説明

充填剤配合ゴム組成物

本発明は、有機エラストマー、充填剤および少なくとも1種の該エラストマー用硬化剤を含む硬化性ゴム組成物に関する。そのような硬化性ゴム組成物は広く硬化ラバー物品、例えばタイヤ、ベルトおよびホールなどの製造に用いられている。該組成物はケイ素結合ヒドロキシル基またはアゾ基を有する分岐状シリコーン樹脂を有する。製造過程で必要とする混合エネルギー、特に該有機エラストマーに充填剤の良好な分散を与えるために最初(非生産的)の混合段階で必要なエネルギーを低減することができる。該分岐状シリコーン樹脂の使用はまた硬化(加硫)を促進でき、それ故に硬化時間を減らしまたは必要な硬化促進剤の量を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は充填剤配合ゴム組成物に関する。特に有機エラストマー、ヒドロキシル基を含有する充填剤および少なくとも1種のエラストマー用硬化剤を含む硬化性ゴム組成物に関する。「有機エラストマー」とは、炭素化学に基づくエラストマー、それはポリマー骨格の少なくとも半分の原子が炭素原子である弾性高分子を意味する。そのような硬化性ゴム組成物は硬化ラバー物品、例えばタイヤ、ベルトおよびホースなどの製造に広く使われている。
【0002】
ゴム組成物を製造する際、良好な物理特性、例えば硬度、引張り係数および粘弾性特性などを有する硬化ラバー製品を製造すると同時に、その組成物は容易に加工可能であり、低い混合エネルギーを必要とすることが望ましい。シリカなどのようなヒドロキシル基を含有する充填剤の有機エラストマー組成物への混合は難しいときがある。種々のカップリング剤がゴム組成物中にヒドロキシル含有充填剤の分散を向上するために使われてきた。例えば米国特許第3978103号明細書および同第5468893号明細書に記載されているようなスルフィドシランがある。しかしながら、ラバー産業では、ヒドロキシル基を含有する充填剤で充填された硬化性ゴム組成物の加工性および物理特性の向上のために、そのようなカップリング剤に代えてまたは追加して使われるさらなる添加剤に関する要請がある。
【0003】
米国特許出願公開第2006−0217473号明細書は、補強材としてシリカを含有する加硫可能な弾性体組成物中での分散剤として、アルコキシ変性シルセスキオキサン化合物の使用を述べている。
【0004】
国際公開第2006−027618号は、タイヤの製造に使われるラバーコンパウンドマスターバッチにかご型シルセスキオキサン(Polyhedral oligomeric silsesquioxane)を含有させることを述べている。
【0005】
特開平11−181159号(横浜ゴム)によれば、特定のアルコキシシラン成分が二段階加水分解・縮合反応により、シラノール基を含有し、平均分子量500−20,000を有するラダー型ポリシロキサンを生じている。
【0006】
国際公開第2004−005395号は少なくとも1種のシランおよびMQ型のシリコーン樹脂を混合してシリカゴム混合物の高度を増加することを述べている。
【0007】
欧州特許出願公開第1092749号明細書の実施例1は、25モル%のメチルSiO3/2単位、60モル%のメチルメトキシSiO2/2および15モル%のメチル(メトキシ)2SiO1/2単位を含む分岐状オルガノキシ基含有ポリシロキサンを有するゴム配合剤を述べている。
【0008】
特開2001−192454号はアルコキシ基およびスルフィド基を含有できるラバー用オルガノポリシロキサン配合剤を述べている。
【0009】
米国特許第6472481号明細書はゴム混合物に使うことができる硫黄官能性オルガノポリシロキサンを述べている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による硬化性ゴム組成物は有機エラストマー、充填剤および少なくとも1種のエラストマー用硬化剤を含み、前記組成物がケイ素結合ヒドロキシル基またはアゾ基を有する分岐状シリコーン樹脂を含むことを特徴とされている。
【0011】
前記分岐状シリコーン樹脂はケイ素結合ヒドロキシル基またはアゾ基を有する。アゾ基を有する分岐状シリコーン樹脂は‐N=N‐結合基を有する。好ましいアゾ基は、型‐C(O)‐N=N‐C(O)‐のアゾジカルボニル結合基を含有するものである。アゾ基は、故に式‐Z‐C(O)‐N=N‐C(O)‐Z’‐Y(式中ZおよびZ’それぞれは独立してアミノ基、酸素原子または置換もしくは非置換メチレン基を表し、およびYは置換もしくは非置換アルキルまたはアリール基を表す)のものでもよい。そのようなアゾ基の一つの例は、式‐(CH23‐NH‐C(O)‐N=N‐C(O)‐O‐C25のエチルカルバゾカルバモイルプロピル(ethylcarbazocarbamoylpropyl)基である。基Yは都合良くシラン基で、またはアゾ基が2個の分岐状シリコーン樹脂部分を結合する結合基となるように、置換されてもよい。好ましくは、分岐状シリコーン樹脂がケイ素結合ヒドロキシル基:直接のSi‐OH結合基を含有する、これがシラノール官能性である。これは、ケイ素原子上にアルコキシ置換基がヒドロキシル基、すなわちSi‐O‐アルキル‐OH結合基を有するときに得られるようなOHとケイ素間の間接的結合基に対比する。
【0012】
本発明者らは、本発明によりゴム組成物に分岐状シリコーン樹脂の使用が製造過程で必要とする混合エネルギー、特に有機エラストマーに充填剤の良好な分散を与えるための最初(非生産的)の混合段階で必要なエネルギーを低減できることを見出した。前記分岐状シリコーン樹脂の使用はまた硬化(加硫)を促進でき、それ故に硬化時間を減らしまたは必要な硬化促進剤の量を減らすことができる。シラノール基を含有する分岐状シリコーン樹脂の使用はまた、米国特許出願公開2006−0217473号明細書に記載されているようなケイ素結合アルコキシ基を含有する樹脂と比べて、製造過程または硬化中に遊離される揮発性有機化合物のレベルをも低減するという利点を有する。
【0013】
本発明によりゴム組成物での分岐状シリコーン樹脂の使用はまた増大された硬度および増大された引張り係数を有し、熱機械分析にてガラス転移温度付近の散逸ピークならびにゴム状およびガラス状弾性率によって示されるように改良粘弾性特性を有する硬化ゴム製品をもたらすことができる。ある用途では、それらの利点を有するゴム組成物が必要である。
【0014】
例えばタイヤトレッドなどのゴム組成物はある量の補強性充填剤、例えばシリカまたはカーボンブラックなどを、種々の物理特性、例えばムーニー粘度、弾性率(M100、M200)などを向上するために含有するが、充填剤の存在は他の特性、例えば転がり抵抗性(tanδ(デルタ)max)に害を及ぼすことがある。
【0015】
本発明によるシリコーン樹脂は補強性充填剤の低いレベルで同様の硬度および引張り係数を与えるために用いることができる。例えば、ヒドロキシル含有分岐状シリコーン樹脂は例えばシリカなどの補強性充填剤の部分置換として、樹脂が置換する充填剤の量よりも少ない樹脂量で用いることができる。充填剤重量、それ故組成物の比重は低減されることができる。異なるひずみレベルで測定されたヤング率(応力‐ひずみ)で非線形性である、ペイン効果はゴム組成物中シリコーン樹脂で充填剤のこの一部置換によって減少する。ペイン効果の低減は一般に、前記組成物から製造されたタイヤトレッドの転がり抵抗が同じ湿式けん引性能または湿式グリップ性能でより低いであろうことを意味する。
【0016】
本発明はそれ故に低転がり抵抗を成し遂げることができる一方、他の特性例えば耐用期間に関連する物理特性、例としてM100およびM300など、を同じようなレベルで保持している。既知の技術により、ポリシロキサン化合物が充填剤置換としてではなくシラン置換として知られていることを考えれば、これは驚くべきことである。
【0017】
本発明の一つの態様では、ケイ素結合ヒドロキシル基を含有する分岐状シリコーン樹脂は、ヒドロキシル基を含有する充填剤を配合された有機エラストマーを含む硬化性ゴム組成物に、ゴム組成物の製造過程で必要とされる混合エネルギーを低減し、および/またはゴム組成物を硬化することにより形成された製品の性能特性を向上するために、用いられる。ヒドロキシル基を含有する分岐状シリコーン樹脂の使用はまたゴム組成物を加硫するに必要な高価な補助硬化剤の量を減らし、故に組成物のコストを低減することができる。
【0018】
本発明の別の態様では、アゾ基を含有する分岐状シリコーン樹脂は、硬化性充填剤配合天然ゴム組成物に、ゴム組成物の製造過程で必要とされる混合エネルギーを低減し、および/またはゴム組成物を硬化することにより形成された製品の性能特性を向上するために、用いられる。
【0019】
本発明のさらなる態様では、ケイ素結合ヒドロキシル基およびポリスルフィド基を含有する分岐状シリコーン樹脂は、充填剤配合硬化性有機エラストマー組成物に、ゴム組成物の製造過程で必要とされる混合エネルギーを低減し、および/またはゴム組成物を硬化することにより形成された製品の性能特性を向上するために、用いられる。ポリスルフィド基を有する分岐状シリコーン樹脂は、結合基‐Sa‐(式中aは2から10の値を有する)を含有する。
【0020】
前記分岐状シリコーン樹脂は、RSiO3/2(また、T単位として知られている)および/またはSiO4/2(また、Q単位として知られている)から選ばれる分岐単位を含む樹脂状ポリマー物質であり、式中基Rは、異なるシロキサン単位で異なってもよく、ヒドロキシル、炭化水素、置換炭化水素、炭化水素オキシおよび置換炭化水素オキシ基から選ばれる。分岐状シリコーン樹脂は、任意にまたR2SiO2/2単位(D単位)および/またはR3SiO1/2単位(M単位)(式中各Rは上記に定義されている)を含む。炭化水素および炭化水素オキシ基それぞれは好ましくは1から20個、より好ましくは1から8個の炭素原子を含有する。前記分岐状シリコーン樹脂は、3次元である。それは2次元の「ラダ‐」構造から区別される。3次元のかご型(多面体オリゴマー)シルセスキオキサンが結晶性であるの反し、前記分岐状シリコーン樹脂は、それがアモルファスであることにより、3次元のかご型(多面体オリゴマー)シルセスキオキサンから区別される。前記分岐状シリコーン樹脂は、シロキサン単位の数が異なる種々のポリマー分子を含む。構造での相違は、本説明で後に示される比較例の結果から明らかなように、化合物の特性に強く影響することである。
