説明

像振れ補正装置、撮像レンズユニット、及びカメラユニット

【課題】像振れ補正装置において、構造の簡素化、小型化、機能上の信頼性向上を図る。
【解決手段】ベース100、可動保持部材110、可動保持部材をレンズの光軸L2に垂直な平面内で移動自在に支持する支持機構150、可動保持部材がベースから光軸方向に離れるのを規制する規制手段、可動保持部材を駆動する駆動手段120,130、位置検出手段171,172、可動保持部材を休止位置に復帰させる復帰手段161,162を備え、規制手段として、可動保持部材110を光軸に垂直な平面内で移動自在にベースに係合させる係合機構(雌型係合部105、雄型係合部115)を含む。これによれば、構造の簡素化、小型化等を達成しつつ、可動保持部材をベースから離れないように規制しつつ移動自在に支持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラのレンズ鏡筒やシャッタユニット等に搭載される像振れ補正装置、この像振れ補正装置を備えた撮像レンズユニット及びカメラユニットに関し、特に、携帯電話機等の携帯情報端末機に搭載されるカメラユニットに適用される小型で薄型の像振れ補正装置、撮像レンズユニット及びカメラユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の像振れ補正装置としては、中央に開口部を有する略矩形状のベースと、ベースの前面に設けられた第1案内軸と、第1案内軸に沿って往復動自在に支持された第1可動部材と、第1案内軸と90度の方向に方向付けられて第1可動部材の前面に設けられた第2案内軸と、第2案内軸に沿って往復動自在に支持されかつレンズを保持する第2可動部材と、第1可動部材及び第2可動部材を一緒に第1案内軸の方向に往復動させる第1駆動装置と、第2可動部材を第2案内軸の方向に往復動させる第2駆動装置を備え、第1駆動装置及び第2駆動装置として、コイル及び磁石を含むボイスコイルモータを採用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この装置においては、第1可動部材と第2可動部材が光軸方向に配列された二段構成となっているため、光軸方向において装置の大型化を招く。
また、第2駆動装置は第2可動部材だけを駆動するものの、第1駆動装置は第1可動部材だけでなく第2可動部材及び第2案内軸も一緒に駆動する必要があるため、第1可動部材だけを駆動する場合に比べてより大きな駆動力を発生しなければならず、第1駆動装置の大型化を招く。さらに、第1駆動装置の駆動負荷と第2駆動装置の駆動負荷が異なるため、レンズを光軸に垂直な平面内で位置決めするための駆動制御が容易ではない。
【0003】
また、他の像振れ補正装置としては、開口部を有する略矩形状のベースと、ベースの前面四隅に植設されて光軸方向に伸長する4本の弾性支持部材(ワイヤ)と、4本の弾性支持部材の先端が連結されてレンズを保持する可動部材と、可動部材に設けられた第1磁石及び第1ヨークと、可動部材に設けられた第2磁石及び第2ヨークと、ベースとは異なる他の部材に固定されて可動部材の前方に配置され第1コイル及び第2コイルを保持する略矩形状の固定枠とを備え、第1磁石及び第1ヨーク並びに第1コイルにより第1駆動手段を構成し、第2磁石及び第2ヨーク並びに第2コイルにより第2駆動手段を構成し、第1駆動手段により可動部材を光軸に垂直な第1方向に駆動し、第2駆動手段により可動部材を光軸及び第1方向に垂直な第2方向に駆動するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この装置においては、可動部材が、光軸方向に伸長する4本の弾性支持部材(ワイヤ)を用いてベースに支持され、さらに可動部材の前方において他の部材によりコイルを保持する固定枠が支持されているため、光軸方向において装置の大型化を招くと共に、4本の弾性支持部材の連結部がリンク状ではなくリジッドに連結されているため、可動部材(レンズ)が光軸に垂直な平面方向に移動させられるだけでなく光軸に対して傾斜する虞がある。
また、ベースと可動部材は連結されていても、コイルを保持する固定枠は一体的に連結されていないため、像振れ補正装置としてモジュール化することができず、取り扱いが不便であると共に、一つの部材(例えばベース)を基準として、可動部材の第1磁石及び第2磁石と固定枠の第1コイル及び第2コイルをそれぞれ位置合わせすることができず、装置の組付け作業が面倒である。さらに、第1駆動手段(の第1磁石及び第1ヨーク)と第2駆動手段(の第2磁石及び第2ヨーク)が、レンズに対して可動部材の片側にのみ配置されているため、第1駆動手段及び第2駆動手段は、レンズに対して対称的にではなく可動部材の一方側にのみ駆動力を及ぼすことになり、可動部材の傾斜すなわちレンズの傾斜を助長する傾向にある。
【0004】
また、他の像振れ補正装置としては、ベースと、レンズを保持した可動部材と、可動部材をベースに対して移動自在に支持する支持機構として3つのボールと、可動部材がベースから光軸方向に離脱する(浮き上がる)のを規制する規制手段として付勢力を及ぼすコイルスプリングと、可動部材を光軸に垂直な方向に駆動する駆動手段(駆動用磁石、コイル、ヨーク)と、可動部材の位置を検出するための位置検出手段(磁石、ホール素子)を備えたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
この装置においては、可動部材とベースの間に3つの転動するボールを介在させているため、光軸方向において装置を薄型化することはできるものの、可動部材が3つのボールに接触して常時支持されるように規制するべくコイルスプリングにより付勢力を及ぼしており、コイルスプリングの付勢力は可動部材を駆動する際に抵抗力すなわち駆動負荷として作用するため、駆動手段としては、コイルスプリングの付勢力に対抗し得るだけの駆動力を発生させる必要がある。
【0005】
さらに、他の像振れ補正装置としては、ベースと、レンズを保持する可動部材と、可動部材を光軸に垂直な二方向に駆動する第1駆動手段(磁石、コイル、ヨーク)及び第2駆動手段(磁石、コイル、ヨーク)と、コイルに通電しない非通電状態(休止状態)において、可動部材を中心位置に復帰させる(センタリングする)ための2つのアシストバネ等を備えたものが知られている(例えば、特許文献4参照)。
この装置においては、可動部材を中心位置に復帰させる復帰手段として、アシストバネを採用しているため、アシストバネの配設スペースが必要になり、装置の大径化、大型化等を招く。
【0006】
【特許文献1】特開2007−286318号公報
【特許文献2】特開2008−64846号公報
【特許文献3】特許第3969927号公報
