説明

光ディスク装置におけるトラッキング特性調整装置

【課題】光ディスク装置においてトラッキング用アクチュエータの特性を精度良く計測し、最適なトラックジャンプ用駆動電流を設定する。
【解決手段】光ディスクの回転角度が所定回転位相になる度に、トラッキングサーボをOFF状態にして、内周側と外周側へのトラックジャンプ用駆動電流を交互にトラッキング用アクチュエータに印加する。各トラックジャンプ中のトラッキングエラー信号を所定の2時点t1,t2で検出し、各信号レベルの差の絶対値|ΔEi(N)|,|ΔEo(N)|を記憶させる。それらは各トラックジャンプ時の光ビームスポットの移動速度に対応し、平均値|ΔEav|はトラッキング用アクチュエータのゲインGtrに対応する。ゲインGtrに応じてトラックジャンプ用駆動電流の波形を設定すれば、トラッキング用アクチュエータの特性にバラツキがあってもトラッキング特性を高精度に調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置におけるトラッキング特性調整装置に係り、トラッキング用アクチュエータの特性のバラツキを調整して安定したトラッキング動作を実現するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置では、光ピックアップに対物レンズとマグネット等からなる可動体を弾性的に支持しておき、トラッキング用コイルと前記マグネットの関係によって磁気的に駆動することによりトラッキング制御を行っている。しかし、その駆動部(トラッキング用アクチュエータ)はサスペンション等の機構要素を含むため、如何に精度管理を行っても各部品のバラツキや組み立て誤差等によって駆動電力に対する変位の割合(ゲイン)にバラツキが生じる。
【0003】
そして、アクチュエータのゲインが異なると制御系のゲイン交点が設計値と異なってしまい、位相余裕やゲイン余裕が最適値からずれてしまうために、(1)本来のトラッキング性能が得られない、(2)トラックジャンプ時にオーバーシュートしてしまう、(3)所定時間内にシークできない、(4)動作が不安定化する等の不具合が生じやすくなる。
【0004】
この問題に対して、下記特許文献1では、トラッキング用アクチュエータに対する駆動電力供給回路に補償器を設けておき、調整モードで自動的に求めた最適ゲインを補償器で適用できるようにした光ディスク装置のトラッキング制御装置を提案している。
【特許文献1】特開平5−258330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1の提案によると、調整モードではトラッキング制御ループがオフとされ、光ディスクの2回転に同期させて駆動指令器からトラッキング用アクチュエータを加速/減速させるための指令信号を出力させ、その指令信号による駆動状態でトラッキングエラー信号の変動幅や光スポットのトラックに対する相対速度を求め、それらの値に基づいて制御系の最適ゲインを求めるようにしている。しかし、調整モードの全期間中でトラッキング制御ループがオフになっていると、偏心によるトラッククロスが多発する可能性があり、前記の変動幅や相対速度を計測し難くなると共に、計測できてもその精度が低くなる。尚、トラッキング用アクチュエータのゲインは光ピックアップを光ディスク装置に実装する前に所定の駆動パワーに対して可動部がどの程度変位するかを計測すれば求めることができるが、サスペンションにより支持された可動部を微小変位範囲で精度良く計測することは困難であり、実装前に計測プロセスが挿入されると工数が増えてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、光ディスク装置において、トラッキング制御ループを生かしたままでトラッキング用アクチュエータの特性を精度良く計測し、最適なトラックジャンプ用駆動電流を合理的に設定することができるトラッキング特性調整装置を提供することを目的として創作された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光ディスク装置において、光ディスクが1回転毎又は複数回転毎に所定回転位相となるタイミングを検出するタイミング検出手段と、前記タイミング検出手段が前記タイミングを検出する度に、トラッキングサーボをオフに切り換えた状態で、光ビームスポットを前記光ディスクの内周側へトラックジャンプさせるための所定波形の駆動電流又は外周側へトラックジャンプさせるための所定波形の駆動電流をトラッキング用アクチュエータに印加し、且つ前記各駆動電流の印加回数がほぼ同数となるように設定した検査駆動手段と、前記検査駆動手段によって実行される各トラックジャンプ期間中のトラッキングエラー信号について、所定の2時点における各信号レベルの差分データを求める信号計測手段と、前記信号計測手段が求めた各差分データを用いて前記トラッキング用アクチュエータの特性定数を求める演算手段と、前記演算手段が求めた前記特性定数に基づいて、通常動作時に前記トラッキング用アクチュエータへ印加させるべきトラックジャンプ用駆動電流の波形を設定する駆動電流設定手段とを備え、前記光ディスク装置の初期設定時又は初期起動時に前記各手段が作動して前記トラックジャンプ用駆動電流の設定を行うことを特徴とする光ディスク装置におけるトラッキング特性調整装置に係る。
【0008】
本発明は、光ディスク装置の初期設定時又は初期起動時にトラッキング特性を調整する装置を提案する。検査駆動手段はトラッキング用アクチュエータに内周側と外周側へのトラックジャンプ動作を所定の回転毎に実行させ、信号計測手段でそれぞれのトラックジャンプ期間におけるトラッキングエラー信号について所定の2時点での信号レベルの差分データを求める。その場合、各回のトラックジャンプはタイミング検出手段のタイミング検出によって常に光ディスクの同一回転位相から開始されるが、内周側へのトラックジャンプと外周側へのトラックジャンプとはほぼ同数となるジャンプ回数の組合せで行うことが望ましく、1回ずつ交互に行うのが理想的である。また、本発明では、従来のように調整モードの全期間中でトラッキングサーボをオフ状態にしてトラッククロス数をカウントするような検査方式ではなく、各検査用トラックジャンプ用駆動電流の印加期間という極めて短時間にだけにトラッキングサーボをオフ状態に切り換えている。従って、トラックジャンプをほぼ同一のタンジェンシャル方向領域で行うことができ、また偏心等によるトラッククロスの影響を受け難くなるために、前記差分データを精度良く求めることができる。ところで、前記各差分データは各トラックジャンプ時における光ビームスポットの移動速度に対応した情報を与えるものであるが、演算手段は各差分データに基づいてトラッキング用アクチュエータの特性定数を求め、駆動電流設定手段がその特性定数に基づいて通常動作時のトラックジャンプ用駆動電流を最適設定する。ここで、特性定数は各差分データの平均値やメジアン等の代表値として求められるが、前記検査駆動では内周側と外周側へのトラックジャンプを組み合わせて行い、それぞれの動作時に差分データを求めているため、トラッキング用アクチュエータの特性が各方向へのトラックジャンプ動作で異なる場合にもその影響を排除できる。尚、検査用駆動手段によるトラックジャンプ動作の実行回数は、内周側と外周側へのトラックジャンプを各1回ずつ行うだけでもよいが、信頼性の高い計測情報を得るには複数回実行させる方が望ましい。
【0009】
ところで、本発明は、タイミング検出手段を用いたタイミング設定によって光ディスクの同一のタンジェンシャル方向領域で検査用トラックジャンプを行うようになっているが、その領域に欠陥が存在した場合には誤った特性定数が得られてしまう。この問題点については、前記演算手段が求めた前記特性定数が予め設定された範囲内にあるか否かを判定する判定手段を設け、前記判定手段によって前記特性定数が前記範囲内にあると判定された場合には、前記駆動電流設定手段がその特性定数に基づいて通常動作時に前記トラッキング用アクチュエータへ印加させるべきトラックジャンプ用駆動電流の波形の設定を行い、前記特性定数が前記範囲外であると判断された場合には、光ピックアップ全体を別のトラック位置へ移動させて再び前記特性定数を求め直し、その求め直した特性定数に基づいて前記駆動電流設定手段が前記トラックジャンプ用駆動電流の波形の設定を行うようにすることで解消できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ディスク装置におけるトラッキング特性調整装置は、前記構成を有していることにより、次のような効果を奏する。