【0021】
前記分岐状シリコーン樹脂は好ましくはT‐樹脂であり、それは大部分のシロキサン単位がT単位である。より好ましくは、T‐樹脂中少なくとも80または90%のシロキサン単位がT単位である。そのようなT‐樹脂は容易にトリクロロシランの加水分解・縮合反応により製造され、水相から有機相へ移すことにより反応混合物から分離することができる。あるいは、T‐樹脂は例えばトリエトキシシランなどのトリアルコキシシランの加水分解・縮合反応により製造できる。T‐樹脂は、分子間縮合を超えて分子内縮合を助ける希薄条件でゆっくりと製造されなければならないかご型(多面体オリゴマー)シルセスキオキサンよりも容易に入手され、高価でない。
【0022】
前記分岐状シリコーン樹脂は例えば式R’SiO3/2(式中各R’はアルキルまたは置換アルキル基を表す)の単位および式HOR’SiO2/2の単位を含むことができる。好ましいアルキル基R’の例として、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、2‐エチルヘキシルおよびオクチルが挙げられる。置換アルキル基の例は1個以上のハロゲンもしくはヒドロシリル基、または反応性基で置換された任意の上記アルキル基である。反応性基は例として、例えばビニルまたはメタクリロイルなどのエチレン性不飽和基、例えばグリシジルなどのエポキシ基、メルカプト基(またチオール基として知られている)、例えばオクタチオ基などのブロックメルカプト基、スルフィド結合基、ヒドロキシル基、またはアミノ、アミドもしくは例えばマレイミド基などのイミド基があり得る。分岐状シリコーン樹脂はまたケイ素結合アルコキシ基を、ケイ素結合アルコキシ基に対するシラノール基のモル比が1:1よりも大きいことが好ましいが、含有することができる。
【0023】
前記T‐樹脂はあるいは、または追加して式R”SiO3/2(式中R”はアリール基を表す)の単位および式HOR”SiO2/2の単位を含むことができる。アリール基R”の例はフェニル、トリルおよびナフチル基である。アリール基のいくつかまたはすべては、例えば置換アルキル基に関して上に記述された反応性基によって、置換されていてもよい。
【0024】
前記置換アルキル基R’は、あるいはまたは追加して、結合基‐Sa‐(式中aは2から10までの値を有する)を含有する基であるポリスルフィド基を含むことができる。ポリスルフィド基は例えばポリスルフィド結合基を形成する‐R*‐Sa‐R*‐SiX3基でもよい、式中各R*は1から18個の炭素原子を有するアルキレン結合基を表し、各Xはヒドロキシル、炭化水素、置換炭化水素、炭化水素オキシもしくは置換炭化水素オキシ基,またはO1/2結合基を表し、およびaは2から10までの値を有する。従って、一つの好ましい分岐状シリコーン樹脂において、分岐状シリコーン樹脂のシロキサン単位の大部分が型RSiO3/2のT単位であり、式中Rは異なるシロキサン単位では異なっていいてもよく、ヒドロキシル、炭化水素、置換炭化水素、炭化水素オキシもしくは置換炭化水素オキシ基から選ばれ、分岐状シリコーン樹脂は式R’SiO3/2(式中R’は上で定義された‐R*‐Sa‐R*‐SiX3基を含有する置換アルキル基を表す。)を含む。SiX3基において少なくとも1個、より好ましくは2または3個のXは、ポリスルフィド基が2個の分岐状シリコーン樹脂部分間の結合基であるように、O1/2結合基を表す。
【0025】
ポリスルフィド基または結合基を含有する分岐状シリコーン樹脂は、充填剤、特にシリカとゴム、特に合成ジエンゴム間の結合を向上する。これがゴム組成物の製造過程で必要とされる混合エネルギーを低減し、および/またはゴム組成物を硬化することにより形成された製品の性能特性を向上することができる。ポリスルフィド基または結合基を含有する分岐状シリコーン樹脂はシリカ充填ゴム組成物に通常用いられるスルフィドシランカップリング剤を全体的または部分的に置換することができる。ポリスルフィド基または結合基を含有する分岐状シリコーン樹脂は、またゴムの加硫を助力し、ゴム組成物に必要とされる高価な補助硬化剤の量を低減することができる。ポリスルフィド基または結合基を含有する分岐状シリコーン樹脂は、さらにケイ素結合ヒドロキシル基を含有してもしなくてもよい。
【0026】
置換アルキル基R’は、代替的にまたは追加してアゾ基を含むことができる。「アゾ基」とは、N=N結合を含有する任意の基をさす。好ましいアゾ基は型‐C(O)‐N=N‐C(O)‐のアゾジカルボニル結合を含有するものである。故にアゾ基は式‐Z‐C(O)‐N=N‐C(O)‐Z’‐Y(式中、ZおよびZ’それぞれは独立してアミノ基、酸素原子または置換もしくは非置換メチレン基を表し、Yは置換または非置換アルキルまたはアリール基をあらわす)のものであり得る。そのようなアゾ基の一つの例は式‐(CH23‐NH‐C(O)‐N=N‐C(O)‐O‐C25のエチルカルバゾカルバモイルプロピルである。基Yは、有利的に、アゾ基が二つの分岐状シリコーン樹脂部分を連結する結合基となり得るように、シラン基または特に型RSiO3/2のT単位で置換し得る。
【0027】
アゾ基を含有するトリアルコキシシランの製造法が英国特許出願公開第1538256号明細書に記載されている。アゾ基を含有する分岐状シリコーン樹脂はそのようなトリアルコキシシランの加水分解・縮合反応によって製造できる。
【0028】
アゾ基を含有する分岐状シリコーン樹脂は充填剤、特にシリカと天然ゴム間の結合を向上する。これがゴム組成物の製造過程に必要とされる混合エネルギーを低減し、ゴム組成物を硬化することにより形成された製品の性能特性を向上することができる。アゾ基を含有する分岐状シリコーン樹脂はさらにケイ素結合ヒドロキシル基を含有してもしなくてもよい。
【0029】
あるいは前記分岐状シリコーン樹脂は、上に記述したT単位および式R2SiO2/2のD単位、例えば20から80モル%、好ましくは50から80モル%のT単位および20から80モル%、好ましくは20から50モル%の式R22SiO2/2のD単位を含むDT樹脂でもよい(式中R2は1から8個、より好ましくは1から4個の炭素原子を含有する炭化水素基、特にメチルを表す。)。
【0030】
前記分岐状シリコーン樹脂のT単位中の炭化水素基は、最も好ましくは、フェニル基および3から8個の炭素原子を含有するアルキル基、例えばフェニル基および/またはプロピルもしくはオクチル基、から選ばれる。
【0031】
一つの型を超えての分岐状ヒドロキシル含有シリコーン樹脂は、本発明によるゴム組成物に用いることができる。例えば、上に記述したT‐樹脂はQ基を含有する樹脂とともに用いることができる。前記樹脂は、必要なら、ヒドロキシル基を含有する樹脂に加えてヒドロキシル基を有さないシリコーン樹脂を含むこともできる。
【0032】
前記分岐状シリコーン樹脂は各ケイ素原子に1個を超えてケイ素結合OH基を有さないことが好ましい。樹脂は通常、1から22重量%のケイ素結合OH基のヒドロキシル含量(樹脂重量当たりそのようなOH基の重量として計算された)を有することができる。式(HOR”SiO2/2)のシリコーン単位を含むフェニルT‐樹脂は12.3重量%のケイ素結合OH基を有する。式(HOR’SiO2/2)の単位を含むプロピル樹脂は16.3%のケイ素結合OH基を有する。より好ましくは、分岐状シリコーン樹脂は少なくとも3重量%から約10重量%までのヒドロキシル含量を有する。最も好ましくは、分岐状シリコーン樹脂はケイ素結合OH基5から8重量%のヒドロキシル含量を有する。本発明者らは、ヒドロキシル含量を5から8重量%の範囲に有する分岐状シリコーン樹脂が、例えばシリカなどのヒドロキシル官能性充填剤を含有するタイヤ使用で性能特性の最適なバランスを与えることを見出した。
【0033】
前記分岐状シリコーン樹脂は固体状または液状でよい。例として、それは例えばパウダー、フレークもしくはペレットなどの固体状、または基材上に担持されて、または例えば純液体もしくは溶液などの液状でゴム組成物に加えることができる。
分岐状シリコーン樹脂は、好ましくは硬化性ゴム組成物の有機エラストマーの重量に基づいて0.2から10重量%、より好ましくはゴム組成物中のエラストマー含量に基づいて0.5から5重量%で用いられる。
【0034】
本発明のゴム組成物で用いられる有機エラストマーは一般にジエンエラストマーであり、それはジエンモノマー(共役されているであろうとなかろうと、2個の二重炭素‐炭素結合を有するモノマー)から少なくとも一部(すなわち、ホモポリマーまたはコポリマー)が得られるエラストマーである。好ましくは、そのエラストマーは「本質的不飽和」ジエンエラストマーであり、それは15モル%より多い、ジエン源(共役ジエン)のメンバーまたは単位の含量を有する共役ジエンモノマーから少なくとも一部が得られるジエンエラストマーである。より好ましくは、それは50%よりも多いジエン源(共役ジエン)の含量を有する「高度不飽和」ジエンエラストマーである。ジエン源の単位の低含量(15%未満)を有する「本質的飽和」ジエンエラストマーと記述される、ジエンエラストマー、例えばブチルゴムまたはジエンとエチレン‐プロピレン ジエンモノマー(EPDM)型のアルファ‐オレフィンとのコポリマーは、それらの代わりに用いられ得る。
【0035】
前記ジエンエラストマーは例えば:
(a)4から12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合により得られる任意のホモポリマー;
