充放電回路および充放電方法
【課題】電気2重層キャパシタに対して電流比較器を用いずに断熱充電を行い、又、充電したエネルギーを回収できる充放電回路を提供する。
【解決手段】電気2重層キャパシタCLの端子電圧を検出する電圧比較器と、CLの端子電圧に応じてスイッチSW1,SW2のON/OFF比を制御する制御手段とを備え、DC−DCコンバータをDC−DC降圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF比を変化させ、DC−DC降圧回路の出力電圧を電源Eの電圧VDDより低い電圧からVDDまで時間とともに階段状に上昇する電圧に降圧させ、この電圧をCLの端子に印加して充電する構成であり、CLに充電された電荷を回収する時には、DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF比を変化させ、CLの電位を電源Eの電圧VDDより高い電圧に昇圧させ、この電圧から電源Eの方へ電流を流すことにより電荷を回収する。
【解決手段】電気2重層キャパシタCLの端子電圧を検出する電圧比較器と、CLの端子電圧に応じてスイッチSW1,SW2のON/OFF比を制御する制御手段とを備え、DC−DCコンバータをDC−DC降圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF比を変化させ、DC−DC降圧回路の出力電圧を電源Eの電圧VDDより低い電圧からVDDまで時間とともに階段状に上昇する電圧に降圧させ、この電圧をCLの端子に印加して充電する構成であり、CLに充電された電荷を回収する時には、DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF比を変化させ、CLの電位を電源Eの電圧VDDより高い電圧に昇圧させ、この電圧から電源Eの方へ電流を流すことにより電荷を回収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
【背景技術】
【0002】
一般に、通常のキャパシタに定電圧で充電する方法では、効率が50%となることが知られている。すなわち、静電容量Cのキャパシタを定電圧Vで充電すると、電源のする仕事はQV=CV2 であり、一方キャパシタのエネルギーはCV2 /2であることから効率50%である。残りの50%は抵抗においてジュール熱となっている(非特許文献1)。
【0003】
定電圧充電の代わりに定電流充電を用いると、前述のジュール熱が大きく低減できることが知られている。すなわち、定電流Iでt時間充電を行ったときの電荷をQ、キャパシタに蓄えられる電力量Uとすると、
Q=It …(1.1)
U=Q2/(2C) …(1.2)
となる。抵抗Rで失われる電力量Lは
L=RI2t=RQ2/t …(1.3)
となる。すると充電時の効率Pc は、
Pc =U/(U+L)=t/(t+2RC) …(2)
となる。tを十分大きくすると、Pc が 100%となることがわかる(非特許文献2)。
【0004】
電気2重層キャパシタは、簡単なキャパシタではなく内部抵抗の大きなキャパシタであるが、近年、電力蓄積用途に大変注目されている。この電気2重層キャパシタを充電する方法として、前述のように通常の定電圧では効率が悪いことを考慮して、定電流電源を用いた回路により充電する方法が取られている(非特許文献3)。
【0005】
図10は、定電流電源回路の構成および動作例を示す。図において、スイッチSWがONの時にインダクタLを流れる電流が上昇し、OFFの時には減少する。電流比較器Aは、インダクタLを流れる電流を検知し、電流がImin になったときにスイッチSWをONし、電流がImax になったときにスイッチSWをOFFし、この操作により電流をImin からImax の間に制御する。ここで、インダクタLを流れる電流Imax とImin を近づけることにより、ほぼ定電流とみなすことができる。この定電流を用いてキャパシタを充電することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"Low Power Design Methodologies," edited by J. M. Rabaey and M. Pedram, Kluwer Academic Publishers, 1996, p.68
【非特許文献2】電気2重層キャパシタに充電する、岡村みち夫、トランジスタ技術2001年2月号 p.316
【非特許文献3】ECSの動作原理と実験セットの運転、岡村みち夫、トランジスタ技術2001年3月号 p.333
【非特許文献4】応用数学便覧、丸善株式会社、1967年、p.287
【非特許文献5】パワーエレクトロニクスハンドブック、監修 今井孝二、R&Dプラニング、2002年、p.272
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の定電流電源回路は、インダクタLを流れる電流を検知するための電流比較器が必要となる。この電流比較器はシャント抵抗を用い、シャント抵抗の両端の電圧をモニターすることにより流れる電流値を検出する。すなわち、従来の定電流電源回路では、シャント抵抗を必ず用いる必要があった。また、充電したエネルギーを回収する回路構成に関しては明らかにされていなかった。
【0008】
本発明は、電気2重層キャパシタに対して電流比較器を用いずに断熱充電を行い、また充電したエネルギーを回収することができる充放電回路および充放電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、電源Eに並列に接続されたキャパシタCx と、2個のスイッチSW1,SW2と、インダクタLおよびキャパシタCy のLCフィルタとにより構成されるDC−DCコンバータを用い、電気2重層キャパシタCL を充放電する充放電回路において、電気2重層キャパシタCL の端子電圧を検出する電圧比較器と、電気2重層キャパシタCL の端子電圧に応じてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を制御する制御手段とを備え、制御手段は、DC−DCコンバータをDC−DC降圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、DC−DC降圧回路の出力電圧を電源Eの電圧VDDより低い電圧からVDDまで時間とともに階段状に上昇する電圧に降圧させ、この降圧させた電圧を電気2重層キャパシタCL の端子に印加して充電する構成であり、かつ、電気2重層キャパシタCL に充電された電荷を回収するときには、DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、電気2重層キャパシタCL の電位を電源Eの電圧VDDより高い電圧に昇圧させ、この昇圧させた電圧から電源Eの方へ電流を流すことにより電荷を回収する構成である。
