説明

偽造防止策が施された個別情報印刷物

【課題】スクラッチ籤などセキュリティ性の高い情報手段(抽選番号等)となる個別情報が印刷されている個別情報印刷物において、前記個別情報とその背景にあるパターンの貼り替えによる改ざん(贋造)を印刷枠内でも印刷枠ごとでも困難にし、偽造、改ざんを防止した個別情報印刷物の提供にある。
【解決手段】基材シート30の片面に、複数の印刷枠10を有し、該各印刷枠10内に個別情報12が印刷されている個別情報印刷物において、前記個別情報12の下に印刷枠10を跨ぐように偽造防止用の可変印字20が蛍光インキで印刷され、該個別情報印刷物ごとにはユニークで、各印刷枠10ごとには共通の印字配列でなる偽造防止策が施された個別情報印刷物1とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ性の高い個別情報が印刷されている個別情報印刷物に関するものであり、特に抽せん券や抽せん付ゲーム等における当選番号等個別情報の改ざん等を防止するための偽造防止策が施された個別情報印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば当選番号あるいは「当たり」、「外れ」、それに相当する絵柄、暗号などの個別情報を、隠蔽性とスクラッチオフ性(引っ掻き落とし易さ)のインキで隠蔽したスクラッチ籤が知られ、インスタント抽せん券や抽せん付ゲームカードあるいはそれら印刷物などに広く採用されている。
【0003】
しかし、上記スクラッチ籤など、当選番号やそれに相当するパターン等となる個別情報が印刷されている抽せん券等印刷物において、例えば図5(a)に示すように、3個の印刷枠(10)内に個別情報(12)としてそれぞれ「1」、「2」、「3」が順番に並ぶと当選するスクラッチ隠蔽層(図示せず)が施されている抽せん付印刷物(2)の場合、図5(b)に示すような個別情報(12)が「1」、「2」、「2」の順番に並ぶ外れ券である抽せん付印刷物(2)の右端の印刷枠(10)内の「2」を含めて切り取り、これに図5(c)に示すような個別情報(12)が「3」、「2」、「2」の順番に並ぶ外れ券である抽せん付印刷物(2)の左端の印刷枠(10)内の「3」を含めて切り取って、図5(b)に示す外れ券である抽せん付印刷物(2)の右端の印刷枠(10)内に貼り合せ、図5(a)に示すような個別情報(12)が「1」、「2」、「3」が順番に並ぶと当選する当選券である抽せん付印刷物(2)に改ざんするという問題が多く発生するものであった。
【0004】
このような改ざんによる偽造を防止するための1策として、例えば、図6(a)に示すように、個別情報(12)としてそれぞれ「1」、「2」、「3」が印刷されている3個の印刷枠(10)内で、その個別情報(12)の下にランダムパターンでなる細紋パターン(14)が印刷されている偽造防止策が施された可変情報印刷物(3)としたものである。
【0005】
この場合の偽造防止策が施された可変情報印刷物(3)を改ざんしようとすると、例えば、図6(a)に示すように、3個の印刷枠(10)内に個別情報(12)としてそれぞれ「1」、「2」、「3」が順番に並ぶと当選する偽造防止策が施された可変情報印刷物(3)の場合、図6(b)に示すような個別情報(12)が「1」、「2」、「2」の順番に並ぶ外れ券である偽造防止策が施された可変情報印刷物(3)の右端の印刷枠(10)内の「2」とその周囲の細紋パターン(14)を含めて切り取り、これに図6(c)に示すような個別情報(12)が「3」、「2」、「2」の順番に並ぶ外れ券である偽造防止策が施された可変情報印刷物(3)の左端の印刷枠(10)内の「3」とその周囲の細紋パターン(14)を含めて切り取って、図6(b)に示す外れ券である偽造防止策が施された可変情報印刷物(3)の右端の印刷枠(10)内に貼り合せ、図6(a)に示すような個別情報(12)が「1」、「2」、「3」が順番に並ぶ当選券である偽造防止策が施された可変情報印刷物(3)となるが、図6(a)に示す当選券であるはずの偽造防止策が施された可変情報印刷物(3)をよく観察すると、右端の印刷枠(10)内にある図6(c)の左端から切り取られ、貼り合わせた「3」でなる個別情報(12)の周囲の細紋パターン(14)とその外側の貼り合わされた細紋パターン(14)に連続性がなく途切れているものであり、このような不連続性の細紋パターン(14)により偽造と判定される偽造防止策が施された可変情報印刷物(3)となるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記印刷枠(10)内に細紋パターン(14)が施された偽造防止策が施された可変情報印刷物(3)においても、単純な細紋パターンの場合では、同一または極類似の細紋パターン(14)が施された個別情報(12)を切取り貼り替えることによって、細紋パターン(14)の連続性のあるものとすることが可能であり、完全な偽造防止策とはならないという問題点があった。