(b)1種以上の共役ジエンと1種以上の8から20個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物との共重合により得られる任意のコポリマー;
(c)エチレン、3から6個の炭素原子を有する(アルファ)‐オレフィンと6から12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーとの共重合により得られる三元共重合体、例えば、エチレン、プロピレンと上記型の非共役ジエンモノマー、例えば特に1,4‐ヘキサジエン、エチレリデン ノルボルネンまたはジシクロペンタジエンから得られるエラストマー;
(d)イソブテンとイソプレンとのコポリマー(ブチルゴム)、およびまたこの型のコポリマーのハロゲン化、特に塩素化または臭素化バージョン;
であり得る。
【0036】
適する共役ジエンは、特に1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジ(C1−C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン、例えば2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエン、アリール‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエンおよび2,4‐ヘキサジエンがある。適するビニル芳香族化合物は例えば、スチレン、オルト‐、メタ‐およびパラ‐メチルスチレン、市販の混合物「ビニルトルエン」、パラ‐tert.‐ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼンおよびビニルナフタレンがある。
【0037】
前記コポリマーは99重量%と20重量%の間のジエン単位および1重量%と80重量%の間のビニル芳香族単位を含むことができる。エラストマーは任意の微細構造を有してもよい、それは用いられる重合条件、特に変性剤および/またはランダム化剤の存在有無および使われる変性剤および/またはランダム化剤の量による。エラストマーは例えばブロック、統計的(statistical)、逐次的(sequential)またはミクロ逐次的(microsequential)エラストマーであり、分散液中または溶液中で製造できる;それはカップリング剤および/または星型化(starring)剤もしくは官能化剤で、結合されおよび/または星型化にされ、あるいは官能化されてもよい。好ましいブロックコポリマーはスチレン‐ブタジエン‐スチレン(SBS)ブロックコポリマーおよびスチレン‐エチレン/ブタジエン‐スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0038】
ポリブタジエン、特に4重量%と80重量%との間の1,2‐単位含量を有するものまたは80重量%より多いシス‐1,4含量を有するもの;ポリイソプレン;ブタジエン‐スチレンコポリマー、特に5重量%と50重量%との間、より好ましくは20重量%と40重量%との間のスチレン含量、4重量%と65重量%との間のブタジエン・フラクションの1,2‐結合含量、および20重量%と80重量%との間のトランス‐1,4結合含量を有するもの;ブタジエン‐イソプレンコポリマー特に5重量%と90重量%との間のイソプレン含量を有するものが好ましい。ブタジエン‐スチレン‐イソプレンコポリマーの例では、適するものは特に、5重量%と50重量%との間、とりわけ10%と40%との間のスチレン含量、15重量%と60重量%との間、とりわけ20%と50%との間のイソプレン含量、5重量%と50重量%との間、とりわけ20%と40%との間のブタジエン含量、4%と85%との間のブタジエン・フラクションの1,2‐単位含量、6%と80%との間のブタジエン・フラクションのトランス‐1,4単位含量、5%と70%との間のイソプレン・フラクションの1,2‐プラス3,4‐単位含量、および10%と50%との間のイソプレン・フラクションのトランス‐1,4単位含量を有するものである。
【0039】
前記有機ゴムの代わりに天然ゴムでもよい。発明者らは、アゾシラン基を含有する分岐状シリコーン樹脂は、上記したとおり、硬化性充填剤配合天然ゴム組成物で特別な利点を有することを見出した。
【0040】
本発明の硬化性ゴム組成物は特にタイヤ(新品または中古タイヤ(再キャッピングのケース))のトレッド用に用いられる。
【0041】
乗用車の場合、エラストマーは例として、スチレン・ブタジエンラバー(SBR)例えばエマルジョンで製造されたSBR(「ESBR」)または溶液で製造されたSBR(「SSBR」)、またはSBR/BR、SBR/NR(もしくはSBR/IR)、あるいはBR/NR(もしくはBR/IR)、またはSIBR(イソプレン‐ブタジエン‐スチレンコポリマー)、IBR(イソプレン‐ブタジエンコポリマー)、またはそれらのブレンド(混合物)である。SBRの例は、特に20重量%と30重量%との間のスチレン含量、15%と65%との間のブタジエン・フラクションのビニル結合含量、および15%と75%との間のトランス‐1,4結合含量を有するSBRである。そのようなSBRコポリマー、好ましくはSSBRが、好ましくは90%より多いシス‐1,4結合を有するポリブタジエン(BR)との混合物で用いられ得る。
【0042】
大型車両用タイヤの場合、エラストマーは特にイソプレンエラストマーである;それはイソプレンホモポリマーまたはコポリマーであり、言い換えると天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマーまたはそれらエラストマーの混合物を含む群から選ばれるジエンエラストマーである。イソプレンコポリマーの内、特にイソブテン‐イソプレンコポリマー(ブチルゴム‐IIR)、イソプレン‐スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン‐ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン‐ブタジエン‐スチレンコポリマー(SBIR)が挙げることができる。このイソプレンエラストマーは好ましくは天然ゴムまたは合成シス‐1,4ポリイソプレンである;それら合成イソプレンの内、好ましくは、90%より多く、より好ましくは98%よりも多いシス‐1,4結合含量(モル%)を有するポリイソプレンが用いられる。そのような大型車両用タイヤでは、前記エラストマーは、例えばSBRエラストマーなどの他の高度不飽和エラストマーで、全体として一部分において構成されてもよい。
【0043】
前記エラストマー組成物がタイヤのサイドウォールとして使用するときは、そのエラストマーは少なくとも一種の本質的に飽和されたジエンエラストマー、特に少なくとも一種のEPDMコポリマーを含んでもよく、それは例えば単独または高度不飽和ジエンエラストマーの一種以上との混合物として用いられ得る。
【0044】
前記エラストマーはアルコキシシラン‐末端化され、またはスズ結合溶液重合で製造されたエラストマーであり得る。
【0045】
充填剤は好ましくは補強性充填剤である。補強性充填剤の例として、シリカ、ケイ酸、カーボンブラックまたはアルミニウム型の鉱物酸化物、例えばアルミナ三水和物もしくは酸化・水酸化アルミニウムなど、またはケイ酸塩、例えばアルミノケイ酸塩など、またはそれら異なる充填剤の混合物がある。タイヤ製造での使用では、エラストマー組成物は適度に高弾性率および高引裂き抵抗を与えるに十分な量の前記補強性充填剤を含有するべきである。ゴム組成物中のシリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩および/またはカーボンブラックの混合重量は、エラストマーに基づいて通常10から200重量%、好ましくは30から100重量%の範囲である。タイヤトレッド組成物では、補強性充填剤の含量は、より好ましくはエラストマーに基づいて約35から約90重量%までである。
【0046】
発明者らは、ケイ素結合ヒドロキシル基を含有する分岐状シリコーン樹脂が、ヒドロキシル基を含有する充填剤で充填された有機エラストマーを含む硬化性ゴム組成物で、特にゴム組成物の製造過程で必要とされる混合エネルギーを低減し、かつゴム組成物を硬化することにより形成された製品の性能特性を向上することに強みを有することを見出した。ヒドロキシル(シラノール)基を含有するシリコーン樹脂は、例えばダウコーニングコーポレーションから市販されている。ヒドロキシル含有充填剤は、例えば鉱物性充填剤、特に補強性充填剤、例えば白タイヤ組成物に用いられるシリカまたはケイ酸充填剤、またはアルミニウム型の鉱物酸化物、例えばアルミナ三水和物もしくは酸化・水酸化アルミニウムなど、またはケイ酸塩例えばアルミノケイ酸塩など、またはそれら異なる充填剤の混合物であり得る。
【0047】
補強性充填剤は例えばゴム配合用途で用いられる任意の普通に使用されている、焼成もしくは沈降シリカ質顔料またはアルミノケイ酸塩などのシリカ質充填剤であり得る。沈降シリカが、例えば可溶性ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムの酸性化により得られるものが好ましい。
【0048】
沈降シリカは好ましくは、約20から約600までの範囲、より普通に約40または50から約300平方メートル/グラムの範囲のBET比表面積(窒素ガスを使って測定された)を有する。比表面積を測定するBET法はThe Journal of the American Chemical Society,Volume60,Page304(1930)に記載されている。シリカはまた、ASTM D2414に記載された測定で、約100から約350まで、より普通に約150から約300cm3/100gまでの範囲でジブチルフタラート(DBP)値を持つことにより典型的に特性化することができる。
【0049】
