光クロスリンク能を有する光応答性人工ヌクレオチド
【課題】ソラレンでは光架橋できない配列に対して架橋可能であって、ソラレンより長波長の光を用いて光架橋可能な光反応性架橋剤の提供。
【解決手段】3位において、置換していてもよいビニル基により置換された、カルバゾリル基と糖類基、多糖類基等とが、カルバゾリル基の1位において結合してなる化合物。糖類基の具体例としては、以下の式で示される。
【解決手段】3位において、置換していてもよいビニル基により置換された、カルバゾリル基と糖類基、多糖類基等とが、カルバゾリル基の1位において結合してなる化合物。糖類基の具体例としては、以下の式で示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸類と架橋可能な光反応性の核酸塩基類似構造を有する光反応性架橋剤、及び該構造を塩基部分として備えた光クロスリンク能を有する光応答性人工ヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学の分野の基本的な技術に、核酸の連結がある。核酸の連結は、例えば、ハイブリダイゼーションと組みあわせて、遺伝子の導入や、塩基配列の検出のために使用される。そのために、核酸の連結は、分子生物学の基礎研究だけではなく、例えば、医療分野における診断や治療、あるいは治療薬や診断薬等の開発や製造、工業及び農業分野における酵素や微生物等の開発や製造に使用される極めて重要な技術である。
【0003】
核酸の連結は、例えば、DNAリガーゼ等を使用して従来から行われている。しかし、このような生体内の酵素反応を取り出した反応は、特別な条件設定を行わなければならず、さらに、使用される酵素類が比較的高価で、安定性に乏しい等の欠点を有する。このような欠点を克服するために、酵素類を使用しない核酸の連結の技術が研究されてきた。
【0004】
酵素類を使用しない核酸の連結の技術として、核酸と反応性のある有機化合物を使用する方法がある。近年、光反応を利用した核酸連結技術が、反応の時間的空間的な制御が自由であること、一般的な有機化学反応よりも緩和な条件で反応可能であること等の利点から、注目されるようになってきた。
このような光連結技術として、5−シアノビニルデオキシウリジンを使用した光連結技術(特許文献1:特許第3753938号公報、特許文献2:特許第3753942号公報)が知られている。
【0005】
核酸の連結と近似した重要な技術に、核酸の架橋がある。例えば、DNAやRNAの架橋反応は、細胞内の遺伝情報の流れを遮断して、遺伝子発現の阻害に使用される。DNAの架橋剤としては、光反応によって架橋を生じる光架橋剤(光クロスリンク剤)としてソラレンという化合物が古くから用いられている。光架橋剤であるソラレンを医薬品として服用して光照射を行う治療方法は、皮膚疾患である乾癬の標準的な治療方法の一つとして普及している。
【0006】
しかし、ソラレンの光架橋反応は、核酸二本鎖中の5’−TA−3’配列に対して優先的に起こるために、使用できる対象が限定されているという問題がある。また、ソラレンの光連結波長は350nmで、光開裂波長は250nmであることから、ソラレンを光架橋剤として使用する場合には、短波長の光源を使用する必要があり、光照射によりDNAや細胞に損傷を与えやすいという問題がある。
【特許文献1】特許第3753938号公報
【特許文献2】特許第3753942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のような問題があるために、ソラレンでは光架橋できない配列に対して利用可能な光反応性架橋剤が求められていた。また、ソラレンと比較して、より長波長の光を用いて光架橋可能な光反応性架橋剤が求められていた。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ソラレンでは光架橋できない配列に対して架橋可能な光反応性架橋剤を提供することにある。さらに、本発明の目的は、ソラレンと比較して、より長波長の光を用いて光架橋可能な光反応性架橋剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、光反応性架橋剤の探索研究を鋭意行ってきた結果、ソラレンでは光架橋できない配列に対して架橋可能な新規な光反応性架橋剤化合物を発見し、この光反応性架橋剤化合物によって上記目的を達成できることを見出した。
【0010】
この光反応性架橋剤化合物によれば、ソラレンでは光架橋できない配列に対して光照射による架橋を形成することができ、この架橋形成反応は、ソラレンと比較して、より長波長の光を用いて行うことができる。
【0011】
本発明に係る化合物は、カルバゾール構造にビニル基が付加された特徴的な構造を有しており、比較的に小さなこの構造によって光架橋性を発揮しているために、ソラレンと同様に様々に修飾して多様な用途で使用することができる。さらに、本発明に係る化合物のこの特徴的な構造は、核酸の塩基に類似した構造を有しているために、人工塩基(人工核酸塩基)として使用することができる。すなわち、本発明に係る化合物の特徴的な構造を人工塩基として導入して、人工ヌクレオシド、及び人工ヌクレオチドを製造することができ、このような人工ヌクレオチドを配列中に含んだ人工核酸類を製造することができる。このような人工核酸類が、光反応によって架橋を形成すると、それは、二重らせんの一方の鎖からもう一方の鎖へと形成された光架橋(光クロスリンク)となるので、光反応性の核酸類は、所望の配列に特異的に反応可能な二重らせんの光クロスリンク剤として使用することができる。
【0012】
したがって、本発明は次の[1]〜[9]にある。
[1] 次の式I:
【化1】
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)
で表される基と、次の式II:
式II Rb−
(ただし、Rbは、水素、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。)
で表される基とが結合してなる化合物。
[2] Rbが、次の式III又は式IV:
【化2】
【化3】
で表される基、又は水素である、[1]に記載の化合物。
[3] [1]〜[2]の何れかに記載の化合物からなる、光反応性架橋剤。
[4] 塩基部分として、[1]に記載の式I(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)で表される基を有するヌクレオシド。
[5] [4]に記載のヌクレオシドからなる、光反応性架橋剤。
[6] 塩基部分として、[1]に記載の式I(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)で表される基を有するヌクレオチド。
[7] [6]に記載のヌクレオチドからなる、光反応性架橋剤。
[8] 塩基部分として、[1]に記載の式I(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)で表される基を有する核酸類(ただし、核酸類には、核酸及びペプチド核酸が含まれる)。
[9] [8]に記載の核酸類からなる、光反応性架橋剤。
【0013】
さらに、本発明は、次の[10]〜[13]にもある。
[10] [1]〜[2]の何れかに記載の化合物を使用して、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成する方法。
[11] [4]に記載のヌクレオシドを使用して、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成する方法。
[12] [6]に記載のヌクレオチドを使用してピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成する方法。
[13] [5]に記載の核酸類と、ピリミジン環を核酸塩基として有する他の核酸類とを、ハイブリダイズして二重らせんを形成させる工程、
形成された二重らせんに光照射する工程、
を含む、光架橋の形成方法。
【0014】
さらに、本発明は、次の[14]〜[18]にもある。
[14] [1]〜[2]の何れかに記載の化合物の、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成するための使用。
[15] [4]に記載のヌクレオシドの、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成するための使用。
[16] [6]に記載のヌクレオチドの、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成するための使用。
[17] [5]に記載の核酸類の、ハイブリダイズして形成された二重らせんにおいてピリミジン環を核酸塩基として有する他の核酸類との間に光架橋を形成するための使用。
[18] 次の式I:
【化4】
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)
で表される基と、次の式II:
式II Rb−
(ただし、Rbは、水素、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。)
で表される基とが結合してなる化合物、であって、
Rbが、次の式:
【化5】
で表される基である化合物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ソラレンでは光架橋できない配列に対して光照射による架橋を形成することができる。すなわち、本発明では、架橋対象が5’−TA−3’配列に限定されたソラレンでは使用できない配列中の塩基に対して、広く架橋を行うことができる。
【0016】
さらに、本発明に係る化合物のカルバゾール構造にビニル基が付加された特徴的な構造は、人工的な核酸塩基として使用することができ、この人工塩基を含んだ特定の配列の核酸類を、これと相補的な配列の核酸類とハイブリダイズして二重らせんを形成することによって、相補的な配列の核酸類の特定の位置の塩基に対して、光架橋(光クロスリンク)を形成することができる。
【0017】
したがって、本発明によれば、ソラレンでは光架橋できない種々の配列中の塩基に対して光架橋を形成できるばかりではなく、相補鎖を形成することによってある特定の配列中のある特定の位置の塩基に対して、光架橋を形成することができる。
【0018】
さらに、本発明による架橋形成反応は、ソラレンと比較して、より長波長の光を用いて行うことができる。そのために、短波長の光源を使用することが回避できるために、光照射によってDNAや細胞に損傷を与える心配が少ない。
【0019】
さらに、本発明による架橋形成反応は、ソラレンと比較して、極めて短時間の光照射で行うことができる。すなわち、架橋形成が迅速に行われるために、反応の迅速性が要求される用途にも使用することができ、さらに光照射時間の短さの点からも、光照射によってDNAや細胞に損傷を与える心配が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は3-Iodocarbazole-1’-deoxyriboside のNOESY スペクトルを表す図である。
【図2】図2はODN(XT) とODN(ACNVK) の光クロスリンク反応実験のHPLC分析の結果を示すクロマトグラムである。
【図3】図3はODN(XC)とODN(GCNVK)の光クロスリンク反応実験のHPLC分析の結 果を示すクロマトグラムである。
【図4】図4はODN(ACNVK) とODN(GCNVK) との光架橋(光クロスリンク)反応の速さを比較したグラフである。
【図5】図5はCNVK を含むODNの配列特異性を検討した実験結果を表す図である。
【図6】図6はODN(AOMeVK) とODN(GT) の光クロスリンク反応実験のHPLC分析の結果を示すクロマトグラムである。
【図7】図7はODN(GOMeVK)とODN(GC)の光クロスリンク反応実験のHPLC分析の結果を示すクロマトグラムである。
【図8】図8はODN(AOHVK) とODN(GT)の光クロスリンク反応実験のHPLC分析の結果を示すクロマトグラムである。
【図9】図9はODN(GOHVK)とODN(GC)の光クロスリンク反応実験のHPLC分析の結果を示すクロマトグラムである。
