説明

光ディスク装置

【課題】チャッキング音を確実に小さくする。
【解決手段】ケースの内部に、トラバースメカを再生位置と退避位置との間で回転自在に設ける。ディスクトレイは、ケースの外部に露出する露出位置とケースの内部に格納される格納位置との間で移動する。モータの回転により、トラバースメカを回転させ、ディスクトレイを移動させる。ケースの内部に、位置検知スイッチを設ける。位置検知スイッチは、ディスクトレイが格納位置の直前の減速位置まで移動したことを検知し、検知したときに、制御部に左スイッチオン信号を出力する。制御部は、位置検知スイッチから左スイッチオン信号が入力されたことに応答して、モータを、回転速度S1よりも低速の回転速度S2で0.5秒回転させた後、回転速度S2よりも高速で且つ回転速度S1よりも低速の回転速度S3で回転させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクに記録された情報の再生や記録を行う光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置には、CD、DVDなどの光ディスクが記憶媒体として用いられている。光ディスク装置は、光ディスクを装填するディスクトレイを、本体ケースに対して移動自在に組み込み、光ディスクの着脱時にはディスクトレイを本体ケース外部に引き出し、使用時にはディスクトレイを本体ケース内部に格納するように構成される。本体ケースの内部には、ディスクトレイ上に装填された光ディスクを高速で回転させるスピンドルモータが設けられている。スピンドルモータには、光ディスクを保持するとともに、磁石が埋め込まれたターンテーブルが取り付けられており、本体ケースの内部には、ターンテーブルの磁石の磁力により吸引される磁性体としての鉄板が設けられたクランパが配されている。
【0003】
スピンドルモータ及び光ピックアップを有するトラバースメカは、光ディスクにデータの記録及び/または再生を行う再生位置とこの再生位置から退避した退避位置との間で回転可能に設けられており、ディスクトレイが本体ケース内部に格納された後、トラバースメカは再生位置まで回転する。トラバースメカが、再生位置まで回転すると、クランパの鉄板が、ターンテーブルの磁石の磁力により吸引され、光ディスクは、ターンテーブルとクランパとの間で挟持された状態となる。光ディスク交換時には、トラバースメカを退避位置まで変位させて、ターンテーブルとクランパとを引き離した後、ディスクトレイを本体ケース外部に引き出す。
【0004】
ターンテーブルの磁石の磁力によりクランパの鉄板を吸引するときにはチャッキング音が発生し、このチャッキング音は、ユーザに不快感を与えてしまうという問題があった。このため、チャッキング音の低減を図る技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−312148号公報
【特許文献2】特開2007−042189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、ローディング開始からの時間により、パルス周期を切り替えるようにしているため、ローディング時に操作者によってトレイが押されたときには、所望するタイミングとは異なるタイミングでパルス周期が切り替わり、パルス周期が切り替わる前にトラバースメカが再生位置まで回転してしまうという問題があった。この場合には、チャッキング音の低減を図ることができない。また、特許文献1では、検出手段を設け、検出手段により検出したときに、パルス周期を切り替えるようにしているが、検出手段の具体的な記載がない。さらには、検出手段を設けることにより、コストアップしてしまうという問題があった。
【0006】
また、特許文献2では、トレイの搬入搬出経路を複数区間に分け、区間毎にトレイの搬入搬出速度を切り換えており、搬入位置付近の区間では、トレイの搬入速度を低速にしている。トラバースメカは、トレイが搬入位置まで移動した後に、再生位置まで回転するものであり、トレイを搬入させるときのモータを駆動源として回転する。