【0010】
第1の発明の充放電回路において、スイッチSW1,SW2と並列にかつ逆電位方向にそれぞれダイオードD1,D2を接続し、制御手段は、充電時には接地側に接続されるスイッチSW2を常にOFF とし、電源側に接続されるスイッチSW1のみをON/OFF させ、放電時にはスイッチSW1を常にOFF とし、スイッチSW2のみをON/OFF させる構成である。
【0011】
第1の発明の充放電回路において、電気2重層キャパシタCL の放電時に、電源側に接続されるスイッチSW1とキャパシタCx の接続点と電源との間に挿入される切替スイッチを介して、電気2重層キャパシタCL の蓄電エネルギーを外部の負荷回路に供給する構成である。
【0012】
第2の発明は、電源Eに並列に接続されたキャパシタCx と、2個のスイッチSW1,SW2と、インダクタLおよびキャパシタCy のLCフィルタとにより構成されるDC−DCコンバータを用い、電気2重層キャパシタCL を充放電する充放電方法において、電気2重層キャパシタCL の端子電圧を検出する電圧比較器と、電気2重層キャパシタCL の端子電圧に応じてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を制御する制御手段とを用い、制御手段は、DC−DCコンバータをDC−DC降圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、DC−DC降圧回路の出力電圧を電源Eの電圧VDDより低い電圧からVDDまで時間とともに階段状に上昇する電圧に降圧させ、この降圧させた電圧を電気2重層キャパシタCL の端子に印加して充電し、かつ、電気2重層キャパシタCL に充電された電荷を回収するときには、DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、電気2重層キャパシタCL の電位を電源Eの電圧VDDより高い電圧に昇圧させ、この昇圧させた電圧から電源Eの方へ電流を流すことにより電荷を回収する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、DC−DCコンバータをDC−DC降圧回路として用いてその出力を階段的に上昇させることにより、定電流充電と同様に電気2重層キャパシタCL の効率的な充電が可能になる。特に、従来回路のようにインダクタの電流値をモニターし、電流がImin とImax の中に入るようにスイッチを制御する電流比較器などの周辺回路を省くことができ、シャント抵抗を省くことができる。
【0014】
また、DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路として用いて、電気2重層キャパシタCL の電位をVDDより大きくすることにより、電気2重層キャパシタCL に充電されたエネルギーを効率的に電源に回収することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態の充放電回路の構成例およびその充電電圧の波形を示す図である。
【図2】DC−DC降圧回路の例を示す図である。
【図3】SW1,SW2の具体的な制御波形を示す図である。
【図4】DC−DC昇圧回路の例を示す図である。
【図5】DC−DC昇圧回路におけるデューティ比の設定方法を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の充放電回路の構成例を示す図である。
【図7】第2の実施形態における充電時の動作を説明する図である。
【図8】第2の実施形態における放電時の動作を説明する図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の充放電回路の構成例を示す図である。
【図10】定電流電源回路の構成および動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の充放電回路の構成例およびその充電電圧の波形を示す。
図において、電気2重層キャパシタCL を充放電する本実施形態の充放電回路は、電源Eに並列に接続されたキャパシタCx と、2個のスイッチSW1,SW2と、インダクタLおよびキャパシタCy のLCフィルタとによるDC−DCコンバータで構成される。電圧比較器11は、電気2重層キャパシタCL の端子電圧を検出する構成であり、制御部12−1,12−2は電圧比較器11の出力に応じてスイッチSW1,SW2のON/OFF を制御する構成である。
【0017】
なお、電気2重層キャパシタCL に直列に接続される抵抗R1 は、DC−DCコンバータと電気2重層キャパシタCL を接続するスイッチングトランジスタの抵抗を表し、シャント抵抗とは異なる抵抗である。
【0018】
本実施形態の充放電回路は、DC−DCコンバータの出力電圧を階段的に変化させて充電することを特徴とする。ここで、電気2重層キャパシタCL において、階段的に充電することにより充電効率が高まることを以下に示す。
【0019】
いま、階段電圧の電位をVi 、Vi の電位により充電するときに電源からキャパシタに移動する電荷量をΔQi とする。また、初期および最終の電位をV0,VN とする。すなわち、電位はV0 →V1 →V2 →V3 → … →VN と昇圧するものとする。このとき、電源のする仕事Wは
W=ΣVi ΔQi
=V1C(V1−V0)+V2C(V2−V1)+…
…+VN-1C(VN-1−VN-2)+VNC(VN−VN-1)
=C(V12+V22+…+VN2−(V0V1+V1V2+…+VN-1VN))
=C/2(−V02+(V0−V1)2+(V1−V2)2+…+(VN-1−VN)2+VN2 )
…(3)
ここで、
x1 =V0−V1 ,x2 =V1−V2 ,…,xN =VN-1−VN …(4)
とおくと、 x1 +x2 +…+xN =V0−VN =const. …(5)
である。この条件の下に、Wの最小値と、そのときのx1 ,x2 ,…,xN の値について考察する。
【0020】
式(3) は、式(4) を用いて
W=C/2(−V02+x12+x22+…+xN2+VN2 ) …(6)
となる。Lagrangeの未定係数法(非特許文献4)により、
∂/∂xk(W−λ(x1+x2+…+xN−V0+VN ))=0 …(7)
が成立するときにWは最小値をとる。ここで、λはパラメータである。したがって、x1 ,x2 ,…,xN で偏微分することにより、
x1 =x2 =…=xN =λ/C …(8)
が得られる。
【0021】
すなわち、これは階段電圧の電位差が等しく、V/Nであるときに最小値をとることを意味している。したがって、式(6) より
W=C/2 [((VN−V0)/N)2N+VN2−V02] …(9)
が得られる。
【0022】