【特許文献4】特許第3869926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、レンズの光軸方向及び光軸方向に垂直な方向における装置の小型化及び薄型化、機能上の信頼性向上等を図りつつ、携帯電話機等のカメラユニットに搭載することができ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができ、又、休止状態において補正用のレンズを所定の休止位置に自動的に復帰させる(センタリングする)ことが可能な像振れ補正装置、この像振れ補正装置を備えた撮像レンズユニット及びカメラユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の像振れ補正装置は、開口部を有するベースと、レンズを保持する可動保持部材と、可動保持部材をレンズの光軸に垂直な平面内で移動自在に支持する支持機構と、可動保持部材がベースから光軸方向に離れるのを規制する規制手段と、可動保持部材を上記平面内で駆動する駆動手段と、可動保持部材の位置を検出する位置検出手段と、休止状態において可動保持部材を所定の休止位置に復帰させる復帰手段とを備えた像振れ補正装置であって、上記規制手段は、可動保持部材を上記平面内で移動自在にベースに係合させる係合機構を含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、可動保持部材は、規制手段によりベースに対して光軸方向に離れる(浮き上がる)のを規制されつつ、支持機構より光軸に垂直な平面内で移動自在に支持されており、駆動手段によりベースに対して上記平面内で二次元的に移動させられ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができる。また、復帰手段により、休止状態においては所定の休止位置に復帰させられるようになっている。
ここで、規制手段が、可動保持部材を平面内で移動自在にベースに係合させる係合機構により形成されている、すなわち、付勢バネ等によるのではなく係合関係により可動保持部材がベースから離れるのを規制されている。したがって、従来のようにバネの付勢力等が駆動負荷(抵抗力)として作用しないため可動保持部材を高精度にかつ円滑に駆動することができると共に、可動保持部材をベースに対して移動自在に支持しつつベースから光軸方向に離脱するのを確実に防止でき、機能上の信頼性を向上させることができ、球体が外れることも防止できる。
【0009】
上記構成において、係合機構は、ベース及び可動保持部材の一方に設けられた少なくとも3つの雌型係合部と、ベース及び可動保持部材の他方に設けられ可動保持部材をベースに対して相対的に光軸回りに回転させて雌型係合部に係合されるべく光軸方向に伸長しかつ上記平面に平行な方向に屈曲する略L字形状をなす少なくとも3つの雄型係合部とを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、略L字形状をなす雄型係合部を光軸方向から雌型係合部に近付け、所定角度光軸回りに回転させると、雄型係合部が雌型係合部に係合して、可動保持部材がベースから光軸方向に離れるのが規制される。
このように、係合機構が簡単な雄型係合部及び雌型係合部により構成されるため、部品点数を削減しつつ、構造の簡素化、組立の容易化等を達成することができる。
【0010】
上記構成において、規制手段は、雄型係合部が雌型係合部から外れるのを規制する規制部材を含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、雄型係合部が雌型係合部に係合された状態で、外部から衝撃や振動等を受けても、規制部材の規制作用により、雄型係合部が雌型係合部から外れるのを防止することができる。
【0011】
上記構成において、駆動手段は、ベース及び可動保持部材の一方に固定されたコイルと、コイルに対向する位置においてベース及び可動保持部材の他方に固定された駆動磁石と、ベース又は可動保持部材に固定されたヨークを含み、ヨークは規制部材を兼ねる、構成を採用することができる。
この構成によれば、駆動手段に含まれるヨークを規制部材として兼用するため、部品点数の削減による構造の簡素化を達成しつつ、駆動磁石及びコイルにより生じる電磁駆動力の磁気効率を高めると共に可動保持部材とベースとの係合状態を維持することができる。
【0012】
上記構成において、駆動手段は、ベース及び可動保持部材の一方に固定された第1コイル,ベース及び可動保持部材の他方に固定されて第1コイルに対向する第1駆動磁石を含み,上記平面内の第1方向に駆動力を及ぼす第1駆動機構と、ベース及び可動保持部材の一方に固定された第2コイル,ベース及び可動保持部材の他方に固定されて第2コイルに対向する第2駆動磁石を含み,上記平面内の第2方向に駆動力を及ぼす第2駆動機構を含み、復帰手段は、休止位置に復帰させる磁力を発生するべくベース及び可動保持部材の一方に共に固定されて、第1駆動磁石と対向する第1復帰磁石と、第2駆動磁石と対向する第2復帰磁石を含み、位置検出手段は、ベース及び可動保持部材の一方に共に固定されて、第1駆動磁石と対向する第1磁気センサと、第2駆動磁石と対向する第2磁気センサを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、第1駆動機構(第1駆動磁石、第1コイル)と第2駆動機構(第2駆動磁石、第2コイル)により可動保持部材を光軸に垂直な平面内で移動させることができ、又、第1復帰磁石と第1駆動磁石との磁気的吸引作用及び第2復帰磁石と第2駆動磁石との磁気的吸引作用により、可動保持部材(レンズ)は所定の休止位置(例えば、ベースの開口部の中心にレンズの光軸が一致する位置)に自動的に復帰(例えば、センタリング)させられて安定して保持される。したがって、駆動時にイニシャライズ等の駆動制御が不要であり、又、休止状態において可動保持部材のガタツキ等を防止することができる。このように、駆動手段の駆動磁石を、復帰磁石と磁気的に相互作用させる磁石として兼用するため、構造の簡素化、装置の小型化等を達成することができる。
【0013】
また、本発明の撮像レンズユニットは、撮像用の複数のレンズを含む撮像レンズユニットにおいて、上記構成をなす像振れ補正装置のいずれか一つを含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、撮像用の複数のレンズが光軸方向に配置された構成において、上記の像振れ補正装置を含むことで、可動保持部材に保持される補正用のレンズが適宜駆動されて、手振れ等による像振れを円滑にかつ高精度に補正することができる。
すなわち、撮像用の複数のレンズに加えて、上記の像振れ補正機能を追加した撮像レンズユニットを提供することができる。
【0014】
