説明

光ディスクプレーヤ、光ディスクプレーヤの制御方法及び制御プログラム

【課題】信号の読み取り精度が劣化するような場合に、モータへの印加電圧を低減することにより、モータの接点部等の劣化を抑制し、モータ寿命の延命を図る光ディスクプレーヤ及びその制御方法並びに制御プログラムを提供する。
【解決手段】ディスク1を回転させるモータ2と、モータ2へ電圧を印加する制御信号出力部8と、回転するディスク1に記録された信号を検出する光ピックアップ3と、光ピックアップ3によって検出された信号を処理する読取信号処理部6と、を有する。制御信号出力部8による印加電圧の最大値を、ディスク1の読み取り精度が低下する動作中に、ディスク1の再生中よりも低くする回転制御部7を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクを再生するための光ディスクプレーヤに係り、特に、モータへの電圧の印加に改良を施した光ディスクプレーヤ及びその制御方法並びに制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクプレーヤにおいては、スピンドルモータによってディスクを回転させながら、光ピックアップによってディスクの目標位置へアクセスし、ディスクに記録された信号を読み取っている。
【0003】
ところで、スピンドルモータとして、例えば、ブラシモータを用いると、アクセス時(例えば、トラックダウン/アップ、FF/REWなど)に、ディスク信号の読み取り精度が、著しく劣化する場合がある。
【0004】
ディスク信号は、モータの回転サーボ制御の基準となる信号である。このため、読み取り精度が劣化すると、モータへの印加電圧が著しく変動する場合がある。例えば、正方向(逆方向)から一気に逆方向(正方向)となる電圧が、モータに不定期に印加される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−158260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ブラシモータにおいて、印加電圧が正方向(逆方向)から逆方向(正方向)に一気に変動すると、モータ自身の逆起電力による発生電流と、印加電圧による電流により、必要以上の電流が発生する。すると、ブラシモータに特有の回路接点部(ブラシ、コミテーター)の放電によって、劣化を促進することになる。
【0007】
一方、スピンドルモータへの印加電圧は、モータの最大定格値に近い電圧が、最大値として設定されている場合がある。これは、ディスク再生中の外乱等による急激な変動や、ディスク回転加速及び停止動作を短時間で終了させるためである。このように印加電圧の最大値が大きく設定されていると、上述のように印加電圧が変動する条件下では、回路接点部に対する負荷が大きくなる。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、信号の読み取り精度が低い場合に、モータへの印加電圧を低く抑えることにより、モータの接点部等の劣化を抑制し、モータ寿命の延命を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、光ディスクを回転させるモータと、前記モータへ電圧を印加する制御信号出力部と、回転する光ディスクに記録された信号を読み取る信号読取部と、を有する光ディスクプレーヤにおいて、前記制御信号出力部による印加電圧の最大値を、信号の読み取り精度が低下する動作中に、光ディスクの再生中よりも低くする回転制御部を有することを特徴とする。なお、かかる本発明は、方法及びコンピュータプログラムの観点からも捉えることができる。
【0010】
本発明の他の態様は、前記回転制御部は、信号の読み取り精度が低下する動作中の印加電圧の最大値を記憶する記憶部と、前記光ディスクへのアクセス動作中に、前記記憶部に記憶された最大値を選択する選択部と、を有することを特徴とする。
【0011】
以上のような発明では、光ディスクの読み取り精度が低いために、モータの回転サーボの精度が低くなるような場合であっても、印加電圧を低くするため、必要以上の電流が発生することなく、モータの接点部等の劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
