説明

像担持体のクリーニング装置、クリーニング方法、および画像形成装置

【課題】転写後に像担持体に残留する転写残りトナーや外添剤の残留物を効果的に除去しつつ、小電源で低コスト化を図る。
【解決手段】転写後に感光体2の電位を除電する除電装置3と、所定のバイアスが印加されて感光体2との間に電界を形成することで、少なくとも、除電された感光体2上の残留物を除去するブラシローラ4aと、感光体2の画像形成領域内と画像形成領域外とで、除電装置3の除電量を変化させるとともにブラシローラ4aに印加するバイアスを画像形成時に使用されるトナーの極性と同極性に設定しまたは画像形成領域外で絶対値で感光体2の表面電位未満に設定して電界の方向を変えるように制御する制御手段とを備える、感光体2のクリーニング装置4である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写後に残留する転写残りトナーや外添剤の残留物を除去する像担持体のクリーニング装置、クリーニング方法、およびこのクリーニング装置を備えた、静電複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置からなる画像形成装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置においては、画像形成時に転写後の残留トナーを第1のブラシローラで所定極性に帯電し、次いで帯電された残留トナーを第2のブラシローラで電気的に吸着して感光体から除去し、画像形成工程終了後、第1のブラシローラに印加される電圧の極性をそれ以前の極性に対して反転させて、第1および第2のブラシローラ間にある残留トナーを第1ブラシローラにより除去する感光体のクリーニング方法および装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3050689号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の感光体のクリーニング方法および装置では、非画像形成時と画像形成時とで、第1のブラシローラに印加されるバイアスの極性を変えている。このため、非画像形成時と画像形成時とで、第1のブラシローラのバイアスを大きく変更させる必要がある。したがって、大きな電源を用いなければならず、コストが高いばかりでなく、ノイズが発生するという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、転写後に像担持体に残留する転写残りトナーや外添剤の残留物を効果的に除去しつつ、小電源で低コスト化を図ることのできる像担持体のクリーニング装置、クリーニング方法、および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の課題を解決するために、本発明に係る担持体のクリーニング装置、クリーニング方法、および画像形成装置では、像担持体の画像形成領域内と画像形成領域外とで除電部材の除電量を変更している。また、画像形成領域内と画像形成領域外とで、導電性部材に印加するバイアスを画像形成時に使用されるトナーの極性と同極性のバイアスに設定するか、または画像形成領域外で導電性部材のバイアスを絶対値で除電後の前記像担持体の表面電位未満に設定して、像担持体と導電性部材との間の電界の方向を逆方向に変更している。これにより、像担持体における画像形成領域内の表面の転写残りトナーを導電性部材に除去できる。そして、導電性部材の残留物を像担持体における画像形成領域外の表面に移動させて導電性部材から除去できる。画像形成領域外の表面に移動した残留物は、画像形成装置の他の部材のクリーニング装置で除去される。こうして、像担持体を効果的にクリーニング可能となるとともに導電性部材の汚れも効果的に抑制できる。したがって、像担持体のクリーニングおよび帯電をともに良好に維持できるので、長期にわたって良好な画質の画像を形成することができる。
【0006】
また、像担持体の画像形成領域外で、導電性部材のバイアスの極性を少なくとも逆極性に変える必要はないので、バイアスの変更を小さくでき、その分電源を小さくできるとともにコストを低減でき、しかもノイズの発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の一例を模式的にかつ部分的に示す図である。
