像振れ補正装置、撮像装置および光学装置
【課題】 部品点数削減と組み立て性の向上を図る。
【解決手段】 保持部材21を移動させる駆動手段の構成要素である2個のマグネットと、3個のボール25と、一方と他方の端に設けられるフック部がベース部材28と保持部材にそれぞれ係止され、ベース部材と保持部材の間に3個のボールを挟持するように付勢する2個のバネ23とを有し、ベース部材とレンズと2個のマグネット22A,22Bの平面内における重心が、3個のボールによって形成される三角形の内部に位置し、2個のバネによって形成される平面内における線分が、三角形の2辺を跨ぐよう2個のマグネット、3個のボールおよび2個のバネを配置している。
【解決手段】 保持部材21を移動させる駆動手段の構成要素である2個のマグネットと、3個のボール25と、一方と他方の端に設けられるフック部がベース部材28と保持部材にそれぞれ係止され、ベース部材と保持部材の間に3個のボールを挟持するように付勢する2個のバネ23とを有し、ベース部材とレンズと2個のマグネット22A,22Bの平面内における重心が、3個のボールによって形成される三角形の内部に位置し、2個のバネによって形成される平面内における線分が、三角形の2辺を跨ぐよう2個のマグネット、3個のボールおよび2個のバネを配置している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像振れを補正するための像振れ補正装置、該像振れ補正装置を備えた撮像装置および光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手持ち撮影において生じやすい手振れ等による像振れを補正するため、撮像レンズに含まれる像振れ補正用のレンズを光軸と垂直な平面内でシフトさせることにより、像振れを解消しようとする像振れ補正装置(光学防振ユニット)が知られている。
【0003】
このような像振れ補正装置として、補正レンズを第1の方向あるいは第2の方向(前記第1の方向に垂直な方向)に、光軸回りに回転させることなくシフトさせるようにしたものが知られている。
【0004】
特許文献1では、図14に示すように、補正レンズ101を保持するレンズホルダー102を3つのボール103,104,105で受けている。そして、その外側に配置された3つのバネ106,107,108によってベース部材109との間に挟み込んでレンズホルダー102を光軸と直交する平面内で動かす構成となっている。
【0005】
また、図15に示すように、レンズホルダー102と駆動部材110がベース部材109とベース部材111の間に設けられ、これらベース部材109,111の両端の開口部の少なくとも一方には保護レンズ112,113が固定されている。したがって、レンズホルダー102と駆動部材110は、ベース部材109,111と保護レンズ112,113とによりケーシング化されている。このため、レンズホルダー102と駆動部材110が外部に露出することがなく、像振れ補正装置のレンズ鏡筒内への組み込みなどの作業性が向上するような構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−90744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているような3本のバネ106〜108をレンズホルダー102とベース部材109に掛ける構成では、3本分のバネを掛けるスペースが必要となる。よって、レンズホルダー102を含むレンズユニットが大きくなり、カメラ全体を大きくする要因の一つとなっていた。
【0008】
また、特許文献1に開示されているような3本のバネの掛け方だと、3本のバネのうち、どれか一本を排除しようとしても3つのボールの受け部で形成される三角形の外側に力が掛かる。そのため、力のバランスが崩れて一方が浮き上がり、機構自体が成立しなかった。
【0009】
(発明の目的)
本発明の目的は、部品点数削減と組み立て性の向上を図ることのできる像振れ補正装置、撮像装置および光学装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、ベース部材と、前記ベース部材に対し、像振れ補正用のレンズを前記補正用のレンズ以外の光学系の光軸と直交する平面内で相対的に移動可能に保持する保持部材と、前記保持部材に取り付けられ、前記保持部材を移動させる駆動手段の構成要素である2個のマグネットもしくはコイルと、前記ベース部材と前記支持部材の間に配置される3個のボールと、一方と他方の端に設けられるフック部が前記ベース部材と前記保持部材にそれぞれ係止され、前記ベース部材と前記保持部材の間に前記3個のボールを挟持するように付勢する2個のバネとを有する像振れ補正装置であって、前記2個のマグネットおよび前記像振れ補正用のレンズが取り付けられた状態における前記保持部材の重心が、前記像振れ補正用のレンズの中心が前記光軸と一致する位置に前記保持部材が存在するときに、前記平面内において前記3個のボールによって形成される三角形の内部に位置し、前記2個のバネによって形成される前記平面内における線分が、前記三角形の2辺を跨ぐように、前記2個のマグネットもしくはコイル、前記3個のボールおよび前記2個のバネを配置した像振れ補正装置とするものである。
【0011】
もしくは、上記目的を達成するために、本発明は、ベース部材と、前記ベース部材に対し、像振れ補正用のレンズを前記補正用のレンズ以外の光学系の光軸と直交する平面内で相対的に移動可能に保持する保持部材と、前記保持部材に取り付けられ、前記保持部材を移動させる駆動手段の構成要素である2個のコイルと、前記ベース部材と前記保持部材の間に配置される3個のボールと、一方と他方の端に設けられるフック部が前記ベース部材と前記保持部材にそれぞれ係止され、前記ベース部材と前記保持部材の間に前記3個のボールを挟持するように付勢する2個のバネとを有する像振れ補正装置であって、前記2個のコイルおよび前記像振れ補正用のレンズが取り付けられた状態における前記保持部材の重心が、前記像振れ補正用のレンズの中心が前記光軸と一致する位置に前記保持部材が存在するときに、前記平面内において前記3個のボールによって形成される三角形の内部に位置し、前記2個のバネによって形成される前記平面内における線分が、前記三角形の2辺を跨ぐように、前記2個のコイル、前記3個のボールおよび前記2個のバネを配置した像振れ補正装置とするものである。
【0012】
同じく上記目的を達成するために、本発明は、本発明の上記像振れ補正装置を具備する撮像装置または光学装置とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、部品点数削減と組み立て性の向上を図ることができる像振れ補正装置、撮像装置または光学装置を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係るカメラを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係るカメラのレンズ鏡筒全体を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係るカメラの2群鏡筒を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係るカメラに具備される像振れ補正装置を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施例に係るカメラのシャッタ&ND機構を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の一実施例に係るレンズホルダーに作用する力(X方向)を示す図である。
【図7】本発明の一実施例に係るレンズホルダーのフック係止部に作用する摩擦力を示す拡大図である。
【図8】本発明の一実施例に係るレンズホルダーに作用(回転方向)する力を示す図である。
【図9】本発明の一実施例に係るレンズホルダーに作用(Y方向)する力を示す図である。
【図10】本発明の一実施例に係るレンズホルダーに作用(A方向)する力を示す図である。
【図11】本発明の一実施例に係るレンズホルダーに作用(B方向)する力を示す図である。
【図12】従来のカメラに具備される像振れ補正装置のレンズホルダーおよびベース部材を示す平面図である。
【図13】従来のレンズホルダーに作用(X方向)する力を示す図である。
【図14】従来のカメラに具備される像振れ補正装置を示す平面図である。
【図15】従来のカメラに具備される像振れ補正装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例に示す通りである。
【0016】
図1は本発明の一実施例に係る像振れ補正装置を具備する撮像装置であるところのカメラを示す斜視図である。
【0017】
図1において、1はカメラ本体である。該カメラ本体1の前面には、撮影レンズの焦点距離が変更可能なレンズ鏡筒2およびファインダ窓5が設けられている。レンズ鏡筒2の前面には、カメラの電源オン、オフに従って撮影レンズの光路を開閉するレンズバリア装置3(図1は開状態)が備えられている。