このため、搬入位置に移動するときのトレイ搬入速度を低速にした場合には、トラバースメカの回転速度が低速になり、モータの駆動力が足りずに、トラバースメカを再生位置まで回転させることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、チャッキング音を確実に小さくすることができる光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の光ディスク装置は、光ピックアップ及びスピンドルモータを有し、光ディスクにデータの記録及び/または再生を行う再生位置とこの再生位置から退避した退避位置との間でケース内部に変位自在に設けられたトラバースメカと;前記ケース外部に露出される露出位置と前記ケース内部に格納される格納位置との間で移動自在なディスクトレイとを備えた光ディスク装置において、前記スピンドルモータに設けられ、前記ディスクを保持するターンテーブルと;前記トラバースメカが前記再生位置まで移動したときに、前記ターンテーブルとの間に前記光ディスクを挟持するクランパと;モータを有し、前記モータの回転により、前記ディスクトレイを前記露出位置から前記格納位置まで移動させるとともに、前記ディスクトレイを前記格納位置まで移動させた後に前記トラバースメカを前記退避位置から前記再生位置まで変位させる移動変位機構と;前記ディスクトレイが前記格納位置の直前の格納直前位置まで移動したことを検出する検出手段と;前記検出手段による検出に応答して、前記モータを、検出前の回転速度よりも低速で予め設定された設定時間回転させた後、前記低速の回転速度よりも高速で回転させるように制御する制御手段と;を備えたことを特徴とする。
【0009】
なお、前記トラバースメカの変位としては、回転や移動等が挙げられる。また、前記光ディスクとしては、CD、DVD、デュアルディスク、SACD(ハイブリッド・ディスク)等が挙げられる。さらに、前記移動変位機構は、前記モータの回転により、前記ディスクトレイを前記露出位置から格納位置まで移動させ、且つ、前記トラバースメカを前記再生位置から退避位置まで変位させることが好ましい。また、前記移動変位機構は、前記モータの回転速度に比例して、前記ディスクトレイの移動速度及び前記トラバースメカの変位速度を変化させる。さらに、前記ターンテーブルに磁石を設けるとともに、前記クランパに磁性部材を設け、前記トラバースメカが前記再生位置まで移動したときには、前記磁石の磁力により前記磁性部材が吸着されて、前記ターンテーブルと前記クランパとの間に前記光ディスクを挟持することが好ましい。
【0010】
また、前記高速の回転速度を、前記検出前の回転速度よりも低速とすることが好ましい。
【0011】
さらに、前記検出手段は、前記ディスクトレイが前記露出位置及び前記格納位置に位置することを検出し、且つ、前記トラバースメカが前記再生位置及び前記退避位置に位置することを検出することが好ましい。
【0012】
また、前記制御手段は、前記ディスクトレイが前記露出位置まで移動したこと、及び、前記トラバースメカが前記再生位置まで変位したことに応答して、前記モータの駆動を停止することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光ディスク装置によれば、ディスクトレイが格納位置の直前まで移動したことを検出し、検出したことに応答して、トラバースメカを変位させるモータを、検出前よりも低速で回転させるから、一定のモータ回転速度でトラバースメカを再生位置まで変位させるものに比べて、トラバースメカが再生位置まで変位してターンテーブルがクランパに接触するときに発生するチャッキング音を小さくすることができる。
【0014】
また、モータを、検出前よりも低速で設定時間回転させた後、この低速の回転速度よりも高速で回転させるから、モータの駆動力が足りずに、トラバースメカを再生位置まで変位させることができないという問題が発生することがなく、確実にトラバースメカを再生位置まで変位させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1及び図2に本発明を用いた光ディスク装置2の外観を示す。光ディスク装置2は、CD(光ディスク)3にアクセスして、CD3にデータの記録及び再生を行うものであり、パソコン等に組み込まれる。なお、光ディスク装置2は、DVD等も再生可能である。
【0016】
光ディスク装置2のケース4の内部には、ディスクトレイ5、光ピックアップ6、ピックアップベース7、スピンドルモータ8、ターンテーブル9を含むトラバースメカ10や回路基板等が組み込まれている。ケース4は、上カバー4a及び下カバー4bから構成されている(図4参照)。なお、光ピックアップ6、ピックアップベース7、スピンドルモータ8、ターンテーブル9は、図1及び図2では図示を省略し、図3〜図5で図示している。
【0017】
ケース4の前面には、CD3を再生する再生スイッチ12、CD3の再生を停止する停止スイッチ13、ディスクトレイ5開閉用の開閉スイッチ14等の各種スイッチが設けられている。これら開閉スイッチ14を含む複数のスイッチは、光ディスク装置2の主制御を行う制御部(制御手段)15に接続されている。なお、開閉スイッチ14を含むスイッチを、ケース4の前面に設けずに、光ディスク装置2が組み込まれるパソコンに設けるようにしてもよい。
