光データ記憶媒体における付加色素の使用
【課題】書込み及び読出し段階で他のデータ層に影響を及ぼすことなしに多くのデータ層を支持できる媒体を得る。
【解決手段】光媒体140又はかかる媒体用として適した組成物はポリマーマトリックス又は基板を含んでいる。エネルギー移動色素のような色素が、例えば1以上の共有結合により、ポリマーマトリックス又は基板に化学結合している。
【解決手段】光媒体140又はかかる媒体用として適した組成物はポリマーマトリックス又は基板を含んでいる。エネルギー移動色素のような色素が、例えば1以上の共有結合により、ポリマーマトリックス又は基板に化学結合している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物及び光データ記憶媒体並びに光データ記憶媒体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に述べると、逆可飽和吸収体(RSA)は、所定の波長で極めて小さい線形吸収を有していて、この波長の光をほとんどすべて透過する化合物である。しかし、これら所定の波長で高強度のレーザーパワーに暴露されると、低レベルの線形吸収は、分子が高い吸収断面積を有して同じ波長で高吸収性を示す状態に変わり、その分子は以後の光子を強く吸収するようになり得る。例えば、多くのRSAは、532nmの波長を有する入射化学線で照射された場合に光励起を受ける。この波長は可視スペクトルの緑色部分にあるので、これらのRSAは通例「緑色」RSAといわれることがある。
【0003】
最近、ある種のRSAはデータ記憶システムの分野で有用であることが判明した。データの読出し又は書込みが例えばディスクに光を照射することで達成される光データ記憶は、他の手段(例えば、磁気媒体を読み出すための磁気感受性ヘッド又はビニル樹脂に記録された媒体を読み出すための針)によって読み出さなければならない媒体に記録されたデータに比べて利点がある。また、ビニル樹脂媒体に記憶できるデータより多くのデータを小さい媒体に光学的に記憶することができる。さらに、データを読み出すために接触が不要であるので、光媒体はビニル樹脂媒体のように繰り返して使用する間に劣化を生じる恐れが少ない。
【0004】
光データ記憶媒体はまた、磁気記憶媒体に比べても複数の利点がある。例えば、磁気ディスクドライブと異なり、光データ記憶媒体は、データの保管及びバックアップ、非接続システム間でのコンテンツの共有、並びに事前記録コンテンツの配布のために容易に適するリムーバブル媒体として最も普通に提供されている。リムーバブル磁気媒体(例えば、磁気テープ)も利用可能であるが、かかる媒体上に記憶された情報の寿命は通例10〜12年に限定され、媒体は一般にやや高価であり、データアクセスは遅い。それとは対照的に、光データ記憶媒体は、リムーバブル記録型媒体及び/又は事前記録媒体の融通性、速いデータアクセス時間、並びに消費者のコンピューター及びエンタテインメントシステムにとって十分に手ごろな媒体及びドライブの確実で安価な製造を可能にすることができる。
【0005】
それでもなお、従来の光データ記憶媒体には制限がある。第一に、光媒体の記憶密度は記録ビットの最小サイズに関する物理的制約によって制限される。光記憶の別の制限は、データが通常、表面上に位置するか或いは媒体内部にサンドイッチされた1つ又は2つの分離した層に記憶されることである。情報を深さ方向に記録すれば記憶容量を増加させることができるが、それを行うための方法(即ち、漂白及び光反応)は読出し可能なマークを生み出すために大量の光パワーを必要とする。その結果、これら従来の3D記録方法を用いる記録の速度は遅い。さらに、これらの方法で使用される媒体は光エネルギーに対して線形応答を示すのが通例であり、その結果として、データを記録した後に媒体の感光性を除去して意図されない消去、データ喪失などを排除するために何らかの機構を必要とすることがある。
【0006】
ホログラフィック記憶は、データをホログラムとして表す光データ記憶である。ホログラムは、2つの光ビームの交わりによって感光性媒体内に生じる三次元干渉パターン像である
さらに詳しくは、参照ビームとデジタルコード化されたデータを含む信号ビームとを重ね合わせることで、媒体の体積内で3D干渉パターンが形成され、これが感光性媒体の屈折率を変化または変調させる化学反応を引き起こす。このような変調が、信号からの強度及び位相情報の両方をホログラムとして記録する。ホログラムは後に、記憶媒体を参照ビームのみに暴露することで再生することができる。この参照ビームは、記憶されたホログラフィックデータと相互作用し、ホログラフィック画像を記憶するのに使用した初期信号ビームに比例した再構成信号ビームを生成する。
【0007】
ホログラフィック記憶に関する初期の試みは、ページ単位アプローチに頼っていた。即ち、この場合、デジタル情報のビットは、ホログラムを記録した必然的に線形の媒体の「スライス」を横切る論理0及び論理1の二次元配列として体積ホログラムにコード化される。媒体の比較的大きい体積を使用するので、ページ単位アプローチを使用するために必要な記録及び読出し装置は複雑で高価なものとなることがあり、また媒体内部での読出し又は書込みは温度変動及び振動並びに書込み又は読出し波長又は強度の小さな変動に対して非常に敏感である。
【0008】
これらの欠点の結果として、ホログラフィックデータ記憶に関する最近の研究はビット単位アプローチに集中している。この場合、情報の各ビット(又は数ビット)を媒体内部の微視的体積に局在化されたホログラムによって表すことで、読出し光を反射する領域が生み出される。かかる局在化体積ホログラフィックマイクロ反射体は、媒体の全体積にわたって複数のデータ層に配列することができる。このような配列状態では、層のデータの読出し及び記録が隣接層を記録/読出し放射に暴露することを避けられない。したがって、単一ビット用途では線形材料がホログラフィックデータ記憶のために役立つことが示されているものの、書込み及び読出し段階で他のデータ層に影響を及ぼすことなしに多くのデータ層を支持できる媒体が得られればさらに有利であろう。
【0009】
ビット単位データ記憶アプローチに対処し得る材料が強く求められている。これは、かかる材料に対する読出し及び書込みのために使用する装置が現在商業的に入手可能であるか、或いは商業的に容易に入手できる読出し及び書込み装置に修正を施すことで容易に得られるからである。さらに、ビット単位アプローチによるホログラフィックデータ記憶は、ページ単位アプローチを用いて記憶されたホログラフィックデータに比べ、温度、波長、強度変動及び振動に対してよく耐える。ホログラム、特にマイクロホログラムの記録に際して最適に有用であるためには、ビット単位データ記憶材料は通例は非線形であり、さらに通例は記録光に応答して少なくとも約0.005〜約0.05の屈折率変化(Δn)を示す。結局、記録光によって材料に生じる屈折率変調の大きさが所定のシステム構成に関する回折効率を規定し、これが信号/ノイズ比、ビット誤り率及び達成可能なデータ密度に変換される。
【0010】
このように、記録光強度に対して非線形(又は「閾値型」)応答を示すことができ、ビット単位ホログラフィックデータ記憶のために適した光データ記憶媒体に対するニーズが今なお存在している。特に、媒体に記憶されるホログラムの深さが限定される結果として容量の増加が実現できれば有利であろう。さらに、かかるデータ記憶媒体には、周囲の媒体の屈折率が大きく変化せずかつ様々な深さにおけるホログラム効率の実質的な低下が見られないようにして書込みを行うことが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7928155号明細書
【発明の概要】
【0012】
一態様では、組成物が提供される。かかる組成物は、ポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックス中に配置され、励起時に光化学変化を受けることができる反応体とを含んでいる。かかる組成物はまた、ポリマーマトリックスに化学結合した非線形増感剤を含んでいる。非線形増感剤は、1以上の波長の放射への暴露時に反応体に屈折率変化を引き起こす。
【0013】
さらに別の実施形態では、光データ記憶媒体が提供される。かかる媒体は、ポリマーマトリックスと、励起時に光化学変化を受けることで屈折率変化を引き起こすことができる反応体とを含んでいる。かかる媒体はまた、反応体が1以上の波長の放射に暴露された場合に反応体の励起を引き起こすことができる非線形増感剤を含んでいる。非線形増感剤はポリマーマトリックスに化学結合している。
【0014】
追加の実施形態では、光データ記憶媒体が提供される。かかる媒体は、相異なる横方向位置及び深さに形成された複数のマイクロホログラムを有するポリマーマトリックスを含んでいる。かかる媒体はた、ポリマーマトリックス中のポリマーに化学結合されたエネルギー移動色素を含んでいる。
【0015】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読んだ場合に一層よく理解されよう。添付の図面では、図面全体を通じて類似の部分は同一の符号で表されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、逆可飽和吸収を示す増感剤に関する上位三重項Tn励起状態の吸収及び結果として生じるエネルギー移動を示す模式的エネルギー準位図である。
【図2】図2は、化学線に対する線形増感剤の応答を示すグラフである。
【図3】図3は、化学線に対する閾値型増感剤の応答を示すグラフである。
【図4】図4は光データ記憶媒体の断面図であって、媒体が線形増感剤を含む場合における化学線の影響領域及び媒体が閾値型増感剤を含む場合における化学線の影響領域を示している。
【図5】図5は、本開示の態様に係るドープト色素実施形態及び付加色素実施形態に関し、回折効率をレーザー強度の関数として示すグラフである。
【図6】図6は、本開示の態様に係るドープト色素実施形態及び付加色素実施形態に関し、感度をレーザー強度の関数として示すグラフである。
【図7】図7は、本開示の態様に従って好適な色素を製造する際に起こり得る化学反応を示している。
【図8】図8は、本開示の態様に従ってフェノキシサブフタロシアニンを製造する際に起こり得る化学反応を示している。
【図9】図9は、本開示の態様に従ってフェノキシ化合物を製造する際に起こり得る化学反応を示している。
【図10】図10は、本開示の態様に従って起こり得る化学反応を示している。
【図11】図11は、本開示の態様に従って色素の酸塩化物誘導体を製造する際に起こり得る化学反応を示している。
【図12】図12は、光データ記憶媒体の一実施形態に記録されたマイクロホログラムのアレイの反射率を示すグラフである。
【図13】図13は、60J/cm2の固定記録フルエンスに関し、光データ記憶媒体の一実施形態の回折効率を強度の関数として示すグラフである。
【図14】図14は、本開示の態様に従ってポリビニルシンナメートを製造する際に起こり得る化学反応を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特記しない限り、本明細書で用いる技術的及び科学的用語は、ここに開示される主題に関して当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書で用いる「第1」、「第2」などの用語はいかなる順序、数量又は重要度も表すわけではなく、むしろある構成要素を別の構成要素から区別するために使用される。また、冠詞“a”及び“an”は数量の限定を意味するわけではなく、むしろ記載されたものの1以上が存在することを意味する。特記しない限り、「前部」、「後部」、「下部」及び/又は「上部」という用語は記載の便宜のために使用されるものにすぎず、いかなる1つの位置又は空間的配置にも限定されない。範囲が開示される場合、同一の成分又は性質に関するすべての範囲の端点は包含されかつ独立に結合可能である(例えば、「約25wt%以下、さらに詳しくは約5〜約20wt%」という範囲は端点を含むと共に、「約5〜約25wt%」などの範囲内のすべての中間値を含む)。数量に関連して使用される「約」という修飾語は記載された値を含むと共に、前後関係から指示される意味を有する(例えば、特定の数量の測定に関連する誤差の程度を含む)。
【0018】
本明細書で用いる「回折効率」とは、ホログラムによって反射されるビームパワーの割合をホログラムの位置で入射プローブビームパワーに対して測定した値を意味する一方、「量子効率」とは、吸収された光子が屈折率変化を生み出す化学変化をもたらす確率を意味する。「フルエンス」とは、ビーム横断面の単位面積を横切った光ビームエネルギーの量(例えば、ジュール/cm2単位で測定した値)を意味する一方、「強度」とは光放射束密度、例えば単位時間にビーム横断面の単位面積を横切るエネルギーの量(例えば、ワット/cm2単位で測定した値)を意味する。
【0019】
本開示は、反応体及び非線形増感剤を含む組成物に関する。ある種の実施形態では、かかる組成物は、三重項励起(Tn;n>1)時に変化を受けることができる反応体、及び1種以上のサブフタロシアニン(サブPC)逆可飽和吸収体(RSA)のような非線形増感剤を含んでいる。非線形増感剤は、入射化学線を(例えば、1以上の光子の形態で)吸収し、次いでエネルギーを反応体分子に移動して反応体から生成物への分子転位を誘起することができる。一実施形態では、光データ記憶媒体(例えば、ディスクの形態で提供される媒体)で使用される非線形増感剤は、非常に短い寿命(ナノ秒乃至数マイクロ秒)を有する上位三重項状態(Tn、ただしn>1)から反応体にエネルギーを移動することができる。
【0020】
若干の実施形態では、本発明の非線形増感剤は2つの光子を通例は逐次に吸収し得る。また、本明細書に記載される増感剤は、吸収したエネルギーを反応体に移動した後に元の状態に戻り、この過程を何度も繰り返すことができる。かくして、エネルギーを吸収してそれを1種以上の反応体に放出する能力は時間の経過に伴って低下することがあるものの、増感剤は時間が経過しても実質的に消費されない。これは感光性材料として従来知られている材料とは対照的である。かかる材料は、エネルギー(通例は単一の光子)を吸収できるが、それを他の分子に移動することはしないで、新しい構造への転換を受けるか、或いは別の分子と反応してその過程で新しい化合物を生成する。
【0021】
一実施形態では、非線形増感剤は逆可飽和吸収(RSA)を示すサブフタロシアニン類を含む。放射を使用するレーザー)と共に使用するのに一層よく適した吸収スペクトル及び非線形光学応答を示すのが通例である。しかし、本実施形態では、本明細書で論議されるサブフタロシアニンRSAの一部は、532nmに比べて405nmでの吸収に対して実質的な透明度を有するので、「青色」レーザー(即ち、約405nmの波長をもった放射を使用するレーザー)との使用に適している。
