説明

光コネクタ清掃工具

【課題】清掃体が巻取リールの軸方向の一部に偏って巻取られるのを防止できる光コネクタ清掃工具の提供。
【解決手段】工具本体と、工具本体から延出する延出部とを備えた光コネクタ清掃工具。工具本体は、清掃体の供給および引取りを行う送り機構と、回転機構と、これらを収容する収容体とを有する。送り機構は、清掃体を供給する供給リールと清掃体を巻取る巻取リールとを有する。回転機構は、収容体の相対移動によってヘッド部材を軸回りに回転させる回転シャフト52を備えている。回転シャフト52には、清掃体2を巻取リール31に導く巻取側挿通部87Bが形成されている。巻取側挿通部87Bの巻取リール側の開口端87Baは、回転シャフト52の回転軸C1位置から離れた位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタの接合端面を、テープ状の布、あるいは紐などの一方向に連続する柔軟な連続材からなる清掃体によって清掃するための光コネクタ清掃工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、光コネクタを突合せ接続する際にその接合端面に汚れや異物が付着していれば、着脱時の損傷や伝送損失の増大などの原因になるため、突き合わせ接続に先だって、接合端面を清掃しておく必要がある。
光コネクタの接合端面の清掃には、接合端面にテープ状の布、あるいは紐などの柔軟な清掃体を接触させて汚れ等を拭き取るようにした光コネクタ清掃工具が、従来から用いられている。
この種の光コネクタ清掃工具としては、その先端部分(ヘッド部)において、一方向に連続する柔軟な連続材からなる清掃体の一部を露出させ、その露出した清掃体を移動させつつ光コネクタの接合端面に接触させる(押し当てる)方式のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような方式を採用した光コネクタ清掃工具では、テープ状の布、あるいは紐などの一方向に連続する柔軟な連続材からなる清掃体を、工具先端部分に向けて繰り出すための供給リールと、工具先端部分から清掃体を引き取って巻取る巻取リールとを備えた送り機構を有する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/108278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述のような従来の光コネクタ清掃工具においては、清掃体が、巻取リールの軸方向の一部に偏って巻取られることがあり、その場合、巻取リールにおける清掃体巻取り厚み(高さ)が、巻取リールの軸方向の一部のみにおいて極端に大きくなってしまい、スペースファクタ上の問題が生じて、工具のより一層の小型化が困難となり、また偏って巻取られて清掃体が断面山状をなすように積層された部分において、巻取り時に崩れ(巻き崩れ)が生じ、その結果円滑に清掃体を巻取れなくなって、工具先端部への清掃体の繰り出しも円滑に行われなくなってしまう事態が生じることもあった。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、清掃体が巻取リールの軸方向の一部に偏って巻取られるような事態の発生を未然に防止し、これによりスペースファクタを良好にして、より一層の小型化を可能にするとともに、巻取り時の巻き崩れの発生を回避して、清掃体の繰り出しを常に円滑に行い得るようにした光コネクタ清掃工具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前述の課題を解決するべく、鋭意実験、検討を重ねた結果、回転シャフトに、清掃体をヘッド部材から巻取リールに導く巻取側挿通部を形成し、この巻取側挿通部の巻取リール側の開口端を回転シャフトの回転軸から離れた位置に形成することによって、巻取リールに巻取られる際の清掃体の位置を、巻取リールの軸線方向に移動(トラバース)させることができ、その結果、前述の課題を解決し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
したがって本発明の光コネクタ清掃工具は、
一方向に連続する柔軟な連続材からなる清掃体を移動させながら、その一部を光コネクタの接合端面に押し当てて、接合端面を拭き取り清掃するための光コネクタ清掃工具において、
工具本体と、前記工具本体から延出する延出部とを備え、
