説明

光スキャナー及び画像形成装置

【課題】品質良く光反射面が動作する光スキャナーを提供する。
【解決手段】光反射面9aを支持する可動部8と、可動部8に一端が接続され、光反射面9aと平行に延在する可動梁10と、可動梁10の他端に連結された変位部5と、変位部5に固定された永久磁石7と、可動梁10の延長方向に変位部5から隔てて配置され、変位部5を駆動する駆動部11と、変位部5に接続され可動梁10と直交して変位部5を支持する駆動梁6と、駆動梁6が連結された固定部3と、固定部3が固定された基台2と、固定部3を基台2に固定する連結部4と、を備え、固定部3は第1孔部3aを有し、基台2は第2孔部2aを有し、連結部4は第1孔部3aより大きい頭部4aと第1孔部3aを通過する本体部4bとを有し、本体部4bが第1孔部3aを貫通し第2孔部2aに挿入され、本体部4bの他端が基台2と接着剤4cを介して固着され、固定部3は頭部4aと基台2とに挟まれて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スキャナー及び画像形成装置にかかわり、特に、光スキャナーの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター等にて光走査により描画を行うための光スキャナーとして、捩り振動子で構成されアクチュエーターを用いたものが、特許文献1に開示されている。これによると、アクチュエーターは、一対の永久磁石が設けられた絶縁基板と、一対の永久磁石の間に位置するように絶縁基板に支持されたスキャナー本体とを有している。また、スキャナー本体は、枠状の支持部と、支持部の内側に設けられた枠状の外側可動板と、外側可動板の内側に設けられた内側可動板(ミラー)とを有している。また、外側可動板は、X方向に延長する一対の第1トーションバーを介して支持部に連結されており、内側可動板は、X方向と直交するY方向に延長する第2トーションバーを介して外側可動板に連結している。また、外側可動板及び内側可動板には、それぞれコイルが設けられている。
【0003】
このような構成のアクチュエーターでは、通電により各コイルから発生する磁界と一対の永久磁石との間に発生する磁界とを作用させている。これにより、外側可動板が内側可動板とともに第1トーションバーを中心軸として回動し、内側可動板が第2トーションバーを中心軸として回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−181395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トーションバーは支持基板に支持され、支持基板は枠状の側面部材に支持されていた。そして、側面部材は底面部材に固定されていた。トーションバーを支持する側面部材を枠状から複数の柱状にして各側面部材を梁にて連結することにより、支持部材の体積を減らして光スキャナーを小型にすることができる。このとき、複数の側面部材を底面部材に接着剤を用いて固定する方法が用いられる。接着剤が固化する過程において、側面部材と底面部材とが相対的に移動または傾くことがある。そして、各側面部材を連結する梁やミラーを支持する梁に内部応力が形成される。そして、梁のトーションバーとしての動作が設計上の動作と異なってしまう。そこで、梁の内部応力を少なくして、品質良くミラーが動作する光スキャナーが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかる光スキャナーであって、光反射面を有する光反射部材と、前記光反射部材を支持し、かつ回動中心軸まわりに回動可能な可動部と、前記可動部に一端が接続され、前記光反射面と略平行に延在する複数の可動梁と、前記可動梁の他端に連結された変位部と、前記変位部に固定された永久磁石と、前記可動梁の延長方向に前記変位部から隔てて配置され、前記永久磁石と協働して前記変位部を駆動する駆動部と、前記変位部に一端が接続され前記可動梁に略直交するとともに前記光反射面と略平行に延在し、前記変位部を支持する駆動梁と、前記駆動梁の他端が連結された固定部と、前記固定部が固定された基台と、前記固定部を前記基台に固定する連結部と、を備え、前記固定部は貫通する第1孔部を有し、前記基台は第2孔部を有し、前記連結部は前記第1孔部を通過しない大きさの頭部と一端が前記頭部と接続され前記第1孔部を通過する本体部と、を有し、前記本体部が前記第1孔部を貫通し前記第2孔部に挿入され、前記本体部の他端が前記基台と接着剤を介して固着され、前記固定部は前記頭部と前記基台とに挟まれて配置されることを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、基台に固定された固定部には駆動梁が連結され、駆動梁には変位部が接続されている。変位部には永久磁石が固定され、この永久磁石と隔てた場所に駆動部が配置されている。そして、駆動部が永久磁石を駆動することにより、変位部が変位される。変位部に接続して可動梁が設置され、可動梁の一端には可動部が接続されている。可動部は光反射部材を支持している。従って、駆動部が変位部を駆動することにより、光反射部材を回動、振動させることが可能となっている。
