知られている。例えば、赤外吸収剤をインクリボンに配合し偽造防止したインクがあるが、カーボンブラックなど色材の種類によってはそれ自体が赤外発光吸収するので、ステルスインクとしては使えなかった。
また、UV発光性材料を使用したものもある。しかしながら、紫外線は波長が短く、光透過性が悪いので印刷部分を表面に露出させておかないと判別できないものであり、特別なブラックライトなどで発光させ真偽判断を行う場合は高価な専用の設備が必要であった。また、ブラックライトはかなり普及しており、偽造防止効果の面でも十分とは言えなくなってきている。
【0003】
従来の偽造防止印刷方法は、いずれも表面に印刷部が露出したものであり、表面側から直接目視できないが、認識する機械によりステルス情報を光学的に認識することはできなかった。
【0004】
表面側に印刷が露出したもので本発明の直接的な背景技術となるものではないが、非可視光領域のインクにより改ざん防止する技術として具体的な特許文献の例を挙げる。
【0005】
特許文献1に記載のものは、昇華性リボンを用い、熱昇華型インクにより印刷を行うもので、非可視光領域のインクにより多階調印刷することで、改ざん防止をすることが狙いの技術である。しかしながら、昇華型リボンにより多階調印刷を行うので、二値的な真偽性を得ることが困難で、二値的な階調印刷を印字しても吸収強度にバラツキがあり、強度解析においてその精度に難があった。また、製造時のバラツキも影響するので、製造精度も要求され、コストも高く、簡易なものではなかった。さらに、昇華性染料を用いているため、耐光性に劣り、汎用性にも乏しかった。
【0006】
特許文献2に記載のものは、赤外吸収印刷物とその読み取り方法に関する発明であり、異なる赤外吸収波長を有する材料を用い、真贋判定を行うものである。しかし、波長の異なる二種以上の材料を用いるので、複数の材料を用意するのが必須であり、必然的にそれらを配合した複数のリボンを用意する必要があった。それらを同時に使用する関係上、装置も大がかりになり、センサーも精度の良いセンサーを二種以上必要となるなど、コストも高く、簡易なものではなかった。
【0007】
特許文献3に記載のものは、着色濃度が不均一になるようにインク層を形成し、記録部位ごとの濃淡が不均一な記録を形成することで、偽造防止を図るものである。しかし、この方法による偽造防止は、ホログラムのようなものであり、一定の偽造防止効果はあるものの、毎回違う不均一なものを印刷することで偽造防止を行うという手法のため、同一の印刷物を製造することができず、真贋判定は低次元のものしかできず、そのリボンにより何らかのステルス情報を付与することもできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−58347号公報
【特許文献2】特開2006−213017号公報
【特許文献3】特開2002−137555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法に関し、熱溶融性インクリボンを用いて被転写材上にステルス熱転写記録自体は直接目視できないが、赤外光検知ディフェクターなどの赤外光検知手段でステルス情報を認識することができ、さらに簡易かつ安価な方法で、明確な真贋判断ができる偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法を得ることなどを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、被転写体上に、少なくとも熱溶融性物質と赤外蛍光物質を配合した熱溶融性インクリボンにより印字されたステルス熱転写記録と、該ステルス熱転写記録を覆う特定の薄膜を設けたことなどにより偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法を完成した。
すなわち、本発明は、
「1.被転写体上に、少なくとも赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しない熱溶融性物質と赤外蛍光物質を配合した熱溶融性インクリボンにより印字されたステルス熱転写記録と、該ステルス熱転写記録を覆うように、可視光視認できる色調に着色され、かつ前記赤外蛍光物質の励起光等を透過する薄膜を設けたことを特徴とする、ステルス性の偽造防止印刷物。