以上のような本発明によれば、信号の読み取り精度が劣化するような場合に、モータへの印加電圧を低減することにより、モータの接点部等の劣化を抑制し、モータ寿命の延命を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の光ディスクプレーヤの一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】図1の実施形態におけるディスクの再生処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下には、本発明を適用した一実施形態(本実施形態)について、図面を参照して具体的に説明する。なお、本実施形態は、コンピュータ及びその周辺回路を、以下の各部の機能を実現するためのプログラムに従って動作させることにより、モータ等を制御するものである。この場合のハードウェアやプログラムの実現態様は各種変更可能である。従って、以下の説明では、各機能を実現する仮想的回路ブロックを用いる。また、本実施形態に示す制御方法及びこれをコンピュータにより実現するためのプログラム、これを記録した記録媒体も、本発明の一態様である。
【0015】
[構成]
まず、本実施形態の構成を説明する。本実施形態は、図1に示すように、モータ2、光ピックアップ3、ディスクプレーヤ制御部4、ディスク動作制御部5等を有している。
【0016】
モータ2は、ディスク1を回転させる駆動源である(スピンドルモータ)。なお、ディスク1を回転させる機構の構成は、特定のものには限定されない。例えば、ディスク1が装着若しくは載置されたターンテーブルを、モータ2が回転させることにより、ディスク1を回転させることができる。
【0017】
光ピックアップ3は、ディスク1の信号を光学的に検出する検出部である。光ピックアップ3は、例えば、対物レンズ、アクチュエータ、レーザ光源、光学素子部、光検出器等を有している(図示せず)。また、光ピックアップ3は、送り機構(図示せず)によって、ディスク1の半径方向に移動可能に設けられている。さらに、駆動電圧によって対物レンズをトラッキング方向及びフォーカス方向の2方向に駆動するアクチュエータ等が設けられている。
【0018】
ディスクプレーヤ制御部4は、光ディスクプレーヤ全体を制御する処理部である。このディスクプレーヤ制御部4は、通常の光ディスクプレーヤが備える基本的な動作の制御処理を行うことができる。例えば、光ピックアップ3のサーボ、光ピックアップ3が検出した信号の再生及びこれに関連する処理等を行うことができる。このような機能は、公知のあらゆる技術を適用可能であるため説明を省略し、以下では、ディスク1の回転制御を行うための機能について説明する。
【0019】
また、ディスクプレーヤ制御部4には、図示はしないが、入力部及び出力部が接続されている。入力部は、例えば、再生、停止、FF/RW、トラックアップ/ダウン、イジェクト等、光ディスクプレーヤの操作を指示入力することができる。出力部は、光ピックアップ3が読み取った信号に基づいて、音声及び映像を出力させることができる。
【0020】
ディスク動作制御部5は、モータ2の回転を制御する処理部である。このディスク動作制御部5は、読取信号処理部6、回転制御部7、制御信号出力部8等を有している。
【0021】
読取信号処理部6は、光ピックアップ3が検出した信号を、光ディスクプレーヤにおいて処理可能な信号とする処理部である。例えば、RF信号・FE信号等の増幅・調整、復調、誤り訂正、A/D変換等が考えられる。
【0022】
回転制御部7は、読取信号処理部6が処理した信号に基づいて、モータ2の回転を制御する処理部である。この回転制御部7は、記憶部71、選択部72、生成部73、サーボ制御部74等を有している。
【0023】
記憶部71は、モータ2への印加電圧の最大値を記憶する記憶部である。この印加電圧は、例えば、初期加速動作時(1)、サーボONまでの加速動作時(2)、再生動作時(3)、アクセス動作時(4)、停止動作時(5)に区別して設定されている。ここで、例えば、(1)、(2)、(3)、(5)は、最大値が高く設定されている。
【0024】
これらの最大値を高く設定する理由は、次の通りである。
(1)初期加速動作を速やかに実施するため
(2)サーボONまでの加速動作を速やかに終了させるため
(3)再生中の急激な外乱(振動等)に対応するため
(5)ディスク停止動作を速やかに実施するため
なお、これらの印加電圧(1)、(2)、(3)、(5)については、同じ値であるか、異なる値であるかは特定しない。
【0025】
