説明

光アダプタ及びケーブル配線工法

【課題】光ファイバケーブルを敷設する際に、室内を極力直線で引き、室内では極力直線部分を使用し、移設の場合における変更を少なくすることができる光アダプタ及びケーブル配線工法を提供する。
【解決手段】敷設するケーブル40,41とそれぞれコネクタ接続する1対のコネクタ部11,12と、両コネクタ部11,12に接続し、変形して任意の角度で光路内の光を屈曲させる光路変換部20とから構成され、コネクタ部11,12及び光路変換部20は、1本又は並列した2本以上からなる連続した光ファイバ30を内部に有する。コネクタ部11,12の内部及び光路変換部20の内部には、1本又は並列した2本以上からなる連続した光ファイバを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アダプタ及びケーブル配線工法に関し、特に光ファイバケーブルをフロア内に配線する際に使用される光アダプタ及びケーブル配線工法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルのフロア内配線においては、光ファイバケーブルが使用されている。従来のオフィス系の光ファイバの敷設では、通常のフリーアクセスフロアと同様に、情報機器(HUBなどを含む)から作業机の近傍に設けた情報コンセントまで、直接光ファイバを敷設していた。
【0003】
光ファイバケーブルの配線技術は、銅線などを使用したケーブルの配線技術と違い、光ファイバケーブルを曲げて配置する際に、最小曲げ半径が小さいと光伝送の損失が大きくなることから、配線する際には注意が必要となる。そのため、特許文献1にあるように、光ファイバケーブルの屈曲部をある特定の大きさの半径になるような保持部材を使用することも提案されていた。
【0004】
また、簡易フリーアクセスタイプの床では、情報ラック(SW/HUB)などの装置と各情報コンセントとの間には、光ファイバケーブルを格子状に配線する形になるため、情報コンセントの移設の際に光ファイバケーブルをそのまま流用しようとすると、光ファイバケーブルの余長の処理が必要となる。
【0005】
また、情報ラック(SW/HUB)などの装置と情報コンセントとが直結されており、移設の際には、光ファイバケーブルケーブルを全て張り換えることになっていた。更に、装置から直接ケーブルを引いた場合に、撤去する際には他の敷設ケーブルやコーナーが邪魔になり、簡単に引っ張り出すのは困難であった。
【特許文献1】特開2002−207126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであり、光ファイバケーブルを敷設する際に、室内を極力直線で引いて室内では極力直線部分を使用し、移設の場合における変更を少なくすることができる光アダプタ及びケーブル配線工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ケーブルを敷設する際に用いられる光アダプタであって、敷設するケーブルにそれぞれコネクタ接続される1対のコネクタ部と、前記1対のコネクタ部に接続して、変形して任意の角度で光路内の光を屈曲させる光路変換部とを備える光アダプタである。
【0008】
また、本発明は、前記1対のコネクタ部の内部及び前記光路変換部の内部には、1本又は並列した2本以上からなる連続した前記光ファイバを有する光アダプタである。
【0009】
そして、本発明は、前記光路変換部は、周りよりも高い屈折率を持つコアと、前記コアよりも低い屈折率の周囲構造部分を有する光導波路である光アダプタである。
【0010】
更に、本発明は、前記光路変換部は、光ファイバの光路の屈曲を制限する部材を内部に有する光アダプタである。
【0011】
また、本発明は、前記光路変換部は、筒状胴体の表面を構成する蛇腹のカバーを有する光アダプタである。
【0012】
そして、本発明は、フロアにケーブルを敷設して配線するケーブル配線工法において、前記ケーブルを少なくとも1つの光アダプタの1対のコネクタ部で接続し、前記光アダプタの1対のコネクタ部の間に配置された光路変換部を用いて、前記光路変換部では変形することで任意の角度で光路内の光を屈曲させ、前記フロアの縦横に前記ケーブルの敷設を行い、前記ケーブルの敷設のルート変更に対応するケーブル配線工法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ファイバケーブルを敷設する際に、室内を極力直線で引いて室内では極力直線部分を使用し、移設の場合における変更を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の光アダプタ及びケーブル配線工法の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1を説明する。本発明の第1の実施形態である光アダプタについて、図面を用いて説明する。図1(a)と図1(b)は、本実施例の光アダプタを示している。図1(a)と図1(b)に示すように、光アダプタ10は、1対のコネクタ部11,12と、光路変換部20とから構成されている。1対のコネクタ部11,12は、敷設する光ファイバケーブル40,41の各端部にそれぞれ着脱可能に接続される。
