説明

光スイッチ

【課題】光の偏波方向に依存しない光スイッチを提供する。
【解決手段】第1の導波路20には、動作時には水平偏波モード成分の位相を第1の方向にπずらし、非動作時には動作時には光の位相をずらさない位相シフト手段22,24と、偏波モードコンバータ26が設けられている。第2の導波路30には、動作時には水平偏波モード成分の位相を第1の方向にπずらし、非動作時には動作時には光の位相をずらさない位相シフト手段32,34と、偏波モードコンバータ36が設けられている。偏波モードコンバータ26は、第1の方向性結合器10と位相シフト手段22,24の間に位置しており、偏波モードコンバータ36は、第2の方向性結合器40と位相シフト手段32,34の間に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の偏波方向に依存しない光スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信ネットワークにおいて、光の経路を切り替える光スイッチが必須である。このような光スイッチの一例として、導波路型の光スイッチがある(例えば特許文献1参照)。導波路型の光スイッチは、低損失、高速切替、及び小型化が可能といった特徴を有している。
【0003】
【特許文献1】特開平8−54652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光通信ネットワークにおいて、ファイバ中を伝搬する光の偏波方向はさまざまな方向を向いている。このため、光信号を光のままスイッチングする光スイッチには、光の偏波方向に依存しない特性が必要となる。
【0005】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、光の偏波方向に依存しない光スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る光スイッチは、第1の偏波モード成分及び第2の偏波モード成分を有する入力光を、第1の分岐光、及び該第1の分岐光に対して位相が第1の方向に0.5πずれた第2の分岐光に分岐する第1の方向性結合器と、
前記第1の方向性結合器に接続され、前記第1の分岐光を伝達する第1の導波路と、
前記第1の方向性結合器に接続され、前記第1の導波路との長さの差が前記入力光の波長の整数倍であり、前記第2の分岐光を伝達する第2の導波路と、
前記第1の導波路に設けられ、動作時には前記第1の分岐光のうち第1の偏波モード成分の位相を前記第1の方向にπずらし、非動作時には動作時には前記第1の分岐光の位相をずらさない第1の位相シフト手段と、
前記第2の導波路に設けられ、動作時には前記第2の分岐光のうち第1の偏波モード成分の位相を前記第1の方向にπずらし、非動作時には動作時には前記第2の分岐光の位相をずらさない第2の位相シフト手段と、
第1及び第2の出力端子を有しており、前記第1の導波路及び前記第2の導波路から前記第1及び第2の分岐光が入力され、前記第1の分岐光を第3の分岐光及び該第3の分岐光に対して位相が前記第1の方向に0.5πずれた第4の分岐光に分岐するとともに、前記第2の分岐光を第5の分岐光及び該第5の分岐光に対して位相が前記第1の方向に0.5πずれた第6の分岐光に分岐し、かつ前記第3の分岐光と前記第5の分岐光を合成して前記第1の出力端子から出力するとともに、前記第4の分岐光を前記第6の分岐光を合成して前記第2の出力端子から出力する第2の方向性結合器と、
前記第1の導波路に設けられ、前記第1の方向性結合器と前記第1の位相シフト手段の間に位置する第1の偏波モードコンバータと、
前記第2の導波路に設けられ、前記第2の方向性結合器と前記第2の位相シフト手段の間に位置する第2の偏波モードコンバータと、
を具備する。
前記第1の導波路と前記第2の導波路の長さは同一であっても良い。
第1の偏波モード成分は例えば水平偏波モード成分であり、第2の偏波モード成分は例えば垂直偏波モード成分であるが、これらが逆であっても良い。
【0007】
前記第1の位相シフト手段は、前記第1の導波路上に形成された第1の強誘電性液晶層と、前記第1の強誘電性液晶層に電圧を印加して該第1の強誘電性液晶層の配向方向を制御する第1の電極と、を具備し、