前記工具本体は、前記清掃体の供給および引取りを行う送り機構と、回転機構と、これらを収容する収容体とを有し、
前記延出部は、前記収容体から延出する延出筒体と、前記延出筒体の先端において前記清掃体を前記接合端面に押し当てるヘッド部材とを有し、
前記送り機構が、前記清掃体を前記ヘッド部材に供給する供給リールと、前記ヘッド部材を経た前記清掃体を巻取る巻取リールとを有し、
前記収容体は、前記延出部および前記送り機構に対し前記延出方向前方および後方に相対移動可能であり、前記前方移動によって前記巻取リールを巻取り方向に回転駆動させることにより前記清掃体を送り移動させる駆動体を備え、
前記回転機構が、前記収容体の相対移動により自ら軸回りに回転して前記ヘッド部材を軸回りに回転させる回転シャフトを備え、
前記回転シャフトに、前記清掃体を前記供給リールからヘッド部材に導くとともに、前記ヘッド部材を経た清掃体を巻取リールに導く挿通孔が形成され、
前記挿通孔に、前記清掃体を前記ヘッド部材から前記巻取リールに導く巻取側挿通部が形成され、前記巻取側挿通部の前記巻取リール側の開口端は、前記回転シャフトの回転軸から離れた位置に形成されていることを特徴とする。
前記回転シャフトは、前記収容体の挿入凸部が挿入されるカム溝を有する回転筒部と、先端に前記ヘッド部材が装着されるガイド筒部とを有し、前記回転筒部は、前記収容体を相対移動させたときに、前記カム溝に沿う移動により前記ヘッド部材を軸回りに回転させるものであり、前記カム溝の軸周り方向の形成角度は180°以上とされることが好ましい。
前記挿通孔は、前記清掃体を前記供給リールからヘッド部材に導く送り側挿通部と、前記巻取側挿通部とに区画されている構成とすることができる。
前記清掃体は、テープ状に形成されていてもよいし、断面略円形の紐状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転シャフトの巻取側挿通部の巻取リール側の開口端が回転シャフトの回転軸から離れた位置に形成されているので、回転シャフトの軸回り回転によって、巻取リールに巻取られる際の清掃体の位置を、巻取リールの軸線方向に移動(トラバース)させることができる。
そのため、清掃体が巻取リールの軸線方向の一部に偏って巻取られてしまうことを未然に防止でき、その結果、清掃体の巻取リールの軸方向の偏在に起因してスペースファクタ上の問題が生じることを防止し、光コネクタ清掃工具の一層の小型化を図ることができる。
また、巻取リールの軸方向の一部への清掃体の偏在に起因する巻き崩れの発生を防止して、巻き崩れにより清掃体の巻取りが円滑に行われなくなるような事態の発生を有効に防止することができる。
また、本発明では、部品点数の増加が必要ないため、コスト等の不利は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の光コネクタ清掃工具の一実施形態の斜視図である。
【図2】光コネクタ清掃工具の正面図である。
【図3】光コネクタ清掃工具の正断面図である。
【図4】駆動体を示す平面図である。
【図5】延出筒体を示す斜視図である。
【図6】ヘッド部材を示す斜視図である。
【図7】回転シャフトを一方側から見た斜視図である。
【図8】回転シャフトの要部を他方側から見た斜視図である。
【図9】回転シャフトの後面図である。
【図10】回転シャフトおよびその先端に取り付けられたヘッド部材を示す一部断面状態の側面図である。
【図11】送り機構を示す平面図である。
【図12】光コネクタ清掃工具の使用方法を示す工程図である。
【図13】前図に続く工程図である。
【図14】前図に続く工程図である。
【図15】送り機構の動作を示す工程図であり、(a)は通常状態を示す断面図であり、(b)は収容体が前方移動した状態を示す断面図である。
【図16】回転シャフトの動作を示す工程図である。
【図17】前図に続く工程図である。
【図18】光コネクタ清掃工具の使用方法を示す工程図である。
【図19】清掃体の巻取り状態を示す工程図である。
【図20】清掃体の巻取り状態を示す工程図である。
【図21】回転シャフトの第2の例の要部の斜視図である。
【図22】前図に示す回転シャフトの後面図である。
【図23】回転シャフトの第3の例の回転シャフトの要部の斜視図である。
【図24】前図に示す回転シャフトの後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態である光コネクタ清掃工具(以下、単に「清掃工具」ともいう)1を、図面を参照して説明する。