【0016】
光路変換部20は、1対のコネクタ部11,12に対して接続して、図1(a)の直線配置状態から図1(b)の屈曲配置状態に光ファイバ30を変形して任意の角度で光ファイバ30の光路内の光を屈曲させる機能を有している。
【0017】
光ファイバ30の一端部は、コネクタ部11に接続されて光ファイバケーブル40の端部に対して光接続されており、光ファイバ30の他端部は、コネクタ部12に接続されて光ファイバケーブル41の端部に対して光接続されている。図1(a)と図1(b)に示すように、光路変換部20は、その内部に光ファイバ30の光路の屈曲を制限する部材50を有しており、光路の屈曲を制限する部材50は、光ファイバ30を最小曲げ半径Rが例えば30mm以上になるように、光ファイバ30の途中部分を屈曲して保持する。図1(b)の例では、光ファイバ30の一端部は他端部に対してほぼ90度の角度で屈曲して保持できるように、光ファイバ30の途中部分がR方向に沿って屈曲されている。
【0018】
図2は、図1(a)と図1(b)に示す光路の屈曲を制限する部材50と、屈曲された1本の光ファイバ30を示している。光路の屈曲を制限する部材50は例えばほぼC字形を有している。
【0019】
図3は、図1(a)と図1(b)に示す光路の屈曲を制限する部材50と、屈曲された複数本の光ファイバ30を示している。光路の屈曲を制限する部材50は例えばほぼC字形を有している。複数本の光ファイバ30は並列に配置され、各光ファイバ30の一端部は、図1のコネクタ部11に接続されており、各光ファイバ30の他端部は、図1のコネクタ部12に接続されている。
【0020】
このように、コネクタ部11,12の内部及び光路変換部20の内部は、1本又は並列した2本以上からなる連続した光ファイバ30を有する。
【0021】
光ファイバケーブル40,41を敷設する際に、例えばオフィスの室内を極力直線で引いて室内では極力直線部分を使用し、例えば情報コンセントの移設の場合における光ファイバケーブルの変更を、できる限り少なくすることができる。
【実施例2】
【0022】
実施例2を説明する。本発明の第2の実施形態の光アダプタについて、図4を参照して説明する。図4(a)と図4(b)に示すように、光アダプタ110は、1対のコネクタ部11,12と、光路変換部20とから構成されている。
【0023】
1対のコネクタ部11,12は、敷設する光ファイバケーブル40,41にそれぞれ着脱可能に接続される。
【0024】
光路変換部20は、筒状胴体の表面を構成する蛇腹のカバー60を有しており、1対のコネクタ部11,12に接続して、図4(a)の直線配置状態から図4(b)の屈曲配置状態に光ファイバ30を変形して任意の角度で光ファイバ30の光路内の光を屈曲させる。すなわち、図1に示す光路の屈曲を制限する部材50に代えて蛇腹のカバー60が用いられており、蛇腹のカバー60が光ファイバ30を変形して任意の角度で光ファイバ30の光路内の光を屈曲させた状態を保持する。
【0025】
光ファイバ30の一端部は、コネクタ部11に接続されており、光ファイバ30の他端部は、コネクタ部12に接続されている。
【0026】
光ファイバケーブルを敷設する際に、室内を極力直線で引いて室内では極力直線部分を使用し、移設の場合における変更を少なくすることができる。
【実施例3】
【0027】
実施例3を説明する。本発明の第3の実施形態の光アダプタについて、図5を参照して説明する。図5に示す光アダプタ210の光路変換部20は、周りよりも高い屈折率を持つコア71と、前記コアよりも低い屈折率の周囲構造部分72を有する光導波路である。このコア71は、光ファイバケーブル40,41に対してコネクタ部11,12を用いて光接続されている。
【0028】
周囲構造部分72の光の屈折率がコア71の光の屈折率よりも低いので、光ファイバケーブル40から伝送されてくる光は、コア71を通じて光ファイバケーブル41に伝える。コア71は例えばほぼC字形である。
【0029】
光ファイバケーブルを敷設する際に、室内を極力直線で引いて室内では極力直線部分を使用し、移設の場合における変更を少なくすることができる。
【実施例4】
【0030】
実施例4を説明する。本発明の第4の実施形態の光アダプタについて、図6を参照して説明する。図6に示す光アダプタ310は、図1の光アダプタ10の光路の屈曲を制限する部材50と、図4に示す光アダプタ110の蛇腹のカバー60を使用している例である。
【0031】