【図10】図10はODN(ACNVK) , ODN(AOMeVK), 及びODN(AOHVK)の光クロスリンク反応の速さを比較したグラフである。
【図11】図11はODN (ACNVK-GT)に光照射してHPLC分析した結果を示すクロマトグラムである。
【図12】図12はODN (GCNVK-GC)に光照射してHPLC分析した結果を示すクロマトグラムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を、以下に詳細に説明する。本発明は以下の具体的な実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明は、次の式I:
【化6】
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)
で表される基と、次の式II:
式II Rb−
(ただし、Rbは、水素、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。)
で表される基とが結合してなる化合物にある。
【0023】
すなわち、本発明は、上記式Iで表される基及び式IIで表される基を結合させた次の式V:
【化7】
(ただし、式V中の、Ra、R1、R2、Rbは、式I及び式IIについて上述した通りである。)
で表される化合物にある。
【0024】
本発明に係る上記化合物は、ソラレンでは光架橋できない配列に対して光照射による架橋を形成することができ、さらに、ソラレンと比較してより長波長の光を用いて光架橋反応を行うことができる
【0025】
Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、さらに好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基は、好ましくはC2〜C7、さらに好ましくはC2〜C6、さらに好ましくはC2〜C5、さらに好ましくはC2〜C4、さらに好ましくはC2〜C3、特に好ましくはC2のものを使用することができる。
【0026】
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、さらに好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基は、好ましくはC2〜C7、さらに好ましくはC2〜C6、さらに好ましくはC2〜C5、さらに好ましくはC2〜C4、さらに好ましくはC2〜C3、特に好ましくはC2のものを使用することができる。
【0027】
Rbは、水素、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。
【0028】
好適な実施の態様において、Rbとして水素を使用することができ、この場合における本発明に係る化合物は、次の式VI:
【化8】
(ただし、式VI中の、Ra、R1、R2、式Iについて上述した通りである。)
で表される。
【0029】
好適な実施の態様において、Rbとしてリボースを使用することができ、この場合における本発明に係る化合物の一例は、次の式VII:
【化9】
(ただし、式VII中の、Ra、R1、R2、式Iについて上述した通りである。)
で表されるヌクレオシド(リボヌクレオシド)である。
【0030】
好適な実施の態様において、Rbとしてデオキシリボースを使用することができ、この場合における本発明に係る化合物の一例は、次の式VIII:
【化10】
(ただし、式VIII中の、Ra、R1、R2、式Iについて上述した通りである。)
で表されるヌクレオシド(デオキシリボヌクレオシド)である。
【0031】
本発明に係る化合物は、カルバゾール構造にビニル基が付加された特徴的な構造を光反応性の人工核酸塩基として有する核酸類(光架橋性核酸類)として使用することによって、その核酸類と相補的な塩基配列を有する配列とハイブリダイズさせて二重らせんを形成させることができ、形成した二重らせんに光照射を行うと、光架橋性核酸類の相補鎖のなかで本発明に係る光反応性の人工核酸塩基と対応して塩基対となるべき塩基から1塩基分だけ3’末端側にある塩基と光架橋を形成する。
【0032】
本発明に係る光反応性の人工核酸塩基が光架橋を形成可能である相手方の塩基は、ピリミジン環を有する塩基である。一方で、本発明に係る光反応性の人工核酸塩基は、プリン環を有する塩基とは光架橋を形成しない。すなわち、本発明に係る光架橋性の化合物は、天然の核酸塩基としては、シトシン、ウラシル、及びチミンに対して光架橋を形成し、一方で、グアニン及びアデニンに対しては光架橋を形成しないという、強い特異性を有している。
【0033】
本発明に係る光架橋剤化合物は、光反応性の人工核酸塩基として有する核酸類(光架橋性核酸類)として使用することによって、その核酸類と相補的な塩基配列を有する配列とハイブリダイズさせて二重らせんを形成させることができるために、目的とする特定の配列に対してのみ光クロスリンク反応を行わせることができる。すなわち、本発明に係る光架橋剤化合物は、ソラレンなどの従来の光架橋剤では不可能であった、非常に高い配列選択性を、所望に応じて配列設計して、付与することができる。
【0034】
さらに、本発明による光架橋剤化合物は、光反応性の人工核酸塩基として有する核酸類(光架橋性核酸類)として使用して、その核酸類と相補的な塩基配列を有する配列とハイブリダイズさせて二重らせんを形成させる場合に、光架橋性核酸類の相補鎖のなかで本発明に係る光反応性の人工核酸塩基と塩基対となるべき塩基については、特段の制約がなく自由に選択できる。
【0035】
本発明における核酸類とは、核酸及びペプチド核酸(PNA)を含み、さらにモノヌクレオチドを含む。核酸としては、天然の核酸であるDNA及びRNAが含まれ、さらに、非天然(人工)の核酸であるLNA(BNA)等の修飾核酸が含まれる。
【0036】
光架橋のために照射される光は、一般に350〜380nmの範囲、好ましくは360〜370nmの範囲、さらに好ましくは366nmの波長を含む光が好ましく、特に好ましくは、366nmの単波長のレーザー光である。
【0037】
本発明に係る光架橋剤化合物は、他の核酸(核酸類)と光照射によって光架橋した後に、さらに光照射によって光開裂をすることができる。すなわち、本発明に係る光架橋剤化合物は、可逆的な光架橋を可能とするものであり、可逆的な光架橋剤として使用することができる。
【0038】
光開裂のために照射される光は、一般に330〜370nmの範囲、好ましくは330〜360nmの波長を含む光を使用することができる。また、好適な実施の態様において、366nmの波長を含む光、特に好ましくは、366nmの単波長のレーザー光を使用することができる。
【0039】
好適な実施の態様において、本発明による光架橋及び光開裂の光反応は、350〜370nmの範囲の波長を含む光の照射によって行うことができ、好ましくは366nmの単波長のレーザー光を使用して行うことができる。この範囲の波長の光を使用すれば、同一の光源によって光架橋及び光開裂の光反応のいずれをも行うことができ、2種の光源を用意する必要がない点で有利である。この範囲の波長の光を使用する場合には、温度条件によって、光架橋、及び光開裂のいずれの光反応が進行するかを制御することができる。光架橋反応を進行させるためには、一般に0〜50℃、好ましくは0〜40℃、さらに好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは0〜20℃、さらに好ましくは0〜10℃、さらに好ましくは0〜5℃の範囲の温度、特に好ましくは0℃で光照射を行う。光開裂反応を進行させるためには、一般に60〜100℃、好ましくは60〜90℃、さらに好ましくは70〜90℃の範囲の温度で光照射を行う。
【0040】
本発明による光架橋及び光開裂は、光反応を利用しているために、pH、温度、塩濃度などに特段の制約がなく、核酸類等の生体高分子が安定に存在可能なpH、温度、塩濃度とした溶液中で、光照射によって行うことができる。
【0041】
本発明による光架橋及び光開裂は、極めて迅速に進行し、例えば、ソラレンであれば数時間を要する条件(350nm光照射)において、わずか1秒間(366nm光照射)で光反応が進行する。すなわち、本発明に係る光架橋剤を使用すれば、数秒間、例えば、1〜9秒間、1〜7秒間、1〜5秒間、又は1〜3秒間の時間の光照射によって、光反応を進行させて光架橋を形成されることができる。
【実施例】
【0042】
本発明を、実施例を挙げて以下に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
[1. ビニルカルバゾールを塩基部位に持つODN の合成]
次のScheme 1 に従い合成を進めた。以下の説明において、化合物に付した番号で化合物を表す場合がある。
【化11】
【0044】
[3-Iodocarbazole (1) ]
carbazole (2.50 g, 15.0 mmol)のエタノール溶液(500 mL)にNaIO4 (0.80 g, 3.75 mmol)とI2 (1.89 g, 7.45 mmol)を順に加えた後、H2SO4 (1.60 mL, 30.0 mmol)のエタノール溶液(100 mL)を加えて、反応溶液を65 ℃ で1 時間環流した。TLC (HexH : AcOEt = 4 : 1) で原料の消失を確認し、NaOH (1.4 g) のエタノール溶液(100 mL)を加えて中和した。エタノールを除去した後、反応溶液をクロロホルムで2 回抽出し、水で2 回洗浄した。有機相をNa2SO4 で乾燥し、溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(HexH : AcOEt = 4 : 1) で精製し、白色粉末として1 (3.06 g, 70%)を得て、白色粉末として3,6-diiodocarbazole (0.47 g, 7.5%)を得た。
1: 1H NMR (DMSO-d6) δ 11.4 (s, 1H), 8.49 (d, 1H, J = 1.7 Hz), 8.14 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.62 (dd, 1H, J = 8.4, 1.7 Hz), 7.48 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.40 (m, 1H), 7.33 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.16 (m, 1H).
3,6-Diiodocarbazole: 1H NMR (DMSO-d6) δ 11.5 (s, 1H), 8.56 (d, 2H, J = 1.7 Hz), 7.65 (dd, 2H, J = 8.5, 1.7 Hz), 7.34 (d, 2H, J = 8.5 Hz).
【0045】
[3-Cyanovinylcarbazole (2) ]
Triphenylphosphine (139 mg, 0.53 μmol)のジオキサン溶液(10 mL)にPalladium acetate (40.0 mg, 0.18 μmol)とTriethylamine (0.59 μL, 4.23 mmol)を順に加えて、75℃ で5 分間撹拌した。1 (1.03 g, 3.52 mmol)のジオキサン溶液(15 mL)とAcrylonitrile (0.46 μL, 7.04 mmol)を加えて、反応溶液を11.5 時間環流した。TLC (HexH : AcOEt = 4 : 1) で生成物を確認した後、綿ろ過でPalladium 粉末を取り除いた。カラムクロマトグラフィー(HexH : AcOEt = 4 : 1) で精製し、白色粉末として2 (0.14 g, 18%, trans : cis = 97 : 3) を得て、白色粉末として1 (0.37 g, 回収率37%) を回収した。
2: 1H NMR (DMSO-d6) δ 11.6 (s, 1H), 8.44 (s, 1H), 8.11 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.75 (d, 1H, J = 16.7 Hz), 7.69-7.72 (m, 1H), 7.40-7.52 (m, 3H), 7.19-7.24 (m, 1H), 6.36 (d, 1H, J = 16.7 Hz).