【0022】
一実施形態では、サブフタロシアニンRSAは、約380〜約450nm(例えば、約405nm)の波長の入射化学線によるサブフタロシアニンRSAの光励起時に上位三重項(T2)状態に入り、この上位励起三重項状態(Tn)から隣接する反応体にエネルギーを移動することができる。サブフタロシアニンは、中心金属としてのホウ素原子及び軸配位子をもった円錐状構造を有する14−π電子芳香族分子である。
【0023】
組成物で使用される非線形増感剤の量は、入射化学線の波長におけるそれの光学密度に依存し得る。増感剤の溶解度もまた1つの因子であり得る。一般的に述べると、増感剤は組成物の総重量を基準にして約0.002〜約5重量%の量で使用できる。
【0024】
本発明の組成物に使用される反応体は、三重項励起時に変化を受けることができる。図1を参照すれば、本発明の光データ記憶媒体に使用される反応体122は、矢印116で示される増感剤120のT2状態の三重項エネルギーより低いが、矢印114で示される増感剤120のT1状態の三重項エネルギーより高い、矢印307で示される三重項エネルギーを有している。反応体122はまた、増感剤120の上位三重項状態(T2又はそれ以上)からのエネルギーを受け取り、変化を受けて生成物124を生じることもできる。
【0025】
本明細書で用いる「変化」という用語は、反応体の任意の間接的な光化学反応(例えば、光二量体化又は異性化)を含むものとする。光二量体化は、電子励起された不飽和分子が構造的に類似及び/又は同一の化学種の非励起分子との付加を受けること(例えば、2つのオレフィンが化合してシクロブタン環構造を形成すること)を含む二分子光化学プロセスである。この反応で生じる共有結合は、一般に光生成物として分類できる新しい成分を生み出す。「間接的」という用語が光二量体化或いは光化学反応又は光反応のような用語と共に使用される場合、反応体は光子の吸収から直接にエネルギーを受け取るのではなく、別の分子(例えば、増感剤又は媒介物)が最初に光子を吸収し、次いでそのエネルギーの一部を反応体に移動した後に反応体が二量体化を受けることを意味する。
【0026】
記載される組成物の若干の実施形態で使用するのに適した反応体の例には、特に限定されないが、(i)反応体から生成物への移行に際して要求される体積変化が少なくなるようにして二量体化を受けることができるもの、例えば反応体の直接光励起ではなく、光励起された増感剤から反応体への間接的な「非放射エネルギー移動」(本発明の場合には三重項−三重項エネルギー移動)経路によって二量体化プロセスを受ける反応体、(ii)非線形増感剤が二光子プロセスからエネルギーを受け取ってそのエネルギーを第1の反応体に送達し、次いで第1の反応体が第2の反応体と縮合して生成物を生じるもの、(iii)ポリマー主鎖上で誘導体化された場合、材料の利用可能な容量に対応する非常に大きい屈折率変化を与えることができるもの(例えば、反応体の>85%が生成物に転化されれば、約0.08以上のΔnmaxが達成できるもの)、並びに(iv)ポリマー主鎖上で誘導体化された場合、分子間及び分子内縮合反応の両方を受けることでそれの消費を促進し、増感光反応の高い量子効率の結果として10J/cm2未満の入射フルエンスで所望の屈折率変化(Δn)を与えることができ、ひいては例えば組成物を組み込んだデータ記憶媒体に高い回折効率及び短い記録時間も与えることができるものがある。
【0027】
当業者には理解される通り、ホログラフィックデータ記憶は、ホログラムの個々の干渉縞に関し、周囲の材料に比べて0.005〜0.05程度の屈折率変化(Δn)を生み出し得ることに基づいている。しかし、個々の干渉縞の屈折率を測定することは可能でない。屈折率(RI)の測定は、スピンコート試料を偏光解析装置として知られる計器と共に使用しながらバルク材料に関して行うことができる。かくして、まず最初に、これらの用途で使用される反応性材料を試験することで材料が利用し得る正味のΔnを決定した。これは、未反応試料のRIを測定し、次いで85%を超える材料を反応形態に転化し、RIを再測定してΔnを決定することで行った。ホログラフィックデータ記憶におけるホログラムについての重要な特徴は、1ビットの情報を表すのに十分な量の光を反射(回折)して検出器に戻すことである。これは、材料の回折効率を測定することで判定できる。実験的には、比較的小さい開口数(NA)のレンズを用いて比較的大きいホログラムを書き込むことで、比較的高い回折効率を記録するのが最も容易である。例えば、カップルドウェーブ理論の予測結果に基づけば、所定の大きさの屈折率変調に関しては、DEはホログラム深さの二乗にほぼ比例する。ホログラム深さはNA2にほぼ反比例し、これはDEの総合依存性を約1/NA4にする。かくして、DEはとりわけ反応性材料の応答、使用するレンズのNA、及びホログラムを記録するために使用するフルエンスの関数となる。これらのパラメーターはホログラフィックデータ記憶に取り組む実験者によって異なることが多いので、これらの測定値を近似Δnと互いに関係づけることが材料/システムの好適な比較方法であるかもしれない。
【0028】
増感剤のT1状態とT2状態との間の三重項エネルギー状態を有する任意の反応体が使用でき、したがって適当な反応体の選択は所望の増感剤の選択に依存し得る。好適な反応体には、特に限定されないがスチルベン類がある。本明細書に開示される光記憶媒体(光記憶ディスク)で有用であると予想されるスチルベン類の具体例には、特に限定されないが、トランス−スチルベン、メタ−(又は)パラ−ハロゲン(F、Cl、Br又はI)置換スチルベン、メタ−(又は)パラ−トランス−メチルスチルベン、トランス−[メタ−(又は)パラ−]ニトロスチルベン、トランス−[メタ−(又は)パラ−]シアノスチルベン、トランス−[メタ−(又は)パラ−]メトキシスチルベン、トランス−[3,3’]又は[4,4’]又は[2,4]又は[3,4]−ジメトキシ、ジフルオロ、ジブロモ、ジクロロ、ジヨード置換トランス−スチルベン、トランス−2,4,6−トリメチルスチルベン、トランス−2,2’,4,4’,6,6’−ヘキサメチルスチルベン或いはこれらの組合せがある。
【0029】
さらに詳しくは、好適な反応体には、(E)−1−メトキシ−4−スチリルベンゼン、(E)−1−フルオロ−4−スチリルベンゼン、(E)−1−クロロ−4−スチリルベンゼン、(E)−1−ブロモ−4−スチリルベンゼン、(E)−1−ヨード−4−スチリルベンゼン、(E)−1−メトキシ−3−スチリルベンゼン、(E)−1−フルオロ−3−スチリルベンゼン、(E)−1−クロロ−3−スチリルベンゼン、(E)−1−ブロモ−3−スチリルベンゼン、(E)−1−ヨード−3−スチリルベンゼン、(E)−1−シアノ−4−スチリルベンゼン又はこれらの組合せがある。
【0030】
さらに他の好適な反応体には、(E)−1,2−ビス(4−メトキシフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(4−フルオロフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(4−クロロフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(4−ブロモフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(4−ヨードフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(3−メトキシフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(3−フルオロフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(3−クロロフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(3−ブロモフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(3−ヨードフェニル)エテン又はこれらの組合せがある。
【0031】
さらに他の好適な反応体には、(E)−1−メトキシ−2−(4−メトキシスチリル)ベンゼン、(E)−1−フルオロ−2−(4−フルオロスチリル)ベンゼン、(E)−1−クロロ−2−(4−クロロスチリル)ベンゼン、(E)−1−ブロモ−2−(4−ブロモスチリル)ベンゼン、(E)−1−ヨード−2−(4−ヨードスチリル)ベンゼン、(E)−1−ヨード−2−(4−シアノスチリル)ベンゼン、(E)−1−メトキシ−3−(4−メトキシスチリル)ベンゼン、(E)−1−フルオロ−3−(4−フルオロスチリル)ベンゼン、(E)−1−クロロ−3−(4−クロロスチリル)ベンゼン、(E)−1−ブロモ−3−(4−ブロモスチリル)ベンゼン、(E)−1−ヨード−3−(4−ヨードスチリル)ベンゼン、(E)−1−ヨード−3−(4−シアノスチリル)ベンゼン、(E)−1−メトキシ−2−(3−メトキシスチリル)ベンゼン、(E)−1−フルオロ−2−(3−フルオロスチリル)ベンゼン、(E)−1−クロロ−2−(3−クロロスチリル)ベンゼン、(E)−1−ブロモ−2−(3−ブロモスチリル)ベンゼン、(E)−1−ヨード−2−(3−ヨードスチリル)ベンゼン、(E)−1−ヨード−2−(3−シアノスチリル)ベンゼン又はこれらの組合せがある。
【0032】
他の実施形態では、反応体は、最近発見されかつ2009年8月31日出願の「Optical Data Storage Media and Methods of Using the Same」と題する米国特許出願第12/550521号(本明細書の教示と完全に矛盾しない限り、その開示内容はあらゆる目的のため援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されているもののような、シンナメート材料、シンナメート誘導体及びシンナムアミド誘導体の1種以上を含んでいてもよい。若干の実施形態では、[2+2]間接光二量体化及び間接光重合を受けることができるシンナメート材料が使用できる。これは、405nmにおけるその透明度(無視できるUV吸収)が、シンナメートの線形漂白を最小限に抑え、励起された増感剤からの三重項−三重項エネルギー移動のみを容易にするからである。若干の実施形態では、シンナメート材料はポリビニルシンナメート(PVCm)を含むことができ、ポリビニル主鎖のシンナメート含有量はポリビニルシンナメートの総重量を基準にして約54〜約75wt%の範囲内にある。
【0033】
ポリビニルシンナメート及びシンナムアミド類似体の例には、特に限定されないが、ポリビニルシンナメート(PVCm)、ポリビニル4−クロロシンナメート(PVClCm)、ポリビニル4−メトキシシンナメート(PVMeOCm)、(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニルアクリレート)、(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(4−クロロフェニルアクリレート)、(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(4−メトキシフェニルアクリレート)、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニルアクリルアミド)、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−クロロフェニル)アクリルアミド)及び(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジアリール)ビス(3−(4−メトキシフェニル)アクリルアミド)がある。これらを以下に示す。
【0034】
【化1】
式中、R=H又はシンナメートであり、
X=H(ポリビニルシンナメート(PVCm))、OMe(ポリビニル4−メトキシシンナメート(PVMeOCm))又はCl(ポリビニル4−クロロシンナメート(PVClCm))である。
【0035】
【化2】
式中、X=(パラ)−H:(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニルアクリレート)、又は
X=(パラ)−Cl:(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−クロロフェニル)アクリレート)、又は
X=(パラ)−MeO:(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−メトキシフェニル)アクリレート)である。
【0036】
【化3】
式中、X=(パラ)−H:(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニルアクリルアミド)、又は
X=(パラ)−Cl:(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−クロロフェニル)アクリルアミド)、又は
X=(パラ)−MeO:(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−メトキシフェニル)アクリルアミド)である。
【0037】
効率的な三重項エネルギー移動を促進するため、反応体は比較的高い濃度で存在するのがよい。例えば、反応体は組成物の総重量を基準にして約2〜約80重量%の量で組成物に存在し得る。
【0038】
任意には、組成物はさらに、増感剤から反応体への上位三重項エネルギー移動を助けるための媒介物を含むことができる。媒介物の三重項状態(T1m)は、(a)増感剤の三重項状態(Tn;n>1)より低いが増感剤のT1より高く、かつ(b)反応体の三重項状態(T1r)より高いことが望ましく、理想的には約50〜90kcal/molの範囲内にある。
【0039】
好適な媒介物の例には、特に限定されないが、アセトフェノン(T1≒78kcal/mol)、ジメチルフタレート(T1≒73kcal/mol)、プロピオフェノン(T1≒72.8kcal/mol)、イソブチロフェノン(T1≒71.9kcal/mol)、シクロプロピルフェニルケトン(T1≒71.7kcal/mol)、デオキシベンゾイン(T1≒71.7kcal/mol)、カルバゾール(T1≒69.76kcal/mol)、ジフェニレンオキシド(T1≒69.76kcal/mol)、ジベンゾチオフェン(T1≒69.5kcal/mol)、2−ジベンゾイルベンゼン(T1≒68.57kcal/mol)、ベンゾフェノン(T1≒68kcal/mol)、ポリビニルベンゾフェノン(T1≒68kcal/mol)、1,4−ジアセチルベンゼン(T1≒67.38kcal/mol)、9H−フルオレン(T1≒67kcal/mol)、トリアセチルベンゼン(T1≒65.7kcal/mol)、チオキサントン(T1≒65.2kcal/mol)、ビフェニル(T1≒65kcal/mol)、フェナントレン(T1≒62kcal/mol)、フェナントレン(T1≒61.9kcal/mol)、フラボン(T1≒61.9kcal/mol)、1−ナフトニトリル(T1≒57.2kcal/mol)、ポリ(β−ナフトイルスチレン)(T1≒55.7kcal/mol)、フルオレノン(T1≒55kcal/mol)及びこれらの組合せがある。