図1〜図3に示すように、清掃工具1は、工具本体10と、工具本体10から延出する延出部20とを有する。
以下の説明においては、図1に示す延出部20(延出筒体21)の先端方向を延出方向の前方といい、その反対方向を後方ということがある。
【0011】
図1〜図3に示すように、工具本体10は、清掃体2の供給および引取り(巻取り)を行う送り機構3と、ヘッド部材23を回転させる回転機構5(図3および図7参照)と、これらを収容する収容体11と、収容体11内にあって収容体11を付勢する付勢手段40と、を備えている。
収容体11は、略直方体のケース部12と、ケース部12内にあってケース部12に対し位置決めされた駆動体13とを有する。
【0012】
ケース部12は、収容空間12e(図3参照)を隔てて向かい合う基板部12a、12aと、基板部12a、12aの側縁に形成された側板部12b、12bと、基板部12aの前縁に設けられた前板部12cとを有する。
前板部12cには、延出筒体21が挿通する挿通口12d(図1参照)が形成されている。
【0013】
図3および図4に示すように、駆動体13は、基板53(図16および図17参照)と、基板53の前端部から基板53の厚さ方向に突出して形成された挿入凸部54と、基板53の両側縁部から内面側に突出して形成された突出部55と、基板53の前端部に形成された押圧部57と、基板53の後端部から内面側に延出する後端板58とを備えている。
【0014】
基板53の両側縁部の突出部55のうち一方には、鋸歯状のギア受け部56(駆動部)が形成されている。
ギア受け部56は、送り機構3に対する駆動体13の前方移動によって巻取リール31を巻取り方向に回転駆動させる駆動部であって、他方の突出部55に向けて突出して形成された複数の受け歯部56aからなる。受け歯部56aは、前後方向に配列されている。
なお、本形態例では、鋸歯状のギア受け部56が採用されているが、巻取リール31を駆動させるための構成はこれに限らず、巻取リール31に回転方向の力を加えることができるものであれば、例えば巻取リール31の外周縁に当接して摩擦により巻取リール31に回転方向の力を加えるものなど、他の構成を採用してもよい。
【0015】
挿入凸部54は、略円筒状とされ、基板53の内面から基板53の厚さ方向に突出して形成され、その突出高さおよび外径は、回転筒部82のカム溝85に嵌合可能となるように設定されている(図16および図17参照)。
【0016】
図3および図4に示すように、押圧部57は、付勢手段40を押圧する押圧板57aと、その周縁に形成された筒状の保持筒部57bとを有する。
押圧板57aは、基板53の内面から基板53の厚さ方向に突出して形成されている。押圧板57aは、前後方向に垂直に形成することができる。
保持筒部57bは、付勢手段40の位置ずれを規制するものであり、付勢手段40の後端部を収容可能に形成されている。
【0017】
図1および図2に示すように、駆動体13の基板53の外面には、基板部12aの係止穴12fに係止する係止突起53aが形成されている。
駆動体13は、係止突起53aが係止穴12fに係止することによってケース部12に対し位置決めされ、ケース部12とともに移動するようになる。
【0018】
図7〜図9に示すように、回転機構5は、軸回りに回転可能な回転シャフト52を備えている。
回転シャフト52は、回転筒部82と、回転筒部82の前端から前方に延出するガイド筒部81とを備えている。
回転筒部82内には、清掃体2が挿通する挿通孔83が、回転筒部82の後端に開口して形成されている。挿通孔83は、回転筒部82の軸方向に沿って形成されている。図示例の挿通孔83は断面略矩形とされている。
【0019】
ガイド筒部81には、全長にわたって挿通孔87が形成されている。挿通孔87は、清掃体2を供給リール30からヘッド部材23に導くとともに、ヘッド部材23を経た清掃体2を巻取リール31に導くものであって、回転筒部82の挿通孔83に連通している。
ガイド筒部81は略円筒状に形成され、前端部において挿通孔87にヘッド部材23の挿入部91を挿入できる(図10参照)。ガイド筒部81の前端部の内面は、平坦に形成された回転止部84とされている。
【0020】
回転筒部82は略円筒状に形成され、その外面には、駆動体13の挿入凸部54が挿入されるカム溝85が形成されている。
