説明

元素分析前処理用容器及び元素分析方法

【課題】元素分析前処理用容器であって、耐熱性と、耐酸性等の耐薬品性に優れ又熱処理に最適で、かつ容器内の溶液の移し替えをスムーズに行うことが可能な元素分析前処理用容器、及びこれを用いた元素分析方法を提供する。
【解決手段】元素分析の前処理で、少なくとも測定試料を溶剤で溶解する際に使用される容器であって、該容器内面の面粗さがRa≦5μm、Rmax≦20μmであり、かつ容器の材質がセラミックである元素分析前処理用容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、元素分析前に試料を前処理するための元素分析前処理用容器、及び、これを用いた元素分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物、珪素樹脂、酸化ビスマス、酸化アンチモン等を成分として含有する、モールディングコンパウンドやシリコン基板封止材等の電子材料が、デバイス製造において広く用いられている。そして、これらの材料に含有される不純物が、デバイスの動作、性能に影響を与えることが知られている。このことは、デバイス製造の歩留まりや製品の信頼性にも関わることであり、デバイスの製造工程においては、材料に含有される不純物の低減が求められている。特に、半導体素子は、近年の集積度の向上にともない、材料に含有される不純物の低減が強く求められている。
【0003】
そこで、デバイス製造に用いられるこれらの材料を、例えば誘導結合プラズマ法(以下、ICP法とする場合がある。)やフレームレス原子吸光法等の元素分析方法により分析し、材料中の不純物含有量を管理することが重要となっている。
【0004】
このICP法やフレームレス原子吸光法等の元素分析方法による分析の場合、分析前に、デバイス製造に用いられる材料などの試料を分析が可能な溶液にする必要がある。特に、試料中の不純物元素を分析する場合には、主成分である有機化合物や珪素樹脂等を取り除くための前処理をするのが一般的である。
【0005】
この前処理には、例えば非特許文献1に開示されているように、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製容器、白金製容器又は石英製容器などが用いられていた。
そして、従来は試料中から有機化合物等の主成分を除去するために、白金製容器又は石英製容器中で700℃以上の高温に加熱して試料を灰化処理し、そして、PTFE製容器に移し替えて硝酸溶液に溶かすといった前処理を行い、その後、元素分析を行っていた。
【0006】
しかし、このような従来の元素分析前の前処理には以下のような問題点がある。
石英製容器は耐熱性に優れるが、耐酸性に劣り、一方、PTFE製容器は、耐酸性に優れるが、耐熱性に劣る。そのため、従来は、上記のように加熱処理と、酸溶解処理とで異なる容器を用いる必要があった。しかし、容器の移し替えには時間がかかり、また、移し替えの際には不純物混入のリスクがあるという問題があった。特に、有機化合物、珪素樹脂、酸化ビスマス、酸化アンチモン等の成分を複数含む材料を前処理する場合、非常に多くの元素分析前処理用容器を用いることとなり、不純物混入のリスクが非常に高くなる上に、作業が非常に煩雑になるという問題があった。
【0007】
また、分析のバックグラウンドをそろえるために元素分析前処理用容器は入念に洗浄する必要がある。したがって、従来のように前処理で複数の容器を用いる場合には、容器の洗浄のために、多大な労力及び時間が必要となるという問題があった。
【0008】
さらに、白金製容器を用いた場合では、白金製容器中に存在する不純物元素が分析試料に混入し、その影響により分析結果にバラツキが発生し、精密な元素分析を確実に行うことができないという問題があった。
【0009】
そして、容器移し替えの際に、移しきれずに容器内表面に溶液が残り、それによって前処理の後に行う微量分析を精密に行うことができなくなるという問題があった。
【0010】
【非特許文献1】ぶんせき 2004 8、p444〜448
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、元素分析前処理用容器であって、耐熱性と、耐酸性等の耐薬品性に優れ又熱処理に最適で、かつ容器内の溶液の移し替えをスムーズに行うことが可能である元素分析前処理用容器、及びこれを用いた元素分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、元素分析の前処理で、少なくとも測定試料を溶剤で溶解する際に使用される容器であって、該容器内面の面粗さがRa≦5μm、Rmax≦20μmであり、かつ容器の材質がセラミックであることを特徴とする元素分析前処理用容器を提供する(請求項1)。