【0040】
使用する場合、媒介物の使用量は、自己消光(即ち、媒介物の2つの三重項が出会って媒介物の一重項状態及び基底状態を生み出すこと)を引き起こすほどに多くすべきでない。媒介物の好適量は個々の増感剤にも依存し得る。かかる考慮事項を念頭に置けば、媒介物の有用な濃度は組成物の総重量を基準にして約1〜約20重量%の範囲内であり得る。
【0041】
提供される組成物は、その性質が利益をもたらし得る任意の用途で使用できる。これらの例には、特に限定されないが、光導波路、屈折率分布型レンズ、光データ記憶媒体(例えば、光記憶ディスク)及びデジタルホログラフィックイメージングがある。
【0042】
光導波路は光集積回路の構成部分として使用され、様々な方法で作製できる。1つの方法は、レーザーを用いて感光性材料をパターン化し、ある屈折率材料の「コア」を異なる屈折率の「クラッディング」材料で包囲することで、光を案内するために役立つ構造を形成するものである。一般に、これらの感光性材料は線形応答を示し、パターニングレーザーの波長及び屈折率変化を受ける材料の吸収波長は共に導波路を実際に進行する光の波長から十分に離れた波長であることが必要とされる。これが必要である理由は、導波されるビームがコア内を進行する光と同一又はほぼ同一であれば、それはクラッディング材料を漂白して導波路を広げ始め、それを劣化させて使用不可能にするからである。しかし、これらの材料を使用すれば、媒体はパターニングに際してビームの最高強度領域でのみ変化し、閾値効果と相まって、コア領域とクラッディング領域との間に鮮明なコントラストを生み出すことができる。また、低い強度を有する類似波長の光はコアに沿って進行でき、クラッディング材料を劣化させない。かくして、本明細書に記載される組成物を組み込むことで光導波路を改良できる。
【0043】
屈折率分布型(GRIN)レンズもまた、本明細書に記載される組成物から形成できる。GRINレンズは、その材料の屈折率が媒体の空間座標の関数として連続的に変化するレンズである。本発明の組成物を使用すれば、高パワーで動作するレーザーを用いたパターニングによって組成物をGRINレンズに転化することができる。別法として、一定の組成を有するブランクレンズを同様にしてGRINレンズに改変できる。利点は、漂白によりGRINを消去してレンズを破壊する恐れなしに様々な波長の低パワー光ビームと共にレンズを使用できることである。
【0044】
デジタルホログラフィックイメージングは、特殊な眼鏡の助けなしでの視覚化(裸眼立体視化)のために有用な3D画像を生み出す方法である。これらは、様々な角度から見ることができる超高層ビルが建つ都市のような行政用途及び商業用途の対話型3Dディスプレイを製造するのに有用である。この場合にも、閾値特性を有する記載の組成物を使用すれば、周囲光での漂白の問題なしに適切なパターニングが可能となる。
【0045】
本明細書にはまた、非線形増感剤、反応体及び任意の媒介物に加えて、さらにポリマーマトリックスを含む光データ記憶媒体も提供される。かかる光データ記憶媒体は、化学線に対して非線形応答を示すことができる。即ち、閾値より低い入射レーザー光に対しては屈折率の実質的な変化を示さず、閾値より高ければ屈折率の顕著な変化を示す。一実施形態では、かかる媒体への記録は閾値を超えるパワー(又は強度)を有する光を用いて可能である。しかし、記録されたデータは閾値より低い強度を有する光を用いて繰り返しかつ実質的に非破壊的に読み出すことができる。本発明の光データ記憶媒体に記録されたマイクロホログラムは、それを記録するために使用されるビームよりサイズが小さいと予想される。最後に、かかる媒体は約380〜約450nm(例えば、約405nm)の化学線を吸収して反応体への上位三重項−三重項エネルギー移動を引き起こすことができる増感剤を含む結果、現行の常用記憶フォーマット(例えば、ブルーレイ)との適合性を有しながら媒体の記憶容量が最適化される。
【0046】
光データ記憶媒体は、ポリマーマトリックス中に分散した非線形増感剤及び反応体を含んでいる。非線形増感剤は、入射化学線を(例えば、1以上の光子の形態で)吸収し、次いでエネルギーを反応体分子に移動して反応体から生成物への分子転位を誘起することができ、ひいては生成物が媒体の屈折率の変調を引き起こす。この変調は、入射化学線からの強度及び位相情報をホログラムとして記録する。線形増感剤ではなく非線形(例えば「閾値型」)増感剤を使用することの利点は、図4、図5及び図6を参照することで一層よく理解できよう。
【0047】
さらに詳しくは、図2は入射化学線に対する線形感光性材料の応答を示すのに対し、図3は入射化学線に対する閾値型材料の応答を示している。図2に示されるように、線形感光性材料は記録光のいかなるパワー密度(強度)でも反応を引き起こし、達成される屈折率変化(Δn)の量は材料が受け取る放射エネルギー(フルエンス)が同じであれば同一である。それとは対照的に、閾値型材料は記録光の一定の光強度以上でのみ反応を引き起こす。
【0048】
その結果として、図4に示すように、線形感光性材料を含む光データ記憶媒体140では、区画142として示されるような(例えば、レーザー146から供給される)化学線が通過する実質的にすべての非アドレス指定体積でダイナミックレンジの消費が起こる。それとは対照的に、光データ記憶媒体140が閾値型材料を用いて形成された場合には、非アドレス指定体積でのダイナミックレンジの消費は低減又は排除され、消費は実質的に標的体積(即ち、化学線の焦点144に位置する体積)でしか起こらない。かくして、本発明の光データ記憶媒体に閾値型材料を使用することは、以前に記録されたデータ又は以後の記録のために利用し得る空所(vacant space)の隣接層を破壊することなく、媒体の内部に埋め込まれたビット単位データ層への記録を容易にする。また、細く集束されたレーザービームの光強度は焦点スポットの深さを通して劇的に変化し、通常は(横断面が最も狭くなった)ビームウェストの位置で最大となるので、媒体の閾値応答は材料の転化をビームウェストの直近のみに制限する。これは各層のマイクロホログラムのサイズの縮小をもたらして、本発明の媒体の層データ記憶容量の増加を容易にすることができる結果、媒体の総合データ記憶容量も増加させることができる。閾値型材料を用いて形成されたデータ記憶媒体はまた、周囲光で実質的に安定であり得る結果、かかる周囲光への暴露が媒体に実質的な劣化又は損害をもたらさすことはない。
【0049】
上述の通り、本発明の組成物及び光データ記憶媒体に使用される非線形増感剤は、非常に短い寿命(ナノ秒乃至数マイクロ(μ)秒)を有する上位三重項状態(Tn、ただしn>1)から反応体にエネルギーを移動することができる。Tn状態からエネルギーを移動する能力は、本明細書に提供される光データ記憶媒体に非線形の閾値特性を付与する。即ち、Tn励起状態の吸収は、増感剤が高強度光(例えば、周囲光より2桁以上高い強度を有する光)で励起された場合にのみ感知でき、低エネルギー放射に暴露された場合には無視できるほどに小さい。これにより、非線形増感剤を含む本発明の光データ記憶媒体は低強度放射(例えば、読出し光又は周囲光)に対しては実質的に透明かつ不活性に保たれ、焦点又はその近傍における高エネルギー記録光に応答してその性質(吸光度、したがって屈折率)を変化させるだけである。その結果として、本発明の光データ記憶媒体はマイクロホログラフィックデータのビット単位記録のために所望され及び/又はそのために必要な閾値挙動を示す。
【0050】
上述したことを念頭に置いて図1に戻れば、逆可飽和吸収を示す増感剤に関する上位三重項Tn励起状態の吸収及び結果として生じるエネルギー移動を示す模式的エネルギー準位図が示されている。エネルギー準位図100に示されるように、矢印102は光子が一重項基底状態S0から第1の励起状態S1に遷移する際における光子の基底状態吸収断面積を表している。矢印104で表される系間交差率は、増感剤120が励起一重項状態S1から対応する三重項状態T1に移動する場合に起こるエネルギーの移動を意味している。矢印106は、励起三重項状態の吸収断面積を表している。続く線形吸収によって上位レベルの三重項状態Tnが達成された後には、2つの上位励起崩壊プロセスが可能である。図1に矢印108で示される1つの可能な崩壊プロセスは、下方に位置するT1状態への内部変換(IC)による非放射緩和である。別の可能な崩壊プロセスは図1に矢印110で示され、増感剤120からのエネルギー放出及び三重項−三重項エネルギー移動によるこのエネルギーの反応体122への移動を含んでいる。次いで、反応体122は矢印112で示される変化を受け、ホログラフィック回折格子を形成してそこにデータを記録する。
【0051】
光データ記憶媒体に使用される非線形増感剤の量は、ホログラムを記録するために使用する光の波長におけるそれの光学密度に依存し得る。増感剤の溶解度もまた1つの因子であり得る。一般的に述べると、増感剤は光データ記憶媒体の総重量を基準にして約0.002〜約5重量%の量で使用できる。
【0052】
若干の実施形態では、光データ記憶媒体は高いデータ密度でマイクロホログラムを記録するのに適した屈折率変化(Δn)(例えば、約0.005以上又は約0.05以上、或いはそれ以上の屈折率変化)を示すと予想される。本発明の光データ記憶媒体によって達成できる屈折率変化/回折効率によれば、本媒体はシングルCD又はシングルDVDと同等なサイズのディスク上に約1TBの情報を記憶できる場合がある。
【0053】
また、本明細書に開示される反応体の使用は、通常の反応体に比べて複屈折の顕著な減少をもたらす。最後に、記載される光記録媒体は、捕獲したホログラフィックパターンのにじみを生じることがある熱発生及び近隣位置への信号漏れを低減又は最小化しながら高分解能マイクロホログラムを迅速に生み出す能力をもたらす。
【0054】
ある種の実施形態では、ポリマーマトリックスに光学的性質の大きい変化を生み出すと共に、効率的な三重項エネルギー移動を促進するため、反応体は比較的高い濃度で存在し得る。例えば、反応体は光データ記憶媒体の総重量を基準にして約2〜約80wt%の量で光データ記憶媒体に存在し得る。
【0055】
かかる反応体は、ポリマー主鎖上に誘導体化した場合、光データ記憶媒体に通常の反応体より高い添加量を与える可能性を有し得る。即ち、ポリマー主鎖上に誘導体化した場合における通常の反応体の添加量は約30wt%以下に限定されることがあるのに対し、本明細書に記載される新規反応体ははるかに高い添加量(即ち、光データ記憶媒体の総重量を基準にして約90wt%までにも達する添加量)でポリマー主鎖上に添加することができる。
【0056】
反応体は光データ記憶媒体のポリマーマトリックスに共有結合させるか、或いは他の方法でポリマーマトリックスに結合させることができる。例えば、シンナメートで官能化されたポリマーをポリマーマトリックスとして使用でき、例えばポリビニルシンナメートが商業的に容易に入手できる。この場合、光データ記憶媒体は高い添加量(例えば、光データ記憶媒体の総重量を基準にして約90%までの添加量)の反応体を含んでいてもよい。
【0057】
さらに、使用する場合、任意所望の媒介物をポリマーマトリックスに共有結合させるか、或いは他の方法でポリマーマトリックスに結合させることができる。このようにして媒介物をポリマーマトリックスに組み込めば、一層高い濃度の媒介物を使用することができ、ひいてはデータ記憶媒体の記録効率を高めることができる。
【0058】
所望の増感剤及び反応体並びに任意の光安定剤及び媒介物は、ポリマーマトリックス中に実質的に一様に分散させるか、或いは光データ記憶媒体におけるビット単位のデータ記録が容易になるような任意の方法で分散させることができる。ポリマーマトリックスは、線状、枝分れ若しくは架橋ポリマー又はコポリマー或いは他の適当な媒体であり得る。増感剤及び反応体を実質的に一様に分散させることができる限り、任意のポリマーが使用できる。さらに、使用するポリマーは上位三重項エネルギー移動プロセスを実質的に妨害しないのが通例である。ポリマーマトリックスは、光学的に透明であるか、或いは少なくとも光データ記憶媒体の記録及び読出しのために想定される波長で高い透明度を有するポリマーとして提供され得る。
【0059】
ポリマーマトリックスで使用するのに適したポリマーの特定の例には、特に限定されないが、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のようなポリ(アルキルメタクリレート)、ポリビニルアルコール、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(酢酸ビニル)などがある。
【0060】
ポリマーマトリックスはまた、ジブチルフタレート、ジブチルセバケート又はジ(2−エチルヘキシル)アジペートのような可塑剤を含むことができる。可塑剤は、分子運動を容易にすることで記録効率を高めることができる。典型的な可塑剤レベルは、記憶媒体の総重量を基準にして約1〜約20重量%又は約2〜約10重量%の範囲内にあり得る。
【0061】
上述した論議を念頭に置きながら、ポリビニルシンナメートでのシンナメート光二量化用エネルギー移動剤としてのフェノキシサブフタロシアニン(サブPC)の使用を実施形態の一例として本明細書に記載する。ある種の実施形態では、ポリマー(又は他の適当な)基体(例えば、PVCマトリックス)にドープされたサブフタロシアニン(又は他の適当なエネルギー移動剤)はポリマー基体中で凝集し、不均質性(例えば、自己凝集など)をもたらす傾向がある。例えば、ドープトサブPCがポリビニルシンナメート中で凝集する傾向は、かかるマトリックスにおけるそれの低い溶解度に原因することがある。かかる不均質性は、例えば自己消光によってエネルギー移動の効率を損なうことがある。例えば、RSA色素ドープト材料で≧1%の回折効率(DE)を達成するためには、高い記録フルエンス(例えば、>340J/cm2)が使用されることがある。さらに、ドーピングアプローチは、マトリックスに対するエネルギー移動剤(例えば、色素)の添加量レベル(<3wt%)によって制限されることがある。
【0062】
