説明

元止め式電気温水器

【課題】湯沸かしタンクでの沸き上げ時に、水栓の吐水口からポタポタと水滴が落ちることのない元止め式電気温水器を提供する。
【解決手段】湯沸かしタンク2と自動水栓9とをつなぐ出湯管路8にアスピレーター6を設け、このアスピレーター6から分岐した分岐管路18を排水管20に接続してなる元止め式電気温水器において、自動水栓9とアスピレーター6との間に、自動水栓9側からの水の逆流を防ぐ逆止弁7を設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、元止め式電気温水器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、湯沸かしタンクの上流側で流路を閉鎖できる元止め式の温水器として、例えば特許文献1に開示されているような構造のものが存在し、特許文献1に開示されている元止め式電気温水器においては、吐水後の出湯管内の水位を下げることで、膨張水による水位上昇を補うとともに、時間経過後の再吐水時に冷水が出ないようにしている。
即ち、図5に示すように、湯沸かしタンク2と自動水栓9とをつなぐ出湯管路8にアスピレーター6が設けられ、このアスピレーター6から分岐した分岐管路18は排水管20に接続されており、自動水栓9の吐水口9aから吐水させた後に出湯管路8内の水位Pを下げることで、アスピレーター6から自動水栓9に至る立上管8a内が空の状態となるようにしている。
【特許文献1】特許第3764591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような元止め式の電気温水器において、吐水口9aには細かい網目のフィルター等が設けられているため表面張力が作用し、吐水後に、下向きの吐水口9a内に残水Wが残されることとなる。
この状態で、湯沸かしタンク2内で湯の沸き上げが開始されると、図6に示すように、膨張水により水位Pが少し上昇されることとなり、この水位Pの上昇により、立上管8a内の空気が押圧され、これにより吐水口9a内に残されている残水Wが押し出されて、自動水栓の吐水口9aからポタポタと水滴が漏れ出し、あたかも自動水栓9が止水不良であるような感じを与えてしまうという問題点があった。
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、湯沸かしタンク内での湯の沸き上げ時に、水栓からのポタ漏れを無くすことのできる元止め式電気温水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明は、湯沸かしタンクと水栓とをつなぐ出湯管路にアスピレーターを設け、該アスピレーターから分岐した分岐管路を排水管に接続してなる元止め式電気温水器において、前記水栓とアスピレーターとの間に、水栓側からの水の逆流を防ぐ逆止弁を設けたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
水栓とアスピレーターとの間に、水栓側からの水の逆流を防ぐ逆止弁を設けたことにより、吐水後に、逆止弁により水位が下がらないために、水栓とアスピレーターとの間の管路内は水が充満された状態に維持され、アスピレーターに上方からの水のヘッド圧がかかることとなり、この状態で、湯沸かしタンク内で湯の沸き上げが行われると、ヘッド圧がアスピレーターにかかっているために、膨張水は、低圧側の分岐管路を通り排水管側に流れて排水されることとなり、水栓の吐水口からポタポタと水が漏れ出すことがない。
【0008】
また、水栓とアスピレーターとの間に逆止弁を設けた構成の元止め式電気温水器において、分岐管路に、排水管側からの空気の侵入を防ぐ逆止弁を設けて構成することもできる。
このように構成すれば、たとえアスピレーターと水栓間の管路が太い場合であっても、分岐管路を通り排水管側から空気がアスピレーターと水栓間の管路内に入ることがなく、水栓とアスピレーターとの間の管路内は水が充満された状態に維持され、アスピレーターにはヘッド圧がかかるために、湯沸かしタンク内で湯の沸き上げが行われると、排水管側に膨張水が流れて、水栓からポタポタと水滴が漏れることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、元止め式電気温水器の概略配置構成図である。
自動水栓9が取り付けられている洗面器21の下方のキャビネット内部に設置される電気温水器本体1内には、湯沸かしタンク2と、電磁弁3と、基板4と、温調弁5と、アスピレーター6と、逆止弁7が設けられている。
湯沸かしタンク2は、内部にヒーター2aを備えており、ヒーター2aにより内部で湯が生成されて貯えられるものである。
湯沸かしタンク2の側面には、湯の沸き上げ温度が80〜85℃程度となるように調整する温調バイメタル15と、高温となった時に自動的にヒーター2aへの通電を遮断できる過昇バイメタル16が設けられており、過昇バイメタル16にはスイッチ17が接続されている。
【0010】
また、電磁弁3は給水管11内に設けられており、給水管11には、元栓12を通り定流量弁13を介して水道管からの水が供給されるように構成されている。
電磁弁3は、洗面器21上に立設状に設置した自動水栓9のセンサー10が人の手を検知した時に開かれるものであり、基板4により開閉制御されるものである。
この電磁弁3の下流側で第1枝管14aと第2枝管14bに分岐されており、第1枝管14aは湯沸かしタンク2の底面に接続されて湯沸かしタンク2内に給水できるものであり、また、第2枝管14bは、湯沸かしタンク2の出口側の出湯管路8に設けられた温調弁5に接続されている。
【0011】
この温調弁5では、湯沸かしタンク2内からの湯と、第2枝管14bから供給される水を混合して、36〜38℃の適温のお湯に調整することができるものである。