ここで、C/2・VN2−C/2・V02は、終状態と始状態のエネルギーの差を表している。また第1項は、抵抗で消費されるジュール熱を意味している。ここで、抵抗で消費されるジュール熱とは、電源と電気2重層キャパシタを接続するスイッチングトランジスタの抵抗R1 で消費されるジュール熱を意味している。
【0023】
式(9) より、ステップ数Nを大きくすれば、このジュール熱をゼロにすることが可能なことがわかる。また、ゼロ電位からの充電でなく、ある電位V0 からの充電においても階段的に充電することが有効なことも明らかである。また、数学的解析によると、ステップ数Nを固定した場合に等間隔で充電する場合に、最も効率的に充電できることがわかった。
【0024】
このように階段的に充電することにより、定電流充電と同様に効率的に充電できることが明らかとなった。
【0025】
第1の実施形態では、上記の階段的に充電することを実現するために、図1(a) に示したDC−DCコンバータのスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変えることにより、出力電圧を変化させることが特徴である。
【0026】
図1の動作について、図2のDC−DC降圧回路の例を用いて詳しく説明する(非特許文献5)。DC−DC降圧回路は、スイッチSとダイオードDとLCフィルタで構成される。スイッチSおよびダイオードDは、図1のスイッチSW1およびSW2に対応する。スイッチSがONのときにダイオードDがOFF となり、図2(b) の状態になる。また、スイッチSがOFF のときにダイオードDがONとなり、図2(c) の状態になる。
【0027】
このDC−DC降圧回路は、図2(b),(c) の状態を繰り返して出力電圧を自由に制御する回路である。図2(b) の状態ではノードN1の電位はE、図2(c) の状態ではノードN1の電位は0となる。LCフィルタの機能により、出力は高周波成分が取り除かれ一定値となる。S(SW1),D(SW2)のONの時間をそれぞれdT,(1−d)Tとすると、出力電圧はdEとなる。ここで、dはS(SW1)がONとなる割合で、デューティ(duty)比とよばれる。
【0028】
第1の実施形態では、このようなDC−DC降圧回路の出力電圧を階段的に変化させた階段電位による充電を用いており、図1(b) はV0 =VDD/4, N=6を示している。
【0029】
すなわち、電圧の昇圧時には、2E/8→3E/8→4E/8→…→8E/8となり、これがdEに対応しているので、デューティ比dは2/8→3/8→4/8→…→8/8となり、このデューティ比dを用いて電源の出力電圧を変化させることができる。
【0030】
図3(a) は、SW1,SW2の具体的な制御波形を示す。図3(b) は、このDC−DC降圧回路の出力電圧dEを示す。図3(a) のデューティ比dは、上記のように2/8→3/8→4/8→5/8→6/8→7/8→8/8と変化させると、図1(b) の階段的に変化する出力電圧となる。
【0031】
次に、電気2重層キャパシタCL に蓄積された充電エネルギーを電源Eに回収する場合について説明する。この場合には、図1(a) の回路をDC−DC昇圧回路として用いる。
【0032】
昇圧動作を説明するために、図4のDC−DC昇圧回路の例を詳しく説明する(非特許文献5)。DC−DC昇圧回路は、インダクタLとスイッチSとダイオードDとキャパシタCで構成される。スイッチSおよびダイオードDは、図1のスイッチSW2およびSW1に対応する。スイッチSがONのときにダイオードDがOFF となり、図4(b) の状態になる。また、スイッチSがOFF のときにダイオードDがONとなり、図4(c) の状態になる。S(SW2),D(SW1)のONの時間をそれぞれ(1−d)T,dTとすると、出力電圧はE/dとなる(図3(c) )。
【0033】
このDC−DC昇圧回路は、図1(a) におけるYからXへのエネルギーの流れを考慮すると、L,SW1,SW2,Cx を用い、SW1,SW2をON/OFF することにより構成可能であることがわかる。
【0034】
次に、図1(a) のYの電位によってどのようなデューティ比を設定すべきかについて説明する。ここで、図5のように、電気2重層キャパシタCL の端子電圧によって4つの領域に分ける。図1(a) のYの電位が領域Aにあるときは、図1(a) のDC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路として動作させ、d=3/4とする。これにより、図1(a) のXの電位はVDDより常にいくらか大きくなって電流が常に電源Eに流れ、電源はエネルギーを電気2重層キャパシタCL から受け取ることになる。Yの電位が 3/4VDDになったときには、Xの電位はVDDとなる。
【0035】
また、Yの電位が領域Bにあるときはd=2/4とする。これにより、Xの電位はVDDより常にいくらか大きくなって電流が常に電源Eに流れる。Yの電位が 2/4VDDになったときには、Xの電位はVDDとなる。また、Yの電位が領域Cにあるときは、d=1/4とする。これらにより断熱的に電気2重層キャパシタCL のエネルギーを回収できる。領域Dではd=0とする。この場合のみ、エネルギーは回収できない。
【0036】
ここで、図1(a) の制御部12−1,12−2の機能について説明する。
電気2重層キャパシタCL の充電時には制御部12−1を用い、電気2重層キャパシタCL の端子電圧をモニターし、それがi/N・VDDに到達したら、dを (i+1)/NとしてDC−DCコンバータの出力を (i+1)/N・VDDとする。これにより、図1(a) のDC−DCコンバータ(DC−DC降圧回路)の出力は、図1(b) の階段的に上昇する出力電圧となり、定電流充電と同様に効率的な充電が可能になる。
【0037】
電気2重層キャパシタCL の放電時(エネルギー回収時)には制御部12−2を用い、電気2重層キャパシタCL の端子電圧をモニターし、それがiVDD/Nに到達したら、dを (i-1)/Nとして図1(a) のXの電位が常にVDDより大きくなるように制御する。すなわち、DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、電気2重層キャパシタCL の電位を電源Eの電圧VDDより高い電圧に昇圧させ、この昇圧させた電圧から電源Eの方へ電流を流すことにより電荷を回収する。その後、電気2重層キャパシタCL の電位が低下し、その昇圧電圧がVDDに到達したときにスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、電気2重層キャパシタCL の電位をVDDより高い電圧に昇圧させ、以下これを繰り返す。これにより、電気2重層キャパシタCL から電源Eへのエネルギーの流れが可能になり、エネルギー回収が可能になる。