【0018】
ディスクトレイ5は、CD3再生時にケース4内部に格納される格納位置(図1参照)と、ケース4外部に露出される露出位置(図2参照)との間で移動可能に設けられており、後述するトレイ移動機構30により移動される。ディスクトレイ5を移動させるときには、開閉スイッチ14を操作する。
【0019】
ディスクトレイ5は、CD3が装填されるものであり、CD3の外径に対応した窪みが形成されている。ディスクトレイ5の中心部には、格納位置に位置するときにスピンドルモータ8及びターンテーブル9が挿通される挿通孔5aが形成され、この挿通孔5aに連続して、光ピックアップ6がCD3にアクセスするためのアクセス開口5bが形成されている。
【0020】
図3、図4及び図5に示すように、光ピックアップ6は、発光素子から照射されたレーザ光をCD3の記録面に集光する対物レンズ16が組み込まれており、ピックアップベース7に取り付けられた保持シャフト17に移動自在に保持されている。光ピックアップ6は、公知の移動機構により、CD3の径方向である保持シャフト17の軸方向(図3におけるA方向)に移動される。
【0021】
ターンテーブル9は、スピンドルモータ8の回転シャフトに取り付けられている。ターンテーブル9の上面には、チャッキングコア部9aが形成されている。チャッキングコア部9aは、CD3を保持するものであり、CD3の保持及び位置決めを行う位置決めリブ9bが、120°ピッチで放射状に突出して形成されている。ターンテーブル9の上面には、CD3再生時のCD3の滑りを防止する滑り止めシート18が取り付けられている。
【0022】
チャッキングコア部9aには、クランパ25の係合凸部25dが挿入される係合孔9cが形成されている。チャッキングコア部9aの内部には、磁石19が180°ピッチで2個埋め込まれている。なお、磁石19の個数は、2個に限定されることなく、適宜変更可能である。
【0023】
ケース4の内部には、トラバースメカ10を回転させるためのスライダ20が設けられている。スライダ20は、左右方向にスライド自在に設けられており、詳しくは後述するように、スライダ20のスライドに応じて、トラバースメカ10が回転する。
【0024】
ディスクトレイ5の下面には、スライダ20の第1スライダボス20cを案内する第1ガイドリブ5cと、第2スライダボス20dを案内する第2ガイドリブ5dとが立設されている。各ガイドリブ5c,5dは、それぞれ2本ずつ立設されており、各ボス20c,20dは2本のリブの間に入り込むようにされている。これにより、ディスクトレイ5が前後方向(図3における上下方向)に移動すると、各ボス20c,20dは、ガイドリブ5c,5dによって左右方向に案内され、スライダ20が左右方向にスライドする。
【0025】
ピックアップベース7には、ダンパー21が4個、ビス22により取り付けられている。後面側(図3における上側)の2個のビス22は、ダンパー21を介して、ケース4内部の取付部にビス締めされており、ピックアップベース7は、この2個のビス22を中心にして、図5中B方向に回転自在に取り付けられている。
【0026】
前面側(図3における下側)の2個のビス22は、ダンパー21を介して、回転ベース23に取り付けられている。回転ベース23の前面には、スライダ20の第1ガイド孔20aに挿入される第1ベースボス23aと、第2ガイド孔20bに挿入される第2ベースボス23bとが形成されている。回転ベース23の左右の側面には回転軸23cが形成されており、回転軸23cはケース4内部に回転自在に取り付けられている。これにより、回転ベース23は、回転軸23cを中心にして、図5中B方向に回転自在となる。なお、回転軸23cは、図3及び図5における上下方向の位置が規制されておらず、ピックアップベース7が、図5における上側のビス22を中心に回転するときには、回転軸23cが図5における上下方向に移動する。これにより、回転ベース23が回転すると、ピックアップベース7は、後面側(図3における上側)の2個のビス22を中心にして、図5中B方向に回転する。本実施形態では、ピックアップベース7を有するトラバースメカ10は、スライダ20のスライドに応じて、退避位置(図4及び図5参照)と再生位置(図13参照)との間で回転する。
【0027】