【0007】
さらに上記問題は、印刷版を用いて細紋パターンを施すことにあり、すなわち細紋パターンは数十パターンしかできないことと、例えば縦4×横5面の計20面が面付けされた印刷版を用いて、20面が面付けされた1000枚を印刷した場合、同一細紋パターンを持つ面が2万面中1000面発生することになる。すなわち20枚に1枚の割合で同一細紋パターンを持つ1面の印刷物ができることになり、極類似の細紋パターンを合わせるとさらに多く発生することになり、貼り替えによる改ざん(贋造)も可なり多く発生する危惧があるという問題があった。
【0008】
また、図示しないが、上記印刷枠内に細紋パターンが印刷された個別情報印刷物において、細紋パターンが施された印刷枠ごとに切り取り貼り替えすると、細紋パターンに連続性があるものとすることができ、改ざんによる偽造防止策とはならないという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、基材シート上に複数の印刷枠を有し、該印刷枠内にセキュリティ性の高い情報手段(抽選番号等)となる個別情報が印刷されている個別情報印刷物において、前記個別情報とその背景にあるパターン(細紋等)の貼り替えによる改ざん(贋造)を印刷枠内でも印刷枠ごとでも困難にし、偽造、改ざん(贋造)を防止した個別情報印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、基材シートの片面に、複数の印刷枠を有し、該各印刷枠内に個別情報が印刷されている個別情報印刷物において、前記個別情報の下もしくは上に前記印刷枠を跨ぐように偽造防止用の可変印字が前記個別情報と区別できるインキで印刷され、該個別情報印刷物ごとにはユニークで、各印刷枠ごとには共通の印字配列でなることを特徴とする偽造防止策が施された個別情報印刷物としたものである。
【0011】
また、請求項2の発明では、前記偽造防止用の可変印字は、可視光下では視認しにくい特殊インキで印刷されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止策が施された個別情報印刷物としたものである。
【0012】
また、請求項3の発明では、前記特殊インキは、機械読み取り可能な蛍光インキであることを特徴とする請求項2記載の偽造防止策が施された個別情報印刷物としたものである。
【0013】
また、請求項4の発明では、前記偽造防止用の可変印字を印刷する蛍光インキは、前記個別情報を印刷する有色インキと同一の印刷機で印刷可能な印刷特性をもつインキであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の偽造防止策が施された個別情報印刷物としたものである。
【0014】
また、請求項5の発明では、前記偽造防止用の可変印字は、前記印刷枠外の所定の位置に印刷されている券面番号と一致していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の偽造防止策が施された個別情報印刷物としたものである。
【0015】
さらにまた、請求項6の発明では、前記偽造防止用の可変印字は、数字列、文字記号列、丸、楕円、四角形、三角形および多角形の組合せ列、格子、幾何学模様でなり、これらに細線を付加したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の偽造防止策が施された個別情報印刷物としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0017】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、基材シートの片面に、複数の印刷枠を有し、該各印刷枠内に個別情報が印刷されている個別情報印刷物において、前記個別情報の下もしくは上に前記印刷枠を跨ぐように偽造防止用の可変印字が前記個別情報と区別できるインキで印刷され、該個別情報印刷物ごとにはユニークで、各印刷枠ごとには共通の印字配列でなるものとすることによって、個別情報印刷物ごとにはユニークな(同じパターンが発生しない)可変印字が個別情報の下もしくは上に各印刷枠を跨ぐように設けられているので、他の個別情報印刷物の印刷枠内から切り取って貼り替えると、可変印字の印字配列が、切取り貼り替えられた印刷枠内では、貼り替えられない他の印刷枠内の配列と異なり、印字配列に連続性が途切れるようになるので、改ざんによる偽造と判明できるようになる。
