説明

光ケーブル用分岐接続箱

【課題】 運用回線心線に触れずに、未回線心線を取り出せるようにして、運用回線に無用な障害をもたらす恐れをなくす。
【解決手段】 光ケーブル用分岐接続箱の心線収納トレイ25内で、主ケーブル1から引き出した光ファイバ心線1aとドロップケーブル2の光ファイバ心線2aとの光接続部7及び心線余長が収納される。そして、将来の運用化に備えて主ケーブル1から引き出した光ファイバ心線(未回線心線)1bをチューブ42に収容して、心線収納トレイ25の側面に設けた未回線心線収容溝35内に配置する。作業者にとって未回線心線1bは、心線収納トレイ25の手前にあるので、運用回線心線に触れることなく、未回線心線を心線収納トレイから取り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主ケーブルから引き出した光ファイバ心線とドロップケーブル及び/又は分岐ケーブルの光ファイバ心線との光接続部及び心線余長を収納する心線収納トレイを備えた光ケーブル用分岐接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信の加入者網において、幹線ケーブルから加入者へのドロップケーブルを引き落とす場合、ドロップクロージャと称されている光クロージャが使用される。図14に模式的に示すように、この種の光クロージャ6は水密構造のクロージャスリーブ5内に心線収納トレイ4を備えている。心線収納トレイ4には、幹線ケーブルである主ケーブル1から引き出した運用回線である光ファイバ心線1aとドロップケーブル2の光ファイバ心線2aとの光接続部7及び心線余長が収容され、また、将来の加入者への引き込みに際して使用するための未回線心線1bが収納されている。
なお、主ケーブル1は外周に螺旋溝(図示略)を持つスロットロッド1dの前記螺旋溝に光ファイバ心線1a、1bを収容した構造であり、図示例はスロットロッド1dを切断せずに心線接続を行う心線接続形態である。
【0003】
従来、未回線心線1bは、図示の通り、ナイロン製のバッグである未回線心線ホルダ8内に入れて、心線収納トレイ4内の余長収納部に収容していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の光クロージャ6では、上記の通り、未回線心線1bを未回線心線ホルダ8に入れて心線収納トレイ4内の余長収納部に収容しているので、心線収納トレイ4内には、運用回線心線1aと未回線心線1bとが混在している。このため、未回線心線1bを運用回線としてドロップケーブルに接続する際、未回線心線1bを心線収納トレイ4から取り出す作業時に、運用回線心線1aに触れてしまう恐れがあり、これにより通信障害をもたらす危険性があった。
【0005】
本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので、未回線心線を心線収納トレイから取り出す際に、運用回線心線に触れる恐れがなく、運用回線に無用な障害をもたらす恐れのない光ケーブル用分岐接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、主ケーブルから引き出した光ファイバ心線とドロップケーブル及び/又は分岐ケーブルの光ファイバ心線との光接続部及び心線余長を収納する心線収納トレイを備えた光ケーブル用分岐接続箱であって、
主ケーブルから将来の運用化に備えて引き出した未回線心線を可撓性樹脂からなるチューブに収容し、未回線心線を前記チューブとともに収容するための未回線心線収容部を心線収納トレイの外側面に設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、請求項1記載の光ケーブル用分岐接続箱において、未回線心線収容部が、心線収納トレイの幅方向側面に沿って設けた溝であることを特徴とする。
【0008】
