説明

傾き修正システム及び排出口開閉システム

【課題】 ケーソン躯体の傾きを容易且つ確実に修正するための傾き修正機構及び排出口開閉システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 ケーソン躯体(1)の先端部に設けられた刃口部(10)と、刃口部に設けられた排出口(61〜67)と、排出口に設けられた排出口開閉機構(302)と、排出口開閉機構を動作させるために媒体を供給する媒体供給管(41〜47)と、媒体供給管に媒体を供給するための媒体供給部(100)を有することを特徴とする傾き修正システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソン躯体の傾き修正システム及び傾き修正システムに用いられる排出口開閉システムに関し、特にSSケーソンの掘削施工時に刃口部に設けた排出口の開閉を行うためのエアバックによる排出口の開閉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁基礎や立坑等を施工するための工法としてケーソン躯体を用いた工法が知られている(例えば、特許文献1)。また、ケーソン躯体を用いた工法の中で、ケーソン躯体の壁面と地山の間に玉砂利等の潤滑材を充填してケーソン躯体の沈下時の周面摩擦抵抗を低減するSSケーソン工法がある。
【0003】
図5は、SSケーソン工法の施工手順の概略を示した図である。
【0004】
最初に、図5(a)に示すように、ガイドウォール70を地面90に設置して、ガイドウォール70の内側に複数の排出口61〜67を供えた刃口部10のコンクリートを打設する。また、刃口部10とガイドウォール70との間に、玉砂利80等の潤滑材を投入する。
【0005】
次に、刃口部10の上部にコンクリートによって第1ロット20を構築し、刃口部10内の底部92の土砂を掘削する。すると、図5(b)に示すように、排出口61〜67からの玉砂利80等の潤滑材が刃口部10の内側に取り込まれながら、ケーソン躯体(刃口部10及び第1ロット20)が沈下していく。
【0006】
さらに、第1ロット20の上に、第2ロット30を構築し、刃口部10内の底部92の土砂を掘削する。すると、図5(c)に示すように、排出口61〜67からの玉砂利80等の潤滑材が刃口部10の内側に取り込まれながら、ケーソン躯体(刃口部10、第1ロット20及び第2ロット30)が沈下していく。
【0007】
このような工程を繰り返し、ケーソン躯体の沈下を続行していくが、ケーソン躯体の周面摩擦抵抗が一様でなかったり、ケーソン躯体の底部の一部を過度に掘削してしまったりすることによって、一時的にケーソン躯体が大きく傾いてしまうという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特許第2935099号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明では、ケーソン躯体の傾きを容易且つ確実に修正するための傾き修正システム及び排出口開閉システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る排出口開閉システムでは、排出口内部に設けられたエアバックと、ケーソン躯体内部に配置されエアバックを動作させるためにエアを供給するためのエア供給管と、エア供給管に媒体を供給するためのエア供給部とを有することを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る傾き修正システムでは、本発明に係る排出口開閉システムを用い、ケーソン躯体の傾きを修正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、玉砂利等のケーソン躯体の周面摩擦抵抗を低下させるための潤滑材を排出するための排出口を開閉するための開閉機構によって、簡易且つ容易に、ケーソン躯体の傾きを修正することが可能となった。
【0013】
また、本発明によれば、玉砂利等のケーソン躯体の周面摩擦抵抗を低下させるための潤滑材を排出するための排出口を開閉制御することができるので、ケーソン躯体を正確に施工することが可能となった。
【0014】
また、本発明によれば、排出口の開閉機構を制御することによって、玉砂利等の潤滑材のロスを低減することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るケーソン躯体の傾き修正システム及び排出口開閉システムについて図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るケーソン躯体の傾き修正システム及び排出口開閉システムを用いたケーソン躯体の断面図である。図2は、内部が理解しやすいように一部分を取り除いた斜視図である。
【0017】
図1において、オープンケーソン躯体1(以下、単に「ケーソン躯体1」と言う)は、地面90に設置されたガイドウォール70の内部に配置され、刃口部10、第1ロット20及び第2ロット30から構成されている。ケーソン躯体1は、地上部分に新たなロットが追加して構築されることによって、自重によって緩やかに沈下し、用途に応じた地下空間を作り出す。
【0018】
刃口部10は、コンクリート等を心材とし、地山をせん断しやすいように、鋼板等から構成される鋭利な先端エッジを有しており、その外周は第1及び第2ロット20及び30の外に張り出すように構成されている。外に張り出した部分が地山を削ったスペースには、玉砂利80等の潤滑材がガイドウォール70とケーソン躯体1との間から挿入されている。また、刃口部10には、玉砂利80等の潤滑材がケーソン躯体1の内部に取り込まれるように、外周にそって複数の排出口61〜67が配置されている。
【0019】
第1ロット20及び第2ロット30は、コンクリート等から構築された枠体である。
【0020】
複数のエア供給管41〜47が、ケーソン躯体1の外周にそって、刃口部10、第1ロット20及び第2ロット30を貫通して、複数の排出口61〜67に設けられた開閉機構(後述する)のそれぞれと接続されている。各エア供給管41〜47の地上先端部分にはそれぞれバルブ51〜57が設けられている。エア供給管41〜47とエアコンプレッサ100とを接続管により接続し、エアコンプレッサ100からエアを供給することによって、後述する開閉機構を動作させる。