この例の画像形成装置1においては、負帯電トナーを用いて画像形成が行われる。もちろん、正帯電トナーを用いて画像形成を行うこともできる。以下の説明では、画像形成装置1は負帯電トナーを用いるものとして説明するが、正帯電トナーを用いる場合には、以下の説明の各部材の帯電の電位を逆極性とすればよい。
【0008】
図1に示すように、この例の画像形成装置1は静電潜像およびトナー像が形成される像担持体である感光体2を備えている。この感光体2は感光体ドラムからなり、従来公知の感光体ドラムと同様に円筒状の金属素管の外周面に所定膜厚の感光層が形成されている。この感光体2における金属素管には、例えばアルミニウム等の導電性の管が用いられるとともに、感光層には、従来公知の有機感光体が使用される。
【0009】
感光体2の周囲には、除電装置3、クリ−ニング装置4、帯電装置5、露光装置6、現像装置7、および転写装置8が、それぞれこれらの順に感光体2の回転方向A(図1では、時計回り)に沿って配設されている。更に図示しないが、この例の画像形成装置1は、感光体2、除電装置3、クリ−ニング装置4、帯電装置5、露光装置6、現像装置7、および転写装置8を制御する電子制御装置(制御手段)を備えている。
除電装置3は、転写後の感光体2の電位を除電光で除電する。その場合、この除電装置3には、従来公知の除電装置を用いることができる。
【0010】
クリーニング装置4は、回転可能に設けられた導電性のブラシローラ4aを有している。このブラシローラ4aは多数のブラシ毛4bを有しており、これらのブラシ毛4bが感光体2の表面に当接して配設されている。このブラシローラ4aの一例として、ブラシ毛3bは、材料が6ナイロン、繊度が220T/96F、密度240kf/inch2、原糸抵抗が7.1LogΩ、パイル長が5mmであり、また、帯電ブラシローラ3aの感光体2の軸方向に沿う長さ)は300mmである。このブラシローラ4aには東英産業株式会社製のブラシローラを用いることができる。
【0011】
ブラシローラ4aには、トナー同極性の負の直流(DC)のバイアスV1(V)が印加される。その場合、バイアスV1(V)はブラシ毛4bと感光体2の表面との間に放電が生じない、つまり放電限界を超えない大きさのバイアスに設定されている。そして、ブラシローラ4aにバイアスV1(V)が印加されることで、感光体2とブラシローラ4aとの間に電界が形成される。ブラシローラ4aの回転制御およびバイアス印加の制御は、電子制御装置で行われる。なお、クリーニング装置4には、ブラシローラ以外にゴムローラ等を用いることができる。
【0012】
帯電装置5は感光体2の表面を、画像形成時に設定される所定の電位に帯電する。この帯電装置5には、従来公知の帯電装置(図示例では、コロナ帯電器)を用いることができる。同様に、露光装置6、現像装置7、および転写装置8には、それぞれ、従来周知慣用の露光装置、現像装置、および転写装置を用いることができる。
【0013】
ところで、この例の画像形成装置1では、感光体2の除電される部分が図2に示す感光体2の画像形成領域内αであるときと、感光体2の除電される部分が図2に示す画像形成領域外(感光体2の移動方向で画像形成領域内αと次の画像形成領域内αとの間:つまり、紙間領域)βであるときとで、除電装置3の除電光量が変化するように、除電装置3が電子制御装置によって制御される。また、ブラシローラ4aとの間に電界を形成する感光体2の部分が画像形成領域内αであるときと、ブラシローラ4aとの間に電界を形成する
感光体2の部分が画像形成領域外βであるときとで、ブラシローラ4aに印加するバイアスV1(V)が電子制御装置によって、画像形成時に使用されるトナーの極性と同極性に設定されるかまたは画像形成領域外βで絶対値で除電後の感光体2の表面電位未満に設定されるかして感光体2とブラシローラ4aとの間の電界の方向を変えるように制御される。そして、これにより、転写工程終了後に感光体2における画像形成領域内αの表面に残留する転写残りトナーがブラシローラ4aへ移動し、また、ブラシローラ4aに移動した転写残りトナーが感光体2における画像形成領域外βの表面へ移動するように制御されるようになっている。
【0014】