【0038】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態の充放電回路の構成例を示す。
図1(a) に示す第1の実施形態の構成では、スイッチSW1,SW2を交互にON/OFF させる必要があった。本実施形態では、スイッチSW1,SW2と並列にかつ逆電位方向にそれぞれダイオードD1,D2を接続し、充電時にはスイッチSW2を常にOFF とし、スイッチSW1のみをON/OFF させ、放電時(エネルギー回収時)にはスイッチSW1を常にOFF とし、スイッチSW2のみをON/OFF させる構成である。
【0039】
以下、充電時および放電時の動作例について説明する。
図7は充電時の動作を示す。図7(a) は、スイッチSW2を常にOFF とし、スイッチSW1をONとした状態を示す。このとき、SW1とSW2の接続点のノードN1は、電源Eの電位であるためにダイオードD2がオフとなるので、等価回路は図7(b) のようになる。図7(c) は、スイッチSW1をOFF とした状態を示す。このとき、インダクタを流れていた電流はそのまま流れようとし、ダイオードD2を通って流れようとするので、ダイオードD2がオンとなる。すると、ノードN1は接地電位となり、ダイオードD1がオフとなるので、等価回路は図7(d) のようになる。
【0040】
図8は放電時(エネルギー回収時)の動作を示す。図8(a) は、スイッチSW1を常にOFF とし、スイッチSW2をONとした状態を示す。このとき、ノードN1は接地電位であるためにダイオードD1がオフとなるので、等価回路は図8(b) のようになる。電流はインダクタを左向きに流れる。図8(c) は、スイッチSW2をOFF とした状態を示す。このとき、インダクタを流れていた電流はそのまま流れようとし、ダイオードD1を通って流れ続けようとするので、ダイオードD1がオンとなる。すると、ノードN1の電位はEとなり、ダイオードD2がオフとなるので、等価回路は図8(d) のようになる。
【0041】
以上の充電時の図7(b) ,図7(d) の等価回路は、図2(b),(c) のDC−DC降圧回路と一致する。また、回収時の図8(b) ,図8(d) の等価回路は、図4(b), (c)のDC−DC昇圧回路と一致する。ここで、図8(b) ,図8(d) において、電気2重層キャパシタCL の電位を昇圧して電源Eに回収を行うので、図4(b) ,図4(c) と比べて左右が反対になっている。よって機能的に図1(a) の回路と同じ回路が実現されることが分かる。
【0042】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態の充放電回路の構成例を示す。
図において、図1の充放電回路におけるスイッチSW1とキャパシタCx の接続点のノードXと電源Eとの間に切替スイッチを挿入し、ノードXと電源EまたはLSIとの接続を切り替える。ここでは、電気2重層キャパシタCL の蓄電エネルギーを電源Eに戻さず、切替スイッチを電源Eに接続される端子Aから端子Bに接続されるLSIに切り替えることにより、LSIで当該蓄電エネルギーを利用することができる。
【0043】
以上説明した各実施形態におけるスイッチSW1,SW2は、半導体トランジスタ(スイッチングトランジスタ)を用いて構成することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
E 電源
SW1,SW2 スイッチ
Cx ,Cy キャパシタ
L インダクタ
CL 電気2重層キャパシタ D1,D2 ダイオード
11 電圧比較器
12−1 制御部(充電)
12−2 制御部(放電)
【技術分野】
【0001】
本発明は、
【背景技術】
【0002】
一般に、通常のキャパシタに定電圧で充電する方法では、効率が50%となることが知られている。すなわち、静電容量Cのキャパシタを定電圧Vで充電すると、電源のする仕事はQV=CV2 であり、一方キャパシタのエネルギーはCV2 /2であることから効率50%である。残りの50%は抵抗においてジュール熱となっている(非特許文献1)。
【0003】
定電圧充電の代わりに定電流充電を用いると、前述のジュール熱が大きく低減できることが知られている。すなわち、定電流Iでt時間充電を行ったときの電荷をQ、キャパシタに蓄えられる電力量Uとすると、
Q=It …(1.1)
U=Q2/(2C) …(1.2)
となる。抵抗Rで失われる電力量Lは
L=RI2t=RQ2/t …(1.3)
となる。すると充電時の効率Pc は、
Pc =U/(U+L)=t/(t+2RC) …(2)
となる。tを十分大きくすると、Pc が 100%となることがわかる(非特許文献2)。
【0004】
電気2重層キャパシタは、簡単なキャパシタではなく内部抵抗の大きなキャパシタであるが、近年、電力蓄積用途に大変注目されている。この電気2重層キャパシタを充電する方法として、前述のように通常の定電圧では効率が悪いことを考慮して、定電流電源を用いた回路により充電する方法が取られている(非特許文献3)。
【0005】
図10は、定電流電源回路の構成および動作例を示す。図において、スイッチSWがONの時にインダクタLを流れる電流が上昇し、OFFの時には減少する。電流比較器Aは、インダクタLを流れる電流を検知し、電流がImin になったときにスイッチSWをONし、電流がImax になったときにスイッチSWをOFFし、この操作により電流をImin からImax の間に制御する。ここで、インダクタLを流れる電流Imax とImin を近づけることにより、ほぼ定電流とみなすことができる。この定電流を用いてキャパシタを充電することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"Low Power Design Methodologies," edited by J. M. Rabaey and M. Pedram, Kluwer Academic Publishers, 1996, p.68
【非特許文献2】電気2重層キャパシタに充電する、岡村みち夫、トランジスタ技術2001年2月号 p.316
【非特許文献3】ECSの動作原理と実験セットの運転、岡村みち夫、トランジスタ技術2001年3月号 p.333
【非特許文献4】応用数学便覧、丸善株式会社、1967年、p.287
【非特許文献5】パワーエレクトロニクスハンドブック、監修 今井孝二、R&Dプラニング、2002年、p.272
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の定電流電源回路は、インダクタLを流れる電流を検知するための電流比較器が必要となる。この電流比較器はシャント抵抗を用い、シャント抵抗の両端の電圧をモニターすることにより流れる電流値を検出する。すなわち、従来の定電流電源回路では、シャント抵抗を必ず用いる必要があった。また、充電したエネルギーを回収する回路構成に関しては明らかにされていなかった。