そして、(4)は、最大値が低く設定されている。これは、アクセス動作中の回転サーボは、ラフな制御状態である(信号の読み取り精度が低いために、精度の低いサーボとなる)ので、印加電圧を低く抑える必要があるためである。ここで、(1)、(2)、(3)、(5)の設定値をa、(4)の設定値をbとすると、a>bの関係にあるものとする。なお、最大値を低くするといっても、動作に支障が出ない範囲で設定する必要がある。
【0026】
選択部72は、ディスクプレーヤ制御部4からの指示に従って、印加電圧の最大値を選択する処理部である。生成部73は、選択部72により選択された最大値に従って、回転制御信号を生成する処理部である。サーボ制御部74は、読み取り信号に基づいて、モータ2の回転サーボ制御を行う処理部である。
【0027】
さらに、制御信号出力部8は、回転制御信号を適切な信号レベルに変換して、モータ2に制御電圧を印加する処理部である。この印加電圧は、上記のように設定された最大値を超えることはない。
【0028】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、図2のフローチャートを参照して説明する。まず、光ディスクプレーヤに挿入されたディスク1は、モータ2により回転可能な状態となる。回転制御部7における選択部72は、モータ2への印加電圧の最大値として、初期加速動作時の設定(1)を選択する(ステップ201)。生成部73は、設定(1)に従って、初期加速動作時の回転制御信号を生成する。これに従って、制御信号出力部8がモータ2へ電圧を印加することにより、初期加速動作が実行される(ステップ202)。
【0029】
次に、選択部72は、印加電圧の最大値として、サーボONまでの加速動作時設定(2)を選択する(ステップ203)。生成部73は、設定(2)に従って、当該加速動作時の回転制御信号を生成する。これに従って、制御信号出力部8がモータ2へ電圧を印加することにより、加速動作が実行される(ステップ204)。
【0030】
ディスクプレーヤ制御部4が、加速された回転数に基づくサーボONを検出すると(ステップ205のYES)、サーボ制御部74が回転サーボを実行する(ステップ206)。選択部72は、印加電圧の最大値として、再生動作時の設定(3)を選択する(ステップ207)。ここで、ディスクプレーヤ制御部4から、TOCエリア検出などのアクセス要求があった場合(ステップ208のYES)、選択部72は、印加電圧の最大値として、アクセス動作時の設定(4)を選択する(ステップ209)。
【0031】
アクセス要求を受けて、光ピックアップ3は、アクセス動作を開始する(ステップ210)。このアクセス動作が終了するまでは、おおよそのディスク信号しか読み取ることができない(読み取り精度が低い)。このため、サーボ制御部74による回転サーボは、ラフな制御状態となる(精度が低くなる)。
【0032】
ディスクプレーヤ制御部4が、光ピックアップ3のアクセス動作の終了を出力すると(ステップ211のYES)、選択部72は、印加電圧の最大値として、ディスク再生動作時の設定(3)を選択する(ステップ212)。そして、ディスクプレーヤ制御部4は、光ピックアップ3がアクセス要求のあった位置にあるかどうかを確認する(ステップ213)。
【0033】
アクセス要求された位置であった場合には(ステップ214のYES)、ディスクプレーヤ制御部4は、再生位置に到達したものとして、ディスク再生動作を指示する。すると、ディスク1の再生動作が行われる(ステップ215)。アクセス要求された位置でなかった場合には(ステップ214のNO)、ステップ210以降の処理を繰り返す。
【0034】
その後、入力部からの入力により、トラックダウン/アップ、FF/REWなどの要求があった場合には、アクセス要求が有ったとして(ステップ216のYES)、ステップ209以降の処理を行う。
【0035】
さらに、入力部からの入力、再生端への到達等により、停止要求があった場合には(ステップ217)、選択部72は、印加電圧の最大値を、停止動作時の設定(5)を選択する(ステップ218)。そして、ディスクプレーヤ制御部4からの停止要求に基づいて、制御信号出力部8は、モータ2を停止させる(ステップ219)。これにより、ディスク1の再生が終了する。
【0036】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、アクセス動作中のように、信号の読取り精度が低くなる場合であっても、モータへの印加電圧の変動幅が小さくなり、モータ内の回路の電流値が低減される。このため、モータの接点部(ブラシ、コミテーター)等の劣化を抑制することができる。これにより、光ディスクプレーヤの製品寿命を延ばすことができる。