前記第2の位相シフト手段は、前記第2の導波路上に形成された第2の強誘電性液晶層と、前記第2の強誘電性液晶層に電圧を印加して該第2の強誘電性液晶層の配向方向を制御する第2の電極と、を具備してもよい。
【0008】
前記第1の導波路は導電性を有しており、前記第1の電極とともに前記第1の強誘電性液晶の配向方向を制御し、
前記第2の導波路は導電性を有しており、前記第2の電極とともに前記第2の強誘電性液晶の配向方向を制御してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光の偏波方向に依存しない光スイッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る光スイッチの構成を説明する為の概略図である。この光スイッチにおいて、第1の方向性結合器10が有する2つの出力ポートと、第2の方向性結合器40が有する2つの入力ポートが、第1の導波路20及び第2の導波路30を用いて接続されている。第1の導波路20及び第2の導波路30は、長さが互いに略同一である。第1の方向性結合器10の入力ポート1,2は光スイッチの入力ポートとして機能し、第2の方向性結合器40の出力ポート3,4は光スイッチの出力ポートとして機能する。なお、第1の導波路20及び第2の導波路30は、例えば不純物が導入されていて導電性を有する半導体膜によって形成されている。
【0011】
第1の導波路20の一部である第1領域上には強誘電性液晶22が配置されている。強誘電性液晶22は、強誘電性液晶22上に設けられた上部電極24と第1の導波路20の間に印加される電圧によって、配向方向が制御される。
【0012】
第2の導波路30の一部である第2領域上には強誘電性液晶32が配置されている。強誘電性液晶32は、強誘電性液晶32上に設けられた上部電極34と第2の導波路30の間に印加される電圧によって、配向方向が制御される。
なお、強誘電性液晶22,32の配向方向を制御する電圧は、電圧制御部50によって制御されている。
【0013】
入力ポート1には、例えば波長λの光aが入力される。光aは、TEモード(水平偏波モード)の成分とTMモード(垂直偏波モード)の成分の双方を有しており、これら2つの成分を合成することによって定まる偏波方向は任意である。第1の方向性結合器10を通過する際に、光aは第1の導波路20及び第2の導波路30にそれぞれ分岐する。分岐した光の強度は略同じであるが、これらの間には位相差π/2が生じる。
【0014】
第1の導波路20と第2の導波路30の長さは互いに同じである為、第1の導波路20を通過する光a,bと第2の導波路30を通過する光aの間の位相差は変化しない。
【0015】
また、強誘電性液晶22の配向方向が変化すると、詳細を後述するように、強誘電性液晶22の屈折率が変化し、この屈折率の変化に起因して、第1の導波路20のうち、強誘電性液晶22の下方に位置する第1領域の屈折率が変化する。このため、強誘電性液晶22の配向方向が変化すると、第1の導波路20から出力される光のうちTEモードの位相が変化する。この位相の変化量は、後述するように強誘電性液晶22の配向量を変えることによって制御することができる。
【0016】
同様に、強誘電性液晶32の配向方向が変化すると、第2の導波路30のうち、強誘電性液晶32の下方に位置する第2領域の屈折率が変化し、第2の導波路30から出力される光の位相が変化する。この位相の変化量は、後述するように強誘電液晶32の配向量を変えることによって制御することができる。
【0017】
第1の導波路20には、第1の方向性結合器10と強誘電性液晶22の間に位置するモードコンバータ26が設けられており、第2の導波路30には、強誘電性液晶22と第2の方向性結合器40の間に位置するモードコンバータ36が設けられている。モードコンバータ26,36は、光のTEモード成分をTMモード成分に変換し、かつ光のTMモード成分をTEモード成分に変換する。
【0018】