【0013】
このように、元素分析前処理用容器を、容器内面の表面粗さがRa≦5μm、Rmax≦20μmであり、かつ容器の材質がセラミックである容器とすれば、容器から他の容器へ液体を移し替える時、無駄なく移すことが出来、分析の精度を向上させることができる。しかも、この容器は、耐熱性、耐薬品性に優れるものであるため、加熱処理、酸溶解処理等の複数の工程を含む前処理を、複数の容器を用いることなく、同一の容器を用いて行うことも可能である。したがって、容器の移し替えに伴う不純物混入のリスクを低減することができ、この観点からも精密な元素分析を行うためには有利である。さらに、容器の移し替えに要していた時間や、容器の洗浄に要していた時間及び労力を削減することができ、コスト低減及び作業の合理化の効果もある。
【0014】
この場合、前記セラミックが、AlN、SiC、SiN、BN、Alのいずれかであることが望ましい(請求項2)。また、前記容器がCVD法で製造されたものであることが好ましい(請求項3)。
【0015】
このように、AlN、SiC、SiN、BN、Alのいずれかのセラミックであれば、容器は、耐熱性と耐薬品性に優れており、結果として耐久性にも優れ長寿命である。さらに、容器をCVD法によって製造することで、純度の高いセラミック容器にできる。これを元素分析の前処理に用いれば、容器由来の試料の汚染が殆どなく、前処理後の元素分析を精密に行うことが可能となる。
【0016】
また、前記容器の内面における溶剤との接触角が10°より大である容器が好ましい(請求項4)。
このように、容器の内面における溶剤との接触角を10°より大とすれば、容器から他の容器へ液体を移し替える時、無駄なく移すことが出来、分析の精度を向上させることができる。
【0017】
次に本発明では、少なくとも、試料の加熱処理工程、酸溶解処理工程を含む前処理を行い、その後、元素分析を行う方法であって、前記前処理を、上記本発明の元素分析前処理用容器を用いて行うことを特徴とする元素分析方法を提供する(請求項5)。
【0018】
本発明の元素分析前処理用容器は、耐熱性、耐薬品性に優れるものであるため、従来のように加熱処理工程と酸溶解処理工程とで異なる複数の容器を用いる必要がない。したがって、従来のように、加熱処理工程と酸溶解処理工程とで異なる容器を用いて前処理を行う場合と比較して、工程時間を大幅に短縮することができ、また不純物混入のリスクを少なくすることができ、その後の元素分析を精密に行うことができる。
【0019】
前記加熱処理として、少なくとも、空気中、400℃以上で灰化処理を行うのが好ましい(請求項6)。
試料によっては灰化処理は400℃以上で可能であり、また、本発明の元素分析前処理用容器は耐熱性に優れているため、400℃以上の温度に充分に耐え得る。
【0020】
さらに、前記酸溶解処理工程において、用いる溶剤と前記容器内面との接触角が10°より大になるようにすることが好ましい(請求項7)。
このように、用いる溶剤と前記容器内面との接触角が10°より大になるようにすれば、容器から他の容器へ液体を移し替える時、無駄なく移すことが出来、分析の精度を向上させることができる。
【0021】
また、前記溶剤として、塩酸、硝酸、フッ酸、硫酸のいずれか一種類以上を用いるのが好ましい(請求項8)。
本発明の元素分析前処理用容器は耐薬品性に優れており、元素分析の前処理として上記溶剤を用いることが可能である。
【0022】
前記試料を、有機化合物及び/又は珪素樹脂とすることができる(請求項9)。
【0023】
本発明の元素分析前処理用容器は、耐熱性、耐薬品性に優れるため、例えば有機化合物、珪素樹脂等の試料を分析する場合の前処理を、一つの元素分析前処理用容器を用いて行うことが可能である。したがって、従来のように、加熱処理工程と酸溶解処理工程とで異なる容器を用いて前処理を行う場合と比較して、工程時間を大幅に短縮することができ、また不純物混入のリスクを少なくすることができる。そのため、有機化合物、珪素樹脂等の試料の前処理を迅速に行うことができ、しかも、その後の元素分析を精密に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に依れば、元素分析前処理用容器として、容器内面の面粗さがRa≦5μm、Rmax≦20μmであり、かつ容器の材質がセラミックである容器を用いることで、容器から他の容器へ液体を移し替える時、無駄なく移すことが出来、分析の精度を向上させることができる、及び、耐酸性と耐熱性の両方を向上させることができる。