この傾向を念頭に置けば、本発明で想定されるアプローチの1つは、基体を形成する材料上に直接に付加又は誘導体化することで、色素凝集を防止すると共に、基体での色素材料及び屈折率変化材料の概して均質な分布を与えることができるフェノキシサブPCを設計及び/又は合成することである。本明細書に論議される通り、かかる付加色素を用いるアプローチは、ポリマーマトリックスに対する添加量レベルを(例えば、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%又は10wt%まで)増加させ、マイクロホログラム記録のために十分な感度を得ることができる。例えば、付加色素を用いる一実施形態では、一層低い記録フルエンス(例えば、<340J/cm2、<300J/cm2、<250J/cm2、<2000J/cm2、<150J/cm2、<100J/cm2及び<70J/cm2のフルエンス)を用いて≧1%のDEを得ることができる。
【0063】
例えば、図5及び図6について述べると、ドープされた色素材料(線154及び156)に比べ、ポリマー主鎖に付加された色素材料(線150及び152)を用いて得ることができる回折効率(図5)及び感度(図6)の差を示すグラフが提供される。図5に示す通り、レーザー強度の全測定範囲にわたって高い回折効率が得られている。同様に、図6に示す通り、レーザー強度の全測定範囲にわたって高い感度が得られている。
【0064】
PVCマトリックス実施形態に関しては、屈折率変化材料(即ち、反応体)及び色素組成物をポリマー主鎖に付加又は誘導体化するため(即ち、化学結合させるため)に各種のアプローチを使用できる。例えば、かかる分子(例えば、色素材料)をポリマー主鎖に付加又は誘導体化することは、色素分子と主鎖分子との間に共有結合、イオン結合又は他の化学結合を形成することで達成できる。上述の通り、かかる実施形態は、閾値型色素材料をポリマーマトリックスに別途にドープすることで、反応体(即ち、屈折率変化材料)から生成物への2+2光二量化を誘起して吸収及び屈折率の局部的変化を引き起こす他のアプローチとは対照的であり得る。
【0065】
一実施形態では、シンナメート部分の組込みに先立ち、ポリビニルアルコール主鎖の直接官能化を使用することができる。かかる実施形態では、ある種の色素が酸性及び塩基性条件の存在下では低い熱安定性及び低い加水分解安全性を有するので、色素の選択に配慮するのがよい。シンナメートの形成後に色素を組み込むことも可能である。しかし、基線樹脂色(405nmでの低い吸光度)はこの樹脂に関して有益な特性であり、追加の化学的性質が追加の色を生じることがある。したがって、その代わりとして、実際のポリビニルシンナメート製造との適合性を有する色素結合方法を実施することが有益であろう。
【0066】
例えば、次に図7について述べると、一実施形態でのポリビニルシンナメート製造は、まず通例は88〜100%加水分解されたポリビニルアルコール(I)を高温のn−メチルピロリジノン(NMP)に溶解することを含んでいる。50℃でNMP溶液に塩化シンナモイル(II)を添加することで、PVAをシンナメートで官能化した。酸塩化物は、固体として少量ずつ4時間かけて反応混合物に添加した。得られたPVCは、メタノール中に沈殿させることで単離した。通例、シンナメート官能化は75モル%を超えていた。
【0067】
次に図8について述べると、酸塩化物に容易に転化できる酸付加基を有するサブPC色素を合成すれば、主鎖に組み込まれた色素を有するPVCの効率的な収束的合成法が得られるであろうという仮説を立てた。フェノキシサブPC(III)を製造するための1つの方法は、還流トルエン中でフェノールをサブPC塩化物と反応させることである。したがって、フェノールを酸部分と反応させることは、所望の酸への直接経路を与え得る。
【0068】
図9について述べると、酸置換フェノキシサブPCを製造するためのさらに他の実施形態では、まずサブPC塩化物を置換ジヒドロキシベンゼンと反応させた。図示の通り、サブPC塩化物と対称ジヒドロキシベンゼン(例えば、5−ヨードレソルシノール)との反応は、好適なフェノキシ化合物(VI)を生じた。非対称ジヒドロキシベンゼン(例えば、6−ブロモレソルシノール(VII))は高い転化率で領域異性体の混合物を与えた。この反応は、約7:3の比率で、2−ブロモ異性体(IX)に比べて4−ブロモ異性体(VIII)に有利であった。これらの異性体は、シリカゲルクロマトグラフィーによって容易に分離された。図10について述べると、これらの分子のフェノール性OHを用いることで、無水グルタル酸の開環反応によって脂肪族カルボン酸が連結された。所望の酸への本質的に定量的な転化が実現されて化合物X、XI及びXIIが得られた。塩化メチレン溶液中においてジメチルホルムアミド(DMF)で触媒される塩化オキサリルを用いることで、酸X、XI及びXIIは対応する酸塩化物に転化された(図11)。
【0069】
付加色素を有するPVC樹脂は、標準的なPVC合成法の軽微な変法を用いて製造した。PVC合成法のかかる一実施形態では、酸塩化物(塩化シンナモイル)を固体として少量ずつ4時間かけてPVAの50℃NMP溶液に添加した。色素をPVC主鎖に付加する反応の実施形態では、約50%の塩化シンナモイルを添加した時点で、色素の酸塩化物誘導体(例えば、図11のXIII)を固体として添加した。小規模反応に関しては、PVAの官能化度を向上させるため、色素の酸塩化物を塩化メチレン溶液として添加した。塩化メチレン−色素溶液の添加は、部分シンナモイル化PVAの沈殿をもたらし、時間が経っても再溶解しなかった。したがって、ある種の実施形態では、反応混合物の溶解性を維持するためにPVAは少なくとも40〜50%誘導体化される。また、ある種の実施形態では、色素の酸塩化物は精製せずに使用できる。ニートなポリビニルシンナメートフィルムは405nmで非常に低い吸光度(<0.1au/mmニートフィルム)を有している。ドープト色素を含むフィルムは、通例、添加色素の濃度に応じて0.6au未満であった。結合色素は、ドープト対応品に比べ、405nmでわずかに低い吸光度を有する傾向があった。
【0070】
本明細書に記載される光データ記憶媒体は自立形態を有し得る。別法として、データ記憶媒体は適当な性質を有する任意の支持材上にコートすることもできる。かかる好適な材料の例には、特に限定されないが、ポリメチル(メタクリレート)(PMMA)、ポリカーボネート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリスチレン及び酢酸セルロースがある。支持材が使用される実施形態では、ガラス、石英又はシリコンのような適当な無機支持材を使用することもできる。
【0071】
かかる実施形態では、支持材への光データ記憶媒体の密着性を向上させるために支持材の表面を処理することができる。例えば、光データ記憶媒体の適用に先立ち、支持材の表面をコロナ放電によって処理することができる。別法として、記憶媒体の密着性を高めるため、ハロゲン化フェノール又は部分加水分解塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーのような下塗り塗料を支持材に適用することもできる。
【0072】
一般的に述べると、本明細書に記載される光データ記憶媒体は、所望の増感剤、反応体、媒介物(所望される場合)及びポリマーマトリックスをブレンド又はその他の方法で混合することで製造できる。これらの比率は広範囲にわたって変化することができ、ブレンディングの比率及び方法は当業者であれば容易に決定できる。例えば、増感剤は光データ記憶媒体の総重量を基準にして約0.01〜約90重量%の濃度で存在し得ると共に、付加又はその他の方法でポリマーマトリックスに結合できる。反応体は、光データ記憶媒体の総重量を基準にして約2〜約80重量%、さらには約90重量%までの濃度で存在し得る。
【実施例】
【0073】
実施例1〜3 マイクロホログラム記録
試料の調製
マイクロホログラムを実証すると共に、マイクロホログラムを書き込んだ後の反射率を記録するための薄膜試料を以下のようにして調製した。
【0074】
実施例1
ホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−グルタリルフェノキシド誘導体(X)/ポリビニルシンナメート(PVCm)。ジクロロエタン/塩化メチレン溶媒混合物(15g、体積比2:8)を溶媒として、2wt%のサブフタロシアニン色素を含むPVCm(0.870g)を溶解した。0.45μmフィルターを用いて溶液を濾過し、ガラスプレートセットアップ上に載せたガラスリム(直径5cm)上に注ぎ、約45℃に5時間及び約75℃に一晩保ったホットプレート上で乾燥した。ホットプレート上での乾燥後、フィルムをガラスプレートから取り外し、70℃で一晩真空乾燥した。後に、フィルムを真空オーブン内において70℃で2日間乾燥した。
【0075】
実施例2
ジクロロエタン/塩化メチレン溶媒混合物(15g、体積比2:8)を溶媒として、ポリビニルシンナメート(PVCm)主鎖(XIV)に2wt%のホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−グルタリルフェノキシド誘導体(X)を付加したものを溶解した。0.45μmフィルターを用いて溶液を濾過し、ガラスプレートセットアップ上に載せたガラスリム(直径5cm)上に注ぎ、約45℃に5時間及び約75℃に一晩保ったホットプレート上で乾燥した。ホットプレート上での乾燥後、フィルムをガラスプレートから取り外し、70℃で一晩真空乾燥した。後に、フィルムを真空オーブン内において70℃で2日間乾燥した。
【0076】
実施例3
マイクロホログラム記録
405nmの波長で動作する波長可変光パラメトリック発振器システムを、マイクロホログラムの記録及び読出し用パルス光源として使用した。0.16の開口数(NA)を有する光学系を用いて光を媒体試料に集束した結果、記録体積の概略寸法は1.6×1.6×17μmとなった。マイクロホログラム記録のために使用したパルスエネルギーは数十乃至数百ナノジュールであって、これはかかる集束記録ビームの焦点スポットの位置で数百MW/cm2乃至数GW/cm2の光強度値の達成を可能にした。マイクロホログラムから反射された光の読出しは、記録パワーに対して約100〜1000倍だけ減衰させた同じビームを用いて行った。
【0077】
光データ記憶媒体へのマイクロホログラムの記録は、2つの高強度対向伝播型記録用パルスビームを記録媒体の内部に集束しかつ重ね合わせて明領域及び暗領域(干渉縞)からなる強度干渉縞パターンを生み出すことで行った。干渉パターンの照明領域は上述したような変化を受けて材料の局部的に変更された屈折率を生じる一方、暗領域は未変化のままに保たれ、かくして体積ホログラムが生み出される。本発明の閾値型光データ記憶媒体は高強度光に対して感受性を有するが、低強度放射に対しては比較的不活性である。記録用ビームのパワーは、ビームの焦点領域付近の光強度が記録閾値(変化が容易に起こるようになる値)を上回る一方、ビームの焦点スポットから離れた記録可能領域の外側では低く保たれ、かくして意図されない媒体の変更(記録又は消去)が排除されるように調整された。
【0078】
マイクロホログラム記録時には、一次記録ビームは半波長板(λ/2)及び第1の偏光ビームスプリッターを用いて信号ビーム及び参照ビームに分割された。2つの二次ビームは対向伝播構成で試料に向けて導かれ、0.4までの開口数(NA)を有する同一の非球面レンズによって光データ記憶媒体の内部で重なり合うように集束された。ビームが干渉して高コントラストの干渉縞パターンを生み出すことを保証するため、両ビームの偏光は2つの四分の一波長板(λ/4)を用いて円偏光に変換した。試料及び信号ビームレンズは、25nmの分解能を有する閉ループ式の三軸位置決めステージ上に取り付けた。試料の参照側の位置感受性検出器を用いて、媒体中で集束信号ビーム及び参照ビームの最適重ね合わせ、したがって最適記録が達成されるように信号ビームの位置合わせを行った。
【0079】
記録及び/又は読出し時には、可変減衰器及び半波長板/PBSアセンブリを用いてパワーレベルを制御した。これにより、光データ記憶媒体のマイクロホログラフィック記録特性を記録パワー及び/又はエネルギーの関数として測定できる。このような関数依存性は、記録ホログラムの強度が主として媒体によって受け取られる光エネルギーの総量で画定されるが光強度には無関係である線形の光データ記憶媒体/記録と、記録効率が光の強度に大きく依存する非線形の閾値型光データ記憶媒体/記録とを区別する。線形媒体では、少量の露光は低強度のホログラムを生じ、これが露光量の増加に伴って徐々に増強する。それとは対照的に、非線形の閾値型媒体では、強度が閾値を超える場合にのみ記録が可能である。
【0080】
読出し時には、信号ビームは遮断され、参照ビームはマイクロホログラムによって入射方向と反対の方向に反射された。四分の一波長板及び第2の偏光ビームスプリッターを用いて反射ビームを入射ビーム路からアウトカップリングし、共焦点構成で較正フォトダイオード上に集めて回折効率の絶対尺度を得た。読出し光学系に対して試料を並進させることで、マイクロホログラム回折応答の3Dプロファイルを求め、マイクロホログラムの寸法を評価することが可能である。
【0081】
図12は、本開示に従って製造された光データ記憶媒体に関し、読出しビームに対する一連のマイクロホログラムの実験的に測定された反射率を試料の横方向位置に対して示している。ピークは、参照ビームがアレイの1つのマイクロホログラムの中心に配置された場合に試料の位置で生じる。図13は、本開示に従って製造された光データ記憶媒体において、フルエンスは同じだが強度は異なる条件下で記録されたマイクロホログラムの反射率の依存性を示しており、材料の閾値型機能性を実証している。即ち、材料の記録感度は強度が閾値(約100〜200MW/cm2)を超えた場合に劇的に増加する一方、閾値未満の強度では記録ホログラムの反射率は本質的にゼロ(系の検出限界内)である。
【0082】
これらの実施形態における回折効率は、記録フルエンスに応じて約0.03〜約0.26%であると予想される。実施例5は7.74%の測定回折効率を有していたのに対し、実施例5は1.55%の測定回折効率を有していた。
【0083】
実施例4 結合サブPC色素を有するポリビニルシンナメートの合成(XIV)
図14について述べると、ポリビニルアルコール(1.50g、31.3mmol、Aldrich社、88%加水分解)を80℃で25mLのNMPに溶解したが、完全な溶解には約2時間を要した。この溶液を50℃に冷却し、塩化シンナモイル(12.0g、72.2mmol)を少量ずつ3〜4時間かけて添加した。塩化シンナモイル添加のほぼ中間点で、色素の酸塩化物を固体又は塩化メチレン溶液として添加した。塩化シンナモイル添加の完了後、溶液を室温に放冷し、メタノール中で沈殿させた。得られた固体を塩化メチレンに再溶解して濾過した。この溶液をメタノール中で再沈殿させ、濾過によって集め、真空下において60℃で12時間乾燥した。組み込まれた色素のパーセントをGPCによって決定し、色素の正味重量パーセントをUV分光法によって決定した。
