説明

光ディスク装置

【課題】ディセンター調整を行わずにコスト削減を行いつつ、光ディスクの半径位置に関わらずトラッキングサーボを安定化できる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】光ピックアップが光ディスクの内周位置及び少なくとも一つの外周位置に位置するときにトラッキングエラー信号の振幅を測定し、測定された振幅と目標の振幅との比を調整値として算出するトラッキングエラー信号振幅調整部を備え、トラッキング制御部は、光ピックアップの現在の半径位置と前記算出された各調整値に基づく調整値によりトラッキングエラー信号の振幅を調整しつつトラッキング制御を行う光ディスク装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルーレイディスク、DVD、CDなどの光ディスクを対象とする従来の光ディスク装置では、その生産工程において、光ディスクの半径方向に走行する光ピックアップの走行直線が光ディスク中心を通るように調整するディセンター調整といわれる調整が行われていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなディセンター調整が行われた後の従来の光ディスク装置においては、光ディスクの内周位置でトラッキングエラー信号振幅調整(以下、TE振幅調整)が行われた。TE振幅調整とは、トラッキングエラー信号の振幅を測定し、測定された振幅と目標の振幅との比である調整値を算出することをいう。ディセンター調整を行っている場合は、内周位置でのTE振幅調整の調整値を外周位置でのトラッキングエラー信号の調整に適用しても、調整後のトラッキングエラー信号の振幅がほぼ目標の振幅となるので内周位置のみでの調整で問題は無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−332530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ディセンター調整には調整機構(例えば特許文献1)が光ディスク装置に必要であることと、調整作業の人件費が問題となるため、調整機構を設けず、ディセンター調整を行わないこととし、コスト削減を図ることが考えられる。
【0006】
しかしながら、このようにディセンター調整を行わないこととすると、内周位置のみでのTE振幅調整を行い、外周位置でのトラッキングエラー信号に内周位置での調整値を適用すると、内周位置と外周位置とで調整後のトラッキングエラー信号の振幅が大きく変化してしまう(外周位置のほうが振幅は大きくなる。例えば約6dB程度変化)。即ち、外周位置での調整後のトラッキングエラー信号の振幅が目標の振幅から大きくずれてしまう。この場合、外周位置でのトラッキングサーボが不安定となってしまうという問題がある。
【0007】
上記問題点を鑑み、本発明は、ディセンター調整を行わずにコスト削減を行いつつ、光ディスクの半径位置に関わらずトラッキングサーボを安定化できる光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、光ビームを出射する光源と、前記光源からの光ビームを光ディスクの記録面に集光する対物レンズと、前記記録面からの反射光を光電変換する光検出器とを有し、前記光ディスクの半径方向に移動可能な光ピックアップと、
前記光電変換により得られた電気信号に基づきトラッキングエラー信号を生成する信号生成部と、
前記トラッキングエラー信号に基づき前記対物レンズのトラッキング制御を行うトラッキング制御部とを備えた光ディスク装置において、
前記光ピックアップが前記光ディスクの内周位置及び少なくとも一つの外周位置に位置するときに前記トラッキングエラー信号の振幅を測定し、測定された振幅と目標の振幅との比を調整値として算出するトラッキングエラー信号振幅調整部をさらに備え、
前記トラッキング制御部は、前記光ピックアップの現在の半径位置と前記算出された各調整値に基づく調整値により前記トラッキングエラー信号の振幅を調整しつつトラッキング制御を行う構成とする。
【0009】
このような構成によれば、ディセンター調整を行うための調整機構を設けずディセンター調整を行わないコスト低減を図った光ディスク装置であっても、光ディスクの半径方向における調整後のトラッキングエラー信号の振幅の変化を抑えることができる。従って、光ディスクの半径位置に関わらずトラッキングサーボを安定化できる。
【0010】
なお、内周位置及び外周位置とは、半径位置を限定する趣旨ではないが、光ディスクの半径の中心から内周側の位置を内周位置、外周側の位置を外周位置とすることがより好適となる。
【0011】
また、上記構成において、前記トラッキングエラー信号振幅調整部は、前記光ディスクがマウントされたときに前記内周位置での前記調整値を算出し、前記光ピックアップのシーク動作のときに前記少なくとも一つの外周位置での前記調整値を算出する構成としてもよい。このような構成によれば、マウント処理時間が長くなることを抑えることができる。