【0008】
本発明は、電気2重層キャパシタに対して電流比較器を用いずに断熱充電を行い、また充電したエネルギーを回収することができる充放電回路および充放電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、電源Eに並列に接続されたキャパシタCx と、2個のスイッチSW1,SW2と、インダクタLおよびキャパシタCy のLCフィルタとにより構成されるDC−DCコンバータを用い、電気2重層キャパシタCL を充放電する充放電回路において、電気2重層キャパシタCL の端子電圧を検出する電圧比較器と、電気2重層キャパシタCL の端子電圧に応じてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を制御する制御手段とを備え、制御手段は、DC−DCコンバータをDC−DC降圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、DC−DC降圧回路の出力電圧を電源Eの電圧VDDより低い電圧からVDDまで時間とともに階段状に上昇する電圧に降圧させ、この降圧させた電圧を電気2重層キャパシタCL の端子に印加して充電する構成であり、かつ、電気2重層キャパシタCL に充電された電荷を回収するときには、DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、電気2重層キャパシタCL の電位を電源Eの電圧VDDより高い電圧に昇圧させ、この昇圧させた電圧から電源Eの方へ電流を流すことにより電荷を回収する構成である。
【0010】
第1の発明の充放電回路において、スイッチSW1,SW2と並列にかつ逆電位方向にそれぞれダイオードD1,D2を接続し、制御手段は、充電時には接地側に接続されるスイッチSW2を常にOFF とし、電源側に接続されるスイッチSW1のみをON/OFF させ、放電時にはスイッチSW1を常にOFF とし、スイッチSW2のみをON/OFF させる構成である。
【0011】
第1の発明の充放電回路において、電気2重層キャパシタCL の放電時に、電源側に接続されるスイッチSW1とキャパシタCx の接続点と電源との間に挿入される切替スイッチを介して、電気2重層キャパシタCL の蓄電エネルギーを外部の負荷回路に供給する構成である。
【0012】
第2の発明は、電源Eに並列に接続されたキャパシタCx と、2個のスイッチSW1,SW2と、インダクタLおよびキャパシタCy のLCフィルタとにより構成されるDC−DCコンバータを用い、電気2重層キャパシタCL を充放電する充放電方法において、電気2重層キャパシタCL の端子電圧を検出する電圧比較器と、電気2重層キャパシタCL の端子電圧に応じてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を制御する制御手段とを用い、制御手段は、DC−DCコンバータをDC−DC降圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、DC−DC降圧回路の出力電圧を電源Eの電圧VDDより低い電圧からVDDまで時間とともに階段状に上昇する電圧に降圧させ、この降圧させた電圧を電気2重層キャパシタCL の端子に印加して充電し、かつ、電気2重層キャパシタCL に充電された電荷を回収するときには、DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、電気2重層キャパシタCL の電位を電源Eの電圧VDDより高い電圧に昇圧させ、この昇圧させた電圧から電源Eの方へ電流を流すことにより電荷を回収する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、DC−DCコンバータをDC−DC降圧回路として用いてその出力を階段的に上昇させることにより、定電流充電と同様に電気2重層キャパシタCL の効率的な充電が可能になる。特に、従来回路のようにインダクタの電流値をモニターし、電流がImin とImax の中に入るようにスイッチを制御する電流比較器などの周辺回路を省くことができ、シャント抵抗を省くことができる。
【0014】
また、DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路として用いて、電気2重層キャパシタCL の電位をVDDより大きくすることにより、電気2重層キャパシタCL に充電されたエネルギーを効率的に電源に回収することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態の充放電回路の構成例およびその充電電圧の波形を示す図である。
【図2】DC−DC降圧回路の例を示す図である。
【図3】SW1,SW2の具体的な制御波形を示す図である。
【図4】DC−DC昇圧回路の例を示す図である。
【図5】DC−DC昇圧回路におけるデューティ比の設定方法を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の充放電回路の構成例を示す図である。
【図7】第2の実施形態における充電時の動作を説明する図である。
【図8】第2の実施形態における放電時の動作を説明する図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の充放電回路の構成例を示す図である。
【図10】定電流電源回路の構成および動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の充放電回路の構成例およびその充電電圧の波形を示す。
図において、電気2重層キャパシタCL を充放電する本実施形態の充放電回路は、電源Eに並列に接続されたキャパシタCx と、2個のスイッチSW1,SW2と、インダクタLおよびキャパシタCy のLCフィルタとによるDC−DCコンバータで構成される。電圧比較器11は、電気2重層キャパシタCL の端子電圧を検出する構成であり、制御部12−1,12−2は電圧比較器11の出力に応じてスイッチSW1,SW2のON/OFF を制御する構成である。
【0017】
なお、電気2重層キャパシタCL に直列に接続される抵抗R1 は、DC−DCコンバータと電気2重層キャパシタCL を接続するスイッチングトランジスタの抵抗を表し、シャント抵抗とは異なる抵抗である。
【0018】
本実施形態の充放電回路は、DC−DCコンバータの出力電圧を階段的に変化させて充電することを特徴とする。ここで、電気2重層キャパシタCL において、階段的に充電することにより充電効率が高まることを以下に示す。
【0019】
いま、階段電圧の電位をVi 、Vi の電位により充電するときに電源からキャパシタに移動する電荷量をΔQi とする。また、初期および最終の電位をV0,VN とする。すなわち、電位はV0 →V1 →V2 →V3 → … →VN と昇圧するものとする。このとき、電源のする仕事Wは
