説明

像振れ補正機能を備えた光学機器

【課題】 消費電力を最小限に抑えた像振れ補正機能を備えた光学機器を得る。
【解決手段】 双眼鏡1において、それぞれ接眼レンズを保持する一対の接眼レンズ鏡筒2、3の間に焦点調節のためのダイヤルリング4を配設する。双眼鏡1の外面に、ダイヤルリング4から所定の間隔を置いて防振スイッチ5を配設する。防振スイッチ5は操作に必要とされる押圧力が約50〜250g、スイッチストロークが約0.1〜0.5mmのパネルスイッチであり、メンブレンスイッチ、タッチパネル等を用いる。防振スイッチ5はダイヤルリングの中心軸Lと接眼レンズ鏡筒3との間において中心軸Lの近傍に位置決めする。すなわち、防振スイッチ5は、操作者が双眼鏡1を接眼レンズ鏡筒3の側から手で保持し、ダイヤルリング4を指で回転しつつ、ダイヤルリング4を回転させる指以外の指で容易に触れられる位置に位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、手振れ等に起因する像振れを補正する機能を備えた光学機器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、像振れを補正する防振機能を備えた双眼鏡等の光学機器が知られている。光学機器の光軸のぶれを相殺するよう補正光学系が駆動され像振れが補正され、防振処理が行われる。補正光学系の駆動手段として、DCモータや電磁コイルが用いられている。DCモータや電磁コイルは電源オフ時、その停止位置を保持することができず、防振機能がオフされている場合でも自重や外力により補正光学系が移動してしまう。そのため、防振処理を行わない時のための補正光学系の係止機構が備えられている。
【0003】防振処理は、光学機器の外面に設けられた防振スイッチをオンオフすることにより制御される。防振スイッチを押すことにより防振処理が開始される。防振スイッチを押し続けている間防振処理は継続され、防振スイッチを離すと防振処理は終了する。このような防振スイッチには少なくとも2mm(ミリメートル)以上のストロークを有する押し釦スイッチが用いられる。すなわち、防振スイッチを押すとそのストロークが係止機構に伝達され、補正光学系をバネなどの力によって所定位置に係止保持している係止機構が移動解除される。補正光学系が係止機構から解放されフリーな状態となると同時に、補正光学系の駆動手段に電流が流れ、駆動手段により補正光学系が駆動され防振処理が行なわれる。防振スイッチが押され続けている間、補正光学系の係止機構からフリーな状態、換言すれば駆動手段が作動する状態が保持され防振処理が継続され、防振スイッチが離されると、係止機構が移動して再び補正光学系を所定の位置に固定する。
【0004】押し釦スイッチをオンするためには通常、少なくともと500g(グラム)以上の押圧力を必要とする。従って、防振処理を行うためには500g以上の押圧力を常に加え続けなければならない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】双眼鏡等の光学機器は本体を手で保持しながら対象物を観察するのが一般的な使用方法である。ところが、本体を手で保持しつつ更に指で500g以上の押圧力を加えるため不自然な力が加わって手振れが増大し、その結果、必要以上の防振処理までも行わねばならず、余計な電力が消費されるという問題があった。
【0006】本発明は、以上の問題を解決するものであり、消費電力を最小限に抑えた像振れ補正機能を備えた光学機器を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる像振れ補正機能を備えた光学機器は、像振れを補正するための補正光学系と、補正光学系をその光軸に直交する平面内で互いに直交する2方向にそれぞれ駆動する直動型アクチュエータと、直動型アクチュエータによる補正光学系の駆動のオンオフを制御する防振スイッチとを備え、防振スイッチが表面を触れられることにより入力を検知する入力装置であることを特徴とする。
【0008】好ましくは、防振スイッチが光学機器の外面において、光学機器を手で保持しながら指で触れることができる位置に配設されている。防振スイッチは例えばパネルスイッチである。
【0009】光学機器は例えば双眼鏡であり、双眼鏡の焦点調節のためのダイヤルリングから所定の間隔をおいて防振スイッチが配設されており、好ましくは防振スイッチはダイヤルリングを操作しながら触れることができる位置に配設される。
【0010】好ましくは、防振スイッチはダイヤルリングの中心軸の近傍に位置決めされている。
