説明

【課題】 晴天時のみならず雨天時にも使用可能な傘であって、紫外線を遮蔽しつつ直射日光による熱を遮断して日傘として使用する際の快適性を向上することを可能にした傘を提供する。
【解決手段】 酸化チタンには紫外線を遮蔽する作用のみならず、直射日光による熱を遮断する作用があるので、放射状に延びる複数本の骨部材3に取り付けられた布帛4を備えた傘において、布帛4に酸化チタンを含む樹脂をコーティングを施して傘下での温度上昇を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、晴天時のみならず雨天時にも使用可能な傘に関し、更に詳しくは、紫外線を遮蔽しつつ直射日光による熱を遮断して日傘として使用する際の快適性を向上するようにした傘に関する。
【背景技術】
【0002】
日傘は、直射日光を遮って涼しい環境を得ると共に、紫外線による日焼けを防止するために使用されている。近年では、日傘の布帛に樹脂をコーティングすることで日傘と雨傘とを兼用するものや、布帛に紫外線吸収材料を塗布することで紫外線の遮蔽能力を高めたものが提案されている。紫外線吸収材料としては、例えば、セラミックス粒子等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、例えば、日傘と雨傘とを兼用するタイプの傘において、布帛にセラミックス粒子を含む樹脂をコーティングした場合、紫外線の遮蔽能力を高める効果が得られるのの、布帛の通気性が損なわれることに起因して傘下での温度が高くなる傾向があるため、日傘として使用する際の快適性が悪くなるという問題がある。
【特許文献1】特開平2005−89643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、晴天時のみならず雨天時にも使用可能な傘であって、紫外線を遮蔽しつつ直射日光による熱を遮断して日傘として使用する際の快適性を向上することを可能にした傘を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の傘は、放射状に延びる複数本の骨部材に取り付けられた布帛を備えた傘において、前記布帛に酸化チタンを含む樹脂をコーティングしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明者は、布帛のコーティング材料として酸化チタンを含む樹脂を用いたところ、酸化チタンには紫外線を遮蔽する作用のみならず直射日光による熱を遮断する作用があることを知見し、本発明に至ったのである。
【0007】
即ち、布帛に酸化チタンを含む樹脂をコーティングした場合、酸化チタンが紫外線を遮蔽すると共に直射日光による熱を遮断するため、コーティングにより布帛の通気性が損なわれたとしても傘下での温度上昇を抑制することができる。そのため、布帛にコーティングを施して日傘と雨傘とを兼用するようにした傘において、日傘として使用する際の快適性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる傘を示すものである。図1に示すように、本実施形態の傘は、把手1を備えた棒状の軸部材2と、該軸部材2の先端部から放射状に延長し、該軸部材2に対して揺動自在に支持された複数本の骨部材3と、これら骨部材3に取り付けられた布帛4とを備えている。なお、傘の骨格は折り畳み構造であっても良く、或いは、非折り畳み構造であっても良い。
【0009】
布帛4としては、綿や麻等の天然繊維からなる織物のほか、ナイロンやポリエステル等の合成繊維からなる織物を使用することができる。この布帛4には酸化チタンを含む樹脂がコーティングされている。樹脂のコーティング量は特に限定されるものではないが、JIS L1092に規定される耐水度試験(低水圧法)による測定値が350mm〜600mm程度であれば良い。
【0010】
上記酸化チタン(TiO2 )としては、例えば、平均粒子径が10nm〜300nm、より好ましくは100nm〜300nmの粉末を使用すると良い。このような酸化チタンの粉末は紫外線を遮蔽し、可視光線を散乱させて直射日光による熱を遮断する作用を呈する。一方、上記樹脂としては、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂を使用することができるが、雨天時の防水性が得られるのであれば特に限定されるものではない。
【0011】
コーティング樹脂中の酸化チタンの含有量は10%〜50%であると良い。樹脂中の酸化チタンの含有量を上記範囲にすることにより、紫外線の遮蔽作用と熱の遮断作用を効果的に得ることができる。酸化チタンの含有量が10%未満であると紫外線の遮蔽作用と熱の遮断作用が低下し、逆に50%を超えると生地の耐水性が低下するばかりでなく、外観を悪化させる要因となる。
【0012】
布帛4への酸化チタンの被着量は5g/m2 〜50g/m2 であると良い。酸化チタンの単位面積当たりの被着量を上記範囲にすることにより、紫外線の遮蔽作用と熱の遮断作用を効果的に得ることができる。酸化チタンの単位面積当たりの被着量が5g/m2 未満であると紫外線の遮蔽作用と熱の遮断作用が低下し、逆に50g/m2 を超えると傘の質量増加が顕著になるため好ましくない。
【0013】
コーティング樹脂には布帛4と同色の着色剤を配合すると良い。これにより、コーティング樹脂への酸化チタンの配合による外観の悪化を防止し、ファッション性を向上することができる。なお、着色剤の色は傘生地の色と厳密に一致する必要はなく、違和感がない程度に一致するものであれば良い。
【0014】
上述した傘を日傘として使用する場合、布帛4に酸化チタンを含む樹脂がコーティングされているので、その酸化チタンが紫外線を遮蔽する。これにより、波長250nm〜400nmの紫外線を例えば99%以上遮蔽することが可能になる。また、布帛4のコーティング樹脂に含まれる酸化チタンは直射日光による熱を遮断する。そのため、コーティングにより布帛4の通気性が損なわれたとしても傘下での温度上昇を抑制することができる。従って、布帛4にコーティングを施して日傘と雨傘とを兼用するようにした傘において、日傘として使用する際の快適性を向上することができる。
【実施例】
【0015】
放射状に延びる複数本の骨部材に取り付けられた布帛(白色生地)を備えた傘において、布帛のコーティング条件だけを種々異ならせた従来例1〜2及び実施例1〜3の傘をそれぞれ製作した。従来例1は、布帛にコーティングを施していない傘である。従来例2は、布帛に酸化チタンを含まない樹脂をコーティングした傘である。実施例1〜3は、布帛に酸化チタンを含む樹脂をコーティングし、樹脂中の酸化チタンの含有量(%)と布帛への酸化チタンの被着量(g/m2 )を種々異ならせた傘である。
【0016】
これら従来例1〜2及び実施例1〜3の傘について、分光光度計を用いて波長300nm〜400nmの範囲で紫外線透過率(%)を測定した。また、従来例1〜2及び実施例1〜3の傘を晴天時に屋外に配置し、同一の条件で傘下の温度(℃)を測定した。その結果を表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
この表1に示すように、実施例1〜3の傘はいずれも紫外線透過率が低く、しかも従来例1〜2に比べて傘下の温度が低くなっていた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態からなる傘を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 把手
2 軸部材
3 骨部材
4 布帛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射状に延びる複数本の骨部材に取り付けられた布帛を備えた傘において、前記布帛に酸化チタンを含む樹脂をコーティングしたことを特徴とする傘。
【請求項2】
前記樹脂中の酸化チタンの含有量が10%〜50%であることを特徴とする請求項1に記載の傘。
【請求項3】
前記布帛への酸化チタンの被着量が5g/m2 〜50g/m2 であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の傘。
【請求項4】
前記樹脂に前記布帛と同色の着色剤を配合したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の傘。

【図1】
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【公開番号】特開2007−325757(P2007−325757A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159368(P2006−159368)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(593094729)セダージャパン株式会社 (4)
【出願人】(593005415)株式会社堅牢防水化学 (5)
【Fターム(参考)】