【0009】
固定部が有する第1孔部を貫通して連結部の本体部が設置され、本体部は基台が有する第2孔部に挿入されている。そして、本体部と基台とが接着剤を介して固着されている。連結部の頭部と基台とで固定部とを挟んでいることから、連結部により固定部は基台に固定されている。固定部と基台とを接着剤を介して接着するときには、接着剤が乾燥して固化する間に固定部と基台とが相対的に移動するまたは基台に対して固定部が傾く可能性がある。このとき、複数の固定部間の距離が変わる為、固定部間に配置された駆動梁や可動梁に内部応力が発生する。これに比べて、連結部にて固定部を固定するときには接着剤が固化する過程において、複数の固定部間の距離を変えずに固定部を基台に固定することができる。その結果、駆動梁や可動梁の内部応力が少なくできる為、品質良く光反射面が動作できる光スキャナーを提供することができる。
【0010】
[適用例2]
上記適用例にかかる光スキャナーにおいて、前記第2孔部は貫通孔であり、前記本体部は前記第2孔部を貫通し、前記基台の前記固定部が位置する側の反対側に位置する前記本体部と前記基台とに前記接着剤が配置されることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、本体部は第2孔部を貫通している。そして、基台の固定部が位置する側の反対側に位置する本体部が基台と接着されている。従って、接着剤が固定部に付着しないようにすることができる。従って、接着剤が固化するときの影響を受けて固定部が移動することを防止することができる。
【0012】
[適用例3]
上記適用例にかかる光スキャナーにおいて、前記頭部は前記駆動梁と接触しない場所に位置することを特徴とする。
【0013】
本適用例によれば、頭部は駆動梁と接触しない為、頭部が駆動梁に直接作用して応力を発生させることを防止できる。
【0014】
[適用例4]
上記適用例にかかる光スキャナーにおいて、前記固定部と前記基台とが接触する場所では、前記固定部と前記基台との少なくとも一方の面には摩擦係数を高くする表面処理が施されていることを特徴とする。
【0015】
本適用例によれば、固定部と基台との少なくとも一方の面は摩擦係数が高くなるように表面処理が施されている。従って、固定部と基台とは相対的に移動し難くなっている。従って、複数の固定部間の距離が変わらないようにすることができる。
【0016】
[適用例5]
本適用例にかかる画像形成装置であって、光源と、前記光源が射出する光の進行方向を制御する光スキャナーと、を備え、前記光スキャナーは上記に記載の光スキャナーであることを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、画像形成装置は光源と光スキャナーとを備え、光源が射出する光の進行方向を光スキャナーが制御する。これにより、画像形成装置は画像を描画することが可能になっている。そして、光スキャナーは梁に内部応力が少なく、品質良く光反射面を動作することができる。従って、画像形成装置は品質良く動作する光スキャナーを備えた画像形成装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態にかかわる光スキャナーの構成を示す模式平面図。
【図2】光スキャナーの構成を示す模式側断面図。
【図3】光スキャナーの製造方法を示すフローチャート。
【図4】光スキャナーの製造方法を説明するための模式図。
【図5】光スキャナーの製造方法を説明するための模式図。
【図6】光スキャナーの製造方法を説明するための模式図。
【図7】プロジェクターの構成を示す模式斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態では、光スキャナーの特徴的な例について、図1〜図6に従って説明する。以下、実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0020】
(第1の実施形態)
