説明

充電量表示装置

【課題】車両の運転状況に応じてバッテリの充電量の目標値が変更された場合であっても、運転者が違和感を覚えることを抑制可能な充電量表示を実現する。
【解決手段】充電量表示装置100は、バッテリ12を備える車両10に搭載される。該充電量表示装置は、車両の運転者に対して、バッテリの充電量の絶対値を表示する充電量表示手段11,13と、車両の運転状況、及び充電量表示手段により表示された充電量の絶対値に基づいて、充電量の目標値を算出する算出手段11と、車両の運転者に対して、算出された目標値を表示する目標値表示手段11,13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車等の車両において、バッテリに蓄えられている電力量を運転者に報知する充電量表示装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、蓄電装置の使用可能範囲に基づいて表示用残容量を所定周期毎に算出すると共に、使用可能範囲の上限又は下限が変更された場合に、複数周期をかけて徐々に変更後の使用可能範囲に対応する表示用残容量に近づけるように表示を変更する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
尚、この種の装置が搭載される車両では、例えば、蓄電部の充電状態の管理目標値を、例えば車両の走行速度等に依存して可変させることにより、運用上の蓄電部の容量が向上される(特許文献2参照)。或いは、バッテリとモータ・ジェネレータとの間に設けられた電流センサからの出力信号に基づいて検出されたバッテリ電流に、バッテリ温度及びバッテリの劣化度合に基づいて予め定められたマップを参照することにより算出される補正係数を乗算して得られた乗算値(即ち、バッテリ電流×補正係数)を積算することによりバッテリ容量が判定される(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−110187号公報
【特許文献2】特開平11−164402号公報
【特許文献3】特開2002−340996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1によれば、使用可能範囲によって表示される残容量が変化するので、該残容量を示すメモリの挙動が安定せず、運転者が違和感を覚える可能性があるという技術的問題点がある。尚、特許文献2及び3に記載の技術では、該技術的問題点を解消することは極めて困難である。
【0006】
本発明は、例えば上記技術的問題点に鑑みてなされたものであり、車両の運転状況に応じてバッテリの充電量の目標値が変更された場合であっても、運転者が違和感を覚えることを抑制可能な充電量表示を実現することができる充電量表示装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の充電量表示装置は、バッテリを備える車両に搭載され、前記車両の運転者に対して、前記バッテリの充電量の絶対値を表示する充電量表示手段と、前記車両の運転状況、及び前記充電量表示手段により表示された充電量の絶対値に基づいて、前記充電量の目標値を算出する算出手段と、前記車両の運転者に対して、前記算出された目標値を表示する目標値表示手段と、を備える。
【0008】
本発明の充電量表示装置は、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等のバッテリを備える車両に搭載されている。該車両は、バッテリのみを動力源とする電気自動車であってもよいし、バッテリ及びエンジンを動力源とするハイブリッド自動車であってもよい。
【0009】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる充電量表示手段は、車両の運転者に対して、バッテリの充電量の絶対値を表示する。具体的には例えば、充電量表示手段は、電流計等により計測されたバッテリに係る電流値に基づいてバッテリの充電量を検出し、該検出された充電量の絶対値を、液晶モニタ等の表示部上に表示することによって、充電量の絶対値を運転者に対して報知する。
【0010】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる算出手段は、例えば車速、加速時、減速時、坂路走行時等の車両の運転状況、及び充電量表示手段により表示された充電量の絶対値、に基づいて、充電量の目標値を算出する。尚、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の車両の電子制御装置は、該算出された充電量の目標値を中心として、バッテリの充電量が変動するように、例えば発電機等を制御する。
【0011】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる目標値表示手段は、車両の運転者に対して、算出された目標値を表示する。