上カバー4aには、2段の段付き状のカバー凹部4cが形成されており、カバー凹部4cの底面には、クランパ25の本体部25aを挿入するための、挿入孔4dが形成されている。クランパ25は、CD3再生時にCD3に当接した状態で回転するものであり、本体部25aと鍔部25bとを備える。本体部25aは挿入孔4dよりも小さい径で形成され、鍔部25bは挿入孔4dよりも大きい径で形成されている。本体部25aの底面には、チャッキングコア部9aの上部が挿入される挿入凹部25cが形成されており、挿入凹部25cには、係合孔9cに挿入される係合凸部25dが立設されている。本体部25aには、鉄板26が取り付けられており、この鉄板26は、チャッキングコア部9aの内部に埋め込まれた磁石19の磁力により吸着される。これにより、クランパ25がチャッキングコア部9aに保持され、CD3は、ターンテーブル9とクランパ25との間に挟持される。なお、図1及び図2においては、カバー凹部4cの図示を省略している。
【0028】
図4、図6及び図7に示すように、スライダ20には、回転ベース23の第1ベースボス23aが挿入される第1ガイド孔20aと、第2ベースボス23bが挿入される第2ガイド孔20bと、ディスクトレイ5の第1ガイドリブ5cにより案内される第1スライダボス20cと、第2ガイドリブ5dにより案内される第2スライダボス20dとが形成されている。各ボス20c,20dは、スライダ20の上面に立設されている。スライダ20の前面には、スライダギア20eが形成されている。
【0029】
スライダ20には、回転自在な位置検出スイッチ27のスイッチ片27bが挿通されるスイッチ挿通孔20fが形成されている。ケース4の内部には、ディスクトレイ5及びスライダ20の位置を検出する位置検出スイッチ(検出手段)27が回転自在に設けられている。位置検出スイッチ27は、本体部27aに棒状のスイッチ片27bが立設されている。位置検出スイッチ27は、図示しない基板に設けられた支持部材に、回転自在に支持されている。なお、図4においては、図面の乱雑を避けるため、位置検出スイッチ27の図示を省略している。
【0030】
図7(A)に示すように、スライダ20が左方向に左スライド位置までスライドすると、スイッチ片27bがスライダ20により押圧されて、位置検出スイッチ27は左スイッチオン位置まで回転される。図7(B)に示すように、スライダ20が右方向に右スライド位置までスライドすると、スイッチ片27bがスライダ20により押圧されて、位置検出スイッチ27は右スイッチオン位置まで回転される。位置検出スイッチ27は、制御部15に接続されており、左スイッチオン位置に位置するときには、制御部15に左スイッチオン信号を出力し、右スイッチオン位置に位置するときには、制御部15に右スイッチオン信号を出力する。スライダ20が左右スイッチオン位置以外に位置するときには、位置検出スイッチ27から制御部15に信号が出力されることはない。位置検出スイッチ27は図示しないスイッチ用バネにより、図7(C)に示す鉛直状態となるスイッチオフ位置に向けて付勢されている。
【0031】
ディスクトレイ5が露出位置(図3参照)に位置するときには、第2スライダボス20dが第2ガイドリブ5dにより案内され、スライダ20は左スライド位置(図4及び図7(A)参照)に位置する。スライダ20が左スライド位置に位置するときには、トラバースメカ10は退避位置に位置される。
【0032】
ディスクトレイ5が、露出位置(図3参照)から格納位置(図12参照)に向けて移動すると、第2スライダボス20dが第2ガイドリブ5dにより案内され、スライダ20は、左スライド位置から右方にスライドする。スライダ20が左スライド位置から右方にスライドすると、位置検出スイッチ27は、スイッチ用バネの付勢により左スイッチオン位置からスイッチオフ位置に向けて回転し、位置検出スイッチ27から制御部15への左スイッチオン信号の出力が停止される。
【0033】
図3及び図4に示すように、スライダギア20eは、ケース4内部に回転自在に設けられた半円状の半円ギア29に噛合している。半円ギア29は、スライダ20が左スライド位置(図4及び図7(A)参照)からギア噛合位置(図10参照)までの間に位置するときには、スライダギア20eのみと噛合している。スライダ20が左スライド位置からギア噛合位置までスライドして、半円ギア29が回転すると、半円ギア29は、トレイ移動機構30の第3段ギア31cに噛合する。半円ギア29は、スライダ20がギア噛合位置と右スライド位置(図7(B)及び図12参照)との間でスライドするときには、第3段ギア31cに噛合するようにされている。
【0034】