【0011】好ましくは、直動型アクチュエータの電源オフ時、直動型アクチュエータにより補正光学系の位置が固定される。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態が適用される双眼鏡の平面図である。双眼鏡1において、それぞれ接眼レンズ(図示せず)を保持する一対の接眼レンズ鏡筒2、3の間に、焦点調節のためのダイヤルリング4が配設されている。ダイヤルリング4を所定の方向に回転させることにより、双眼鏡1の内部の望遠光学系の焦点距離が調節される。双眼鏡1の外面には、ダイヤルリング4から所定の間隔を置いて防振スイッチ5が配設されている。防振スイッチ5は操作に必要とされる押圧力が約50〜250g、スイッチストロークが約0.1〜0.5mmのパネルスイッチであり、メンブレンスイッチ、タッチパネル等が用いられる。防振スイッチ5はダイヤルリング4の中心軸Lと接眼レンズ鏡筒3との間において中心軸Lの近傍に位置決めされている。すなわち、防振スイッチ5は、操作者が双眼鏡1を接眼レンズ鏡筒3の側から手で保持し、ダイヤルリング4を指で回転しつつ、ダイヤルリング4を回転させる指以外の指で容易に触れられる位置に位置決めされている。
【0013】図2は、双眼鏡1の各光学系の位置関係を模式的に示す図である。第1の光学系10において、第1の対物レンズ21を通過した光束は第1の補正レンズ31を通過し第1の正立プリズム41を介して第1の接眼レンズ51に導かれ、第2の光学系11において、第2の対物レンズ22を通過した光束は第2の補正レンズ32を通過し第2の正立プリズム42を介して第2の接眼レンズ52に導かれる。第1の補正レンズ31と第2の補正レンズ32はレンズ支持枠30に一体的に支持されている。第1の光学系10の光軸OP1と第2の光学系11の光軸OP2は、完全に平行となるよう調整されている。尚、本明細書において「横方向」とは光軸OP1、OP2を含む平面に平行でかつ光軸OP1、OP2に直交する方向であり、「縦方向」とは光軸OP1、OP2を含む平面に垂直な方向である。
【0014】図3は本実施形態のレンズ支持枠30を第1および第2の対物レンズ21、22の側から見た正面図である。図3において一部の部材は説明の都合上、透視して示してある。レンズ支持枠30は、縦方向駆動枠301と横方向駆動枠302を有している。縦方向駆動枠301は略長方形の平板であり開口部を有するドーナツ形状である。縦方向駆動枠301は双眼鏡体の内壁面1aに一体的に設けられた固定枠1bに配設された保持部材310により、固定枠1bの開口部内において縦方向(y1、y2方向)に摺動可能に支持されている。固定枠1bの開口部は、内壁面1Lおよび1Rが縦方向と平行となるよう形成されている。横方向駆動枠302は第1および第2の補正レンズ31、32を一体的に保持する平板であり縦方向駆動枠301の開口部に配設されている。横方向駆動枠302は縦方向駆動枠301に配設された保持部材320により縦方向駆動枠301の開口部内において横方向(x1、x2方向)に摺動可能に支持されている。縦方向駆動枠301の開口部は、内壁面301Bおよび301Uが横方向と平行となるよう形成されている。縦方向駆動枠301および横方向駆動枠302は、それぞれ摩擦係数の低い樹脂を成形したものである。
【0015】図4は図3において縦方向駆動枠301および横方向駆動枠302の上端部に配設された保持部材320の断面図である。保持部材320はビス321、ナット322、ワッシャ323を有している。ビス321のシャフト321aは縦方向駆動枠301に穿設された穴301aを挿通している。シャフト321aにはネジ山が切られており、ビス321のヘッド321bの反対側の端部にはナット322が締め付けられている。ヘッド321bと縦方向駆動枠301の間、およびナット322と縦方向駆動枠301の間にワッシャ323が配設されている。ワッシャ323の半径の長さは、横方向駆動枠302の端面に接する縦方向駆動枠301端面からシャフト321aの中心軸までの長さより大きい。すなわち、横方向駆動枠302はその端部においてワッシャ323の周縁部の一部で挟持されており、ワッシャ323は横方向駆動枠302を光軸OP1、OP2と平行方向に移動しないよう保持している。
【0016】保持部材310も保持部材320と同様の構成を有している。ビス311(図3参照)のシャフトは固定枠1bに穿設された穴を挿通し、ビス311のヘッドと反対側のシャフトの端部にナット(図示せず)が締め付けられている。ビス311のヘッドと固定枠1bの間およびナットと固定枠1bの間にワッシャ313(図3参照)が配設され、縦方向駆動枠301の端部はワッシャ313の周縁部の一部で挟持されている。すなわち、横方向駆動枠302と同様、ワッシャ313は縦方向駆動枠301を光軸OP1、OP2と平行方向に移動しないよう保持している。
【0017】以上のように、固定枠1b内に配設される縦方向駆動枠301は、保持部材310のワッシャ313に挟持され、縦方向駆動枠301の開口部に配設される横方向駆動枠302は、保持部材320のワッシャ323に挟持されている。すなわち、固定枠1bの光軸OP1、OP2に沿った厚みは縦方向駆動枠301の光軸OP1、OP2に沿った厚みよりも大きく、縦方向駆動枠301の光軸OP1、OP2に沿った厚みは横方向駆動枠302の光軸OP1、OP2に沿った厚みよりも大きくなるよう、固定枠1b、縦方向駆動枠301および横方向駆動枠302はそれぞれ成形される。
