説明

傾斜地盤構造及び土木用構成体

【課題】
本発明は、複数の石を詰める開口部を有する収納体の蓋に防水機能を備えた傾斜地盤構造を提供する。
【解決手段】
傾斜地盤構造は、傾斜地盤Aに埋め込まれ、前記地盤A内の水を下方に案内する案内通路の層1と、この案内通路の層1に隣接すると共に、傾斜地盤Aに埋め込まれ、水を通さないシートの層2と、シートの層2は、案内通路の層1より傾斜地盤Aの外表面A1に近い側に位置しているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地盤構造及び土木用構成体に係り、特に、複数の石を詰める開口部を有する収納体の蓋に防水機能を備えた傾斜地盤構造及び土木用構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜地盤構造にあっては、傾斜地盤の土砂等が流出するのを防ぐために、例えば、法面防水シートを使用している(例えば、特許文献1参照)。
この法面防水シートにより、傾斜地盤の土砂等が流出するのを防ぐことができるが、逆に、傾斜地盤内の排水が悪く、傾斜地盤の崩壊を助長するという問題点が生じた。
【特許文献1】実開平3−89727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記した問題点を除去するようにした傾斜地盤構造及び土木用構成体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記した目的を達成するための請求項1記載の傾斜地盤構造は、傾斜地盤に埋め込まれ、前記地盤内の水を下方に案内する案内通路の層と、この案内通路の層に隣接すると共に、前記傾斜地盤に埋め込まれ、水を通さないシートの層と、前記シートの層は、前記案内通路の層より前記傾斜地盤の外表面に近い側に位置しているものである。
【0005】
また、請求項2記載の傾斜地盤構造は、請求項1記載の傾斜地盤構造において、案内通路の層とシートの層は、単一の構成体を隣接して形成されるものであり、前記単一の構成体は、複数の石を詰める開口部を有すると共に、前記複数の石を詰めた通水性の籠又はネットの収納体と、この収納体の前記開口部を塞ぐように設けられた蓋の機能を有する防水部材とを備えているものである。
【0006】
また、請求項3記載の傾斜地盤構造は、請求項2記載の傾斜地盤構造において、隣接する一方の単一の構成体の防水部材と隣接する他方の単一の構成体の防水部材との繋ぎ目を覆うと共に、前記隣接する単一の構成体を連結するように設けられた連結部材を備えているものである。
【0007】
また、請求項4記載の傾斜地盤構造は、請求項2又は3記載の傾斜地盤構造において、案内通路の層とシートの層は、傾斜地盤の傾斜面の形状に沿うように傾斜して設けられ、前記シートの層は、前記案内通路の層より、傾斜地盤の外表面に近い側に位置しているものである。
【0008】
また、請求項5記載の土木用構成体は、複数の石を詰める開口部を有すると共に、前記複数の石を詰めた通水性の籠又はネットの収納体と、この収納体の前記開口部を塞ぐように設けられた蓋の機能を有する防水部材とを備えているものである。
【0009】
また、請求項6記載の土木用構成体は、請求項5記載の土木用構成体において、防水部材に収納体から前記防水部材に向かう液体の流れを阻止し、前記防水部材から前記収納体に向かう液体の流れを許容する逆止弁の機能を備えているものである。
【0010】
また、請求項7記載の土木用構成体は、請求項6記載の土木用構成体において、防水部材と収納体との間に設けられ、前記収納体の石より外形形状が小さい粒状体を収納する粒状体収納室と、前記防水部材に設けられ、前記粒状体収納室に向かって末広がりに形成された連通孔とを備え、前記収納体から前記防水部材に向かう液体の流れによって、前記連通孔に前記粒状体が当接して前記液体の流れを阻止し、前記防水部材から前記収納体に向かう液体の流れによって前記連通孔に当接した前記粒状体が離間して前記液体の流れを許容するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の傾斜地盤構造によれば、傾斜地盤内の土砂を含んだ水が案内通路の層を超えて傾斜地盤の表面から流出するのをシートの層で遮断するため、傾斜地盤内の土砂を含んだ水の流出を防ぐことができ、しかも、傾斜地盤内の水は、シートの層で水の流れを阻止されるため、該シートの層が障壁となって案内通路の層を介して下方に案内される。
【0012】