W=ΣVi ΔQi
=V1C(V1−V0)+V2C(V2−V1)+…
…+VN-1C(VN-1−VN-2)+VNC(VN−VN-1)
=C(V12+V22+…+VN2−(V0V1+V1V2+…+VN-1VN))
=C/2(−V02+(V0−V1)2+(V1−V2)2+…+(VN-1−VN)2+VN2 )
…(3)
ここで、
x1 =V0−V1 ,x2 =V1−V2 ,…,xN =VN-1−VN …(4)
とおくと、 x1 +x2 +…+xN =V0−VN =const. …(5)
である。この条件の下に、Wの最小値と、そのときのx1 ,x2 ,…,xN の値について考察する。
【0020】
式(3) は、式(4) を用いて
W=C/2(−V02+x12+x22+…+xN2+VN2 ) …(6)
となる。Lagrangeの未定係数法(非特許文献4)により、
∂/∂xk(W−λ(x1+x2+…+xN−V0+VN ))=0 …(7)
が成立するときにWは最小値をとる。ここで、λはパラメータである。したがって、x1 ,x2 ,…,xN で偏微分することにより、
x1 =x2 =…=xN =λ/C …(8)
が得られる。
【0021】
すなわち、これは階段電圧の電位差が等しく、V/Nであるときに最小値をとることを意味している。したがって、式(6) より
W=C/2 [((VN−V0)/N)2N+VN2−V02] …(9)
が得られる。
【0022】
ここで、C/2・VN2−C/2・V02は、終状態と始状態のエネルギーの差を表している。また第1項は、抵抗で消費されるジュール熱を意味している。ここで、抵抗で消費されるジュール熱とは、電源と電気2重層キャパシタを接続するスイッチングトランジスタの抵抗R1 で消費されるジュール熱を意味している。
【0023】
式(9) より、ステップ数Nを大きくすれば、このジュール熱をゼロにすることが可能なことがわかる。また、ゼロ電位からの充電でなく、ある電位V0 からの充電においても階段的に充電することが有効なことも明らかである。また、数学的解析によると、ステップ数Nを固定した場合に等間隔で充電する場合に、最も効率的に充電できることがわかった。
【0024】
このように階段的に充電することにより、定電流充電と同様に効率的に充電できることが明らかとなった。
【0025】
第1の実施形態では、上記の階段的に充電することを実現するために、図1(a) に示したDC−DCコンバータのスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変えることにより、出力電圧を変化させることが特徴である。
【0026】
図1の動作について、図2のDC−DC降圧回路の例を用いて詳しく説明する(非特許文献5)。DC−DC降圧回路は、スイッチSとダイオードDとLCフィルタで構成される。スイッチSおよびダイオードDは、図1のスイッチSW1およびSW2に対応する。スイッチSがONのときにダイオードDがOFF となり、図2(b) の状態になる。また、スイッチSがOFF のときにダイオードDがONとなり、図2(c) の状態になる。
【0027】
このDC−DC降圧回路は、図2(b),(c) の状態を繰り返して出力電圧を自由に制御する回路である。図2(b) の状態ではノードN1の電位はE、図2(c) の状態ではノードN1の電位は0となる。LCフィルタの機能により、出力は高周波成分が取り除かれ一定値となる。S(SW1),D(SW2)のONの時間をそれぞれdT,(1−d)Tとすると、出力電圧はdEとなる。ここで、dはS(SW1)がONとなる割合で、デューティ(duty)比とよばれる。
【0028】
第1の実施形態では、このようなDC−DC降圧回路の出力電圧を階段的に変化させた階段電位による充電を用いており、図1(b) はV0 =VDD/4, N=6を示している。
【0029】
すなわち、電圧の昇圧時には、2E/8→3E/8→4E/8→…→8E/8となり、これがdEに対応しているので、デューティ比dは2/8→3/8→4/8→…→8/8となり、このデューティ比dを用いて電源の出力電圧を変化させることができる。
【0030】
図3(a) は、SW1,SW2の具体的な制御波形を示す。図3(b) は、このDC−DC降圧回路の出力電圧dEを示す。図3(a) のデューティ比dは、上記のように2/8→3/8→4/8→5/8→6/8→7/8→8/8と変化させると、図1(b) の階段的に変化する出力電圧となる。
【0031】
次に、電気2重層キャパシタCL に蓄積された充電エネルギーを電源Eに回収する場合について説明する。この場合には、図1(a) の回路をDC−DC昇圧回路として用いる。
【0032】
昇圧動作を説明するために、図4のDC−DC昇圧回路の例を詳しく説明する(非特許文献5)。DC−DC昇圧回路は、インダクタLとスイッチSとダイオードDとキャパシタCで構成される。スイッチSおよびダイオードDは、図1のスイッチSW2およびSW1に対応する。スイッチSがONのときにダイオードDがOFF となり、図4(b) の状態になる。また、スイッチSがOFF のときにダイオードDがONとなり、図4(c) の状態になる。S(SW2),D(SW1)のONの時間をそれぞれ(1−d)T,dTとすると、出力電圧はE/dとなる(図3(c) )。
【0033】
このDC−DC昇圧回路は、図1(a) におけるYからXへのエネルギーの流れを考慮すると、L,SW1,SW2,Cx を用い、SW1,SW2をON/OFF することにより構成可能であることがわかる。
【0034】
次に、図1(a) のYの電位によってどのようなデューティ比を設定すべきかについて説明する。ここで、図5のように、電気2重層キャパシタCL の端子電圧によって4つの領域に分ける。図1(a) のYの電位が領域Aにあるときは、図1(a) のDC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路として動作させ、d=3/4とする。これにより、図1(a) のXの電位はVDDより常にいくらか大きくなって電流が常に電源Eに流れ、電源はエネルギーを電気2重層キャパシタCL から受け取ることになる。Yの電位が 3/4VDDになったときには、Xの電位はVDDとなる。
【0035】
また、Yの電位が領域Bにあるときはd=2/4とする。これにより、Xの電位はVDDより常にいくらか大きくなって電流が常に電源Eに流れる。Yの電位が 2/4VDDになったときには、Xの電位はVDDとなる。また、Yの電位が領域Cにあるときは、d=1/4とする。これらにより断熱的に電気2重層キャパシタCL のエネルギーを回収できる。領域Dではd=0とする。この場合のみ、エネルギーは回収できない。
【0036】