【0018】図5は図3の線A−A矢視断面図である。図3および図5を用いて、本実施形態のアクチュエータについて説明する。縦方向アクチュエータ330は、第1および第2の正立プリズム41、42側(図2参照)に配設されており、縦方向駆動枠301および横方向駆動枠302の縦方向の中心に位置決めされている。縦方向アクチュエータ330はステッピングモータ331とシャフト332とから成る。ステッピングモータ331はモータケース331aとモータケース331a内に設けられたモータ331bとから成り、モータ331bは縦方向に沿った軸回りに正逆回転が可能である。シャフト332はモータ331bの回転方向においてモータ331bと一体的に回転し、軸方向においてモータ331bに対して移動可能なように支持されている。シャフト332の外周面にはリードネジが形成されており、モータケース331aの軸受けに形成されている雌ネジ(図示せず)に螺合している。すなわち、モータ331bの正逆回転に対して、シャフト332は回転しながら、その軸方向に沿って進退する。シャフト332の先端部にはボールが埋設されており、このボールが目標物を押圧する。シャフト332の先端は縦方向駆動枠301の下端部にビス334a、334bにより固定された被押圧部材334に当接している。
【0019】第1および第2の対物レンズ21、22が配設された側において縦方向駆動枠301の側端部近傍には、第1のコイルバネ391が配設されている。第1のコイルバネ391の両端部はフック形状を有しており、それぞれ図3において固定枠1bの上端部近傍に嵌合しているビス392と、縦方向駆動枠301の下端部近傍に嵌合しているビス393に係合している。すなわち、第1のコイルバネ391は縦方向駆動枠301にy1方向の付勢力を与えている。従って、シャフト332の先端部は常時、被押圧部材334に当接している。
【0020】縦方向駆動枠301および横方向駆動枠302の下端部近傍において第1および第2の対物レンズ21、22(図2参照)側には、横方向アクチュエータ340が配設されており、縦方向駆動枠301および横方向駆動枠302の縦方向の中心に対して第1の補正レンズ31が配設された側に配設されている。横方向アクチュエータ340はステッピングモータ341とシャフト342とから成る。ステッピングモータ341はモータケース341aとモータケース341a内に設けられたモータ341bとから成り、モータ341bは横方向に沿った軸回りに正逆回転が可能である。シャフト342はモータ341bの回転方向においてモータ341bと一体的に回転し、軸方向においてモータ341bに対して移動可能なように支持されている。シャフト342の外周面にはリードネジが形成されており、モータケース341aの軸受けに形成されている雌ネジ(図示せず)に螺合している。すなわち、モータ341bの正逆回転に対して、シャフト342は回転しながら、その軸方向に沿って進退する。シャフト342の先端部にはボールが埋設されており、このボールが目標物を押圧する。シャフト342の先端は、横方向駆動枠302の下端部にビス344a、344bにより固定された被押圧部材344に当接している。
【0021】第1および第2の対物レンズ21、22が配設された側において縦方向駆動枠301の上端部には、第2のコイルバネ396が配設されている。第2のコイルバネ396の両端部はフック形状を有している。第2のコイルバネ396の一方の端部は、縦方向駆動枠301の上端部において第1の補正レンズ31が配設された側の端部近傍に嵌合しているビス397に係合している。他方の端部は、横方向駆動枠302の上端部において略中央部分に固定されたフランジ398に穿設された穴398cに係合している。すなわち、第2のコイルバネ396は横方向駆動枠302にx1方向の付勢力を与えている。従って、シャフト342の先端部は常時、被押圧部材344に当接している。
【0022】ステッピングモータ341のモータケース341aの一方の端部には略菱形のフランジ341cが一体的に形成されている。フランジ341cは、縦方向駆動枠301に固定された固定部材345に、ビス345a、およびモータケース341aを挟んでビス345aの反対側に位置決めされたビス345bにより保持されている。すなわち、モータケース341aはフランジ341c、固定部材345を介して縦方向駆動枠301に固定されている。同様に、ステッピングモータ331のモータケース331aの一方の端部には略菱形のフランジ331cが一体的に形成されており、フランジ331cは、固定枠1bに固定された固定部材333に、ビス333a、モータケース331aを挟んでビス333aの反対側に位置決めされたビス(図示せず)により保持されている。すなわち、モータケース331aはフランジ331c、固定部材333を介して固定枠1bに固定されている。