【0012】
また、上記いずれかの構成において、前記算出された各調整値に基づき近似式を算出する近似式算出部を備え、前記トラッキング制御部は、前記光ピックアップの現在の半径位置と前記算出された近似式に基づく調整値により前記トラッキングエラー信号の振幅を調整する構成としてもよい。特に、前記近似式算出部は、前記算出された各調整値に基づき1次近似直線を算出する構成とすると、処理を簡単化でき好適である。
【0013】
また、上記いずれかの構成において、前記トラッキングエラー信号振幅調整部は、内周位置及び複数箇所の外周位置に位置するときに前記トラッキングエラー信号の振幅を測定し、測定された振幅と目標の振幅との比を調整値として算出する構成としてもよい。このような構成によれば、半径方向における調整後のトラッキングエラー信号の振幅の変化をより抑えることができる。
【0014】
また、上記いずれかの構成において、前記トラッキング制御部は、前記光ピックアップの現在の半径位置が前記少なくとも一つの外周位置のうち最も外周側の外周位置より外周側である場合、当該外周位置での調整値により前記トラッキングエラー信号の振幅を調整しつつトラッキング制御を行う構成としてもよい。このような構成によれば、最も外周側の外周位置より外周側での調整後のトラッキングエラー信号の振幅のずれを抑えることができる。
【0015】
また、上記いずれかの構成において、前記トラッキングエラー信号振幅調整部は第1外周位置での第1調整値を算出し、以降、前記トラッキング制御部は、前記光ピックアップの現在の半径位置と前記内周位置での調整値と第1調整値に基づく調整値により前記トラッキングエラー信号の振幅を調整しつつトラッキング制御を行い、
その後、前記トラッキングエラー信号振幅調整部は第1外周位置より外周側の第2外周位置での第2調整値を算出し、以降、前記トラッキング制御部は、前記光ピックアップの現在の半径位置と前記内周位置での調整値と第2調整値に基づく調整値により前記トラッキングエラー信号の振幅を調整しつつトラッキング制御を行う構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光ディスク装置によると、ディセンター調整を行わずにコスト削減を行いつつ、光ディスクの半径位置に関わらずトラッキングサーボを安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスクプレイヤを示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る光ピックアップの光学系を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るマウント処理に関するフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係るシーク処理に関するフローチャートである。
【図5】本発明の別実施形態に係るシーク処理に関するフローチャートである。
【図6】半径位置と調整未実施のトラッキングエラー信号の振幅及び調整実施後のトラッキングエラー信号の振幅との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
<全体構成について>
図1は、本発明の一実施形態に係るディスクプレイヤ100(光ディスク装置)を示す概略構成図である。ディスクプレイヤ100は、光ピックアップ1、信号生成回路21、DSP(Digital Signal Processor)31、再生処理回路32、出力回路33、システムコントローラ41、ドライバ42、表示部43、操作部44、送りモータ51、及びスピンドルモータ52を備えている。また、ディスクプレイヤ100は、従来のようなディセンター調整を行うための調整機構は設けていない。
【0020】
光ピックアップ1は、光ディスク2に光ビームを照射して、光ディスク2に記録された音声情報、画像情報等の各種情報の読み取りを行う。この光ピックアップ1には、CD用光ビーム、DVD用光ビーム、BD(Blu-ray Disc)用光ビームが設けられている。なお、光ピックアップ1内部の詳細については後述する。
【0021】
信号生成回路21は、光ピックアップ1が含む光検出器19(図2)により得られた信号をもとに演算処理を行い、RF信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号等の各種信号を生成する。そして生成した各種信号を、DSP31へ出力する。
【0022】
DSP31は、信号生成回路21より入力されたRF信号をもとに画像処理を行うことにより画像信号を生成し、再生処理回路32へ与える。再生処理回路32は、画像信号を不図示のモニタへ出力するためにD/A変換処理を行う。変換処理により得られた信号は、出力回路33により外部装置へ出力される。