請求項3は、請求項2記載の光ケーブル用分岐接続箱において、溝が、心線収納トレイの幅方向側面の壁部と、金属板製のトレイ台の幅方向側縁部を上向きに折曲した壁部とによって形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4は、請求項2記載の光ケーブル用分岐接続箱において、溝が、プラスチック製の心線収納トレイと一体成形により構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、未回線心線が可撓性樹脂からなるチューブ内に収容されるとともに、心線収納トレイの外面に配置されているので、運用回線心線に触れることなく、未回線心線を心線収納トレイから取り出すことができ、運用回線に無用な障害をもたらす恐れはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施した光ケーブル用分岐接続箱について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の一実施例の光ケーブル用分岐接続箱11の内部構造を示す正面図、図2は同平面図、図3は図1の要部の拡大左側面図である。これらの図において、12は連結棒である。連結棒12の両端部にケーブル把持金具13、テンションメンバ把持金具14、ドロップケーブル把持金具15がネジで固定されている。ケーブル把持金具13に水平なアーム17が固定され、このアーム17に吊り金具16が固定され、この吊り金具16によりメッセンジャワイヤ(支持線)18に吊持される。
【0013】
上記の各部を防水状態で覆うクロージャスリーブ19はプラスチック成形品であり、図3で上部のヒンジ部を中心として下部が左右に開平可能な二つ割り構造であり、爪19aと係止部19bとによる係止構造で閉じ合わされるようになっている。このクロージャスリーブ19の両端の開口部に、当該開口縁に密着して防水を果たす端面板20が取り付けられる。端面板20は、同じく上部のヒンジ部を中心として下部が左右に開平可能な二つ割り構造であり、アーム17、主ケーブル1、分岐ケーブル3を通した時にそれぞれアーム挿入穴21、主ケーブル挿入穴22、分岐ケーブル挿入穴23となる部分は薄肉である。ドロップケーブル挿入穴24は二つ割り面とは別の貫通穴であり、多数設けられている。なお、端面板20の詳細は省くが例えば、ゴムパッキンにプラスチックカバーを被せた構造である。
【0014】
前記連結棒12にはプラスチック製の心線収納トレイ25が取り付けられている。心線収納トレイ25は、図4〜図7にも示すように、金属板製のトレイ台27にネジ28で固定され、このトレイ台27が連結棒12にヒンジ29を介して図6で矢印aのように上下に回転可能に取り付けられている。トレイ台27には、トレイ台固定ピン31がスライド可能に設けられ、このトレイ台固定ピン31が図7のように連結棒12の係止穴12aに嵌入することで水平な状態に設置される。図5はトレイ台固定ピン31を引いた状態、図6は次いで心線収納トレイ25をヒンジ29を中心として上に回して起こした状態を示す。心線収納トレイ25の下方の作業をする必要があるときには、図6のように心線収納トレイ25を起こす。図5〜図7で26はトレイ固定用のバンドであるが、図6のように心線収納トレイ25を起こした状態に保持する時にも用いる。図6は主ケーブル1を結束バンド32で連結棒12に締め付け固定した状態で示している。
実施例では心線収納トレイ25が一段であるが、複数段積層する場合もある。心線収納トレイ25は上下部にヒンジ30を備え、複数段積層する場合は、上下の心線収納トレイ25をヒンジ30で互いに回転可能に連結する。
【0015】
本発明では、心線収納トレイ25の外側面に未回線心線収容部を設ける。この実施例では、金属板製のトレイ台27のヒンジ29と反対側の側縁部を上向きに折曲して壁部27aを形成することで、この壁部27aと心線収納トレイ25の側面との間に未回線心線収容溝(未回線心線収容部)35を形成している。図示例では未回線心線収容溝35を形成するためのトレイ台27の壁部27aを一連続の壁部としているが、一部を切り欠いた壁部であってもよい。
【0016】
心線収納トレイ25の詳細を主として図4を参照して説明すると、この心線収納トレイ25は、上面から見て細長い長円形であり、周囲に側壁36を備え、両側に心線出入れ口37a、37b、37c、37dを備え、側壁36の内面側の複数箇所に内側に延出する舌状の心線押さえ38を備え、中央部の余長収納スペースの両側に融着接続部領域39を備えている。融着接続部領域39は、図4に示すように、光ファイバ心線の融着接続部7(融着補強スリーブ)を嵌め込んで保持する融着スリーブホルダー40を多数備えている。
【0017】
上記の分岐接続箱11におけるケーブル導入の態様を説明すると、図8、図9はスロットロッド無切断で行う後分岐接続工法の場合であり、幹線ケーブルである主ケーブル1は一定長さ部分の外被が剥ぎ取られて、スロットロッド1dが露出した状態で、分岐接続箱11を通過している。主ケーブル1は端面板20を貫通し、連結棒12の両側部分においてケーブル把持金具13で把持される。主ケーブル1(及び分岐ケーブル3)はケーブルの左右両側のケーブル把持金具13に螺合させた図示略の鬼目ボルトで水平方向の左右両側から押し付け把持される。