また、請求項2記載の傾斜地盤構造によれば、前述の請求項1記載の発明の効果に加え、案内通路の層とシートの層は、単一の構成体を隣接して形成されるものであるため、埋め込まれる傾斜地盤内の形状に柔軟に対応でき、施工も容易であり、しかも、単一の構成体の「収納体の複数の石」は、傾斜地盤内の土砂を含んだ水の抵抗となって、前記土砂の流出を防ぐことができる。
【0013】
また、請求項3記載の傾斜地盤構造によれば、前述の請求項2記載の発明の効果に加え、隣接する単一の構成体の繋ぎ目を覆うと共に、前記隣接する単一の構成体を連結する連結部材を設けているため、連結部材が隣接する単一の構成体の繋ぎ目からの水の流出を防ぎ、且つ、隣接する単一の構成体の連結状態をも保持することができる。
【0014】
また、請求項4記載の傾斜地盤構造によれば、前述の請求項2又は3記載の発明の効果に加え、単一の構成体を階段状に段積みしたものに比較し、単一の構成体を傾斜地盤に効率良く埋め込むことができる。
【0015】
また、請求項5記載の土木用構成体によれば、収納体の開口部を塞ぐ蓋に防水部材で形成するため、単一の構成体を隣接することにより案内通路の層と防水の機能を有するシートの層とを容易に形成することができる。
【0016】
また、請求項6記載の土木用構成体によれば、防水部材に収納体から前記防水部材に向かう液体の流れを阻止し、前記防水部材から前記収納体に向かう液体の流れを許容する逆止弁の機能を備えているため、例えば、海底地盤上に防水部材が上になるように単一の構成体を隣接して配置し、前記防水部材の上に消波ブロックを配置した場合、収納体から防水部材に向かう液体の流れは、逆止弁の機能により、ある程度阻止され、海底地盤の砂が収納体から防水部材を介して土木用構成体から流出するのを防ぐことができ、また、防水部材から収納体に向かう液体の流れを許容して、防水部材の上の消波ブロックに作用する力を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施例の傾斜地盤構造及び土木用構成体を図面を参照して説明する。
図1乃至図5において、Aは傾斜地盤で、傾斜地盤Aは、例えば、切取り・盛り土などでできた人工的な斜面である法面である。
1は、傾斜地盤Aに埋め込まれ、地盤内の水を下方に案内する案内通路の層で、案内通路の層1の下端1aは、外気に臨んでいる。
2は、傾斜地盤Aに埋め込まれ、水を通さないシートの層で、このシートの層2は、案内通路の層1に隣接している。
シートの層2は、図1に示すように、案内通路の層1より傾斜地盤Aの外表面A1に近い側に位置している。
【0018】
この案内通路の層1とシートの層2は、例えば、図4及び図5に示すように、単一の構成体10を隣接して形成されるものである。
この単一の構成体10は、複数の石10aを詰める開口部10bを有すると共に、複数の石10aを詰めた通水性の籠(又はネット)の収納体10cと、この収納体10cの開口部10bを塞ぐように設けられた蓋の機能を有する防水部材10dとを備えている。収納体10cは、金属製が望ましいが、合成樹脂で成形されたネットでも良い。
単一の構成体(土木用構成体)10を、例えば、図3に示すように、隣接して形成することにより、上面に蓋の機能を有する防水部材10dが敷き詰められることによりシートの層2が、このシートの層2の下に案内通路の層1が、それぞれ形成されることとなる。
なお、図1に示す3は土で、土3に植物の根を張らせ、該土3の崩壊を防ぐようにしている。
【0019】
従って、上述した傾斜地盤構造によれば、傾斜地盤A内の土砂を含んだ水は、案内通路の層1を超えて傾斜地盤Aの表面から流出するのをシートの層2で遮断するため、傾斜地盤A内の土砂を含んだ水の流出を防ぐことができ、しかも、傾斜地盤A内の水は、シートの層2で水の流れを阻止されるため、該シートの層2が障壁となって案内通路の層1を介して下方に案内されて、案内通路の層1の下端1aより、排水される。
特に、案内通路の層1とシートの層2は、単一の構成体10を隣接して形成されるものであるため、埋め込まれる傾斜地盤A内の形状に柔軟に対応でき、施工も容易であり、しかも、単一の構成体10の「収納体の複数の石10a」は、傾斜地盤A内の土砂を含んだ水の抵抗となって、前記土砂の流出を防ぐことができる。
また、図1に示すように、案内通路の層1とシートの層2は、傾斜地盤Aの傾斜面の形状に沿うように傾斜して敷き詰めるように設けられ(図3参照)、シートの層2は、案内通路の層1より、傾斜地盤Aの外表面A1に近い側に位置している。そのため、単一の構成体10を階段状に段積みしたものに比較し、単一の構成体10を傾斜地盤Aに効率良く埋め込むことができる。