カム溝85は、少なくとも一部が回転筒部82の軸方向に対し傾斜して形成されている。このため、後述するように、カム溝85に挿入された挿入凸部54が前後方向に移動すると、回転筒部82がカム溝85に沿って移動することによって、回転シャフト52は軸回りに回転する。図示例では、カム溝85は螺旋状に形成されている。
カム溝85の軸周り方向の形成角度(カム溝85の一端から他端までの軸回り角度)は、180°以上とすると、清掃体2の胴部47への巻取り位置の変化を大きくできるため好ましい。
ガイド筒部81および回転筒部82の回転軸C1はこれらの中心軸に一致する。
【0021】
ガイド筒部81には、隔壁86が形成され、隔壁86によって挿通孔87が送り側挿通部87Aと巻取側挿通部87Bとに区画されている。隔壁86は、ガイド筒部81の長さ方向に沿って形成されている。隔壁86は、少なくともガイド筒部81の後端部を含む位置に形成されていることが望ましい。
【0022】
巻取側挿通部87Bの巻取リール31側(後端側)の開口端87Baは、ガイド筒部81および回転筒部82の回転軸C1から径方向に離れた位置に形成される(図9参照)。
【0023】
図6および図10に示すように、ヘッド部材23は、ガイド筒部81の挿通孔87に挿入可能な挿入部91と、挿入部91の前端に形成されたフランジ部92と、フランジ部92の前面から前方に延出する先端延出部28とを備えている。
先端延出部28の先端面は、清掃体2を接合端面61a(図18参照)に押し当てる押当て面24となる。
【0024】
フランジ部92には、清掃体2が通過する通過口92A、92Bが形成されている。
先端延出部28には、基端部から先端方向に向かって、清掃体2を導くガイドスリット26が形成されている。
先端延出部28には、ガイドスリット26の前端部から先端延出部28の外面にかけてガイド口部25が形成されている。
ガイド口部25は、送り機構3(供給リール30)からの清掃体2を押当て面24に導く(または押当て面24を通過した清掃体2を送り機構3(巻取リール31)に導く)ものである。先端延出部28にガイド口部25を形成することによって、清掃体2が押当て面24から外れるのを防ぐことができる。
【0025】
挿入部91は板状に形成され、一方面側の平坦部93Aと他方面側の平坦部93Bとが回転止部84に沿って配置されるため、ヘッド部材23はガイド筒部81に対して回転しない。
挿入部91には、係合爪93aを有する弾性片93bが形成されている。係合爪93aは、ガイド筒部81に形成された係合開口部81a(係合凹部)(図7参照)の前縁に係止することでヘッド部材23の前方移動を規制できる。
図10における符号94は、ガイド筒部81の前端とフランジ部92との間に設けられた付勢手段(例えばコイルスプリングなどのバネ部材)である。付勢手段94は、ヘッド部材23を接合端面61aに押し当てたときにヘッド部材23を前方に付勢する。
【0026】
図3、図7、図10および図19に示すように、ヘッド部材23には、供給リール30から引き出された清掃体2が巻き回されている。
図示例では、清掃体2は、供給リール30から回転シャフト52の挿通孔83および挿通孔87(送り側挿通部87A)を経て、ヘッド部材23に至る。
清掃体2は、挿入部91の平坦部93A、フランジ部92の通過口92Aを経て先端延出部28の押当て面24に至り、ガイド口部25、ガイドスリット26、通過口92B、平坦部93Bを通り、挿通孔87(巻取側挿通部87B)および挿通孔83を経て巻取リール31に達するように巻き回すことができる。
また、清掃体2は、逆に、供給リール30から挿通孔83および挿通孔87(送り側挿通部87A)を経てヘッド部材23に達し、平坦部93B、通過口92B、ガイドスリット26、ガイド口部25を経て押当て面24に至り、通過口92A、平坦部93A、挿通孔87(巻取側挿通部87B)および挿通孔83を経て巻取リール31に達するように巻き回すこともできる。
挿通孔87は送り側挿通部87Aと巻取側挿通部87Bとに区画されているため、送り側の清掃体2と巻取側の清掃体2との干渉が生じにくく、清掃体2の送り移動はスムーズに行われる。
【0027】
清掃体2は、特に限定されるものではなく、連続的に繰り出し可能な程度に軟質で一方向に連続する連続材であれば、特に限定されるものではなく、公知の適当な清浄布(不織布や織布)をテープ状や、断面略円形の紐状に加工したものを採用することができる。清掃体2としては、例えばポリエステルやナイロンなどの極細の繊維で構成されたものが例示できる。
テープ状の清掃体2の幅は1.0〜2.5mmが好適であり、厚さは0.1〜0.2mmが好適である。