さらに、本発明のカメラユニットは、撮像素子を含むカメラユニットにおいて、上記構成をなす像振れ補正装置のいずれか一つを含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、撮像素子を含むカメラユニットにおいて、上記の像振れ補正装置を含むことで、可動保持部材に保持される補正用のレンズが適宜駆動されて、手振れ等による像振れを円滑にかつ高精度に補正することができ、撮像素子により良好が撮影画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
上記構成をなす像振れ補正装置によれば、構造の簡素化、レンズの光軸方向及び光軸方向に垂直な方向における装置の小型化及び薄型化、機能上の信頼性向上等を達成しつつ、携帯電話機等のカメラユニットに搭載することができ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができ、又、休止状態において補正用のレンズを所定の休止位置に自動的に復帰させる(センタリングする)ことが可能な像振れ補正装置を得ることができ、又、この像振れ補正装置を備えた撮像レンズユニット及びカメラユニットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図18は、本発明に係る像振れ補正装置の一実施形態を示すものであり、図1は像振れ補正装置が組み込まれたカメラユニットを搭載した携帯情報端末機を示す斜視図、図2はカメラユニットを示す斜視図、図3はカメラユニットの内部を示す断面図、図4は制御システムを示すブロック図、図5はカメラユニットの断面図、図6は像振れ補正装置の斜視図、図7は像振れ補正装置の分解斜視図、図8は像振れ補正装置の断面図、図9及び図10は像振れ補正装置の一部(可動保持部材等)を示す斜視図、図11及び図12は像振れ補正装置の一部(ベース等)を示す斜視図及び背面図、図13は像振れ補正装置を示す背面図、図14は像振れ補正装置の一部(駆動手段に含まれるヨーク)を示す斜視図、図15は像振れ補正装置を示す背面図、図16は可動保持部材をベースに係合機構により係合させて組み付ける手順を示す斜視図、図17(a),(b),(c)及び図18(a),(b),(c)は像振れ補正装置の動作を説明する平面図である。
【0017】
この像振れ補正装置を組み込んだカメラユニットUは、図1に示すように、扁平で小型の携帯情報端末機PHに搭載されている。携帯情報端末機PHは、略矩形で扁平な輪郭をなす筐体PH1、筐体PH1の表面に配置された種々の情報を表示する液晶パネル等の表示部PH2及び操作ボタンPH3、表示部PH2の反対側の表面に形成された撮影窓PH4等を備えている。そして、カメラユニットUは、図1に示すように、撮影窓PH4から進入する被写体光の光軸L1に対して垂直な方向に延在するように筐体PH1の内部に収容されている。
【0018】
カメラユニットUは、図2及び図3に示すように、ユニットケース10、プリズム20、レンズG1、レンズG2を保持する第1可動レンズ群30、レンズG3,G4,G5を保持する第2可動レンズ群としての像振れ補正装置M、レンズG6、フィルタ40、撮像素子としてのCCD50、第1可動レンズ群30を光軸L2方向に駆動する第1駆動ユニット60、第2可動レンズ群(像振れ補正装置M)を光軸L2方向に駆動する第2駆動ユニット70、角速度センサ80、制御ユニット90等を備えている。
【0019】
ユニットケース10は、図2及び図3に示すように、光軸L1方向の厚さ寸法が薄く、又、光軸L2方向の長さ寸法が短くなるように、扁平で略矩形をなす形状に形成されており、プリズム20を固定する突出部11、レンズG1を保持する保持部12、レンズG6を保持する保持部13、フィルタ40を保持する保持部14、CCD50を保持する保持部15等を備えている。
プリズム20は、図2及び図3に示すように、ユニットケース10の突出部11に収容されて、撮影窓PH4から進入する被写体光の光軸L1を直角に屈曲させて光軸L2方向に導くようになっている。
レンズG1は、図2及び図3に示すように、光軸L1,L2方向においてプリズム20の後方に配置され、ユニットケース10の保持部12に固定されている。
【0020】
第1可動レンズ群30は、図2及び図3に示すように、光軸L2方向においてレンズG1の後方に配置され、光軸L2方向に移動自在に支持されており、第1駆動ユニット60により光軸L2方向に往復駆動されるようになっている。
すなわち、第1可動レンズ群30は、レンズ保持部材31、ガイドシャフト61にガイドされる被ガイド部32、回り止めシャフト62に摺動自在に係合されて光軸L2回りの回転が規制される被規制部33、リードスクリュー63に螺合されたナット65が当接するU字状係合部34等を備えている。
【0021】
レンズG6は、図3に示すように、光軸L2方向において第2可動レンズ群(像振れ補正装置M)の後方に配置され、ユニットケース10の保持部13に固定されている。
フィルタ40は、赤外線カットフィルタあるいはローパスフィルタ等であり、図3に示すように、光軸L2方向においてレンズG6の後方に配置され、ユニットケース10の保持部14に固定されている。
CCD50は、図3に示すように、光軸L2方向においてフィルタ40の後方に配置されて、ユニットケース10の保持部15に固定されている。
【0022】
第1駆動ユニット60は、図2及び図3に示すように、光軸L2方向に伸長してユニットケース10に固定されたガイドシャフト61及び回り止めシャフト62、光軸L2方向に伸長するリードスクリュー63、リードスクリュー63を回転駆動するモータ64、リードスクリュー63に螺合すると共に第1可動レンズ群30のU字状係合部34に当接するナット65、U字状係合部34をナット65に向けて常時付勢する付勢力を及ぼすべくレンズ保持部材31と後述するベース100との間に掛止される引張り型のコイルスプリング66等を備えている。
【0023】
第2駆動ユニット70は、図2に示すように、光軸L2方向に伸長してユニットケース10に固定されたガイドシャフト71及び回り止めシャフト(ここでは、回り止めシャフト62を兼用)、光軸L2方向に伸長するリードスクリュー73、リードスクリュー73を回転駆動するモータ74、リードスクリュー73に螺合すると共に第2可動レンズ群に含まれるベース100のU字状係合部103に当接するナット75、U字状係合部103をナット75に向けて常時付勢する付勢力を及ぼすコイルスプリング(ここでは、コイルスプリング66を兼用)等を備えている。
【0024】
角速度センサ80は、図3に示すように、ユニットケース10に基板を介して固定されており、カメラユニットUが受ける振動や振れを検出するようになっている。
制御ユニット90は、図3に示すように、ユニットケース10の外壁に固定されたマイクロコンピュータであり、図4に示すように、演算処理を行うと共に種々の信号を処理して指令信号を発する制御部91、第1駆動ユニット60のモータ64を駆動するモータ駆動回路92、第2駆動ユニット70のモータ74を駆動するモータ駆動回路93、CCD50を駆動するCCD駆動回路94、像振れ補正装置Mに含まれる第1コイル121及び第2コイル131を駆動する駆動回路95、像振れ補正装置Mに含まれる可動保持部材110の位置を検出する第1磁気センサ171及び第2磁気センサ172に接続される位置検出回路96、角速度センサ80に接続される角速度検出回路97等を備えている。