シリカ、およびアルミナまたはアルミノケイ酸塩は、使用される場合、好ましくは約100から約220m2/gの範囲のCTAB比表面積(ASTM D3849)を有する。CTAB表面積は、pH9の臭化セチルトリメチルアンモニウムで評価される外部比表面積である。その方法はセットアップおよび評価法について、ASTM D3849に記載されている。CTAB表面積はシリカを特性化するための周知の手段である。
【0050】
種々の市販のシリカが本発明のカップリング剤とともにエラストマー組成物での使用に考えられ得る、例えば、本明細書での例だけとして制限されることなく、PPG Industries社からHi−Sil商標のもとで、Hi−Sil EZ150G、210、243、などの表示記号で市販されているシリカ;Rhodia社から例えばZeosil 1165MP,1115MP,HRS 1200MPの表示記号で市販されているシリカ、Degussa AGから例えばVN3、Ultrasil 7000およびUltrasil 7005の表示記号で市販されているシリカ、ならびにHuber社から例えばHubersil 8745およびHubersil 8715の表示記号で市販されているシリカがある。処理沈降シリカ、たとえばヨーロッパ特許出願公開第735088号に記載されたアルミニウム・ドープ・シリカは用いられ得る。
【0051】
アルミナが本発明のエラストマー組成物に用いられているなら、それは例えば天然酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムの制御された沈降により製造される合成酸化アルミニウム(Al23)であり得る。補強性アルミナは好ましくは30から400m2/g、より好ましくは60から250m2/gのBET比表面積およびほとんど500nm、より好ましくはほとんど200nmに等しい粒径を有する。そのような補強性アルミナの例は、Baikowski社からのアルミナA125、CR125、D65CRまたはAldrich Chemical Companyから入手できる中性、酸性またはアルカリ性Al23である。中性アルミナが好ましい。
【0052】
本発明のエラストマー組成物に用いられ得るアルミナケイ酸塩の例は、海泡石(Sepiolite)、天然アルミノケイ酸塩、それはTolsa S.A.、スペインToledo、およびDegussa GmbHからのSILTEG、合成アルミノケイ酸塩である。
【0053】
充填剤は大抵ヒドロキシル基を含有する。ヒドロキシル含有充填剤は、シリカ、タルク、水酸化マグネシウムもしくは炭酸カルシウム、または天然有機充填剤、例えばセルロース繊維もしくはデンプンであり得る。鉱物および有機充填剤の混合物は、補強性および非補強性充填剤の混合物と同様に、用いることができる。
【0054】
エラストマー用硬化剤は好ましくは硫黄加硫剤である。適する硫黄加硫剤の例として、例えば元素状硫黄(遊離硫黄)または硫黄提供加硫剤、例えばアミンジスルフィド、高分子状ポリスルフィドもしくは硫黄‐オレフィン付加物が挙げられ、それらは従来から最終の、生産的な、ゴム組成物混合工程で加えられる。好ましくは、多くの場合で硫黄加硫剤は元素状硫黄である。硫黄加硫剤はエラストマーに基づいて、約0.4から約8重量%、好ましくは1.5から約3%、特に2から2.5%の範囲の量で用いられる。
【0055】
促進剤は通常加硫で必要な時間および/または温度を制御し、加硫されたエラストマー組成物の特性を向上するために用いられる。一つの実施態様では、単一促進剤システムが用いられ得る、すなわち第一の促進剤である。従来同様、好ましくは、第一の促進剤はエラストマーに基づいて約0.5から約4重量%まで、好ましくは約0.8から約1.5%までの範囲の全量で用いられる。他の実施態様では、加硫の活性化および加硫特性の向上のために、第一および第二の促進剤の組合せが、約0.05から約3%の少ない量で用いられる第二促進剤とともに用いられる。標準の加工温度では影響されないで、普通の加硫温度で満足し得る硬化を生じる、遅延作用促進剤が用いられ得る。加硫抑制剤もまた用いることができる。本発明で用いることができる促進剤の適する型はアミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、例えばメルカプトベンゾチアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバミン酸、チオ炭酸塩、およびキサントゲン酸塩である。好ましくは、第一の促進剤はスルフェンアミドである。第二の促進剤が用いられるなら、第二促進剤は好ましくはグアニジン、ジチオカルバミン酸塩またはチウラム化合物である。
【0056】
硬化性ゴム組成物は好ましくは、カップリング剤(例えばトリアルコキシ、ジアルコキシまたはモノアルコキシシランカップリング剤)、特にスルフィドシラン好ましくはジスルファンまたはテトラスルファン(例えばビス(トリアルコキシシリルプロピル)ジスルファンもしくはテトラスルファンまたはビス(ジアルコキシメチルシリルプロピル)ジスルファンもしくはテトラスルファン)、または米国特許第5684171号明細書に記載されているビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ジスルファン、米国特許第6774255号明細書に記載されているビス(ジメチルヒドロキシシリルプロピル)ポリスルファン、または国際公開第2007/061550号に記載されているジメチルヒドロキシシリルプロピル ジメチルアルコキシシリルプロピル オリゴスルファン、を含む。メルカプトおよびブロックメルカプトシランもまた用いることができる。そのようなカップリング剤は、有機エラストマーに充填剤の結合を促進し、それ故に充填剤配合エラストマーの物理特性を高めることになる。発明者らは、そのようなカップリング剤とともに本発明による分岐状シリコーン樹脂の使用は、シリコーン樹脂なしのカップリング剤を含有する組成物と比較して、ゴム組成物の製造過程で必要とされる混合エネルギーを低減し、ラバー組成物を硬化することにより形成された製品の性能特性を向上できることを見出した。
【0057】
ゴム組成物は補強性充填剤を被覆する物質、テトラアルコキシシラン(例えばテトラエトキシシラン)またはアルキルアルコキシシラン(特に例えば1‐オクチルトリエトキシシランもしくは1‐ヘキサデシルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン)、ポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコール)、アミン(例えばトリアルカノールアミン)、またはヒドロキシル化ポリオルガノシロキサン(例えばヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン)、を含むことができる。
【0058】
前記ゴム組成物は、ゴム配合技術分野では一般に知られている方法、例えばエラストマーを例えば硫黄などの硬化剤、活性剤、抑制剤および促進剤と、ならびに種々の一般に使われている添加剤物質、例として加工用添加剤、例えばオイル、粘着付与樹脂を含む樹脂、シリカ、および可塑剤、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、酸化防止剤およびオゾン劣化防止剤。熱安定剤、紫外線安定剤、染料、顔料、延長剤および素練り促進剤(peptizing agent)などと混合するための方法により配合することができる。
【0059】
粘着付与樹脂が用いられるなら、その典型的な量はエラストマーに基づいて約0.5から約10重量%、好ましくは1から5%を含む。加工助剤の典型的な量はエラストマーに基づいて約1から約50重量%を含む。そのような加工助剤は例えば芳香族、ナフテン系および/またはパラフィン系加工油が挙げることができる。
【0060】
酸化防止剤の典型的な量はエラストマーに基づいて約1から約5重量%を含む。代表的な酸化防止剤は、例えばジフェニル‐p‐フェニレンジアミンおよびその他、例えば「The Vanderbilt Rubber Handbook (1978),344から346頁」に開示されるものであり得る。オゾン劣化防止剤の典型的な量はエラストマーに基づいて約1から5重量%を含む。
【0061】
ステアリン酸またはステアリン酸亜鉛を含む脂肪酸が用いられるなら、その典型的な量はエラストマーに基づいて約0.1から約3重量%を含む。酸化亜鉛の典型的な量はエラストマーに基づいて約0から約5重量%、あるいは0.1から5%を含む。
【0062】
ワックスの典型的な量はエラストマーに基づいて約1から約5重量%からなる。微結晶および/または結晶ワックスが用いられ得る。
【0063】
素練り促進剤の典型的な量はエラストマーに基づいて約0.1から約1重量%からなる。典型的な素練り促進剤は例えばペンタクロロチオフェノールまたはジベンズアミドジフェニル ジスルフィドであり得る。
【0064】
前記ゴム組成物は適する混合機で製造され、当業者では周知の二つの連続ずる製造段階を用いて製造することができる;高温、110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃との間の最高温度(Tmax)以下で熱機械的作業または混練(たまに「非生産的」段階という)の第一段階と、それに続き、典型的に110℃未満、例えば40℃と100℃との間の温度で機械的作業(たまに「生産的」段階という)の第二段階が続く、生産的段階の間に架橋または加硫システムが組み入れられる。
【0065】
少なくとも補強性充填剤、分岐状シリコーン樹脂およびカップリング剤が非生産的段階でエラストマーに混練により組み入れられる。これらの異なるベース構成成分が任意の非生産的工程で混合機に導入され、熱機械的に110と190℃の間、好ましくは130と180℃の間の最高温度に達するまで、1回以上の工程で混練された。
【0066】