第1の導波路20を通過した光a、及び第2の導波路30を通過した光aは、第2の方向性結合器40でそれぞれ出力ポート3,4に略同じ強度に分岐される。分岐後の光が出力ポート3,4で合成されることにより、出力ポート3,4から出力される光が定まる。
【0019】
出力ポート3,4のいずれから光aが出力されるかは、上記した光の位相差の合計によって定まる。詳細を後述するように、強誘電性液晶22、32の配向方向を制御することにより、出力ポート3,4のいずれから光aが出力されるかを制御することができる。
【0020】
図2のグラフは、上面が強誘電性液晶で被覆された導波路を透過している光のうちTEモードの強度分布を示すシミュレーション結果を示している。本シミュレーションにおいて、導波路はSi(厚さは0.5μm)で形成されており、下地膜はSiO(厚さは∞)で形成されている。強誘電性液晶は、等価屈折率が1.615、厚さが∞として扱われている。本グラフから、導波路から強誘電性液晶に光の一部が染み出ていることが分かる。強誘電性液晶の配向方向が変化すると、強誘電性液晶の等価屈折率(誘電率)が変化する。この等価屈折率の変化は、導波路から強誘電性液晶に染み出た光の伝搬に影響を与える。この結果、導波路の等価屈折率が変化する。
【0021】
従って、電圧制御部50が上部電極24と第1の導波路20の間の電圧を制御することにより、強誘電性液晶22の配向方向を変化させ、強誘電性液晶22の下方に位置する第1の導波路20の等価屈折率を変化させることができる。
【0022】
図3のグラフは、上面が強誘電性液晶で被覆された導波路の等価屈折率の変化Δnが導波路の厚さによってどのように変化するかシミュレーションした結果を示している。このシミュレーションでは、導波路がSiで形成されており、下地膜がSiOで形成されており、かつ光の波長λ=1550nmとしている。本図に示すように、導波路の厚さが薄いほどΔnが大きくなる。
【0023】
図4のグラフは、上面が強誘電性液晶で被覆された導波路において、TEモードの光における位相差πを得るために必要な導波路長が、導波路の厚さによってどのように変化するかを計算したグラフである。本グラフは、図3のグラフに示した結果を前提としている。本グラフに示すように、導波路の厚さが薄くなるにつれて、位相差πを得るために必要な導波路長が短くなる。
【0024】
図5及び図6の各図は、強誘電性液晶22に印加される電圧によって出力ポート3,4から出力される光が切り替わる理由を説明する為の図である。図5において、強誘電性液晶22,32の配向方向は第1の方向と第2の方向のいずれかを取る。強誘電性液晶22、32の配向方向が第1の方向である場合、光aのTEモード成分は、強誘電性液晶22,32の下方を通過する際に位相が変化しない。強誘電性液晶22,32の配向方向が第2の方向である場合、光aのTEモード成分は、強誘電性液晶層22,32の下方を通過する際に位相がπ変化する。このような状態は、上記したように、強誘電性液晶22,32の材料、第1領域及び第2領域の長さ、及び第1の導波路20及び第2の導波路30の厚さを調節することにより実現できる。
【0025】
図5の各図は、強誘電性液晶22,32が第2の方向に配向している場合を示している。図5(A)は光aのTEモード成分が伝播する様子を説明するための図であり、図5(B)は光aのTMモード成分が伝播する様子を説明するための図である。第1の方向性結合器10を通過すると、光aは、第1の導波路20及び第2の導波路30に同じ強度に分岐されるが、第2の導波路30に分岐された光aは、TEモード成分及びTMモード成分の双方が、それぞれ第1の導波路20に分岐された光に対してπ/2ほど位相が遅れる。
【0026】
まず、図5(A)を用いて、光aのTEモード成分が伝播する様子を説明する。本図に示すように、第1の導波路20に分岐された光aのTEモード成分は、モードコンバータ26の下方を通過する際に、TMモードに変換される。このため、光aは強誘電性液晶22の配向方向によらず、強誘電性液晶22の下方を通る際に位相は変化しない。この結果、第1の導波路20に分岐された光aのTEモード成分は、TMモードに変換され、かつ位相が変化しない状態で第2の方向性結合器40に入力される。
【0027】