【0046】
[3-Cyanovinylcarbazole-1’-β-deoxyriboside-3’,5’-di-(p-toluoyl)ester (3) ]
KOH (0.22 g, 3.87 mmol)とTDA-1 (11 mg, 34 μmol)のアセトニトリル溶液(20 mL)に室温で2 (0.26 g, 1.20 mmol)を加えて20 分間撹拌した。反応溶液にChlorosugar (0.53 g, 1.24 mmol)を加えて室温で20 分間撹拌し、TLC (HexH : AcOEt = 4 : 1)で原料の消失を確認した。沈殿物を除去した後、カラムクロマトグラフィー(CHCl3)で精製し、黄色オイルとして3 (0.23 g, 33%)を得た。
3: 1H NMR (CDCl3) δ 8.09 (s, 1H), 8.02 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.98 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.62-7.65 (m, 1H), 7.62 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 7.49 (d, 1H, J = 16.5 Hz), 7.25-7.31 (m, 7H), 7.17-7.20 (m, 1H), 6.68 (dd, 1H, J = 9.3, 5.8 Hz), 5.78 (m, 1H), 5.76 (d, 1H, J = 16.5 Hz), 4.91 (dd, 1H, J = 12.4, 2.7 Hz), 4.78 (dd, 1H, J = 12.4, 3.3 Hz), 4.55-4.57 (m, 1H), 3.09-3.20 (m, 1H), 2.45-2.52 (m, 1H), 2.45 (s, 3H), 2.44 (s, 3H), HRMS (MALDI): calcd. for C36H30N2O5Na [(M+ Na)+] 593.2053, found 593.2018.
【0047】
[3-Cyanovinylcarbazole-1’−β-deoxyriboside (4) ]
3 (0.22 g, 0.39 mmol)のメタノール溶液(20 mL)に0.5 M methanolic NaOMe (2.3 mL, 1.2 mmol)とクロロホルム(5.0 mL)を加えて、反応溶液を室温で3.5 時間撹拌した。TLC (CHCl3 : MeOH = 9 : 1) で原料の消失を確認した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(CHCl3 : MeOH = 9 : 1) で精製し、白色粉末として4 (0.11 g, 81%)を得た。
4: 1H NMR (CDCl3) δ 8.12 (d, 1H, J = 1.7 Hz), 8.06 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 7.59 (d, 1H, J = 9.1 Hz), 7.43-7.57 (m, 4H), 7.26-7.31 (m, 1H), 6.64 (dd, 1H, J = 8.2, 6.9 Hz), 5.87 (d, 1H, J = 16.5 Hz), 4.77-4.82 (m, 1H), 3.95-4.06 (m, 3H), 2.95 (dt, 1H, J = 14.0, 8.2 Hz), 2.30 (ddd, 1H, J = 14.0, 6.9, 3.3 Hz), HRMS (MALDI): calcd. for C20H18N2O3Na [(M+ Na)+] 357.1215, found 357.1265.
【0048】
[5’-O-(4,4’-dimethoxytrityl)-3-Cyanovinylcarbazole-1’-β-deoxyriboside (5) ]
ピリジン(1.0 mL × 2)で共沸した4 (97 mg, 0.29 mmol)にピリジン(0.5 mL)を加えた。反応溶液に4,4’-dimethoxytritylchloride (118 mg, 0.35 mmol) と4-(dimethylamino
)pyridine (7.0 mg, 58 μmol)のピリジン溶液(1.0 mL)を加えて、反応溶液を室温で18 時間撹拌した。TLC (CHCl3 : MeOH = 95 : 5) で生成物を確認した後、ピリジンを除去した。カラムクロマトグラフィー(CHCl3 : MeOH = 98 : 2) で精製し、黄色粉末として5 (113 mg, 61%)を得た。
5: 1H NMR (CDCl3) δ 8.07 (d, 1H, J = 1.7 Hz, 8.02-8.05 (m, 1H), 7.71 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 7.62-7.65 (m, 1H), 7.45-7.52 (m, 3H), 7.33-7.37 (m, 4H), 7.25-7.28 (m, 4H), 7.12 (dd, 1H, J = 8.8, 1.7 Hz), 6.81 (dd, 4H, J = 8.8, 1.7 Hz), 6.61 (dd, 1H, J = 8.2, 6.3 Hz), 5.77 (d, 1H, J = 16.7 Hz), 4.80-4.82 (m, 1H), 4.05-4.07 (m, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.76 (s, 3H), 3.56-3.58 (m, 2H), 2.89 (dt, 1H, J = 13.8, 8.2 Hz), 2.23 (ddd, 1H, J = 13.8, 6.3, 2.7 Hz), 1.98 (d, 1H, J = 3.6 Hz), HRMS (MALDI): calcd. for C41H36N2O5Na [(M+ Na)+] 659.2522, found 659.2485.
【0049】
[5’-O-(4,4’-dimethoxytrityl)-3-Cyanovinylcarbazole-1’-β-deoxyriboside-3’-O-(cyano ethoxy-N,N-diisopropylamino)phosphoramidite (6) ]
アセトニトリル(1.5 mL)で共沸した5 (0.11 g, 0.17 mol)にアセトニトリル(1.5 mL)を加えた。反応溶液に2-cyanoethyl-N,N,N’,N’-tetraisopropylphosphorodiamidite (52 μL, 0.17 mol)と0.45 M tetrazole のアセトニトリル溶液(0.37 mL, 0.17 mol) を加えて、反応溶液を室温で1.0 時間撹拌した。反応溶液を脱酢酸処理した酢酸エチルで2 回抽出し、Sat. NaHCO3 aq. とH2O で洗浄した。有機相をMgSO4 で乾燥し、溶媒を除去した。
黄色オイルの粗生成物である6 (0.12 g) をゴムシールボトルにアセトニトリルで移し3 回共沸した後、さらなる精製をせずにDNA 合成に使用した。
【0050】
[3−シアノビニルカルバゾール−1’−β−デオキシリボシド (CNVK)を含有するODNの合成](Synthesis of ODN containing 3-cyanovinylcarbazole-1’-β-deoxyribosi
de (CNVK))
下記に示すCNVK を含むODN を合成した。
ODN(ACNVK): 5’-TGCACNVKCCGT-3’
ODN(GCNVK): 5’-TGCGCNVKCCGT-3’
ODN(CCNVK): 5’-TGCCCNVKCCGT-3’
ODN(TCNVK): 5’-TGCTCNVKCCGT-3’
【化12】
次のScheme 2 に従い合成を進めた。
【化13】
【0051】
[3-Methoxycarbonylvinylcarbazole (7) ]
Palladium acetate (38.0 mg, 0.17 μmol)のDMF 溶液(0.25 mL)に1 (0.50 g, 1.71 mmol)とTributylamine (0.41 μL, 1.71 mmol) とMethyl acrylate (0.38 L, 4.27 mmol)とH2O(1.0 mL)を順に加えて、マイクロウェーブを用いて反応溶液を160 ℃ で10 分間反応してTLC で反応追跡したところ、1 の消失を確認した。桐山ろ過でPalladium 粉末を取り除いた後、カラムクロマトグラフィー(HexH : AcOEt = 3 : 1) で精製し、白色粉末として7 (0.26 g, 62%)を得た。
7: 1H NMR (CDCl3) δ 8.26 (s, 1H), 8.21 (s, 1H), 8.07 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.89 (d, 1H, J = 15.9 Hz), 7.61 (dd, 1H, J = 1.7, 8.5 Hz), 7.39-7.44 (m, 3H), 7.23-7.29 (m, 1H), 6.47 (d, 1H, J = 15.9 Hz), 3.81 (s, 3H).
【0052】
[3-Methoxycarbonylcarbazole-1’-β-deoxyriboside-3’,5’-di-(p-toluoyl)ester (8) ]
7 (0.55 g, 2.22 mmol)のアセトニトリル溶液(49 mL)に室温でNaH (92.0 mg, 2.31 mmol)を加えて10 分間撹拌した。反応溶液にChlorosugar (1.14 g, 2.66 mmol) を加えて室温で60 分間撹拌し、TLC (HexH : AcOEt = 4 : 1) で原料の消失を確認した。沈殿物を除去した後、カラムクロマトグラフィー(HexH : AcOEt = 4 : 1) で精製し、白色粉末として8 (0.98 g, 71%)を得た。
【0053】
[3-Methoxycarbonylcarbazole-1’-β-deoxyriboside (9) ]
8 (0.96 g, 1.59 mmol)のメタノール溶液(46 mL)に0.5 M methanolic NaOMe (9.6 mL, 4.8 mmol)とジクロロメタン(12 mL)を加えて、反応溶液を室温で1 時間撹拌した。TLC (CHCl3 : MeOH = 9 : 1) で原料の消失を確認した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(CHCl3 : MeOH = 9 : 1) で精製し、白色粉末として9 (0.28 g, 48%)を得た。
9: 1H NMR (CDCl3) δ 8.20 (s, 1H), 8.06 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 7.86 (d, 1H, J = 15.9 Hz), 7.53-7.61 (m, 3H), 7.44 (t, 1H, J = 7.1 Hz), 7.24-7.27 (m, 1H), 6.63 (dd, 1H, J = 8.2, 7.0 Hz), 6.46 (d, 1H, J = 15.9 Hz), 4.75-4.80 (m, 1H), 3.95-4.04 (m, 3H), 3.81 (s, 1H), 2.95 (dt, 1H, J = 14.0, 8.2 Hz), 2.28 (ddd, 1H, J = 14.0, 7.0, 3.6 Hz).