さらに、石英製容器の耐酸性やPTFE製容器の耐熱性の欠点を補って、種々の無機および有機系やそれらを混合した組成物の元素分析を目的とした前処理を一つの容器で行うことを可能とする。その結果、試料の前処理に伴う工程の煩雑性や時間の短縮も図れ、また、測定精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下では、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前述したように、石英製容器は耐熱性に優れるが、耐酸性に劣り、一方、PTFE製容器は、耐酸性に優れるが、耐熱性に劣る。そのため、従来は加熱処理と、酸溶解処理とで異なる容器を用いる必要があった。しかし、容器の移し替えには時間がかかり、また、移し替えの際には不純物混入のリスクがあるという問題があった。特に、有機化合物、珪素樹脂、酸化ビスマス、酸化アンチモン等の成分を複数含む材料を前処理する場合、非常に多くの元素分析前処理用容器を用いることとなり、不純物混入のリスクが非常に高くなる上に、作業が非常に煩雑になるという問題があった。
【0026】
さらに、容器内の面粗さが粗いと表面積が広くなり、液体が容器内表面に一部残ってしまい、容器移し替え時に移しきれない場合があったり、汚れが残り易いため、微量不純物が残り易く分析ミスをおかし、微量分析が困難となる問題があることが判った。
【0027】
そこで、本発明者らは、元素分析前処理用容器を、容器内面の表面粗さがRa≦5μm、Rmax≦20μmであり、かつ容器の材質がセラミックである容器とすれば、容器から他の容器へ液体を移し替える時、無駄なく移すことが出来、分析の精度を向上させることができる、及び、耐酸性と耐熱性の両方を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0028】
本発明の元素分析前処理用容器は、例えば、以下のような図1に示す方法によって製造することが出来る。
先ず、CVD法により、所望の形状の容器が得られるように成形された耐熱性基材11上にセラミックを蒸着させてセラミック層10aを堆積する。そして、蒸着反応終了後、それらを室温まで冷却して炉から取り出す(図1(a)参照。)。
この冷却の際、耐熱性基材11とセラミック層10aは、それぞれ熱膨張係数の違いから両者の間に隙間を生じる。この隙間を利用して、セラミック層10aを耐熱性基材11から引き抜いて分離することができ、それによってセラミック容器10を得る(図1(b)参照。)。このセラミック容器10の容器内面は、上記のようにCVD法によりセラミック層10aを堆積しただけの状態であり粗い。そこで次に、容器内表面を例えば#800以上のサンドペーパーを用いて機械的に研磨仕上げすることにより、本発明の面粗さを有する元素分析前処理用容器を得ることができる。この容器内面の面粗さの調整方法は特に限定されず、分散液に砥粒を分散した研磨剤を用いて研磨してもよい。
【0029】
このセラミックからなる元素分析前処理用容器は、耐熱性、耐薬品性に優れるものであり、また、急速な加熱及び冷却にも十分耐えうるものであるので、加熱処理、酸溶解処理等の複数の工程を有する前処理を、複数の容器を用いることなく、一つの容器を用いて行うことが可能である。したがって、容器の移し替えに伴う不純物混入のリスクを低減することができ、この観点からも精密な元素分析を行うためには有利である。さらに、容器の移し替えに要していた時間や、容器の洗浄に要していた時間及び労力を削減することができ、コスト低減の効果もある。
また、研磨仕上げすることにより、容器内表面の面粗さが小さいことから、容器表面に溶液が残留することや不純物が付着することを低減し、移し替え時もスムーズに速やかに行えることから、汚染なく精密な処理が可能となり、分析精度があがることとなる。
【0030】
なお、セラミックとしては、例えば、AlN、SiC、SiN、BN、Alなどが挙げられるが、材質がこれらの容器は、耐熱性と、耐薬品性に特に優れており、また耐久性にも優れ長寿命であるため好ましい。その中でも、AlN製容器や、PBN製容器は、耐フッ酸性に特に優れるものである。また、シリコン元素を成分として含まず、しかも、純度が高くて容器由来の汚染がほとんどないため、これらの容器を用いることで、従来は困難であったシリコン元素の微量分析を、高精度で行うことができる。
さらに、CVD法によって製造することで、純度の高いセラミック容器にできる。これを元素分析の前処理に用いれば、容器由来の試料の汚染が殆どなく、前処理後の元素分析を精密に行うことが可能となる。
【0031】