【0012】
ここで、本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、電気自動車やハイブリッド自動車において、例えば車速等に応じて、バッテリの充電量の目標値を変更する制御が採用又は適用されている場合、バッテリの充電量の絶対値のみを表示する残量計では、例えば針等の位置が残量計の中央値から比較的頻繁に外れるため、例えば、実際には効率の良い運転であるにもかかわらず、運転効率が悪い等と、運転者が誤解する可能性がある。他方で、充電量を相対値で表示することによって、充電量の目標値を常に残量計の中心にすることが可能であるが、残量計の挙動が実際の充電量の挙動と一致しないため、運転者が違和感を覚える可能性がある。
【0013】
そこで本発明では、充電量表示手段により、バッテリの充電量の絶対値が表示されると共に、目標値表示手段により、算出された目標値が表示される。このため、表示される充電量の挙動と実際の充電量の挙動とを一致させることができると共に、運転者が誤解する可能性を抑制することができる。
【0014】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る充電量表示装置が搭載される車両の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る充電量表示装置により表示される残量表示の一例を示す概念図である。
【図3】比較例に係る充電量表示装置により表示される残量表示の一例を示す概念図である。
【図4】比較例に係る充電量表示装置により表示される残量表示の他の例を示す概念図である。
【図5】本発明の実施形態に係る充電量表示装置により表示される残量表示の他の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の充電量表示装置に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
先ず、本実施形態に係る充電量表示装置が搭載される車両の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る充電量表示装置が搭載される車両の構成の一例を示すブロック図である。図1中の実線は、機械的接続を表わしており、破線は、電気的接続を表わしている。尚、図1には、本実施形態に直接関連のある部材のみを示し、その他の部材については図示を省略している。
【0018】
図1において、車両10は、ECU11、バッテリ12、表示部13及びモータ・ジェネレータ14を備えて構成されている。ここで、車両10は、エンジンを更に備えていてもよい(即ち、車両10がハイブリッド自動車であってもよい)し、エンジンを備えていなくともよい(即ち、車両10が電気自動車であってもよい)。
【0019】
バッテリ12は、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等であり、その端子間電圧は、例えば200V(ボルト)等比較的高電圧である。バッテリ12は、モータ・ジェネレータ14に電力を供給可能であり、且つ、該モータ・ジェネレータ14の回生電力により充電可能である。
【0020】
表示部13は、例えば液晶ディスプレイ等であり、例えばインストルメント・パネル内に配置されている。表示部13には、後述するバッテリ12の充電状況(State of Charge:SOC)に限らず、例えば車両10の速度等も表示されてよい。
【0021】
モータ・ジェネレータ14は、バッテリ12から供給される電力により駆動力を発生可能であり、且つ、回生電力を発生可能である。発生された駆動力は、動力伝達機構を介して、駆動輪Wに伝達される。
【0022】
上述の如く構成された車両10に搭載された充電量表示装置100の一部としてのECU11は、(i)車両10の運転者に対してバッテリ12の充電量の絶対値を表示し、(ii)車両10の運転状況、及び表示した充電量の絶対値に基づいて、バッテリ12の充電量の目標値を算出し、(iii)該算出された目標値を、車両10の運転者に対して表示する。
【0023】
充電量表示装置100の一部としてのECU11は、具体的には、バッテリ12の充電量の絶対値、及び該充電量の目標値を、車両10の運転者に報知するために、表示部13上に、例えば図2に示すようなSOCメータを表示する。図2は、本実施形態に係る充電量表示装置により表示される残量表示の一例を示す概念図である。
【0024】
図2において、SOCメータは、バッテリ12の充電量の絶対値を示すメータ210と、ECU11により算出された充電量の目標値を示すバー220と、を含んでいる。図2に示したSOCメータでは、バー220上に表示された針221により、充電量の目標値が示される。
【0025】