2.基材上に、少なくとも赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しない熱溶融性物質と赤外蛍光物質を配合した熱転写インク層を設けた熱溶融性インクリボンを用いて、被転写材上にステルス熱転写記録を行う印刷方法であって、少なくとも熱溶融性インクリボンで一次印刷を行い、一次印刷を覆うように、可視光視認できる色調に着色され、かつ赤外蛍光物質の励起光等を透過する薄膜を設け、被転写材上のステルス熱転写記録は直接目視できないが、赤外光検知手段でステルス情報を認識することを特徴とするステルス性の偽造防止印刷方法。」に関する。
【発明の効果】
【0011】
上記偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法によれば、熱溶融性インクリボンを用いて被転写材上にステルス熱転写記録自体は直接目視できないが、赤外光検知ディフェクターなどの赤外光検知手段でステルス情報を認識することができ、さらに簡易かつ安価な方法で、明確な真贋判断ができる偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法を得ることができる優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に使用する熱溶融性インクリボンの一例を模式的に表した断面図
【図2】本発明で得られる偽造防止印刷物の一例を模式的に表した断面図
【図3】本発明で得られる偽造防止印刷物の別の一例を模式的に表した断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
通常、ステルス印刷に限らず熱転写インクリボンで印字すると、印字したところは跡ができてよく見ると目視判別できてしまう。これではステルス印刷ということはできない。そこで、本発明においては、被転写体上に、少なくとも赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しない熱溶融性物質と赤外蛍光物質を配合した熱溶融性インクリボンにより印字されたステルス熱転写記録をなし、その後、該ステルス熱転写記録を可視光視認できる色調に着色され、かつ前記赤外蛍光物質の励起光を透過する薄膜で覆えば、被転写材上のステルス熱転写記録は直接目視できないが、赤外光検知ディフェクターなどの赤外光検知手段でステルス情報を認識することができ、効果的な偽造防止印刷物や偽造防止印刷方法を得ることができる。
【0014】
本発明においては、ステルス記録を赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しない熱溶融性物質と赤外蛍光物質を配合した熱溶融性インクリボンにより印字されたステルス熱転写記録により行う。その際、インク色が実質上無色であればよりステルス性が向上するので好ましい。
本発明では赤外光を使用するが、赤外光は波長が長いので、透過性が良いという特性を利用する。ステルス熱転写記録の上に該記録を目視から覆う薄膜を設けても認識機器によればステルス情報の認識が可能となるのである。
赤外線ディフューザーによる正確な情報認識の為には、しっかりしたステルス熱転写記録がなされることが重要である。情報のある部分とない部分の差が明確な二値情報を得るためには以下のような熱溶融性インクリボンを用いる。
【0015】
本発明のステルス熱転写記録を得る熱溶融性インクリボンとしては、基材上に、少なくとも赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しない熱溶融性物質と赤外蛍光物質を配合した熱転写インク層を設けた熱溶融性インクリボンを用いる。基材としては、各種プラスチックフィルムなどが使用可能であるが、本発明の熱溶融性インクリボンには、裏面に耐熱滑性層を設けた2.5〜6.0μm程度のポリエステルフィルムが良好に使用できる。
【0016】