一方、第2の導波路30に分岐された光aのTEモード成分は、強誘電性液晶32の下方を通る際に位相がさらにπ遅れる。そして、モードコンバータ36の下方を通過する際に、TMモードに変換される。この結果、第2の導波路30に分岐された光aのTEモード成分は、TMモードに変換され、かつ位相が3π/2ほど遅れた状態で第2の方向性結合器40に入力される。
【0028】
そして、第2の方向性結合器40では、第1の導波路20によって伝送された光aが略同じ強度で出力ポート3,4に分岐され、かつ第2の導波路30によって伝送された光aが略同じ強度で出力ポート3,4に分岐される。第1の導波路20から出力ポート4に分岐される光aは、第1の導波路20から出力ポート3に分岐される光aに対してπ/2ほど位相が遅れ、かつ第2の導波路30から出力ポート3に分岐される光aは、第2の導波路30から出力ポート4に分岐される光aに対して位相がπ/2ほど位相が遅れる。
【0029】
この結果、第1の導波路20を経由して出力ポート3に伝達された光aと、第2の導波路30を経由して出力ポート3に伝達された光aとの間には位相差が生じない。このため、出力ポート3からは光aのTMモード成分が出力される。
【0030】
これに対し、第1の導波路20を経由して出力ポート4に伝達された光aと、第2の導波路30を経由して出力ポート4に伝達された光aとの間には位相差πが生じる。このため、出力ポート4からは光aが出力されない。
【0031】
次に、図5(B)を用いて光aのTMモード成分が伝播する様子を説明する。本図に示すように、第1の導波路20に分岐された光aのTMモード成分は、モードコンバータ26の下方を通過する際に、TEモードに変換される。このため、光aは強誘電性液晶22の下方を通る際に位相がπ遅れる。この結果、第1の導波路20に分岐された光aのTMモード成分は、TEモードに変換され、かつ位相がπ遅れた状態で第2の方向性結合器40に入力される。
【0032】
一方、第2の導波路30に分岐された光aのTMモード成分は、強誘電性液晶32の下方を通る際に位相が変化しない。そして、モードコンバータ36の下方を通過する際に、TEモードに変換される。この結果、第2の導波路30に分岐された光aのTMモード成分は、TEモードに変換され、かつ位相がπ/2ほど進んだ状態で第2の方向性結合器40に入力される。
【0033】
そして、第2の方向性結合器40では、第1の導波路20によって伝送された光aが略同じ強度で出力ポート3,4に分岐され、かつ第2の導波路30によって伝送された光aが略同じ強度で出力ポート3,4に分岐される。第1の導波路20から出力ポート4に分岐される光aは、第1の導波路20から出力ポート3に分岐される光aに対してπ/2ほど位相が遅れ、かつ第2の導波路30から出力ポート3に分岐される光aは、第2の導波路30から出力ポート4に分岐される光aに対して位相がπ/2ほど位相が遅れる。
【0034】
この結果、第1の導波路20を経由して出力ポート3に伝達された光aと、第2の導波路30を経由して出力ポート3に伝達された光aとの間には位相差が生じない。このため、出力ポート3からは光aのTEモード成分が出力される。
【0035】
これに対し、第1の導波路20を経由して出力ポート4に伝達された光aと、第2の導波路30を経由して出力ポート4に伝達された光aとの間には位相差πが生じる。このため、出力ポート4からは光aが出力されない。
【0036】
このように、強誘電性液晶22,32が第2の方向に配向していると、光aは、偏波方向によらず、出力ポート3から出力され、出力ポート4からは出力されない。
【0037】
図6の各図は、強誘電性液晶22,32が第1の方向に配向している場合を示している。図6(A)は光aのTEモード成分が伝播する様子を説明するための図であり、図6(B)は光aのTMモード成分が伝播する様子を説明するための図である。第1の方向性結合器10を通過すると、光aは、第1の導波路20及び第2の導波路30に同じ強度に分岐されるが、第2の導波路30に分岐された光aは、TEモード成分及びTMモード成分の双方が、それぞれ第1の導波路20に分岐された光に対してπ/2ほど位相が遅れる。
【0038】