図4及び図8に示すように、ケース4内部には、ディスクトレイ5を移動させるためのトレイ移動機構30が設けられている。トレイ移動機構30は、トレイ用ギア31、中継プーリー32、ベルト33、モータプーリー34、モータ35を備え、トレイ用ギア31、中継プーリー32は、図示しない支軸に回転自在に取り付けられている。トレイ用ギア31は、3段ギアから構成されており、図4における最上段から順に第1段ギア31a、第2段ギア31b、第3段ギア31cとなっている。第1段ギア31aは、ディスクトレイ5に形成されたトレイギア5eに噛合している。なお、図4においては、図面の乱雑を避けるため、ベルト33、モータプーリー34、モータ35の図示を省略している。
【0035】
中継プーリー32には、中継ギア32aが形成されており、中継ギア32aは、第2段ギア31bに噛合している。中継プーリー32は、半円ギア29と同心円上に設けられている。モータプーリー34は、モータ35のモータシャフトに取り付けられており、中継プーリー32とモータプーリー34とには、ベルト33が巻き掛けられている。モータ35は、制御部15に接続されており、制御部15により駆動が制御される。制御部15は、開閉スイッチ14が操作されたときに、モータ35を駆動する。
【0036】
モータ35が駆動してモータプーリー34が回転すると、ベルト33を介して中継プーリー32が回転し、中継ギア32aに噛合しているトレイ用ギア31が回転する。そして、トレイ用ギア31の回転により、ディスクトレイ5が前後方向(図8における上下方向)に移動する。ディスクトレイ5の移動速度は、モータ35の回転速度に比例することとなる。本実施形態では、モータプーリー34が時計方向に回転するようにモータ35を駆動すると、ディスクトレイ5が露出位置から格納位置に向けて移動し、モータプーリー34が反時計方向に回転するようにモータ35を駆動すると、ディスクトレイ5が格納位置から露出位置に向けて移動する。
【0037】
ディスクトレイ5が露出位置(図3参照)に位置するときに、開閉スイッチ14が操作されると、制御部15は、モータプーリー34が時計方向に回転するようにモータ35を駆動する。このモータ35の駆動により、ディスクトレイ5は格納位置に向けて移動する。このとき、制御部15は、回転速度S1(検出前の回転速度)でモータ35を回転させる(図9参照)。
【0038】
ディスクトレイ5の第2ガイドリブ5dの前側端部には、スライダ20を左方向に左スライド位置までスライドさせて位置検出スイッチ27を左スイッチオン位置まで回転させるための左スライドガイド部5fが形成されている。モータ35の駆動により、ディスクトレイ5が格納位置に向けて移動し、図8に示すように、第2スライダボス20dが左スライドガイド部5fに到達する(以下、ディスクトレイ5が減速位置まで移動すると称する)と、スライダ20は、左スライドガイド部5fにより左スライド位置までスライドする。スライダ20が左スライド位置までスライドすると、位置検出スイッチ27は左スイッチオン位置まで回転され、位置検出スイッチ27は、制御部15に左スイッチオン信号を出力する。
【0039】
図9に示すように、制御部(制御手段)15は、ディスクトレイ5を露出位置から格納位置に向けて格納方向に移動させているときに、ディスクトレイ5が減速位置(格納直前位置)まで移動し、位置検出スイッチ27から左スイッチオン信号が入力されたことに応答して、モータ35を、回転速度S1よりも低速(例えば、回転速度S1の1/3)の回転速度S2で所定時間(例えば、0.5秒)回転させた後、回転速度S2よりも高速で且つ回転速度S1よりも低速(例えば、回転速度S1の2/3)の回転速度S3で回転させるように制御する。なお、制御部15は、モータ35への印加電圧を変えることにより、モータ35の回転速度を制御する。
【0040】
図10及び図11に示すように、ディスクトレイ5が減速位置から格納位置まで移動する直前に、スライダ20は、ディスクトレイ5の第1,第2ガイドリブ5c,5dにより案内されて、半円ギア29が第3段ギア31cに噛合するギア噛合位置までスライドする。スライダ20がギア噛合位置まで移動すると、トレイギア5gは第1段ギア41aとの噛合から外れる。半円ギア29が第3段ギア31cに噛合すると、モータ35の駆動により、モータプーリー34、ベルト33、中継プーリー32、トレイ用ギア31、半円ギア29を介して、スライダ20が右方にスライドする。スライダ20がギア噛合位置から右方にスライドすると、第1スライダボス20cが第1ガイドリブ5cに当接して、このスライダ20が右方にスライドする力により、ディスクトレイ5は後方(図10における上方)に向けて格納位置まで移動する。
【0041】
スライダ20は、ギア噛合位置(図10参照)と右スライド位置(図7(B)及び図12参照)との間でスライドするときは、モータ35の駆動によりスライドし、ギア噛合位置と左スライド位置(図3及び図8参照)との間でスライドするときは、ディスクトレイ5の各ガイドリブ5c,5dによりスライドする。