【0084】
実施例5 ホウ素サブフタロシアニンフェノキシドの一般的製造方法
ホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−ヒドロキシフェノキシド(VI):磁気撹拌棒及び凝縮器/窒素バイパスを備えた250ml丸底フラスコ内に、50mlのトルエン中の1.28g(0.003モル)のホウ素サブフタロシアニンクロリド及び2.80g(0.0119モル)の4−ヨードレソルシノールの混合物を配置した。次いで、混合物を冷却し、減圧下でトルエンを除去した。残留物に200mlの塩化メチレンを添加し、約15〜30分間撹拌した。残ったゴム状の固体を600mLの酢酸エチルに再溶解し、濾過して若干の不溶物を除去した。次いで濾液を水(各100ml)で3回洗浄し、無水マグネシウム上で乾燥した。濾過した溶液に15gのシリカゲルを添加し、溶媒を減圧下で蒸発させて乾燥した。粗生成物/シリカゲルをロードカラム上にロードし、粗生成物をCombiFlash Companion(Isco,Inc.製)上での分取LCによって精製した。使用したカラムは、120gm RediSep Silica Gel順相使い捨てカラム(Teledyne Isco,Inc.製)であった。ランレングス:85ml/分の流量で35分。溶離溶媒としてクロロホルム/EtOAcを使用し、100%CHCl3を33分間、以後は終了までに85%に達するEtOAc勾配とした。生成物のRTは25分であった。純粋な画分を合わせて濃縮した。収量:1.13g(59.8%)。1HNMR:4.72ppm(t,1H)、5.10ppm(t,1H)、6.39ppm(t,1H)、8.01ppm(m,6H)、8.85ppm(m,6H)、9.42ppm(s,1H)。
【0085】
ホウ素サブフタロシアニン3−ヒドロキシ−2(4)−ブロモフェノキシド(VIII):24時間撹拌した点を除き、上記と同じ手順を使用した。生成物は、2−ブロモ異性体及び4−ブロモ異性体の70:30混合物である。分取LCを用いて粗混合物を精製し、異性体を分離した。それはCombiFlash Companion(Isco,Inc.製)上で実施した。使用したカラムは、120gm RediSep Silica Gel順相使い捨てカラム(Teledyne Isco,Inc.製)であった。ランレングス:85ml/分の流量で28分。溶離溶媒としてクロロホルム/EtOAcを使用し、100%CHCl3を13分間、以後は操作終了までに10%に達するEtOAc勾配とした。生成物のRTは25分であった。ホウ素サブフタロシアニン3−ヒドロキシ−4−ブロモフェノキシド(主異性体、RT=14分)。収率:34.2%。1HNMR:4.90ppm(dd,1H)、5.16ppm(s,1H)、5.17ppm(d,1H)、6.81ppm(d,1H)、7.93ppm(m,6H)、8.87(m,6H)。
【0086】
ホウ素サブフタロシアニン3−ヒドロキシ−2−ブロモフェノキシド(副異性体、RT=24分)。収率:16.4%。1HNMR:4.72ppm(d,1H)、6.02ppm(dd,1H)、6.75ppm(d,1H)、8.03ppm(m,6H)、8.85ppm(m,6H)、9.30ppm(s,1H)。
【0087】
実施例6 グルタル酸−ホウ素サブフタロシアニンフェノキシドの一般的製造方法
ホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−グルタリルフェノキシド誘導体(X):磁気撹拌棒を備えかつゴム隔膜で蓋をした100ml丸底フラスコ内に、1.56g(0.00247モル)のホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−ヒドロキシフェノキシド(VI)、19.7g(0.173モル)の無水グルタル酸、40mlのDMF及び7.82g(0.0988モル)のピリジンの混合物を配置した。フラスコを80℃に予熱した油浴中に2.5時間浸した。反応混合物を冷却し、150mlの水中に注ぎ込み、約20分間撹拌した。水性混合物に200mlの塩化メチレンを添加して生成物を抽出した。塩化メチレン溶液を150mlの水(約10×)で繰返し洗浄し、希HClで1回洗浄し、次いで再び水で洗浄してDMF及びピリジンを除去した。塩化メチレン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。生成物をさらに真空オーブン内において室温で一晩乾燥した。収量:1.65g(89.8%)。1HNMR:2.15ppm(m,2H)、2.58ppm(t,2H)、2.64ppm(t,2H)、4.94ppm(t,1H)、5.82ppmt,1H)、6.68ppm(t,1H)、7.94ppm(m,6H),8.88ppm(m,6H)。
【0088】
UV−Vis:e@405nm:67.5、e@λmax:68000。
【0089】
ホウ素サブフタロシアニン2−ブロモ−5−グルタリルフェノキシド誘導体(XII):上記と同じ手順を使用した。収率:76.4%。1HNMR:2.16ppm(m,2H)、2.60ppm(t,2H)、2.65ppm(t,2H)、5.05ppm(d,1H)、6.27ppm(dd,1H),7.94ppm(m,6H)、8.88ppm(m,6H)。
【0090】
ホウ素サブフタロシアニン4−ブロモ−5−グルタリルフェノキシド誘導体(XI):反応混合物を室温で一晩撹拌した点を除き、上記と同じ手順を使用した。収率:86%。1HNMR:2.15ppm(五重線,2H)、2.61ppm(四重線,4H)、5.13ppm(d,1H)、5.26ppm(dd,1H)、6.93ppm(d,1H)、7.93ppm(m,6H)、8.87ppm(m,6H)。NMRは9.9%の出発原料も示した。
【0091】
ここに記載した説明は、実施例を使用することで、最良の実施形態を含めて本発明を開示すると共に、任意のデバイス又はシステムの作製及び使用並びに任意の組み込まれた方法の実行を含め、当業者が本発明を実施することを可能にする。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者に想起される他の実施例を包含し得る。かかる他の例は、特許請求の範囲の字義通りの表現と違わない構造要素を有する場合、或いは特許請求の範囲の字義通りの表現とわずかな違いしかない同等な構造要素を含む場合、特許請求の範囲内に含まれるものとする。本明細書には本発明の若干の特徴のみを例示し説明したが、当業者には数多くの修正及び変更が想起されるであろう。個々の実施形態が論議されているが、本発明はすべてのこれらの実施形態のあらゆる組合せを包含する。したがって、添付特許請求の範囲は本発明の真の技術思想の範囲内に含まれるすべてのかかる修正及び変更を包含することを理解すべきである。
【符号の説明】
【0092】
120 非線形増感剤
122 反応体
140 光データ記憶媒体
142 区画
144 焦点
146 レーザー
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物及び光データ記憶媒体並びに光データ記憶媒体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に述べると、逆可飽和吸収体(RSA)は、所定の波長で極めて小さい線形吸収を有していて、この波長の光をほとんどすべて透過する化合物である。しかし、これら所定の波長で高強度のレーザーパワーに暴露されると、低レベルの線形吸収は、分子が高い吸収断面積を有して同じ波長で高吸収性を示す状態に変わり、その分子は以後の光子を強く吸収するようになり得る。例えば、多くのRSAは、532nmの波長を有する入射化学線で照射された場合に光励起を受ける。この波長は可視スペクトルの緑色部分にあるので、これらのRSAは通例「緑色」RSAといわれることがある。
【0003】
最近、ある種のRSAはデータ記憶システムの分野で有用であることが判明した。データの読出し又は書込みが例えばディスクに光を照射することで達成される光データ記憶は、他の手段(例えば、磁気媒体を読み出すための磁気感受性ヘッド又はビニル樹脂に記録された媒体を読み出すための針)によって読み出さなければならない媒体に記録されたデータに比べて利点がある。また、ビニル樹脂媒体に記憶できるデータより多くのデータを小さい媒体に光学的に記憶することができる。さらに、データを読み出すために接触が不要であるので、光媒体はビニル樹脂媒体のように繰り返して使用する間に劣化を生じる恐れが少ない。
【0004】
光データ記憶媒体はまた、磁気記憶媒体に比べても複数の利点がある。例えば、磁気ディスクドライブと異なり、光データ記憶媒体は、データの保管及びバックアップ、非接続システム間でのコンテンツの共有、並びに事前記録コンテンツの配布のために容易に適するリムーバブル媒体として最も普通に提供されている。リムーバブル磁気媒体(例えば、磁気テープ)も利用可能であるが、かかる媒体上に記憶された情報の寿命は通例10〜12年に限定され、媒体は一般にやや高価であり、データアクセスは遅い。それとは対照的に、光データ記憶媒体は、リムーバブル記録型媒体及び/又は事前記録媒体の融通性、速いデータアクセス時間、並びに消費者のコンピューター及びエンタテインメントシステムにとって十分に手ごろな媒体及びドライブの確実で安価な製造を可能にすることができる。
【0005】
それでもなお、従来の光データ記憶媒体には制限がある。第一に、光媒体の記憶密度は記録ビットの最小サイズに関する物理的制約によって制限される。光記憶の別の制限は、データが通常、表面上に位置するか或いは媒体内部にサンドイッチされた1つ又は2つの分離した層に記憶されることである。情報を深さ方向に記録すれば記憶容量を増加させることができるが、それを行うための方法(即ち、漂白及び光反応)は読出し可能なマークを生み出すために大量の光パワーを必要とする。その結果、これら従来の3D記録方法を用いる記録の速度は遅い。さらに、これらの方法で使用される媒体は光エネルギーに対して線形応答を示すのが通例であり、その結果として、データを記録した後に媒体の感光性を除去して意図されない消去、データ喪失などを排除するために何らかの機構を必要とすることがある。
【0006】
ホログラフィック記憶は、データをホログラムとして表す光データ記憶である。ホログラムは、2つの光ビームの交わりによって感光性媒体内に生じる三次元干渉パターン像である
さらに詳しくは、参照ビームとデジタルコード化されたデータを含む信号ビームとを重ね合わせることで、媒体の体積内で3D干渉パターンが形成され、これが感光性媒体の屈折率を変化または変調させる化学反応を引き起こす。このような変調が、信号からの強度及び位相情報の両方をホログラムとして記録する。ホログラムは後に、記憶媒体を参照ビームのみに暴露することで再生することができる。この参照ビームは、記憶されたホログラフィックデータと相互作用し、ホログラフィック画像を記憶するのに使用した初期信号ビームに比例した再構成信号ビームを生成する。
【0007】
ホログラフィック記憶に関する初期の試みは、ページ単位アプローチに頼っていた。即ち、この場合、デジタル情報のビットは、ホログラムを記録した必然的に線形の媒体の「スライス」を横切る論理0及び論理1の二次元配列として体積ホログラムにコード化される。媒体の比較的大きい体積を使用するので、ページ単位アプローチを使用するために必要な記録及び読出し装置は複雑で高価なものとなることがあり、また媒体内部での読出し又は書込みは温度変動及び振動並びに書込み又は読出し波長又は強度の小さな変動に対して非常に敏感である。
【0008】
これらの欠点の結果として、ホログラフィックデータ記憶に関する最近の研究はビット単位アプローチに集中している。この場合、情報の各ビット(又は数ビット)を媒体内部の微視的体積に局在化されたホログラムによって表すことで、読出し光を反射する領域が生み出される。かかる局在化体積ホログラフィックマイクロ反射体は、媒体の全体積にわたって複数のデータ層に配列することができる。このような配列状態では、層のデータの読出し及び記録が隣接層を記録/読出し放射に暴露することを避けられない。したがって、単一ビット用途では線形材料がホログラフィックデータ記憶のために役立つことが示されているものの、書込み及び読出し段階で他のデータ層に影響を及ぼすことなしに多くのデータ層を支持できる媒体が得られればさらに有利であろう。
【0009】
ビット単位データ記憶アプローチに対処し得る材料が強く求められている。これは、かかる材料に対する読出し及び書込みのために使用する装置が現在商業的に入手可能であるか、或いは商業的に容易に入手できる読出し及び書込み装置に修正を施すことで容易に得られるからである。さらに、ビット単位アプローチによるホログラフィックデータ記憶は、ページ単位アプローチを用いて記憶されたホログラフィックデータに比べ、温度、波長、強度変動及び振動に対してよく耐える。ホログラム、特にマイクロホログラムの記録に際して最適に有用であるためには、ビット単位データ記憶材料は通例は非線形であり、さらに通例は記録光に応答して少なくとも約0.005〜約0.05の屈折率変化(Δn)を示す。結局、記録光によって材料に生じる屈折率変調の大きさが所定のシステム構成に関する回折効率を規定し、これが信号/ノイズ比、ビット誤り率及び達成可能なデータ密度に変換される。
【0010】
このように、記録光強度に対して非線形(又は「閾値型」)応答を示すことができ、ビット単位ホログラフィックデータ記憶のために適した光データ記憶媒体に対するニーズが今なお存在している。特に、媒体に記憶されるホログラムの深さが限定される結果として容量の増加が実現できれば有利であろう。さらに、かかるデータ記憶媒体には、周囲の媒体の屈折率が大きく変化せずかつ様々な深さにおけるホログラム効率の実質的な低下が見られないようにして書込みを行うことが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7928155号明細書
【発明の概要】
【0012】
一態様では、組成物が提供される。かかる組成物は、ポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックス中に配置され、励起時に光化学変化を受けることができる反応体とを含んでいる。かかる組成物はまた、ポリマーマトリックスに化学結合した非線形増感剤を含んでいる。非線形増感剤は、1以上の波長の放射への暴露時に反応体に屈折率変化を引き起こす。
【0013】