【0018】
また、たとえ印刷枠ごとの切取り貼り替えによる改ざんがなされたとしても、印刷枠ごと切取り貼り替えられた印刷枠内の可変印字の印字配列と他の印刷枠内の可変印字の印字配列とが異なるので、印刷枠ごとの切取り貼り替えによる改ざんによる偽造をも容易に判定できる偽造防止策が施された個別情報印刷物とすることができる。
【0019】
また、上記請求項2、請求項3に係る発明によれば、前記偽造防止用の可変印字を、可視光下では視認しにくい特殊インキによる印字とし、その特殊インキを機械読み取り可能な蛍光インキとすることによって、個別情報に対するデザイン性やゲーム性に制約されることがなく、かつブラックライトによる機械読み取りで真偽判定が可能な偽造防止策が施された個別情報印刷物とすることができる。
【0020】
また、上記請求項4に係る発明によれば、前記偽造防止用の可変印字を印刷する蛍光インキは、前記個別情報を印刷する有色インキと同一の印刷機、例えばインクジェットプリンターやレーザープリンター(電子写真方式)で印刷可能なインクジェット用インキや電子写真用トナーとすることによって、個別情報と偽造防止用の可変印字とを同一の印刷機で同時に印刷することができ、生産性の向上とともに個別情報と偽造防止用の可変印字との不一致による不具合がなくなるというメリットを有する偽造防止策が施された個別情報印刷物とすることができる。
【0021】
また、上記請求項5に係る発明によれば、前記偽造防止用の可変印字を、前記印刷枠外の所定の位置に印刷されている券面番号(例えば籤券などの整理番号)と一致しているものとすることによって、より真偽判定を確実なものとし、セキュリティ性の高い偽造防止策が施された個別情報印刷物とすることができる。
【0022】
さらにまた、上記請求項6に係る発明によれば、前記偽造防止用の可変印字は、数字列、文字記号列、丸、楕円、四角形、三角形および多角形の組合せ列、格子、幾何学模様でなるものとすることによって、消費者等第3者がブラックライトを照射しても、その内容
が全くわからず、よって改ざんなどの不正行為も起こらず、セキュリティ性をより高めた偽造防止策が施された個別情報印刷物とすることができる。
【0023】
さらにこれら偽造防止用の可変印字に細線を付加することによって、切取り貼り替えた場合、この細線に連続性が途切れるので、偽造・贋造の判明が容易なものとすることができる。
【0024】
従って本発明は、例えば抽選番号あるいはゲーム等の如き個別(機密)情報をスクラッチ隠蔽層で隠蔽されているスクラッチ籤券の如き用途において、優れた実用上の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面により詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の偽造防止策が施された個別情報印刷物の一事例を表す上面図および側断面図であり、図2は、本発明の偽造防止策が施された個別情報印刷物の他の一事例を表す側断面図である。また図3は、本発明の偽造防止策が施された個別情報印刷物の一事例を改ざんした一実施の形態を説明する上面図であり、図4は、本発明の偽造防止策が施された個別情報印刷物を構成する可変印字の他の一事例を示す上面図である。
【0027】
上記本発明は、セキュリティ性の高い個別(機密)情報が印刷されている個別情報印刷物に関するものであり、その一事例として、例えば図1(a)の上面図およびそのB−B面を表す図1(b)の断面図に示すように、基材シート(30)上に、複数の印刷枠(10)が形成され、その印刷枠(10)内に、「1」、「3」、「2」でなる個別情報(12)が印刷されている個別情報印刷物であって、上記請求項1に係る発明は、この個別情報(12)の下に、3本の偽造防止用の可変印字(20)が前記の印刷枠(10)を跨ぐように、かつこの上にある個別情報(12)と区別できるインキで印刷されていて、これら印刷枠(10)ごとの偽造防止用の可変印字(20)が共通の印字配列であることを特徴とする偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)である。
【0028】
さらにこれら個別情報(10)を含む印刷枠(10)および偽造防止用の可変印字(20)上に易剥離層(32)を介してスクラッチ隠蔽層(34)が施されているスクラッチ籤としての偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)であり、この個別情報(10)はスクラッチ隠蔽層(34)をスクラッチオフしないと視認できないようになっているもので、スクラッチ籤券など個別情報(10)がセキュリティ性の高い有力な情報手段となる媒体の如き用途に好適な個別情報印刷物(1)である。