本発明に使用する赤外蛍光物質は、赤外線励起、赤外線発光の蛍光体であり、ある一定の赤外光が当たったときに励起され赤外発光・蛍光する材料である。このような赤外蛍光物質は従来公知の材料が使用可能である。紫外線発光のためのブラックライトは普及しており、一般的に入手することもできるが、赤外検知のディフェクターはあまり出回っておらず、偽造防止の材料として好適である。赤外蛍光物質の配合量は蛍光強度、コスト面などの関係から4.5〜10.0質量%が好ましい。
【0017】
本発明においては、該ステルス熱転写記録を覆うように、可視光視認できる色調に着色され、かつ前記赤外蛍光物質の励起光を透過する薄膜を設けたことを特徴とする。
赤外光は波長が長いので、透明の樹脂およびガラスなどであれば5cm程度の厚みでも透過する。よって、可視光視認できる色調に着色され、かつ前記赤外蛍光物質の励起光を透過する薄膜を設け可視光視認からステルス印刷を隠しても赤外線ディフューザーなどの赤外光検知手段によれば認識可能で、紫外線発光や赤外線吸収などの手法に比べて格段に読み取り性能に優れるものである。
【0018】
薄膜の構成を代表的な一例として挙げると、ステルス熱転写記録を作製した熱溶融性インクリボンと同様の構成で、可視光視認できる色調に着色し、かつ前記赤外蛍光物質の励起光を透過するように組成した熱溶融性インクリボンでステルス印刷部分を覆うように熱転写印刷を行うことで薄膜とすることができる。この場合、ステルス印刷を行う熱溶融転写印刷と薄膜の転写条件や設置方法を共通にできるので、省スペース、低コスト、効率化などの面で好ましい。
また、ステルス印刷を無色または淡色もしくは薄膜と同系統に着色したものであれば、薄膜の着色を淡くしたり、膜厚を薄くしたりできるので、赤外光検知手段によるステルス認識の精度が向上するのでより好ましい。
【0019】
他の薄膜の例としては、着色ガラスや着色フィルムを積層したり接着したりするもののほか、薄い色紙などの薄紙などを積層したり接着したりするものが挙げられる。
【0020】
本発明に使用する該赤外蛍光物質は、赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しない熱溶融性物質とともに熱転写インクリボン層を形成するが、該熱溶融性物質としては、樹脂やワックスなどの熱により溶融する材料であれば使用可能である。重ねて言うが、該熱溶融性物質は赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しない熱溶融性物質でなければならない。赤外蛍光体の励起光や発光を吸収する熱溶融性物質を使用した場合、赤外蛍光物質によるステルス性に影響を与えてしまうからである。また、熱転写インク層自体は無色でも着色されていてもかまわない。ステルス印刷を覆う薄膜と同系統に着色すればステルス印刷をより目視認識しにくくでき、かつ薄膜を薄くすることもできる。また、薄膜の着色情報は赤外光検知手段の認識補正項目になるが、その薄膜着色補正情報と同じ波長の情報で着色されていれば新たな補正情報を生じて混乱することもないので、認識誤差も少なくなり、好ましい。
【0021】
熱溶融性インクには各種添加剤を配合することもできるが、上記同様、赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しないものである必要がある。
【0022】
熱溶融性物質や各種添加剤は、上記のように赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しないものでなければならないが、熱転写インク層が実質上ステルス印刷判別できる程度であれば、微量の蛍光体の励起光や発光を吸収するものや有色のものも使用できうる。
【0023】
本発明は、上記熱溶融性インクリボンを用いて、被転写材上にステルス熱転写記録を行う印刷方法でもある。
具体的には、基材上に、少なくとも赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しない熱溶融性物質と赤外蛍光物質を配合した熱転写インク層を設けた熱溶融性インクリボンを用いて、被転写材上にステルス熱転写記録を行う印刷方法であって、少なくとも熱溶融性インクリボンで一次印刷を行い、一次印刷を覆うように、可視光視認できる色調に着色され、かつ赤外蛍光物質の励起光を透過する薄膜を設け、被転写材上のステルス熱転写記録は直接目視できないが、赤外光検知ディフェクターなどの赤外光検知手段でステルス情報を認識することを特徴とするステルス性の偽造防止印刷方法である。