【0023】
またDSP31は、信号生成回路21より入力されたフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号に基づいてサーボ信号を生成する。例えばトラッキングサーボを行うためのトラッキングサーボ信号や、フォーカスサーボを行うためのフォーカスサーボ信号を生成する。生成されたサーボ信号はドライバ42へ与えられる。これにより例えば、光ピックアップ1が含む対物レンズ17(図2)のトラッキング制御やフォーカス制御等が実施される。
【0024】
システムコントローラ41は、DSP31を介して、光ピックアップ1、送りモータ51、及びスピンドルモータ52等の動作を制御する。なおシステムコントローラ41は、例えば複数のマイクロプロセッサ等の演算処理装置上で所定のプログラムを実行することにより実現される。操作部44は、ユーザからの操作入力を受け付け、各種キー等を有する。表示部43は、再生状態等の各種情報を表示する。
【0025】
ドライバ42は、DSP31から与えられるサーボ信号等に基づいて、光ピックアップ1、送りモータ51、及びスピンドルモータ52の駆動を制御する。送りモータ51は、光ピックアップ1を光ディスク2の半径方向に駆動する。スピンドルモータ52は、光ディスク2を回転方向に駆動する。
【0026】
<光ピックアップの構成について>
図2は、本発明の一実施形態に係る光ピックアップ1の光学系を示す概略図である。光ピックアップ1は、光ディスク2に対して、光ビームを照射して反射光を受光する。これにより、光ディスク2の記録面に記録されている情報を読み取る。
【0027】
光ピックアップ1は、第一光源11aと、第二光源11bと、ダイクロプリズム12と、コリメートレンズ13と、ビームスプリッタ14と、立ち上げミラー15と、液晶素子16と、対物レンズ17と、検出レンズ18と、光検出器19と、アクチュエータ20と、回折格子22と、回折格子23と、1/4波長板24とを備えている。
【0028】
第一光源11aは、DVDに対応する650nm帯の光ビームと、CDに対応する780nm帯の光ビームとを出射できるレーザダイオードである。第二光源11bは、BDに対応する405nm帯の光ビームを出射できるレーザダイオードである。
【0029】
なお、本実施形態では、第一光源11aとして、2種類の波長の光ビームを出射できる二つの発光点を有する2波長一体型のレーザダイオードを用いているが、これに限られる趣旨ではなく、例えば単一の波長の光ビームのみを出射するレーザダイオードを用いても構わない。
【0030】
回折格子22及び回折格子23は、第一光源11a及び第二光源11bから送られてきた光ビームを回折してメインビームと2つのサブビームとに分ける。このようにメインビームとサブビームとに分けるのは、公知の手法であるDPP(Differential Push-Pull)法を用いてトラッキングエラー信号が得られるようにするためである。回折格子22及び回折格子23から出射した光ビームはダイクロプリズム12に送られる。
【0031】
ダイクロプリズム12は、第一光源11aから出射される光ビームを透過し、第二光源11bから出射される光ビームを反射する。そして、第一光源11a及び第二光源11bから出射される光ビームの光軸を一致させる。ダイクロプリズム12において、透過又は反射された光ビームは、コリメートレンズ13に送られる。
【0032】
コリメートレンズ13は、ダイクロプリズム12から出射した光ビームを平行光に変換する。コリメートレンズ13で平行光とされた光ビームは、ビームスプリッタ14に送られる。
【0033】
ビームスプリッタ14は、入射する光ビームを分離する光分離素子として機能し、コリメートレンズ13から送られてきた光ビームを透過して、光ディスク2側へと導くとともに、光ディスク2で反射された反射光を反射して光検出器19側へと導く。ビームスプリッタ14を透過した光ビームは、立ち上げミラー15に送られる。
【0034】
立ち上げミラー15は、ビームスプリッタ14を透過してきた光ビームを反射して光ディスク2へと導く。立ち上げミラー15は、ビームスプリッタ14からの光ビームの光軸に対して45°傾いた状態となっており、立ち上げミラー15で反射された光ビームの光軸は、光ディスク2の記録面と略直交する。立ち上げミラー15で反射された光ビームは、液晶素子16に送られる。
【0035】
液晶素子16は、透明電極に挟まれた液晶(いずれも図示せず)に電圧を印加することで、液晶分子がその配向方向を変える性質を利用して、屈折率の変化を制御し、液晶素子16を透過する光ビームの位相の制御を可能とする素子である。
【0036】
この液晶素子16を配置することによって、光ディスク2の記録面を保護する樹脂層の厚みの違い等によって生じる球面収差の補正が可能となる。液晶素子16を通過した光ビームは1/4波長板24へ送られる。