【0029】
また、上記請求項1に係る発明では、例えば、図2の側断面図に示すように、印刷枠(10)内の個別情報(12)の上に、3本の偽造防止用の可変印字(20)が前記の印刷枠(10)を跨ぐように、かつこの下にある個別情報(12)と区別できるインキで印刷されていて、個別情報印刷物ごとの偽造防止用の可変印字(20)はユニーク(二つとない)もので、印刷枠(10)ごとの偽造防止用の可変印字(20)は共通の印字配列であることを特徴とする偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)としたものである。
【0030】
上記偽造防止用の可変印字(20)が共通の印字配列でなるとは、例えば図1(a)に示すように、各印刷枠(10)内の「1」、「3」、「2」でなる個別情報(12)の下の3本の偽造防止用の可変印字(20)のいずれもが、*マークをスタート・ストップとし、その間にある数字を1112345678というように共通の印字配列としているものである。
【0031】
また、上記請求項2、請求項3に係る発明では、例えば図1(a)に示す偽造防止用の可変印字(20)を、可視光下では視認しにくい特殊インキによる印字とし、その特殊インキを機械、即ちブラックライトが搭載されている検証機によって読み取り可能な蛍光インキによる印字とするもので、この蛍光インキによる可変印字(20)は、無色透明又は淡い色を呈していて消費者等第3者には殆ど目視出来ないようになっているため、個別情報(12)に対するデザイン性やゲーム性に制約されることがなく、かつブラックライト搭載の検証機による真偽判定が可能というメリットに加え、さらにこの蛍光インキによる可変印字(20)の存在に気付かずに切り貼りによる改ざんすると、この可変印字(20)を切り離したりすると、共通の印字配列に乱れが生ずるので、検証機によって容易に偽造が判明するようになっている偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)とすることができる。
【0032】
また、上記請求項4に係る発明では、例えば図1(a)に示すように、印刷枠(10)内の個別情報(12)を印刷する有色(黒色)インキと、偽造防止用の可変印字(20)を印刷する無色透明な蛍光インキまたは個別情報(12)と区別できる有色(赤色等)インキとを、同一のインクジェットプリンター(但し両情報・印字(12,20)専用のノズル部を必要とする)で印字可能なインクジェット用インキとすることを特徴とする偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)である。
【0033】
上記事例では、個別情報(12)と偽造防止用の可変印字(20)の印刷にインクジェットプリンターを用いたが、これに代え、例えばレーザー光による印字(印刷)即ち電子(写真)式トナー(インキ)の転写方式で有色(黒色)の個別情報(12)と無色透明な蛍光トナー(インキ)あるいは個別情報(12)とは区別できる有色(赤色等)のトナー(インキ)でなる偽造防止用の可変印字(20)とすることもできる。この場合、両情報・印字(12,20)専用の転写ドラムを必要とする。
【0034】
さらに上記インクジェットプリンター、電子式トナーの転写方式のレーザープリンターの他に、例えばサーマルヘッドによる感熱リボン転写方式、ドットインパクト方式などが挙げられ、これらいずれの方式でも、個別情報(12)を印字する有色インキと、偽造防止用の可変印字(20)を印字する蛍光インキまたは有色インキを用いたリボンが利用される。
【0035】
このように、同一のプリンター等印字方式で用いることのできるインキとすることによって、有色の個別情報(12)と蛍光を発するあるいは有色の偽造防止用の可変印字(20)とを同一のプリンターで同時に印刷することができ、よって、両情報・印字(12、20)の不一致という不具合(トラブル等)をなくすことができる。
【0036】
また、上記請求項5に係る発明では、例えば図1(a)に示すように、偽造防止用の可変印字(20)を、印刷枠(14)の下側に印刷されている券面番号(40)(例えば籤券などの整理番号に相当する)と一致した印字配列としたものである。
【0037】
このようにすることによって、検証機による真偽判定をより確実なものとし、セキュリティ性の高い偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)とすることができる。