【0021】
図3は、排出口61に設けられた開閉機構を説明するための図である。
【0022】
排出口61に設けられた開閉機構は、エア取り入れ口301及びエアバック302等から構成され、エア取り入れ口301はエア供給管41と接続されている。
【0023】
図3(a)はエアバック302が収縮した状態を示す斜視図であり、図3(b)は図3(a)のAA´断面図である。この状態では、玉砂利80は、排出口61を通過して、ケーソン躯体1の内側に取り込まれることが可能となる。
【0024】
図3(c)はエアバック302が膨張した状態を示す斜視図であり、図3(d)は図3(c)のAA´断面図である。この状態で、エアコンプレッサ100からエアバック302にエアが供給され、エアバック302が膨張して排出口61を塞いでしまう。したがって、この時、玉砂利80はケーソン躯体1の内側には入り込むことができない。なお、エアバック302は、膨張時に玉砂利80の流入を遮断するのに十分な強度及びエア圧が必要である。一例として、本実施形態では、エアバック302はネオプレーンゴム引布で構成し、エアバックの膨張時の圧力を0.02〜0.05Mpaとなるように調整した。なお、図3では、排出口61に設けられた開閉機構について説明したが、各排出口62〜67等にも同様な開閉機構が設けられている。
【0025】
また、図1及び図2では、7組の排出口61〜67、各排出口へのエア供給管41〜47、及び各排出口に設けられた開閉機構からなる構成を示しているが、実際には、ケーソン躯体1の外周に沿って均等な距離間隔でこのような構成が配置されている。また、このような構成の設置個数は、ケーソン躯体1の大きさ、用途等によって最適な個数を選択することができる。
【0026】
また、図1では、1台のエアコンプレッサ100を接続管110によって1つのエア供給管と接続してエアを供給したが、複数のエア供給管41〜47と一度に接続可能な複数のジョイント等を有する接続管を用いることも可能である。さらに、バルブ51〜57を開いてエアコンプレッサ100からエアを供給してエアバックを膨張させた後、バルブ51〜57を閉じてエアバックを膨張させた状態に維持するように制御することも可能である。
【0027】
図1及び図2に示す状態から、ケーソン躯体1内の底部92の土砂を掘削すると、図5(a)〜(c)で説明したように、玉砂利80が排出口61〜67からケーソン躯体1の内部に流れることによって、ケーソン躯体1と周囲との摩擦抵抗が軽減され、ケーソン躯体1は自重により緩やかに沈下する。
【0028】
ところで、ケーソン躯体を設置した当初の掘削時には、ケーソン躯体1と周囲との摩擦抵抗は大きくなく、ケーソン躯体とガイドウォールとの間に玉砂利を追加供給しなくても、ケーソン躯体は自重で沈下していく。したがって、ケーソン躯体1の沈下がにぶくなるまで、前述した開閉機構によって、全ての排出口61〜67等を閉じておくことが好ましい。このように制御すれば、高価な玉砂利等の媒体を不必要に供給する必要がなくなり、玉砂利等の媒体の使用量を最適化することが可能となる。
【0029】
図4は、傾き修正を説明するための図である。
【0030】
図4(a)は、ケーソン躯体1の周面摩擦抵抗が一様でなかったり、過度にケーソン躯体1の内側底部92の一部を掘削してしまったりすることによって、ケーソン躯体1が図面左側に大きく傾いてしまった場合を示している。
【0031】
この時、図中左側の排出口61の開閉機構にエア圧を供給してエアバック302を膨張させて排出口61を閉じ、同時に、図中右側の排出口67のエアバックを収縮させて排出口67を開放する。すると、図中右側の玉砂利80は循環し易くなって、ケーソン躯体1の図中右側の摩擦抵抗が下がる。同様に、図中左側の玉砂利80の循環は停止し、ケーソン躯体1の図中左側の摩擦抵抗が上がる。その結果、ケーソン躯体1は、矢印Aに示す方向に移動するように傾きが修正される。
【0032】
図4(b)は、第3ロット40を第2ロット30の上に構築した状況を示しており、排出口61の開閉機構及び排出口67の開閉機構を制御することによって、ケーソン躯体1の傾きが改善された例を示している。
【0033】
このように、ケーソン躯体の外周部に設けられた排出口の開閉機構にエアを供給すること等によって、ケーソンの傾きを修正することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るケーソン躯体の傾き修正システム及び排出口開閉システムを用いたケーソン躯体の断面図である。
【図2】図1に示すケーソン躯体の一部の斜視図である。
【図3】開閉機構を説明するための図である。
【図4】ケーソン躯体の傾き修正を説明するための図である。
【図5】SSケーソン工法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ケーソン躯体
10 刃口部
20 第1ロット
30 第2ロット
41〜47 エア供給管
51〜57 バルブ
61〜67 排出口
70 ガイドウォール
80 玉砂利
90 地面
92 底部
100 エアコンプレッサ
110 接続管
301 エア取り入れ口
302 エアバック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーソン躯体の先端部に設けられた刃口部に配置された排出口の開閉を制御するための排出口開閉システムであって、
前記排出口内部に設けられたエアバックと、
前記ケーソン躯体内部に配置され、前記エアバックを動作させるためにエアを供給するためのエア供給管と、
前記エア供給管に媒体を供給するためのエア供給部と、
を有することを特徴とする排出口開閉システム。
【請求項2】
請求項1に記載の排出口開閉システムを用い、ケーソン躯体の傾きを修正するための傾き修正システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−211456(P2007−211456A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31267(P2006−31267)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(503275129)りんかい日産建設株式会社 (9)