【0037】
1/4波長板24は、入射する直線偏光を円偏光に変換するとともに、入射する円偏光を直線偏光に変換する機能を有する。液晶素子16から送られて1/4波長板24を通過するレーザ光は、直線偏光から円偏光へと変換されて対物レンズ17に送られる。
【0038】
対物レンズ17は、1/4波長板24を透過した光ビームを光ディスク2の記録面上に集光させる。また、対物レンズ17は後述するアクチュエータ20によって、例えば、図2の上下方向(光ディスク2の記録面に対する垂直方向)及び左右方向(光ディスク2の半径方向)に移動可能とされており、フォーカスサーボ信号及びトラッキングサーボ信号に基づいてその位置が制御される。
【0039】
光ディスク2で反射された反射光は、対物レンズ17、1/4波長板24、液晶素子16の順に通過し、立ち上げミラー15で反射された後、さらにビームスプリッタ14で反射されて、検出レンズ18によって光検出器19上に設けられる受光素子へと集光される。
【0040】
光検出器19は、フォトダイオード等の受光素子を用いて受光した光を、電気信号に変換して信号生成回路21へ出力する。光検出器19は例えば四分割されたメインビームを受光する受光領域と、二分割されたサブビームを受光する受光領域とを備えており、領域ごとに個別に光電変換を行って電気信号を出力することが可能である。
【0041】
アクチュエータ20は、ドライバ42(図1)で生成され出力された対物レンズ駆動信号に従って、対物レンズ17を光ディスク2の半径方向に移動させる。アクチュエータ20は、例えば永久磁石(不図示)によって形成される磁界内に位置するコイル(不図示)に駆動電流を流し、ローレンツ力にて対物レンズ17を駆動することができるものであればよい。
【0042】
またアクチュエータ20は、対物レンズ17を光ディスク2の記録面に沿う方向に移動させるトラッキング動作の他に、対物レンズ17より照射される光ビームの光軸が揺動するように対物レンズ17を傾動させるチルト動作や、対物レンズ17を光ディスク2に対して接近離反するように移動させるフォーカス動作も行うことができる。
【0043】
<マウント処理について>
次に、本発明の一実施形態に係る光ディスクのマウント処理を、図3のフローチャートを用いながら説明する。図3に示す本処理は、ディスクプレイヤ100に対する光ディスク2の装着がシステムコントローラ41により検知された場合に開始される。
【0044】
上記検知したシステムコントローラ41はステップS1において、送りモータ51により光ピックアップ1を光ディスク2の内周位置に移動させるようDSP31へ指示する。ここでの内周位置は、直径が120mmの光ディスクであれば、例えば半径24mm位置である。
【0045】
次にシステムコントローラ41はステップS2において、DSP31への指示により、光ディスク2のBD、DVD、CDといった種別を判別する。
【0046】
次にシステムコントローラ41はステップS3において、フォーカスエラー信号の振幅調整を行うと共に、フォーカスエラー信号のS字バランス調整を行う。
【0047】
次にシステムコントローラ41はステップS4において、上記で得られたS字バランス調整値を用いてフォーカスサーボを開始するよう、DSP31へ指示する。指示を受けたDSP31は、アクチュエータ20の駆動をドライバ42へ指示することにより、対物レンズ17のフォーカス制御を行う。
【0048】
次にシステムコントローラ41はステップS5において、TE振幅調整を行う。ここでは、システムコントローラ41は、トラッキングエラー信号の振幅を測定し、測定された振幅と目標の振幅との比を調整値として算出する。
【0049】
次にシステムコントローラ41はステップS6において、トラッキングバランス調整等のトラッキング系の調整を実施する。さらにステップS7において、システムコントローラ41はトラッキングサーボを開始するよう、DSP31へ指示する。
【0050】
さらにステップS8において、トラッキングサーボ開始後の各種調整、例えばフォーカスゲイン調整やトラックゲイン調整を実施するよう、DSP31へ指示する。また、ステップS8においてシステムコントローラ41は、S字バランス調整を再実施する。これにより、調整精度を向上させる。さらに、ステップS8においてシステムコントローラ41は、その他の各種調整を実施するよう、DSP31へ指示する。この各種調整には例えば、球面収差調整、RF振幅調整、チルト調整、RFイコライザ調整等が含まれる。これらの各種調整が完了するとマウント処理が終了する。
【0051】
<シーク処理の第1実施形態>
次に、本発明の一実施形態に係る光ディスクのシーク処理を、図4のフローチャートを用いながら説明する。図4に示す本処理は、マウント処理が完了しており、且つシーク処理の実行指示が検知された場合に開始される。
【0052】