【0018】
また、カメラ本体1の上面には、被写体に照明光を照射するストロボ装置を構成する発光窓部4が設けられている。さらに、カメラ本体1の上面には、撮影準備動作(焦点調節動作および測光動作)及び撮影動作(フィルムやCCD等の撮像素子への露光)を開始させるためのレリーズボタン6が設けられている。
【0019】
尚、図1はカメラの代表的な模式図であり、本発明は上記の構成に限定されるものではない。
【0020】
図2は、上記レンズ鏡筒2の分解斜視図である。
【0021】
図2において、7は第1群レンズを保持する1群鏡筒であり、前述のレンズバリア装置3を備える。8は第2群レンズを保持する2群鏡筒であり、後述する像振れ補正装置とシャッタ&絞り機構を備える。9は1群鏡筒7及び2群鏡筒8を駆動するための駆動カムを内周部に備える移動カム環であり、不図示の鏡筒駆動モータより動力を伝達されるギア部を有する。10は移動カム環9に回転可能に保持される直進筒であり、1群鏡筒7および2群鏡筒8を直進規制する。11は内周部に移動カム環9を駆動するための駆動カムを備える固定筒である。12は第3群レンズを保持する3群鏡筒、13は撮像素子を具備するベース部材である。
【0022】
尚、レンズ鏡筒2の構成は本発明の特徴を満たす構成であれば、上記の構成に限定されるものではない。
【0023】
次に、像振れ補正装置とシャッタ&絞り機構を有する2群鏡筒8の構成について、図3、図4および図5を用いて説明する。尚、図3は2群鏡筒8の分解斜視図、図4は2群鏡筒8を被写体側から見た分解斜視図(後述するセンサホルダー、2群FPC、2群カバーを外した状態)、図5は2群鏡筒8を図3の反対側から見た分解斜視図である。
【0024】
図3〜図5において、28は2群鏡筒8の基台である2群ベース部材であり、不図示のフォーカス送りネジの逃げ形状部28a、フォーカスガイドバーの逃げ形状部28b、後述のフック28cを有する。レンズ鏡筒2は沈胴時に各レンズ群鏡筒の間隔を短縮して小型化を図っているが、不図示のフォーカス送りネジとフォーカスガイドバーは光軸方向に突出しているため、沈胴時に2群ベース部材28を貫通してしまう。すると、レンズを通過しない光線がその貫通部を通過して撮像素子に入射して光線漏れを起こす。そのため、逃げ形状部28aと28bの様に袋形状(図4参照)にして極力光線漏れを防ぐ形状にしている。
【0025】
21は2群レンズ群(以下、補正レンズ)26を保持する2群レンズホルダーであり、補正レンズ26が加締められている。2群レンズホルダー21にはマグネット22Aおよび22Bが一体的に保持されている。尚、符号における添字AおよびBは、図4におけるA方向およびB方向と対応している。また、2群レンズホルダー21には2箇所にフック係止部21a(図3参照)があり、ここに引張り力を作用させるバネ23(コイルバネ)が掛けられる。
【0026】
27は有害光をカットする固定絞りであり、フック21aによって2群レンズホルダー21に固定されている。24Aおよび24Bはコイルとボビンからなるコイルユニットであり、2群ベース部材28の窪みに接着固定されている。コイルへの給電は、ボビンに埋設され、上記コイルと電気的に接続された金属ピン24A−aおよび24B−a(図3、図4参照)に対して、後述する2群FPC(フレキシブルプリント基板)によって行われる。
【0027】
2群レンズホルダー21に掛けられた2本のバネ23の他端は2群ベース部材28のフック係止部28c(図3参照)に掛けられていて、2群ベース部材28と2群レンズホルダー21との間には3個の非磁性のボール25(図3、図4参照)が挟まれている。そして、2群レンズホルダー21は2群ベース部材28に向かってボール25を介して押圧された状態になっている。但し、ボール25を介しているので、光軸に垂直な平面内では自由に移動する事が可能になっている。この2群レンズホルダー21を平面内で移動させる事によって撮像素子上の像振れを抑制してその補正を行う。
【0028】
18はシャッタ羽根を駆動するアクチュエータ、19はNDフィルタを駆動するアクチュエータであり、共に通電方向の正逆転によってアームの停止位置が切り換る2点切り換え方式のアクチュエータである。16は2群FPCであり、全体形状は半円弧形状(図3参照)を成している。半円弧形状の両端には上記アクチュエータ18および19が半田接続されており、途中には前述のコイルユニットと半田接続するランド16aが設けられている。また、裏面側には磁界を検出するホール素子17Aおよび17Bが実装されている。
【0029】
2群レンズホルダー21に保持されるマグネット22Aおよび22Bは、図4に示すような方向に着磁されている。2群レンズホルダー21のA方向およびB方向への移動を各ホール素子17A,17Bが磁界の変化として検出して、その変化量に基づいて移動量が算出される。マグネット22A,22Bとホール素子17A,17Bの位置精度は重要であるので、ホール素子22A,22Bはセンサホルダー20に対して圧入されて精度良く位置決めされるようになっている。
【0030】
上記の様な2群FPC16が位置決め穴16bとセンサホルダー20の位置決め突起20a(図3参照)との係合によって固定され、センサホルダー20は2群ベース部材28に取り付けられる。そして、2群カバー15をビス14および外周フックで2群ベース部材28に固定することにより、センサホルダー20、アクチュエータ18,19は2群ベース部材28に対して固定される。
【0031】
図5において、29,30はシャッタ羽根であり、アクチュエータ18の駆動アームにより駆動される。31は仕切り板、32は光量を制限するNDフィルタであり、アクチュエータ19によって駆動され、光路中への進入と退避を繰り返す。33はシャッタカバーであり、2群ベース部材28にフックで固定され、シャッタ羽根29,30、NDフィルタ32を保護している。
【0032】
次に、補正レンズ26を保持する2群レンズホルダー21の2群ベース部材28に対する安定性について、図4を用いて説明する。
【0033】
2群レンズホルダー21はモールド部材で成形されており、前述したように補正レンズ26とマグネット22A,22Bを備えているため、自重が主に補正レンズ26とマグネット22A,22Bの重さによって支配されている。像振れ補正のための駆動開始時には、重量に抗して、マグネット22A、22Bおよびコイル24A、24Bの駆動力により、補正レンズ26の中心が他の撮影レンズ光学系の光軸に一致するように2群レンズホルダー21を持ち上げる。図4の状態は、補正レンズ26の中心が他の撮影光学系の光軸に一致するように2群レンズホルダー21を持ち上げた状態を表す。このとき、マグネット22A、22Bが取り付けられ、補正レンズ26を保持した2群レンズホルダー21の重心は、図4に示す位置(「×重心」で示す位置)となる。そして、2群レンズホルダー21を受ける3つのボール25(裏面にあるため、破線で示している)で形成される三角形がその重心を内部に含むように該3つのボール25を配置して、2群レンズホルダー21を安定して保持できるようにしている。例えば、3つのボール25から形成される三角形内に重心を含まないように配置すると、重心側に2群レンズホルダー21が倒れて光軸と直交する平面内で移動することが不可能となる。
【0034】
2群レンズホルダー21には前述したように2群ベース部材28との間に光軸方向と平行に2本のバネ23(図3、図4参照)を掛ける。このように、2群レンズホルダー21と2群ベース部材28とが互いに押し合うようにバネ23を掛けることにより、3つのボール25が両者に挟持される。そして、この2本のバネ23が2群レンズホルダー21に対して掛けられる2つのフック係止部21aが作る線分は、3つのボール25から形成される三角形の二辺を跨ぐ(破線参照)ようにする。
【0035】
本実施例の場合、2群レンズホルダー21が左右対称形状になっており、またマグネット22A、22Bも左右対称に配置されているので、2つのフック係止部21aが作る線分は三角形の二辺を跨ぎ、更に対称軸から等距離の位置にあることが望ましい。つまり、2本のバネ力が合成される点が三角形の内側で対称軸上にあることが最も安定性を保つことができる条件となる。つまり、2群レンズホルダー21に掛ける2本のバネ23は前述の三角形にどのようにでも掛ける自由度はあるが、像振れ補正装置としての安定性を確実にするためには対称軸から均等に配置することが望ましい。
【0036】
次に、ローリングを防止する2本のバネ23の具体的な掛け方について、図6〜図13を用いて、従来のバネの掛け方と比較しながら述べることにする。
【0037】
ローリングとは、図6に示すように、像振れ補正のための駆動力が合力としてFのように働いた時に2群レンズホルダー21の重心に対して回転しようとする力である。この場合はFの分力F1によって2群レンズホルダー21は重心に対して反時計回りに回転しようとする。このローリングは像振れ補正性能に支障を来たすため、従来では、図12に示すように、3本のバネ37をベース部材34とレンズホルダー35の間に掛けている。そして、中央のバネ37はレンズホルダー35に掛かるバネ力を安定させるためだけでなく、ローリングを緩和する役割も果たしていた。