また、容器の内面における溶剤との接触角が10°より大であれば、容器と溶剤との濡れ性が悪いため、容器表面への不純物の付着を低減し、移し替え時もスムーズに速やかに行えることから、汚染なく精密な処理が可能となり、分析精度があがることとなる。
【0032】
そして、本発明は、以上のような元素分析前処理用容器を用いて、以下のような元素分析方法を提供する。
例えば、有機化合物及び/又は珪素樹脂といった試料に含まれる不純物元素を分析する場合は、本発明は、少なくとも、試料の加熱処理工程、酸溶解処理工程を含む前処理を行い、その後、元素分析を行う方法であって、前記前処理を、上記本発明の元素分析前処理容器を用いて行うことを特徴とする元素分析方法である。
【0033】
上記のように、有機化合物、珪素樹脂といった試料に含まれる不純物元素を分析する場合は、加熱処理、酸溶解処理を含む前処理を行い、有機化合物、珪素樹脂を除去した溶液(測定用試料)にした後に、不純物元素の分析を行う。具体的には、有機化合物の場合は、硫酸分解の後に電気炉等で加熱して有機化合物を除去し、その後硝酸を加えて溶液とする。また、珪素樹脂の場合には、フッ酸を加えた後に加熱して珪素樹脂を除去し、その後硝酸等を加えて溶液とする。
【0034】
本発明の元素分析前処理用容器は、耐熱性、耐酸性に優れるものであるため、従来のように加熱処理工程と酸溶解処理工程とで異なる複数の容器を用いる必要がなく、前処理を一つの元素分析前処理用容器を用いて行うことが可能である。したがって、従来のように、加熱処理工程と酸溶解処理工程とで異なる容器を用いて前処理を行っていた場合と比較して、工程時間を大幅に短縮することができ、また、不純物混入のリスクを少なくすることができる。そのため、前処理を迅速に行うことができ、しかも、その後の元素分析を、精密に行うことができる
【0035】
前記加熱処理として、少なくとも、空気中、400℃以上で灰化処理を行うのが好ましい。試料によっては灰化処理は400℃以上で可能であり、また、本発明の元素分析前処理用容器は耐熱性に優れているため、400℃以上の温度に十分に耐え得る。
【0036】
次に、前記酸溶解処理工程において、用いる溶剤と前記容器内面との接触角が10°より大になるようにすれば、容器から他の容器へ液体を移し替える時、残留液を生じることなく無駄なく移すことが出来、また、容器内面と溶媒との濡れも少なく、溶液を汚染しにくいことから、分析の精度を向上させることができる。
また、このとき、本発明の元素分析前処理用容器は耐薬品性に優れており、塩酸、硝酸、フッ酸、硫酸のいずれか一種類以上の溶剤を用いることが可能である。
【0037】
デバイス等の製造工程における材料には、有機化合物、珪素樹脂等の試料と、酸化ビスマス、酸化アンチモン等の試料とが混合して含有されていることも多い。本発明の元素分析前処理用容器は、上記のように異なる前処理をする試料が混合して含有されている試料を分析するのに、特に有効である。すなわち、デバイス等の材料に含有される不純物元素を分析するのに、有機化合物、珪素樹脂等や、酸化ビスマス、酸化アンチモン等を除去した溶液(測定用試料)にする前処理を、一つの元素分析前処理用容器で行うことができるため、不純物混入のリスクが減り、しかも、作業が大幅に効率化できるのである。
【実施例】
【0038】
以下に本発明の実施例および比較例をあげてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
モールディングコンパウンドについて元素分析を行った。
元素分析前に以下の処理を行った。
まず、試料としてモールディングコンパウンド1gを容積20mlのPBN製容器(内表面のRa=3μm、Rmax=10μm、容器内面における硝酸との接触角が20°。)に採取して0.5mlの硫酸により電熱器上で分解した。次に、電気炉で700℃まで加熱して灰化した。次に、フッ酸と臭化水素酸を加えて溶解した。次にその溶解液を電熱器上で加熱して、残渣のケイ素とアンチモンの酸化物を揮散させて除去した。次に、この容器に少量の硝酸を加えて残渣を溶解して回収し、2mlの定容とし、測定用試料とした。
以上の前処理後、元素分析を行った。
その結果、得た値は前処理に石英製容器とPTFE製容器を用いた時の値と比較して、Thが74%、Uが91%となったが、標準偏差はいずれも数%以下となりバラツキが少ないことが確認できた。
また、前処理に要した時間は、2時間程度であり、従来の石英容器とPTFE製容器を用いた場合には、4時間程度であったことと比較すると大幅に前処理の時間を短縮できた。
【0039】
(実施例2)
下記の表1に示すように、容器内表面のRa、Rmaxが異なるPBN製容器を7つ用意し、それぞれの容器を用いてモールディングコンパウンドについて元素分析を行った。