光ディスク上の同一のタンジェンシャル方向領域で光ビームスポットを内周側と外周側へトラックジャンプさせる検査用駆動によってトラッキング用アクチュエータの特性定数を求め、その特性定数に基づいて通常動作時のトラックジャンプ用駆動電流の波形を設定しているが、トラッキングサーボを前記検査用のトラックジャンプ時にのみオフ状態にして、外周側へのトラックジャンプと内周側へのトラックジャンプをほぼ同じ位置で行うことにより、偏心等によるトラッククロスの影響を受けずに特性定数を求めることができ、その結果、トラッキング用アクチュエータの特性にバラツキがあってもトラッキング特性を高精度に調整することを可能にし、信頼性の高いトラッキング動作を実現する。また、光ディスクの欠陥によってトラッキング用アクチュエータの特性定数が想定範囲外となるような場合には、光ディスク上の別の領域で検査駆動させて特性定数を求めるようにすればよく、欠陥の多い光ディスクについても良好な検査と調整が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の光ディスク装置におけるトラッキング特性調整装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明を適用した光ディスク装置のシステム構成図を示す。但し、同図の構成は主にサーボ系に関連する部分だけであり、記録再生信号の入出力系は省略されている。
【0012】
先ず、光ディスク1はスピンドルモータ2の回転軸2aに固定されたターンテーブル2bにセットされている。光ピックアップ3は、対物レンズ4やマグネット(図示せず)等を保持した可動部をサスペンションワイヤ等により懸架していると共に、その可動部をラジアル方向へ移動させるためのトラッキング用コイル5と光軸方向へ移動させるためのフォーカス用コイル6、及び光源であるレーザダイオード7と回折格子8とハーフミラー9と光検出器10を搭載しており、光ピックアップ3全体は、スレッドモータ11の回転軸に設けられたリードスクリュー11aとの螺合関係によって、ラジアル方向へ粗動されるようになっている。
【0013】
レーザダイオード7の出射光は、回折格子8で回折せしめられた後、ハーフミラー9を透過して対物レンズ4へ入射し、対物レンズ4で集光されて光ディスク1の情報記録面に光ビームスポットを構成するが、その反射光が再びハーフミラー9へ戻って光検出器10へ入射する。この光ディスク装置はトラッキングサーボに3ビーム方式を採用しているため、図2に示すように、回折格子8がレーザダイオード7の出射光から主ビームと共にトラッキング用の2つの副ビームを作成し、一方、光検出器10には1個の4分割フォトダイオード10aと2個のフォトダイオード10b,10cが設けられており、それぞれが記録再生用の主ビームとトラッキング用の各副ビームを検出するようになっている。
【0014】
そして、各フォトダイオード10a,10b,10cの出力はアナログ信号処理回路12に入力されており、アナログ信号処理回路12ではフォトダイオード10b,10cの出力E,Fの差分をトラッキングエラー信号(以下、「TE信号」という)として求め、またフォトダイオード10aの4出力を用いて(A+C)−(B+D)をフォーカスエラー信号(以下、「FE信号」という)として求める。更に、アナログ信号処理回路12では(A+B+C+D)の総和信号と所定値との比較結果(所定値以上の良好な場合は“0”、所定値より小さい場合は“1”が)をディフェクト信号(以下、「DEF信号」という)として求めると共に、前記総和信号から得られる光ディスクの同期信号(以下、「SYNC信号」という)を検出する。
【0015】
アナログ信号処理回路12はTE信号、FE信号、DEF信号及びSYNC信号を出力するが、TE信号とFE信号はそれぞれA/D変換器13,14で変換されたディジタルデータとして、またDEF信号はそのままマイクロコンピュータ回路(以下、「マイコン回路」)15へ入力されている。マイコン回路15に付属したROM16には、トラッキングサーボ、フォーカスサーボ、スピンドルサーボ、及びスライドサーボに関する制御プログラムと共に、この実施形態に係るトラッキング特性調整プログラムを格納させてある。また、マイコン回路15は、前記各プログラムの実行に際して付属のRAM17に必要なデータをセーブさせる。
【0016】
マイコン回路15は、前記制御プログラムの実行により、TE信号に基づくトラッキング制御信号と、FE信号に基づくフォーカス制御信号と、SYNC信号に基づくスピンドル制御信号とを生成する。そして、トラッキング制御信号とフォーカス制御信号はそれぞれD/A変換器18,19でアナログ信号に変換されてコイルドライバ20,21に供給され、各コイルドライバ20,21がトラッキング用コイル5とフォーカス用コイル6に対する駆動電流を作成してそれらコイル5,6へ印加し、それによって閉ループによるトラッキング制御とフォーカス制御が実行される。尚、3ビーム方式によるとトラックTr(n)に対するトレース状態とTE信号との関係は図3のようになり、マイコン回路15はTE信号が0になるように主ビームの光ビームスポットをトラックTr(n)へ戻すためのトラッキング制御信号を生成する。