テープ状の清掃体2を用いると、清掃対象に対する接触面積が大きくなるため、清掃能力を高めることができる。
断面略円形の紐状の清掃体2には、工具本体10内の収容スペースを小さくできるという利点がある。
【0028】
図3に示すように、送り機構3は、清掃体2を巻装した供給リール30(供給手段)と、使用後の清掃体2を巻取って回収する巻取リール31(引取り手段)と、これらを回転自在に支持する支持枠35と、巻取リール31に装着されるギア38と、押さえ部34とを備えている。
【0029】
図3および図11に示すように、支持枠35は、基板41と、供給リール30を回転自在に支持する供給リール支持軸32と、巻取リール31を回転自在に支持する巻取リール支持軸33と、基板41の両側縁部に形成された側板44、44と、両側板44、44間に設けられた仕切板43と、基板41の前端部に形成された前端板46を備えている。
仕切板43は、両側板44、44間の空間を、筒体基部収容部36と付勢手段収容部37とに区画する。
【0030】
筒体基部収容部36は、延出筒体21の筒体基部15を収容可能である。
一方の側板44の後端には、筒体基部15の後方移動を規制する規制板42Aが形成され、仕切板43の後端部にも、筒体基部15の後方移動を規制する規制板42Bが形成されている。
前端板46には、延出筒体21が挿通する凹部46aが形成されている。
筒体基部収容部36は、筒体基部15の後方移動を規制板42A、42Bにより規制するとともに、前端板46によって前方移動を規制する。
【0031】
付勢手段収容部37は、他方の側板44と仕切板43との間の空間であり、付勢手段40を収容可能である。
前端板46の後面には、付勢手段収容部37内の付勢手段40の前端部に挿入されて付勢手段40を位置決めする保持突起39が後方に突出して形成されている(図3参照)。
【0032】
支持軸32、33の位置は、供給リール30および巻取リール31の設置位置(前後方向位置)が、筒体基部収容部36および付勢手段収容部37より後方寄りとなるように設計することができる。
図示例では、支持軸32、33の位置は、供給リール30の中心軸30aと巻取リール31の中心軸31aとの配列方向が、前後方向となるように設計されている。
【0033】
基板41には、リール30、31の径方向に対し垂直に延出する2つの延出板45、45が形成され、延出板45、45の先端には、それぞれリール30、31に向けて突出する係止爪45a、45aが形成されている。延出板45は弾性的に曲げ変形可能であり、係止爪45aはリール30、31に対し接近および離間する方向に移動可能である。
押さえ部34は、リール30、31およびギア38の脱落を防ぐためのものである。
【0034】
図3、図11および図19に示すように、供給リール30および巻取リール31は、清掃体2が巻き付けられる胴部47と、胴部47の一端に設けられた第1フランジ板48と、胴部47の他端に設けられた第2フランジ板49とを備えている。
第1フランジ板48の外面には、周方向に沿って配列された複数の係止凹部(図示略)が形成されており、延出板45の係止爪45aが前記係止凹部に係合することにより、リール30、31の逆方向回転が阻止される。第2フランジ板49の外面には、周方向に沿って配列された複数の係止凸部(図示略)が形成されている。
リール30、31は、胴部47に支持軸32、33を挿通させることによって支持枠35に装着される。
【0035】
図3に示すように、ギア38は、円板状の基板89と、基板89の一方の面に形成された歯車部88とを有する。基板89の他方の面には、巻取リール31の係止凸部(図示略)に係止する係止突起(図示略)が形成されている。
歯車部88は、駆動体13のギア受け部56の受け歯部56aに噛み合う歯部88aを有する。
ギア38は、巻取リール31の第2フランジ板49に重ねて設置される。基板89の係止突起(図示略)は第2フランジ板49の係止凸部(図示略)に係止するため、ギア38の回転に従って巻取リール31も回転する。
係止突起87aは、ギア38が巻取り方向とは逆の方向に回転する場合には、係止凸部(図示略)には係止しない。
【0036】
図3に示すように、付勢手段40は、前方に相対移動した状態の収容体11を後方に付勢するものであって、コイルスプリングなどのバネ部材が好適である。
付勢手段40は、支持枠35に反力をとって収容体11を後方に付勢することができる。具体的には、前端板46に反力をとって駆動体13の押圧部57を後方に付勢することができる。