同図は分岐接続箱11の片側(左側)から分岐ケーブル3が導入され、他側(右側)方からドロップケーブル2が導入されている状態を示している。分岐ケーブル3は、端面板20を貫通し、ケーブル把持金具13で把持され、そのスロットロッドから露出させたテンションメンバ3eがテンションメンバ把持金具14で把持されている(図9では分岐ケーブルの図示を省いた)。ドロップケーブル2は、端面板20を貫通し、ドロップケーブル把持金具15で把持される。
【0018】
図10〜図12は心線収納トレイ25内の心線接続の態様を模式的に示したものである。
図10は主ケーブル1からドロップケーブル2のみを引き落とす場合であり、かつ、直線接続の場合である。主ケーブル1から引き出した光ファイバ心線1aとドロップケーブル2の光ファイバ心線2aとは融着接続され、その融着接続部(融着補強スリーブ)7が融着スリーブホルダー40に配置される。その場合、光ファイバ心線は1a、2aは心線出入れ口37a、37bから導入され、心線余長部は中央の余長収納部44aや両側の余長収納部44bに収納される(図10では中央の余長収納部44a)。
そして、将来の加入者への引き込みに際して使用するために主ケーブル1から引き出した未使用回線の光ファイバ心線(未回線心線)1bは、ナイロンなどのチューブ42に収容して心線収納トレイ25の側部に設けた前記未回線心線収容溝35内に収容する。チューブ42の材料としては、ナイロンに限らず、テフロンその他種々の材料を用いることができるが、表面が滑らかなものが適切である。
【0019】
上記のように分岐ドロップケーブル引き落としを行った分岐接続箱において、後に未回線心線を運用回線として引き落とす必要が生じた場合、未回線心線1bは心線収納トレイ25の外側の未回線心線収容溝35からチューブ42ごと取り出せばよい。したがって、従来のように、未回線心線を心線収納トレイから取り出す為に、心線収納トレイ内に余長部が収納されている運用回線に触れる必要が無い。したがって、運用回線に触れて、通信障害をもたらすことを防止できる。
なお、実施例では未回線心線収容溝35を心線収納トレイ25のヒンジ29と反対側の側面に設けているので、作業時に未回線心線収容溝35が心線収納トレイ25の手前に位置することとなり、作業性の点で好ましい。
【0020】
図11は同じく主ケーブル1からドロップケーブル2のみを引き落とす場合であるが、いわゆる松葉接続の場合を示す。主ケーブル1の光ファイバ心線1aとドロップケーブル2の光ファイバ心線2aとを前記と同様に接続するが、接続すべき主ケーブル1の光ファイバ心線1aとドロップケーブル2の光ファイバ心線2aとが同じ側にある場合である。
主ケーブル1から引き出した未使用回線の光ファイバ心線(未回線心線)1bは前記と同様にチューブ42に収容し、未回線心線収容溝35に収容する。
【0021】
図12は主ケーブル1から分岐ケーブル3を分岐させる場合を示す。主ケーブル1から引き出した光ファイバ心線1aと分岐ケーブル3の光ファイバ心線3aとは前記と同様に接続される。
また、主ケーブル1から引き出した未使用回線の光ファイバ心線(未回線心線)1bは前記と同様にチューブ42内に収容して、未回線心線収容溝35内に収容する。なお、分岐ケーブル3は主ケーブル1の上に位置するが、区別でき易いように横にずらせて図示した。
【0022】
なお、図10〜図12の実施例では、主ケーブル1からドロップケーブル2を引き落とす場合と、主ケーブル1から分岐ケーブル3を分岐させる場合とを個別に説明したが、主ケーブル1からのドロップケーブル2の引き落としと分岐ケーブル3の分岐との両方を行う場合も当然ある。
また、上述の実施例はスロットロッド無切断の後分岐接続工法の場合であるが、スロットロッドを切断して分岐接続する工法の場合にも当然、本発明を適用することができる。
【実施例2】
【0023】
図13に本発明の他の実施例を示す。図示のように、プラスチック製の心線収納トレイ25’と一体成形で未回線心線収容溝35’を構成することもできる。
【実施例3】
【0024】
上記実施例では、未回線心線収容溝35を心線収納トレイ25のヒンジ29と反対側の側面に設けているので、作業性の点で好ましいが、ヒンジ29と同じ側に設けること、あるいは、心線収納トレイ25の下面側に設けることを必ずしも除外しない。