【0054】
[5’-O-(4,4’-dimethoxytrityl)-3-methoxycarbonylvinylcarbazole-1’-β-deoxyriboside (10) ]
ピリジン(1.0 mL × 2)で共沸した9 (0.23 g, 0.63 mmol)にピリジン(0.5 mL)を加えた。反応溶液に4,4’-dimethoxytritylchloride (0.26 g, 0.75 mmol) と4-(dimethylamino
)pyridine (15.0 mg, 0.13 μmol)のピリジン溶液(2.2 mL)を加えて、反応溶液を室温で16 時間撹拌した。TLC (CHCl3 : MeOH = 95 : 5)で生成物を確認した後、ピリジンを除去した。カラムクロマトグラフィー(CHCl3 : MeOH = 99 : 1) で精製し、黄色粉末として10 (0.21 g, 51%)を得た。
10: 1H NMR (CDCl3) δ 8.17 (s, 1H), 8.02-8.05 (m, 1H), 7.83 (d, 1H, J = 15.9 Hz), 7.62-7.66 (m, 3H), 7.46-7.49 (m, 2H), 7.34-7.38 (m, 4H), 7.25-7.28 (m, 4H), 7.15 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 6.81 (dd, 4H, J = 8.8, 1.4 Hz), 6.61 (dd, 1H, J = 8.5, 6.3 Hz), 6.40 (d, 1H, J = 15.9 Hz), 4.76-4.80 (m, 1H), 4.05-4.09 (m, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.77 (s, 3H), 3.76 (s, 3H), 3.56-3.57 (m, 2H), 2.89 (dt, 1H, J = 14.0, 8.5 Hz), 2.18 (m, 1H), 2.17 (d, 1H, J = 3.8 Hz).
【0055】
[5’-O-(4,4’-dimethoxytrityl)-3-methoxycarbonylvinylcarbazole-1’-β-deoxyriboside-3 ’-O-(cyanoethoxy-N,N-diisopropylamino)phosphoramidite (11) ]
アセトニトリル(1.0 mL)で共沸した10 (0.20 g, 0.29 μmol)にアセトニトリル(1.3 mL)を加えた。反応溶液に2-cyanoethyl-N,N,N’,N’-tetraisopropylphosphorodiamidite (92 μL, 0.29 μmol)と0.45 M tetrazole のアセトニトリル溶液(0.65 mL, 0.29 μmol) を加えて、反応溶液を室温で2 時間撹拌した。反応溶液を脱酢酸処理した酢酸エチルで2 回抽出し、Sat. NaHCO3 aq. とH2O で洗浄した。有機相をMgSO4 で乾燥し、溶媒を除去した。黄色オイルの粗生成物である11 (0.25 g) をゴムシールボトルにアセトニトリルで移し3 回共沸した後、さらなる精製をせずにDNA 合成に使用した。
【0056】
[修飾したODNの合成](Synthesis of modified ODN )
ODN(AX) (5’-TGCAXCCGT-3’, X = 9)とODN(GX) (5’-TGCGXCCGT-3’, X = 9) はABI 3400 DNA 合成機を用いて合成した。それぞれ得られた反応混合物のCPG を二つに分けて、ひとつの反応混合物は0.4 M NaOH in H2O : CH3OH = 1 : 4 を用いて37 ℃ で17 時間インキュベートして脱保護し、2 M TEAA で中和した後凍結乾燥した。もうひとつの反応混合物は0.05 M K2CO3 in CH3OH を用いて室温で17 時間インキュベートして脱保護し、2 M TEAA で中和した後凍結乾燥した。ODN(AOHVK), ODN(GOHVK), ODN(AOMeVK), ODN(GOMeVK)のDNA を逆相HPLC によって精製した。それぞれのDNA を酵素分解した。単離収率はそれぞれ5, 10, 11, 13%であった。分子量をMALDI-TOF-MS で測定した。
calcd. for ODN(AOHVK), 5’-TGCAOHVKCCGT-3’: [(M+H)+] 2801.93, found 2802.12.
calcd. for ODN(GOHVK), 5’-TGCGOHVKCCGT-3’: [(M+H) +] 2817.93, found 2818.08.
calcd. for ODN(AOMeVK), 5’-TGCAOMeVKCCGT-3’: [(M+H) +] 2815.95, found 2816.07.
calcd. for ODN(GOMeVK), 5’-TGCGOMeVKCCGT-3’: [(M+H) +] 2831.95, found 2831.98.
【0057】
下記に示すNH2VK を含むODN を合成した。
ODN(ANH2VK): 5’-TGCANH2VKCCGT-3’
ODN(GNH2VK): 5’-TGCGNH2VKCCGT-3’
【化14】
【0058】
[2. ビニルカルバゾール塩基部位に持つヌクレオシドのNOESY スペクトル測定]
3-Iodocarbazole-1’-deoxyriboside のNOESY スペクトルを測定した。そのNOESY スペクトルでは、H1’とH4’の間にクロスピークが見られた(図1) 。3-iodocarbazole-1’-deoxyriboside は、β体であると考えられる。
【0059】
[3. CNVK を含むODN を用いた光クロスリンク反応]
CNVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応を行った(次のScheme 3参照) 。ODN(ACNVK) (20 μM)とODN(XT) (20 μM, X = A, G, C, T)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃ で、1 秒間照射した。その光反応物のHPLC の分析結果を図2 に示す(elution with a solvent mixture of 50 mM ammonium formate, pH 7.0, linear gradient over 30 min from 3% to 20% acetonitrile)。ODN(XT) の存在下でODN(ACNVK) に光照射を行い、図2の(a)は照射前、(b)は366nmで1秒間の照射後のHPLC分析を表す。
【化15】
【0060】
同様にして、C が光クロスリンク部位となるCNVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応を行った(次のScheme 4参照) 。ODN(GCNVK) (20 μM)とODN(XC) (20 μM, X = A, G, C, T)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃ で、25 秒間照射した。その光反応物のHPLC の分析結果を図3 に示す。ODN(XC)の存在下でODN(GCNVK)に光照射を行い、図3の(a)は照射前、(b)は366nmで25秒間の照射後のHPLC分析を表す。
【化16】
【0061】
CNVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応では、光クロスリンク部位がT あるいはC のいずれの場合にも十分に光クロスリンク反応が進行した(図4)。図4は、ODN(ACNVK) (塗りつぶした丸) とODN(GCNVK) (白抜きの丸). との光架橋(光クロスリンク)反応の速さの比較をしたグラフである。
【0062】
[4. CNVK を含むODN を用いた16 種類の光クロスリンク反応]
CNVK を含むODN を用いて16 種類の光クロスリンク反応を行った。ODN(ACNVK), ODN(GCNVK), ODN(CCNVK), ODN(TCNVK) (10 μM) とODN(XT), ODN(XC), ODN(XG), ODN(XA) (X = A, G, C, T, 10 μM)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 200 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃で、1 秒間照射してUPLC を用いて分析した(elution with a solvent mixture of 50 mM ammonium formate, pH 7.0, linear gradient over 3.4 min from 2% to 15% acetonitrile, column temperature 30 ℃)。その結果を図5に示す。
【0063】
16 種類の光クロスリンク反応を行った結果、以下のことが見いだされた。
光クロスリンク反応はクロスリンク相手がT とC である時に効率よく進行する。とくにT である時に1 s で定量的に反応が進行する。一方、A やG である時には反応が進行しなかった。
【0064】
[5. OMeVK またはOHVK を含むODN を用いた光クロスリンク反応]
OMeVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応を行った。ODN(AOMeVK) (20 μM)とODN(GT) (20 μM)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 105 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃ で、0.5, 1, 2, 3, 5, 10, 20 秒間照射した(次のScheme 5参照) 。その光反応物のHPLC の分析結果を図6に示す(elution with a solvent mixture of 50 mM ammonium formate, pH 7.0, linear gradient over 30 min from 3% to 20% acetonitrile)。
【化17】
【0065】
同様にして、C が光クロスリンク部位となるOMeVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応を行った。ODN(GOMeVK) (20 μM)とODN(GC) (20 μM)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃ で、180 秒間照射した(Scheme 6) 。その光反応物のHPLC の分析結果を図7に示す。
【化18】
【0066】
OHVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応を行った。ODN(AOHVK) (20 μM) とODN(GT) (20 μM)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃ で、1, 10, 25, 40, 60, 120, 180 秒間照射した(次のScheme 7参照)。その光反応物のHPLC の分析結果を図8に示す。
【化19】
【0067】
同様にして、C が光クロスリンク部位となるOHVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応を行った。ODN(GOHVK) (20 μM)とODN(GC) (20 μM)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃ で、180 秒間照射した(Scheme 8) 。その光反応物のHPLC の分析結果を図9に示す。
【化20】
【0068】
OMeVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応では、光クロスリンク部位がT の場合には10 秒間で光クロスリンク反応が終了した。C の場合には180 秒間で光クロスリンク反応が終了した。一方、OHVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応では、光クロスリンク部位がT の場合には180 秒間で光クロスリンク反応の収率は75%であった。C の場合には180 秒間で光クロスリンク反応が終了した。CNVK とOMeVK の経時変化を比較すると顕著な差が見られた(図10) 。図10は、ODN(ACNVK) (塗りつぶした丸)、ODN(AOMeVK) (白抜きの丸)、及びODN(AOHVK) (塗りつぶした四角)の光クロスリンク反応の速さを比較したグラフである。
【0069】
[6. 光クロスリンク体の光開裂反応]
T またはC が光クロスリンク部位である光クロスリンク体ODN(ACNVK-GT)あるいはODN(GCNVK-GC)を光反応によって調製してHPLC で分取した。そして、ODN(ACNVK-GT) (20 μM)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。トランスイルミネーターを用いて366 nm 光を70 ℃ で、5 分間照射した(次のScheme 9参照) 。その光反応物のHPLC の分析結果を図11に示す。図11は、ODN (ACNVK-GT)に0℃で光照射してHPLCで分析した結果を示しており、(a)は照射前、(b)は366nmで5分間の照射後である。