まず、図6(A)を用いて光aのTEモード成分が伝播する様子を説明する。本図に示すように、第1の導波路20に分岐された光aのTEモード成分は、モードコンバータ26の下方を通過する際に、TMモードに変換される。このため、光aは強誘電性液晶22の配向方向によらず、強誘電性液晶22の下方を通る際に位相は変化しない。この結果、第1の導波路20に分岐された光aのTEモード成分は、TMモードに変換され、かつ位相が変化しない状態で第2の方向性結合器40に入力される。
【0039】
また、第2の導波路30に分岐された光aのTEモード成分も、強誘電性液晶32の下方を通る際に位相が変化しない。そして、モードコンバータ36の下方を通過する際に、TMモードに変換される。この結果、第2の導波路30に分岐された光aのTEモード成分は、TMモードに変換され、かつ位相がπ/2ほど遅れた状態で第2の方向性結合器40に入力される。
【0040】
そして、第2の方向性結合器40では、第1の導波路20によって伝送された光aが略同じ強度で出力ポート3,4に分岐され、かつ第2の導波路30によって伝送された光aが略同じ強度で出力ポート3,4に分岐される。第1の導波路20から出力ポート4に分岐される光aは、第1の導波路20から出力ポート3に分岐される光aに対してπ/2ほど位相が遅れ、かつ第2の導波路30から出力ポート3に分岐される光aは、第2の導波路30から出力ポート4に分岐される光aに対して位相がπ/2ほど位相が遅れる。
【0041】
この結果、第1の導波路20を経由して出力ポート3に伝達された光aと、第2の導波路30を経由して出力ポート3に伝達された光aとの間には位相差πが生じる。このため、出力ポート3からは光aが出力されない。
【0042】
これに対し、第1の導波路20を経由して出力ポート4に伝達された光aと、第2の導波路30を経由して出力ポート4に伝達された光aとの間には位相差が生じない。このため、出力ポート4からは光aのTMモード成分が出力される。
【0043】
次に、図6(B)を用いて光aのTMモード成分が伝播する様子を説明する。本図に示すように、第1の導波路20に分岐された光aのTMモード成分は、モードコンバータ26の下方を通過する際に、TEモードに変換されるが、強誘電性液晶22の下方を通る際に位相は変化しない。この結果、第1の導波路20に分岐された光aのTMモード成分は、TEモードに変換され、かつ位相が変化しない状態で第2の方向性結合器40に入力される。
【0044】
一方、第2の導波路30に分岐された光aのTMモード成分は、強誘電性液晶32の下方を通る際に位相が変化しない。そして、モードコンバータ36の下方を通過する際に、TEモードに変換される。この結果、第2の導波路30に分岐された光aのTMモード成分は、TEモードに変換され、かつ位相がπ/2ほど進んだ状態で第2の方向性結合器40に入力される。
【0045】
そして、第2の方向性結合器40では、第1の導波路20によって伝送された光aが略同じ強度で出力ポート3,4に分岐され、かつ第2の導波路30によって伝送された光aが略同じ強度で出力ポート3,4に分岐される。第1の導波路20から出力ポート4に分岐される光aは、第1の導波路20から出力ポート3に分岐される光aに対してπ/2ほど位相が遅れ、かつ第2の導波路30から出力ポート3に分岐される光aは、第2の導波路30から出力ポート4に分岐される光aに対して位相がπ/2ほど位相が遅れる。
【0046】
この結果、第1の導波路20を経由して出力ポート3に伝達された光aと、第2の導波路30を経由して出力ポート3に伝達された光aとの間には位相差πが生じる。このため、出力ポート3からは光aが出力されない。
【0047】
これに対し、第1の導波路20を経由して出力ポート4に伝達された光aと、第2の導波路30を経由して出力ポート4に伝達された光aとの間には位相差πが生じない。このため、出力ポート4からは光aのTEモード成分が出力される。
【0048】
このように、強誘電性液晶22,32が第1の方向に配向していると、光aは、偏波方向によらず、出力ポート4から出力され、出力ポート3からは出力されない。
【0049】