さらに別の実施形態では、光データ記憶媒体が提供される。かかる媒体は、ポリマーマトリックスと、励起時に光化学変化を受けることで屈折率変化を引き起こすことができる反応体とを含んでいる。かかる媒体はまた、反応体が1以上の波長の放射に暴露された場合に反応体の励起を引き起こすことができる非線形増感剤を含んでいる。非線形増感剤はポリマーマトリックスに化学結合している。
【0014】
追加の実施形態では、光データ記憶媒体が提供される。かかる媒体は、相異なる横方向位置及び深さに形成された複数のマイクロホログラムを有するポリマーマトリックスを含んでいる。かかる媒体はた、ポリマーマトリックス中のポリマーに化学結合されたエネルギー移動色素を含んでいる。
【0015】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読んだ場合に一層よく理解されよう。添付の図面では、図面全体を通じて類似の部分は同一の符号で表されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、逆可飽和吸収を示す増感剤に関する上位三重項Tn励起状態の吸収及び結果として生じるエネルギー移動を示す模式的エネルギー準位図である。
【図2】図2は、化学線に対する線形増感剤の応答を示すグラフである。
【図3】図3は、化学線に対する閾値型増感剤の応答を示すグラフである。
【図4】図4は光データ記憶媒体の断面図であって、媒体が線形増感剤を含む場合における化学線の影響領域及び媒体が閾値型増感剤を含む場合における化学線の影響領域を示している。
【図5】図5は、本開示の態様に係るドープト色素実施形態及び付加色素実施形態に関し、回折効率をレーザー強度の関数として示すグラフである。
【図6】図6は、本開示の態様に係るドープト色素実施形態及び付加色素実施形態に関し、感度をレーザー強度の関数として示すグラフである。
【図7】図7は、本開示の態様に従って好適な色素を製造する際に起こり得る化学反応を示している。
【図8】図8は、本開示の態様に従ってフェノキシサブフタロシアニンを製造する際に起こり得る化学反応を示している。
【図9】図9は、本開示の態様に従ってフェノキシ化合物を製造する際に起こり得る化学反応を示している。
【図10】図10は、本開示の態様に従って起こり得る化学反応を示している。
【図11】図11は、本開示の態様に従って色素の酸塩化物誘導体を製造する際に起こり得る化学反応を示している。
【図12】図12は、光データ記憶媒体の一実施形態に記録されたマイクロホログラムのアレイの反射率を示すグラフである。
【図13】図13は、60J/cm2の固定記録フルエンスに関し、光データ記憶媒体の一実施形態の回折効率を強度の関数として示すグラフである。
【図14】図14は、本開示の態様に従ってポリビニルシンナメートを製造する際に起こり得る化学反応を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特記しない限り、本明細書で用いる技術的及び科学的用語は、ここに開示される主題に関して当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書で用いる「第1」、「第2」などの用語はいかなる順序、数量又は重要度も表すわけではなく、むしろある構成要素を別の構成要素から区別するために使用される。また、冠詞“a”及び“an”は数量の限定を意味するわけではなく、むしろ記載されたものの1以上が存在することを意味する。特記しない限り、「前部」、「後部」、「下部」及び/又は「上部」という用語は記載の便宜のために使用されるものにすぎず、いかなる1つの位置又は空間的配置にも限定されない。範囲が開示される場合、同一の成分又は性質に関するすべての範囲の端点は包含されかつ独立に結合可能である(例えば、「約25wt%以下、さらに詳しくは約5〜約20wt%」という範囲は端点を含むと共に、「約5〜約25wt%」などの範囲内のすべての中間値を含む)。数量に関連して使用される「約」という修飾語は記載された値を含むと共に、前後関係から指示される意味を有する(例えば、特定の数量の測定に関連する誤差の程度を含む)。
【0018】
本明細書で用いる「回折効率」とは、ホログラムによって反射されるビームパワーの割合をホログラムの位置で入射プローブビームパワーに対して測定した値を意味する一方、「量子効率」とは、吸収された光子が屈折率変化を生み出す化学変化をもたらす確率を意味する。「フルエンス」とは、ビーム横断面の単位面積を横切った光ビームエネルギーの量(例えば、ジュール/cm2単位で測定した値)を意味する一方、「強度」とは光放射束密度、例えば単位時間にビーム横断面の単位面積を横切るエネルギーの量(例えば、ワット/cm2単位で測定した値)を意味する。
【0019】
本開示は、反応体及び非線形増感剤を含む組成物に関する。ある種の実施形態では、かかる組成物は、三重項励起(Tn;n>1)時に変化を受けることができる反応体、及び1種以上のサブフタロシアニン(サブPC)逆可飽和吸収体(RSA)のような非線形増感剤を含んでいる。非線形増感剤は、入射化学線を(例えば、1以上の光子の形態で)吸収し、次いでエネルギーを反応体分子に移動して反応体から生成物への分子転位を誘起することができる。一実施形態では、光データ記憶媒体(例えば、ディスクの形態で提供される媒体)で使用される非線形増感剤は、非常に短い寿命(ナノ秒乃至数マイクロ秒)を有する上位三重項状態(Tn、ただしn>1)から反応体にエネルギーを移動することができる。
【0020】
若干の実施形態では、本発明の非線形増感剤は2つの光子を通例は逐次に吸収し得る。また、本明細書に記載される増感剤は、吸収したエネルギーを反応体に移動した後に元の状態に戻り、この過程を何度も繰り返すことができる。かくして、エネルギーを吸収してそれを1種以上の反応体に放出する能力は時間の経過に伴って低下することがあるものの、増感剤は時間が経過しても実質的に消費されない。これは感光性材料として従来知られている材料とは対照的である。かかる材料は、エネルギー(通例は単一の光子)を吸収できるが、それを他の分子に移動することはしないで、新しい構造への転換を受けるか、或いは別の分子と反応してその過程で新しい化合物を生成する。
【0021】
一実施形態では、非線形増感剤は逆可飽和吸収(RSA)を示すサブフタロシアニン類を含む。放射を使用するレーザー)と共に使用するのに一層よく適した吸収スペクトル及び非線形光学応答を示すのが通例である。しかし、本実施形態では、本明細書で論議されるサブフタロシアニンRSAの一部は、532nmに比べて405nmでの吸収に対して実質的な透明度を有するので、「青色」レーザー(即ち、約405nmの波長をもった放射を使用するレーザー)との使用に適している。
【0022】
一実施形態では、サブフタロシアニンRSAは、約380〜約450nm(例えば、約405nm)の波長の入射化学線によるサブフタロシアニンRSAの光励起時に上位三重項(T2)状態に入り、この上位励起三重項状態(Tn)から隣接する反応体にエネルギーを移動することができる。サブフタロシアニンは、中心金属としてのホウ素原子及び軸配位子をもった円錐状構造を有する14−π電子芳香族分子である。
【0023】
組成物で使用される非線形増感剤の量は、入射化学線の波長におけるそれの光学密度に依存し得る。増感剤の溶解度もまた1つの因子であり得る。一般的に述べると、増感剤は組成物の総重量を基準にして約0.002〜約5重量%の量で使用できる。
【0024】
本発明の組成物に使用される反応体は、三重項励起時に変化を受けることができる。図1を参照すれば、本発明の光データ記憶媒体に使用される反応体122は、矢印116で示される増感剤120のT2状態の三重項エネルギーより低いが、矢印114で示される増感剤120のT1状態の三重項エネルギーより高い、矢印307で示される三重項エネルギーを有している。反応体122はまた、増感剤120の上位三重項状態(T2又はそれ以上)からのエネルギーを受け取り、変化を受けて生成物124を生じることもできる。
【0025】
本明細書で用いる「変化」という用語は、反応体の任意の間接的な光化学反応(例えば、光二量体化又は異性化)を含むものとする。光二量体化は、電子励起された不飽和分子が構造的に類似及び/又は同一の化学種の非励起分子との付加を受けること(例えば、2つのオレフィンが化合してシクロブタン環構造を形成すること)を含む二分子光化学プロセスである。この反応で生じる共有結合は、一般に光生成物として分類できる新しい成分を生み出す。「間接的」という用語が光二量体化或いは光化学反応又は光反応のような用語と共に使用される場合、反応体は光子の吸収から直接にエネルギーを受け取るのではなく、別の分子(例えば、増感剤又は媒介物)が最初に光子を吸収し、次いでそのエネルギーの一部を反応体に移動した後に反応体が二量体化を受けることを意味する。
【0026】
記載される組成物の若干の実施形態で使用するのに適した反応体の例には、特に限定されないが、(i)反応体から生成物への移行に際して要求される体積変化が少なくなるようにして二量体化を受けることができるもの、例えば反応体の直接光励起ではなく、光励起された増感剤から反応体への間接的な「非放射エネルギー移動」(本発明の場合には三重項−三重項エネルギー移動)経路によって二量体化プロセスを受ける反応体、(ii)非線形増感剤が二光子プロセスからエネルギーを受け取ってそのエネルギーを第1の反応体に送達し、次いで第1の反応体が第2の反応体と縮合して生成物を生じるもの、(iii)ポリマー主鎖上で誘導体化された場合、材料の利用可能な容量に対応する非常に大きい屈折率変化を与えることができるもの(例えば、反応体の>85%が生成物に転化されれば、約0.08以上のΔnmaxが達成できるもの)、並びに(iv)ポリマー主鎖上で誘導体化された場合、分子間及び分子内縮合反応の両方を受けることでそれの消費を促進し、増感光反応の高い量子効率の結果として10J/cm2未満の入射フルエンスで所望の屈折率変化(Δn)を与えることができ、ひいては例えば組成物を組み込んだデータ記憶媒体に高い回折効率及び短い記録時間も与えることができるものがある。
【0027】
当業者には理解される通り、ホログラフィックデータ記憶は、ホログラムの個々の干渉縞に関し、周囲の材料に比べて0.005〜0.05程度の屈折率変化(Δn)を生み出し得ることに基づいている。しかし、個々の干渉縞の屈折率を測定することは可能でない。屈折率(RI)の測定は、スピンコート試料を偏光解析装置として知られる計器と共に使用しながらバルク材料に関して行うことができる。かくして、まず最初に、これらの用途で使用される反応性材料を試験することで材料が利用し得る正味のΔnを決定した。これは、未反応試料のRIを測定し、次いで85%を超える材料を反応形態に転化し、RIを再測定してΔnを決定することで行った。ホログラフィックデータ記憶におけるホログラムについての重要な特徴は、1ビットの情報を表すのに十分な量の光を反射(回折)して検出器に戻すことである。これは、材料の回折効率を測定することで判定できる。実験的には、比較的小さい開口数(NA)のレンズを用いて比較的大きいホログラムを書き込むことで、比較的高い回折効率を記録するのが最も容易である。例えば、カップルドウェーブ理論の予測結果に基づけば、所定の大きさの屈折率変調に関しては、DEはホログラム深さの二乗にほぼ比例する。ホログラム深さはNA2にほぼ反比例し、これはDEの総合依存性を約1/NA4にする。かくして、DEはとりわけ反応性材料の応答、使用するレンズのNA、及びホログラムを記録するために使用するフルエンスの関数となる。これらのパラメーターはホログラフィックデータ記憶に取り組む実験者によって異なることが多いので、これらの測定値を近似Δnと互いに関係づけることが材料/システムの好適な比較方法であるかもしれない。
【0028】
増感剤のT1状態とT2状態との間の三重項エネルギー状態を有する任意の反応体が使用でき、したがって適当な反応体の選択は所望の増感剤の選択に依存し得る。好適な反応体には、特に限定されないがスチルベン類がある。本明細書に開示される光記憶媒体(光記憶ディスク)で有用であると予想されるスチルベン類の具体例には、特に限定されないが、トランス−スチルベン、メタ−(又は)パラ−ハロゲン(F、Cl、Br又はI)置換スチルベン、メタ−(又は)パラ−トランス−メチルスチルベン、トランス−[メタ−(又は)パラ−]ニトロスチルベン、トランス−[メタ−(又は)パラ−]シアノスチルベン、トランス−[メタ−(又は)パラ−]メトキシスチルベン、トランス−[3,3’]又は[4,4’]又は[2,4]又は[3,4]−ジメトキシ、ジフルオロ、ジブロモ、ジクロロ、ジヨード置換トランス−スチルベン、トランス−2,4,6−トリメチルスチルベン、トランス−2,2’,4,4’,6,6’−ヘキサメチルスチルベン或いはこれらの組合せがある。
【0029】
さらに詳しくは、好適な反応体には、(E)−1−メトキシ−4−スチリルベンゼン、(E)−1−フルオロ−4−スチリルベンゼン、(E)−1−クロロ−4−スチリルベンゼン、(E)−1−ブロモ−4−スチリルベンゼン、(E)−1−ヨード−4−スチリルベンゼン、(E)−1−メトキシ−3−スチリルベンゼン、(E)−1−フルオロ−3−スチリルベンゼン、(E)−1−クロロ−3−スチリルベンゼン、(E)−1−ブロモ−3−スチリルベンゼン、(E)−1−ヨード−3−スチリルベンゼン、(E)−1−シアノ−4−スチリルベンゼン又はこれらの組合せがある。
【0030】
さらに他の好適な反応体には、(E)−1,2−ビス(4−メトキシフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(4−フルオロフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(4−クロロフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(4−ブロモフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(4−ヨードフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(3−メトキシフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(3−フルオロフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(3−クロロフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(3−ブロモフェニル)エテン、(E)−1,2−ビス(3−ヨードフェニル)エテン又はこれらの組合せがある。
【0031】