次に、この例の画像形成装置1の動作について説明する。
画像形成装置1の画像形成動作が開始されると、感光体2が回転され、帯電装置5によって感光体2の表面が一様に帯電される。次いで、露光装置6によって感光体2の表面が露光されて像の書込みが行われ、感光体2上に負極性電位が低下した静電潜像が形成される。この感光体2上の静電潜像が現像装置7からの所定の電位に帯電されたトナーによって現像され、感光体2上にトナー像が形成される。感光体2上のトナー像は、転写装置8による転写工程で紙等の転写材や中間転写媒体等の転写媒体9に転写される。従来の画像形成装置と同様に、転写媒体9が紙等の転写材である場合には、図示しない定着装置によって定着されて転写材に定着画像が形成される。また、転写媒体9が中間転写媒体である場合には、中間転写媒体上に転写されたトナー像が第2の転写装置(不図示)によって更に転写材に転写された後、前述と同様に定着装置によって定着されて転写材に定着画像が形成される。
【0015】
転写工程終了後、感光体2における画像形成領域内αが除電位置に来たとき、除電装置3がオンに設定される。これにより、除電装置3からの画像形成時に設定される光量の除電光によって感光体2の画像形成領域内αの表面が除電される(除電工程)。すると、感光体2の画像形成領域内αの表面電位が絶対値で低下する。また、感光体2における画像形成領域内αがブラシローラ4aの帯電位置に来たとき、ブラシローラ4aに画像形成時に設定される所定のバイアスV1(V)(トナーと同じ負極性)が印加される。その場合、このときに印加されるバイアスV1(V)は、絶対値で感光体表面電位より大きく設定される。すると、感光体2とブラシローラ4aとの間に電界が形成される。これにより、転写工程終了後に、感光体2の画像形成領域内αの表面上に残留する転写残りトナーや外添剤の残留物が、静電気的にブラシローラ4aの方へ引き寄せられる。そして、引き寄せられたトナーはブラシ毛4bに付着する(クリーニング工程)。
【0016】
一方、感光体2における画像形成領域外βが除電位置に来たとき、除電装置3からの除電光の光量が、画像形成領域内αが除電位置に来たときの除電光の光量に対して変更される。具体的には、画像形成領域外βが除電位置に来たとき、除電装置3がオフに設定されるか、または除電装置3からの除電光の光量が絶対値で小さくなる。つまり、感光体2の除電される部分が感光体2の画像形成領域内αおよび画像形成領域外βのいずれかで除電量を変化されるように除電装置3からの除電光の光量を制御する。
【0017】
また、感光体2における画像形成領域外βがブラシローラ4aの帯電位置に来たとき、ブラシローラ4aに印加されるバイアスV1(V)が、画像形成領域内αがこの帯電位置に来たときにブラシローラ4aに印加されるバイアスV1(V)に対して変更される。これにより、感光体2とブラシローラ4aとの間に形成される電界の方向が画像形成領域内αが帯電位置に来たときに形成される電界の方向と逆方向となる。具体的には、画像形成領域外βがブラシローラ4aの帯電位置に来たときのブラシローラ4aのバイアスV1(V)が画像形成領域内αがブラシローラ4aの帯電位置に来たときのバイアスV1(V)より絶対値で小さく設定される(バイアス制御工程)。その場合、このときに設定されるバイアスV1(V)は、絶対値で感光体表面電位未満に設定される。なお、このときに設
定されるバイアスV1(V)は、バイアスV1(V)をアース電位とする電源構成により0Vとしてもよい。
【0018】
これにより、ブラシローラ4aのブラシ毛4bに付着したトナーは、再び感光体2の方へ引き寄せられる。そして、感光体2に移動したトナーは、画像形成装置1の他の部材のクリーニング装置で除去される。
【0019】