第1の実施形態にかかわる光スキャナーの構造について図1〜図2に従って説明する。図1は、光スキャナーの構成を示す模式平面図である。図2は、光スキャナーの構成を示す模式側断面図である。図2(a)は、図1の光スキャナーのA−A’に沿う断面の断面図であり、図2(b)は、図1の光スキャナーのB−B’ に沿う断面の断面図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、光スキャナー1は四角形の板状の基台2を備え、基台2上の四隅には4つの固定部3が立設されている。そして、基台2と固定部3とは連結部4により連結されている。固定部3には貫通する第1孔部3aが設置され、基台2にも貫通する第2孔部2aが設置されている。連結部4は第1孔部3aを通過しない大きさの頭部4aと一端が頭部4aと接続された柱状の本体部4bとを備えている。そして、本体部4bが第1孔部3aを貫通し第2孔部2aに挿入されている。
【0022】
そして、本体部4bの他端が基台2と接着剤4cを介して固着され、固定部3は頭部4aと基台2とに挟まれて配置されている。基台2において固定部3が立設する面を第1面2bとし、第1面2bと反対側の面を第2面2cとする。第2面2cの固定部3と対向する場所には座ぐり加工が施され凹部2dが形成されている。そして、本体部4bは凹部2d側に突出して配置されている。接着剤4cは凹部2dにおける本体部4bと基台2とに掛けて配置させている。従って、接着剤4cは固定部3に付着しないようになっている。
【0023】
基台2の第1面2bにおいて固定部3と接触する場所には微細な凹凸が形成され摩擦抵抗を大きくする表面処理が施されている。摩擦抵抗を大きくする処理は微細な凹凸が形成されれば良く、特に限定されない。例えば、エッチング液を用いて表面を腐食する方法や、砥石やサンドペーパー等を用いて機械的に凹凸を形成する方法を用いることができる。さらに、スパッタ等により所定の材料を付着させることにより凹凸を形成しても良い。さらに、固定部3において、基台2と接触する面にも微細な凹凸を形成して摩擦抵抗を大きくする処理を施しても良い。摩擦抵抗が大きくする表面処理は基台2と固定部3とのどちらか一方でも良く、両方の部材に処理しても良い。基台2と固定部3とが相対的に移動し難くすることができる。尚、摩擦抵抗が大きくする表面処理を施さなくとも基台2と固定部3とが相対的に移動しないとき表面処理は省略しても良い。表面処理を省略することにより生産性良く光スキャナー1を製造することができる。
【0024】
基台2の材質は剛性があり加工し易い材質であればよく、特に限定されない、例えば、パイレックス(登録商標)、テンパックス等のガラスやシリコンあるいはアルミニウム等の金属を主材料として構成することができる。本実施形態では、例えば、アルミニウムを用いている。固定部3の材質は弾性があり加工し易い材質であればよく、特に限定されない、例えば、金属、ガラス、シリコン等を用いることができる。本実施形態では、例えば、シリコンを用いている。連結部4は基台2や固定部3と同様な材質を用いることができる。本実施形態では、例えば、シリコンを用いている。連結部4と基台2とを固着する接着剤4cは2つの部材を固着可能であれば良く、特に限定されない。連結部4と基台2との材質が異なる場合には加熱や冷却等の温度変化を付与せずに硬化する接着剤が好ましい。接着剤4cは、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル系嫌気性接着剤(紫外線硬化樹脂)、合成ゴム系樹脂、湿気硬化性樹脂、エポキシ系紫外線硬化樹脂を用いることができる。
【0025】
基台2の直交する2辺が延在する方向をX方向とY方向とする。そして、立設する固定部3が延在する方向をZ方向とする。基台2の1つの辺の両端に位置する一対の固定部3の間には変位部5が設置されている。そして、変位部5と固定部3との間は駆動梁6によって連結されている。従って、一対の固定部3の間は、固定部3、駆動梁6、変位部5、駆動梁6、固定部3の順に並んで配置されている。
【0026】
固定部3上に位置する連結部4の頭部4aは駆動梁6と接触しない場所に設置させている。これにより、製造工程中に頭部4aが固定部3を押圧するときにも、頭部4aが駆動梁6を押圧しないようになっている。従って、駆動梁6には内部応力が形成され難くなっている。
【0027】
変位部5には直方体状の永久磁石7が固定されており、永久磁石7はZ方向に延在して配置されている。そして、永久磁石7はZ方向と−Z方向において変位部5から突出して配置されている。変位部5及び永久磁石7は駆動梁6を回転軸として回動可能となっている。駆動梁6の材質は固定部3と同じであり弾性のあるシリコンであり、駆動梁6はトーションバーとして機能する。
【0028】
永久磁石7の材質は、特に限定されず、例えば、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石等の、硬磁性体を着磁したものを好適に用いることができる。
【0029】