まず、元素分析の前に以下の前処理を行った。
試料としてモールディングコンパウンド1gを容器外面の高さ30mm、容器底面の直径30mmのPBN製容器に採取して0.5mlの硫酸により電熱器上で分解した。次に、電気炉で700℃まで加熱して灰化した。次に、フッ酸と臭化水素酸を加えて溶解した。次にその溶解液を電熱器上で加熱して、残渣のケイ素とアンチモンの酸化物を揮散させて除去した。次に、この容器に5mlの硝酸を加えて残渣を溶解して回収し、測定用試料とした。
以上の前処理後、元素分析を行った。
その結果、不純物として金属Feが検出された。
なお、ブランクテストには水を用いた。
表1に、容器内表面の研磨に使用したペーパー、容器内表面のRa、Rmax、洗浄時における不純物の残留具合、容器内面における溶液(硝酸)との接触角の関係を示す。比較として、CVDで堆積したままの、容器内表面を研磨していない容器のデータを示す。
容器内の面粗さがRa≦5μm、Rmax≦20μmであれば、容器内の表面積が広くなるのを抑え、容器内表面に測定試料が残りにくくなり、微量分析を行うのに充分な容器内面粗さの数値であることが確認できる。
【0040】
【表1】

【0041】
なお、本発明は、上記形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0042】
例えば、上記実施例では、元素分析前処理用容器として、PBN製容器を用いた場合を例に挙げ説明しているが、本発明はこれに限定されず、容器内の面粗さがRa≦5μm、Rmax≦20μmの容器で、かつ、容器の材質がセラミックであれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の元素分析前処理用容器の製造方法の過程の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0044】
10…セラミック製容器、 10a…セラミック層、 11…耐熱性基材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
元素分析の前処理で、少なくとも測定試料を溶剤で溶解する際に使用される容器であって、該容器内面の面粗さがRa≦5μm、Rmax≦20μmであり、かつ容器の材質がセラミックであることを特徴とする元素分析前処理用容器。
【請求項2】
前記セラミックが、AlN、SiC、SiN、BN、Alのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の元素分析前処理用容器。
【請求項3】
前記容器がCVD法で製造されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の元素分析前処理用容器。
【請求項4】
前記容器の内面における溶剤との接触角が10°より大であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の元素分析前処理用容器。
【請求項5】
少なくとも、試料の加熱処理工程、酸溶解処理工程を含む前処理を行い、その後、元素分析を行う方法であって、前記前処理を、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の元素分析前処理用容器を用いて行うことを特徴とする元素分析方法。
【請求項6】
前記加熱処理として、少なくとも、空気中、400℃以上で行う灰化処理を含むことを特徴とする請求項5に記載の元素分析方法。
【請求項7】
前記酸溶解処理工程において、用いる溶剤と前記容器内面との接触角が10°より大になるようにすることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の元素分析方法。
【請求項8】
前記溶剤として、塩酸、硝酸、フッ酸、硫酸のいずれか一種類以上を用いることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の元素分析方法。
【請求項9】
前記試料を、有機化合物及び/又は珪素樹脂とすることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の元素分析方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−189384(P2006−189384A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2790(P2005−2790)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】