さらに他の好適な反応体には、(E)−1−メトキシ−2−(4−メトキシスチリル)ベンゼン、(E)−1−フルオロ−2−(4−フルオロスチリル)ベンゼン、(E)−1−クロロ−2−(4−クロロスチリル)ベンゼン、(E)−1−ブロモ−2−(4−ブロモスチリル)ベンゼン、(E)−1−ヨード−2−(4−ヨードスチリル)ベンゼン、(E)−1−ヨード−2−(4−シアノスチリル)ベンゼン、(E)−1−メトキシ−3−(4−メトキシスチリル)ベンゼン、(E)−1−フルオロ−3−(4−フルオロスチリル)ベンゼン、(E)−1−クロロ−3−(4−クロロスチリル)ベンゼン、(E)−1−ブロモ−3−(4−ブロモスチリル)ベンゼン、(E)−1−ヨード−3−(4−ヨードスチリル)ベンゼン、(E)−1−ヨード−3−(4−シアノスチリル)ベンゼン、(E)−1−メトキシ−2−(3−メトキシスチリル)ベンゼン、(E)−1−フルオロ−2−(3−フルオロスチリル)ベンゼン、(E)−1−クロロ−2−(3−クロロスチリル)ベンゼン、(E)−1−ブロモ−2−(3−ブロモスチリル)ベンゼン、(E)−1−ヨード−2−(3−ヨードスチリル)ベンゼン、(E)−1−ヨード−2−(3−シアノスチリル)ベンゼン又はこれらの組合せがある。
【0032】
他の実施形態では、反応体は、最近発見されかつ2009年8月31日出願の「Optical Data Storage Media and Methods of Using the Same」と題する米国特許出願第12/550521号(本明細書の教示と完全に矛盾しない限り、その開示内容はあらゆる目的のため援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されているもののような、シンナメート材料、シンナメート誘導体及びシンナムアミド誘導体の1種以上を含んでいてもよい。若干の実施形態では、[2+2]間接光二量体化及び間接光重合を受けることができるシンナメート材料が使用できる。これは、405nmにおけるその透明度(無視できるUV吸収)が、シンナメートの線形漂白を最小限に抑え、励起された増感剤からの三重項−三重項エネルギー移動のみを容易にするからである。若干の実施形態では、シンナメート材料はポリビニルシンナメート(PVCm)を含むことができ、ポリビニル主鎖のシンナメート含有量はポリビニルシンナメートの総重量を基準にして約54〜約75wt%の範囲内にある。
【0033】
ポリビニルシンナメート及びシンナムアミド類似体の例には、特に限定されないが、ポリビニルシンナメート(PVCm)、ポリビニル4−クロロシンナメート(PVClCm)、ポリビニル4−メトキシシンナメート(PVMeOCm)、(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニルアクリレート)、(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(4−クロロフェニルアクリレート)、(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(4−メトキシフェニルアクリレート)、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニルアクリルアミド)、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−クロロフェニル)アクリルアミド)及び(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジアリール)ビス(3−(4−メトキシフェニル)アクリルアミド)がある。これらを以下に示す。
【0034】
【化1】
式中、R=H又はシンナメートであり、
X=H(ポリビニルシンナメート(PVCm))、OMe(ポリビニル4−メトキシシンナメート(PVMeOCm))又はCl(ポリビニル4−クロロシンナメート(PVClCm))である。
【0035】
【化2】
式中、X=(パラ)−H:(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニルアクリレート)、又は
X=(パラ)−Cl:(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−クロロフェニル)アクリレート)、又は
X=(パラ)−MeO:(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−メトキシフェニル)アクリレート)である。
【0036】
【化3】
式中、X=(パラ)−H:(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニルアクリルアミド)、又は
X=(パラ)−Cl:(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−クロロフェニル)アクリルアミド)、又は
X=(パラ)−MeO:(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−メトキシフェニル)アクリルアミド)である。
【0037】
効率的な三重項エネルギー移動を促進するため、反応体は比較的高い濃度で存在するのがよい。例えば、反応体は組成物の総重量を基準にして約2〜約80重量%の量で組成物に存在し得る。
【0038】
任意には、組成物はさらに、増感剤から反応体への上位三重項エネルギー移動を助けるための媒介物を含むことができる。媒介物の三重項状態(T1m)は、(a)増感剤の三重項状態(Tn;n>1)より低いが増感剤のT1より高く、かつ(b)反応体の三重項状態(T1r)より高いことが望ましく、理想的には約50〜90kcal/molの範囲内にある。
【0039】
好適な媒介物の例には、特に限定されないが、アセトフェノン(T1≒78kcal/mol)、ジメチルフタレート(T1≒73kcal/mol)、プロピオフェノン(T1≒72.8kcal/mol)、イソブチロフェノン(T1≒71.9kcal/mol)、シクロプロピルフェニルケトン(T1≒71.7kcal/mol)、デオキシベンゾイン(T1≒71.7kcal/mol)、カルバゾール(T1≒69.76kcal/mol)、ジフェニレンオキシド(T1≒69.76kcal/mol)、ジベンゾチオフェン(T1≒69.5kcal/mol)、2−ジベンゾイルベンゼン(T1≒68.57kcal/mol)、ベンゾフェノン(T1≒68kcal/mol)、ポリビニルベンゾフェノン(T1≒68kcal/mol)、1,4−ジアセチルベンゼン(T1≒67.38kcal/mol)、9H−フルオレン(T1≒67kcal/mol)、トリアセチルベンゼン(T1≒65.7kcal/mol)、チオキサントン(T1≒65.2kcal/mol)、ビフェニル(T1≒65kcal/mol)、フェナントレン(T1≒62kcal/mol)、フェナントレン(T1≒61.9kcal/mol)、フラボン(T1≒61.9kcal/mol)、1−ナフトニトリル(T1≒57.2kcal/mol)、ポリ(β−ナフトイルスチレン)(T1≒55.7kcal/mol)、フルオレノン(T1≒55kcal/mol)及びこれらの組合せがある。
【0040】
使用する場合、媒介物の使用量は、自己消光(即ち、媒介物の2つの三重項が出会って媒介物の一重項状態及び基底状態を生み出すこと)を引き起こすほどに多くすべきでない。媒介物の好適量は個々の増感剤にも依存し得る。かかる考慮事項を念頭に置けば、媒介物の有用な濃度は組成物の総重量を基準にして約1〜約20重量%の範囲内であり得る。
【0041】
提供される組成物は、その性質が利益をもたらし得る任意の用途で使用できる。これらの例には、特に限定されないが、光導波路、屈折率分布型レンズ、光データ記憶媒体(例えば、光記憶ディスク)及びデジタルホログラフィックイメージングがある。
【0042】
光導波路は光集積回路の構成部分として使用され、様々な方法で作製できる。1つの方法は、レーザーを用いて感光性材料をパターン化し、ある屈折率材料の「コア」を異なる屈折率の「クラッディング」材料で包囲することで、光を案内するために役立つ構造を形成するものである。一般に、これらの感光性材料は線形応答を示し、パターニングレーザーの波長及び屈折率変化を受ける材料の吸収波長は共に導波路を実際に進行する光の波長から十分に離れた波長であることが必要とされる。これが必要である理由は、導波されるビームがコア内を進行する光と同一又はほぼ同一であれば、それはクラッディング材料を漂白して導波路を広げ始め、それを劣化させて使用不可能にするからである。しかし、これらの材料を使用すれば、媒体はパターニングに際してビームの最高強度領域でのみ変化し、閾値効果と相まって、コア領域とクラッディング領域との間に鮮明なコントラストを生み出すことができる。また、低い強度を有する類似波長の光はコアに沿って進行でき、クラッディング材料を劣化させない。かくして、本明細書に記載される組成物を組み込むことで光導波路を改良できる。
【0043】
屈折率分布型(GRIN)レンズもまた、本明細書に記載される組成物から形成できる。GRINレンズは、その材料の屈折率が媒体の空間座標の関数として連続的に変化するレンズである。本発明の組成物を使用すれば、高パワーで動作するレーザーを用いたパターニングによって組成物をGRINレンズに転化することができる。別法として、一定の組成を有するブランクレンズを同様にしてGRINレンズに改変できる。利点は、漂白によりGRINを消去してレンズを破壊する恐れなしに様々な波長の低パワー光ビームと共にレンズを使用できることである。
【0044】
デジタルホログラフィックイメージングは、特殊な眼鏡の助けなしでの視覚化(裸眼立体視化)のために有用な3D画像を生み出す方法である。これらは、様々な角度から見ることができる超高層ビルが建つ都市のような行政用途及び商業用途の対話型3Dディスプレイを製造するのに有用である。この場合にも、閾値特性を有する記載の組成物を使用すれば、周囲光での漂白の問題なしに適切なパターニングが可能となる。
【0045】
本明細書にはまた、非線形増感剤、反応体及び任意の媒介物に加えて、さらにポリマーマトリックスを含む光データ記憶媒体も提供される。かかる光データ記憶媒体は、化学線に対して非線形応答を示すことができる。即ち、閾値より低い入射レーザー光に対しては屈折率の実質的な変化を示さず、閾値より高ければ屈折率の顕著な変化を示す。一実施形態では、かかる媒体への記録は閾値を超えるパワー(又は強度)を有する光を用いて可能である。しかし、記録されたデータは閾値より低い強度を有する光を用いて繰り返しかつ実質的に非破壊的に読み出すことができる。本発明の光データ記憶媒体に記録されたマイクロホログラムは、それを記録するために使用されるビームよりサイズが小さいと予想される。最後に、かかる媒体は約380〜約450nm(例えば、約405nm)の化学線を吸収して反応体への上位三重項−三重項エネルギー移動を引き起こすことができる増感剤を含む結果、現行の常用記憶フォーマット(例えば、ブルーレイ)との適合性を有しながら媒体の記憶容量が最適化される。
【0046】
光データ記憶媒体は、ポリマーマトリックス中に分散した非線形増感剤及び反応体を含んでいる。非線形増感剤は、入射化学線を(例えば、1以上の光子の形態で)吸収し、次いでエネルギーを反応体分子に移動して反応体から生成物への分子転位を誘起することができ、ひいては生成物が媒体の屈折率の変調を引き起こす。この変調は、入射化学線からの強度及び位相情報をホログラムとして記録する。線形増感剤ではなく非線形(例えば「閾値型」)増感剤を使用することの利点は、図4、図5及び図6を参照することで一層よく理解できよう。
【0047】
さらに詳しくは、図2は入射化学線に対する線形感光性材料の応答を示すのに対し、図3は入射化学線に対する閾値型材料の応答を示している。図2に示されるように、線形感光性材料は記録光のいかなるパワー密度(強度)でも反応を引き起こし、達成される屈折率変化(Δn)の量は材料が受け取る放射エネルギー(フルエンス)が同じであれば同一である。それとは対照的に、閾値型材料は記録光の一定の光強度以上でのみ反応を引き起こす。
【0048】
その結果として、図4に示すように、線形感光性材料を含む光データ記憶媒体140では、区画142として示されるような(例えば、レーザー146から供給される)化学線が通過する実質的にすべての非アドレス指定体積でダイナミックレンジの消費が起こる。それとは対照的に、光データ記憶媒体140が閾値型材料を用いて形成された場合には、非アドレス指定体積でのダイナミックレンジの消費は低減又は排除され、消費は実質的に標的体積(即ち、化学線の焦点144に位置する体積)でしか起こらない。かくして、本発明の光データ記憶媒体に閾値型材料を使用することは、以前に記録されたデータ又は以後の記録のために利用し得る空所(vacant space)の隣接層を破壊することなく、媒体の内部に埋め込まれたビット単位データ層への記録を容易にする。また、細く集束されたレーザービームの光強度は焦点スポットの深さを通して劇的に変化し、通常は(横断面が最も狭くなった)ビームウェストの位置で最大となるので、媒体の閾値応答は材料の転化をビームウェストの直近のみに制限する。これは各層のマイクロホログラムのサイズの縮小をもたらして、本発明の媒体の層データ記憶容量の増加を容易にすることができる結果、媒体の総合データ記憶容量も増加させることができる。閾値型材料を用いて形成されたデータ記憶媒体はまた、周囲光で実質的に安定であり得る結果、かかる周囲光への暴露が媒体に実質的な劣化又は損害をもたらさすことはない。
【0049】
上述の通り、本発明の組成物及び光データ記憶媒体に使用される非線形増感剤は、非常に短い寿命(ナノ秒乃至数マイクロ(μ)秒)を有する上位三重項状態(Tn、ただしn>1)から反応体にエネルギーを移動することができる。Tn状態からエネルギーを移動する能力は、本明細書に提供される光データ記憶媒体に非線形の閾値特性を付与する。即ち、Tn励起状態の吸収は、増感剤が高強度光(例えば、周囲光より2桁以上高い強度を有する光)で励起された場合にのみ感知でき、低エネルギー放射に暴露された場合には無視できるほどに小さい。これにより、非線形増感剤を含む本発明の光データ記憶媒体は低強度放射(例えば、読出し光又は周囲光)に対しては実質的に透明かつ不活性に保たれ、焦点又はその近傍における高エネルギー記録光に応答してその性質(吸光度、したがって屈折率)を変化させるだけである。その結果として、本発明の光データ記憶媒体はマイクロホログラフィックデータのビット単位記録のために所望され及び/又はそのために必要な閾値挙動を示す。
【0050】