【0023】モータ331bが正転すると、シャフト332は回転しながらy2方向(下方向)に突出する。シャフト332のy2方向への動きは被押圧部材334を介して縦方向駆動枠301に伝達される。上述のように縦方向駆動枠301は固定枠1bに摺動可能に支持されているため、縦方向駆動枠301はモータ331bの正転に応じて、第1のコイルバネ391のy1方向への付勢力に抗してy2方向へ駆動される。一方、モータ331bが逆転するとシャフト332は回転しながらy1方向(上方向)に引き込まれ、第1のコイルバネ391のy1方向への付勢力により縦方向駆動枠301はy1方向へ駆動される。縦方向駆動枠301のy1方向およびy2方向への駆動は、固定枠1bの直線部分、すなわち内壁面1Lおよび1Rに案内される。
【0024】モータ341bが正転すると、シャフト342は回転しながらx2方向(図3において左方向)に突出する。シャフト342のx2方向への動きは被押圧部材344を介して横方向駆動枠302に伝達される。上述のように横方向駆動枠302は縦方向駆動枠301に摺動可能に支持されているため、横方向駆動枠302はモータ341bの正転に応じて、第2のコイルバネ396のx1方向への付勢力に抗して、x2方向へ駆動される。一方、モータ341bが逆転するとシャフト342は回転しながらx1方向(図3において右方向)に引き込まれ、第2のコイルバネ396のx1方向への付勢力により、横方向駆動枠302はx1方向へ駆動される。横方向駆動枠302のx1方向およびx2方向への駆動は、縦方向駆動枠301の開口部の直線部分、すなわち内壁面301Uおよび301Bに案内される。
【0025】図6は本実施形態のブロック図である。制御手段100はマイクロコンピュータであり、双眼鏡1全体の制御を行う。制御手段100には防振スイッチ5が接続されており、操作者による防振スイッチ5のオンオフ操作に対応する信号が入力される。縦方向角速度センサ110は、双眼鏡1を保持した時の縦方向における振れの方向及び角速度を検出し、横方向角速度センサ120は、横方向における振れの方向及び角速度を検出する。縦方向角速度センサ110には縦方向センサアンプ111が接続されており、縦方向角速度センサ110から出力された縦方向角速度信号が増幅され、制御手段100に出力される。同様に、横方向角速度センサ120には横方向センサアンプ121が接続されており、横方向角速度センサ120から出力された横方向角速度信号が増幅され、制御手段100に出力される。
【0026】制御手段100では、縦方向角速度信号および横方向角速度信号が所定の同期信号に基づいてデジタル値に変換され、それぞれのデジタル値が積分演算され手振れの角度情報(手振れ量に対応)である縦方向角変位信号および横方向角変位信号が算出される。縦方向角変位信号に基づいて、所定のアルゴリズムにより光軸と直交する面のレンズ支持枠30の移動量、すなわち縦方向アクチュエータ330のステッピングモータ331のモータ331bの駆動ステップ数(モータに加えるパルス数)を算出する。同様に、横方向角変位信号に基づいて、横方向アクチュエータ340のステッピングモータ341のモータ341bの駆動ステップ数を算出する。
【0027】制御手段100から出力されたパルス数に基づくモータ331bの回転運動はシャフト332を介してレンズ支持枠30に伝達され、レンズ支持枠30は縦方向に駆動される。同様に、制御手段100から出力されたパルス数に基づくモータ341bの回転運動はシャフト342を介してレンズ支持枠30に伝達され、レンズ支持枠30は横方向に駆動される。
【0028】図7は本実施形態における防振処理のフローチャートである。ステップS400で防振スイッチ5が押されているか否かがチェックされ、押されている場合はステップS405へ進み、押されていない場合は防振処理は行われない。ステップS405において制御手段100(図6参照)に手振れ信号が入力される。すなわち、縦方向及び横方向における望遠光学系10及び11の光軸OP1、OP2(図2参照)の振れの角速度信号が制御手段100に入力される。
【0029】次いでステップS410において、制御手段100により補正位置すなわち第1及び第2の補正レンズ31、32の駆動量の算出が行われる。つまり光軸OP1、OP2の振れの角速度信号の積分演算が行われ、縦方向及び横方向における光軸OP1、OP2のぶれ量である角度情報が算出される。さらに、縦方向及び横方向における光軸OP1、OP2のぶれ量を相殺する第1および第2の補正レンズ31、32の駆動方向及び駆動量を算出する。第1および第2の補正レンズ31、32の駆動方向及び駆動量に基づいてモータ331b及び341bの回転方向及び回転ステップ数を求める。次いでステップS415で、モータ331b及び341bの回転方向及び回転ステップに対応するパルス信号をステッピングモータ331及びステッピングモータ341へ送出し、ステップS400へ戻る。以上のように、防振スイッチ5が触れられている間、防振処理が行われ、防振スイッチ5から指が離されると防振処理は終了する。