【0037】
図5および図10に示すように、延出部20は、筒体基部15と、筒体基部15の先端側に設けられた延出筒体21と、延出筒体21に挿通するヘッド部材23とを備えている。
筒体基部15は、回転シャフト52の回転筒部82を収容できる保持枠部97と、保持枠部97の前端から前方に延出する円筒状の接続筒部96とを備えている。
保持枠部97は、断面矩形の筒状に形成され、保持枠部97を構成する4つの側板99のうちひとつである側板99aには、前後方向に沿って、駆動体13の挿入凸部54が挿入されるスリット100が形成されている。
【0038】
図5に示すように、延出筒体21は、円筒状の太径部21bと、その前端から前方に延出する細径部21cとからなる。
細径部21cの先端には、ヘッド部材23の先端延出部28が出没自在に挿通する挿通口部21dが形成されている。
接続筒部96の外面には、延出筒体21の太径部21bに形成された係止開口部21aに嵌合する嵌合爪96aが形成されている。
【0039】
次に、清掃工具1の使用方法の一例を説明する。
図15(a)に示す通常状態では、収容体11は、延出部20および送り機構3に対して相対的に比較的後方に位置している。
図12、図13および図18に示すように、収容体11を把持して、延出部20の延出筒体21を光アダプタ70のコネクタ挿入口71から挿入すると、延出筒体21は、光アダプタ70の内壁70aにより位置決めされながらコネクタ収容穴72に進入する。
図18に示すように、押当て面24上の清掃体2は、光プラグ60の接合端面61aの適切な位置(ここでは、光ファイバ穴61bとその周辺)に当接する。
【0040】
図14および図15(b)に示すように、収容体11にさらに前方への力を加えると、延出筒体21の先端が光アダプタ70の壁部70b等(図18参照)から反力を受けて前方移動が規制される一方、収容体11は延出部20に対して相対的に前方に移動する。
図11に示すように、延出筒体21の筒体基部15は、規制板42A、42Bによって後方移動が規制された状態で筒体基部収容部36に収容されているため、送り機構3の前後方向位置は大きく変化しない。このため、付勢手段40は駆動体13により圧縮され、支持枠35に反力をとって駆動体13を後方に付勢する状態となる。
【0041】
図15(b)、図16および図17に示すように、収容体11の駆動体13が回転筒部82に対して相対的に前方移動するため、挿入凸部54も回転筒部82のカム溝85に挿入された状態で前方移動する。このため、回転シャフト52は軸回りに回転する。
図18に示すように、回転シャフト52の回転によって、ヘッド部材23が軸回りに回転するため、清掃体2は接合端面61aに当接した状態のままヘッド部材23の軸回りに回転し、接合端面61aが拭き取り清掃される。
【0042】
図3および図11に示すように、駆動体13が送り機構3に対し相対的に移動するため、ギア受け部56によって、ギア38の歯車部88に回転方向の力が与えられる。ギア38の回転によって、巻取リール31も回転するため、清掃体2が巻取られる。
これに伴って、清掃体2が供給リール30から引き出され、ヘッド部材23の押当て面24を通って送り移動される。清掃体2の送り移動によって、接合端面61aに付着しているゴミや埃、油分などの汚れが確実に拭き取られる。
【0043】
延出部20を光アダプタ70から引き抜く際には、収容体11を後方移動させる。
収容体11に対する延出筒体21および送り機構3の前後方向位置は、付勢手段40の弾性力によって、通常状態(図15(a)に示す状態)に戻る。
【0044】
図19および図20に示すように、巻取側挿通部87Bの開口端87Baは、回転シャフト52の回転軸C1から離れた位置に形成されているので、回転シャフト52が軸回りに回転すると、開口端87Baの軸回り方向の位置も変化し、これに応じて巻取リール31の胴部47への清掃体2の巻取り位置(巻取リール31の軸方向の位置)も変化する。
例えば、図19では、開口端87Baの上下方向位置(リール31の軸方向位置)は比較的上方であるため、清掃体2の胴部47への巻取り位置もそれに応じた位置になる。
一方、図20では、開口端87Baの上下方向位置は比較的下方であるため、清掃体2の胴部47への巻取り位置もそれに応じて第1フランジ板48に比較的近い位置となる。
このように、巻取側挿通部87Bの開口端87Baの位置変化によって、清掃体2の胴部47への巻取り位置を軸線方向に移動(トラバース)させることができる。