【0038】
本実施例では、前述の中央のバネに相当するバネは存在せず、2本のバネ23のみとしているため、このローリングに対する影響を受ける。しかし、2本のバネ23の一方の端部であるフック部23aが作る平面を像振れ補正のための駆動方向A,Bの軸方向と平行にしている。詳しくは、図4や後述の図6において、右側のバネ23のフック部23aが作る平面はA軸方向に平行に、左側のバネ23のフック部23aが作る平面はB軸方向に平行に、それぞれしている。このことにより、ローリングに対する影響を解決(詳細は後述)している。
【0039】
図12は、上記したように3本のバネ37を掛けている従来例である。ベース部材34とレンズホルダー35との間に3つのボール36を配置して、ベース部材34とレンズホルダー35のフック係止部37aに3本のバネ37のフック部を掛けてレンズホルダー35が光軸と直交する平面を滑らかに動けるようにしている。
【0040】
バネ37の掛け方は、左右の2本のバネ37はフック部が作る平面がY軸と平行になるように、中央のバネ37はフック部が作る平面がX軸と平行になるようにしており、いずれも像振れ補正のための駆動方向AとBに対して45°の傾きをもっている。このように3本のバネ37が掛けられたレンズホルダー35が像振れ補正駆動でX軸に沿って少し動いた状態を示したものが図13であり、X軸に沿った駆動によって前述のローリング力が重心に対して反時計回りに働いている。なお、図13において、fは像振れ補正のための駆動力(合力)f1,f2はその分力である。
【0041】
図13において、像振れ補正のための駆動力fに対する反力rが3本のバネ37によってレンズホルダー35に働いており、左右の2本のバネ37に対しては重心に対してレンズホルダー35を反時計回りに回転させようとするrの分力r1が生じている。しかし、中央のバネ37の反力rによってそれを打ち消す向きに力が働くことで、ローリングが緩和されるようになっている。
【0042】
すなわち、図12および図13の従来構成においては、中央のバネ37を取り除くと、ボール36の配置と中央を除いた左右の2本のバネ37の配置からレンズホルダー35は2本のバネ37側に倒れて機構が成立しなくなる。また、この倒れを考えないとしてもローリングを増大させる方向に左右の2本のバネ力が働き防振性能に支障を来たすことになる。
【0043】
図6は、図13と同様に、本実施例の2群レンズホルダー21が像振れ補正駆動でX軸に沿って図中右方向に少し動いた状態を示している。
【0044】
像振れ補正のための駆動力(合力)としてFが働いた時、2群レンズホルダー21はその反力Rを2本のバネ23から受ける。したがって、2群レンズホルダー21のフック係止部21aはその反力Rを受けるが、その反力Rの大きさはバネ23のフック部23aがフック係止部21aに対してどのように掛かっているかによって大きく変わる。
【0045】
図7は、図6に示す2群レンズホルダー21の右側のフック係止部21a周りを拡大した図である。
【0046】
フック係止部21aはバネ23のフック部23aが作る平面(バネの円弧状端部を含む平面)が像振れ補正ための駆動方向であるA軸方向と平行になるような形状になっている。また逆に、図7では不図示であるが、左側のフック係止部21aはバネ23のフック部23aが作る平面(バネの円弧状端部を含む平面)が像振れ補正ための駆動方向であるB軸方向と平行になるような形状となっている。したがって、バネ23のフック部23aは2群レンズホルダー21のフック係止部21aに対して、R1方向とR2方向とで摩擦力が大きく変わる。バネ23のフック部23aはバネ力により2群レンズホルダー21のフック係止部21aの溝の最下点に位置するため、2群レンズホルダー21がR1方向に変位したとしても最下点でフック部23aが転がってその変位を吸収しようとする。また、R2方向に変位した時はフック部23aの自由度の有る輪の中でフック係止部21aとの接触点が常に擦れながら変化する。R1方向はフック係止部21aに対して転がり摩擦となり(フック係止部21aに対してフック部23aが転がるため)、摩擦力としては非常に小さい。これに対し、R2方向は滑り摩擦(フック係止部21aに対してフック部23aが滑るため)を生じるため、非常に大きい摩擦力を生じる。
【0047】
よって、図6の反力RはR1とR2に力を分けた場合、滑り摩擦の分力R2が非常に大きく、分力R1が無視できるくらいの摩擦力となり、結果的に2群レンズホルダー21を重心に対して回転させようとする力は、図8に示すように合力R3として表れる。
【0048】
前述したように、像振れ補正のための駆動時に発生するローリングは、F1で表される重心に対して反時計周りの力である。これに対し、バネ23によって受ける反力の合力はR3で表されるように重心に対して時計回りであり、このようなバネの掛け方によってローリングを相殺する方向に力が働いていることがわかる。
【0049】
上記は像振れ補正駆動として2群レンズホルダー21をX方向に動かした時の説明であるが、左右対称形状であるため、X方向の逆側(図8の右側)に動かした時も同様の結果となる。
【0050】
図9は、2群レンズホルダー21が像振れ補正駆動でY軸に沿って図中上方に少し動いた状態を示したものである。
【0051】
像振れ補正駆動の合力としてFが働いた時、2群レンズホルダー21はその反力Rを2本のバネ23から受ける。像振れ補正駆動時に発生する力はFの分力としてのF3,F4となり、重心に対して回転する方向には分力F3が効いてくる。しかし、2群レンズホルダー21がY軸に対して左右対称形状であるため、分力F3が互いに相殺する方向になる。そのため、ローリングは発生しない。反力Rに対しては分力としてR4,R5が発生し、重心に対して回転する方向には分力R4が効いてくるが、同じ理由から分力R4が互いに相殺する方向になるためローリングは発生しない。
【0052】
図6のX軸に沿って動く場合で説明したように、実際にはバネ23の掛け方でR4の強弱が変わってくるが、お互いに相殺されることに代わりが無いため、詳細な説明は省略する。
【0053】
上記は像振れ補正駆動として、2群レンズホルダー21をY方向に動かした時の説明であるが、左右対称形状であるため、Y方向の逆側(図9の下方方向)に動かした時も同様にローリングは発生しない。
【0054】
図10は、2群レンズホルダー21が像振れ補正駆動によりA軸に沿って図中斜め右上の方向に少し動いた状態を示したものである。
【0055】
像振れ補正駆動の合力としてFが働いた時、2群レンズホルダー21はその反力Rを2本のバネ23から受ける。像振れ補正駆動時に発生する力はFの分力としてのF5,F6となり、重心に対して回転する方向には右側が分力F5、左側が分力F6というように効いてくる。しかし、F5>F6であるため、2群レンズホルダー21はその差分の力で重心に対して反時計回りに回転しようとするローリングが発生する。一方、反力として2群レンズホルダー21がバネ23から受ける力は前述したように左右のフック係止部21aの摩擦力により異なり、この場合、右側の反力Rの方が滑り摩擦で左側の反力Rが転がり摩擦のため、右側の反力Rの方が非常に強い力となる。
【0056】
よって、作図上の分力の大小はR7>R6となるが、摩擦力を考慮すると実際に働く力の大きさとしてはR6>R7となって重心に対して時計回りに回転する方向に力が働く。この場合も反時計回りのローリングに対して時計回りに反力が働くことでローリングが緩和されるようになっている。
【0057】
上記は像振れ補正駆動として、2群レンズホルダー21をA軸方向に動かした時の説明であるが、左右対称形状であるため、A軸方向の逆側(図10の斜め左下方向)に動かした時も同様にローリングを緩和する結果となる。
【0058】
図11は、2群レンズホルダー21が像振れ補正駆動でB軸に沿って図中斜め右下方向に少し動いた状態を示したものである。
【0059】
像振れ補正駆動の合力としてFが働いた時2群レンズホルダー21はその反力Rを2本のバネ23から受ける。像振れ補正駆動時に発生する力はFの分力としてのF7,F8となり、重心に対して回転する方向には右側が分力F7、左側が分力F8というように効いてくる。しかし、F8>F7であるため、2群レンズホルダー21はその差分の力で重心に対して反時計回りに回転しようとするローリングが発生する。一方、反力として2群レンズホルダー21がバネ23から受ける力は前述したように左右のフック係止部21aの摩擦力により異なり、この場合、右側の反力Rの方が転がり摩擦で左側の反力Rが滑り摩擦のため、左側の反力Rの方が非常に強い力となる。
【0060】
よって、作図上の分力の大小はR8>R9となるが、摩擦力を考慮すると実際に働く力の大きさとしてはR9>R8となって重心に対して時計回りに回転する方向に力が働く。この場合も反時計回りのローリングに対して時計回りに反力が働くことでローリングが緩和されるようになっている。
【0061】