ここで、図1(a) の制御部12−1,12−2の機能について説明する。
電気2重層キャパシタCL の充電時には制御部12−1を用い、電気2重層キャパシタCL の端子電圧をモニターし、それがi/N・VDDに到達したら、dを (i+1)/NとしてDC−DCコンバータの出力を (i+1)/N・VDDとする。これにより、図1(a) のDC−DCコンバータ(DC−DC降圧回路)の出力は、図1(b) の階段的に上昇する出力電圧となり、定電流充電と同様に効率的な充電が可能になる。
【0037】
電気2重層キャパシタCL の放電時(エネルギー回収時)には制御部12−2を用い、電気2重層キャパシタCL の端子電圧をモニターし、それがiVDD/Nに到達したら、dを (i-1)/Nとして図1(a) のXの電位が常にVDDより大きくなるように制御する。すなわち、DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路としてスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、電気2重層キャパシタCL の電位を電源Eの電圧VDDより高い電圧に昇圧させ、この昇圧させた電圧から電源Eの方へ電流を流すことにより電荷を回収する。その後、電気2重層キャパシタCL の電位が低下し、その昇圧電圧がVDDに到達したときにスイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、電気2重層キャパシタCL の電位をVDDより高い電圧に昇圧させ、以下これを繰り返す。これにより、電気2重層キャパシタCL から電源Eへのエネルギーの流れが可能になり、エネルギー回収が可能になる。
【0038】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態の充放電回路の構成例を示す。
図1(a) に示す第1の実施形態の構成では、スイッチSW1,SW2を交互にON/OFF させる必要があった。本実施形態では、スイッチSW1,SW2と並列にかつ逆電位方向にそれぞれダイオードD1,D2を接続し、充電時にはスイッチSW2を常にOFF とし、スイッチSW1のみをON/OFF させ、放電時(エネルギー回収時)にはスイッチSW1を常にOFF とし、スイッチSW2のみをON/OFF させる構成である。
【0039】
以下、充電時および放電時の動作例について説明する。
図7は充電時の動作を示す。図7(a) は、スイッチSW2を常にOFF とし、スイッチSW1をONとした状態を示す。このとき、SW1とSW2の接続点のノードN1は、電源Eの電位であるためにダイオードD2がオフとなるので、等価回路は図7(b) のようになる。図7(c) は、スイッチSW1をOFF とした状態を示す。このとき、インダクタを流れていた電流はそのまま流れようとし、ダイオードD2を通って流れようとするので、ダイオードD2がオンとなる。すると、ノードN1は接地電位となり、ダイオードD1がオフとなるので、等価回路は図7(d) のようになる。
【0040】
図8は放電時(エネルギー回収時)の動作を示す。図8(a) は、スイッチSW1を常にOFF とし、スイッチSW2をONとした状態を示す。このとき、ノードN1は接地電位であるためにダイオードD1がオフとなるので、等価回路は図8(b) のようになる。電流はインダクタを左向きに流れる。図8(c) は、スイッチSW2をOFF とした状態を示す。このとき、インダクタを流れていた電流はそのまま流れようとし、ダイオードD1を通って流れ続けようとするので、ダイオードD1がオンとなる。すると、ノードN1の電位はEとなり、ダイオードD2がオフとなるので、等価回路は図8(d) のようになる。
【0041】
以上の充電時の図7(b) ,図7(d) の等価回路は、図2(b),(c) のDC−DC降圧回路と一致する。また、回収時の図8(b) ,図8(d) の等価回路は、図4(b), (c)のDC−DC昇圧回路と一致する。ここで、図8(b) ,図8(d) において、電気2重層キャパシタCL の電位を昇圧して電源Eに回収を行うので、図4(b) ,図4(c) と比べて左右が反対になっている。よって機能的に図1(a) の回路と同じ回路が実現されることが分かる。
【0042】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態の充放電回路の構成例を示す。
図において、図1の充放電回路におけるスイッチSW1とキャパシタCx の接続点のノードXと電源Eとの間に切替スイッチを挿入し、ノードXと電源EまたはLSIとの接続を切り替える。ここでは、電気2重層キャパシタCL の蓄電エネルギーを電源Eに戻さず、切替スイッチを電源Eに接続される端子Aから端子Bに接続されるLSIに切り替えることにより、LSIで当該蓄電エネルギーを利用することができる。
【0043】
以上説明した各実施形態におけるスイッチSW1,SW2は、半導体トランジスタ(スイッチングトランジスタ)を用いて構成することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
E 電源
SW1,SW2 スイッチ
Cx ,Cy キャパシタ
L インダクタ
CL 電気2重層キャパシタ D1,D2 ダイオード
11 電圧比較器
12−1 制御部(充電)
12−2 制御部(放電)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源Eに並列に接続されたキャパシタCx と、2個のスイッチSW1,SW2と、インダクタLおよびキャパシタCy のLCフィルタとにより構成されるDC−DCコンバータを用い、電気2重層キャパシタCL を充放電する充放電回路において、
前記電気2重層キャパシタCL の端子電圧を検出する電圧比較器と、
前記電気2重層キャパシタCL の端子電圧に応じて前記スイッチSW1,SW2のON/OFF 比を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記DC−DCコンバータをDC−DC降圧回路として前記スイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、DC−DC降圧回路の出力電圧を前記電源Eの電圧VDDより低い電圧からVDDまで時間とともに階段状に上昇する電圧に降圧させ、この降圧させた電圧を前記電気2重層キャパシタCL の端子に印加して充電する構成であり、
かつ、前記電気2重層キャパシタCL に充電された電荷を回収するときには、
前記DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路として前記スイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、前記電気2重層キャパシタCL の電位を前記電源Eの電圧VDDより高い電圧に昇圧させ、この昇圧させた電圧から前記電源Eの方へ電流を流すことにより電荷を回収する構成である