【0025】
第2可動レンズ群としての像振れ補正装置Mは、図2、図3、図5に示すように、光軸L2方向において第1可動レンズ群30とレンズG6の間に配置され、光軸L2方向に移動自在に支持されている。
そして、像振れ補正装置Mは、図2、図6ないし図8に示すように、ベース100、可動保持部材110、駆動手段としての(第1コイル121,第1駆動磁石122を含む)第1駆動機構120、駆動手段としての(第2コイル131,第2駆動磁石132を含む)第2駆動機構130、駆動手段に含まれるヨーク141,142、可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内で移動自在に支持する支持機構としての3つの球体150、可動保持部材110がベース100から光軸L2方向に離れるのを規制する規制手段としての係合機構(可動保持部材110の3つの雄型係合部115、ベース100の3つの雌型係合部105)、復帰手段としての第1復帰磁石161及び第2復帰磁石162、位置検出手段としての第1磁気センサ171及び第2磁気センサ172、電気的な接続を行うフレキシブル配線板180等を備えている。
【0026】
ベース100は、図6ないし図8、図11、図12に示すように、光軸L2方向に略扁平で、光軸L2に直交し光軸L1に平行な直線S1(図12参照)の方向に幅狭で、光軸L2及び直線S1に直交する直線S2(図12参照)の方向に長尺な略矩形の平板状に形成されており、光軸L2を中心とする開口部100a、第1コイル121を嵌合して固定する嵌合凹部100b、第1磁気センサ171を嵌合して固定する嵌合凹部100c、第1復帰磁石161を嵌合して固定する嵌合凹部100d、第2コイル131を嵌合して固定する嵌合凹部100e、第2磁気センサ172を嵌合して固定する嵌合凹部100f、第2復帰磁石162を嵌合して固定する嵌合凹部100g、ガイドシャフト71に摺動自在に係合されてガイドされる被ガイド部101、回り止めシャフト62に摺動自在に係合されて光軸L2回りの回転が規制される被規制部102、リードスクリュー73に螺合されたナット75が当接するU字状係合部103、支持機構としての球体150を受け入れる3つの凹部104、係合機構(規制手段)としての3つの雌型係合部105、ヨーク141を固定するためのネジ穴106及び2つの位置決めピン107等を備えている。
【0027】
開口部100aは、図12に示すように、直線S1と直線S2との交点において中心C1を画定すると共に直線S1の方向において平行な内壁面を画定するように直線S1方向において幅狭に形成され、又、可動保持部材110が駆動される範囲内において、可動保持部材110の保持部110aが非接触にて通過し得る内径寸法に形成されている。
嵌合凹部100b,100c,100dと嵌合凹部100e,100f,100gとは、図12に示すように、直線S1に対して線対称となるように形成されている。すなわち、第1コイル121,第1復帰磁石161,及び第1磁気センサ171と第2コイル131,第2復帰磁石162,及び第2磁気センサ172は、ベース100上において、直線S1に対して線対称に配置される。
【0028】
3つの凹部104は、球体150を光軸L2方向に部分的に突出させた状態で転動自在に受け入れるように形成されている。そして、3つの凹部104の配置構成は、1つの凹部104が直線S1上でかつ開口部100aの近傍に配置され、他の2つの凹部104が直線S1に対して線対称の位置に配置されている。すなわち、3つの凹部104は、二等辺三角形の3つの頂点に位置するように配置されている。
雌型係合部105は、可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内で移動自在にベース100に係合させる係合機構の一部をなすものであり、可動保持部材110の雄型係合部115を係合させるように突起状に又は縁部を画定する壁状に形成されている。
ネジ穴106は、ヨーク141をベース100に固定する際のネジBを捩じ込むものであり、位置決めピン107は、ヨーク141をベース100に固定する際に、ヨーク141の位置決めを行うものである。
【0029】
可動保持部材110は、図6ないし図10、図13に示すように、光軸L2方向に一部を除いて略扁平で、直線S1の方向に幅狭でかつ直線S2の方向に長尺な略矩形の平板状に形成されており、光軸L2を中心としレンズG3,G4,G5を保持する筒状の保持部110a、保持部110aを挟んで直線S2方向の両側に延出する2つの延出部111、第1駆動磁石122を嵌合して固定する嵌合孔112、第2駆動磁石132を嵌合して固定する嵌合孔113、支持機構としての3つの球体150に当接する3つの当接面114、3つの雌型係合部105にそれぞれ係合される係合機構(規制手段)の一部をなす3つの雄型係合部115、雄型係合部115から光軸L2方向に突出する3つの突出部116、ヨーク142を位置決めする2つの位置決め突起117等を備えている。
【0030】
保持部110aは、その内部において、直線S1の方向において平行なカット面をもつレンズG3,G4,G5を保持するように、直線S1の方向において扁平な筒状に形成されている。
3つの当接面114は、レンズG3,G4,G5の光軸L2がベース100の開口部100aの中心C1と一致する状態で、図10に示すように、光軸L2方向において3つの(凹部104に配置された)球体150と対向するように配置され、可動保持部材110が光軸L2に垂直な平面(直線S1,S2を含む平面)内において二次元的に移動する範囲において、ベース100の対応する凹部104に挿入された球体150に接触した状態から逸脱しないように、所定の面積をなす平面状に形成されている。
雄型係合部115は、可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内で移動自在にベース100に係合させる係合機構の一部をなすものであり、可動保持部材110をベース100に対して光軸L2回りに相対的に回転させて、ベース100の雌型係合部105に係合されるべく、光軸L2方向に伸長しかつ光軸L2に垂直な平面に平行な方向に屈曲する略L字形状をなすように形成されている。
また、3つの雄型係合部115は、それらの屈曲した先端部が、光軸L2回りにおいて同一方向に(図10において時計回りに向くように)形成されている。
【0031】