【化21】
【0070】
同様にして、ODN(GCNVK-GC) の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。トランスイルミネーターを用いて366 nm 光を70 ℃ で、5 分間照射した(次のScheme 10参照) 。その光反応物のHPLC の分析結果を図12に示す。光開裂反応では、光クロスリンク部位がT あるいはC の場合においてそれぞれ収率は29, 28% で進行した。CNVK を含むODN を用いた光クロスリンク反応では、反応温度を変えることによって光可逆的な反応性を示した。図12は、ODN (GCNVK-GC)に70℃で光照射してHPLCで分析した結果を示しており、(a)は照射前、(b)は366nmで5分間の照射後である。
【化22】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸類と架橋可能な光反応性の核酸塩基類似構造を有する光反応性架橋剤、及び該構造を塩基部分として備えた光クロスリンク能を有する光応答性人工ヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学の分野の基本的な技術に、核酸の連結がある。核酸の連結は、例えば、ハイブリダイゼーションと組みあわせて、遺伝子の導入や、塩基配列の検出のために使用される。そのために、核酸の連結は、分子生物学の基礎研究だけではなく、例えば、医療分野における診断や治療、あるいは治療薬や診断薬等の開発や製造、工業及び農業分野における酵素や微生物等の開発や製造に使用される極めて重要な技術である。
【0003】
核酸の連結は、例えば、DNAリガーゼ等を使用して従来から行われている。しかし、このような生体内の酵素反応を取り出した反応は、特別な条件設定を行わなければならず、さらに、使用される酵素類が比較的高価で、安定性に乏しい等の欠点を有する。このような欠点を克服するために、酵素類を使用しない核酸の連結の技術が研究されてきた。
【0004】
酵素類を使用しない核酸の連結の技術として、核酸と反応性のある有機化合物を使用する方法がある。近年、光反応を利用した核酸連結技術が、反応の時間的空間的な制御が自由であること、一般的な有機化学反応よりも緩和な条件で反応可能であること等の利点から、注目されるようになってきた。
このような光連結技術として、5−シアノビニルデオキシウリジンを使用した光連結技術(特許文献1:特許第3753938号公報、特許文献2:特許第3753942号公報)が知られている。
【0005】
核酸の連結と近似した重要な技術に、核酸の架橋がある。例えば、DNAやRNAの架橋反応は、細胞内の遺伝情報の流れを遮断して、遺伝子発現の阻害に使用される。DNAの架橋剤としては、光反応によって架橋を生じる光架橋剤(光クロスリンク剤)としてソラレンという化合物が古くから用いられている。光架橋剤であるソラレンを医薬品として服用して光照射を行う治療方法は、皮膚疾患である乾癬の標準的な治療方法の一つとして普及している。
【0006】
しかし、ソラレンの光架橋反応は、核酸二本鎖中の5’−TA−3’配列に対して優先的に起こるために、使用できる対象が限定されているという問題がある。また、ソラレンの光連結波長は350nmで、光開裂波長は250nmであることから、ソラレンを光架橋剤として使用する場合には、短波長の光源を使用する必要があり、光照射によりDNAや細胞に損傷を与えやすいという問題がある。
【特許文献1】特許第3753938号公報
【特許文献2】特許第3753942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のような問題があるために、ソラレンでは光架橋できない配列に対して利用可能な光反応性架橋剤が求められていた。また、ソラレンと比較して、より長波長の光を用いて光架橋可能な光反応性架橋剤が求められていた。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ソラレンでは光架橋できない配列に対して架橋可能な光反応性架橋剤を提供することにある。さらに、本発明の目的は、ソラレンと比較して、より長波長の光を用いて光架橋可能な光反応性架橋剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、光反応性架橋剤の探索研究を鋭意行ってきた結果、ソラレンでは光架橋できない配列に対して架橋可能な新規な光反応性架橋剤化合物を発見し、この光反応性架橋剤化合物によって上記目的を達成できることを見出した。
【0010】
この光反応性架橋剤化合物によれば、ソラレンでは光架橋できない配列に対して光照射による架橋を形成することができ、この架橋形成反応は、ソラレンと比較して、より長波長の光を用いて行うことができる。
【0011】
本発明に係る化合物は、カルバゾール構造にビニル基が付加された特徴的な構造を有しており、比較的に小さなこの構造によって光架橋性を発揮しているために、ソラレンと同様に様々に修飾して多様な用途で使用することができる。さらに、本発明に係る化合物のこの特徴的な構造は、核酸の塩基に類似した構造を有しているために、人工塩基(人工核酸塩基)として使用することができる。すなわち、本発明に係る化合物の特徴的な構造を人工塩基として導入して、人工ヌクレオシド、及び人工ヌクレオチドを製造することができ、このような人工ヌクレオチドを配列中に含んだ人工核酸類を製造することができる。このような人工核酸類が、光反応によって架橋を形成すると、それは、二重らせんの一方の鎖からもう一方の鎖へと形成された光架橋(光クロスリンク)となるので、光反応性の核酸類は、所望の配列に特異的に反応可能な二重らせんの光クロスリンク剤として使用することができる。
【0012】
したがって、本発明は次の[1]〜[9]にある。
[1] 次の式I:
【化1】
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)
で表される基と、次の式II:
式II Rb−
(ただし、Rbは、水素、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。)
で表される基とが結合してなる化合物。
[2] Rbが、次の式III又は式IV:
【化2】
【化3】
で表される基、又は水素である、[1]に記載の化合物。
[3] [1]〜[2]の何れかに記載の化合物からなる、光反応性架橋剤。
[4] 塩基部分として、[1]に記載の式I(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)で表される基を有するヌクレオシド。
[5] [4]に記載のヌクレオシドからなる、光反応性架橋剤。
[6] 塩基部分として、[1]に記載の式I(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)で表される基を有するヌクレオチド。
[7] [6]に記載のヌクレオチドからなる、光反応性架橋剤。
[8] 塩基部分として、[1]に記載の式I(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)で表される基を有する核酸類(ただし、核酸類には、核酸及びペプチド核酸が含まれる)。
[9] [8]に記載の核酸類からなる、光反応性架橋剤。
【0013】
さらに、本発明は、次の[10]〜[13]にもある。
[10] [1]〜[2]の何れかに記載の化合物を使用して、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成する方法。
[11] [4]に記載のヌクレオシドを使用して、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成する方法。
[12] [6]に記載のヌクレオチドを使用してピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成する方法。
[13] [5]に記載の核酸類と、ピリミジン環を核酸塩基として有する他の核酸類とを、ハイブリダイズして二重らせんを形成させる工程、
形成された二重らせんに光照射する工程、
を含む、光架橋の形成方法。
【0014】
さらに、本発明は、次の[14]〜[18]にもある。
[14] [1]〜[2]の何れかに記載の化合物の、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成するための使用。
[15] [4]に記載のヌクレオシドの、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成するための使用。
[16] [6]に記載のヌクレオチドの、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成するための使用。
[17] [5]に記載の核酸類の、ハイブリダイズして形成された二重らせんにおいてピリミジン環を核酸塩基として有する他の核酸類との間に光架橋を形成するための使用。
[18] 次の式I:
【化4】
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)
で表される基と、次の式II:
式II Rb−
(ただし、Rbは、水素、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。)
で表される基とが結合してなる化合物、であって、
Rbが、次の式:
【化5】
で表される基である化合物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ソラレンでは光架橋できない配列に対して光照射による架橋を形成することができる。すなわち、本発明では、架橋対象が5’−TA−3’配列に限定されたソラレンでは使用できない配列中の塩基に対して、広く架橋を行うことができる。
【0016】
さらに、本発明に係る化合物のカルバゾール構造にビニル基が付加された特徴的な構造は、人工的な核酸塩基として使用することができ、この人工塩基を含んだ特定の配列の核酸類を、これと相補的な配列の核酸類とハイブリダイズして二重らせんを形成することによって、相補的な配列の核酸類の特定の位置の塩基に対して、光架橋(光クロスリンク)を形成することができる。
【0017】
したがって、本発明によれば、ソラレンでは光架橋できない種々の配列中の塩基に対して光架橋を形成できるばかりではなく、相補鎖を形成することによってある特定の配列中のある特定の位置の塩基に対して、光架橋を形成することができる。
【0018】
さらに、本発明による架橋形成反応は、ソラレンと比較して、より長波長の光を用いて行うことができる。そのために、短波長の光源を使用することが回避できるために、光照射によってDNAや細胞に損傷を与える心配が少ない。
【0019】
さらに、本発明による架橋形成反応は、ソラレンと比較して、極めて短時間の光照射で行うことができる。すなわち、架橋形成が迅速に行われるために、反応の迅速性が要求される用途にも使用することができ、さらに光照射時間の短さの点からも、光照射によってDNAや細胞に損傷を与える心配が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は3-Iodocarbazole-1’-deoxyriboside のNOESY スペクトルを表す図である。
【図2】図2はODN(XT) とODN(ACNVK) の光クロスリンク反応実験のHPLC分析の結果を示すクロマトグラムである。
【図3】図3はODN(XC)とODN(GCNVK)の光クロスリンク反応実験のHPLC分析の結 果を示すクロマトグラムである。
【図4】図4はODN(ACNVK) とODN(GCNVK) との光架橋(光クロスリンク)反応の速さを比較したグラフである。
【図5】図5はCNVK を含むODNの配列特異性を検討した実験結果を表す図である。
【図6】図6はODN(AOMeVK) とODN(GT) の光クロスリンク反応実験のHPLC分析の結果を示すクロマトグラムである。
【図7】図7はODN(GOMeVK)とODN(GC)の光クロスリンク反応実験のHPLC分析の結果を示すクロマトグラムである。
【図8】図8はODN(AOHVK) とODN(GT)の光クロスリンク反応実験のHPLC分析の結果を示すクロマトグラムである。
【図9】図9はODN(GOHVK)とODN(GC)の光クロスリンク反応実験のHPLC分析の結果を示すクロマトグラムである。
【図10】図10はODN(ACNVK) , ODN(AOMeVK), 及びODN(AOHVK)の光クロスリンク反応の速さを比較したグラフである。
【図11】図11はODN (ACNVK-GT)に光照射してHPLC分析した結果を示すクロマトグラムである。
【図12】図12はODN (GCNVK-GC)に光照射してHPLC分析した結果を示すクロマトグラムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を、以下に詳細に説明する。本発明は以下の具体的な実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明は、次の式I:
【化6】
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)
で表される基と、次の式II:
式II Rb−