この例の画像形成装置1によれば、感光体2の画像形成領域内αと画像形成領域外βとで除電装置3の除電光量を変更している。また、画像形成領域内αと画像形成領域外βとで、ブラシローラ4aに印加するバイアスを画像形成時に使用されるトナーの極性と同極性のバイアスに設定するか、または画像形成領域外βでブラシローラ4aのバイアスを絶対値で除電後の感光体2の表面電位未満または0Vに設定して、感光体2とブラシローラ4aとの間の電界の方向を逆方向に変更している。これにより、感光体2における画像形成領域内αの表面の転写残りトナーや外添剤の残留物をブラシローラ4aに除去できる。そして、ブラシローラ4aの転写残りトナーや外添剤の残留物を感光体2における画像形成領域外βの表面に移動させてブラシローラ4aから除去できる。画像形成領域外βの表面に移動した転写残りトナーや外添剤の残留物は、画像形成装置の他の部材のクリーニング装置で除去される。こうして、感光体2を効果的にクリーニング可能となるとともにブラシローラ4aの汚れも効果的に抑制できる。したがって、感光体2のクリーニングおよび帯電をともに良好に維持できるので、長期にわたって良好な画質の画像を形成することができる。
【0020】
また、感光体2の画像形成領域外βで、ブラシローラ4aのバイアスV1(V)の極性を少なくとも逆極性に変える必要はないので、バイアスV1(V)の変更を小さくでき、その分電源を小さくできるとともにコストを低減でき、しかもノイズの発生を抑制できる。
なお、図1に示すようにこの例の画像形成装置1における除電装置3とクリニング装置4とは互いに異なるように示されているが、以上の説明から明らかなように除電装置3は除電光量を変更することでクリーニング機能に関係している。したがって、クリニング装置4に除電装置3も含まれる。
【0021】
図3は、本発明の画像形成装置の実施の形態の他の例を模式的にかつ部分的に示す図である。
図3に示すように、この例の画像形成装置1では、図1に示す例の画像形成装置1に対してクリーニング装置4が更にもう1つのブラシローラ4cを備えている。以下、この例の画像形成装置1においては、ブラシローラ4aを第1ブラシローラ4a(第1導電性部材)といい、ブラシローラ4cを第2ブラシローラ4c(第2導電性部材)という。第2ブラシローラ4cも第1ブラシローラ4aと同じブラシローラを用いることができる。
【0022】
第1ブラシローラ4aのブラシ毛4bは感光体2の表面に近接または当接可能に配設されている。前述の例と同様に、この第1ブラシローラ4aに印加される直流(DC)の第1バイアスV1(V)も、感光体2の画像形成領域内αがこの帯電位置に来たときと画像形成領域外βがこの帯電位置に来たときとで、絶対値で画像形成領域外βでのバイアスが画像形成領域内αでのバイアス以下に設定されるか、または画像形成領域外βで0Vに設定される(バイアス制御工程)。このとき、画像形成領域外βでは、第1バイアスV1(V)は、絶対値で除電後の感光体2の表面電位未満(感光体2と同極性または0V)に設定される。この第1ブラシローラ4aに第1バイアスV1(V)が印加されることで、感光体2と第1ブラシローラ4aとの間に第1の電界が形成される。
【0023】
画像形成領域内αでの第1ブラシローラ4aの第1バイアスV1(V)は、比較的強い
負極性(つまり、現像で使用されるトナーと同極性)である。これにより、転写工程終了後の感光体2の表面が比較的強い負電位に帯電される(帯電工程)。また、感光体2の表面に残留する転写残りトナーや外添剤の残留物は、その帯電極性が正負不揃いであるが、これらの転写残りトナーや外添剤の残留物も、感光体2の負帯電と同時に負帯電される。このとき、一部の正帯電トナーは第1ブラシローラの負極性電界に引き寄せられ第1ブラシローラ4aに付着する。また引き寄せられなかった転写残りトナーや外添剤の残留物は正極性に帯電されていても、その電位の絶対値が小さいため確実に負帯電されてその帯電極性が揃えられる。
【0024】
なお、第1導電性部材は、感光体2を比較的強く負帯電できる帯電器であれば、必ずしも第1ブラシローラ4aのように回転しなくてもよい。すなわち、この第1導電性部材には、ブラシローラ4a以外に、単なる帯電ブラシデッキ、帯電ゴム、コロナ帯電器、帯電フィルム等を用いることができる。
【0025】
第2ブラシローラ4cのブラシ毛4dは感光体2の表面に当接可能に配設されている。この第2ブラシローラ4cには、第1ブラシローラ4aで帯電された残留物を引き寄せる負の直流(DC)の第2バイアスV2(V)(V2>(V1+|Vth|):Vth(V)は第1ブラシローラ4aと感光体2との間の放電開始電圧)が印加される。その場合、第2バイアスV2(V)はブラシ毛4dと感光体2の表面との間に放電が生じない、つまり放電限界を超えない比較的弱い大きさのバイアスに設定されている。