4つの固定部3の間のうち基台2の4辺と対応する場所には変位部5及び駆動梁6が設置されている。従って、変位部5は4箇所に設置されている。そして、4箇所の変位部5の中央には板状の可動部8が設置され、可動部8上には光を反射する光反射部材9が支持部材9bを介して固定されている。可動部8は4つの変位部5と可動梁10により接続されている。従って、X方向に位置する一対の変位部5の間は変位部5、可動梁10、可動部8、可動梁10、変位部5の順に並んで配置されている。Y方向に位置する一対の変位部5の間も同様の配置となっている。そして、X方向に延在する可動梁10とY方向に延在する可動梁10とは可動部8を交点として直交している。なお、本実施形態では、光反射部材9は支持部材9bを介して可動部8に固定されているが、光反射部材9は可動部8に直接固定されていても良い。
【0030】
変位部5と可動部8との中程の可動梁10には屈曲部10aが設置されている。屈曲部10aは曲がりやすい構造となっており、可動梁10に曲げ応力が作用するとき可動梁10は屈曲部10aにて曲がるようになっている。
【0031】
光反射部材9は平板状をなし、基台2側と反対の向きを向く面には光反射性を有する光反射面9aが形成されている。光反射面9aは鏡面仕上げが施されているとともに、例えば、金、銀、アルミニウム等の金属を蒸着等により形成された金属膜が設置されている。
【0032】
4箇所に設置された変位部5において光反射部材9と反対側で可動梁10の延長方向には駆動部11が変位部5から隔てて配置されている。駆動部11は電磁石を備え、永久磁石7と協働して変位部5を駆動する。駆動部11は変位部5と同じく4箇所設置され、変位部5と変位部5を駆動する駆動部11とが対になっている。そして、駆動部11は配線により制御部12と接続されている。
【0033】
制御部12は駆動部11に電流信号を出力し、駆動部11は電流信号に応じて変位部5を回動させる。これにより、可動梁10がZ方向もしくは−Z方向に曲げられる。そして、光反射面9aが所定の方向を向くようになっている。制御部12は4つの駆動部11に出力する電流信号を制御することにより、光反射面9aをX方向とY方向とに所望の角度で傾斜させることが可能となっている。言い換えれば、光反射面9aは、X方向を軸とする回動中心軸まわりと、Y方向を軸とする回動中心軸まわりに回動可能となっている。
【0034】
(光スキャナーの製造方法)
次に上述した光スキャナー1の製造方法について図3〜図6にて説明する。図3は、光スキャナーの製造方法を示すフローチャートであり、図4〜図6は光スキャナーの製造方法を説明するための模式図である。
【0035】
図3のフローチャートにおいて、ステップS1は固定部設置工程に相当し、基台上に固定部を設置する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は連結部設置工程に相当し、基台と固定部とを貫通して連結部基板を設置する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は接着工程に相当し、基台と連結部基板の本体部とを接着する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は連結部切断工程に相当し、連結部基板の不要な部分を切断して除去する工程である。次にステップS5に移行する。ステップS5は駆動部設置工程に相当し、電磁石等からなる駆動部を設置する工程である。以上の製造工程にて光スキャナーが完成する。
【0036】
次に、図4〜図6を用いて、図3に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。図4(a)はステップS1の固定部設置工程に対応する図である。図4(a)に示すように、基台2と固定部3とを用意する。基台2には第2孔部2aと凹部2dとが形成されている。第2孔部2aはドリルやレーザー光を用いて穴あけし、凹部2dは切削加工することにより形成することができる。
【0037】
固定部3には駆動梁6、変位部5、可動梁10、屈曲部10a、可動部8が形成されている。固定部3と固定部3に接続して形成されている部材は公知であるフォトリソグラフィ及びエッチング等の方法を用いて形成することが可能であり、詳細な説明を省略する。概略の説明としては、まず、固定部3の材料となる基板にマスクとなる材料を塗布し固化させて膜を形成する。次に、所定の形状に露光した後にエッチングしてマスクを形成する。次に、基板をエッチングすることにより所定の形状に形成した後、マスクを除去する。以上のように、パターニングとエッチングを繰り返して固定部3と固定部3に接続して形成されている部材を形成する。固定部3には第1孔部3aを形成しておく。そして、可動部8には光反射部材9が接着され、変位部5には永久磁石7が接着され固定されている。