すなわち、規制手段としての係合機構は、ベース100に設けられた3つの雌型係合部105と、可動保持部材110に設けられた3つの雄型係合部115により構成されている。そして、3つの雄型係合部115が、3つの雌型係合部105に対して、光軸L2方向から近付けられ、可動保持部材110がベース100に対して所定角度光軸L2回りに回転させられると、3つの雄型係合部115が3つの雌型係合部105にそれぞれ係合して、可動保持部材110は光軸L2に垂直な平面内でベース100に移動自在に支持されると共に、ベース100から光軸L2方向に離れるのを規制された状態となる。このように、係合機構が簡単な雄型係合部115及び雌型係合部105により構成されるため、部品点数の削減しつつ、構造の簡素化、組立の容易化等を達成することができる。
【0032】
第1駆動機構120は、図7、図8、図13に示すように、第1コイル121、第1駆動磁石122を含むボイスコイルモータとして形成されている。
第1コイル121は、図12及び図13に示すように、光軸L2方向から視て、直線S3の方向に長軸及び直線S4´の方向に短軸をもつ略楕円環状をなすように形成されて、ベース100の嵌合凹部100bに嵌合されて固定されている。
そして、第1コイル121は、その長軸が直線S2に対して45度の傾斜角度をなす(その長軸が直線S3と平行になる)ように配置されている。
第1駆動磁石122は、図9、図10、図13に示すように、直線S3を通る面を境にN極とS極とに着磁された矩形形状に形成されて、可動保持部材110の嵌合孔112に嵌合されて固定されている。
そして、第1駆動機構120は、第1コイル121に対する通電をオン/オフすることにより、光軸L2に垂直な第1方向すなわち直線S4´の方向に電磁駆動力を発生するようになっている。
【0033】
第2駆動機構130は、図7、図8、図13に示すように、第2コイル131、第2駆動磁石132を含むボイスコイルモータとして形成されている。
第2コイル131は、図12及び図13に示すように、光軸L2方向から視て、直線S4の方向に長軸及び直線S3´の方向に短軸をもつ略楕円環状をなすように形成されて、ベース100の嵌合凹部100eに嵌合されて固定されている。
そして、第2コイル131は、その長軸が直線S2に対して45度の傾斜角度をなす(その長軸が直線S4と平行になる)ように配置されている。
第2駆動磁石132は、図9、図10、図13に示すように、直線S4を通る面を境にN極とS極とに着磁された矩形形状に形成されて、可動保持部材110の嵌合孔113に嵌合されて固定されている。
そして、第2駆動機構130は、第2コイル131に対する通電をオン/オフすることにより、光軸L2に垂直な第2方向すなわち直線S3´の方向に電磁駆動力を発生するようになっている。
【0034】
上記第1駆動機構120と第2駆動機構130とは、図13に示すように、可動保持部材110に保持されたレンズG3,G4,G5の光軸L2と直交する直線S1に対して線対称に配置されているため、各々が受ける駆動負荷は同一であり、レンズG3,G4,G5を挟んで両側に駆動力を及ぼすため、可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内において安定して円滑に駆動することができる。
また、第1コイル121及び第2コイル131は、各々の長軸が直線S2に対して所定の傾斜角度(略45度)をなすように配置されているため、可動保持部材110を直線S2の方向に長尺な形状とした場合に、第1コイル121及び第2コイル131を傾斜させることで、直線S1の方向において可動保持部材110の寸法を小さくすることができ、光軸L2に垂直な方向(直線S1の方向)における装置の小型化及び薄型化等を達成できる。
【0035】
ヨーク141は、図7、図14、図15に示すように、略矩形の板状に形成されると共に、開口部100aと略同一形状をなす開口部141a、屈曲部141b、ネジ孔141c、2つの位置決め孔141d、可動保持部材110の突出部116が所定範囲を越えて移動するのを規制する3つの規制片141e等を備えるように形成されている。
すなわち、ヨーク141は、磁力線を通す磁路として機能する他に、雄型係合部115が雌型係合部105に係合された状態で、外部から衝撃や振動等を受けても、その規制片141eが突出部116の移動を規制して、雄型係合部115が雌型係合部105から外れるのを規制する規制部材として機能するものである。
また、ヨーク141は、図7及び図8に示すように、フレキシブル配線板180を挟み込んで屈曲させて固定するべく、フレキシブル配線板180の背面に隣接して配置され、ネジBを用いてベース100に着脱自在に固定されるようになっている。
ヨーク142は、図6ないし図8に示すように、略矩形の板状に形成されると共に、保持部110aを受け入れる円形の開口部142a、位置決め突起117を嵌合させる2つの嵌合孔142bを備えるように形成されている。
そして、ヨーク142は、接着剤等を用いて、位置決め突起117を嵌合孔142bに嵌合させつつ可動保持部材110(及び第1駆動磁石122,第2駆動磁石132)の前面に固着されている。
このように、駆動手段の一部に含まれるヨーク141,142を設けることにより、第1駆動機構120及び第2駆動機構130により生じる磁力線が外部に漏れ出るのを抑制することができ、磁気効率を高めることができる。
また、ヨーク141を規制部材として兼用するため、磁気効率を高めると共に、部品点数の削減による構造の簡素化を達成することができる。
【0036】
第1復帰磁石161は、図8、図12及び図13に示すように、光軸L2方向から視て略長方形に形成され、直線S3を通る面を境にS極とN極とに着磁されると共に、直線S3の方向において第1磁気センサ171を挟むように、ベース100の2つの嵌合凹部100dに嵌合されて固定されている。
すなわち、2つの第1復帰磁石161は、第1コイル121の長軸と略平行になるように、直線S2に対して45度の傾斜角度をなし、直線S3上に配列されている。
そして、第1復帰磁石161は、第1駆動磁石122と対向して磁路を形成して磁気的作用を及ぼし、第1コイル121に非通電の休止状態で、可動保持部材110を所定の休止位置(ここでは、レンズG3,G4,G5の光軸L2がベース100の開口部100aの中心C1に一致する位置)に復帰させると共に安定した保持力を発生するようになっている。
【0037】
第2復帰磁石162は、図8、図12及び図13に示すように、光軸L2方向から視て略長方形に形成され、直線S4を通る面を境にS極とN極とに着磁されると共に、直線S4の方向において第2磁気センサ172を挟むように、ベース100の2つの嵌合凹部100gに嵌合されて固定されている。
すなわち、2つの第2復帰磁石162は、第2コイル131の長軸と略平行になるように、直線S2に対して45度の傾斜角度をなし、直線S4上に配列されている。
そして、第2復帰磁石162は、第2駆動磁石132と対向して磁路を形成して磁気的作用を及ぼし、第2コイル131に非通電の休止状態で、可動保持部材110を所定の休止位置(ここでは、レンズG3,G4,G5の光軸L2がベース100の開口部100aの中心C1に一致する位置)に復帰させると共に安定した保持力を発生するようになっている。