まず、ステップS11で、システムコントローラ41は、光ディスク2上の目標アドレス位置まで光ピックアップ2を光ディスク1の半径方向に移動させるようDSP31に指示し、DSP31により光ピックアップ2が目標アドレス位置まで移動制御される。このようにシーク動作が実施される。
【0053】
ステップS11でシーク動作が完了すると、ステップS12に進み、システムコントローラ41は、外周位置でのTE振幅調整が実施済であるか否かを判定する。そして、実施済でなければ(ステップS12のN)、ステップS15に進む。
【0054】
ステップS15で、システムコントローラ41は、現在の光ピックアップ2の半径位置を目標アドレスから算出し、算出された半径位置が所定値αを超えるか否かを判定する。ここで、所定値αは、直径120mmの光ディスクである場合、例えば40mmとする。
【0055】
もし、半径位置が所定値αを超えていれば(ステップS15のY)、ステップS16に進み、システムコントローラ41は、TE振幅調整を実施する。そして、ステップS17に進み、システムコントローラ41は、マウント処理において内周位置で行われたTE振幅調整による調整値と、ステップS16でのTE振幅調整による調整値(即ち、外周位置での調整値)とから、各調整値を通る1次近似直線(半径位置と調整値の関係を表す直線、以下同じ)を算出する。
【0056】
ステップS17の後、ステップS13に進み、システムコントローラ41は、現在の半径位置及び算出された1次近似直線から、半径位置に対応する1次近似直線上の調整値を算出する。そして、システムコントローラ41は、算出された調整値をDSP31に設定する。
【0057】
そして、ステップS14で、システムコントローラ41は、トラッキングサーボを開始するようDSP31に指示する。すると、DSP31は、設定された調整値によりトラッキングエラー信号の振幅を調整しつつトラッキングサーボを開始する。これにより、シーク処理は終了となる。
【0058】
もしステップS15で、半径位置が所定値α以下であれば(ステップS15のN)、ステップS18に進み、システムコントローラ41は、マウント処理において内周位置で行われたTE振幅調整による調整値をDSP31に設定する。そして、ステップS14で、設定された調整値を用いたトラッキングサーボが開始される。
【0059】
また、ステップS16で外周位置でのTE振幅調整が実施されると、以降、ステップS12の判定では実施済となり(ステップS12のY)、ステップS13に進む。ステップS13で、現在の半径位置及び算出された1次近似直線から調整値が算出・設定され、ステップS14で、設定された調整値を用いたトラッキングサーボが開始される。
【0060】
このようなシーク処理によれば、ディセンター調整を行わなくても、光ディスクの半径方向における調整後のトラッキングエラー信号の振幅の変化を抑えることができ、光ディスクの半径位置に関わらずトラッキングサーボを安定化できる。また、マウント処理ではないシーク処理において外周位置でのTE振幅調整を行うため、マウント処理時間を長くすることもない。
【0061】
ここで、図6に、半径位置と調整未実施のトラッキングエラー信号の振幅(白四角)及び調整実施後のトラッキングエラー信号の振幅(黒三角)との関係の一例を示す。図6のように、半径方向における調整実施後のトラッキングエラー信号の振幅の変化が抑えられていることが分かる(図6の黒三角)。なお、図6に示すように調整未実施でのトラッキングエラー信号の振幅の傾きは内周側より外周側が緩やかになる場合がある(図6の白四角)。この場合、TE振幅調整を行った外周位置(以下、外周調整位置)よりも外周側において1次近似直線を用いてトラッキングエラー信号の振幅を調整すると、目標の振幅からずれやすい。そこで、図4のステップS13で、半径位置が外周調整位置よりも外周側の場合は、1次近似直線による算出は行わずに、外周調整位置での調整値を設定するようにしてもよい(図6の右端の黒三角)。
【0062】
<シーク処理の第2実施形態>
次に、本発明の別実施形態に係る光ディスクのシーク処理を、図5のフローチャートを用いながら説明する。図5に示す本処理は、マウント処理が完了しており、且つシーク処理の実行指示が検知された場合に開始される。なお、図4と同様の事柄については説明を簡略化しつつ説明する。
【0063】
まず、ステップS21で、シーク動作が実施される。そして、シーク動作が完了すると、ステップS22に進み、システムコントローラ41は、半径位置が所定値αを超えた外周位置でのTE振幅調整が実施済であるか否かを判定する。そして、実施済でなければ(ステップS22のN)、ステップS25に進む。なお、所定値αは、直径120mmの光ディスクである場合、例えば50mmとする。
【0064】
ステップS25で、システムコントローラ41は、半径位置が所定値β(<所定値α)を超えた外周位置でのTE振幅調整が実施済であるか否かを判定する。そして、実施済でなければ(ステップS25のN)、ステップS29に進む。なお、所定値βは、直径120mmの光ディスクである場合、例えば40mmとする。