【0038】
図示しない作業台上に第2面2cを下にして設置し、第1面2b上に固定部3を設置する。このとき、第2孔部2aと第1孔部3aとが重なるように固定部3を配置する。
【0039】
図4(b)及び図4(c)はステップS2の連結部設置工程に対応する図である。図4(b)及び図4(c)に示すように、連結部基板13を用意する。連結部基板13は4個の連結部4が接続梁13aにて連結された形状となっている。連結部基板13は固定部3と同様に公知であるフォトリソグラフィ及びエッチング等の方法を用いて形成することが可能であり、製造方法の説明を省略する。
【0040】
次に、連結部4の本体部4bを第1孔部3a及び第2孔部2aに挿入する。そして、本体部4bに第1孔部3a及び第2孔部2aを貫通させて本体部4bの先端を凹部2dから突出させる。尚、本体部4bの先端には面取りを形成しておいても良い。本体部4bを第1孔部3a及び第2孔部2aに挿入しやすくすることができる。連結部4の頭部4aは第1孔部3aを通過できない大きさに形成されているため、頭部4aは固定部3の上に載っている状態となる。
【0041】
図5(a)はステップS3の接着工程に対応する図である。図5(a)に示すように、固定部3及び連結部基板13を重ねて載置されている基台2を載置台14に搭載する。このとき、基台2の凹部2dが露出するように載置する。そして、固定部3上に押さえ板15を設置する。押さえ板15にはバネ15aが設置され、押さえ板15は連結部基板13を加勢する。これにより、連結部基板13は固定部3に密着させることができる。
【0042】
次に、シリンジ16を用いて基台2の凹部2dと本体部4bとが接合する場所に接着剤4cを塗布する。作業者はシリンジ16を移動させて、本体部4bの周囲に接着剤4cを塗布する。連結部4は4箇所に設置されており、総ての連結部4に接着剤4cを塗布する。接着剤4cの塗布はロボットや塗布装置を用いて位置精度良く塗布するのが好ましい。次に、所定の時間放置し接着剤4cを固化させる。接着剤4cの固化は常温にて温度変化のない環境にて行うのが好ましい。固化する間に温度が変化するとき、固定部3と連結部4との温度係数が異なるときには、固定部3と連結部4との伸縮の差により隙間ができてしまうため、固定部3が基台2に固定されない可能性がある。
【0043】
接着剤4cが光硬化性のときには紫外線等の光を照射して固化してもよい。接着剤4cが湿気硬化性の特性を有するときには加湿して固化を促進してもよい。短時間に固化できることから生産性良く固化させることができる。
【0044】
図5(b)及び図6(a)はステップS4の連結部切断工程に対応する図である。図5(b)に示すように、レーザースクライブ装置17からレーザー光18を連結部基板13に照射する。レーザー光18が照射された場所では連結部基板13内部に改質領域が形成される。例えば、特開2002−192371号公報に開示されているように、パルス幅が1μs以下のレーザー光を射出し、集光レンズで基板内部に集光し、集光部におけるピークパワー密度を1×108(W/cm)以上にする。これにより、連結部基板13の内部に多光子吸収による改質領域を形成することができる。
【0045】
レーザースクライブ装置17は形成する予定の連結部4の輪郭に沿ってレーザー光18を連結部基板13に照射する。これにより改質領域は脆くなるので小さな応力で容易に分断することができる。その結果、頭部4aから接続梁13aが除去され、図6(a)に示すように、連結部4は頭部4aと本体部4bとが残される。
【0046】
図6(b)はステップS5の駆動部設置工程に対応する図である。図6(b)に示すように、4個の永久磁石7と対向する場所に駆動部11を図示しない支持部材を介して設置する。以上の工程により光スキャナー1を製造する工程を終了する。
【0047】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、固定部3が有する第1孔部3aを貫通して本体部4bが設置され、本体部4bは基台2が有する第2孔部2aに挿入されている。そして、本体部4bと基台2とが接着剤4cを介して固着されている。連結部4の頭部4aと基台2とで固定部3とを挟んでいることから、連結部4により固定部3は基台2に固定されている。固定部3と基台2とを接着剤4cを介して接着するときには、接着剤4cが乾燥して固化する間に固定部3と基台2とが相対的に移動する、または、基台2に対して固定部3が傾く可能性がある。このとき、複数の固定部3の間の距離が変わる為、固定部3の間に配置された駆動梁6や可動梁10に内部応力が発生する。これに比べて、連結部4にて固定部3を固定するときには接着剤4cが固化する過程において、複数の固定部3の間の距離を変えずに固定部3を基台2に固定することができる。その結果、駆動梁6や可動梁10の内部応力が少なくなる為、品質良く光反射面9aが動作する光スキャナー1を提供することができる。