【0030】以上のように、本実施形態によれば、第1および第2の補正レンズ31、32の駆動手段としてステッピングモータと送りネジ機構を組み合わせた直動型アクチュエータを用いている。ステッピングモータは、自己保持力があるため電源オフ時停止位置を保ち、また送りネジ機構においてシャフトに軸心方向に外力が加えられても、嵌合部における摩擦力によりシャフトが回転することはない。従って、防振処理を行わない場合のレンズ支持枠30の係止機構は不要であり、防振処理の開始、終了のためのスイッチは直動型アクチュエータやマイクロコンピュータ等への通電のみを行うものでよい。そのため、防振スイッチとして、約50g〜250gの押圧力で操作でき、スイッチストロークが約0.1〜0.5mmのパネルスイッチを用いることができる。
【0031】このようにわずかな押圧力によりオンオフ制御ができるパネルスイッチを用いることにより防振処理の開始、継続を最小限の力で行えるため、操作者が双眼鏡を手で保持している間、双眼鏡に不必要な力が加わらない。従って、望遠光学系の光軸のぶれは双眼鏡を保持する動作により発生する手振れによるもののみとなるため、最小限の防振処理のみが行われる。その結果、直動型アクチュエータを駆動するための消費電力が節約される。
【0032】さらに、本実施形態によれば、防振スイッチ5は焦点調節のためのダイヤルリング4の回転軸Lの近傍に位置決めされている。従って、焦点調節を行いながら防振処理のオンオフ制御が容易に行え、操作性が良い。
【0033】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、消費電力を最小限に抑えた像振れ補正機能を備えた光学機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施形態が適用される双眼鏡の平面図である。
【図2】双眼鏡の各光学系の位置関係を模式的に示す図である。
【図3】レンズ支持枠の正面図である。
【図4】レンズ支持枠の保持部材の断面図である。
【図5】レンズ支持枠の断面図である。
【図6】防振装置のブロック図である。
【図7】防振処理のフローチャートである。
【符号の説明】
1 双眼鏡
1a 内壁面
1b 固定枠
4 ダイヤルリング
5 防振スイッチ
21、22 対物レンズ
30 レンズ支持枠
31、32 補正レンズ
41、42 正立プリズム
51、52 接眼レンズ
301 縦方向駆動枠
302 横方向駆動枠
310、320 保持部材
311、321 ビス
322 ナット
313、323 ワッシャ
330 縦方向アクチュエータ
340 横方向アクチュエータ
391、396 コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 像振れを補正するための補正光学系と、前記補正光学系をその光軸に直交する平面内で互いに直交する2方向にそれぞれ駆動する直動型アクチュエータと、前記直動型アクチュエータによる前記補正光学系の駆動のオンオフを制御する防振スイッチとを備え、前記防振スイッチが表面を触れられることにより入力を検知する入力装置であることを特徴とする像振れ補正機能を備えた光学機器。
【請求項2】 前記防振スイッチが前記光学機器の外面において、前記光学機器を手で保持しながら指で触れることができる位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の像振れ補正機能を備えた光学機器。
【請求項3】 前記光学機器が双眼鏡であり、前記双眼鏡の焦点調節のためのダイヤルリングから所定の間隔をおいて前記防振スイッチが配設されていることを特徴とする請求項2に記載の像振れ補正機能を備えた光学機器。
【請求項4】 前記防振スイッチが、前記ダイヤルリングを操作しながら触れることができる位置に配設されることを特徴とする請求項3に記載の像振れ補正機能を備えた光学機器。
【請求項5】 前記防振スイッチが前記ダイヤルリングの中心軸の近傍に位置決めされていることを特徴とする請求項4に記載の像振れ補正機能を備えた光学機器。
【請求項6】 前記防振スイッチがパネルスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の像振れ補正機能を備えた光学機器。
【請求項7】 前記直動型アクチュエータの電源オフ時、前記直動型アクチュエータにより前記補正光学系の位置が固定されることを特徴とする請求項1に記載の像振れ補正機能を備えた光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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