例として、第一(非生産的)段階は、第一段階で補強性充填剤、分岐状シリコーン樹脂、カップリング剤およびエラストマーが、適切な混合機(例えば従来からの内部ミキサーまたは押出機など)で混合される間、単一熱機械的工程において達成される。その後第二段階で例えば1,2分後の混練後、任意の補助的被覆剤または加工助剤およびその他の種々の添加剤が、加硫システムを除いて、混合機に導入される。補強性無機充填剤の見掛け密度が低い(一般にシリカの例)ときは、その導入を二つ以上の部に分けることは利点があり得る。ジスルフィドシランが用いられ、および/または樹脂が第一段階の終わりに加えられると、第一段階での混合時間はより長くなることがある。
【0067】
熱機械的作業の第二工程は、エラストマー・マトリクス中の補強性無機充填剤の分散をさらに向上するために、特に、この内部ミキサー内で、混合物がドロップした後および組成物を補助的熱機械的処理を受けさせるために好ましくは100℃未満の温度に中間体が冷やされた後、加えられるのがよい。非生産的段階での全混練時間は好ましくは2と10分の間である。
【0068】
このようにして得られた混合物の冷却の後、加硫システムが低温で例えば開放ミルなどの外部ミキサーあるいは内部ミキサー(Banbury型)にて取り込まれる。全混合物は、その後数分間例えば2と10分の間混合される(生産的段階)。
【0069】
このようにして得られた最終組成物はその後、特に実験室特性評価用に物理または機械特性を測定するため、例えば薄スラブ(2から3mm厚)もしくはゴムの薄板状にカレンダー加工され、あるいは押し出されて、直接使用されるゴム形状要素を形成し、希望寸法に切断され、タイヤ用半仕上品、特にトレッド、カーカスプライ補強材、サイドウォール、半径方向のカーカスプライ補強材、ビードもしくはチェーファー、内部チューブまたはチューブレスタイヤ用気密内部ゴムとして組み立てられる。
【0070】
タイヤまたはトレッドなどのゴム製品の加硫(または硬化)が好ましくは130と200℃の間の温度で、加圧下、十分な時間をかけて公知の方法にて行われる。加硫に必要な時間は、例えば5と90分の間で変化することができる。
【0071】
本発明は、以下の実施例(そこでは、部およびパーセントは重量あたりである)により明らかにされる。
【0072】
実施例で、ゴム組成物は以下の材料から製造される:
SBR − Lanxess Bayer社から商標BUNA@VSL 5025−0で販売されているスチレン‐ブタジエンラバー
BR − バイエル社から商標BUNA@CB 24で販売されているポリブタジエンゴム
NR − 天然ゴム、等級SMR10で、約60MUから90MUまでのムーニー粘度を有する
Oil − Nynasu社の加工オイルNytex832(商標)
Silica − Rhodia社から商標Zeosil 1165MPで販売されている「HD」型ヒドロキシル含有シリカ
TESPT − ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、例えば、ダウコーニング社から商標Z−6940で販売されている
TESPD − ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン、例えば、ダウコーニング社から商標Z−6920で販売されている
レジン1 − フェニル基を含有し、6から8重量%のヒドロキシル含量とMw2660重量平均分子量を有するシリコーンT‐樹脂
レジン2 − プロピル基を含有し、6.5重量%のヒドロキシル含量を有するシリコーンT‐樹脂
レジン3 − フェニル基とプロピル基を約7:3の比で含有し、6.5重量%のヒドロキシル含量を有し、米国特許第5173290号明細書の実施例1に記載されたように製造された、シリコーンT‐樹脂
レジン4 − フェニル(Ph)とメチル(Me)基をDMe2:DPh2:TMe:TPhで3:1:2:14の比で有し、6重量%のヒドロキシル含量を有するシリコーンDT‐樹脂
レジン5 − メチル(Me)およびケイ素上にメトキシ置換基を含有し、ヒドロキシルを含まない、シリコーンT‐樹脂
レジン6 − フェニル(Ph)およびメトキシを含有し、ヒドロキシルを含まない、シリコーンT‐樹脂
DPG − ジフェニルグアニジン
SA − ステアリン酸
ZnO − 酸化亜鉛
6PPD − N‐1,3‐ジメチルブチル‐N‐フェニル‐パラ‐フェニレンジアミン(Flexsys社から「Santoflex 6−PPD」(商標))
S − 硫黄
CBS − N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾイル スルホンアミド(Flexsys社から「Santocure CBS」)
【0073】
混合手順は、実施例1から10および14から17について、以下のとおりであった:
第一工程では、SBR、BR、Oil、Silica、Z−6940およびシリコーン樹脂(実施例7、8、16、17ならびに比較例4および5を除いて)が内部ミキサー(Banburyミキサー)に導入され、70%充填された。初期タンク温度は80℃であった。熱機械的作業(非生産的段階)が、その後二段階で実施された。第一段階は約160℃の最高落下温度(maximum dropping temperature) に達するまで進められる。混合物は23℃の温度に冷却された。
【0074】
第二段階で、SA、ZnO、および6PPDが加えられた。混合中、Banburyミキサーのトルクレベルが測定された。実施例7、8、16、17ならびに比較例4および5については、シリコーン樹脂がこの段階で加えられた。
第三段階(生産的混合)で、サンプルがDPG、S、CBSの硬化システムと内部ゴムミキサーで約3分間混合された。
【0075】
混合手順は、実施例11から13および比較例3については次のとおりであった。:
第一段階では、SBR、NR、Oil、Silica、Z−6940、SA、ZnO、6PPDおよびシリコーン樹脂が内部ミキサー(Banburyミキサー)に導入、70%充填された。初期タンク温度は80℃であった。シリコーン樹脂の添加時間は最適な性能の状態になるように各実施例で異なった。第一段階は約160℃の最大落下温度に達するまで進められる。混合している間に達した最大温度は約175℃である。全混合時間は8分であった。混合物は23℃の温度に冷却された。
第二段階(生産的混合)では、サンプルは内部ゴムミキサー中でDPG、SおよびCBSの硬化システムと約3分間混合された。
【0076】
このようにして得られた組成物は、2ないし3mmの板状にカレンダー加工され、160℃20分間に硬化・成形された。
【0077】
実施例で用いられた試験法は次のとおりであった:
ムーニー粘度は規格ASTM D1646−03に従って測定された。
【0078】
レオメトリー測定が、規格ISO3417:1991(F)に従って、振動室レオメーターを用いて160℃で実施された。経時的レオメトリートルクの変化が加硫反応の結果として組成物の硬化進行について説明する。測定値は規格ISO3417:1991(F)に従って処理される。デシニュートンメートル(dNm)で測定された、最小および最大トルク値がそれぞれMLおよびMHと表示される、α%硬化(例えば5%)での時間は、最小および最大トルク値間の差のα%(例えば5%)の転化率を達成するに必要な時間である。最小および最大トルク値間の、ML−MHで示される差もまた測定される。同じ条件で、160℃でのゴム組成物のスコーチ時間が、トルクの最小値を上回る、トルク2単位の増加を得るに必要な時間(分)として(“時間@2dNmスコーチS”)、測定される。
【0079】
引張り試験がISO規格 ISO37:1994(F)に従って、引張り試験片ISO37−型2を用いて実施された。10%伸び(M10),100%伸び(M100)および伸び(M250またはM300)での、公称応力(または見掛け応力、MPa単位)が、10%、100%および250%または300%伸びで測定される。破断応力(MPa単位)もまた測定される。破壊時伸び(%単位)は規格ISO37に従って測定された。破壊時伸びの高い値が好まれる。好ましくは、破壊時伸びは少なくとも300%である。これらのすべての引張り測定は、ISO規格ISO471に従って、温度および相対湿度の通常の条件下で実施される。
【0080】
動的特性は,ASTM D5992−96により、ビスコアナライザー(Metravib VA4000)にて測定された。55℃に制御された温度下、10 Hzの周波数で交互の単一正弦せん断応力を受けた加硫組成物のサンプル(厚さ2.5 mmと断面40 mm2)の応答が記録される。スキャンニングは、0.1から50%の変形増幅において行う;損失係数tan の最大実測値は記録され、その値はtan maxと表示される。そのtan maxはタイヤの転がり抵抗と非常に相関している。G’0は、挙動が応力に対し直線である非常に低ひずみで測定された弾性率である。G’maxは50%ひずみでの弾性率である。動的特性が第一ひずみ掃引(G’0)後0.1から50%まで記録され、その後50%から0.1%までの戻り(return)もまた記録された。第一のひずみ掃引での弾性率と低ひずみに戻り後の弾性率G’0 return)との差を G’0と表示し、それは応力下のタイヤの取り扱い安定性と非常に相関している。G’0 returnとG’max(第二ひずみ掃引後の)との差は G’returnと表示される。tan( )max return値は、戻りひずみ掃引の間の損失係数tan( )の最大に相当する。tan( )maxおよびtan( )max returnはタイヤの転がり抵抗に非常に相関している。
【0081】
ショアA硬さはASTM D2240−02bに従って測定された。
【0082】
結果は、それぞれ実施例個々のセットについて、別に議論されている、また比較のための比較例は加工および試験条件が同じであるときにのみ、意義がある。
【実施例】
【0083】
実施例1−3
実施例1から3までの組成物は下記の表1に示される配合(ゴム100部あたりの部(phr)で)を有した
【0084】
【表1】