【0037】
また、読み取り精度が低く、サーボに高い精度が得られない状況でも、電圧供給を止めるわけではない。もし、電圧供給を止めてしまうと、正常な回転制御に戻るには、信号の読み込み等を初めから行わなければならない。しかし、本実施形態では、動作に支障が出ない範囲で電圧供給を継続するので、アクセス動作完了後には、通常の再生状態に素早く復帰することができる。
【0038】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではない。印加電圧の最大値の設定の態様は、上記で例示したものには限定されない。例えば、上記の(1)(2)(3)(5)の設定を共通とすることもできる。また、電圧値についても、特定の値には限定されない。なお、信号の読み取り精度が低下する動作中とは、サーボの精度を低下させる状況を広く含む概念(アクセス動作時も含む)であり、サーボ制御部が、いわゆるラフサーボに積極的に切り換えるような場合も含まれる。
【0039】
また、モータや光ピックアップ、その他の機構については、上記に例示したものには限定されない。本発明で使用するモータは、例えば、ブラシモータの場合が有効であるが、現在又は将来において利用可能なあらゆるモータが使用可能である。光ピックアップ及びその駆動機構も、現在又は将来において利用可能なあらゆるものが適用可能である。
【0040】
また、ディスク動作制御部やディスクプレーヤ制御部については、ハードウェアの構成態様は、上記に例示した各機能を実現するいわゆるチップとその周辺回路によって実現したり、複数の機能を集約したシステムLSIやASICによって実現する等、種々考えられるものであり、特定の態様には限定されない。
【0041】
さらに、本発明の対象となる光ディスクは、各種CD、DVD、BD等(規格を問わない)には限定されず、あらゆるタイプの光学式記録媒体に適用できる。光ディスクプレーヤは、再生専用のものであっても、記録再生可能なものであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…ディスク
2…モータ
3…光ピックアップ
4…ディスクプレーヤ制御部
5…ディスク動作制御部
6…読取信号処理部
7…回転制御部
8…制御信号出力部
71…記憶部
72…選択部
73…生成部
74…サーボ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクを回転させるモータと、前記モータへ電圧を印加する制御信号出力部と、回転する光ディスクに記録された信号を読み取る信号読取部と、を有する光ディスクプレーヤにおいて、
前記制御信号出力部による印加電圧の最大値を、信号の読み取り精度が低下する動作中において、光ディスクの再生中よりも低くする回転制御部を有することを特徴とする光ディスクプレーヤ。
【請求項2】
前記回転制御部は、
信号の読み取り精度が低下する動作中の印加電圧の最大値を記憶する記憶部と、
前記光ディスクへのアクセス動作中に、前記記憶部に記憶された最大値を選択する選択部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の光ディスクプレーヤ。
【請求項3】
光ディスクを回転させるモータと、前記モータへ電圧を印加する制御信号出力部と、回転する光ディスクに記録された信号を読み取る信号読取部と、を有する光ディスクプレーヤの制御方法において、
回転制御部が、制御信号出力部による印加電圧の最大値を、信号の読み取り精度が低下する動作中において、光ディスクの再生中よりも低くすることを特徴とする光ディスクプレーヤの制御方法。
【請求項4】
コンピュータに、モータへ電圧を印加することにより光ディスクを回転させ、回転する光ディスクに記録された信号を読み取らせる光ディスクプレーヤの制御プログラム方法において、
前記コンピュータに、
モータへの印加電圧の最大値を、信号の読み取り精度が低下する動作中において、光ディスクの再生中よりも低くさせることを特徴とする光ディスクプレーヤの制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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