【0038】
さらにこの券面番号(40)にチェックデジット(検査数字)が入っている場合には、偽造防止用の可変印字(20)のチェックデジットの算出方法を変更(例えば券面番号(40)は9DSR、偽造防止用の可変印字(20)はモジュラス10W12等)することによって、たとえ消費者等第3者にブラックライトで照射され、偽造防止用の可変印字(20)が判明したとしても、切り貼り等による改ざんの防止策としてより効果のある個別情報印刷物(1)とすることもできる。
【0039】
また、上記請求項6に係る発明は、偽造防止用の可変印字(20)を、図1(a)に示すようなユニーク(二つとない)な数字列とする他に、図示しないがユニーク(二つとない)な文字記号列、あるいは丸、楕円、四角形、三角形および多角形の組合せ、さらに格子、幾何学模様の配列でなるものとすることもできる。
【0040】
さらに上記請求項6に係る発明では、例えば図4に示すように、偽造防止用の可変印字(20)に細線でなるアンダーライン(22)を付加したものとすることもできる。このように、偽造防止用の可変印字(20)にアンダーライン(22)を付加したものとすることによって、例えば切り貼りによる改ざんに対し、このアンダーライン(22)の連続性に途切れができるので、偽造・贋造の証拠を得ることができるようになる。
【0041】
以上に述べた偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)を改ざんしようとすると、例えば、図3(a)に示すように、スクラッチオフした後の、3個の印刷枠(10)内に個別情報(12)としてそれぞれ「1」、「2」、「3」が順番に並ぶと当選する偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)の場合、図3(b)に示すような個別情報(12)が「1」、「2」、「2」の順番に並ぶ外れ券である偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)の右端の個別情報(12)が「2」の印刷枠(10)ごと切り取り、これに図3(c)に示すような個別情報(12)が「3」、「2」、「1」の順番に並ぶ外れ券である偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)の左端の個別情報(12)が「3」の印刷枠(10)ごと切り取って、図3(b)に示す外れ券である偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)の右端の印刷枠(10)として貼り合せ、図3(a)に示すような個別情報(12)が「1」、「2」、「3」の順番に並ぶ一見当選券であるかのような偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)となるが、図3(a)に示す当選券であるはずの偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)をよく観察すると、個別情報(12)が「1」、「2」、「3」の背景にある有色インキでなる偽造防止用の可変印字(20)が、「1」、「2」の印刷枠(10)内では共通の印字配列(*0123456789*)であるのに対し、「3」の印刷枠(10)内での印字配列が*1112345678*となっていて、さらにこの籤券の右下にある券面番号(40)と「1」、「2」の印刷枠(10)内の印字配列は一致しているが「3」の印刷枠(10)内での印字配列が一致していないので右端の印刷枠(10)ごと貼り替えによる改ざんがなされたことが明確となるようにしたものである。
【0042】
因みに、例えば図1(a)に示すスクラッチオフした券は、3個の印刷枠(10)内に個別情報(12)としてそれぞれ「1」、「2」、「3」が順番に並び、かつ各印刷枠(10)内の偽造防止用の可変印字(20)が共通の印字配列(*1112345678*)であり、さらにこの偽造防止用の可変印字(20)が券面番号(40)と一致しているので当たり籤券と判定される偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)である。
【0043】
上記では偽造防止用の可変印字(20)を有色インキによる印字とし、販売所等では肉眼でも機械読み取りでも真偽判定はできるが、偽造防止用の可変印字(20)を蛍光インキによる印字とした場合、ブラックライトが搭載された検証機で読み取ると即座に確実に真偽判定を可能にするものである。
【0044】