【0020】
また、図6に示すように、隣接する一方の単一の構成体10の防水部材10dと隣接する他方の単一の構成体10の防水部材10dとの繋ぎ目を連結部材20で覆うと共に、前記した隣接する単一の構成体10を連結するようにしても良い。
連結部材20は、例えば、帯状の部材の裏面に面状ファスナーの一方を取り付け、防水部材10dの隣接する単一の構成体10の繋ぎ目の近くに面状ファスナーの他方を取り付け、一方の面状ファスナーと他方の面状ファスナーを係止させるようにする。
その結果、連結部材20が隣接する単一の構成体10の繋ぎ目からの水の流出を防ぎ、且つ、隣接する単一の構成体10の連結状態をも保持することができる。
【0021】
上述した単一の構成体10を隣接して形成されたものを、図7に示す海底地盤Bに適用することができる。
即ち、単一の構成体(土木用構成体)10は、図8に示すように、複数の石10aを詰める開口部10b(図4参照)を有すると共に、複数の石10aを詰めた通水性の籠(又はネット)の収納体10cと、この収納体10cの開口部10bを塞ぐように設けられた蓋の機能を有する防水部材10dとを備えている。
海底地盤B上に防水部材10dが上になるように単一の構成体(土木用構成体)10を隣接して配置し、防水部材10dの上に消波ブロック30を配置する(図7参照)。
図9乃至図11に示すように、単一の構成体(土木用構成体)10の防水部材10dに収納体10cから防水部材10dに向かう液体の流れを阻止(図10参照)し、防水部材10dから収納体10cに向かう液体の流れを許容(図11参照)する逆止弁の機能を備えているため、例えば、海底地盤B上に防水部材10dが上になるように単一の構成体(土木用構成体)10を隣接して配置し、防水部材10dの上に消波ブロック30を配置した場合、収納体10cから防水部材10dに向かう液体の流れは、逆止弁の機能により、ある程度[ある程度とは、例えば、7〜9割程度、例えば、9割の場合、収納体10cから防水部材10dに向かう液体の流れが90%を超えて阻止されると、揚力が発生し、単一の構成体(土木用構成体)10が浮き上がる不具合が生じる。この不具合をなくすために、防水部材10dの一部を透水性のものに取り替えて、収納体10cから消波ブロック30に向かう液体の流れを許容するようにしても良い。防水部材10dの一部を透水性のものに取り替えは、例えば、図8記載で言えば、16個の単一の構成体(土木用構成体)10の内、例えば、2個の単一の構成体(土木用構成体)10の防水部材10dを透水性のものに取り替える。]阻止され、海底地盤Bの砂が収納体10cから防水部材10dを介して単一の構成体(土木用構成体)10から流出するのを防ぐことができ、また、防水部材10dから収納体10cに向かう液体の流れを許容して、防水部材10dの上の消波ブロック30に作用する力を軽減することができる。消波ブロック30は、図7に示すテトラポットに限らず、自然石、コンクリートブロック、 三柱ブロック、ビーハイブ、六脚ブロック等であっても良い。
【0022】
なお、本願発明にあっては、単一の構成体(土木用構成体)10の防水部材10dに収納体10cから防水部材10dに向かう液体の流れを阻止(図10参照)し、防水部材10dから収納体10cに向かう液体の流れを許容(図11参照)する逆止弁の機能を備えている構成のものは、図7乃至図11に示すものに限らず、例えば、図12乃至図14に示すものでも良い。
即ち、10eは、防水部材10dと収納体10cとの間に設けられた粒状体収納室で、粒状体収納室10eには、収納体10cに収納された石10aより外形形状が小さい粒状体10fが収納される。
10gは、収納体10cと粒状体収納室10eとを仕切る通水性の壁である。なお、防水部材10dには、粒状体収納室10eに向かって末広がりに形成された連通孔10hとを備えている。
従って、図12乃至図14記載のものにあっても、収納体10cから防水部材10dに向かう液体の流れによって、連通孔10hに粒状体10fが当接して液体の流れを阻止(図13参照)し、防水部材10dから収納体10cに向かう液体の流れによって連通孔10hに当接した粒状体10fが離間して液体の流れを許容(図14参照)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一実施例の傾斜地盤構造の概略的断面図である。
【図2】図2は、図1の一部を拡大して示す概略的一部拡大断面図である。
【図3】図3は、図1のシートの層と案内通路の層とを単一の構成体を隣接して形成される状態を示す概略的斜視図である。