【0085】
混合中のトルクレベルが下記の表2に示される。表2中、t0=ピストンがすべての製品導入後の混合室を閉じた時で、それに続く時間はt0後の秒単位である。
【0086】
【表2】

【0087】
トルクレベルは混合に使われるエネルギーに直接相関している。表2が示しているとおり、少量の配合樹脂は加工トルクの少なからぬ減少を導いている。混合で必要なエネルギーが、それら樹脂の存在で参考配合よりも非常に低いことを意味する。樹脂は、可塑剤および加工助剤として機能し、それが加工コストを減らすことに役立ち得る。
【0088】
実施例1から3のゴム組成物は、比較例と比較すると硬化速度を増大した。95%の硬化に相当するひずみ値に達するに要する時間は、比較例はそのひずみ値に達するまでに約14.1分要したのに対して、実施例1から3のそれぞれについて12.7と12.8分の間であった。
【0089】
硬化ゴム組成物の物理特性は表3に記載されている。
【0090】
【表3】

【0091】
実施例1,2および3の、分岐状シリコーン樹脂を含有する組成物は、
‐ MH−ML
‐ 引張り係数(特定の伸びでの応力)
‐ 硬度
の強い増加を有する。
【0092】
OH含有樹脂は硬化特性に著しい影響を与える。通常MH−MLが高くなるほど高い架橋密度を示す。実施例1から3それぞれの組成物は、比較例は10.3dNmに達するだけであるのに対して、およそ11.6dNmのMH−ML値示す。実施例1,2および3の組成物は高い架橋密度を与える。
【0093】
それら組成物でもって得られた引張り係数および硬度もまたOH含有樹脂により著しく増大した。これはまたOH含有樹脂が高い架橋密度を与えていることを示す。
【0094】
粘弾性特性で、取り扱い安定性指標 G’0は、実施例1および2の組成物について樹脂追加のマイナス影響を何も示さなかった。実施例3の組成物について、G’0 は50%より多く減少し、高応力適用後タイヤ性能の良好な安定性を導く。tan maxおよびtan max returnの振幅は、実施例1、2および3の組成物について著しく(15%までに)減少させられ、それらの組成物から製造されたタイヤの転がり抵抗の減少を示す。
【0095】
実施例1から3は、少量のヒドロキシル官能性T‐樹脂の追加が加工および機械特性で高いコンパウンド性能に導くことを示す。
【0096】
実施例4
ゴム組成物が製造され、そこでは比較例1でエラストマー100部あたり10部のシリカがヒドロキシル含有シリコーン樹脂1部で置き換えられた。硬化添加剤のレベルもまた、下記の表4にゴム100部あたり部数での配合により示されるように、同様な硬化速度を与えるため減らされた。
【0097】
【表4】

【0098】
混合中のトルクレベルが下記の表5に示される。
【0099】
【表5】

【0100】
実施例4でのトルクレベルは比較例1よりもかなり低く、混合に要するエネルギーが少ないことを示した。
【0101】
実施例4の組成物の物理特性は下記の表6に示される:
【0102】
【表6】

【0103】
実施例4の組成物は、MHおよびMH−MLならびに時間@95%硬化が示しているように、比較例1と非常に近い硬化速度および架橋密度であった。
【0104】
分岐状シリコーン樹脂を含有する実施例4は、比較例1と比べてさらなる利点を示している:
‐ 低粘度MmaxおよびML1+4。 ムーニー粘度が減少すると、コンパウンドが押し出されたときのプロセスに要するエネルギーは減少する。
‐ tan maxおよびtan max returnの減少、実施例4の組成物から製造されたタイヤの転がり抵抗の改善を示す。
【0105】
実施例4は、タイヤトレッド配合物中の一部のシリカをヒドロキシル含有シリコーン樹脂で置き換えると、向上された転がり抵抗をおよびその他の特性でわずかな変化を有し、高価な硬化添加剤DPGおよびCBSをより低いレベルならびに押出中のより低い加工エネルギーを必要とする利点が追加された組成物が与えられ得ることを示す。
【0106】
実施例5
比較例1の組成物を、シリカの含量を減らして、分岐状シリコーン樹脂を追加することで調整した。硬化添加剤のレベルもまた減らして同様な硬化速度とした。配合は下記の表7に重量部で示される。比較例2では、シリコーン樹脂がかご型シルセスキオキサン(POSS)(Plastic Hybrids社からPOSS Trisilanol phenylとして市販されている)の同重量(2phr)で置き換えられた。
【0107】
【表7】