【0024】
ステルス熱転写記録を行う熱溶融性インクリボンとしては、前記同様のものであり、薄膜も同様のものが使用できる。
より具体的には上述のように第一のインクリボンでステルスの一次印刷を行い、その上を覆うような任意の部分に薄膜作製用熱溶融性インクリボンにより薄膜としての印刷を行うことで、表面側から不可視なステルス性の偽造防止印刷物を得ることができる優れた方法なのである。このようなステルス印刷を行うことで、簡易かつ安価な方法で、明確な真贋判断ができ、同時に確実なステルス情報を付加することのできる偽造防止印刷物を得ることができる。
【0025】
また、本発明においては、ステルス印刷に熱溶融性のインクリボンを用いるが、昇華型のリボンなどと異なり階調性が出現しにくく、ほぼ全領域において概略均一な熱溶融性インク層の組成と厚みを有するので、赤外発光(蛍光)強度を解析する上でも二値的な解析結果を期待できる結果、解析精度が高くなり、ステルス情報パターンも複雑化することができるなど、より好ましい偽造防止印刷物を得ることができる。
【0026】
さらに、ステルス熱転写記録を行う際に、二種のステルス性熱溶融性インクリボンを用いることもできる。例えば、第一のインクリボンで一次印刷を行い、その上の任意の部分に第二のインクリボンにより二次印刷を行うことで、赤外蛍光強度の異なる二種以上のステルス印刷を施し、それぞれの単独部分と重なった部分の印刷物の赤外蛍光強度の差により赤外傾向強度のバリエーションを段階的(非無段階調的)に増やすことができ、より効果的に偽造防止を図るステルス性の偽造防止印刷物が得られる。
【0027】
この場合、第一のインクリボンと第二のインクリボンに同一のインクリボンを用いるとより簡易的かつ安価に偽造防止印刷物を得ることができるほか、赤外発光強度を解析する上でも二値的な解析結果を期待できる結果、複数のインクリボンを用いても解析精度が低下せず、重ねて印字した複数のステルス情報を複雑化することもでき、より好ましい偽造防止印刷物を得ることができる。
【0028】
一方、第一のインクリボンと第二のインクリボンに異なる赤外蛍光(蛍光)強度を有する複数のインクリボンを用いることもできるが、重ねて印字した際の赤外蛍光強度が単純倍数的にならないため、印字パターンや印字回数などが複雑化した際に解析精度が落ちる傾向があるので、あらかじめ単独の赤外発光強度を検知する印字領域を設けた印字パターンにし、情報解析するなどのソフトウェア的対応をとることが偽造防止精度の向上のためには好ましい。
【0029】
熱溶融性インクリボンにおける熱転写インク層の塗工厚は特に規定はないが、十分な赤外蛍光強度を得ることを考慮すればおおむね1.0〜3.0μm程度が好ましい。基材と熱転写インク層の間の剥離層や、熱転写インク層の上に設け被転写媒体との密着性を向上させるための接着層など、その他の機能層を設けても良い。
【0030】
本発明に使用する熱溶融性インクリボンは、上述のように、基材上に、熱転写インク層を設けることにより構成されるが、該インク層の製造手段としては、特に規定はなく、水系または油系などの溶媒中に分散、溶解させ、塗布液を調製し、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、エアーナイフコーターなどの塗工方法で所要の塗工厚に塗工し熱転写インクリボンを得ることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、以下実施例及び比較例中の「部」は、特にことわらない限り全て質量による。
【0032】
実施例1
<熱溶融性インクリボンの作製>
厚さ5μmのポリエステルフィルムの片面に耐熱滑性層を形成して基材とし、基材の耐熱滑性層の逆面に、以下の構成の熱転写インク層成分を調製し、乾燥質量が3.0g/m2になるようにグラビアコーターで塗工、乾燥させ、熱転写インク層を形成し、熱溶融性インクリボンを作製した。
(熱転写インク層成分)
ポリエステル樹脂 80部
ポリエチレンワックス 20部
赤外蛍光物質(注1) 10部
トルエン 400部
メチルエチルケトン 400部
(注1)発光波長ピーク:約980nm、872nm、895nm、励起波長ピーク
約824nm、750nm、588nm