上記本発明の偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)の構成とその材料等を、さらに詳しく説明すると、例えば図1(b)に示すように、坪量150〜200g/m2 程度の上質紙を基材シート(30)とし、その表面には多孔質の体質顔料を主体とした白色の下地アンカー層(35)が塗布されている。
【0045】
上記下地アンカー層(35)を構成する多孔質の体質顔料としては、例えば、アルミナ
白、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイソウ土、ケイ酸カルシウムなどの白色顔料が挙げられ、これら体質顔料10〜25重量%を、例えばオフセット用メジウム(ロジン変性フェノール樹脂、大豆油、亜麻仁油、鉱物油等ビヒクルにドライヤーや酸化抑制剤等の添加剤でなる)に分散させたオフセットインキで印刷し、厚さ1〜5μm程度の下地アンカー層(35)とすることができる。上記オフセット用メジウムに代え、グラビア用メジウム、あるいはスクリーン印刷用、ロールコート用等とし、それぞれの方式で印刷または塗工することもできる。
【0046】
この下地アンカー層(35)上に、偽造防止用の可変印字(20)の印刷がインクジェット方式の場合、ポリアセタール樹脂を主体とした透明なインキ受理層(31)を設けた方が好ましく、レーザー光による電子式トナーの転写方式の如く他の方式では、このインキ受理層(31)を必要としない。
【0047】
上記インキ受理層(31)上の印刷枠(10)に相当する箇所にインクジェット方式により、この籤券などに従った個別情報(12)が、有色(黒色)のインキ、例えば、有色顔料5〜15%程度を1リットルの水とエマルジョン樹脂でなる溶媒に分散させた水性のインクジェット用インキで印字され、同時に偽造防止用の可変印字(20)がインキ受理層(31)上に形成された個別情報(12)の上に印刷枠(10)を跨ぐように、前記の個別情報(12)用と同方式の有機蛍光顔料を色材とした水性のインクジェット用インキにて印刷される。
【0048】
なお、上記有機蛍光顔料を色材としたインクジェット用インキで印刷された偽造防止用の可変印字(20)のPCS値が0.2以下とするもので、このPCS値が0.2を越えると肉眼で何らかの印字が施されていると思われる可能性があるためである。
【0049】
上記PCS値とは、Print C0ntrast Signalの略で、コントラストを(偽造防止用の可変印字(20)の)画線と(ベース)被印刷体の相対反射率で表し、次式で計算される濃度であって、
PCS=(被印刷体の反射率)−(画線の反射率)/(被印刷体の反射率)
で表される。
【0050】
上記インクジェット用インキは、油性であっても構わないが、ノズルの詰まり等に対する安定性等から、水性が好ましい。この水性のインクジェット用インキを構成する有色顔料としては、水と親和性のよいものが好ましく、具体的には、個別情報(12)用の黒色用として、例えばファーネスブラック、アセチレンブラック等カーボンブラックやアニリンブラック等有機顔料が挙げられる。
【0051】
また、偽造防止用の可変印字(20)用としての有色インキの場合、例えばピグメントイエロー、ジアゾイエロー(以上黄色用)、ブリリアントカーミン6B、キクナクリドンマゼンタ(以上マゼンタ用)、フタロシアニンブルーG、E(以上シアン用)等およびこれら混合が挙げられ、これら顔料の粒径は、ノズルの詰まり防止、着色性やインキの経時的な分散安定性から小さい方が好ましく、平均粒径が10nm〜200nm、最大粒径が500nm以下のものが好ましく用いられる。
【0052】
また、上記偽造防止用の可変印字(20)の印刷に使用するインクジェット用インキを構成する蛍光顔料としては、蛍光染料と合成樹脂固溶体でなる顔料を用い、その蛍光染料には、昼光下では淡い黄色を、ブラックライト下では緑から黄緑色を呈するブリリアントスルホフラビンFF、チオフラビン、ベーシックイエローあるいはフルオレセインなどが挙げられ、これら顔料1〜10%程度を1リットルの水とエマルジョン樹脂でなる溶媒に分散させた水性のインクジェット用蛍光インキが好適に用いられる。
【0053】
また、上記インクジェット用インキを構成するエマルジョン樹脂としては、例えばポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール等数多くの樹脂が挙げられ、上記有色顔料や蛍光顔料等の基材(ここではインキ受理層(31)に相当)に対する結着材の役割も果たすものである。
【0054】