上記は像振れ補正駆動として、2群レンズホルダー21をB軸方向に動かした時の説明であるが、左右対称形状であるため、B軸方向の逆側(図11の斜め左上方向)に動かした時も同様にローリングを緩和する結果となる。
【0062】
以上のように、2群レンズホルダー21をXY平面において、X方向、Y方向、A軸方向、B軸方向に駆動させた場合を述べたが、いずれの場合もローリングが発生する場合にはそれをキャンセルする方向にバネ力が作用していることがわかる。
【0063】
また、上記以外の駆動方向に2群レンズホルダー21を動かした場合も何れかの駆動の組み合わせとなり、ローリングが発生した場合にそれをキャンセルする方向にバネ力が作用することは変わらない。
【0064】
尚、本実施例では、像振れ補正駆動の際にマグネット22A,22Bにかかる力で説明をした。しかし、それ以外の力(重力や外的な慣性力等)の場合にもレンズホルダーの重さで支配的となっているマグネットに掛かる場合で説明がつくため、同様と考えてよい。
【0065】
以上の実施例における像振れ補正装置は、2群ベース部材28に対し、光軸と直交する平面内で補正レンズ26を相対的に移動可能に保持する2群レンズホルダー21を有する。さらに、2群レンズホルダー21を移動させるための2個のマグネット22A,22Bもしくはコイルユニット24A,24Bと、2群ベース部材28と2群レンズホルダー21に挟持される3個のボール25とを有する。さらに、一方と他方の端に設けられるフック部23aが2群ベース部材28と2群レンズホルダー21にそれぞれ係止され、2群ベース部材28と2群レンズホルダー21の間に3個のボール25を挟持するように付勢する2個のバネ23を有する。
【0066】
そして、マグネット22A,22Bが取り付けられ、補正レンズ26を保持した2群レンズホルダー21の重心が、3個のボール25によって形成される三角形の内部に存在するように構成する。なお、この位置関係は、補正レンズ26の中心が、他の撮影レンズ光学系の光軸に一致するように2群レンズホルダー21が持ち上げられた状態を基準としている。さらに、2個のバネ23によって形成される平面内における線分が、ボール25が形成する三角形の2辺を略均等に跨ぐように、上記マグネット22A,22Bもしくはコイルユニット24A,24B、ボール25およびバネ23をそれぞれ配置している。2個のバネ23によって形成される線分は、より具体的には2つのフック係止部21aが作る線分である。
【0067】
よって、部品点数削減と組み立て性の向上を図ることが可能となる。
【0068】
さらに、2個のマグネット22A,22Bもしくはコイルユニット24A,24Bより成る駆動手段は、2群レンズホルダー21をA軸方向(第一の方向)および該A軸方向と直交するB軸方向(第二の方向)に移動させるためのものである。そして、2個のバネ23のうち、一つのバネのフック部23aが作る平面がA軸方向と平行になるように、該フック部23aに対して2群レンズホルダー21のフック係止部21aが設けられている。同じく、もう一つのバネのフック部23aが作る変面がB軸方向と平行になるように、該フック部23aに対して2群レンズホルダー21のフック係止部21aが設けられている。
【0069】
また、バネ23のフック部23aが作る平面とは、該バネ23の円弧状端部を含む平面のことである。そして、A軸方向に移動させる一方のマグネット22A,22Bもしくはコイルユニット24A,24Bの近傍にあるバネ23のフック部23aが作る平面とA軸方向とは直交するようにしている。同じく、B軸方向に移動させる他方のマグネット22A,22Bもしくはコイルユニット24A,24Bの近傍にあるバネ23のフック部23aの向きとB軸方向とは直交するようにしている。
【0070】
よって、2群レンズホルダー21と2群ベース部材28との間に掛け難い中央のバネを除く2本のバネだけでローリングの起こらない像振れ補正装置を成立させることができるため、部品点数削減と組み立て性向上に大きく貢献し、カメラの小型化にも有効となる。
【0071】
なお、本実施例では、2群レンズホルダー21にマグネット22Aおよび22Bが取り付けられている構成で説明したが、2群レンズホルダー21にコイルユニット24Aおよび24Bを取り付ける構成でも同様である。このとき、マグネット22Aおよび22Bは2群ベース部材28に取り付けられる。重心については、コイルユニット24Aおよび24Bが取り付けられ、補正レンズ26を保持した2群レンズホルダー21の重心を考えれば良い。
【0072】
(本発明と実施例の対応)
2群ベース部材28が本発明のベース部材に相当する。また、2群レンズホルダー21が、本発明の、像振れ補正用のレンズを像振れ補正用のレンズ以外の光学系の光軸と直交する平面内で相対的に移動可能に保持する保持部材に相当する。また、2個のマグネット22A,22Bもしくはコイルユニット24A,24Bが、本発明の、駆動手段の構成要素を成し、その一方が保持部材に取り付けられる2個のマグネットもしくは2個のコイルに相当する。また、3個のボール25が本発明の3個のボールに相当し、2個のバネ23が本発明の2個のバネに相当する。
【0073】
上記実施例では、像振れ補正装置を具備する撮像装置であるカメラに適用した例を述べているが、像振れ補正が可能な撮像機能を有する携帯電話や双眼鏡等の光学装置にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0074】
21 レンズホルダー
21a フック係止部
22A マグネット
22B マグネット
23 バネ
23a 係止部
24A コイルユニット
24B コイルユニット
25 ボール
28 2群ベース部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、像振れを補正するための像振れ補正装置、該像振れ補正装置を備えた撮像装置および光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手持ち撮影において生じやすい手振れ等による像振れを補正するため、撮像レンズに含まれる像振れ補正用のレンズを光軸と垂直な平面内でシフトさせることにより、像振れを解消しようとする像振れ補正装置(光学防振ユニット)が知られている。
【0003】
このような像振れ補正装置として、補正レンズを第1の方向あるいは第2の方向(前記第1の方向に垂直な方向)に、光軸回りに回転させることなくシフトさせるようにしたものが知られている。
【0004】
特許文献1では、図14に示すように、補正レンズ101を保持するレンズホルダー102を3つのボール103,104,105で受けている。そして、その外側に配置された3つのバネ106,107,108によってベース部材109との間に挟み込んでレンズホルダー102を光軸と直交する平面内で動かす構成となっている。
【0005】
また、図15に示すように、レンズホルダー102と駆動部材110がベース部材109とベース部材111の間に設けられ、これらベース部材109,111の両端の開口部の少なくとも一方には保護レンズ112,113が固定されている。したがって、レンズホルダー102と駆動部材110は、ベース部材109,111と保護レンズ112,113とによりケーシング化されている。このため、レンズホルダー102と駆動部材110が外部に露出することがなく、像振れ補正装置のレンズ鏡筒内への組み込みなどの作業性が向上するような構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−90744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているような3本のバネ106〜108をレンズホルダー102とベース部材109に掛ける構成では、3本分のバネを掛けるスペースが必要となる。よって、レンズホルダー102を含むレンズユニットが大きくなり、カメラ全体を大きくする要因の一つとなっていた。
【0008】
また、特許文献1に開示されているような3本のバネの掛け方だと、3本のバネのうち、どれか一本を排除しようとしても3つのボールの受け部で形成される三角形の外側に力が掛かる。そのため、力のバランスが崩れて一方が浮き上がり、機構自体が成立しなかった。
【0009】
(発明の目的)
本発明の目的は、部品点数削減と組み立て性の向上を図ることのできる像振れ補正装置、撮像装置および光学装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、ベース部材と、前記ベース部材に対し、像振れ補正用のレンズを前記補正用のレンズ以外の光学系の光軸と直交する平面内で相対的に移動可能に保持する保持部材と、前記保持部材に取り付けられ、前記保持部材を移動させる駆動手段の構成要素である2個のマグネットもしくはコイルと、前記ベース部材と前記支持部材の間に配置される3個のボールと、一方と他方の端に設けられるフック部が前記ベース部材と前記保持部材にそれぞれ係止され、前記ベース部材と前記保持部材の間に前記3個のボールを挟持するように付勢する2個のバネとを有する像振れ補正装置であって、前記2個のマグネットおよび前記像振れ補正用のレンズが取り付けられた状態における前記保持部材の重心が、前記像振れ補正用のレンズの中心が前記光軸と一致する位置に前記保持部材が存在するときに、前記平面内において前記3個のボールによって形成される三角形の内部に位置し、前記2個のバネによって形成される前記平面内における線分が、前記三角形の2辺を跨ぐように、前記2個のマグネットもしくはコイル、前記3個のボールおよび前記2個のバネを配置した像振れ補正装置とするものである。