ことを特徴とする充放電回路。
【請求項2】
請求項1に記載の充放電回路において、
前記スイッチSW1,SW2と並列にかつ逆電位方向にそれぞれダイオードD1,D2を接続し、
前記制御手段は、充電時には接地側に接続される前記スイッチSW2を常にOFF とし、前記電源側に接続される前記スイッチSW1のみをON/OFF させ、放電時には前記スイッチSW1を常にOFF とし、スイッチSW2のみをON/OFF させる構成である
ことを特徴とする充放電回路。
【請求項3】
請求項1に記載の充放電回路において、
前記電気2重層キャパシタCL の放電時に、前記電源側に接続される前記スイッチSW1と前記キャパシタCx の接続点と前記電源との間に挿入される切替スイッチを介して、前記電気2重層キャパシタCL の蓄電エネルギーを外部の負荷回路に供給する構成である
ことを特徴とする充放電回路。
【請求項4】
電源Eに並列に接続されたキャパシタCx と、2個のスイッチSW1,SW2と、インダクタLおよびキャパシタCy のLCフィルタとにより構成されるDC−DCコンバータを用い、電気2重層キャパシタCL を充放電する充放電方法において、
前記電気2重層キャパシタCL の端子電圧を検出する電圧比較器と、
前記電気2重層キャパシタCL の端子電圧に応じて前記スイッチSW1,SW2のON/OFF 比を制御する制御手段とを用い、
前記制御手段は、
前記DC−DCコンバータをDC−DC降圧回路として前記スイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、DC−DC降圧回路の出力電圧を前記電源Eの電圧VDDより低い電圧からVDDまで時間とともに階段状に上昇する電圧に降圧させ、この降圧させた電圧を前記電気2重層キャパシタCL の端子に印加して充電し、
かつ、前記電気2重層キャパシタCL に充電された電荷を回収するときには、
前記DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路として前記スイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、前記電気2重層キャパシタCL の電位を前記電源Eの電圧VDDより高い電圧に昇圧させ、この昇圧させた電圧から前記電源Eの方へ電流を流すことにより電荷を回収する
ことを特徴とする充放電方法。
【請求項1】
電源Eに並列に接続されたキャパシタCx と、2個のスイッチSW1,SW2と、インダクタLおよびキャパシタCy のLCフィルタとにより構成されるDC−DCコンバータを用い、電気2重層キャパシタCL を充放電する充放電回路において、
前記電気2重層キャパシタCL の端子電圧を検出する電圧比較器と、
前記電気2重層キャパシタCL の端子電圧に応じて前記スイッチSW1,SW2のON/OFF 比を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記DC−DCコンバータをDC−DC降圧回路として前記スイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、DC−DC降圧回路の出力電圧を前記電源Eの電圧VDDより低い電圧からVDDまで時間とともに階段状に上昇する電圧に降圧させ、この降圧させた電圧を前記電気2重層キャパシタCL の端子に印加して充電する構成であり、
かつ、前記電気2重層キャパシタCL に充電された電荷を回収するときには、
前記DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路として前記スイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、前記電気2重層キャパシタCL の電位を前記電源Eの電圧VDDより高い電圧に昇圧させ、この昇圧させた電圧から前記電源Eの方へ電流を流すことにより電荷を回収する構成である
ことを特徴とする充放電回路。
【請求項2】
請求項1に記載の充放電回路において、
前記スイッチSW1,SW2と並列にかつ逆電位方向にそれぞれダイオードD1,D2を接続し、
前記制御手段は、充電時には接地側に接続される前記スイッチSW2を常にOFF とし、前記電源側に接続される前記スイッチSW1のみをON/OFF させ、放電時には前記スイッチSW1を常にOFF とし、スイッチSW2のみをON/OFF させる構成である
ことを特徴とする充放電回路。
【請求項3】
請求項1に記載の充放電回路において、
前記電気2重層キャパシタCL の放電時に、前記電源側に接続される前記スイッチSW1と前記キャパシタCx の接続点と前記電源との間に挿入される切替スイッチを介して、前記電気2重層キャパシタCL の蓄電エネルギーを外部の負荷回路に供給する構成である
ことを特徴とする充放電回路。
【請求項4】
電源Eに並列に接続されたキャパシタCx と、2個のスイッチSW1,SW2と、インダクタLおよびキャパシタCy のLCフィルタとにより構成されるDC−DCコンバータを用い、電気2重層キャパシタCL を充放電する充放電方法において、
前記電気2重層キャパシタCL の端子電圧を検出する電圧比較器と、
前記電気2重層キャパシタCL の端子電圧に応じて前記スイッチSW1,SW2のON/OFF 比を制御する制御手段とを用い、
前記制御手段は、
前記DC−DCコンバータをDC−DC降圧回路として前記スイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、DC−DC降圧回路の出力電圧を前記電源Eの電圧VDDより低い電圧からVDDまで時間とともに階段状に上昇する電圧に降圧させ、この降圧させた電圧を前記電気2重層キャパシタCL の端子に印加して充電し、
かつ、前記電気2重層キャパシタCL に充電された電荷を回収するときには、
前記DC−DCコンバータをDC−DC昇圧回路として前記スイッチSW1,SW2のON/OFF 比を変化させ、前記電気2重層キャパシタCL の電位を前記電源Eの電圧VDDより高い電圧に昇圧させ、この昇圧させた電圧から前記電源Eの方へ電流を流すことにより電荷を回収する
ことを特徴とする充放電方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−135630(P2011−135630A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290208(P2009−290208)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】
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