【0048】
(2)本実施形態によれば、連結部4の本体部4bは第2孔部2aを貫通し突出している。そして、基台2の固定部3が位置する側と反対側に位置する本体部4bと基台2とが接着されている。従って、接着剤4cが固定部3に付着しないようにすることができる。従って、接着剤4cが固化するときの影響を受けて固定部3が移動することを防止することができる。
(3)本実施形態によれば、連結部4の頭部4aは駆動梁6と接触しないように配置されている。従って、頭部4aが駆動梁6に直接作用して応力を発生させることを防止できる。
(4)本実施形態によれば、固定部3と基台2との少なくとも一方の面は摩擦係数が高くなるように表面処理が施されている。従って、固定部3と基台2とは相対的に移動し難くなっている。従って、複数の固定部3の間の距離を変わり難くすることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態のプロジェクターについて、図7のプロジェクターの構成を示す模式斜視図を用いて説明する。プロジェクターは、第1の実施形態の光スキャナーを備えている。また、かかる光スキャナーは、第1の実施形態の構成と同様な構成を備えている。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0050】
上記に説明した光スキャナー1は、例えば、プロジェクター、レーザープリンター、イメージング用ディスプレイ、バーコードリーダー、走査型共焦点顕微鏡等の画像形成装置に好適に適用することができる。本実施形態では画像形成装置の一例としてプロジェクターに光スキャナー1を適用する場合について説明する。
【0051】
図7に示すように、画像形成装置としてのプロジェクター21は、赤色の光線を射出する赤色光源装置22と、青色の光線を射出する青色光源装置23と、緑色の光線を射出する緑色光源装置24とからなる光源としての光源装置25を備えている。
【0052】
赤色光源装置22、青色光源装置23、緑色光源装置24が射出する光線の光軸上にはそれぞれダイクロイックミラー26が設置され、各ダイクロイックミラー26に光線が照射される。ダイクロイックミラー26に照射された各色の光線は同じ光路を通って光スキャナー1の光反射面9aを照射する。そして、各色の光線は光反射面9aにて反射して固定ミラー27を照射する。さらに、固定ミラー27にて反射する各色の光線は光スキャナー1から外に出て、スクリーン28を照射する。
【0053】
プロジェクター21は制御装置29を備え、制御装置29はインターフェイスを備えている。そして、制御装置29は外部から映像信号を入力し、映像信号に応じて光源装置25の出力と光反射面9aの角度を制御する。これにより、制御装置29は各色の光線の光強度と光線がスクリーン28を照射する光の軌跡30を制御する。従って、プロジェクター21は入力した映像信号に対応した画像をスクリーン28に描画することが可能となっている。
【0054】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、プロジェクター21は光スキャナー1を備えている。光スキャナー1は駆動梁6及び可動梁10に内部応力が少なく、品質良く光反射面9aを動作することができる。従って、プロジェクター21は品質良く動作する光スキャナー1を備えたプロジェクター21とすることができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。そして、上記課題の少なくとも一部を解決できる範囲での変形、改良等は上記の実施形態に含まれるものである。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0056】
(変形例1)
前記第1の実施形態では、4箇所の固定部3の総てにおいて連結部4を用いて基台2に固定した。固定部3を基台2に固定する場所は4箇所に限らない、2箇所でも良く、3箇所でも良い。いずれの場合においても、光反射部材9が安定して駆動できれば良い。固定部3を基台2に固定する場所の数が少ない方が生産性良く光スキャナー1を製造することができる。
【0057】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、連結部4の本体部4b、第1孔部3a及び第2孔部2aは円柱状であったが、これに限らず、角柱状でも良く楕円の円柱状でも良い。頭部4aは四角形であったが、多角形でも良く、円や楕円形でも良い。製造し易い形状を採用しても良い。製造し易くすることにより、生産性良く光スキャナー1を製造することができる。