【0038】
このように、休止状態においては、復帰手段の第1復帰磁石161及び第2復帰磁石162と駆動手段の第1駆動磁石122及び第2駆動磁石132との間の磁気的吸引作用により、可動保持部材110(レンズG3,G4,G5)は、所定の休止位置(ベース100の開口部100aの中心C1にレンズG3,G4,G5の光軸L2が一致する位置)に自動的に復帰(センタリング)させられて安定して保持される。したがって、駆動時にイニシャライズ等の駆動制御が不要であり、又、休止状態において可動保持部材110のガタツキ等を防止することができる。また、駆動手段の第1駆動磁石122及び第2駆動磁石132を、復帰手段の第1復帰磁石161及び第2復帰磁石162と相互作用させるために兼用するため、構造の簡素化、装置の小型化等を達成することができる。
また、2つの第1復帰磁石161の配列方向と第1コイル121の長軸とが略平行になるように配置され、かつ、2つの第2復帰磁石162の配列方向と第2コイル131の長軸とが略平行になるように配置されているため、駆動時(第1コイル121及び第2コイル131への通電時)において、復帰磁石161,162の磁力と駆動磁石122,132の磁力の相互作用により可動保持部材110が光軸L2回りに回転するのを抑制する力が働き、又、復帰磁石161,162がそれぞれ着磁境界線の方向に配列されているため可動保持部材110の回転を抑制する大きなモーメントが得られ、可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内で素早く移動させて所望の位置に高精度に位置決めすることができる。
【0039】
第1磁気センサ171及び第2磁気センサ172は、例えば磁束密度の変化を検出して電気信号として出力するホール素子等であり、図8、図12、図13に示すように、ベース100の嵌合凹部100c,100f(図12参照)にそれぞれ嵌合されて固定されている。ここで、可動保持部材110の移動範囲において、第1磁気センサ171は第1駆動磁石122と対向する位置に配置され、又、第2磁気センサ172は第2駆動磁石132と対向する位置に配置されている。
【0040】
そして、第1磁気センサ171は、可動保持部材110に固定された第1駆動磁石122との間で磁気回路を形成し、可動保持部材110がベース100に対して相対的に移動することによって生じる磁束密度の変化を検出することで、可動保持部材110の位置を検出するようになっている。
また、第2磁気センサ172は、可動保持部材110に固定された第2駆動磁石132との間で磁気回路を形成し、可動保持部材110がベース100に対して相対的に移動することによって生じる磁束密度の変化を検出することで、可動保持部材110の位置を検出するようになっている。
【0041】
このように、第1磁気センサ171及び第2磁気センサ172は、ベース100に固定されているため、可動保持部材110に設ける場合に比べて配線が容易であり、移動に伴う断線等も防止することができ、又、第1駆動磁石122及び第2駆動磁石132を位置検出のために兼用しているため、専用の磁石を設ける場合に比べて、構造を簡素化、部品点数の削減、装置の小型化等を達成することができる。
【0042】
フレキシブル配線板180は、図7に示すように、第1駆動機構120の第1コイル121に接続される接続部181、第2駆動機構130の第2コイル131に接続される接続部182、第1磁気センサ171に接続される接続部183、第2磁気センサ172に接続される接続部184を含むように形成されている。
そして、フレキシブル配線板180は、図7及び図8に示すように、ベース100の背面に接するように配置されて、第1コイル121の引出し線が接続部181に接続され、第2コイル131の引出し線が接続部182に接続され、第1磁気センサ171の端子が接続部183に接続され、第2磁気センサ172の端子が接続部184に接続されて、ヨーク141により、接続部181,182の領域が屈曲させられつつ挟み込まれて固定されるようになっている。
【0043】
このように、フレキシブル配線板180は、光軸L2に垂直な平面方向に移動しないベース100に対して、可動保持部材110が対向する側と反対側に隣接して配置され固定されているため、光軸L2に垂直な平面方向に移動させる必要がなく、可動保持部材110が移動する平面方向にフレキシブル配線板180を撓ませて配置する必要がない。
したがって、フレキシブル配線板180の配置スペースを狭くでき、それ故に、装置を小型化でき、耐久性を向上させることができる。
【0044】
次に、ベース100、可動保持部材110、ヨーク141の組付けについて、図16を参照しつつ説明すると、球体150が凹部104に挿入され、当接面114が球体150に当接するように、又、雄型係合部115が雌型係合部105に光軸L2方向から近付けられ、可動保持部材110が光軸L2回りに所定角度回転させられると、雄型係合部115が雌型係合部105に係合する。そして、可動保持部材110はベース100に対向して配置され、ベース100から光軸L2方向に離れることなく、光軸L2に垂直な平面内で移動自在に支持された状態となる。
尚、この状態で、ベース100に固定された第1復帰磁石161と可動保持部材110に固定された第1駆動磁石122が磁気的に吸引し、又、ベース100に固定された第2復帰磁石162と可動保持部材110に固定された第2駆動磁石132が磁気的に吸引するため、可動保持部材110は、磁気的吸引力によっても、ベース100から離れないように規制されている。
このように、規制手段として可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内で移動自在にベース100に係合させる係合機構(雄型係合部115、雌型係合部105)を採用したことにより、部品点数の削減、構造の簡素化、組立の容易化等を達成でき、又、従来のようにバネの付勢力等が駆動負荷(抵抗力)として作用しないため可動保持部材110を高精度にかつ円滑に駆動することができると共に、可動保持部材110をベース100に対して移動自在に支持しつつベース100から光軸L2方向に離脱するのを確実に防止でき、機能上の信頼性を向上させることができる。
【0045】
次に、上記像振れ補正装置Mの補正動作について、図17及び図18を参照しつつ簡単に説明する。
先ず、第1コイル121及び第2コイル131に通電しない休止状態において、可動保持部材110は、図17(a)に示すように、復帰手段(第1復帰磁石161及び第2復帰磁石162)の復帰作用により、そのレンズG3,G4,G5の光軸L2がベース100の開口部100aの中心C1と一致する休止位置に復帰(センタリング)されて保持されている。