【0065】
ステップS29で、システムコントローラ41は、現在の光ピックアップ2の半径位置を目標アドレスから算出し、算出された半径位置が所定値βを超えるか否かを判定する。
【0066】
もし、半径位置が所定値βを超えていれば(ステップS29のY)、ステップS30に進み、システムコントローラ41は、TE振幅調整を実施する。そして、ステップS31に進み、システムコントローラ41は、マウント処理において内周位置で行われたTE振幅調整による調整値と、ステップS30でのTE振幅調整による調整値(即ち、外周位置での調整値)とから、各調整値を通る1次近似直線を算出する。
【0067】
ステップS31の後、ステップS23に進み、システムコントローラ41は、現在の半径位置及び算出された1次近似直線から、半径位置に対応する1次近似直線上の調整値を算出する。そして、システムコントローラ41は、算出された調整値をDSP31に設定する。
【0068】
そして、ステップS24で、システムコントローラ41は、トラッキングサーボを開始するようDSP31に指示する。すると、DSP31は、設定された調整値によりトラッキングエラー信号の振幅を調整しつつトラッキングサーボを開始する。これにより、シーク処理は終了となる。
【0069】
もしステップS29で、半径位置が所定値β以下であれば(ステップS29のN)、ステップS32に進み、システムコントローラ41は、マウント処理において内周位置で行われたTE振幅調整による調整値をDSP31に設定する。そして、ステップS24で、設定された調整値を用いたトラッキングサーボが開始される。
【0070】
また、ステップS29で、半径位置が所定値βを超えた場合に、半径位置が所定値αをも超えている場合は、以降のシーク処理時に、ステップS22で半径位置が所定値αを超える外周位置でのTE振幅調整が実施済と判定されるので(ステップS22のY)、ステップS23に進むこととなる。
【0071】
また、ステップS29で、半径位置が所定値βを超えたが所定値αは超えていない場合は、次回のシーク処理時に、ステップS22で半径位置が所定値αを超える外周位置でのTE振幅調整が実施済でないと判定されるので(ステップS22のN)、ステップS25に進む。そして、ステップS25では、半径位置が所定値βを超える外周位置でのTE振幅調整は実施済であると判定されるので(ステップS25のY)、ステップS26に進む。
【0072】
ステップS26で、システムコントローラ41は、現在の光ピックアップ2の半径位置が所定値αを超えるか否かを判定する。もし所定値α以下であれば(ステップS26のN)、ステップS23に進み、現在算出されている1次近似直線より調整値が算出・設定されることとなる。
【0073】
もしステップS26で、半径位置が所定値αを超えた場合は(ステップS26のY)、ステップS327に進み、システムコントローラ41は、TE振幅調整を実施する。そして、ステップS28に進み、システムコントローラ41は、マウント処理において内周位置で行われたTE振幅調整による調整値と、ステップS27でのTE振幅調整による調整値(即ち、外周位置での調整値)とから、各調整値を通る1次近似直線を算出する。そして、ステップS23に進むこととなる。以降のシーク処理時には、ステップS22で“Y”と判定されるので、ステップS23に進み、直近に算出された1次近似直線より調整値が算出・設定されることとなる。
【0074】
なお、ステップS22で“Y”と判定されてステップS23に進む場合は、ステップS23で、現在の半径位置がTE振幅調整を実施した所定値αを超える外周位置(以下、外周調整位置)より外周側である場合は、1次近似直線を用いた算出を行わずに、外周調整位置での調整値を設定するようにしてもよい。
【0075】
また、図5のステップS28において、ステップS30でのTE振幅調整による調整値と、ステップS27でのTE振幅調整による調整値とから、各調整値を通る1次近似直線を算出するようにしてもよい。即ち、この時点で2つの1次近似直線から成る折れ線が算出されていることになる。そして、以降のシーク処理時には、ステップS22で“Y”と判定されてステップS23に進むが、ここでは、現在の半径位置と上記折れ線より調整値を算出・設定するようにする。これにより、半径方向における調整後のトラッキングエラー信号の振幅の変化をより抑えることができる。
【0076】
<変形例について>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々変更が可能である。
【0077】
例えば、上記実施形態では調整値の1次近似直線を算出するようにしていたが、多次近似曲線や対数近似曲線等の算出を行うようにしてもよい。
【0078】