【図4】図4は、図3の単一の構成体の収納体に石が詰められる前の状態の概略的斜視図である。
【図5】図5は、図4の単一の構成体の収納体に石が詰められ、蓋が閉められた状態の概略的斜視図である。
【図6】図6は、図3の隣接する単一の構成体が連結部材により連結した状態の概略的斜視図である。
【図7】図7は、図3の単一の構成体を隣接して形成されたものを海底地盤に適用した状態の概略的断面図である。
【図8】図8(a)は、図7の消波ブロックの下に位置する部材の概略的斜視図であり、図8(b)は、図8(a)の一部を構成する単一の構成体の概略的斜視図である。
【図9】図9は、図8の一部を拡大して示す概略的一部拡大平面図である。
【図10】図10は、図9の10−10線による概略的断面図であり、収納体から防水部材に向かう液体の流れを阻止している状態を示している。
【図11】図11は、図9の防水部材から収納体に向かう液体の流れを許容する状態の概略的断面図である。
【図12】図12は、図9の防水部材と異なる他の実施例の防水部材の概略的平面図である。
【図13】図13は、図12の13−13線による概略的断面図であり、収納体から防水部材に向かう液体の流れを阻止している状態を示している。
【図14】図14は、図12の防水部材から収納体に向かう液体の流れを許容する状態の概略的断面図である。
【符号の説明】
【0024】
A …………傾斜地盤
A1 …………外表面
1 …………案内通路の層
2 …………シートの層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜地盤に埋め込まれ、前記地盤内の水を下方に案内する案内通路の層と、
この案内通路の層に隣接すると共に、前記傾斜地盤に埋め込まれ、水を通さないシートの層と、
前記シートの層は、前記案内通路の層より前記傾斜地盤の外表面に近い側に位置している
ことを特徴とする傾斜地盤構造。
【請求項2】
案内通路の層とシートの層は、単一の構成体を隣接して形成されるものであり、
前記単一の構成体は、複数の石を詰める開口部を有すると共に、前記複数の石を詰めた通水性の籠又はネットの収納体と、この収納体の前記開口部を塞ぐように設けられた蓋の機能を有する防水部材とを備えている
ことを特徴とする請求項1記載の傾斜地盤構造。
【請求項3】
隣接する一方の単一の構成体の防水部材と隣接する他方の単一の構成体の防水部材との繋ぎ目を覆うと共に、前記隣接する単一の構成体を連結するように設けられた連結部材を備えている
ことを特徴とする請求項2記載の傾斜地盤構造。
【請求項4】
案内通路の層とシートの層は、傾斜地盤の傾斜面の形状に沿うように傾斜して設けられ、
前記シートの層は、前記案内通路の層より、傾斜地盤の外表面に近い側に位置している
ことを特徴とする請求項2又は3記載の傾斜地盤構造。
【請求項5】
複数の石を詰める開口部を有すると共に、前記複数の石を詰めた通水性の籠又はネットの収納体と、
この収納体の前記開口部を塞ぐように設けられた蓋の機能を有する防水部材とを備えている
ことを特徴とする土木用構成体。
【請求項6】
防水部材に収納体から前記防水部材に向かう液体の流れを阻止し、前記防水部材から前記収納体に向かう液体の流れを許容する逆止弁の機能を備えている
ことを特徴とする請求項5記載の土木用構成体。
【請求項7】
防水部材と収納体との間に設けられ、前記収納体の石より外形形状が小さい粒状体を収納する粒状体収納室と、前記防水部材に設けられ、前記粒状体収納室に向かって末広がりに形成された連通孔とを備え、
前記収納体から前記防水部材に向かう液体の流れによって、前記連通孔に前記粒状体が当接して前記液体の流れを阻止し、前記防水部材から前記収納体に向かう液体の流れによって前記連通孔に当接した前記粒状体が離間して前記液体の流れを許容する
ことを特徴とする請求項6記載の土木用構成体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−209630(P2009−209630A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55668(P2008−55668)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000173810)財団法人土木研究センター (4)
【出願人】(591224766)ナカダ産業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】