【0026】
そして、第2ブラシローラ4cに第2バイアスV2(V)が印加されることで、感光体2と第2ブラシローラ4cとの間に第2の電界が形成される。その場合、この第2バイアスV2(V)は、感光体2の画像形成領域内αがこの第2の電界形成位置に来たときと感光体2の画像形成領域外βがこの第2の電界形成位置に来たときとで、絶対値で画像形成領域外βでのバイアスが画像形成領域内αでのバイアス以上に設定される(バイアス制御工程)。その場合、画像形成領域外βでは、第2ブラシローラ4cの第2バイアスV2(V)は、絶対値で第1ブラシローラ4aを通過後の感光体2の表面電位を超えて(感光体2と同極性)設定される。
【0027】
これにより、前述の例と同様に転写工程終了後に感光体2の画像形成領域内αの表面に残留する転写残りトナーや外添剤の残留物は、感光体2の画像形成領域内αの表面が第1ブラシローラ4aに到達すると静電気的に第1ブラシローラ4aの方へ引き寄せられて移動する。また、第1ブラシローラ4aのブラシ毛4bに付着した転写残りトナーや外添剤の残留物は、感光体2の画像形成領域外βの表面が第1ブラシローラ4aに到達すると静電気的に感光体2の方へ引き寄せられて画像形成領域外βの表面に移動する。
【0028】
更に、感光体2の画像形成領域外βの表面に移動した転写残りトナーや外添剤の残留物は、この画像形成領域外βの表面が第2ブラシローラ4cに到達すると静電気的に第2ブラシローラ4cの方へ引き寄せられてブラシ毛4dに付着する(クリーニング工程)。第2ブラシローラ4cのブラシ毛4dに付着した転写残りトナーや外添剤の残留物は、図示しない従来公知の回収ローラおよびクリーニングブレード等のクリーニング部材によって除去されかつ回収される。なお、クリーニング装置4には、ブラシローラ以外にゴムローラ等を用いることができる。
この例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、前述の例の画像形成装置1のそれらと同じである。
【0029】
次に、本発明のクリーニング装置4および画像形成装置1における各バイアスの実施例1,2、および比較例1について説明する。その場合、実施例1,2、および比較例1は、いずれも、セイコーエプソン株式会社製カラープリンタLP9000C(放電開始電圧V
th(V):−600V)を一部改造して適用した場合の実施例および比較例である。
実施例1について表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例1は、図1に示す例の画像形成装置において転写残りトナーの帯電極性が正の帯電トナーを用いた例である。表1に示すように、この実施例1では、転写終了後に感光体2の画像形成領域内αの表面が除電位置に来たときには、除電装置3がONに設定される。これにより、転写工程後に感光体2が除電装置3からの除電光により除電され、感光体表面電位が−20Vとなる。次いで、画像形成領域内αの表面がブラシローラ4aによる帯電位置に来たときには、ブラシローラ4aに−300Vのバイアスが印加される、すると、転写残りトナーや外添剤の残留物が感光体2からブラシローラ4aに移動する。
【0032】
一方、転写終了後に感光体2の画像形成領域外βの表面が除電位置に来たときには、除電装置3がOFFに設定される。これにより、除電装置3からの除電光が消滅する。すなわち、画像形成領域外βでは、除電装置3の除電光量が画像形成領域内αでの除電光量に対して変更される。したがって、感光体2が除電されず、感光体表面電位が−300V付近となる。次いで、画像形成領域外βの表面がブラシローラ4aによる帯電位置に来たときには、ブラシローラ4aに絶対値で感光体2の表面電位未満である0Vのバイアスが印加される。すなわち、画像形成領域外βでは、ブラシローラ4aのバイアスが画像形成領域内αでのバイアスに対して変更される。すると、画像形成領域外βでは、感光体2とブラシローラ4aとの間に形成される電界の方向が画像形成領域内αと逆方向に変化する。これにより、ブラシローラ4aに移動した転写残りトナーや外添剤の残留物が感光体2の画像形成領域外βの表面に再び移動する。
実施例2について表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例2は、図3に示す例の画像形成装置において転写残りトナーの帯電極性が正負不