【0011】
もしくは、上記目的を達成するために、本発明は、ベース部材と、前記ベース部材に対し、像振れ補正用のレンズを前記補正用のレンズ以外の光学系の光軸と直交する平面内で相対的に移動可能に保持する保持部材と、前記保持部材に取り付けられ、前記保持部材を移動させる駆動手段の構成要素である2個のコイルと、前記ベース部材と前記保持部材の間に配置される3個のボールと、一方と他方の端に設けられるフック部が前記ベース部材と前記保持部材にそれぞれ係止され、前記ベース部材と前記保持部材の間に前記3個のボールを挟持するように付勢する2個のバネとを有する像振れ補正装置であって、前記2個のコイルおよび前記像振れ補正用のレンズが取り付けられた状態における前記保持部材の重心が、前記像振れ補正用のレンズの中心が前記光軸と一致する位置に前記保持部材が存在するときに、前記平面内において前記3個のボールによって形成される三角形の内部に位置し、前記2個のバネによって形成される前記平面内における線分が、前記三角形の2辺を跨ぐように、前記2個のコイル、前記3個のボールおよび前記2個のバネを配置した像振れ補正装置とするものである。
【0012】
同じく上記目的を達成するために、本発明は、本発明の上記像振れ補正装置を具備する撮像装置または光学装置とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、部品点数削減と組み立て性の向上を図ることができる像振れ補正装置、撮像装置または光学装置を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係るカメラを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係るカメラのレンズ鏡筒全体を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係るカメラの2群鏡筒を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係るカメラに具備される像振れ補正装置を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施例に係るカメラのシャッタ&ND機構を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の一実施例に係るレンズホルダーに作用する力(X方向)を示す図である。
【図7】本発明の一実施例に係るレンズホルダーのフック係止部に作用する摩擦力を示す拡大図である。
【図8】本発明の一実施例に係るレンズホルダーに作用(回転方向)する力を示す図である。
【図9】本発明の一実施例に係るレンズホルダーに作用(Y方向)する力を示す図である。
【図10】本発明の一実施例に係るレンズホルダーに作用(A方向)する力を示す図である。
【図11】本発明の一実施例に係るレンズホルダーに作用(B方向)する力を示す図である。
【図12】従来のカメラに具備される像振れ補正装置のレンズホルダーおよびベース部材を示す平面図である。
【図13】従来のレンズホルダーに作用(X方向)する力を示す図である。
【図14】従来のカメラに具備される像振れ補正装置を示す平面図である。
【図15】従来のカメラに具備される像振れ補正装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例に示す通りである。
【0016】
図1は本発明の一実施例に係る像振れ補正装置を具備する撮像装置であるところのカメラを示す斜視図である。
【0017】
図1において、1はカメラ本体である。該カメラ本体1の前面には、撮影レンズの焦点距離が変更可能なレンズ鏡筒2およびファインダ窓5が設けられている。レンズ鏡筒2の前面には、カメラの電源オン、オフに従って撮影レンズの光路を開閉するレンズバリア装置3(図1は開状態)が備えられている。
【0018】
また、カメラ本体1の上面には、被写体に照明光を照射するストロボ装置を構成する発光窓部4が設けられている。さらに、カメラ本体1の上面には、撮影準備動作(焦点調節動作および測光動作)及び撮影動作(フィルムやCCD等の撮像素子への露光)を開始させるためのレリーズボタン6が設けられている。
【0019】
尚、図1はカメラの代表的な模式図であり、本発明は上記の構成に限定されるものではない。
【0020】
図2は、上記レンズ鏡筒2の分解斜視図である。
【0021】
図2において、7は第1群レンズを保持する1群鏡筒であり、前述のレンズバリア装置3を備える。8は第2群レンズを保持する2群鏡筒であり、後述する像振れ補正装置とシャッタ&絞り機構を備える。9は1群鏡筒7及び2群鏡筒8を駆動するための駆動カムを内周部に備える移動カム環であり、不図示の鏡筒駆動モータより動力を伝達されるギア部を有する。10は移動カム環9に回転可能に保持される直進筒であり、1群鏡筒7および2群鏡筒8を直進規制する。11は内周部に移動カム環9を駆動するための駆動カムを備える固定筒である。12は第3群レンズを保持する3群鏡筒、13は撮像素子を具備するベース部材である。
【0022】
尚、レンズ鏡筒2の構成は本発明の特徴を満たす構成であれば、上記の構成に限定されるものではない。
【0023】
次に、像振れ補正装置とシャッタ&絞り機構を有する2群鏡筒8の構成について、図3、図4および図5を用いて説明する。尚、図3は2群鏡筒8の分解斜視図、図4は2群鏡筒8を被写体側から見た分解斜視図(後述するセンサホルダー、2群FPC、2群カバーを外した状態)、図5は2群鏡筒8を図3の反対側から見た分解斜視図である。
【0024】
図3〜図5において、28は2群鏡筒8の基台である2群ベース部材であり、不図示のフォーカス送りネジの逃げ形状部28a、フォーカスガイドバーの逃げ形状部28b、後述のフック28cを有する。レンズ鏡筒2は沈胴時に各レンズ群鏡筒の間隔を短縮して小型化を図っているが、不図示のフォーカス送りネジとフォーカスガイドバーは光軸方向に突出しているため、沈胴時に2群ベース部材28を貫通してしまう。すると、レンズを通過しない光線がその貫通部を通過して撮像素子に入射して光線漏れを起こす。そのため、逃げ形状部28aと28bの様に袋形状(図4参照)にして極力光線漏れを防ぐ形状にしている。
【0025】
21は2群レンズ群(以下、補正レンズ)26を保持する2群レンズホルダーであり、補正レンズ26が加締められている。2群レンズホルダー21にはマグネット22Aおよび22Bが一体的に保持されている。尚、符号における添字AおよびBは、図4におけるA方向およびB方向と対応している。また、2群レンズホルダー21には2箇所にフック係止部21a(図3参照)があり、ここに引張り力を作用させるバネ23(コイルバネ)が掛けられる。
【0026】
27は有害光をカットする固定絞りであり、フック21aによって2群レンズホルダー21に固定されている。24Aおよび24Bはコイルとボビンからなるコイルユニットであり、2群ベース部材28の窪みに接着固定されている。コイルへの給電は、ボビンに埋設され、上記コイルと電気的に接続された金属ピン24A−aおよび24B−a(図3、図4参照)に対して、後述する2群FPC(フレキシブルプリント基板)によって行われる。
【0027】
2群レンズホルダー21に掛けられた2本のバネ23の他端は2群ベース部材28のフック係止部28c(図3参照)に掛けられていて、2群ベース部材28と2群レンズホルダー21との間には3個の非磁性のボール25(図3、図4参照)が挟まれている。そして、2群レンズホルダー21は2群ベース部材28に向かってボール25を介して押圧された状態になっている。但し、ボール25を介しているので、光軸に垂直な平面内では自由に移動する事が可能になっている。この2群レンズホルダー21を平面内で移動させる事によって撮像素子上の像振れを抑制してその補正を行う。
【0028】
18はシャッタ羽根を駆動するアクチュエータ、19はNDフィルタを駆動するアクチュエータであり、共に通電方向の正逆転によってアームの停止位置が切り換る2点切り換え方式のアクチュエータである。16は2群FPCであり、全体形状は半円弧形状(図3参照)を成している。半円弧形状の両端には上記アクチュエータ18および19が半田接続されており、途中には前述のコイルユニットと半田接続するランド16aが設けられている。また、裏面側には磁界を検出するホール素子17Aおよび17Bが実装されている。
【0029】