【0042】
ディスクトレイ5を格納位置から露出位置に向けて移動させるときには、モータプーリー34が反時計方向に回転するようにモータ35を駆動し、スライダ20を左方にスライドさせる。このとき、制御部15は、回転速度S1でモータ35を回転させる。スライダ20が左方に向けてギア噛合位置までスライドすると、第1スライダボス20cが第1ガイドリブ5cに当接して、このスライダ20が左方にスライドする力により、ディスクトレイ5は前方(図10における下方)に向けて移動し、トレイギア5eが第1段ギア31aに噛合するとともに、半円ギア29は第3段ギア31cとの噛合から外れる。そして、モータ35の駆動により、ディスクトレイ5は、露出位置まで移動する。このとき、ディスクトレイ5が減速位置まで移動すると、位置検出スイッチ27から制御部15に左スイッチオン信号が入力されるが、制御部15は、ディスクトレイ5が格納位置から露出位置に向けて移動し、右スイッチオン信号、左スイッチオン信号の順に信号が入力されたときには、上記したモータ35の回転速度制御を行わないようにされている。これにより、ディスクトレイ5を一定速度で格納位置から露出位置まで移動させることができる。
【0043】
位置検出スイッチ27は、ディスクトレイ5が格納位置から露出位置まで移動するときには、ディスクトレイ5が減速位置まで移動したときに左スイッチオン位置まで回転し、ディスクトレイ5が露出位置まで移動したときに左スイッチオン位置まで回転する。位置検出スイッチ27は、2回連続して左スイッチオン位置まで回転したときには、ディスクトレイ5が露出位置に位置するとともにトラバースメカ10が退避位置に位置することを検出する。ディスクトレイ5が格納位置から露出位置まで移動するときには、制御部15には、右スイッチオン信号、左スイッチオン信号、左スイッチオン信号の順に信号が入力される。この順番で信号が入力されたときには、制御部15は、モータ35の駆動を停止する。
【0044】
図12及び図13に示すように、モータ35の駆動により、スライダ20がギア噛合位置(図10参照)から右スライド位置に向けてスライドすると、回転ベース23の第1,第2ベースボス23a,23bが第1,第2ガイド孔20a,20bにより案内され、回転ベース23は回転軸23cを中心にして、図5中B方向に回転される。
【0045】
回転ベース23が回転されると、それに応じて、トラバースメカ10が図5中B方向に再生位置に向けて回転される。スライダ20が右スライド位置までスライドすると、トラバースメカ10が再生位置まで回転される。トラバースメカ10の回転速度は、モータ35の回転速度に比例することとなる。スライダ20が右スライド位置までスライドすると、位置検出スイッチ27は右スイッチオン位置まで回転される。位置検出スイッチ27は、右スイッチオン位置まで回転されると、ディスクトレイ5が格納位置に位置するとともにトラバースメカ10が再生位置に位置することを検出し、制御部15に右スイッチオン信号を出力する。制御部15は、右スイッチオン信号が入力されたことに応答して、モータ35の駆動を停止する。本実施形態では、ディスクトレイ5を移動させるとともにトラバースメカ10を回転させる移動変位機構は、トレイ移動機構30と、ディスクトレイ5の第1,第2ガイドリブ5c,5dと、スライダ20と、回転ベース23の第1,第2ベースボス23a,23bと、半円ギア29とを備えて構成される。
【0046】
トラバースメカ10が再生位置まで回転すると、チャッキングコア部9aの位置決めリブ9bは、CD3のディスク孔3aに挿入される。さらに、チャッキングコア部9aの上部が、クランパ25の挿入凹部25cに挿入されるとともに、クランパ25の係合凸部25dがチャッキングコア部9aの係合孔9cに挿入される。この状態では、鉄板(磁性部材)26が取り付けられたクランパ25は、チャッキングコア部9aの磁石19の磁気により保持され、CD3の上面にクランパ25の下面が当接する。これにより、CD3が、ターンテーブル9とクランパ25との間に挟持された状態となり、CD3は上下方向が位置決めされる。このとき、チャッキングコア部9aとクランパ25とが接触する音、いわゆるチャッキング音が発生する。そして、CD3再生時に、スピンドルモータ8が回転すると、CD3、ターンテーブル9、クランパ25が共に回転する。
【0047】
上記のように構成された光ディスク装置2の作用について説明する。CD3を再生させるには、先ず、CD3をディスクトレイ5に装填する。次に、開閉スイッチ14を操作してディスクトレイ5を露出位置(図2及び図3参照)から格納位置(図1及び図12参照)に向けて移動させる。開閉スイッチ14が操作されると、制御部15は、回転速度S1でモータ35を回転させる。