そして、図17(a)に示す休止状態から、一例として可動保持部材110(レンズG3,G4,G5)を上方にシフトさせる場合は、第1駆動機構120に第1方向(直線S4´の方向)の斜め上向きに駆動力を発生させ、又、第2駆動機構130に第2方向(直線S3´の方向)の斜め上向きに駆動力を発生させる。これにより、可動保持部材110は、図17(b)に示すように、直線S1の方向の上向きに移動させられる。
また、図17(a)に示す休止状態から、一例として可動保持部材110(レンズG3,G4,G5)を下方にシフトさせる場合は、第1駆動機構120に第1方向(直線S4´の方向)の斜め下向きに駆動力を発生させ、又、第2駆動機構130に第2方向(直線S3´の方向)の斜め下向きに駆動力を発生させる。これにより、可動保持部材110は、図17(c)に示すように、直線S1の方向の下向きに移動させられる。
【0046】
続いて、図18(a)に示すように、可動保持部材110が、復帰手段(第1復帰磁石161及び第2復帰磁石162)の復帰作用により、そのレンズG3,G4,G5の光軸L2がベース100の開口部100aの中心C1と一致する休止位置に復帰した休止状態から、一例として可動保持部材110(レンズG3,G4,G5)を左側にシフトさせる場合は、第1駆動機構120に第1方向(直線S4´の方向)の斜め上向きに駆動力を発生させ、又、第2駆動機構130に第2方向(直線S3´の方向)の斜め下向きに駆動力を発生させる。これにより、可動保持部材110は、図18(b)に示すように、直線S2の方向の左向きに移動させられる。
また、図18(a)に示す休止状態から、一例として可動保持部材110(レンズG3,G4,G5)を右側にシフトさせる場合は、第1駆動機構120に第1方向(直線S4´の方向)の斜め下向きに駆動力を発生させ、又、第2駆動機構130に第2方向(直線S3´の方向)の斜め上向きに駆動力を発生させる。これにより、可動保持部材110は、図18(c)に示すように、直線S2の方向の右向きに移動させられる。
【0047】
このように、可動保持部材110は、支持機構(3つの球体150)及び係合機構(3つの雄型係合部115及び3つの雌型係合部105)により移動自在に支持された状態で、第1コイル121及び第2コイル131への通電により第1駆動磁石122及び第2駆動磁石132と協働して生じる電磁駆動力により、ベース100に対して光軸L2に垂直な平面内で二次元的に移動させられ、手振れ等による像振れを高精度に補正することができる。
ここで、第1コイル121の長軸と2つの第1復帰磁石161の配列方向とが同一方向に伸長するように配列され、又、第2コイル131の長軸と2つの第2復帰磁石162の配列方向とが同一方向に伸長するように配列されているため、駆動時(コイル121,131への通電時)において、可動保持部材110が光軸L2回りに回転する挙動を抑制することができ、可動保持部材110を光軸L2に垂直な平面内で素早く移動させて所望の位置に高精度に位置決めすることができる。
【0048】
上記実施形態においては、規制手段としての係合機構として、ベース100に3つの雌型係合部105及び可動保持部材110に3つの雄型係合部115を設けた場合を示したが、これに限定されるものではなく、逆に、ベースに3つの雄型係合部及び可動保持部材に3つの雌型係合部を設けてもよい。
上記実施形態においては、係合機構として、突起状又は縁部をもつ壁状に形成した雌型係合部105と、略L字形状をなす雄型係合部115を採用した場合を示したが、これらの形態に限定されるものではなく、その他の形態をなす係合機構を採用してもよい。
上記実施形態においては、3つの雌型係合部105と3つの雄型係合部115を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、4つ以上の雌型係合部と4つ以上の雄型係合部を採用してもよい。
上記実施形態においては、規制部材として、ヨーク141を兼用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、専用の規制部材を設けてもよい。
【0049】
上記実施形態においては、第1コイル121及び第2コイル131として略楕円環状のものを示したが、これに限定されるものではなく、直線部を含む長軸及び短軸からなる略矩形環状のコイルとしてもよい。
上記実施形態においては、位置検出手段として、ホール素子からなる第1磁気センサ171及び第2磁気センサ172を示したが、これに限定されるものではなく、その他の磁気センサを採用してもよい。
上記実施形態においては、ベース100にコイル121,131が固定され、可動保持部材110に駆動磁石122,132が固定された構成において、本発明の規制手段(係合機構)を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、逆に、ベースに駆動磁石が固定され、可動保持部材にコイルが固定された構成において、本発明の規制手段(係合機構)を採用してもよい。
【0050】
上記実施形態においては、携帯情報端末機に搭載されるカメラユニットUに適用される像振れ補正装置について示したが、撮像用の複数のレンズを含む撮像レンズユニットにおいて、上記構成をなす像振れ補正装置を含む構成を採用してもよい。
これによれば、撮像用の複数のレンズが光軸方向に配置された構成において、上記の像振れ補正装置を含むことで、可動保持部材110に保持される補正用のレンズG3,G4,G5が適宜駆動されて、手振れ等による像振れを円滑にかつ高精度に補正することができる。すなわち、撮像用の複数のレンズに加えて、上記の像振れ補正機能を追加した撮像レンズユニットを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上述べたように、本発明の像振れ補正装置は、構造の簡素化、レンズの光軸方向及び光軸方向に垂直な方向における装置の小型化及び薄型化、機能上の信頼性向上等を達成しつつ、手振れ等により像振れを高精度に補正することができ又休止状態で自動的に復帰動作を行わせることができるため、小型化及び薄型化が要求される携帯電話機、携帯型音楽プレーヤ等の携帯情報端末機に搭載されるカメラユニットに適用することができるのは勿論のこと、通常のデジタルカメラ、あるいはその他の携帯型の光学機器等においても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の像振れ補正装置が組み込まれたカメラユニットを搭載した携帯情報端末機を示す斜視図である。
【図2】カメラユニットを示す斜視図である。
【図3】カメラユニットの内部を示す断面図である。
【図4】像振れ補正装置の制御システムを示すブロック図である。
【図5】カメラユニットの断面図である。
【図6】像振れ補正装置の斜視図である。
【図7】像振れ補正装置の分解斜視図である。
【図8】像振れ補正装置の断面図である。