<薄膜作製用着色インクリボンの作製>
厚さ5μmのポリエステルフィルムの片面に耐熱滑性層を形成して基材とし、基材の耐熱滑性層の逆面に、以下の構成の熱転写インク層成分を調製し、乾燥質量が3.0g/m2になるようにグラビアコーターで塗工、乾燥させ、熱転写インク層を形成し、薄膜作製用の着色インクリボンを作製した。
(着色インク層成分)
ポリエステル樹脂 80部
ポリエチレンワックス 20部
黄色顔料 15部
トルエン 400部
メチルエチルケトン 400部
【0033】
得られた前記熱溶融性インクリボンを用い、被転写材上に任意のパターンの実質的無色のステルス印刷を行った。該ステルス熱転写記録は、肉眼では実質上視認しにくい状態にあり、目立つものではなかったが、熱転写跡が残っており、光の加減でこのままでは印刷パターンを判別することがでる状態であった。
そこで、その上に前記着色インクリボンを用いて、該ステルス印刷を覆うように薄膜を構成し、ステルス性の偽造防止印刷物を完成させた。
該偽造防止印刷物は、ステルス熱転写記録の表面が薄膜で覆われているので、肉眼では実質上視認できない状態にあり、特定の赤外蛍光強度を有するステルス印刷であったので、あらかじめ印字パターン、赤外線励起蛍光波長、蛍光強度などを登録しておいた赤外光検知手段としての赤外線検知ディフェクターでのみ印字パターンを検知でき、効果的に偽造防止を図ることのできるステルス性の偽造防止印刷物であった。
【0034】
実施例2
実施例1の熱溶融性インクリボンを2種用意し、第一および第二の熱溶融性インクリボンとし、熱溶融性インクリボンを複数用いた第二の実施例としてステルス印刷を行った。
実施例1の熱溶融性インクリボンを用い、まず、被転写材上に、第一のインクリボンとしての実施例1のインクリボンで全面ベタの一次印刷を行い、その上の任意の部分に第二のインクリボンとして同じ実施例1のインクリボンで二次印刷を行い、ステルス熱転写記録を行った。該ステルス熱転写記録は、肉眼では実質上視認しにくい状態にあり、目立つものではなかったが、熱転写跡が残っており、光の加減でこのままでは印刷パターンを判別することがでる状態であった。
そこで、実施例1と同様に、実施例1の着色インクリボンを用いて、該ステルス印刷を覆うように薄膜を構成し、実施例2のステルス性の偽造防止印刷物を完成させた。
該偽造防止印刷物は、ステルス熱転写記録の表面が薄膜で覆われているので、肉眼では実質上視認できない状態にあり、特定の赤外蛍光強度を有し、かつ赤外蛍光強度の異なる二種以上のステルス印刷であったので、あらかじめ印字パターン、赤外線励起蛍光波長、蛍光強度などを登録しておいた赤外光検知手段としての赤外線検知ディフェクターでのみ印字パターンを検知でき、より効果的に偽造防止を図ることのできるステルス性の偽造防止印刷物であった。
【0035】
実施例3〜6
実施例1における赤外蛍光物質の量を、5部(実施例3)、1部(実施例4)としたほかは実施例1と同様にして、実施例3〜4の熱溶融性インクリボンを作製し、偽造防止印刷物を完成した。
また、実施例1のインクリボンを転用した実施例2と同様に、実施例3〜4の熱溶融性インクリボンを転用し、赤外蛍光物質の量、5部(実施例5)、1部(実施例6)としたほかは実施例2と同様にして、実施例5〜6の熱溶融性インクリボンを作製し、偽造防止印刷物を完成した。
【0036】
比較例1
実施例1における赤外蛍光物質を配合しなかったほかは実施例1と同様にして比較例1の熱溶融性インクリボンを作製し、同様に熱転写印刷を行い、偽造防止印刷物と同様の構成を整えた。
【0037】
実施例3〜6のものは、実施例1、2と同様にステルス性の偽造防止印刷であったが、実施例3、6のものは発光強度が弱くやや検知性に差があるものであった。
【0038】
一方、比較例1のものは、赤外蛍光物質が配合されていないので、赤外発光せず、赤外光検知手段としての赤外線検知ディフェクターで印字パターンを全く検知することができなかった。
【0039】
その他の実施例
また、その他の実施例として、被転写材上に、まず、実施例1の熱溶融性インクリボンを第一のインクリボンとして一次印刷を行い、その上の任意の部分に、実施例3の熱転写インクリボンを第二のインクリボンとして用いて二次印刷を行い、ステルス熱転写記録を行った。該ステルス熱転写記録は、肉眼では実質上視認しにくい状態にあり、目立つものではなかったが、熱転写跡が残っており、光の加減でこのままでは印刷パターンを判別することがでる状態であった。