以上、本発明の第1の実施形態によれば、強誘電性液晶22,32の配向方向を制御することにより、入力光の偏波方向によらず、光の出力ポートを切り替えることができる。また、強誘電性液晶22,32の応答時間はネマティック液晶よりも一桁以上速い100μ秒程度である。従って、光スイッチの応答速度は従来と比較して速くなる。
【0050】
また、強誘電性液晶は双安定性(自己保持性)を有しており、印加電圧を切った後にも配向方向が保持される。従って、本実施形態に係る光スイッチの消費電力は低い。
【0051】
また、強誘電性液晶22,32の等価屈折率変化は大きいため、第1の導波路20の第1領域(強誘電性液晶22の下方に位置する領域)及び第2の導波路30の第2領域(強誘電性液晶32の下方に位置する領域)の長さを短くしても、光スイッチの動作に必要な位相変化を得ることができる。従って、光スイッチを小型化することができる。
【0052】
図7、図8、及び図9は、本発明の第2の実施形態に係る光スイッチの製造方法を説明する為の図である。各図において(A)は平面図であり、(B)は(A)のA−A´断面図である。また図8(C)は図8(A)のB−B´断面図である。
【0053】
まず、図7に示すように基板100上に酸化シリコン膜102を形成し、さらに酸化シリコン膜102上に半導体膜104をCVD法により形成する。基板100は、例えばシリコン基板である。半導体膜104は、例えば単結晶シリコン膜であるが、ポリシリコン膜、アモルファスシリコン膜、GaAs系の半導体膜、又はGaInAsP系の半導体膜であっても良い。その後、半導体膜104に不純物を導入し、導電性を持たせる。不純物は、n型の不純物及びp型の不純物のいずれであってもよい。
【0054】
次いで、半導体膜104上にクロム膜200を真空蒸着法により形成し、さらにクロム膜200上にフォトレジスト膜210を塗布する。次いで、フォトレジスト膜210を露光及び現像する。これにより、フォトレジスト膜210には開口パターンが形成される。
【0055】
次いで、フォトレジスト膜210をマスクとしてクロム膜200をエッチングし、クロム膜200に開口パターンを形成する。次いで、クロム膜200をマスクとして半導体膜104をドライエッチングする。これにより、半導体膜104は選択的に除去され、導波路110,120が形成される。導波路110,120は、2箇所で近接しているが、他の部分では離間している。
【0056】
導波路110,120のうち相互に近接している部分は、それぞれ方向性結合器132,134として機能するが、これら方向性結合器132,134は第1の実施形態における方向性結合器10,40に相当する。また、導波路110,120の一方の端部110a,120aは第1の実施形態における入力ポート1,2に相当し、他方の端部110b,120bは第1の実施形態における出力ポート3,4に相当する。また、導波路110,120のうち方向性結合器132,134の相互間に位置する部分は、第1の実施形態における第1の導波路20及び第2の導波路30に相当し、互いの長さは略同じである。
【0057】
なお、半導体膜104は、下部電極として使用されるため、このドライエッチング工程において全面に薄く残される。
【0058】
その後、図8に示すようにクロム膜200を除去する。次いで、導波路110,120それぞれ上を含む全面上に半導体膜を形成する。半導体膜は、例えば単結晶シリコン膜であるが、ポリシリコン膜、アモルファスシリコン膜、GaAs系の半導体膜、又はGaInAsP系の半導体膜であっても良い。次いで、この半導体膜上にマスクパターンを形成し、このマスクパターンをマスクとして半導体膜をエッチングする。これにより、導波路110,120上にはモードコンバータ111,121が形成される。モードコンバータ111,121は、第1の実施形態におけるモードコンバータ26,36に相当する。
その後、マスクパターンを除去する。
【0059】