【0048】
モータ35の回転により、ディスクトレイ5が露出位置から格納位置に向けて移動すると、スライダ20の第1スライダボス20cが第1ガイドリブ5cにより案内され、第2スライダボス20dが第2ガイドリブ5dにより案内され、スライダ20は、左スライド位置から右方にスライドする。スライダ20が左スライド位置から右方にスライドすると、位置検出スイッチ27は、スイッチ用バネの付勢により左スイッチオン位置からスイッチオフ位置に向けて回転し、位置検出スイッチ27から制御部15への右スイッチオン信号の出力が停止される。
【0049】
ディスクトレイ5が減速位置まで移動すると、スライダ20は、左スライドガイド部5fにより左スライド位置までスライドする。スライダ20が左スライド位置までスライドすると、位置検出スイッチ27は左スイッチオン位置まで回転され、位置検出スイッチ27は、制御部15に左スイッチオン信号を出力する。制御部15は、位置検出スイッチ27から左スイッチオン信号が入力されたことに応答して、モータ35を、回転速度S1よりも低速の回転速度S2で0.5秒回転させた後、回転速度S2よりも高速で且つ回転速度S1よりも低速の回転速度S3で回転させるように制御する。
【0050】
ディスクトレイ5が減速位置から格納位置に向けて移動すると、スライダ20は、モータ35の駆動により右スライド位置に向けてスライドし、このスライダ20のスライドにより、トラバースメカ10が退避位置から再生位置まで回転される。トラバースメカ10が再生位置まで回転すると、鉄板26が取り付けられたクランパ25は、チャッキングコア部9aの磁石19の磁気により保持され、CD3が、ターンテーブル9とクランパ25との間に挟持される。
【0051】
このように、制御部15は、ディスクトレイ5が減速位置まで移動したときに、モータ35を、回転速度S1よりも低速の回転速度S2で0.5秒回転させた後、回転速度S2よりも高速で且つ回転速度S1よりも低速の回転速度S3で回転させるように制御するから、一定のモータ回転速度でトラバースメカを再生位置まで回転させるタイプの光ディスク装置に比べて、トラバースメカ10の回転速度を低速にすることができ、チャッキングコア部9aがクランパ25に接触するときの速度を低速にすることができる。これにより、チャッキングコア部9aがクランパ25に接触するときに発生するチャッキング音を小さくすることができる。
【0052】
また、制御部15は、回転速度S2で0.5秒回転させた後、回転速度S2よりも高速の回転速度S3で回転させるように制御するから、モータ35の駆動力が足りずに、トラバースメカ10を再生位置まで回転することができないという問題が発生することがない。
【0053】
さらに、制御部15は、ディスクトレイ5が露出位置から減速位置まで移動したことを位置検出スイッチ27が検出したことに応答して、モータ35を回転速度S2で回転させるように制御するから、ディスクトレイ5が露出位置から格納位置に向けて操作者によって押されたときにも、確実にトラバースメカ10の回転速度を低速にすることができる。これにより、確実にチャッキング音を小さくすることができる。
【0054】
また、ディスクトレイ5が露出位置及び格納位置に位置することを検出する位置検出スイッチ27により、ディスクトレイ5が減速位置まで移動したことを検出するから、部品を追加することなく、ディスクトレイ5が減速位置まで移動したことを検出することができる。これにより、本発明を実施した場合にも、コストアップすることがない。
【0055】
なお、上記実施形態では、モータ35の回転速度を、回転速度S2から回転速度S3に一気に上げるようにしたが、モータ35の回転速度を、徐々に回転速度S2から回転速度S3に上げるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、トレイ移動機構30を、トレイ用ギア31、中継プーリー32、ベルト33、モータプーリー34、モータ35を備えて構成したが、ギアやプーリー等の個数は適宜変更可能である。
【0057】
さらに、上記実施形態では、回転速度S2を回転速度S1の1/3程度にし、回転速度S3を回転速度S1の2/3程度にしたが、回転速度の変化量は適宜変更可能である。
【0058】
また、上記実施形態では、回転速度S2で0.5秒回転させた後、回転速度S2よりも高速の回転速度S3で回転させるようにしたが、回転速度S2での回転時間は適宜変更可能である。
【0059】