【0017】
また、スピンドル制御信号はD/A変換器22でアナログ信号に変換されてモータドライバ23へ供給され、モータドライバ23が線速度一定での記録/再生が可能になるようにスピンドルモータ2を回転させ、閉ループによるスピンドル制御が行われる。尚、マイコン回路15は、外部からの指示入力(図示せず)やトラッキング特性調整プログラムの実行過程において、モータドライバ24を介してスレッドモータ11を駆動させることにより光ピックアップ3の粗動を行う。
【0018】
この実施形態の光ディスク装置は、以上のシステム構成及び各部の機能に基づいて、図4のフローチャートに示す動作手順でトラッキング特性の調整を行う。先ず、光ディスク装置の電源がONとされて初期起動がなされると、マイコン回路15はRAM17に格納されているエラーフラッグEfを0に、検査回数のカウント値Nを0にそれぞれ設定し、モータドライバ24を介してスレッドモータ11を駆動させることにより、光ピックアップ3を光ディスク1の所定のトラック位置へシークする(S0,S1)。また、この段階ではトラッキングサーボがON状態になっており、マイコン回路15はアナログ信号処理回路12から得られるTE信号に基づいてトラッキング制御を実行させている。
【0019】
次に、マイコン回路15はSYNC信号を用いて光ディスク1の回転角度が所定回転位相になるタイミングを検出し、検査回数のカウント値Nが偶数か奇数かを確認する(S2,S3)。この場合、最初であるためにN=0(偶数)であり、マイコン回路15は、直ちにトラッキングサーボをOFF状態に切り換えると共に、ROM16から内周側へのトラックジャンプ用データを読み出し、そのデータをD/A変換器18でアナログ信号に変換してコイルドライバ20からトラッキング用コイル5に駆動電流を印加させる(S4)。この駆動電流の波形は図5に示すように加速パルスと休止レベルと減速パルスとからなり、トラッキング用アクチュエータは加速パルス期間で対物レンズ4を内周側へ加速駆動させ、休止期間ではフリーな等速移動状態とし、減速パルス期間ではブレーキをかけて減速・停止させる。その結果、光ビームスポットは直前にトラッキングサーボがかかった状態でトレースしていたトラックから内周側の隣接トラックへジャンプし、アナログ信号処理回路12から図5に示すようなTE信号が得られることになる。
【0020】
ここで、マイコン回路15には前記TE信号がディジタル信号として入力されているが、図5に示すように駆動電流の波形の休止期間中に2つの検出時点t1,t2を設定して各時点におけるTE信号のレベルを求め、その2つの信号レベルの差であるΔEi(N)[この場合はN=0]を演算して、その演算結果の絶対値である|ΔEi(0)|をRAM17に格納する(S5)。また、前記のトラックジャンプ用駆動電流の印加が終了すると、OFF状態になっているトラッキングサーボをON状態に切り換える(S8)。
【0021】
以上のステップS2からステップS8の動作は光ディスク1の1回転の時間内に実行され、マイコン回路15は再びSYNC信号を用いて光ディスク1の回転角度が所定回転位相になるタイミングを検出する(S9,S10→S2)。その場合、ステップS8が完了した段階でRAM17の検査回数のカウント値Nが+1インクリメントされてN=1(奇数)となり、マイコン回路15は、直ちにトラッキングサーボをOFF状態に切り換えるが、今回は外周側へのトラックジャンプ用データをROM16から読み出し、そのデータをD/A変換器18でアナログ信号に変換してコイルドライバ20からトラッキング用コイル5に駆動電流を印加させる(S6)。この駆動電流の波形は図6に示すように図5の場合と加速パルスと減速パルスの極性が逆になっており、光ビームスポットを前回のトラックジャンプ後にトレースしているトラックから外周側の隣接トラックへジャンプさせる。即ち、光ビームスポットをステップS1で光ピックアップ3をシークさせた際のトラックへ戻すことになる。従って、光ディスク1の回転角度が所定回転位相になるタイミングで駆動電流の印加を開始していることと併せて、前回と同一のタンジェンシャル方向領域でトラックジャンプが行われることになる。
【0022】