(ただし、Rbは、水素、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。)
で表される基とが結合してなる化合物にある。
【0023】
すなわち、本発明は、上記式Iで表される基及び式IIで表される基を結合させた次の式V:
【化7】
(ただし、式V中の、Ra、R1、R2、Rbは、式I及び式IIについて上述した通りである。)
で表される化合物にある。
【0024】
本発明に係る上記化合物は、ソラレンでは光架橋できない配列に対して光照射による架橋を形成することができ、さらに、ソラレンと比較してより長波長の光を用いて光架橋反応を行うことができる
【0025】
Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、さらに好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基は、好ましくはC2〜C7、さらに好ましくはC2〜C6、さらに好ましくはC2〜C5、さらに好ましくはC2〜C4、さらに好ましくはC2〜C3、特に好ましくはC2のものを使用することができる。
【0026】
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、さらに好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基は、好ましくはC2〜C7、さらに好ましくはC2〜C6、さらに好ましくはC2〜C5、さらに好ましくはC2〜C4、さらに好ましくはC2〜C3、特に好ましくはC2のものを使用することができる。
【0027】
Rbは、水素、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。
【0028】
好適な実施の態様において、Rbとして水素を使用することができ、この場合における本発明に係る化合物は、次の式VI:
【化8】
(ただし、式VI中の、Ra、R1、R2、式Iについて上述した通りである。)
で表される。
【0029】
好適な実施の態様において、Rbとしてリボースを使用することができ、この場合における本発明に係る化合物の一例は、次の式VII:
【化9】
(ただし、式VII中の、Ra、R1、R2、式Iについて上述した通りである。)
で表されるヌクレオシド(リボヌクレオシド)である。
【0030】
好適な実施の態様において、Rbとしてデオキシリボースを使用することができ、この場合における本発明に係る化合物の一例は、次の式VIII:
【化10】
(ただし、式VIII中の、Ra、R1、R2、式Iについて上述した通りである。)
で表されるヌクレオシド(デオキシリボヌクレオシド)である。
【0031】
本発明に係る化合物は、カルバゾール構造にビニル基が付加された特徴的な構造を光反応性の人工核酸塩基として有する核酸類(光架橋性核酸類)として使用することによって、その核酸類と相補的な塩基配列を有する配列とハイブリダイズさせて二重らせんを形成させることができ、形成した二重らせんに光照射を行うと、光架橋性核酸類の相補鎖のなかで本発明に係る光反応性の人工核酸塩基と対応して塩基対となるべき塩基から1塩基分だけ3’末端側にある塩基と光架橋を形成する。
【0032】
本発明に係る光反応性の人工核酸塩基が光架橋を形成可能である相手方の塩基は、ピリミジン環を有する塩基である。一方で、本発明に係る光反応性の人工核酸塩基は、プリン環を有する塩基とは光架橋を形成しない。すなわち、本発明に係る光架橋性の化合物は、天然の核酸塩基としては、シトシン、ウラシル、及びチミンに対して光架橋を形成し、一方で、グアニン及びアデニンに対しては光架橋を形成しないという、強い特異性を有している。
【0033】
本発明に係る光架橋剤化合物は、光反応性の人工核酸塩基として有する核酸類(光架橋性核酸類)として使用することによって、その核酸類と相補的な塩基配列を有する配列とハイブリダイズさせて二重らせんを形成させることができるために、目的とする特定の配列に対してのみ光クロスリンク反応を行わせることができる。すなわち、本発明に係る光架橋剤化合物は、ソラレンなどの従来の光架橋剤では不可能であった、非常に高い配列選択性を、所望に応じて配列設計して、付与することができる。
【0034】
さらに、本発明による光架橋剤化合物は、光反応性の人工核酸塩基として有する核酸類(光架橋性核酸類)として使用して、その核酸類と相補的な塩基配列を有する配列とハイブリダイズさせて二重らせんを形成させる場合に、光架橋性核酸類の相補鎖のなかで本発明に係る光反応性の人工核酸塩基と塩基対となるべき塩基については、特段の制約がなく自由に選択できる。
【0035】
本発明における核酸類とは、核酸及びペプチド核酸(PNA)を含み、さらにモノヌクレオチドを含む。核酸としては、天然の核酸であるDNA及びRNAが含まれ、さらに、非天然(人工)の核酸であるLNA(BNA)等の修飾核酸が含まれる。
【0036】
光架橋のために照射される光は、一般に350〜380nmの範囲、好ましくは360〜370nmの範囲、さらに好ましくは366nmの波長を含む光が好ましく、特に好ましくは、366nmの単波長のレーザー光である。
【0037】
本発明に係る光架橋剤化合物は、他の核酸(核酸類)と光照射によって光架橋した後に、さらに光照射によって光開裂をすることができる。すなわち、本発明に係る光架橋剤化合物は、可逆的な光架橋を可能とするものであり、可逆的な光架橋剤として使用することができる。
【0038】
光開裂のために照射される光は、一般に330〜370nmの範囲、好ましくは330〜360nmの波長を含む光を使用することができる。また、好適な実施の態様において、366nmの波長を含む光、特に好ましくは、366nmの単波長のレーザー光を使用することができる。
【0039】
好適な実施の態様において、本発明による光架橋及び光開裂の光反応は、350〜370nmの範囲の波長を含む光の照射によって行うことができ、好ましくは366nmの単波長のレーザー光を使用して行うことができる。この範囲の波長の光を使用すれば、同一の光源によって光架橋及び光開裂の光反応のいずれをも行うことができ、2種の光源を用意する必要がない点で有利である。この範囲の波長の光を使用する場合には、温度条件によって、光架橋、及び光開裂のいずれの光反応が進行するかを制御することができる。光架橋反応を進行させるためには、一般に0〜50℃、好ましくは0〜40℃、さらに好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは0〜20℃、さらに好ましくは0〜10℃、さらに好ましくは0〜5℃の範囲の温度、特に好ましくは0℃で光照射を行う。光開裂反応を進行させるためには、一般に60〜100℃、好ましくは60〜90℃、さらに好ましくは70〜90℃の範囲の温度で光照射を行う。
【0040】
本発明による光架橋及び光開裂は、光反応を利用しているために、pH、温度、塩濃度などに特段の制約がなく、核酸類等の生体高分子が安定に存在可能なpH、温度、塩濃度とした溶液中で、光照射によって行うことができる。
【0041】
本発明による光架橋及び光開裂は、極めて迅速に進行し、例えば、ソラレンであれば数時間を要する条件(350nm光照射)において、わずか1秒間(366nm光照射)で光反応が進行する。すなわち、本発明に係る光架橋剤を使用すれば、数秒間、例えば、1〜9秒間、1〜7秒間、1〜5秒間、又は1〜3秒間の時間の光照射によって、光反応を進行させて光架橋を形成されることができる。
【実施例】
【0042】
本発明を、実施例を挙げて以下に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
[1. ビニルカルバゾールを塩基部位に持つODN の合成]
次のScheme 1 に従い合成を進めた。以下の説明において、化合物に付した番号で化合物を表す場合がある。
【化11】
【0044】
[3-Iodocarbazole (1) ]
carbazole (2.50 g, 15.0 mmol)のエタノール溶液(500 mL)にNaIO4 (0.80 g, 3.75 mmol)とI2 (1.89 g, 7.45 mmol)を順に加えた後、H2SO4 (1.60 mL, 30.0 mmol)のエタノール溶液(100 mL)を加えて、反応溶液を65 ℃ で1 時間環流した。TLC (HexH : AcOEt = 4 : 1) で原料の消失を確認し、NaOH (1.4 g) のエタノール溶液(100 mL)を加えて中和した。エタノールを除去した後、反応溶液をクロロホルムで2 回抽出し、水で2 回洗浄した。有機相をNa2SO4 で乾燥し、溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(HexH : AcOEt = 4 : 1) で精製し、白色粉末として1 (3.06 g, 70%)を得て、白色粉末として3,6-diiodocarbazole (0.47 g, 7.5%)を得た。
1: 1H NMR (DMSO-d6) δ 11.4 (s, 1H), 8.49 (d, 1H, J = 1.7 Hz), 8.14 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.62 (dd, 1H, J = 8.4, 1.7 Hz), 7.48 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.40 (m, 1H), 7.33 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.16 (m, 1H).
3,6-Diiodocarbazole: 1H NMR (DMSO-d6) δ 11.5 (s, 1H), 8.56 (d, 2H, J = 1.7 Hz), 7.65 (dd, 2H, J = 8.5, 1.7 Hz), 7.34 (d, 2H, J = 8.5 Hz).
【0045】
[3-Cyanovinylcarbazole (2) ]
Triphenylphosphine (139 mg, 0.53 μmol)のジオキサン溶液(10 mL)にPalladium acetate (40.0 mg, 0.18 μmol)とTriethylamine (0.59 μL, 4.23 mmol)を順に加えて、75℃ で5 分間撹拌した。1 (1.03 g, 3.52 mmol)のジオキサン溶液(15 mL)とAcrylonitrile (0.46 μL, 7.04 mmol)を加えて、反応溶液を11.5 時間環流した。TLC (HexH : AcOEt = 4 : 1) で生成物を確認した後、綿ろ過でPalladium 粉末を取り除いた。カラムクロマトグラフィー(HexH : AcOEt = 4 : 1) で精製し、白色粉末として2 (0.14 g, 18%, trans : cis = 97 : 3) を得て、白色粉末として1 (0.37 g, 回収率37%) を回収した。
2: 1H NMR (DMSO-d6) δ 11.6 (s, 1H), 8.44 (s, 1H), 8.11 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.75 (d, 1H, J = 16.7 Hz), 7.69-7.72 (m, 1H), 7.40-7.52 (m, 3H), 7.19-7.24 (m, 1H), 6.36 (d, 1H, J = 16.7 Hz).
【0046】
[3-Cyanovinylcarbazole-1’-β-deoxyriboside-3’,5’-di-(p-toluoyl)ester (3) ]
KOH (0.22 g, 3.87 mmol)とTDA-1 (11 mg, 34 μmol)のアセトニトリル溶液(20 mL)に室温で2 (0.26 g, 1.20 mmol)を加えて20 分間撹拌した。反応溶液にChlorosugar (0.53 g, 1.24 mmol)を加えて室温で20 分間撹拌し、TLC (HexH : AcOEt = 4 : 1)で原料の消失を確認した。沈殿物を除去した後、カラムクロマトグラフィー(CHCl3)で精製し、黄色オイルとして3 (0.23 g, 33%)を得た。
3: 1H NMR (CDCl3) δ 8.09 (s, 1H), 8.02 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.98 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.62-7.65 (m, 1H), 7.62 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 7.49 (d, 1H, J = 16.5 Hz), 7.25-7.31 (m, 7H), 7.17-7.20 (m, 1H), 6.68 (dd, 1H, J = 9.3, 5.8 Hz), 5.78 (m, 1H), 5.76 (d, 1H, J = 16.5 Hz), 4.91 (dd, 1H, J = 12.4, 2.7 Hz), 4.78 (dd, 1H, J = 12.4, 3.3 Hz), 4.55-4.57 (m, 1H), 3.09-3.20 (m, 1H), 2.45-2.52 (m, 1H), 2.45 (s, 3H), 2.44 (s, 3H), HRMS (MALDI): calcd. for C36H30N2O5Na [(M+ Na)+] 593.2053, found 593.2018.