【図9】像振れ補正装置の一部(可動保持部材等)を示す斜視図である。
【図10】像振れ補正装置の一部(可動保持部材等)を示す斜視図である。
【図11】像振れ補正装置の一部(ベース等)を示す斜視図である。
【図12】像振れ補正装置の一部(ベース等)を示す背面図である。
【図13】像振れ補正装置の一部(可動保持部材、ベース等)を示す背面図である。
【図14】像振れ補正装置の一部(ヨーク)を示す斜視図である。
【図15】像振れ補正装置を示す背面図である。
【図16】像振れ補正装置の組立を説明する斜視図である。
【図17】(a),(b),(c)は、像振れ補正装置の動作を説明する平面図である。
【図18】(a),(b),(c)は、像振れ補正装置の動作を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0053】
L1,L2 光軸
PH 携帯情報端末機
PH1 筐体
PH2 表示部
PH3 操作ボタン
PH4 撮影窓
U カメラユニット
10 ユニットケース
11 突出部
12,13,14,15 保持部
20 プリズム
G1,G2,G3,G4,G5,G6 レンズ
30 第1可動レンズ群
31 レンズ保持部材
32 被ガイド部
33 被規制部
34 U字状係合部
40 フィルタ
50 CCD
60 第1駆動ユニット
61 ガイドシャフト
62 回り止めシャフト
63 リードスクリュー
64 モータ
65 ナット
66 コイルスプリング
70 第2駆動ユニット
71 ガイドシャフト
73 リードスクリュー
74 モータ
75 ナット
80 角速度センサ
90 制御ユニット
91 制御部
92,93 モータ駆動回路
94 CCD駆動回路
95 駆動回路
96 位置検出回路
97 角速度検出回路
M 像振れ補正装置
B ネジ
S1,S2,S3,S4 直線
S3´ 直線(第2方向)
S4´ 直線(第1方向)
100 ベース
100a 開口部
C1 開口部の中心
100b,100c,100d,100e,100f,100g 嵌合凹部
101 被ガイド部
102 被規制部
103 U字状係合部
104 凹部(支持機構)
105 雌型係合部(係合機構、規制手段)
106 ネジ穴
107 位置決めピン
110 可動保持部材
110a 保持部
111 延出部
112,113 嵌合孔
114 当接面(支持機構)
115 雄型係合部(係合機構、規制手段)
116 突出部
117 位置決め突起
120 第1駆動機構(駆動手段)
121 第1コイル
122 第1駆動磁石
130 第2駆動機構(駆動手段)
131 第2コイル
132 第2駆動磁石
141 ヨーク(規制部材)
141a 開口部
141b 屈曲部
141c ネジ孔
141d 位置決め孔
141e 規制片
142 ヨーク
142a 開口部
142b 嵌合孔
150 球体(支持機構)
161 第1復帰磁石(復帰手段)
162 第2復帰磁石(復帰手段)
171 第1磁気センサ(位置検出手段)
172 第2磁気センサ(位置検出手段)
180 フレキシブル配線板
181,182,183,184 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するベースと、レンズを保持する可動保持部材と、前記可動保持部材をレンズの光軸に垂直な平面内で移動自在に支持する支持機構と、前記可動保持部材が前記ベースから光軸方向に離れるのを規制する規制手段と、前記可動保持部材を前記平面内で駆動する駆動手段と、前記可動保持部材の位置を検出する位置検出手段と、休止状態において前記可動保持部材を所定の休止位置に復帰させる復帰手段と、を備えた像振れ補正装置であって、
前記規制手段は、前記可動保持部材を前記平面内で移動自在に前記ベースに係合させる係合機構を含む、
ことを特徴とする像振れ補正装置。
【請求項2】
前記係合機構は、前記ベース及び可動保持部材の一方に設けられた少なくとも3つの雌型係合部と、前記ベース及び可動保持部材の他方に設けられ,前記可動保持部材を前記ベースに対して相対的に光軸回りに回転させて前記雌型係合部に係合されるべく,光軸方向に伸長しかつ前記平面に平行な方向に屈曲する略L字形状をなす少なくとも3つの雄型係合部とを含む、
ことを特徴とする請求項1に像振れ補正装置。
【請求項3】
前記規制手段は、前記雄型係合部が前記雌型係合部から外れるのを規制する規制部材を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の像振れ補正装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記ベース及び可動保持部材の一方に固定されたコイルと、前記コイルに対向する位置において前記ベース及び可動保持部材の他方に固定された駆動磁石と、前記ベース又は可動保持部材に固定されたヨークを含み、
前記ヨークは、前記規制部材を兼ねる、
ことを特徴とする請求項3に記載の像振れ補正装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、前記ベース及び可動保持部材の一方に固定された第1コイル,前記ベース及び可動保持部材の他方に固定されて前記第1コイルに対向する第1駆動磁石を含み,前記平面内の第1方向に駆動力を及ぼす第1駆動機構と、前記ベース及び可動保持部材の一方に固定された第2コイル,前記ベース及び可動保持部材の他方に固定されて前記第2コイルに対向する第2駆動磁石を含み,前記平面内の第2方向に駆動力を及ぼす第2駆動機構を含み、
前記復帰手段は、前記休止位置に復帰させる磁力を発生するべく前記ベース及び可動保持部材の一方に共に固定されて、前記第1駆動磁石と対向する第1復帰磁石と、前記第2駆動磁石と対向する第2復帰磁石を含み、
前記位置検出手段は、前記ベース及び可動保持部材の一方に共に固定されて、前記第1駆動磁石と対向する第1磁気センサと、前記第2駆動磁石と対向する第2磁気センサを含む、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一つに記載の像振れ補正装置。
【請求項6】
撮像用の複数のレンズを含む撮像レンズユニットにおいて、
請求項1ないし5いずれか一つに記載の像振れ補正装置を含む、
ことを特徴とする撮像レンズユニット。
【請求項7】
撮像素子を含むカメラユニットにおいて、
請求項1ないし5いずれか一つに記載の像振れ補正装置を含む、
ことを特徴とするカメラユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−128390(P2010−128390A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305616(P2008−305616)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】