また、実施例では未回線心線収容部として溝(未回線心線収容溝35)を設けたが、溝以外の形状であってもよい。
また、上述の光ケーブル用分岐接続箱は、加入者網のドロップケーブル引き落としが可能な光クロージャとして説明したが、その他の光クロージャに適用することができる。要するに、融着接続部及びその前後の心線余長を収納するとともに、未回線心線を予備に設けておく必要のある種々の用途の光ケーブル用分岐接続箱として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例の光ケーブル用分岐接続箱の内部構造を示す正面図である。
【図2】図1の光ケーブル用分岐接続箱の平面図である。
【図3】図1の要部の拡大左側面図である。
【図4】図2における心線収納トレイ部分の要部拡大図である。
【図5】図4の左側面図(但しトレイ台固定ピンを引いた状態で示したもの)である。
【図6】図5の心線収納トレイをヒンジ軸を中心にして回して起こした状態を示す図である。
【図7】チューブ配置用の溝にチューブを入れた状態で示した、図4の左側面図である。
【図8】上記の光ケーブル用分岐接続箱への光ケーブル導入の態様を説明する図であり、図1に光ケーブルを付加して示した図である。
【図9】上記の光ケーブル用分岐接続箱への光ケーブル導入の態様を説明する図であり、図2に光ケーブルを付加して示した図である。
【図10】上記の光ケーブル用分岐接続箱における心線接続形態の一例を説明する模式図である。
【図11】上記の光ケーブル用分岐接続箱における心線接続形態の他の例を説明する模式図である。
【図12】上記の光ケーブル用分岐接続箱における心線接続形態のさらに他の例を説明する模式図である。
【図13】本発明の他の実施例の光ケーブル用分岐接続箱における心線収納トレイの模式的な断面図である。
【図14】従来の光ケーブル用分岐接続箱を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0026】
1 主ケーブル
1a、2a、3a 光ファイバ心線
1b 光ファイバ心線(未回線心線)
1d スロットロッド
2 ドロップケーブル
3 分岐ケーブル
3e テンションメンバ
7 融着接続部(融着補強スリーブ)
11 光ケーブル用分岐接続箱
12 連結棒
13 ケーブル把持金具
14 テンションメンバ把持金具
15 ドロップケーブル把持金具
16 吊り金具
17 アーム
18 メッセンジャワイヤ(支持線)
19 クロージャスリーブ
20 端面板
21 アーム挿入穴
22 主ケーブル挿入穴
23 分岐ケーブル挿入穴
24 ドロップケーブル挿入穴
25、25’ 心線収納トレイ
27 トレイ台
27a 壁部
28 ネジ
29 ヒンジ
31 トレイ台固定ピン
35、35’ 未回線心線収容溝(未回線心線収容部)
36 側壁
37a、37b、37c、37d 心線出入れ口
38 心線押さえ
39 融着接続部領域
40 融着スリーブホルダ
42 チューブ
44a、44b 余長収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ケーブルから引き出した光ファイバ心線とドロップケーブル及び/又は分岐ケーブルの光ファイバ心線との光接続部及び心線余長を収納する心線収納トレイを備えた光ケーブル用分岐接続箱であって、
主ケーブルから将来の運用化に備えて引き出した未回線心線を可撓性樹脂からなるチューブに収容し、未回線心線を前記チューブとともに収容するための未回線心線収容部を心線収納トレイの外側面に設けたことを特徴とする光ケーブル用分岐接続箱。
【請求項2】
前記未回線心線収容部は、心線収納トレイの幅方向側面に沿って設けた溝であることを特徴とする請求項1記載の光ケーブル用分岐接続箱。
【請求項3】
前記溝は、心線収納トレイの幅方向側面の壁部と、金属板製のトレイ台の幅方向側縁部を上向きに折曲した壁部とによって形成されたことを特徴とする請求項2記載の光ケーブル用分岐接続箱。
【請求項4】
前記溝は、プラスチック製の心線収納トレイと一体成形により構成されたことを特徴とする請求項2記載の光ケーブル用分岐接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−98612(P2006−98612A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283450(P2004−283450)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】