【0108】
混合中のトルクレベルが下記の表8に示される。
【0109】
【表8】

【0110】
実施例5および比較例2それぞれの組成物はトルクを減らし、それ故比較例1と比べて加工中に要するエネルギーを減らす。実施例5が比較例2と比べて高減少を示す。
【0111】
前記二つの組成物の物理特性は下記表9に示される。
【0112】
【表9】

【0113】
OH官能性分岐状シリコーン樹脂を含む実施例5とPOSSを含有する比較例2との間の比較は以下の相違点を示す:
‐ ムーニー粘度MmaxおよびML1+4は、POSSを有するものよりも樹脂の方が低い。両方のムーニー粘度は異形押出しの間のゴムコンパウンドの作業性を予測するに役立つ。Mmaxが高くなればなるほど、押出しを始めるに要するトルクエネルギーは高くなる。ML1+4が高くなればなるほど、異形押出しを終えるに要するトルクエネルギーは高くなる。POSSとOH官能性分岐状シリコーン樹脂との間の比較は、OH官能性分岐状シリコーン樹脂についてより良い作業性および低い加工エネルギーを予測させる。
‐ 同等の振幅tan max
‐ 第一のひずみ掃引後と戻り後のG’0間の差の減少
この差が高応力ソリシテーション(Solicitation)後のタイヤの機能安定性に相関している。差が低くなればなるほど、タイヤ機能の安定性が良くなる。
‐ 同等の引張り係数および硬度
【0114】
実施例5は、タイヤトレッド配合物中の一部のシリカを少量のヒドロキシル含有シリコーン樹脂で置き換えると、POSSでの置換と比べて改善された加工特徴および動的性能を有する組成物が低コストで与えられ得ることを示す。
【0115】
実施例6
実施例5が、表10に示されるように、T樹脂をシリコーンDTレジン4で置き換えて繰り返された。
【0116】
【表10】

【0117】
混合中のトルクレベルが下記の表11に示される。
【0118】
【表11】

【0119】
実施例6の組成物はトルクを減らし、それ故に、混合の終わりに近づくにつれてトルクの減少は実施例5よりも少ないが、比較例1と比べて加工中に要するエネルギーを減らした。
【0120】
実施例6の組成物の物理特性は下記の表12に示される。
【0121】
【表12】

【0122】
実施例6の組成物は、実施例5および比較例1に対して、MHおよびMH−MLならびに時間@95%が示しているように密接に類似した硬化速度および架橋密度を有した。
【0123】
G’0は、比較例1よりも実施例6が低く、特性の耐久性の改善を示す。
【0124】
M100およびM250弾性率は、比較例1よりも実施例6が高い。
【0125】
実施例6は、タイヤトレッド配合物中の一部のシリカを少量のヒドロキシル含有DTシリコーン樹脂で置き換えると、改善された弾性率およびその他の特性でわずかな変化を有し、高価な硬化添加剤DPGおよびCBSをより低いレベルならびに押出中のより低い加工エネルギーを必要とする利点が追加された組成物が与えられ得ることを示す。
【0126】
実施例7から10
ゴム組成物が製造され、そこでは比較例1のエラストマー100部あたりシリカ10部をヒドロキシル含有シリコーンT樹脂1部で置き換えられた。実施例7および8では、樹脂が第二混合工程で、実施例9および10では第一混合工程で加えられた。ゴム100部あたりの部で配合組成物は下記表13に示される。
【0127】
【表13】

【0128】
混合中のトルクレベルが下記表14に示される。
【0129】
【表14】

【0130】
実施例7から10は同様なトルクレベルとなった。異なる時間でのトルクレベルは、比較例1と比べて、実施例7から10について混合中のエネルギー要求の減少を示した。
【0131】
実施例7から10および比較例1の組成物の物理特性は下記表15に示される。
【0132】
【表15】

【0133】
実施例7から10は、時間@95%硬化の類似の値で示されるように、比較例1と密接に類似した硬化速度を有した。実施例7から10の架橋密度は、MHおよびMH−ML値で示されるように、比較例1で得られた値と類似した。
【0134】
G’0は、比較例1よりも実施例7から10について、特に実施例7、8および10で低く、特性の耐久性の改善を示した。
【0135】
tan( )maximumは、比較例1よりも実施例7から10について低く、最終コンパウンドの低い転がり抵抗を示した。これは組成物中のシリカの低量(80phrの代わりに70)によるものと考えられた。
【0136】
M100およびM300弾性率が、比較例1よりも実施例7から10について高かった。
【0137】
実施例7から10は、タイヤトレッド配合物中の一部のシリカを少量のOH含有Tシリコーン樹脂で置き換えると改善された弾性率および低tan( )maximumならびにその他の特性でわずかな変化を有する組成物が与えられ得ることを示した。実施例8および10は高価な硬化添加剤DPGをより低いレベルで必要とする追加の利点を有した。
【0138】
実施例7から10は、表14中トルクレベルで示されるように加工中のエネルギー要求を下げることに成功した。
【0139】
実施例7から10はまた比較例1よりも低い粘度を有した。
【0140】
実施例7および8について、破断点伸び(伸び 最大)値は実施例9および10よりも良かった。低量のシリカを有する組成物では、第二工程でシリコーンレジン1を加えることが破断点伸びの改善に役立つと考えられる。
【0141】
実施例11から13
ゴム組成物が製造され、そこでは比較例3でエラストマー100部あたり10部のシリカがヒドロキシル含有シリコーンT樹脂1部で置き換えられた。実施例11から13はシリコーン樹脂の追加時間でお互いに異なった。ゴム100部あたりの部で配合組成物が下記表16に示される。
【0142】
【表16】

【0143】
混合中のトルクレベルが下記表17に示される。
【0144】
【表17】

【0145】
実施例11から13は同様なトルクレベルとなった。異なる時間でのトルクレベルは、比較例3と比べて、実施例11から13について混合中の必要エネルギーの減少を示した。
【0146】
実施例11から13までおよび比較例1の組成物の物理特性は下記表15に示される:
【0147】
【表18】

【0148】
実施例11から13は、時間@95%硬化の類似の値で示されるように、比較例3と密接に類似した硬化速度を有した。実施例11から13の架橋密度は、MHおよびMH−ML値で示されるように、比較例3で得られた値と類似した。
【0149】
G’0は、実施例11から13について、比較例3よりも低く、特性の耐久性の改善を示した。
【0150】
tan( )maximumは、実施例12について比較例3よりも低く、最終コンパウンドの低い転がり抵抗を示した。これは組成物中のシリカの低量(80phrの代わりに70)によるものと考えられた。
【0151】
M100およびM300弾性率が、実施例12について比較例3よりも高かった。
【0152】
実施例12はタイヤトレッド配合物中の一部のシリカを少量のOH含有Tシリコーン樹脂で置き換えると向上された弾性率および低tan( )maximumならびにその他の特性でわずかな変化を有する組成物が与えられ得ることを示した。実施例12は高価な硬化添加剤DPGをより低いレベルで必要とする追加の利点を有した。
【0153】
実施例11から13は、表18中トルクレベルで示されるように加工中のエネルギー要求を下げることに成功した。
【0154】
実施例11から13はまた比較例1よりも低い粘度を有した。
【0155】
実施例14および15
ゴム組成物が製造され、そこでは比較例3でエラストマー100部あたり10部のシリカがヒドロキシル含有シリコーンT樹脂1部で置き換えら、および1.8部のTESPTがOH含有T樹脂1部で置き換えられた。ゴム100部あたりの部で配合組成物が下記表19に示される。
【0156】
【表19】

【0157】
混合中のトルクレベルが下記表20に示される。
【0158】
【表20】

【0159】
異なる時間でのトルクレベルは、比較例1と比べて、実施例15について混合中のエネルギー要求の減少を示した。
【0160】
実施例14および15ならびに比較例1の組成物の物理特性は下記表21に示される。
【0161】
【表21】