揃いのトナーを用いた例である。表2に示すように、この実施例2では、画像形成領域内αには、除電装置3がONに設定される。これにより、転写工程後に感光体2が除電装置3からの除電光により除電され、感光体表面電位が−20Vとなる。次いで、画像形成領域内αが第1ブラシローラ4aに来たときには、第1ブラシローラ4aに−1300Vの比較的大きなバイアスが印加される。すると、転写残りトナーや外添剤の残留物の一部の正帯電残留物が感光体2から第1ブラシローラ4aに移動する。また、転写残りトナーや外添剤の残留物の一部の弱帯電残留物、負帯電残留物は第1ブラシローラ4aに移動せずに感光体2上に残り、第1ブラシローラ4aの帯電を受けて負帯電極性に揃えられる。このとき、感光体2と第1ブラシローラ4aとの放電開始電圧Vth(V)が−600Vであるので、第1ブラシローラ4aを通過後の感光体2の表面電位は−700V付近となる。次いで、画像形成領域内αの表面が第2ブラシローラ4cによる帯電位置に来たときには、第2ブラシローラ4cに−200Vのバイアスが印加される。すると、第1ブラシローラ4aを通過後の転写残りトナーや外添剤の残留物が感光体2から第2ブラシローラ4cの方へ引き寄せられ、ブラシ毛dに付着する。
【0035】
一方、転写終了後に感光体2の画像形成領域外βの表面が除電位置に来たときには、除電装置3がOFFに設定される。これにより、除電装置3からの除電光が消滅する。すなわち、画像形成領域外βでは、除電装置3の除電光量が画像形成領域内αでの除電光量に対して変更される。したがって、感光体2が除電されず、感光体表面電位が転写工程終了後の−400V付近となる。次いで、画像形成領域外βの表面が第1ブラシローラ4aによる帯電位置に来たときには、第1ブラシローラ4aに絶対値で感光体2の表面電位未満である0Vのバイアスを印加する。すなわち、画像形成領域外βでは、ブラシローラ4aのバイアスが画像形成領域内αでのバイアスに対して変更される。すると、画像形成領域外βでは、感光体2とブラシローラ4aとの間に形成される電界の方向が画像形成領域内αと逆方向に変化する。このとき、第1部ブラシローラ4aを通過後の感光体2の表面電位は−400V付近となる。これにより、ブラシローラ4aに移動した転写残りトナーや外添剤の残留物が感光体2の画像形成領域外βの表面に再び移動する。
【0036】
次いで、画像形成領域外βの表面が第2ブラシローラ4cによる帯電位置に来たときには、第2ブラシローラ4cに−600Vのバイアスが印加される。すなわち、画像形成領域外βでは、第2ブラシローラ4cのバイアスが画像形成領域内αでのバイアスに対して変更される。すると、画像形成領域外βの表面に移動した転写残りトナーや外添剤の残留物が第2ブラシローラ4cの方へ引き寄せられ、ブラシ毛4dに付着する。
比較例1について表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
比較例1は、図4に示す従来の画像形成装置を用いた例である。図4に示すように、この画像形成装置は、図1に示す画像形成装置においてブラシローラ4aに印加するバイアスの極性を、画像形成領域内αの表面がブラシローラ4aの帯電位置に来たときと画像形成領域外βの表面がブラシローラ4aの帯電位置に来たときとで変更している。また、比較例1では転写残りトナーの帯電極性が正の帯電トナーを用いている。表3に示すように、この比較例1では、画像形成領域内αが除電位置に来たときには、除電装置3がONに
設定される。これにより、転写工程後に感光体2が除電装置3からの除電光により除電され、感光体の画像形成領域内αの表面電位が−20V付近となる。次いで、画像形成領域内αがブラシローラ4aにより帯電位置に来たときには、ブラシローラ4aにー300Vのバイアスが印加される。すると、転写残りトナーや外添剤の残留物が感光体2からブラシローラ4aに移動する。
【0039】