光ファイバケーブルを敷設する際に、室内を極力直線で引いて室内では極力直線部分を使用し、移設の場合における変更を少なくすることができる。
【実施例5】
【0032】
実施例5を説明する。本実施例は、ケーブル配線工法の好ましい実施形態であり、図7を参照して、光ファイバケーブルをフロア内に敷設して配線するケーブル配線工法を説明する。このケーブル配線工法では、複数本の光ファイバケーブル40,41が、例えば適当な個数の光コネクタで接続されて敷設ルートの変更が容易にできる。複数本の光ファイバケーブル40,41は、フロア内配線において、例えば図1に示す複数個のL字型の光アダプタ10を用いて、フロアの縦横の敷設に分けて配置して、ルート変更に容易に対応できる。
【0033】
フロア内配線を行う際に、光アダプタ10の光路変換部20では光ファイバ30を変形して、任意の角度で光ファイバ30の光路内の光を屈曲させ、フロア内の縦横に光ファイバケーブル40,41の敷設を分けて行うことで、光ファイバケーブル40,41の敷設ルートの変更ができる。
【0034】
具体的には、図7(a)と図7(b)に例示するが、図7(a)と図7(b)は、それぞれ複数の作業机600を配置したオフィス700を示す平面図である。図7(a)では、作業机600の3組のグループ601,602,603が、オフィス700の長手方向にそって間隔をおいて3組配置されている。図7(b)では、3組のグループ604,605,606の配置が変更されている。
【0035】
図7(a)では、3つの作業机のグループ601,602,603に対して、それぞれ1系統ずつ光ファイバケーブル40,41が敷設して配置されている。簡易フリーアクセスタイプの床では、情報ラック(SW/HUB)などの装置1000とグループ601の情報コンセント800とは、光ファイバケーブル40,41と1つのL字型の光アダプタ10を用いて光接続されている。
【0036】
同様にして、図7(a)では、情報ラック(SW/HUB)などの装置1000とグループ602の情報コンセント800とは、光ファイバケーブル40,40,41と、1つの直線型の光アダプタ810と、1つのL字型の光アダプタ10を用いて光接続されている。
【0037】
図7(a)では、情報ラック(SW/HUB)などの装置1000とグループ603の情報コンセント800とは、光ファイバケーブル40,40,41と、1つの直線型の光アダプタ810と、1つのL字型の光アダプタ10を用いて光接続されている。
【0038】
一方、光ファイバケーブルが作業机の配置変更した後の図7(b)では、直線型の光アダプタ810は使われておらず、情報ラック(SW/HUB)などの装置1000とグループ604の情報コンセント800とは、光ファイバケーブル40,41と1つのL字型の光アダプタ10を用いて光接続されている。
【0039】
同様にして、図7(b)では、情報ラック(SW/HUB)などの装置1000とグループ602の情報コンセント800とは、光ファイバケーブル40,41と、1つのL字型の光アダプタ10を用いて光接続されている。
【0040】
図7(b)では、情報ラック(SW/HUB)などの装置1000とグループ603の情報コンセント800とは、光ファイバケーブル40,41と、1つのL字型の光アダプタ10を用いて光接続されている。
【0041】
オフィスのフロア内またはカーペットあるいは絨毯の内側において、光ファイバケーブルを敷設する際には、装置1000と情報コンセント800の間で平行方向には通常の光アダプタ810を使用して、垂直方向には本発明の実施形態のL字形の光アダプタ10,110,210,310を用いて光接続することができる。
【0042】
フロア内での敷設距離は、高々100m程度であり、光接続における光の損失は1カ所あたり0.5dB程度であるので、GbE(SX)では10カ所程度なら接続可能である。適度にL字型の光アダプタを使用することで、光ファイバケーブルの移設の際に敷設し直す光ファイバケーブルは少なくて済む。L字形の光アダプタを使用すれば、光ファイバケーブル自体の敷設は直線的な接続で行うことができるので、光ファイバケーブル40,41の曲げ半径を考慮する必要がない。
【0043】
さらに、光ファイバケーブルは直線的な敷設が可能であるので、硬いケーブルでも扱いは容易になり、圧迫に対する強度を持たせることができる。直線的な光ファイバケーブルを使用することができるので、ケーブル長の算出が簡単であり、ケーブルの余長はほとんど発生しない。
【0044】
本発明のケーブル配線工法では、フロアにケーブルを敷設して配線する際に、ケーブルを少なくとも1つの光アダプタの1対のコネクタ部で接続して、ケーブルの敷設のルート変更に対応できる。光アダプタの1対のコネクタ部の間には、光路変換部が配置され、光路変換部では変形することで任意の角度で光路内の光を屈曲させ、フロアの縦横にケーブルの敷設を行い、ケーブルの敷設のルート変更に容易に対応することができる。