また、個別情報(12)および偽造防止用の可変印字(20)を覆うように、例えばポリウレタンアクリル樹脂にシリコンを5%程度添加した剥離ニスをグラビア方式等で塗布して厚さ3〜10μmの易剥離層(32)を形成し、さらにその上に、SBR樹脂にアルミニウム粉末を添加したスクラッチインキをスクリーン印刷方式で厚さ3〜10μmのスクラッチ隠蔽層(34)が形成されて、偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)とするものである。
【0055】
上記のようなスクラッチ籤としての偽造防止策が施された個別情報印刷物(1)を購入した消費者は、例えば図1(b)に示すスクラッチ隠蔽層(34)をコイン等でスクラッチオフすると、透明な易剥離層(32)を通して個別情報(12)が視認できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の偽造防止策が施された個別情報印刷物の一実施の形態を示すもので、(a)は、その上面図であり、(b)は、その側断面図である。
【図2】本発明の偽造防止策が施された個別情報印刷物の他の一実施の形態を側断面で表した説明図である。
【図3】本発明の偽造防止策が施された個別情報印刷物の一事例を説明するもので、(a)は、改ざんされた個別情報印刷物の上面図であり、(b)は、改ざんされる個別情報印刷物の上面図であり、(c)は、改ざんに使用する個別情報印刷物の上面図である。
【図4】本発明の偽造防止策が施された個別情報印刷物を構成する偽造防止用の可変印字の一事例を示す上面図である。
【図5】従来の抽選付印刷物の一事例を説明するもので、(a)は、改ざんされた印刷物の上面図であり、(b)は、改ざんされる印刷物の上面図であり、(c)は、改ざんに使用する印刷物の上面図である。
【図6】従来の個別情報印刷物の一事例を説明するもので、(a)は、改ざんされた印刷物の上面図であり、(b)は、改ざんされる印刷物の上面図であり、(c)は、改ざんに使用する印刷物の上面図である。
【符号の説明】
【0057】
1‥‥偽造防止策が施された個別情報印刷物
2‥‥抽せん付印刷物
3‥‥偽造防止策が施された可変情報印刷物
10‥‥印刷枠
12‥‥個別情報
14‥‥細紋パターン
20‥‥偽造防止用の可変印字
22‥‥アンダーライン
30‥‥基材シート
31‥‥インキ受理層
32‥‥易剥離層
34‥‥スクラッチ隠蔽層
35‥‥下地アンカー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの片面に、複数の印刷枠を有し、該各印刷枠内に個別情報が印刷されている個別情報印刷物において、前記個別情報の下もしくは上に前記印刷枠を跨ぐように偽造防止用の可変印字が前記個別情報と区別できるインキで印刷され、該個別情報印刷物ごとにはユニークで、各印刷枠ごとには共通の印字配列でなることを特徴とする偽造防止策が施された個別情報印刷物。
【請求項2】
前記偽造防止用の可変印字は、可視光下では視認しにくい特殊インキで印刷されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止策が施された個別情報印刷物。
【請求項3】
前記特殊インキは、機械読み取り可能な蛍光インキであることを特徴とする請求項2記載の偽造防止策が施された個別情報印刷物。
【請求項4】
前記偽造防止用の可変印字を印刷する蛍光インキは、前記個別情報を印刷する有色インキと同一の印刷機で印刷可能な印刷特性をもつインキであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の偽造防止策が施された個別情報印刷物。
【請求項5】
前記偽造防止用の可変印字は、前記印刷枠外の所定の位置に印刷されている券面番号と一致していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の偽造防止策が施された個別情報印刷物。
【請求項6】
前記偽造防止用の可変印字は、数字列、文字記号列、丸、楕円、四角形、三角形および多角形の組合せ列、格子、幾何学模様でなり、これらに細線を付加したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の偽造防止策が施された個別情報印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−35805(P2006−35805A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223119(P2004−223119)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】