一方、画像形成終了後の画像形成領域外βが除電位置に来たときにも、除電装置3がONに設定される。これにより、転写工程後に感光体2が除電装置3からの除電光により除電され、感光体の画像形成領域外βの表面電位が−20V付近となる。すなわち、画像形成領域内αと画像形成領域外βとで除電装置3は変更されず、ONが維持される。次いで、画像形成領域内αがブラシローラ4aにより帯電位置に来たときには、ブラシローラ4aに+300Vのバイアスが印加される。すなわち、画像形成領域外βは、ブラシローラ4aの印加バイアスが画像形成領域内αに対して逆極性でかつ大きいバイアスとなる。したがって、比較例1では、ブラシローラ4aの印加バイアスが画像形成領域外βと画像形成領域内αとで極性が変更される。これにより、ブラシローラ4aに移動した転写残りトナーや外添剤の残留物が感光体2に移動する。
【0040】
このように、比較例1では、画像形成領域内αが除電位置に来たときと画像形成領域外βが除電位置に来たときとで除電装置3の除電光量が変更されないが、ブラシローラ4aのバイアスV1(V)の極性および大きさが変更される。したがって、その分大きな電源を必要とし、コストが高くなるばかりでなく、ノイズが発生する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の一例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図2】感光体の画像形成領域内と画像形成領域外とを示す図である。
【図3】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の他の例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図4】比較例としての従来の画像形成装置を模式的にかつ部分的に示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1…画像形成装置、2…感光体、3…除電装置、4…クリーニング装置、4a…ブラシローラ(第1ブラシローラ)、4b…第2ブラシローラ、5…帯電装置、6…露光装置、7…現像装置、8…転写装置、9…転写媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写後に像担持体の電位を除電する除電部材と、
バイアスが印加されて前記像担持体との間に電界を形成することで、少なくとも、除電された像担持体上の残留物を除去する導電性部材と、
前記像担持体の除電される部分が前記像担持体の画像形成領域内および画像形成領域外のいずれかで、除電量を変化されるように前記除電部材を制御するとともに、前記導電性部材との間に電界を形成する前記像担持体の部分が前記画像形成領域内および前記画像形成領域外のいずれかで、前記電界の方向を変えるように前記導電性部材に印加するバイアスを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする像担持体のクリーニング装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記導電性部材に印加するバイアスを画像形成時に使用されるトナーの極性と同極性に設定するかまたは画像形成領域外で絶対値で除電後の前記像担持体の表面電位未満に設定するかして前記電界の方向を変えるように制御することを特徴とする請求項1に記載の像担持体のクリーニング装置。
【請求項3】
前記制御手段は、画像形成領域外で前記導電性部材に印加するバイアスを0Vに設定することを特徴とする請求項1または2に記載の像担持体のクリーニング装置。
【請求項4】
前記導電性部材は、前記像担持体をクリーニングするクリーニングブラシローラであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1に記載の像担持体のクリーニング装置。
【請求項5】
転写後に像担持体の電位を除電する除電部材と、
第1のバイアスが印加されて前記像担持体との間に第1の電界を形成することで、少なくとも、除電された像担持体上の残留物を除去する第1の導電性部材と、
第2のバイアスが印加されて前記像担持体との間に第2の電界を形成することで、少なくとも、第1の導電性部材を通過後の前記像担持体上の残留物を除去する第2の導電性部材と、