【0047】
[3-Cyanovinylcarbazole-1’−β-deoxyriboside (4) ]
3 (0.22 g, 0.39 mmol)のメタノール溶液(20 mL)に0.5 M methanolic NaOMe (2.3 mL, 1.2 mmol)とクロロホルム(5.0 mL)を加えて、反応溶液を室温で3.5 時間撹拌した。TLC (CHCl3 : MeOH = 9 : 1) で原料の消失を確認した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(CHCl3 : MeOH = 9 : 1) で精製し、白色粉末として4 (0.11 g, 81%)を得た。
4: 1H NMR (CDCl3) δ 8.12 (d, 1H, J = 1.7 Hz), 8.06 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 7.59 (d, 1H, J = 9.1 Hz), 7.43-7.57 (m, 4H), 7.26-7.31 (m, 1H), 6.64 (dd, 1H, J = 8.2, 6.9 Hz), 5.87 (d, 1H, J = 16.5 Hz), 4.77-4.82 (m, 1H), 3.95-4.06 (m, 3H), 2.95 (dt, 1H, J = 14.0, 8.2 Hz), 2.30 (ddd, 1H, J = 14.0, 6.9, 3.3 Hz), HRMS (MALDI): calcd. for C20H18N2O3Na [(M+ Na)+] 357.1215, found 357.1265.
【0048】
[5’-O-(4,4’-dimethoxytrityl)-3-Cyanovinylcarbazole-1’-β-deoxyriboside (5) ]
ピリジン(1.0 mL × 2)で共沸した4 (97 mg, 0.29 mmol)にピリジン(0.5 mL)を加えた。反応溶液に4,4’-dimethoxytritylchloride (118 mg, 0.35 mmol) と4-(dimethylamino
)pyridine (7.0 mg, 58 μmol)のピリジン溶液(1.0 mL)を加えて、反応溶液を室温で18 時間撹拌した。TLC (CHCl3 : MeOH = 95 : 5) で生成物を確認した後、ピリジンを除去した。カラムクロマトグラフィー(CHCl3 : MeOH = 98 : 2) で精製し、黄色粉末として5 (113 mg, 61%)を得た。
5: 1H NMR (CDCl3) δ 8.07 (d, 1H, J = 1.7 Hz, 8.02-8.05 (m, 1H), 7.71 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 7.62-7.65 (m, 1H), 7.45-7.52 (m, 3H), 7.33-7.37 (m, 4H), 7.25-7.28 (m, 4H), 7.12 (dd, 1H, J = 8.8, 1.7 Hz), 6.81 (dd, 4H, J = 8.8, 1.7 Hz), 6.61 (dd, 1H, J = 8.2, 6.3 Hz), 5.77 (d, 1H, J = 16.7 Hz), 4.80-4.82 (m, 1H), 4.05-4.07 (m, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.76 (s, 3H), 3.56-3.58 (m, 2H), 2.89 (dt, 1H, J = 13.8, 8.2 Hz), 2.23 (ddd, 1H, J = 13.8, 6.3, 2.7 Hz), 1.98 (d, 1H, J = 3.6 Hz), HRMS (MALDI): calcd. for C41H36N2O5Na [(M+ Na)+] 659.2522, found 659.2485.
【0049】
[5’-O-(4,4’-dimethoxytrityl)-3-Cyanovinylcarbazole-1’-β-deoxyriboside-3’-O-(cyano ethoxy-N,N-diisopropylamino)phosphoramidite (6) ]
アセトニトリル(1.5 mL)で共沸した5 (0.11 g, 0.17 mol)にアセトニトリル(1.5 mL)を加えた。反応溶液に2-cyanoethyl-N,N,N’,N’-tetraisopropylphosphorodiamidite (52 μL, 0.17 mol)と0.45 M tetrazole のアセトニトリル溶液(0.37 mL, 0.17 mol) を加えて、反応溶液を室温で1.0 時間撹拌した。反応溶液を脱酢酸処理した酢酸エチルで2 回抽出し、Sat. NaHCO3 aq. とH2O で洗浄した。有機相をMgSO4 で乾燥し、溶媒を除去した。
黄色オイルの粗生成物である6 (0.12 g) をゴムシールボトルにアセトニトリルで移し3 回共沸した後、さらなる精製をせずにDNA 合成に使用した。
【0050】
[3−シアノビニルカルバゾール−1’−β−デオキシリボシド (CNVK)を含有するODNの合成](Synthesis of ODN containing 3-cyanovinylcarbazole-1’-β-deoxyribosi
de (CNVK))
下記に示すCNVK を含むODN を合成した。
ODN(ACNVK): 5’-TGCACNVKCCGT-3’
ODN(GCNVK): 5’-TGCGCNVKCCGT-3’
ODN(CCNVK): 5’-TGCCCNVKCCGT-3’
ODN(TCNVK): 5’-TGCTCNVKCCGT-3’
【化12】
次のScheme 2 に従い合成を進めた。
【化13】
【0051】
[3-Methoxycarbonylvinylcarbazole (7) ]
Palladium acetate (38.0 mg, 0.17 μmol)のDMF 溶液(0.25 mL)に1 (0.50 g, 1.71 mmol)とTributylamine (0.41 μL, 1.71 mmol) とMethyl acrylate (0.38 L, 4.27 mmol)とH2O(1.0 mL)を順に加えて、マイクロウェーブを用いて反応溶液を160 ℃ で10 分間反応してTLC で反応追跡したところ、1 の消失を確認した。桐山ろ過でPalladium 粉末を取り除いた後、カラムクロマトグラフィー(HexH : AcOEt = 3 : 1) で精製し、白色粉末として7 (0.26 g, 62%)を得た。
7: 1H NMR (CDCl3) δ 8.26 (s, 1H), 8.21 (s, 1H), 8.07 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.89 (d, 1H, J = 15.9 Hz), 7.61 (dd, 1H, J = 1.7, 8.5 Hz), 7.39-7.44 (m, 3H), 7.23-7.29 (m, 1H), 6.47 (d, 1H, J = 15.9 Hz), 3.81 (s, 3H).
【0052】
[3-Methoxycarbonylcarbazole-1’-β-deoxyriboside-3’,5’-di-(p-toluoyl)ester (8) ]
7 (0.55 g, 2.22 mmol)のアセトニトリル溶液(49 mL)に室温でNaH (92.0 mg, 2.31 mmol)を加えて10 分間撹拌した。反応溶液にChlorosugar (1.14 g, 2.66 mmol) を加えて室温で60 分間撹拌し、TLC (HexH : AcOEt = 4 : 1) で原料の消失を確認した。沈殿物を除去した後、カラムクロマトグラフィー(HexH : AcOEt = 4 : 1) で精製し、白色粉末として8 (0.98 g, 71%)を得た。
【0053】
[3-Methoxycarbonylcarbazole-1’-β-deoxyriboside (9) ]
8 (0.96 g, 1.59 mmol)のメタノール溶液(46 mL)に0.5 M methanolic NaOMe (9.6 mL, 4.8 mmol)とジクロロメタン(12 mL)を加えて、反応溶液を室温で1 時間撹拌した。TLC (CHCl3 : MeOH = 9 : 1) で原料の消失を確認した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(CHCl3 : MeOH = 9 : 1) で精製し、白色粉末として9 (0.28 g, 48%)を得た。
9: 1H NMR (CDCl3) δ 8.20 (s, 1H), 8.06 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 7.86 (d, 1H, J = 15.9 Hz), 7.53-7.61 (m, 3H), 7.44 (t, 1H, J = 7.1 Hz), 7.24-7.27 (m, 1H), 6.63 (dd, 1H, J = 8.2, 7.0 Hz), 6.46 (d, 1H, J = 15.9 Hz), 4.75-4.80 (m, 1H), 3.95-4.04 (m, 3H), 3.81 (s, 1H), 2.95 (dt, 1H, J = 14.0, 8.2 Hz), 2.28 (ddd, 1H, J = 14.0, 7.0, 3.6 Hz).
【0054】
[5’-O-(4,4’-dimethoxytrityl)-3-methoxycarbonylvinylcarbazole-1’-β-deoxyriboside (10) ]
ピリジン(1.0 mL × 2)で共沸した9 (0.23 g, 0.63 mmol)にピリジン(0.5 mL)を加えた。反応溶液に4,4’-dimethoxytritylchloride (0.26 g, 0.75 mmol) と4-(dimethylamino
)pyridine (15.0 mg, 0.13 μmol)のピリジン溶液(2.2 mL)を加えて、反応溶液を室温で16 時間撹拌した。TLC (CHCl3 : MeOH = 95 : 5)で生成物を確認した後、ピリジンを除去した。カラムクロマトグラフィー(CHCl3 : MeOH = 99 : 1) で精製し、黄色粉末として10 (0.21 g, 51%)を得た。
10: 1H NMR (CDCl3) δ 8.17 (s, 1H), 8.02-8.05 (m, 1H), 7.83 (d, 1H, J = 15.9 Hz), 7.62-7.66 (m, 3H), 7.46-7.49 (m, 2H), 7.34-7.38 (m, 4H), 7.25-7.28 (m, 4H), 7.15 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 6.81 (dd, 4H, J = 8.8, 1.4 Hz), 6.61 (dd, 1H, J = 8.5, 6.3 Hz), 6.40 (d, 1H, J = 15.9 Hz), 4.76-4.80 (m, 1H), 4.05-4.09 (m, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.77 (s, 3H), 3.76 (s, 3H), 3.56-3.57 (m, 2H), 2.89 (dt, 1H, J = 14.0, 8.5 Hz), 2.18 (m, 1H), 2.17 (d, 1H, J = 3.8 Hz).