出湯管路8内の温調弁5の下流側に、アスピレーター6と、更にその下流側に逆止弁7が設けられ、この逆止弁7の下流側で、出湯管路8の一部が上方へ立ち上げられた立上管8aが形成されており、立上管8aの上端に自動水栓9が接続されている。なお、前記立上管8aは、逆止弁7の下流側に継手22を設けて接続した構成であっても良い。
【0012】
また、アスピレーター6から分岐して分岐管路18が設けられており、この分岐管路18は図2の概略図で示すように、内部にトラップ19aを有する排水器具19を介して排水管20に接続されている。
【0013】
次に、元止め式電気温水器の動作を説明する。
自動水栓9の吐水口9aの下方に手を差し入れると、センサー10で手が検知され、このセンサー10の検知信号が基板4に伝えられて、基板4からの信号で電磁弁3が開かれる。これにより、湯沸かしタンク2内に貯えられている湯が出湯管路8を通り、温調弁5で適温に調整されて、アスピレーター,逆止弁7を通り立上管8aを上昇して自動水栓9の吐水口9aから吐水されるものである。
吐水口9aから手が離れると、電磁弁3が閉じられて吐水口9aからの吐水が停止されるが、この状態で、逆止弁7が設けられているため、自動水栓9内の水および立上管8a内の水は上流側へ戻ることがなく、立上管8aおよび自動水栓9内に水が満たされたままの状態となる。
なお、吐水口9aには、細かい網目のフィルター、あるいは泡沫水生成用の網体が設けられており、細かい網目であるため表面張力が強く作用し、吐水口9aが下向きであっても、水は外側へ落下しないものである。
【0014】
このような状態において、アスピレーター6には、立上管8aおよび自動水栓9内に満たされている残水によるヘッド圧がかかっているために、湯沸かしタンク2内で湯を沸き上げる時に、図3に示すように、湯沸かしタンク2からの膨張水は、低圧側の分岐管路18を通り排水管20に排水されることとなる。
従って、湯沸かしタンク2で湯を沸き上げた時にも、従来のように残水が吐水口9aからポタポタと漏れ出すことはない。
【0015】
このように本発明の元止め式電気温水器では、自動水栓9とアスピレーター6との間に、自動水栓9側からの水の逆流を防ぐ逆止弁7を設けたことで水位が下がらず、アスピレーター6にヘッド圧をかけることができ、これにより湯沸しタンク2で沸き上げが行われると排水管20側に膨張水を良好に流すことができ、吐水口9aからのポタ漏れを無くすことができるものである。
【0016】
次に、図4は変更例を示すものである。
図において、水道管からの水が供給される給水管11は、電磁弁3の下流側で第1枝管14aと第2枝管14bに分岐され、第1枝管14aは湯沸かしタンク2の底面に接続され、第2枝管14bは、湯沸かしタンク2の出口側の出湯管路8に設けられた温調弁5に接続されている。出湯管路8の温調弁5の下流側にアスピレーター6と、更にその下流側に逆止弁7が設けられ、この逆止弁7の下流側で、出湯管路8の一部の立上管8aが継手22を介して上方へ立ち上げられ、立上管8aの上端に自動水栓9が接続されている。また、アスピレーター6から分岐管路18が設けられ、この分岐管路18は排水器具19を介して排水管20に接続されている。
【0017】
図4では、分岐管路18内に逆止弁23を設けたものであり、この逆止弁23で排水管20側からの空気の侵入を防ぐことができるものとなる。
即ち、立上管8aが太い場合であっても、立上管8aおよび自動水栓9内に排水管20側から空気が入り込むことが逆止弁23により阻止されるため、立上管8aおよび自動水栓9内には空気が入らず、そのため自動水栓9および立上管8a内は残水で満たされたままの状態に維持されるものである。そのため、アスピレーター6には立上管8aおよび自動水栓9内の残水によるヘッド圧がかかっているため、湯沸かしタンク2で沸き上げが行われても、膨張水は良好にアスピレーター6から分岐管路18を通り排水管20に排出されて、吐水口9aから水滴がポタ漏れすることがないものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】元止め式電気温水器の概略配置構成図である。
【図2】湯沸かしタンクと自動水栓間の管路配置構成図であり、吐水後に残水が残されたままの状態を示している。
【図3】図2の状態から、湯沸かしタンクで沸き上げが行われた時に膨張水が排水管から排出される流れを示す概略構成図である。
【図4】アスピレーターの分岐管路内に逆止弁を設けた変更例の湯沸かしタンクと水栓と排水管周辺の配置構成図である。
【図5】従来の吐水後の水位を示す概略配置構成図である。
【図6】従来、湯沸かしタンクで沸き上げ中の水位を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0019】
1 電気温水器本体
2 湯沸かしタンク
2a ヒーター
3 電磁弁
5 温調弁
6 アスピレーター
7 逆止弁
8 出湯管路
8a 立上管
9 自動水栓
9a 吐水口
10 センサー
11 給水管
14a 第1枝管
14b 第2枝管
18 分岐管路
19 排水器具
20 排水管
23 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯沸かしタンクと水栓とをつなぐ出湯管路にアスピレーターを設け、該アスピレーターから分岐した分岐管路を排水管に接続してなる元止め式電気温水器において、
前記水栓とアスピレーターとの間に、水栓側からの水の逆流を防ぐ逆止弁を設けたことを特徴とする元止め式電気温水器。
【請求項2】
前記分岐管路に、前記排水管側からの空気の侵入を防ぐ逆止弁を設けたことを特徴とする請求項1に記載の元止め式電気温水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−41888(P2009−41888A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210377(P2007−210377)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】