2群レンズホルダー21に保持されるマグネット22Aおよび22Bは、図4に示すような方向に着磁されている。2群レンズホルダー21のA方向およびB方向への移動を各ホール素子17A,17Bが磁界の変化として検出して、その変化量に基づいて移動量が算出される。マグネット22A,22Bとホール素子17A,17Bの位置精度は重要であるので、ホール素子22A,22Bはセンサホルダー20に対して圧入されて精度良く位置決めされるようになっている。
【0030】
上記の様な2群FPC16が位置決め穴16bとセンサホルダー20の位置決め突起20a(図3参照)との係合によって固定され、センサホルダー20は2群ベース部材28に取り付けられる。そして、2群カバー15をビス14および外周フックで2群ベース部材28に固定することにより、センサホルダー20、アクチュエータ18,19は2群ベース部材28に対して固定される。
【0031】
図5において、29,30はシャッタ羽根であり、アクチュエータ18の駆動アームにより駆動される。31は仕切り板、32は光量を制限するNDフィルタであり、アクチュエータ19によって駆動され、光路中への進入と退避を繰り返す。33はシャッタカバーであり、2群ベース部材28にフックで固定され、シャッタ羽根29,30、NDフィルタ32を保護している。
【0032】
次に、補正レンズ26を保持する2群レンズホルダー21の2群ベース部材28に対する安定性について、図4を用いて説明する。
【0033】
2群レンズホルダー21はモールド部材で成形されており、前述したように補正レンズ26とマグネット22A,22Bを備えているため、自重が主に補正レンズ26とマグネット22A,22Bの重さによって支配されている。像振れ補正のための駆動開始時には、重量に抗して、マグネット22A、22Bおよびコイル24A、24Bの駆動力により、補正レンズ26の中心が他の撮影レンズ光学系の光軸に一致するように2群レンズホルダー21を持ち上げる。図4の状態は、補正レンズ26の中心が他の撮影光学系の光軸に一致するように2群レンズホルダー21を持ち上げた状態を表す。このとき、マグネット22A、22Bが取り付けられ、補正レンズ26を保持した2群レンズホルダー21の重心は、図4に示す位置(「×重心」で示す位置)となる。そして、2群レンズホルダー21を受ける3つのボール25(裏面にあるため、破線で示している)で形成される三角形がその重心を内部に含むように該3つのボール25を配置して、2群レンズホルダー21を安定して保持できるようにしている。例えば、3つのボール25から形成される三角形内に重心を含まないように配置すると、重心側に2群レンズホルダー21が倒れて光軸と直交する平面内で移動することが不可能となる。
【0034】
2群レンズホルダー21には前述したように2群ベース部材28との間に光軸方向と平行に2本のバネ23(図3、図4参照)を掛ける。このように、2群レンズホルダー21と2群ベース部材28とが互いに押し合うようにバネ23を掛けることにより、3つのボール25が両者に挟持される。そして、この2本のバネ23が2群レンズホルダー21に対して掛けられる2つのフック係止部21aが作る線分は、3つのボール25から形成される三角形の二辺を跨ぐ(破線参照)ようにする。
【0035】
本実施例の場合、2群レンズホルダー21が左右対称形状になっており、またマグネット22A、22Bも左右対称に配置されているので、2つのフック係止部21aが作る線分は三角形の二辺を跨ぎ、更に対称軸から等距離の位置にあることが望ましい。つまり、2本のバネ力が合成される点が三角形の内側で対称軸上にあることが最も安定性を保つことができる条件となる。つまり、2群レンズホルダー21に掛ける2本のバネ23は前述の三角形にどのようにでも掛ける自由度はあるが、像振れ補正装置としての安定性を確実にするためには対称軸から均等に配置することが望ましい。
【0036】
次に、ローリングを防止する2本のバネ23の具体的な掛け方について、図6〜図13を用いて、従来のバネの掛け方と比較しながら述べることにする。
【0037】
ローリングとは、図6に示すように、像振れ補正のための駆動力が合力としてFのように働いた時に2群レンズホルダー21の重心に対して回転しようとする力である。この場合はFの分力F1によって2群レンズホルダー21は重心に対して反時計回りに回転しようとする。このローリングは像振れ補正性能に支障を来たすため、従来では、図12に示すように、3本のバネ37をベース部材34とレンズホルダー35の間に掛けている。そして、中央のバネ37はレンズホルダー35に掛かるバネ力を安定させるためだけでなく、ローリングを緩和する役割も果たしていた。
【0038】
本実施例では、前述の中央のバネに相当するバネは存在せず、2本のバネ23のみとしているため、このローリングに対する影響を受ける。しかし、2本のバネ23の一方の端部であるフック部23aが作る平面を像振れ補正のための駆動方向A,Bの軸方向と平行にしている。詳しくは、図4や後述の図6において、右側のバネ23のフック部23aが作る平面はA軸方向に平行に、左側のバネ23のフック部23aが作る平面はB軸方向に平行に、それぞれしている。このことにより、ローリングに対する影響を解決(詳細は後述)している。
【0039】
図12は、上記したように3本のバネ37を掛けている従来例である。ベース部材34とレンズホルダー35との間に3つのボール36を配置して、ベース部材34とレンズホルダー35のフック係止部37aに3本のバネ37のフック部を掛けてレンズホルダー35が光軸と直交する平面を滑らかに動けるようにしている。
【0040】
バネ37の掛け方は、左右の2本のバネ37はフック部が作る平面がY軸と平行になるように、中央のバネ37はフック部が作る平面がX軸と平行になるようにしており、いずれも像振れ補正のための駆動方向AとBに対して45°の傾きをもっている。このように3本のバネ37が掛けられたレンズホルダー35が像振れ補正駆動でX軸に沿って少し動いた状態を示したものが図13であり、X軸に沿った駆動によって前述のローリング力が重心に対して反時計回りに働いている。なお、図13において、fは像振れ補正のための駆動力(合力)f1,f2はその分力である。
【0041】
図13において、像振れ補正のための駆動力fに対する反力rが3本のバネ37によってレンズホルダー35に働いており、左右の2本のバネ37に対しては重心に対してレンズホルダー35を反時計回りに回転させようとするrの分力r1が生じている。しかし、中央のバネ37の反力rによってそれを打ち消す向きに力が働くことで、ローリングが緩和されるようになっている。
【0042】
すなわち、図12および図13の従来構成においては、中央のバネ37を取り除くと、ボール36の配置と中央を除いた左右の2本のバネ37の配置からレンズホルダー35は2本のバネ37側に倒れて機構が成立しなくなる。また、この倒れを考えないとしてもローリングを増大させる方向に左右の2本のバネ力が働き防振性能に支障を来たすことになる。
【0043】
図6は、図13と同様に、本実施例の2群レンズホルダー21が像振れ補正駆動でX軸に沿って図中右方向に少し動いた状態を示している。
【0044】
像振れ補正のための駆動力(合力)としてFが働いた時、2群レンズホルダー21はその反力Rを2本のバネ23から受ける。したがって、2群レンズホルダー21のフック係止部21aはその反力Rを受けるが、その反力Rの大きさはバネ23のフック部23aがフック係止部21aに対してどのように掛かっているかによって大きく変わる。
【0045】
図7は、図6に示す2群レンズホルダー21の右側のフック係止部21a周りを拡大した図である。
【0046】
フック係止部21aはバネ23のフック部23aが作る平面(バネの円弧状端部を含む平面)が像振れ補正ための駆動方向であるA軸方向と平行になるような形状になっている。また逆に、図7では不図示であるが、左側のフック係止部21aはバネ23のフック部23aが作る平面(バネの円弧状端部を含む平面)が像振れ補正ための駆動方向であるB軸方向と平行になるような形状となっている。したがって、バネ23のフック部23aは2群レンズホルダー21のフック係止部21aに対して、R1方向とR2方向とで摩擦力が大きく変わる。バネ23のフック部23aはバネ力により2群レンズホルダー21のフック係止部21aの溝の最下点に位置するため、2群レンズホルダー21がR1方向に変位したとしても最下点でフック部23aが転がってその変位を吸収しようとする。また、R2方向に変位した時はフック部23aの自由度の有る輪の中でフック係止部21aとの接触点が常に擦れながら変化する。R1方向はフック係止部21aに対して転がり摩擦となり(フック係止部21aに対してフック部23aが転がるため)、摩擦力としては非常に小さい。これに対し、R2方向は滑り摩擦(フック係止部21aに対してフック部23aが滑るため)を生じるため、非常に大きい摩擦力を生じる。
【0047】
よって、図6の反力RはR1とR2に力を分けた場合、滑り摩擦の分力R2が非常に大きく、分力R1が無視できるくらいの摩擦力となり、結果的に2群レンズホルダー21を重心に対して回転させようとする力は、図8に示すように合力R3として表れる。
【0048】