充電量の目標値は、上記したように、ECU11により、車両10の運転状況、及び表示された充電量の絶対値に基づいて算出される。尚、バッテリ12の充電量の絶対値の検出方法、及び充電量の目標値の算出方法については、公知の各種方法を適用可能であるので、ここではその詳細については触れないこととする。
【0026】
これは以下の理由からである。即ち、従来車両のバッテリのSOCは、常に一定(例えば、満充電の60%を保つように)制御されていた。しかしながら、例えば車両が、時速100km(キロメートル)での高速走行から減速する場合、回生制動に伴うバッテリの充電量は満充電まで40%しか確保できないため、超過分については機械式ブレーキにより熱として放出せざるを得ずエネルギー効率が低下する可能性がある。他方、車両が、停止状態又は低速走行から加速する場合、完全放電まで60%しかバッテリ容量を活用することができず、バッテリが本来持つ充電容量を十分には活用することが困難である。
【0027】
そこで、本実施形態では、車両10の運転状況及びバッテリ12のSOCに応じて充電量の目標値が算出され、該算出された目標値に応じてバッテリ12のSOCが管理されることによって、エネルギー効率の向上やバッテリ12の充電容量の十分な活用を図られる。
【0028】
尚、本実施形態に係る「ECU11」は、本発明に係る「充電量表示手段」、「算出手段」及び「目標値表示手段」の一例である。本実施形態では、車両10の各種電子制御用のECU11の機能の一部を、充電量表示装置100の一部として用いている。
【0029】
<比較例>
ここで、比較例に係る充電量表示装置について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、比較例に係る充電量表示装置により表示される残量表示の一例を示す概念図であり、図4は、比較例に係る充電量表示装置により表示される残量表示の他の例を示す概念図である。
【0030】
図3に示すように、バッテリの充電量を絶対値で表示するメータ410のみが表示される場合、バッテリの充電量の目標値が車両の運転状況等に応じて変更される制御が実行されると、メータ410における充電量(図3では、2目盛)が中央値(図3では、5目盛)から比較的頻繁に外れるため、実際には効率の良い運転であるにもかかわらず、運転効率が悪い等と、運転者が誤解する可能性がある。
【0031】
他方、図4に示すように、バッテリの充電量を該充電量の目標値に対する相対値で表示するメータ420のみが表示される場合、バッテリの充電量の目標値が車両の運転状況等に応じて変更される制御が実行されたとしても、充電量の目標値を常にメータ420の中心にすることが可能であるが、メータ420の挙動が実際の充電量の挙動と一致しないため、運転者が違和感を覚える可能性がある。具体的には例えば、時速100kmから時速0km(即ち、停止)まで減速した場合であっても、ある充電量の目標値では目盛が3つ増え、他の充電量の目標値では目盛が4つ増える、等差が生じる可能性がある。
【0032】
再び図2に戻り、本実施形態に係る充電量表示装置100では、バッテリ12の充電量の絶対値を示すメータ210と、充電量の目標値を示すバー220とが、表示部13に表示される。このため、表示される充電量の挙動と実際の充電量の挙動とを一致させることができると共に、運転者が誤解する可能性を抑制することができる。
【0033】
<変形例>
本実施形態に係る充電量表示装置100の変形例について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る充電量表示装置により表示される残量表示の他の一例を示す概念図である。
【0034】
図5に示すように、本変形例に係るSOCメータ300は、指針式のメータである。図5において、針310は、バッテリ12の充電量の絶対値を示し、針320は、充電量の目標値を示す。
【0035】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う充電量表示装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0036】
10…車両、11…ECU、12…バッテリ、13…表示部、14…モータ・ジェネレータ、100…充電量表示装置、W…駆動輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを備える車両に搭載され、
前記車両の運転者に対して、前記バッテリの充電量の絶対値を表示する充電量表示手段と、
前記車両の運転状況、及び前記充電量表示手段により表示された充電量の絶対値に基づいて、前記充電量の目標値を算出する算出手段と、
前記車両の運転者に対して、前記算出された目標値を表示する目標値表示手段と、
を備えることを特徴とする充電量表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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