【0058】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、固定部3は4箇所に設置された。固定部3の個数は4個に限らない、2つでも良く3つでも良い。いずれの場合においても、光反射部材9が安定して駆動できれば良い。固定部3の数が少ない方が生産性良く光スキャナー1を製造することができる。
【0059】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、基台2に凹部2dを形成し、凹部2dから突出するように連結部4の本体部4bを設置した。基台2に凹部2dを形成せずに、凹部2dから連結部4の本体部4bが突出しないように設置しても良い。そして、この状態にて基台2と本体部4bとを接着しても良い。凹部2dの加工を省略することにより生産性良く光スキャナー1を製造することができる。
【0060】
(変形例5)
前記第1の実施形態では、第2孔部2aは貫通孔としたが、盲孔でも良い。そして、孔の中で基台2と本体部4bとを接着しても良い。連結部4が第2面2c側から応力を受けて、連結部4の本体部4bが基台2から抜けることを防止することができる。
【0061】
(変形例6)
前記第1の実施形態では、連結部4を用いて基台2に固定部3を固定した。図2(b)において固定部3の図中駆動梁6より上側と下側とを分離して形成しても良い。そして、固定部3の駆動梁6より下側を基台2と一体となるように形成しても良い。そして、固定部3の駆動梁6より上側と固定部3の駆動梁6より下側とを連結部4を用いて接合しても良い。このときにも、固定部3の駆動梁6より上側と固定部3の駆動梁6より下側とが傾かないように固定部3の駆動梁6より上側を固定部3の駆動梁6より下側に固定することができる。従って、駆動梁6や可動梁10の内部応力を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…光スキャナー、2…基台、2a…第2孔部、3…固定部、3a…第1孔部、4…連結部、4a…頭部、4b…本体部、4c…接着剤、5…変位部、6…駆動梁、7…永久磁石、8…可動部、9…光反射部材、9a…光反射面、10…可動梁、25…光源としての光源装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射面を有する光反射部材と、
前記光反射部材を支持し、かつ回動中心軸まわりに回動可能な可動部と、
前記可動部に一端が接続され、前記光反射面と略平行に延在する複数の可動梁と、
前記可動梁の他端に連結された変位部と、
前記変位部に固定された永久磁石と、
前記可動梁の延長方向に前記変位部から隔てて配置され、前記永久磁石と協働して前記変位部を駆動する駆動部と、
前記変位部に一端が接続され前記可動梁に略直交するとともに前記光反射面と略平行に延在し、前記変位部を支持する駆動梁と、
前記駆動梁の他端が連結された固定部と、
前記固定部が固定された基台と、
前記固定部を前記基台に固定する連結部と、を備え、
前記固定部は貫通する第1孔部を有し、前記基台は第2孔部を有し、前記連結部は前記第1孔部を通過しない大きさの頭部と一端が前記頭部と接続され前記第1孔部を通過する本体部と、を有し、前記本体部が前記第1孔部を貫通し前記第2孔部に挿入され、前記本体部の他端が前記基台と接着剤を介して固着され、前記固定部は前記頭部と前記基台とに挟まれて配置されることを特徴とする光スキャナー。
【請求項2】
請求項1に記載の光スキャナーであって、
前記第2孔部は貫通孔であり、前記本体部は前記第2孔部を貫通し、前記基台の前記固定部が位置する側の反対側に位置する前記本体部と前記基台とに前記接着剤が配置されることを特徴とする光スキャナー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光スキャナーであって、
前記頭部は前記駆動梁と接触しない場所に位置することを特徴とする光スキャナー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光スキャナーであって、前記固定部と前記基台とが接触する場所では、前記固定部と前記基台との少なくとも一方の面には摩擦係数を高くする表面処理が施されていることを特徴とする光スキャナー。
【請求項5】
光源と、前記光源が射出する光の進行方向を制御する光スキャナーと、を備え、
前記光スキャナーは請求項1〜4のいずれか一項に記載の光スキャナーであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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