前述したように、像振れ補正のための駆動時に発生するローリングは、F1で表される重心に対して反時計周りの力である。これに対し、バネ23によって受ける反力の合力はR3で表されるように重心に対して時計回りであり、このようなバネの掛け方によってローリングを相殺する方向に力が働いていることがわかる。
【0049】
上記は像振れ補正駆動として2群レンズホルダー21をX方向に動かした時の説明であるが、左右対称形状であるため、X方向の逆側(図8の右側)に動かした時も同様の結果となる。
【0050】
図9は、2群レンズホルダー21が像振れ補正駆動でY軸に沿って図中上方に少し動いた状態を示したものである。
【0051】
像振れ補正駆動の合力としてFが働いた時、2群レンズホルダー21はその反力Rを2本のバネ23から受ける。像振れ補正駆動時に発生する力はFの分力としてのF3,F4となり、重心に対して回転する方向には分力F3が効いてくる。しかし、2群レンズホルダー21がY軸に対して左右対称形状であるため、分力F3が互いに相殺する方向になる。そのため、ローリングは発生しない。反力Rに対しては分力としてR4,R5が発生し、重心に対して回転する方向には分力R4が効いてくるが、同じ理由から分力R4が互いに相殺する方向になるためローリングは発生しない。
【0052】
図6のX軸に沿って動く場合で説明したように、実際にはバネ23の掛け方でR4の強弱が変わってくるが、お互いに相殺されることに代わりが無いため、詳細な説明は省略する。
【0053】
上記は像振れ補正駆動として、2群レンズホルダー21をY方向に動かした時の説明であるが、左右対称形状であるため、Y方向の逆側(図9の下方方向)に動かした時も同様にローリングは発生しない。
【0054】
図10は、2群レンズホルダー21が像振れ補正駆動によりA軸に沿って図中斜め右上の方向に少し動いた状態を示したものである。
【0055】
像振れ補正駆動の合力としてFが働いた時、2群レンズホルダー21はその反力Rを2本のバネ23から受ける。像振れ補正駆動時に発生する力はFの分力としてのF5,F6となり、重心に対して回転する方向には右側が分力F5、左側が分力F6というように効いてくる。しかし、F5>F6であるため、2群レンズホルダー21はその差分の力で重心に対して反時計回りに回転しようとするローリングが発生する。一方、反力として2群レンズホルダー21がバネ23から受ける力は前述したように左右のフック係止部21aの摩擦力により異なり、この場合、右側の反力Rの方が滑り摩擦で左側の反力Rが転がり摩擦のため、右側の反力Rの方が非常に強い力となる。
【0056】
よって、作図上の分力の大小はR7>R6となるが、摩擦力を考慮すると実際に働く力の大きさとしてはR6>R7となって重心に対して時計回りに回転する方向に力が働く。この場合も反時計回りのローリングに対して時計回りに反力が働くことでローリングが緩和されるようになっている。
【0057】
上記は像振れ補正駆動として、2群レンズホルダー21をA軸方向に動かした時の説明であるが、左右対称形状であるため、A軸方向の逆側(図10の斜め左下方向)に動かした時も同様にローリングを緩和する結果となる。
【0058】
図11は、2群レンズホルダー21が像振れ補正駆動でB軸に沿って図中斜め右下方向に少し動いた状態を示したものである。
【0059】
像振れ補正駆動の合力としてFが働いた時2群レンズホルダー21はその反力Rを2本のバネ23から受ける。像振れ補正駆動時に発生する力はFの分力としてのF7,F8となり、重心に対して回転する方向には右側が分力F7、左側が分力F8というように効いてくる。しかし、F8>F7であるため、2群レンズホルダー21はその差分の力で重心に対して反時計回りに回転しようとするローリングが発生する。一方、反力として2群レンズホルダー21がバネ23から受ける力は前述したように左右のフック係止部21aの摩擦力により異なり、この場合、右側の反力Rの方が転がり摩擦で左側の反力Rが滑り摩擦のため、左側の反力Rの方が非常に強い力となる。
【0060】
よって、作図上の分力の大小はR8>R9となるが、摩擦力を考慮すると実際に働く力の大きさとしてはR9>R8となって重心に対して時計回りに回転する方向に力が働く。この場合も反時計回りのローリングに対して時計回りに反力が働くことでローリングが緩和されるようになっている。
【0061】
上記は像振れ補正駆動として、2群レンズホルダー21をB軸方向に動かした時の説明であるが、左右対称形状であるため、B軸方向の逆側(図11の斜め左上方向)に動かした時も同様にローリングを緩和する結果となる。
【0062】
以上のように、2群レンズホルダー21をXY平面において、X方向、Y方向、A軸方向、B軸方向に駆動させた場合を述べたが、いずれの場合もローリングが発生する場合にはそれをキャンセルする方向にバネ力が作用していることがわかる。
【0063】
また、上記以外の駆動方向に2群レンズホルダー21を動かした場合も何れかの駆動の組み合わせとなり、ローリングが発生した場合にそれをキャンセルする方向にバネ力が作用することは変わらない。
【0064】
尚、本実施例では、像振れ補正駆動の際にマグネット22A,22Bにかかる力で説明をした。しかし、それ以外の力(重力や外的な慣性力等)の場合にもレンズホルダーの重さで支配的となっているマグネットに掛かる場合で説明がつくため、同様と考えてよい。
【0065】
以上の実施例における像振れ補正装置は、2群ベース部材28に対し、光軸と直交する平面内で補正レンズ26を相対的に移動可能に保持する2群レンズホルダー21を有する。さらに、2群レンズホルダー21を移動させるための2個のマグネット22A,22Bもしくはコイルユニット24A,24Bと、2群ベース部材28と2群レンズホルダー21に挟持される3個のボール25とを有する。さらに、一方と他方の端に設けられるフック部23aが2群ベース部材28と2群レンズホルダー21にそれぞれ係止され、2群ベース部材28と2群レンズホルダー21の間に3個のボール25を挟持するように付勢する2個のバネ23を有する。
【0066】
そして、マグネット22A,22Bが取り付けられ、補正レンズ26を保持した2群レンズホルダー21の重心が、3個のボール25によって形成される三角形の内部に存在するように構成する。なお、この位置関係は、補正レンズ26の中心が、他の撮影レンズ光学系の光軸に一致するように2群レンズホルダー21が持ち上げられた状態を基準としている。さらに、2個のバネ23によって形成される平面内における線分が、ボール25が形成する三角形の2辺を略均等に跨ぐように、上記マグネット22A,22Bもしくはコイルユニット24A,24B、ボール25およびバネ23をそれぞれ配置している。2個のバネ23によって形成される線分は、より具体的には2つのフック係止部21aが作る線分である。
【0067】
よって、部品点数削減と組み立て性の向上を図ることが可能となる。
【0068】
さらに、2個のマグネット22A,22Bもしくはコイルユニット24A,24Bより成る駆動手段は、2群レンズホルダー21をA軸方向(第一の方向)および該A軸方向と直交するB軸方向(第二の方向)に移動させるためのものである。そして、2個のバネ23のうち、一つのバネのフック部23aが作る平面がA軸方向と平行になるように、該フック部23aに対して2群レンズホルダー21のフック係止部21aが設けられている。同じく、もう一つのバネのフック部23aが作る変面がB軸方向と平行になるように、該フック部23aに対して2群レンズホルダー21のフック係止部21aが設けられている。
【0069】
また、バネ23のフック部23aが作る平面とは、該バネ23の円弧状端部を含む平面のことである。そして、A軸方向に移動させる一方のマグネット22A,22Bもしくはコイルユニット24A,24Bの近傍にあるバネ23のフック部23aが作る平面とA軸方向とは直交するようにしている。同じく、B軸方向に移動させる他方のマグネット22A,22Bもしくはコイルユニット24A,24Bの近傍にあるバネ23のフック部23aの向きとB軸方向とは直交するようにしている。
【0070】
よって、2群レンズホルダー21と2群ベース部材28との間に掛け難い中央のバネを除く2本のバネだけでローリングの起こらない像振れ補正装置を成立させることができるため、部品点数削減と組み立て性向上に大きく貢献し、カメラの小型化にも有効となる。
【0071】
なお、本実施例では、2群レンズホルダー21にマグネット22Aおよび22Bが取り付けられている構成で説明したが、2群レンズホルダー21にコイルユニット24Aおよび24Bを取り付ける構成でも同様である。このとき、マグネット22Aおよび22Bは2群ベース部材28に取り付けられる。重心については、コイルユニット24Aおよび24Bが取り付けられ、補正レンズ26を保持した2群レンズホルダー21の重心を考えれば良い。
【0072】
(本発明と実施例の対応)