従って、清掃体2が巻取リール31の軸線方向の一部に偏って巻取られてしまうことを未然に防止でき、その結果、清掃体2の巻取リール31の軸方向の偏在に起因してスペースファクタ上の問題が生じることを防止し、光コネクタ清掃工具1の小型化を図ることができる。
【0045】
テープ状の清掃体2は、転動しやすい断面略円形の紐状の清掃体に比べ、巻取リール31に巻取られた状態で軸方向の移動が起こりにくいことから、巻取リール31に軸方向に偏って巻取られたときに、その偏りが修正されにくい。このため、清掃体2の巻取リール31軸方向の偏在を原因として工具1内部のスペースの無駄が生じ、工具1の小型化を図る上で問題であった。
これに対し、上記構造によれば、清掃体2の胴部47への巻取り位置を変化させることができるため、特にテープ状の清掃体を用いる場合に、前記問題の解決を有効に図ることができる。
【0046】
一方、紐状の清掃体2は、極端に偏って巻取られて、局部的に巻取り厚みが大きくなった場合、巻き崩れが生じやすくなって、巻き崩れにより円滑に巻取れなくなるおそれがあるが、上記構造によれば、そのような問題をも解決できるところから、紐状の清掃体を用いる場合にも有効である。
また、上記構成によれば、部品点数の増加が必要ないため、コスト等の不利は生じない。
【0047】
なお、図示例では挿通孔87は送り側挿通部87Aと巻取側挿通部87Bとに区画されているが、開口端が回転シャフトの回転軸から離れた位置に形成されていれば、挿通孔が区画されていない構成も可能である。この場合、挿通孔は送り側挿通部と巻取側挿通部の機能を兼ね備える。
【0048】
図21および図22は、回転シャフトの他の例を示すもので、この回転シャフト112は、回転筒部82に、清掃体2を供給リール30から導く送り側導入孔117Aと、清掃体2を巻取リール31に導く巻取側導出孔117Bが互いに独立に形成されている。
送り側導入孔117A(送り側挿通部)は送り側挿通部87Aに連通し、巻取側導出孔117B(巻取側挿通部)は巻取側挿通部87Bに連通する。
送り側導入孔117Aと巻取側導出孔117Bは、後方に向けて徐々に互いに離間しつつ回転筒部82の後端に開口して形成されている。巻取側導出孔117Bは、公報に向かって回転軸C1から徐々に離れるように形成されている。
【0049】
巻取側挿通孔117Bの開口端117Baは、回転シャフト122の回転軸C1から離れた位置に形成されている。このため、回転シャフト112の軸回り回転によって、巻取リール31への清掃体2の巻取り位置を巻取リール31の軸線方向に移動させ、清掃体2の偏在を防止できる。
この回転シャフト112は、径が大きい回転筒部82に、巻取側導出孔117Bが送り側導入孔117Aとは独立に形成されているので、巻取側導出孔117Bの開口端位置を回転筒部82の軸位置から大きく離間させて設定できる。
従って、清掃体2の胴部47への巻取り位置の変化を大きくすることができる。
【0050】
図23および図24は、回転シャフトのさらに他の例を示すもので、この回転シャフト122は、回転筒部82に、軸方向に沿って断面略円形の挿通孔123が形成されている。
挿通孔123内には、移動規制壁部127A、127Bが設けられている。移動規制壁部127A、127Bは、それぞれ送り側の清掃体2と巻取側の清掃体2の幅方向の位置決めのためのもので、移動規制壁部127A、127Bによって、送り側の清掃体2と巻取側の清掃体2の挿通孔123内の位置を安定化させることができる。
従って、清掃体2の胴部47への巻取り位置の変化を大きくすることができる。
【0051】
本発明は、種々のタイプの光ファイバコネクタに適用することができ、例えば、LC形光コネクタ(ルーセント社商標)、JIS C 5973に制定されるSC形光コネクタ(SC:Single fiber Coupling optical fiber connector)、JIS C 5983に制定されるMU形光コネクタ(MU:MiniatureーUnit coupling optical fiber connector)、SC2形光コネクタ等の単心光コネクタに適用することができる。SC2形光コネクタとは、SC形光コネクタから、ハウジングの外側に装着されるつまみを省略したものである。
【0052】
図示例では、光アダプタ70および光プラグ60を対象としたが、本発明の清掃工具の対象はこれに限定されず、光コネクタレセプタクル(詳細には、レセプタクルハウジング)を、コネクタ用位置決めハウジングとして機能させた構成も採用可能である。