さらに、上記実施形態では、本発明をパソコンに組み込まれる光ディスク装置2に実施したが、CDプレーヤやDVDプレーヤ等の各種プレーヤにも実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明を実施した光ディスク装置の外観斜視図である。
【図2】ディスクトレイが露出した状態の光ディスク装置の外観斜視図である。
【図3】ディスクトレイが露出位置に位置するときの光ディスク装置を示す正面図である。
【図4】ディスクトレイが露出位置に位置するときの光ディスク装置を示す下側面断面図である。
【図5】ディスクトレイが露出位置に位置するときの光ディスク装置を示す右側面断面図である。
【図6】スライダと回転ベースと回転スイッチとを示す分解斜視図である。
【図7】スライダと回転スイッチとを示す下側面断面図である。
【図8】ディスクトレイが減速位置に位置するときの光ディスク装置を示す右側面断面図である。
【図9】ディスクトレイが露出位置から格納位置まで移動した後、トラバースメカが退避位置から再生位置まで回転するときのタイミングチャートである。
【図10】ディスクトレイが格納位置に位置し、スライダがギア噛合位置に位置するときの光ディスク装置を示す正面図である。
【図11】ディスクトレイが格納位置に位置し、スライダがギア噛合位置に位置するときの光ディスク装置を示す下側面断面図である。
【図12】ディスクトレイが格納位置に位置し、スライダが右スライド位置に位置し、トラバースメカが再生位置に位置するときの光ディスク装置を示す正面図である。
【図13】ディスクトレイが格納位置に位置し、スライダが右スライド位置に位置し、トラバースメカが再生位置に位置するときの光ディスク装置を示す下側面断面図である。
【符号の説明】
【0061】
2 光ディスク装置
3 CD(光ディスク)
4 ケース
5 ディスクトレイ
5c 第1ガイドリブ
5d 第2ガイドリブ
6 光ピックアップ
8 スピンドルモータ
9 ターンテーブル
10 トラバースメカ
15 制御部(制御手段)
19 磁石
20 スライダ
20c 第1スライダボス
20d 第2スライダボス
25 クランパ
26 鉄板(磁性部材)
27 位置検出スイッチ(検出手段)
30 トレイ移動機構
35 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ピックアップ及びスピンドルモータを有し、光ディスクにデータの記録及び/または再生を行う再生位置とこの再生位置から退避した退避位置との間でケース内部に変位自在に設けられたトラバースメカと、
前記ケース外部に露出される露出位置と前記ケース内部に格納される格納位置との間で移動自在なディスクトレイとを備えた光ディスク装置において、
前記スピンドルモータに設けられ、前記ディスクを保持するターンテーブルと、
前記トラバースメカが前記再生位置まで移動したときに前記ターンテーブルとの間に前記光ディスクを挟持するクランパと、
モータを有し、前記モータの回転により、前記ディスクトレイを前記露出位置から前記格納位置まで移動させるとともに、前記ディスクトレイを前記格納位置まで移動させた後に前記トラバースメカを前記退避位置から前記再生位置まで変位させる移動変位機構と、
前記ディスクトレイが前記格納位置の直前の格納直前位置まで移動したことを検出する検出手段と、
前記検出手段による検出に応答して、前記モータを、検出前の回転速度よりも低速で予め設定された設定時間回転させた後、前記低速の回転速度よりも高速で回転させるように制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記高速の回転速度を、前記検出前の回転速度よりも低速としたことを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記ディスクトレイが前記露出位置及び前記格納位置に位置することを検出し、且つ、前記トラバースメカが前記再生位置及び前記退避位置に位置することを検出することを特徴とする請求項1または2記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ディスクトレイが前記露出位置まで移動したこと、及び、前記トラバースメカが前記再生位置まで変位したことに応答して、前記モータの駆動を停止することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−243341(P2008−243341A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86515(P2007−86515)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】