2群ベース部材28が本発明のベース部材に相当する。また、2群レンズホルダー21が、本発明の、像振れ補正用のレンズを像振れ補正用のレンズ以外の光学系の光軸と直交する平面内で相対的に移動可能に保持する保持部材に相当する。また、2個のマグネット22A,22Bもしくはコイルユニット24A,24Bが、本発明の、駆動手段の構成要素を成し、その一方が保持部材に取り付けられる2個のマグネットもしくは2個のコイルに相当する。また、3個のボール25が本発明の3個のボールに相当し、2個のバネ23が本発明の2個のバネに相当する。
【0073】
上記実施例では、像振れ補正装置を具備する撮像装置であるカメラに適用した例を述べているが、像振れ補正が可能な撮像機能を有する携帯電話や双眼鏡等の光学装置にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0074】
21 レンズホルダー
21a フック係止部
22A マグネット
22B マグネット
23 バネ
23a 係止部
24A コイルユニット
24B コイルユニット
25 ボール
28 2群ベース部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材に対し、像振れ補正用のレンズを前記補正用のレンズ以外の光学系の光軸と直交する平面内で相対的に移動可能に保持する保持部材と、
前記保持部材に取り付けられ、前記保持部材を移動させる駆動手段の構成要素である2個のマグネットと、
前記ベース部材と前記保持部材の間に配置される3個のボールと、
一方と他方の端に設けられるフック部が前記ベース部材と前記保持部材にそれぞれ係止され、前記ベース部材と前記保持部材の間に前記3個のボールを挟持するように付勢する2個のバネとを有する像振れ補正装置であって、
前記2個のマグネットおよび前記像振れ補正用のレンズが取り付けられた状態における前記保持部材の重心が、前記像振れ補正用のレンズの中心が前記光軸と一致する位置に前記保持部材が存在するときに、前記平面内において前記3個のボールによって形成される三角形の内部に位置し、
前記2個のバネによって形成される前記平面内における線分が、前記三角形の2辺を跨ぐように、前記2個のマグネット、前記3個のボールおよび前記2個のバネを配置したことを特徴とする像振れ補正装置。
【請求項2】
ベース部材と、
前記ベース部材に対し、像振れ補正用のレンズを前記補正用のレンズ以外の光学系の光軸と直交する平面内で相対的に移動可能に保持する保持部材と、
前記保持部材に取り付けられ、前記保持部材を移動させる駆動手段の構成要素である2個のコイルと、
前記ベース部材と前記保持部材の間に配置される3個のボールと、
一方と他方の端に設けられるフック部が前記ベース部材と前記保持部材にそれぞれ係止され、前記ベース部材と前記保持部材の間に前記3個のボールを挟持するように付勢する2個のバネとを有する像振れ補正装置であって、
前記2個のコイルおよび前記像振れ補正用のレンズが取り付けられた状態における前記保持部材の重心が、前記像振れ補正用のレンズの中心が前記光軸と一致する位置に前記保持部材が存在するときに、前記平面内において前記3個のボールによって形成される三角形の内部に位置し、
前記2個のバネによって形成される前記平面内における線分が、前記三角形の2辺を跨ぐように、前記2個のコイル、前記3個のボールおよび前記2個のバネを配置したことを特徴とする像振れ補正装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記保持部材を第一の方向および該第一の方向と直交する第二の方向に移動させるためのものであり、
前記2個のバネのうち、一つのバネのフック部が作る平面が前記第一の方向と平行になるように、もう一つのバネのフック部が作る平面が前記第二の方向と平行になるように、それぞれのフック部に対して前記保持部材のフック係止部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の像振れ補正装置。
【請求項4】
前記バネのフック部が作る平面とは、前記バネの円弧状端部を含む平面であり、
前記第一の方向に移動させる一方の前記マグネットもしくはコイルの近傍にあるバネのフック部が作る平面と前記第一の方向とは直交し、前記第二の方向に移動させる他方の前記マグネットもしくはコイルの近傍にあるバネのフック部が作る平面と前記第二の方向とは直交することを特徴とする請求項3に記載の像振れ補正装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の像振れ補正装置を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の像振れ補正装置を有することを特徴とする光学装置。
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材に対し、像振れ補正用のレンズを前記補正用のレンズ以外の光学系の光軸と直交する平面内で相対的に移動可能に保持する保持部材と、
前記保持部材に取り付けられ、前記保持部材を移動させる駆動手段の構成要素である2個のマグネットと、
前記ベース部材と前記保持部材の間に配置される3個のボールと、
一方と他方の端に設けられるフック部が前記ベース部材と前記保持部材にそれぞれ係止され、前記ベース部材と前記保持部材の間に前記3個のボールを挟持するように付勢する2個のバネとを有する像振れ補正装置であって、
前記2個のマグネットおよび前記像振れ補正用のレンズが取り付けられた状態における前記保持部材の重心が、前記像振れ補正用のレンズの中心が前記光軸と一致する位置に前記保持部材が存在するときに、前記平面内において前記3個のボールによって形成される三角形の内部に位置し、
前記2個のバネによって形成される前記平面内における線分が、前記三角形の2辺を跨ぐように、前記2個のマグネット、前記3個のボールおよび前記2個のバネを配置したことを特徴とする像振れ補正装置。
【請求項2】
ベース部材と、
前記ベース部材に対し、像振れ補正用のレンズを前記補正用のレンズ以外の光学系の光軸と直交する平面内で相対的に移動可能に保持する保持部材と、
前記保持部材に取り付けられ、前記保持部材を移動させる駆動手段の構成要素である2個のコイルと、
前記ベース部材と前記保持部材の間に配置される3個のボールと、
一方と他方の端に設けられるフック部が前記ベース部材と前記保持部材にそれぞれ係止され、前記ベース部材と前記保持部材の間に前記3個のボールを挟持するように付勢する2個のバネとを有する像振れ補正装置であって、
前記2個のコイルおよび前記像振れ補正用のレンズが取り付けられた状態における前記保持部材の重心が、前記像振れ補正用のレンズの中心が前記光軸と一致する位置に前記保持部材が存在するときに、前記平面内において前記3個のボールによって形成される三角形の内部に位置し、
前記2個のバネによって形成される前記平面内における線分が、前記三角形の2辺を跨ぐように、前記2個のコイル、前記3個のボールおよび前記2個のバネを配置したことを特徴とする像振れ補正装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記保持部材を第一の方向および該第一の方向と直交する第二の方向に移動させるためのものであり、
前記2個のバネのうち、一つのバネのフック部が作る平面が前記第一の方向と平行になるように、もう一つのバネのフック部が作る平面が前記第二の方向と平行になるように、それぞれのフック部に対して前記保持部材のフック係止部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の像振れ補正装置。
【請求項4】
前記バネのフック部が作る平面とは、前記バネの円弧状端部を含む平面であり、
前記第一の方向に移動させる一方の前記マグネットもしくはコイルの近傍にあるバネのフック部が作る平面と前記第一の方向とは直交し、前記第二の方向に移動させる他方の前記マグネットもしくはコイルの近傍にあるバネのフック部が作る平面と前記第二の方向とは直交することを特徴とする請求項3に記載の像振れ補正装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の像振れ補正装置を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の像振れ補正装置を有することを特徴とする光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−84013(P2013−84013A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−18548(P2013−18548)
【出願日】平成25年2月1日(2013.2.1)
【分割の表示】特願2008−10445(P2008−10445)の分割
【原出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月1日(2013.2.1)
【分割の表示】特願2008−10445(P2008−10445)の分割
【原出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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