前記像担持体の除電される部分が前記像担持体の画像形成領域内および画像形成領域外のいずれかで、除電量を変化されるように前記除電部材を制御するとともに、前記第1の導電性部材との間に第1の電界を形成する前記像担持体の部分が前記画像形成領域内および前記画像形成領域外のいずれかで、前記第1の電界の方向を変えるように前記第1の導電性部材に印加する第1のバイアスを制御し、更に前記第2の導電性部材との間に第2の電界を形成する前記像担持体の部分が前記画像形成領域内および前記画像形成領域外のいずれかで、前記第2の電界の方向を変えるように前記第2の導電性部材に印加する第2のバイアスを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする像担持体のクリーニング装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1のバイアスを画像形成時に使用されるトナーの極性と同極性に設定するかまたは画像形成領域外で絶対値で除電後の前記像担持体の表面電位未満に設定するかして前記第1の電界の方向を変えるように第1のバイアスを制御し、また前記第2のバイアスを画像形成時に使用されるトナーの極性と同極性で前記第2の電界の方向を変えるように第2のバイアスを制御することを特徴とする請求項5に記載の像担持体のクリーニング装置。
【請求項7】
前記制御手段は、画像形成領域外で、前記除電部材による前記像担持体の除電をオフに設定するとともに前記第1のバイアスを絶対値で除電後の前記像担持体表面電位未満に設定しかつ前記第2のバイアスを絶対値で前記第1の導電性部材を通過後の前記像担持体表面電位を超えて設定することを特徴とする請求項5または6に記載の像担持体のクリーニ
ング装置。
【請求項8】
転写後に像担持体の電位を除電する除電工程と、
導電性部材に所定のバイアスを印加して前記導電性部材と前記像担持体との間に電界を形成することで、少なくとも、除電された像担持体上の残留物を除去するクリーニング工程と、
除電する部分が画像形成領域内および画像形成領域外のいずれかで、除電量を変化されるとともに前記導電性部材に印加するバイアスを画像形成時に使用されるトナーの極性と同極性に設定しまたは画像形成領域外で絶対値で除電後の前記像担持体の表面電位未満に設定して前記電界の方向を変えるようにバイアス制御工程と、
を備えることを特徴とする像担持体のクリーニング方法。
【請求項9】
転写後に像担持体の電位を除電する除電工程と、
第1の導電性部材に第1のバイアスを印加して前記像担持体と前記第1の導電性部材との間に第1の電界を形成することで、除電された像担持体を帯電させて、少なくとも、前記像担持体上の残留物の電荷の極性を揃える帯電工程と、
第2の導電性部材に第2のバイアスを印加して前記像担持体と前記第2の導電性部材との間に第2の電界を形成することで、前記第1の導電性部材を通過後の前記像担持体上の残留物を除去するクリーニング工程と、
除電する部分が画像形成領域内および画像形成領域外のいずれかで除電量を変化されるとともに、前記第1のバイアスを画像形成時に使用されるトナーの極性と同極性に設定しまたは画像形成領域外で絶対値で除電後の前記像担持体の表面電位未満に設定して前記第1の電界の方向を変えるように制御するとともに、前記第2のバイアスを画像形成時に使用されるトナーの極性と同極性で前記第2の電界の方向を変えるように制御するバイアス制御工程と
を備えることを特徴とする像担持体のクリーニング方法。
【請求項10】
回転可能に設けられかつ潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に潜像を書き込む露光装置と、
前記像担持体の潜像を、所定の極性に帯電されたトナーで現像する現像装置と、
前記像担持体上の現像されたトナー像を転写媒体に転写する転写装置と、
転写後に前記像担持体上の残留物を導電性部材で除去する請求項1ないし6のいずれか1に記載のクリーニング装置と、
少なくともを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−26059(P2010−26059A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184828(P2008−184828)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】