この場合には、スリーブ状のレセプタクルハウジング内に組み込まれたフェルールが本発明に係る光コネクタとして機能する。レセプタクルハウジングの内側空間であるコネクタ収容穴に清掃工具の挿入部を挿入することで、フェルールの接合端面を清掃できる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・光コネクタ清掃工具、2・・・清掃体、3・・・送り機構、5・・・回転機構、10・・・工具本体、11・・・収容体、13・・・駆動体、20・・・延出部、21・・・延出筒体、23・・・ヘッド部材、30・・・供給リール、31・・・巻取リール、35・・・支持体、40・・・付勢手段、52,112,122・・・回転シャフト、56・・・ギア受け部(駆動部)、61・・・フェルール、61a・・・接合端面、81・・・ガイド筒部、82・・・回転筒部、85・・・カム溝、86・・・隔壁、83,87・・・挿通孔、87A・・・送り側挿通部、87B・・・巻取側挿通部、87Ba・・・巻取側挿通部の開口端、117B・・・巻取側挿通孔(巻取側挿通部)、117Ba・・・巻取側挿通孔の開口端、C1・・・回転シャフトの回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に連続する柔軟な連続材からなる清掃体を移動させながら、その一部を光コネクタの接合端面に押し当てて、接合端面を拭き取り清掃するための光コネクタ清掃工具において、
工具本体と、前記工具本体から延出する延出部とを備え、
前記工具本体は、前記清掃体の供給および引取りを行う送り機構と、回転機構と、これらを収容する収容体とを有し、
前記延出部は、前記収容体から延出する延出筒体と、前記延出筒体の先端において前記清掃体を前記接合端面に押し当てるヘッド部材とを有し、
前記送り機構が、前記清掃体を前記ヘッド部材に供給する供給リールと、前記ヘッド部材を経た前記清掃体を巻取る巻取リールとを有し、
前記収容体は、前記延出部および前記送り機構に対し前記延出方向前方および後方に相対移動可能であり、前記前方移動によって前記巻取リールを巻取り方向に回転駆動させることにより前記清掃体を送り移動させる駆動体を備え、
前記回転機構が、前記収容体の相対移動により自ら軸回りに回転して前記ヘッド部材を軸回りに回転させる回転シャフトを備え、
前記回転シャフトに、前記清掃体を前記供給リールからヘッド部材に導くとともに、前記ヘッド部材を経た清掃体を巻取リールに導く挿通孔が形成され、
前記挿通孔に、前記清掃体を前記ヘッド部材から前記巻取リールに導く巻取側挿通部が形成され、前記巻取側挿通部の前記巻取リール側の開口端は、前記回転シャフトの回転軸から離れた位置に形成されていることを特徴とする光コネクタ清掃工具。
【請求項2】
前記回転シャフトは、前記収容体の挿入凸部が挿入されるカム溝を有する回転筒部と、先端に前記ヘッド部材が装着されるガイド筒部とを有し、
前記回転筒部は、前記収容体を相対移動させたときに、前記カム溝に沿う移動により前記ヘッド部材を軸回りに回転させるものであり、
前記カム溝の軸周り方向の形成角度は、180°以上とされていることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ清掃工具。
【請求項3】
前記挿通孔は、前記清掃体を前記供給リールからヘッド部材に導く送り側挿通部と、前記巻取側挿通部とに区画されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光コネクタ清掃工具。
【請求項4】
前記清掃体は、テープ状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の光コネクタ清掃工具。
【請求項5】
前記清掃体は、断面略円形の紐状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の光コネクタ清掃工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−48038(P2012−48038A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191045(P2010−191045)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】