【0045】
このようにして、光ファイバケーブルをフロア内に敷設して配線するケーブル配線工法を実施することにより、光ファイバケーブルを敷設する際に、室内を極力直線で引いて室内では極力直線部分を使用し、移設の場合における変更を少なくすることができる。
【0046】
光ファイバケーブルの屈曲部分においてL字型の光アダプタを使用することにより、光ファイバケーブルは直線的に敷設することができ、L字型の光アダプタの光ファイバは最小曲げ半径が許容値を超えることが無くなる。
【0047】
また、直線部分においても適度な間隔をおいて直線型の光アダプタを使用することで、情報コンセントが移設されても必要な箇所のみ光ファイバケーブルを交換することができるので、余長の処理を考慮することが不要になる。光ファイバケーブルは直線的に使用することができるので、曲げを考慮した光ファイバケーブルに比べて、光ファイバケーブルにはより強度を持たせることができる。
【0048】
ところで、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、図7の例では、L字型の光アダプタ10を代表的に用いているが、これに代えて光アダプタ110,210,310を使用しても良い。
【0049】
また、図4と図6に示す蛇腹状のカバー60は筒状胴体の表面を構成するが、カバーの断面形状は円形状であっても矩形状であっても三角形状であっても良く、特に限定されない。
【0050】
そして、光路変換部20は、図示例では光ファイバ30をほぼ90度屈曲しているが、これに限らず角度は任意に設定することができる。コネクタ部11,12は、例えばフロア内の一部に固定したり、壁部に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の光アダプタの好ましい第1の実施形態を示す図。
【図2】図1の光アダプタに使用されている光路変換部の光路の屈曲を制限する部材を示す斜視図。
【図3】光路変換部の光路の屈曲を制限する部材の別の例を示す斜視図。
【図4】本発明の光アダプタの好ましい第2の実施形態を示す図。
【図5】本発明の光アダプタの好ましい第3の実施形態を示す図。
【図6】本発明の光アダプタの好ましい第4の実施形態を示す図。
【図7】本発明のケーブル配線工法の一例を示しており、複数の作業机を配置したオフィスを示す平面図。
【符号の説明】
【0052】
10:光アダプタ
11:コネクタ部
12:コネクタ部
20:光路変換部
30:光ファイバ
40、41:光ファイバケーブル
50:屈曲を制限する部材
110、210、310:光アダプタ
600:作業机
700:オフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを敷設する際に用いられる光アダプタであって、
敷設するケーブルにそれぞれコネクタ接続される1対のコネクタ部と、前記1対のコネクタ部に接続して、変形して任意の角度で光路内の光を屈曲させる光路変換部とを備えることを特徴とする光アダプタ。
【請求項2】
請求項1記載の光アダプタにおいて、
前記1対のコネクタ部の内部及び前記光路変換部の内部には、それぞれ1本又は並列した2本以上からなる連続した光ファイバを有することを特徴とする光アダプタ。
【請求項3】
請求項1記載の光アダプタにおいて、
前記光路変換部は、周りよりも高い屈折率を持つコアと、前記コアよりも低い屈折率の周囲構造部分を有する光導波路であることを特徴とする光アダプタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光アダプタにおいて、
前記光路変換部は、光ファイバの光路の屈曲を制限する部材を内部に有することを特徴とする光アダプタ。
【請求項5】
請求項1記載の光アダプタにおいて、
前記光路変換部は、筒状胴体の表面を構成する蛇腹のカバーを有することを特徴とする光アダプタ。
【請求項6】
フロアにケーブルを敷設して配線するケーブル配線工法において、
ケーブルを少なくとも1つの光アダプタの1対のコネクタ部で接続し、前記光アダプタの1対のコネクタ部の間に配置された光路変換部を用いて、前記光路変換部では変形することで任意の角度で光路内の光を屈曲させ、前記フロアの縦横に前記ケーブルの敷設を行い、前記ケーブルの敷設のルート変更に対応することを特徴とするケーブル配線工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−9132(P2008−9132A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179453(P2006−179453)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000233491)日立電子サービス株式会社 (394)
【Fターム(参考)】