【0162】
実施例14および15は、時間@95%硬化の類似の値で示されるように、比較例1と密接に類似した硬化速度を有した。実施例14および15の架橋密度は、MHおよびMH−ML値で示されるように、比較例1で得られた値と類似した。
【0163】
G’0は、実施例14について比較例1および実施例15よりも低く、特性の耐久性の改善を示した。
【0164】
tan( )maximumは、実施例14について比較例1および実施例15よりも低く、最終コンパウンドの低い転がり抵抗を示した。これは組成物中のシリカの低量(80phrの代わりに70)およびまた米国特許出願公開20060217473号明細書に引用されているように表面改質剤の役割を担う二番目の樹脂によるものと考えられた。
【0165】
M100およびM300弾性率が、実施例14について比較例1および実施例15よりも高かった。
【0166】
実施例14および15は、タイヤトレッド配合物中の一部のシリカをOH含有Tシリコーン樹脂で置き換えており、改善された弾性率および低tan( )maximumを、その他の特性で参考文献を超えてわずかな変化とともに示した。
実施例14は、一部のシリカおよびシランを少量のOH含有Tシリコーン樹脂を用いて置き換えることにより、実施例15および参照(reference)を超えて、ひずみ下で低いtan(d)maximumで、その他の特性のわずかな変化とともに、利点を示した。
【0167】
実施例14および15は、表20中トルクレベルで示されるように加工中のエネルギー要求を下げることに成功した。
【0168】
実施例14および15はまた比較例1よりも低い粘度を有した。
【0169】
実施例16ならびに比較例4および5
ゴム組成物が製造され、そこでは比較例3のエラストマー100部あたりシリカ10部がヒドロキシル含有シリコーンT樹脂またはアルコキシ含有シリコーンT樹脂で置き換えられた。
【0170】
【表22】

【0171】
混合中のトルクレベルが下記表23に示される。
【0172】
【表23】

【0173】
実施例16から18は同様なトルクレベルとなった。異なる時間でのトルクレベルは、比較例1と比べて実施例について混合中のエネルギー要求の減少を示した。
【0174】
実施例16、比較例4および5ならびに比較例1の組成物の物理特性は下記表24に示される。
【0175】
【表24】

【0176】
実施例16ならびに比較例4および5は、時間@95%硬化の類似の値で示されるように、比較例1と密接に類似した硬化速度を有した。実施例16ならびに比較例4および5の架橋密度は、MHおよびMH−ML値で示されるように、比較例1で得られた値と類似した。
【0177】
tan( )maximumは、実施例16について比較例1ならびに比較例4および5よりも低く、最終コンパウンドの低い転がり抵抗を示した。これは、アルコキシ末端樹脂に対して、ヒドロキシル末端樹脂の明らかな利点を示した。比較例4および5はヒドロキシル末端を含まない、アルコキシ末端樹脂を含有するゴム組成物であった。
【0178】
M100およびM300弾性率が、実施例16について比較例1ならびに比較例4および5よりも高い。割合M300/M100は、実施例16と比較例1とは似ている。その割合は、実施例16について比較例4および5よりも高く、実施例16について摩耗性能の改善に導く。
【0179】
実施例16は、タイヤトレッド配合物中の一部のシリカを少量のOH含有Tシリコーン樹脂で置き換えることにより、向上された弾性率および低tan( )maximumを、その他の特性でわずかな変化とともに有する組成物が与えられ得ることを示した。
【0180】
実施例17ならびに比較例6および7
ゴム組成物が製造され、そこでは比較例1のエラストマー100部あたり1部のTESPTが実施例17のヒドロキシル含有シリコーンT樹脂または比較例6および7のアルコキシ末端シリコーンT樹脂の1部で置き換えられた。比較例1のエラストマー100部あたり10部のシリカが実施例17のレジン1の1部で置き換えられたゴム組成物が製造された。
【0181】
【表25】

【0182】
混合中のトルクレベルが下記表26に示される。
【0183】
【表26】

【0184】
比較例6および7は同様なトルクレベルとなった。異なる時間でのトルクレベルは比較例1と比べて、混合中のエネルギー要求の減少を示したが、実施例17よりも高かった。これは、アルコキシシロキサン化合物でのシラン置換を超えて、シリカのレジン1を用いての置換の利点を示す
【0185】
比較例6および7ならびに比較例1、実施例17の組成物の物理特性は下記表27に示される。
【0186】
【表27】

【0187】
比較例6および7は、時間@95%硬化の類似の値で示されるように、比較例1と密接に類似した硬化速度を有した。比較例6および7の架橋密度は、MHおよびMH−ML値で示されるように、比較例1および実施例1よりも高い。当業者にとって、架橋密度の増加はM300を増加するとともに、ひずみ条件下ではtan( )を減少するはずである。
【0188】
tan( )maximumは、実施例17について比較例1ならびに比較例6および7よりも低く、最終コンパウンドの低い転がり抵抗を示した。これは、シラン置換としてのアルコキシ末端樹脂に対して、シリカ置換としてのヒドロキシル末端樹脂の使用の明らかな利点を示した。
【0189】
M100およびM300弾性率が、実施例17について比較例1ならびに比較例6および7よりも高く、実施例17について摩耗性能の向上を示す。これは、シラン置換としてのアルコキシ末端樹脂に対して、シリカ置換としてのヒドロキシル末端樹脂の使用の明らかな利点を示した。
【0190】
表27に示された結果すべては、比較例6および7により示されるシラン置換と比べて、実施例17に示されるようにレジン1を使用してのシリカの置換に明らかな利点を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機エラストマー、充填剤および少なくとも1種の該エラストマー用硬化剤を含む組成物であって、該組成物がケイ素結合ヒドロキシル基またはアゾ基を有する分岐状シリコーン樹脂を含有することを特徴とする、硬化性ゴム組成物。
【請求項2】
前記分岐状シリコーン樹脂が、ケイ素結合OH基を1から22重量%のヒドロキシ含量で有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記分岐状シリコーン樹脂がケイ素結合OH基を5から10重量%のヒドロキシ含量で有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記分岐状シリコーン樹脂のシロキサン単位の大部分が型RSiO3/2のT単位であり、式中基Rは異なるシロキサン単位で異なっていてもよく、ヒドロキシル、炭化水素、置換炭化水素、炭化水素オキシおよび置換炭化水素オキシ基から選ばれることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記分岐状シリコーン樹脂が式R’SiO3/2の単位(式中各R’はアルキルまたは置換アルキル基を表す)、および式HOR’SiO2/2単位を含むことを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
各R’がプロピル基を表すことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記分岐状シリコーン樹脂が式R’SiO3/2の単位を含み、式中R’はビニル、エポキシ、メタクリロイル、メルカプトおよびマレイミド基から選ばれる反応性基を有する置換アルキル基を表すことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記分岐状シリコーン樹脂が式R”SiO3/2単位(式中各R”はアリール基を表す)、および式HOR”SiO2/2単位を含むことを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記分岐状シリコーン樹脂のシロキサン単位の大部分が型RSiO3/2のT単位であり、式中基Rは異なるシロキサン単位で異なっていてもよく、ヒドロキシル、炭化水素、置換炭化水素、炭化水素オキシおよび置換炭化水素オキシ基から選ばれ、および前記分岐状シリコーン樹脂が式R’SiO3/2の単位、式中各R’はポリスルフィド結合基を形成する‐R*‐Sa‐R*‐SiX3単位を含有し、式中各R*は2から18個の炭素原子を有するアルキレン結合基を表し、各Xはヒドロキシル、炭化水素、置換炭化水素、炭化水素オキシもしくは置換炭化水素オキシ基またはO1/2結合基を表し、aは2から10の平均値を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記充填剤がシリカであることを特徴とする、請求項2から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記充填剤がデンプン、セルロース、タルク、アルミナおよび炭酸カルシウムから選ばれることを特徴とする、請求項2から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物がまた充填剤の硬化エラストマーへの結合を向上するためにスルフィドシランカップリング剤を含有することを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
ヒドロキシル基を含有する充填剤で充填された有機エラストマーおよび少なくとも1種の該エラストマー用硬化剤を含む硬化性ゴム組成物において、該ゴム組成物の製造過程での混合エネルギーの低減および/または該ゴム組成物を硬化して形成された製品の性能特性の向上のための、ケイ素結合ヒドロキシル基含有分岐状シリコーン樹脂の使用
【請求項14】
前記分岐状シリコーン樹脂が硬化性ゴム組成物中の有機エラストマーの重量に基づいて0.2から10%で用いられることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記分岐状シリコーン樹脂が硬化性ゴム組成物中の有機エラストマーの重量に基づいて1から5%で用いられることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
タイヤ、ベルトまたはホースの製造における、請求項1から12のいずれか一項に記載の硬化性ゴム組成物の使用。

【公表番号】特表2011−504956(P2011−504956A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535393(P2010−535393)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066422
【国際公開番号】WO2009/068643
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】