そして、マイコン回路15は、図6に示すように、前回のトラックジャンプの場合(図5の場合)と同様に駆動電流の波形の休止期間中に設定した検出時点t1,t2でTE信号のレベルを求め、その2つの信号レベルの差であるΔEo(N)[この場合はN=1]を演算して、その演算結果の絶対値である|ΔEo(1)|をRAM17に格納する(S7)。また、トラックジャンプ用駆動電流の印加の終了により、OFF状態のトラッキングサーボをON状態に切り換える(S8)。
【0023】
以降、光ディスク1の回転角度が所定回転位相になる度に、検査回数のカウント値Nが偶数か奇数かを確認し、トラッキングサーボをOFF状態に切り換えた状態で、光ビームスポットを光ディスク1の内周側へトラックジャンプさせる駆動電流(図5)と外周側へトラックジャンプさせる駆動電流(図6)を交互にトラッキング用アクチュエータに印加して検査データ:|ΔEi(N)|,|ΔEo(N)|をRAM17に格納してゆく(S2〜S10→S2)。その場合、内周側へのトラックジャンプではキックバックして元のトラックに戻り、外周側へのトラックジャンプでは1つ外側のトラックに進むことになるため、前記のように内周側へのトラックジャンプと外周側へのトラックジャンプとを交互に切り換えて検査を行うと、ラジアル方向に係る検査位置のずれを小さくできる。この実施形態では検査回数Nを16回に設定しており、前記手順を繰り返し実行することにより、RAM17には|ΔEi(N)|[Nは0〜14の内の偶数]と|ΔEo(N)|[Nは1〜15の内の奇数]の16個の検査データが格納されることになるが、第16回目の検査が完了した段階で全ての検査データの平均値|ΔEav|を求める(S10,S11)。
【0024】
前記の|ΔEi(N)|や|ΔEo(N)|は光ビームスポットをトラックジャンプさせた際の休止期間における光ビームスポットの移動速度に対応した値の絶対値に外ならない。そして、|ΔEav|はそれらの平均値であるが、換言すれば|ΔEav|はトラッキング用アクチュエータのゲインとリニアな関係で対応した値となる。そこで、マイコン回路15はROM16に格納させてあるテーブルを用いて|ΔEav|に対応したゲインGtrを求め、そのゲインGtrが所定範囲内の値であるか否かを判断する(S12)。
【0025】
その結果、ゲインGtrが所定範囲内にある場合には、そのゲインGtrに対応させて通常動作時にトラッキング用コイル5へ印加させるべきトラックジャンプ用駆動電流の波形(加速パルスと減速パルスの波高値)を設定し、その駆動電流の波形に係るデータをROM16に格納させて、以降の通常動作におけるトラックジャンプに用いる(S14)。
【0026】
一方、ゲインGtrが所定範囲外になった場合には、RAM17のエラーフラッグを+1インクリメントし、また測定回数Nを0に戻した後、モータドライバ24へ駆動信号を出力してスレッドモータ11を駆動させることにより光ピックアップ3を別の位置へシークさせ、前記ステップS2〜S13を再度実行してトラッキング用アクチュエータのゲインGtrを求め直す(S13→S15,S16→S2〜S13)。これは、もし前記検査に用いている光ディスク1のタンジェンシャル方向領域に欠陥がある場合や検査段階で何らかの外乱があった場合にはゲインGtrが異常値として求まり、その値をそのまま用いてトラックジャンプ用駆動電流の波形を設定してしまうと異常なトラックジャンプ動作になって、記録再生が不可能になるだけでなく、極端な場合にはトラッキング用アクチュエータの破損を招くからである。ゲインGtrが所定範囲外になった場合の手順で示すように、別のシーク位置で検査を行うことによって、光ディスク1の前記欠陥位置を避けた領域でゲインGtrが求められるため、前記不具合を解消できる。
【0027】
前記実施形態では、図5及び図6に示したように、検査用駆動電流の印加過程で加速パルスと減速パルスの間の休止期間中に2つの検出時点t1,t2を設定してTE信号の各レベルを求めるようにしているが、必ずしも休止期間に検出時点を設定する必要はなく、一般的にはトラッキング用アクチュエータの作動特性が得られるように設定すればよい。例えば、図7と図8に示すように、加速パルスの印加期間内に検出時点t1,t2を設定する方法や、図示していないが減速パルスの印加期間内に設定する方法、更には加速パルスの印加直後と減速パルスの終了直前にそれぞれ検出時点t1,t2を分けて設定する方法も採用できる。また、前記実施形態では、光ディスク1の1回転毎に1回の検査用トラックジャンプを実行させるようにしているが、検査用駆動電流の印加状態以外の時間帯ではトラッキングサーボがON状態になっているため、光ディスク1が複数回転する毎に検査用トラックジャンプを実行させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は光ディスク装置のトラッキング制御部に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用した光ディスク装置のシステム構成図である。(但し、主にサーボ系に関連する部分だけであり、記録再生信号の入出力系は省略されている。)