【0055】
[5’-O-(4,4’-dimethoxytrityl)-3-methoxycarbonylvinylcarbazole-1’-β-deoxyriboside-3 ’-O-(cyanoethoxy-N,N-diisopropylamino)phosphoramidite (11) ]
アセトニトリル(1.0 mL)で共沸した10 (0.20 g, 0.29 μmol)にアセトニトリル(1.3 mL)を加えた。反応溶液に2-cyanoethyl-N,N,N’,N’-tetraisopropylphosphorodiamidite (92 μL, 0.29 μmol)と0.45 M tetrazole のアセトニトリル溶液(0.65 mL, 0.29 μmol) を加えて、反応溶液を室温で2 時間撹拌した。反応溶液を脱酢酸処理した酢酸エチルで2 回抽出し、Sat. NaHCO3 aq. とH2O で洗浄した。有機相をMgSO4 で乾燥し、溶媒を除去した。黄色オイルの粗生成物である11 (0.25 g) をゴムシールボトルにアセトニトリルで移し3 回共沸した後、さらなる精製をせずにDNA 合成に使用した。
【0056】
[修飾したODNの合成](Synthesis of modified ODN )
ODN(AX) (5’-TGCAXCCGT-3’, X = 9)とODN(GX) (5’-TGCGXCCGT-3’, X = 9) はABI 3400 DNA 合成機を用いて合成した。それぞれ得られた反応混合物のCPG を二つに分けて、ひとつの反応混合物は0.4 M NaOH in H2O : CH3OH = 1 : 4 を用いて37 ℃ で17 時間インキュベートして脱保護し、2 M TEAA で中和した後凍結乾燥した。もうひとつの反応混合物は0.05 M K2CO3 in CH3OH を用いて室温で17 時間インキュベートして脱保護し、2 M TEAA で中和した後凍結乾燥した。ODN(AOHVK), ODN(GOHVK), ODN(AOMeVK), ODN(GOMeVK)のDNA を逆相HPLC によって精製した。それぞれのDNA を酵素分解した。単離収率はそれぞれ5, 10, 11, 13%であった。分子量をMALDI-TOF-MS で測定した。
calcd. for ODN(AOHVK), 5’-TGCAOHVKCCGT-3’: [(M+H)+] 2801.93, found 2802.12.
calcd. for ODN(GOHVK), 5’-TGCGOHVKCCGT-3’: [(M+H) +] 2817.93, found 2818.08.
calcd. for ODN(AOMeVK), 5’-TGCAOMeVKCCGT-3’: [(M+H) +] 2815.95, found 2816.07.
calcd. for ODN(GOMeVK), 5’-TGCGOMeVKCCGT-3’: [(M+H) +] 2831.95, found 2831.98.
【0057】
下記に示すNH2VK を含むODN を合成した。
ODN(ANH2VK): 5’-TGCANH2VKCCGT-3’
ODN(GNH2VK): 5’-TGCGNH2VKCCGT-3’
【化14】
【0058】
[2. ビニルカルバゾール塩基部位に持つヌクレオシドのNOESY スペクトル測定]
3-Iodocarbazole-1’-deoxyriboside のNOESY スペクトルを測定した。そのNOESY スペクトルでは、H1’とH4’の間にクロスピークが見られた(図1) 。3-iodocarbazole-1’-deoxyriboside は、β体であると考えられる。
【0059】
[3. CNVK を含むODN を用いた光クロスリンク反応]
CNVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応を行った(次のScheme 3参照) 。ODN(ACNVK) (20 μM)とODN(XT) (20 μM, X = A, G, C, T)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃ で、1 秒間照射した。その光反応物のHPLC の分析結果を図2 に示す(elution with a solvent mixture of 50 mM ammonium formate, pH 7.0, linear gradient over 30 min from 3% to 20% acetonitrile)。ODN(XT) の存在下でODN(ACNVK) に光照射を行い、図2の(a)は照射前、(b)は366nmで1秒間の照射後のHPLC分析を表す。
【化15】
【0060】
同様にして、C が光クロスリンク部位となるCNVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応を行った(次のScheme 4参照) 。ODN(GCNVK) (20 μM)とODN(XC) (20 μM, X = A, G, C, T)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃ で、25 秒間照射した。その光反応物のHPLC の分析結果を図3 に示す。ODN(XC)の存在下でODN(GCNVK)に光照射を行い、図3の(a)は照射前、(b)は366nmで25秒間の照射後のHPLC分析を表す。
【化16】
【0061】
CNVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応では、光クロスリンク部位がT あるいはC のいずれの場合にも十分に光クロスリンク反応が進行した(図4)。図4は、ODN(ACNVK) (塗りつぶした丸) とODN(GCNVK) (白抜きの丸). との光架橋(光クロスリンク)反応の速さの比較をしたグラフである。
【0062】
[4. CNVK を含むODN を用いた16 種類の光クロスリンク反応]
CNVK を含むODN を用いて16 種類の光クロスリンク反応を行った。ODN(ACNVK), ODN(GCNVK), ODN(CCNVK), ODN(TCNVK) (10 μM) とODN(XT), ODN(XC), ODN(XG), ODN(XA) (X = A, G, C, T, 10 μM)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 200 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃で、1 秒間照射してUPLC を用いて分析した(elution with a solvent mixture of 50 mM ammonium formate, pH 7.0, linear gradient over 3.4 min from 2% to 15% acetonitrile, column temperature 30 ℃)。その結果を図5に示す。
【0063】
16 種類の光クロスリンク反応を行った結果、以下のことが見いだされた。
光クロスリンク反応はクロスリンク相手がT とC である時に効率よく進行する。とくにT である時に1 s で定量的に反応が進行する。一方、A やG である時には反応が進行しなかった。
【0064】
[5. OMeVK またはOHVK を含むODN を用いた光クロスリンク反応]
OMeVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応を行った。ODN(AOMeVK) (20 μM)とODN(GT) (20 μM)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 105 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃ で、0.5, 1, 2, 3, 5, 10, 20 秒間照射した(次のScheme 5参照) 。その光反応物のHPLC の分析結果を図6に示す(elution with a solvent mixture of 50 mM ammonium formate, pH 7.0, linear gradient over 30 min from 3% to 20% acetonitrile)。
【化17】
【0065】
同様にして、C が光クロスリンク部位となるOMeVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応を行った。ODN(GOMeVK) (20 μM)とODN(GC) (20 μM)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃ で、180 秒間照射した(Scheme 6) 。その光反応物のHPLC の分析結果を図7に示す。
【化18】
【0066】
OHVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応を行った。ODN(AOHVK) (20 μM) とODN(GT) (20 μM)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃ で、1, 10, 25, 40, 60, 120, 180 秒間照射した(次のScheme 7参照)。その光反応物のHPLC の分析結果を図8に示す。
【化19】
【0067】
同様にして、C が光クロスリンク部位となるOHVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応を行った。ODN(GOHVK) (20 μM)とODN(GC) (20 μM)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。UV-LED を用いて366 nm 光を0 ℃ で、180 秒間照射した(Scheme 8) 。その光反応物のHPLC の分析結果を図9に示す。
【化20】
【0068】
OMeVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応では、光クロスリンク部位がT の場合には10 秒間で光クロスリンク反応が終了した。C の場合には180 秒間で光クロスリンク反応が終了した。一方、OHVK を含むODN を用いて光クロスリンク反応では、光クロスリンク部位がT の場合には180 秒間で光クロスリンク反応の収率は75%であった。C の場合には180 秒間で光クロスリンク反応が終了した。CNVK とOMeVK の経時変化を比較すると顕著な差が見られた(図10) 。図10は、ODN(ACNVK) (塗りつぶした丸)、ODN(AOMeVK) (白抜きの丸)、及びODN(AOHVK) (塗りつぶした四角)の光クロスリンク反応の速さを比較したグラフである。
【0069】
[6. 光クロスリンク体の光開裂反応]
T またはC が光クロスリンク部位である光クロスリンク体ODN(ACNVK-GT)あるいはODN(GCNVK-GC)を光反応によって調製してHPLC で分取した。そして、ODN(ACNVK-GT) (20 μM)の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。トランスイルミネーターを用いて366 nm 光を70 ℃ で、5 分間照射した(次のScheme 9参照) 。その光反応物のHPLC の分析結果を図11に示す。図11は、ODN (ACNVK-GT)に0℃で光照射してHPLCで分析した結果を示しており、(a)は照射前、(b)は366nmで5分間の照射後である。
【化21】
【0070】
同様にして、ODN(GCNVK-GC) の光クロスリンク反応を行った(sodium cacodylate 50 mM, NaCl 100 mM, total volume: 30 μL)。トランスイルミネーターを用いて366 nm 光を70 ℃ で、5 分間照射した(次のScheme 10参照) 。その光反応物のHPLC の分析結果を図12に示す。光開裂反応では、光クロスリンク部位がT あるいはC の場合においてそれぞれ収率は29, 28% で進行した。CNVK を含むODN を用いた光クロスリンク反応では、反応温度を変えることによって光可逆的な反応性を示した。図12は、ODN (GCNVK-GC)に70℃で光照射してHPLCで分析した結果を示しており、(a)は照射前、(b)は366nmで5分間の照射後である。
【化22】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式I:
【化1】
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)
で表される基と、次の式II:
式II Rb−
(ただし、Rbは、水素、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。)
で表される基とが結合してなる化合物、であって、
Rbが、次の式:
【化2】
で表される基である化合物。
【請求項1】
次の式I:
【化1】
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素である。)
で表される基と、次の式II:
式II Rb−
(ただし、Rbは、水素、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。)
で表される基とが結合してなる化合物、であって、
Rbが、次の式:
【化2】
で表される基である化合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図5】
【公開番号】特開2012−121899(P2012−121899A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−18539(P2012−18539)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【分割の表示】特願2009−542477(P2009−542477)の分割
【原出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【分割の表示】特願2009−542477(P2009−542477)の分割
【原出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【Fターム(参考)】
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