図8(A)の拡大図、図8(B)のA−A´断面図、及び図8(B)のB−B´断面図に示すように、モードコンバータ111,121は、それぞれ幅が導波路110,120の半分である直方体状の凸部111a,121aを、導波路110,120上に、幅方向及び長手方向それぞれに互い違いに並べたものである。このような構造のモードコンバータの詳細は、例えばW. Huang and Z. M. Mao, "Polarization rotation in periodic loaded rib waveguides", J. Lightwave Technol., Vol. 10, No.12, pp.1825-1831, (1992)に記載されている。
【0060】
次いで、図9に示すように、導波路110,120上、モードコンバータ111,121上、及び半導体膜104上に酸化シリコン膜142を形成し、レジストパターンを用いたドライエッチングにより、導波路110,120上及びモードコンバータ111,121上から酸化シリコン膜142を除去する。
【0061】
次いで、基板100の上方に、上部電極152,154及び配向膜146がこの順に積層された対向基板160を配置する。上部電極152は、第1の実施形態における上部電極24に相当し、導波路110の一部の上方に位置する。また上部電極154は、第1の実施形態における上部電極34に相当し、導波路120の一部の上方に位置する。尚、上部電極152,154は一枚の電極として全面に形成されていても良い。
【0062】
このとき、配向膜146が導波路110,120と向き合うようにする。なお、基板100と対向基板160の間隔は、スペーサー144aによって維持されているが、この間隔は0.2μm以上2.0μm以下であるのが好ましい。また、上部電極152,154は、例えばITO膜である。
【0063】
次いで、基板100と対向基板160の空間に強誘電性液晶144を注入する。強誘電性液晶144は、第1の実施形態における強誘電性液晶22,32に相当する。このようにして光スイッチが形成される。
【0064】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、導波路110,120を、レジストパターンを用いたエッチングにより形成しているため、光スイッチの小型化及び高集積化を容易に行える。また、複数の光スイッチの相互間を接続する導波路の曲率を小さくすることができるため、高集積化に有利となる。
【0065】
また、半導体膜104をエッチングすることにより導波路110,120を形成しているため、導波路110,120を形成する工程を、トランジスタ等の半導体素子を形成する工程の一部に含ませることができる。またこの場合、同一の基板100上に光スイッチと半導体素子を形成することができるため、モノリシックな集積化が可能になる。
【0066】
また、半導体膜104及び導波路110を下部電極として使用しており、かつ導波路110は直接強誘電性液晶144に接している。従って、導波路110と強誘電性液晶144の間に配向膜を配置する場合と比較して、導波路110の等価屈折率変化が大きくなり、光スイッチを高性能にすることができる。
【0067】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば第1の実施形態において、第1及び第2の方向性結合器10,40の代わりに多モード干渉結合器を用いても良い。また、基板100はシリコン基板以外の半導体基板であってもよく、またガラス等他の材質で形成された基板であってもよい。
【0068】
また、第1の導波路20と第2の導波路30の長さは異なっていても良い。ただし、これら2つの導波路の長さの差が前記入力光の波長の整数倍である必要がある。
【0069】
また、第1及び第2の実施形態において、導波路10,20,110,120は導電性を有していなくても良い。この場合、例えば導波路の代わりに基板に電圧を印加すればよい。また光の位相をシフトする手段として、上記した各実施形態では強誘電性液晶22,32,144を用いたが、これらの代わりにLiNbO等の電気光学効果を有する材料を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施形態に係る光スイッチの構成を説明する為の概略図。
【図2】導波路を透過している光のうちTE基本モードの強度分布を示すシミュレーション結果を示すグラフ。