【図2】3ビーム方式のトラッキングサーボに係る光学系と信号処理系の模式的構成図である。
【図3】3ビーム方式のトラッキングサーボにおける光ディスクのトラックと光ビームスポットとの関係を示す図である。
【図4】トラッキング特性の調整手順を示すフローチャートである。
【図5】内周側へのトラックジャンプ用駆動電流の波形とTE信号の関係を示すグラフである。(加速パルスと減速パルスの間の休止期間内でTE信号のレベルを検出)
【図6】外周側へのトラックジャンプ用駆動電流の波形とTE信号の関係を示すグラフである。(加速パルスと減速パルスの間の休止期間内でTE信号のレベルを検出)
【図7】内周側へのトラックジャンプ用駆動電流の波形とTE信号の関係を示すグラフである。(加速パルスの期間内でTE信号のレベルを検出)
【図8】外周側へのトラックジャンプ用駆動電流の波形とTE信号の関係を示すグラフである。(加速パルスの期間内でTE信号のレベルを検出)
【符号の説明】
【0030】
1…光ディスク、2…スピンドルモータ、2a…回転軸、2b…ターンテーブル、3…光ピックアップ、4…対物レンズ、5…トラッキング用コイル、6…フォーカス用コイル、7…レーザダイオード、8…回折格子、9…ハーフミラー、10…光検出器、10a…4分割フォトダイオード、10b,10c…フォトダイオード、11…スレッドモータ、11a…リードスクリュー、12…アナログ信号処理回路、13,14…A/D変換器、15…マイコン回路、16…ROM、17…RAM、18,19,22…D/A変換器、20,21…コイルドライバ、23,24…モータドライバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク装置において、
光ディスクが1回転毎又は複数回転毎に所定回転位相となるタイミングを検出するタイミング検出手段と、
前記タイミング検出手段が前記タイミングを検出する度に、トラッキングサーボをオフに切り換えた状態で、光ビームスポットを前記光ディスクの内周側へトラックジャンプさせるための所定波形の駆動電流又は外周側へトラックジャンプさせるための所定波形の駆動電流をトラッキング用アクチュエータに印加し、且つ前記各駆動電流の印加回数がほぼ同数となるように設定した検査駆動手段と、
前記検査駆動手段によって実行される各トラックジャンプ期間中のトラッキングエラー信号について、所定の2時点における各信号レベルの差分データを求める信号計測手段と、
前記信号計測手段が求めた差分データを用いて前記トラッキング用アクチュエータの特性定数を求める演算手段と、
前記演算手段が求めた前記特性定数に基づいて、通常動作時に前記トラッキング用アクチュエータへ印加させるべきトラックジャンプ用駆動電流の波形を設定する駆動電流設定手段と
を備え、前記光ディスク装置の初期設定時又は初期起動時に前記各手段が作動して前記トラックジャンプ用駆動電流の設定を行うことを特徴とする光ディスク装置におけるトラッキング特性調整装置。
【請求項2】
前記演算手段が求めた前記特性定数が予め設定された範囲内にあるか否かを判定する判定手段を設け、
前記判定手段によって前記特性定数が前記範囲内にあると判定された場合には、前記駆動電流設定手段がその特性定数に基づいて通常動作時に前記トラッキング用アクチュエータへ印加させるべきトラックジャンプ用駆動電流の波形の設定を行い、前記特性定数が前記範囲外であると判断された場合には、光ピックアップ全体を別のトラック位置へ移動させて再び前記特性定数を求め直し、その求め直した特性定数に基づいて前記駆動電流設定手段が前記トラックジャンプ用駆動電流の波形の設定を行うこととした請求項1記載の光ディスク装置におけるトラッキング特性調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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