そこで、実施例1と同様に、実施例1の着色インクリボンを用いて、該ステルス印刷を覆うように薄膜を構成し、ステルス性の偽造防止印刷物を完成させた。
該偽造防止印刷物は、ステルス熱転写記録の表面が薄膜で覆われているので、肉眼では実質上視認できない状態にあり、特定の赤外蛍光強度を有し、かつ赤外蛍光強度の異なる二種以上のステルス印刷であったので、あらかじめ印字パターン、赤外線励起蛍光波長、蛍光強度などを登録しておいた赤外光検知手段としての赤外線検知ディフェクターでのみ印字パターンを検知でき、より効果的に偽造防止を図ることのできるステルス性の偽造防止印刷物であった。
異なるインクリボンにより重ねて印刷を行い赤外蛍光強度に差を設けたので、上記同一のリボンを使用する際に比べ、2種以上のリボンを使用することの煩わしさや装置が大がかりになる、コストが大きくなるなどの問題を除けば、ステルス性の偽造防止効果は同一のリボンを使用する場合に比べ良好な結果となった。
【0040】
本発明の赤外蛍光物質は蛍光透過性が高いので、このような重ね印字においても発光強度を適正に発揮し、良好な検知精度を得ることができた。
【0041】
また、実施例1〜6のものを上記以外の組合せで用いても同様に良好なステルス性の偽造防止効果が得られ、さらに実施例1、3、4のものを順に3種類重ねて印字しても良好なステルス性の印刷物を得ることができ、赤外光検知手段としての赤外線検知ディフェクターによる検知も良好であった。
また、上記実施例は実質上無色のものによるが、赤外線検知に影響のない程度に着色しても特に問題がなく、そのような応用例ももちろん採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、上記構成としたことなどによって、偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法に関し、熱溶融性インクリボンを用いて被転写材上にステルス熱転写記録自体は直接目視できないが、赤外光検知ディフェクターなどの赤外光検知手段でステルス情報を認識することができ、さらに簡易かつ安価な方法で、明確な真贋判断ができる偽造防止印刷物および偽造防止印刷方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・基材
2・・・熱転写インク層
3・・・被転写媒体
4・・・ステルス熱転写記録(第一のインクリボンによる印字)
5・・・ステルス熱転写記録(第二のインクリボンによる印字)
6・・・薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写体上に、少なくとも赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しない熱溶融性物質と赤外蛍光物質を配合した熱溶融性インクリボンにより印字されたステルス熱転写記録と、該ステルス熱転写記録を覆うように、可視光視認できる色調に着色され、かつ前記赤外蛍光物質の励起光等を透過する薄膜を設けたことを特徴とする、ステルス性の偽造防止印刷物。
【請求項2】
基材上に、少なくとも赤外蛍光体の励起光や発光を吸収しない熱溶融性物質と赤外蛍光物質を配合した熱転写インク層を設けた熱溶融性インクリボンを用いて、被転写材上にステルス熱転写記録を行う印刷方法であって、少なくとも熱溶融性インクリボンで一次印刷を行い、一次印刷を覆うように、可視光視認できる色調に着色され、かつ赤外蛍光物質の励起光等を透過する薄膜を設け、被転写材上のステルス熱転写記録は直接目視できないが、赤外光検知手段でステルス情報を認識することを特徴とするステルス性の偽造防止印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−213074(P2011−213074A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85928(P2010−85928)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】