また、例えば、図4のステップS17での1次近似直線の算出は行わずに、ステップS13で、現在の半径位置、内周側の調整位置・調整値及び外周側の調整位置・調整値から、1次近似直線の算出は行わずに現在の半径位置に対応する調整値を直接算出してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では光ディスクを再生するディスクプレイヤを例として説明したが、光ディスクに対して記録を行う例えばBDレコーダ等に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0080】
100 ディスクプレイヤ(光ディスク装置)
1 光ピックアップ
2 光ディスク
11a 第一光源
11b 第二光源
12 ダイクロプリズム
13 コリメータレンズ
14 ビームスプリッタ
15 立ち上げミラー
16 液晶素子
17 対物レンズ
18 検出レンズ
19 光検出器
20 アクチュエータ
21 信号生成回路(信号生成部)
22 回折格子
23 回折格子
24 1/4波長板
31 DSP(トラッキング制御部)
32 再生処理回路
33 出力回路
41 システムコントローラ(トラッキングエラー信号振幅調整部、近似式算出部)
42 ドライバ
43 表示部
44 操作部
51 送りモータ
52 スピンドルモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを出射する光源と、前記光源からの光ビームを光ディスクの記録面に集光する対物レンズと、前記記録面からの反射光を光電変換する光検出器とを有し、前記光ディスクの半径方向に移動可能な光ピックアップと、
前記光電変換により得られた電気信号に基づきトラッキングエラー信号を生成する信号生成部と、
前記トラッキングエラー信号に基づき前記対物レンズのトラッキング制御を行うトラッキング制御部とを備えた光ディスク装置において、
前記光ピックアップが前記光ディスクの内周位置及び少なくとも一つの外周位置に位置するときに前記トラッキングエラー信号の振幅を測定し、測定された振幅と目標の振幅との比を調整値として算出するトラッキングエラー信号振幅調整部をさらに備え、
前記トラッキング制御部は、前記光ピックアップの現在の半径位置と前記算出された各調整値に基づく調整値により前記トラッキングエラー信号の振幅を調整しつつトラッキング制御を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記トラッキングエラー信号振幅調整部は、前記光ディスクがマウントされたときに前記内周位置での前記調整値を算出し、前記光ピックアップのシーク動作のときに前記少なくとも一つの外周位置での前記調整値を算出することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記算出された各調整値に基づき近似式を算出する近似式算出部を備え、前記トラッキング制御部は、前記光ピックアップの現在の半径位置と前記算出された近似式に基づく調整値により前記トラッキングエラー信号の振幅を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記近似式算出部は、前記算出された各調整値に基づき1次近似直線を算出することを特徴とする請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記トラッキングエラー信号振幅調整部は、内周位置及び複数箇所の外周位置に位置するときに前記トラッキングエラー信号の振幅を測定し、測定された振幅と目標の振幅との比を調整値として算出することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記トラッキング制御部は、前記光ピックアップの現在の半径位置が前記少なくとも一つの外周位置のうち最も外周側の外周位置より外周側である場合、当該外周位置での調整値により前記トラッキングエラー信号の振幅を調整しつつトラッキング制御を行うことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項7】
前記トラッキングエラー信号振幅調整部は第1外周位置での第1調整値を算出し、以降、前記トラッキング制御部は、前記光ピックアップの現在の半径位置と前記内周位置での調整値と第1調整値に基づく調整値により前記トラッキングエラー信号の振幅を調整しつつトラッキング制御を行い、
その後、前記トラッキングエラー信号振幅調整部は第1外周位置より外周側の第2外周位置での第2調整値を算出し、以降、前記トラッキング制御部は、前記光ピックアップの現在の半径位置と前記内周位置での調整値と第2調整値に基づく調整値により前記トラッキングエラー信号の振幅を調整しつつトラッキング制御を行うことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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