【図3】導波路の等価屈折率の変化Δnが導波路の厚さによってどのように変化するかシミュレーションした結果を示すグラフ。
【図4】位相差πを得るために必要な導波路長が、導波路の厚さによってどのように変化するかを計算したグラフ。
【図5】強誘電性液晶22,32に印加される電圧によって出力ポート3,4から出力される光が切り替わる理由を説明する為の図。
【図6】強誘電性液晶22,32に印加される電圧によって出力ポート3,4から出力される光が切り替わる理由を説明する為の図。
【図7】第2の実施形態に係る光スイッチの製造方法を説明する為の図。
【図8】図7の次の工程を説明する為の図。
【図9】図8の次の工程を説明する為の図。
【符号の説明】
【0071】
1,2…入力ポート、3,4…出力ポート、10,20,110,120…導波路、10,40,132,134…方向性結合器、26,36,111,121…モードコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏波モード成分及び第2の偏波モード成分を有する入力光を、第1の分岐光、及び該第1の分岐光に対して位相が第1の方向に0.5πずれた第2の分岐光に分岐する第1の方向性結合器と、
前記第1の方向性結合器に接続され、前記第1の分岐光を伝達する第1の導波路と、
前記第1の方向性結合器に接続され、前記第1の導波路との長さの差が前記入力光の波長の整数倍であり、前記第2の分岐光を伝達する第2の導波路と、
前記第1の導波路に設けられ、動作時には前記第1の分岐光のうち第1の偏波モード成分の位相を前記第1の方向にπずらし、非動作時には動作時には前記第1の分岐光の位相をずらさない第1の位相シフト手段と、
前記第2の導波路に設けられ、動作時には前記第2の分岐光のうち第1の偏波モード成分の位相を前記第1の方向にπずらし、非動作時には動作時には前記第2の分岐光の位相をずらさない第2の位相シフト手段と、
第1及び第2の出力端子を有しており、前記第1の導波路及び前記第2の導波路から前記第1及び第2の分岐光が入力され、前記第1の分岐光を第3の分岐光及び該第3の分岐光に対して位相が前記第1の方向に0.5πずれた第4の分岐光に分岐するとともに、前記第2の分岐光を第5の分岐光及び該第5の分岐光に対して位相が前記第1の方向に0.5πずれた第6の分岐光に分岐し、かつ前記第3の分岐光と前記第5の分岐光を合成して前記第1の出力端子から出力するとともに、前記第4の分岐光を前記第6の分岐光を合成して前記第2の出力端子から出力する第2の方向性結合器と、
前記第1の導波路に設けられ、前記第1の方向性結合器と前記第1の位相シフト手段の間に位置する第1の偏波モードコンバータと、
前記第2の導波路に設けられ、前記第2の方向性結合器と前記第2の位相シフト手段の間に位置する第2の偏波モードコンバータと、
を具備する光スイッチ。
【請求項2】
前記第1の位相シフト手段は、前記第1の導波路上に形成された第1の強誘電性液晶層と、前記第1の強誘電性液晶層に電圧を印加して該第1の強誘電性液晶層の配向方向を制御する第1の電極と、を具備し、
前記第2の位相シフト手段は、前記第2の導波路上に形成された第2の強誘電性液晶層と、前記第2の強誘電性液晶層に電圧を印加して該第2の強誘電性液晶層の配向方向を制御する第2の電極と、を具備する請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項3】
前記第1の導波路は導電性を有しており、前記第1の電極とともに前記第1の強誘電性液晶の配向方向を制御し、
前記第2の導波路は導電性を有しており、前記第2の電極とともに前記第2の強誘電性液晶の配向方向を制御する請求項2に記載の光スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−241968(P2008−241968A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80774(P2007−80774)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】