上述したことを念頭に置いて図1に戻れば、逆可飽和吸収を示す増感剤に関する上位三重項Tn励起状態の吸収及び結果として生じるエネルギー移動を示す模式的エネルギー準位図が示されている。エネルギー準位図100に示されるように、矢印102は光子が一重項基底状態S0から第1の励起状態S1に遷移する際における光子の基底状態吸収断面積を表している。矢印104で表される系間交差率は、増感剤120が励起一重項状態S1から対応する三重項状態T1に移動する場合に起こるエネルギーの移動を意味している。矢印106は、励起三重項状態の吸収断面積を表している。続く線形吸収によって上位レベルの三重項状態Tnが達成された後には、2つの上位励起崩壊プロセスが可能である。図1に矢印108で示される1つの可能な崩壊プロセスは、下方に位置するT1状態への内部変換(IC)による非放射緩和である。別の可能な崩壊プロセスは図1に矢印110で示され、増感剤120からのエネルギー放出及び三重項−三重項エネルギー移動によるこのエネルギーの反応体122への移動を含んでいる。次いで、反応体122は矢印112で示される変化を受け、ホログラフィック回折格子を形成してそこにデータを記録する。
【0051】
光データ記憶媒体に使用される非線形増感剤の量は、ホログラムを記録するために使用する光の波長におけるそれの光学密度に依存し得る。増感剤の溶解度もまた1つの因子であり得る。一般的に述べると、増感剤は光データ記憶媒体の総重量を基準にして約0.002〜約5重量%の量で使用できる。
【0052】
若干の実施形態では、光データ記憶媒体は高いデータ密度でマイクロホログラムを記録するのに適した屈折率変化(Δn)(例えば、約0.005以上又は約0.05以上、或いはそれ以上の屈折率変化)を示すと予想される。本発明の光データ記憶媒体によって達成できる屈折率変化/回折効率によれば、本媒体はシングルCD又はシングルDVDと同等なサイズのディスク上に約1TBの情報を記憶できる場合がある。
【0053】
また、本明細書に開示される反応体の使用は、通常の反応体に比べて複屈折の顕著な減少をもたらす。最後に、記載される光記録媒体は、捕獲したホログラフィックパターンのにじみを生じることがある熱発生及び近隣位置への信号漏れを低減又は最小化しながら高分解能マイクロホログラムを迅速に生み出す能力をもたらす。
【0054】
ある種の実施形態では、ポリマーマトリックスに光学的性質の大きい変化を生み出すと共に、効率的な三重項エネルギー移動を促進するため、反応体は比較的高い濃度で存在し得る。例えば、反応体は光データ記憶媒体の総重量を基準にして約2〜約80wt%の量で光データ記憶媒体に存在し得る。
【0055】
かかる反応体は、ポリマー主鎖上に誘導体化した場合、光データ記憶媒体に通常の反応体より高い添加量を与える可能性を有し得る。即ち、ポリマー主鎖上に誘導体化した場合における通常の反応体の添加量は約30wt%以下に限定されることがあるのに対し、本明細書に記載される新規反応体ははるかに高い添加量(即ち、光データ記憶媒体の総重量を基準にして約90wt%までにも達する添加量)でポリマー主鎖上に添加することができる。
【0056】
反応体は光データ記憶媒体のポリマーマトリックスに共有結合させるか、或いは他の方法でポリマーマトリックスに結合させることができる。例えば、シンナメートで官能化されたポリマーをポリマーマトリックスとして使用でき、例えばポリビニルシンナメートが商業的に容易に入手できる。この場合、光データ記憶媒体は高い添加量(例えば、光データ記憶媒体の総重量を基準にして約90%までの添加量)の反応体を含んでいてもよい。
【0057】
さらに、使用する場合、任意所望の媒介物をポリマーマトリックスに共有結合させるか、或いは他の方法でポリマーマトリックスに結合させることができる。このようにして媒介物をポリマーマトリックスに組み込めば、一層高い濃度の媒介物を使用することができ、ひいてはデータ記憶媒体の記録効率を高めることができる。
【0058】
所望の増感剤及び反応体並びに任意の光安定剤及び媒介物は、ポリマーマトリックス中に実質的に一様に分散させるか、或いは光データ記憶媒体におけるビット単位のデータ記録が容易になるような任意の方法で分散させることができる。ポリマーマトリックスは、線状、枝分れ若しくは架橋ポリマー又はコポリマー或いは他の適当な媒体であり得る。増感剤及び反応体を実質的に一様に分散させることができる限り、任意のポリマーが使用できる。さらに、使用するポリマーは上位三重項エネルギー移動プロセスを実質的に妨害しないのが通例である。ポリマーマトリックスは、光学的に透明であるか、或いは少なくとも光データ記憶媒体の記録及び読出しのために想定される波長で高い透明度を有するポリマーとして提供され得る。
【0059】
ポリマーマトリックスで使用するのに適したポリマーの特定の例には、特に限定されないが、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のようなポリ(アルキルメタクリレート)、ポリビニルアルコール、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(酢酸ビニル)などがある。
【0060】
ポリマーマトリックスはまた、ジブチルフタレート、ジブチルセバケート又はジ(2−エチルヘキシル)アジペートのような可塑剤を含むことができる。可塑剤は、分子運動を容易にすることで記録効率を高めることができる。典型的な可塑剤レベルは、記憶媒体の総重量を基準にして約1〜約20重量%又は約2〜約10重量%の範囲内にあり得る。
【0061】
上述した論議を念頭に置きながら、ポリビニルシンナメートでのシンナメート光二量化用エネルギー移動剤としてのフェノキシサブフタロシアニン(サブPC)の使用を実施形態の一例として本明細書に記載する。ある種の実施形態では、ポリマー(又は他の適当な)基体(例えば、PVCマトリックス)にドープされたサブフタロシアニン(又は他の適当なエネルギー移動剤)はポリマー基体中で凝集し、不均質性(例えば、自己凝集など)をもたらす傾向がある。例えば、ドープトサブPCがポリビニルシンナメート中で凝集する傾向は、かかるマトリックスにおけるそれの低い溶解度に原因することがある。かかる不均質性は、例えば自己消光によってエネルギー移動の効率を損なうことがある。例えば、RSA色素ドープト材料で≧1%の回折効率(DE)を達成するためには、高い記録フルエンス(例えば、>340J/cm2)が使用されることがある。さらに、ドーピングアプローチは、マトリックスに対するエネルギー移動剤(例えば、色素)の添加量レベル(<3wt%)によって制限されることがある。
【0062】
この傾向を念頭に置けば、本発明で想定されるアプローチの1つは、基体を形成する材料上に直接に付加又は誘導体化することで、色素凝集を防止すると共に、基体での色素材料及び屈折率変化材料の概して均質な分布を与えることができるフェノキシサブPCを設計及び/又は合成することである。本明細書に論議される通り、かかる付加色素を用いるアプローチは、ポリマーマトリックスに対する添加量レベルを(例えば、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%又は10wt%まで)増加させ、マイクロホログラム記録のために十分な感度を得ることができる。例えば、付加色素を用いる一実施形態では、一層低い記録フルエンス(例えば、<340J/cm2、<300J/cm2、<250J/cm2、<2000J/cm2、<150J/cm2、<100J/cm2及び<70J/cm2のフルエンス)を用いて≧1%のDEを得ることができる。
【0063】
例えば、図5及び図6について述べると、ドープされた色素材料(線154及び156)に比べ、ポリマー主鎖に付加された色素材料(線150及び152)を用いて得ることができる回折効率(図5)及び感度(図6)の差を示すグラフが提供される。図5に示す通り、レーザー強度の全測定範囲にわたって高い回折効率が得られている。同様に、図6に示す通り、レーザー強度の全測定範囲にわたって高い感度が得られている。
【0064】
PVCマトリックス実施形態に関しては、屈折率変化材料(即ち、反応体)及び色素組成物をポリマー主鎖に付加又は誘導体化するため(即ち、化学結合させるため)に各種のアプローチを使用できる。例えば、かかる分子(例えば、色素材料)をポリマー主鎖に付加又は誘導体化することは、色素分子と主鎖分子との間に共有結合、イオン結合又は他の化学結合を形成することで達成できる。上述の通り、かかる実施形態は、閾値型色素材料をポリマーマトリックスに別途にドープすることで、反応体(即ち、屈折率変化材料)から生成物への2+2光二量化を誘起して吸収及び屈折率の局部的変化を引き起こす他のアプローチとは対照的であり得る。
【0065】
一実施形態では、シンナメート部分の組込みに先立ち、ポリビニルアルコール主鎖の直接官能化を使用することができる。かかる実施形態では、ある種の色素が酸性及び塩基性条件の存在下では低い熱安定性及び低い加水分解安全性を有するので、色素の選択に配慮するのがよい。シンナメートの形成後に色素を組み込むことも可能である。しかし、基線樹脂色(405nmでの低い吸光度)はこの樹脂に関して有益な特性であり、追加の化学的性質が追加の色を生じることがある。したがって、その代わりとして、実際のポリビニルシンナメート製造との適合性を有する色素結合方法を実施することが有益であろう。
【0066】
例えば、次に図7について述べると、一実施形態でのポリビニルシンナメート製造は、まず通例は88〜100%加水分解されたポリビニルアルコール(I)を高温のn−メチルピロリジノン(NMP)に溶解することを含んでいる。50℃でNMP溶液に塩化シンナモイル(II)を添加することで、PVAをシンナメートで官能化した。酸塩化物は、固体として少量ずつ4時間かけて反応混合物に添加した。得られたPVCは、メタノール中に沈殿させることで単離した。通例、シンナメート官能化は75モル%を超えていた。
【0067】
次に図8について述べると、酸塩化物に容易に転化できる酸付加基を有するサブPC色素を合成すれば、主鎖に組み込まれた色素を有するPVCの効率的な収束的合成法が得られるであろうという仮説を立てた。フェノキシサブPC(III)を製造するための1つの方法は、還流トルエン中でフェノールをサブPC塩化物と反応させることである。したがって、フェノールを酸部分と反応させることは、所望の酸への直接経路を与え得る。
【0068】
図9について述べると、酸置換フェノキシサブPCを製造するためのさらに他の実施形態では、まずサブPC塩化物を置換ジヒドロキシベンゼンと反応させた。図示の通り、サブPC塩化物と対称ジヒドロキシベンゼン(例えば、5−ヨードレソルシノール)との反応は、好適なフェノキシ化合物(VI)を生じた。非対称ジヒドロキシベンゼン(例えば、6−ブロモレソルシノール(VII))は高い転化率で領域異性体の混合物を与えた。この反応は、約7:3の比率で、2−ブロモ異性体(IX)に比べて4−ブロモ異性体(VIII)に有利であった。これらの異性体は、シリカゲルクロマトグラフィーによって容易に分離された。図10について述べると、これらの分子のフェノール性OHを用いることで、無水グルタル酸の開環反応によって脂肪族カルボン酸が連結された。所望の酸への本質的に定量的な転化が実現されて化合物X、XI及びXIIが得られた。塩化メチレン溶液中においてジメチルホルムアミド(DMF)で触媒される塩化オキサリルを用いることで、酸X、XI及びXIIは対応する酸塩化物に転化された(図11)。
【0069】
付加色素を有するPVC樹脂は、標準的なPVC合成法の軽微な変法を用いて製造した。PVC合成法のかかる一実施形態では、酸塩化物(塩化シンナモイル)を固体として少量ずつ4時間かけてPVAの50℃NMP溶液に添加した。色素をPVC主鎖に付加する反応の実施形態では、約50%の塩化シンナモイルを添加した時点で、色素の酸塩化物誘導体(例えば、図11のXIII)を固体として添加した。小規模反応に関しては、PVAの官能化度を向上させるため、色素の酸塩化物を塩化メチレン溶液として添加した。塩化メチレン−色素溶液の添加は、部分シンナモイル化PVAの沈殿をもたらし、時間が経っても再溶解しなかった。したがって、ある種の実施形態では、反応混合物の溶解性を維持するためにPVAは少なくとも40〜50%誘導体化される。また、ある種の実施形態では、色素の酸塩化物は精製せずに使用できる。ニートなポリビニルシンナメートフィルムは405nmで非常に低い吸光度(<0.1au/mmニートフィルム)を有している。ドープト色素を含むフィルムは、通例、添加色素の濃度に応じて0.6au未満であった。結合色素は、ドープト対応品に比べ、405nmでわずかに低い吸光度を有する傾向があった。
【0070】
本明細書に記載される光データ記憶媒体は自立形態を有し得る。別法として、データ記憶媒体は適当な性質を有する任意の支持材上にコートすることもできる。かかる好適な材料の例には、特に限定されないが、ポリメチル(メタクリレート)(PMMA)、ポリカーボネート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリスチレン及び酢酸セルロースがある。支持材が使用される実施形態では、ガラス、石英又はシリコンのような適当な無機支持材を使用することもできる。
【0071】
かかる実施形態では、支持材への光データ記憶媒体の密着性を向上させるために支持材の表面を処理することができる。例えば、光データ記憶媒体の適用に先立ち、支持材の表面をコロナ放電によって処理することができる。別法として、記憶媒体の密着性を高めるため、ハロゲン化フェノール又は部分加水分解塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーのような下塗り塗料を支持材に適用することもできる。
【0072】
一般的に述べると、本明細書に記載される光データ記憶媒体は、所望の増感剤、反応体、媒介物(所望される場合)及びポリマーマトリックスをブレンド又はその他の方法で混合することで製造できる。これらの比率は広範囲にわたって変化することができ、ブレンディングの比率及び方法は当業者であれば容易に決定できる。例えば、増感剤は光データ記憶媒体の総重量を基準にして約0.01〜約90重量%の濃度で存在し得ると共に、付加又はその他の方法でポリマーマトリックスに結合できる。反応体は、光データ記憶媒体の総重量を基準にして約2〜約80重量%、さらには約90重量%までの濃度で存在し得る。
【実施例】
【0073】
実施例1〜3 マイクロホログラム記録
試料の調製
マイクロホログラムを実証すると共に、マイクロホログラムを書き込んだ後の反射率を記録するための薄膜試料を以下のようにして調製した。
【0074】
実施例1
ホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−グルタリルフェノキシド誘導体(X)/ポリビニルシンナメート(PVCm)。ジクロロエタン/塩化メチレン溶媒混合物(15g、体積比2:8)を溶媒として、2wt%のサブフタロシアニン色素を含むPVCm(0.870g)を溶解した。0.45μmフィルターを用いて溶液を濾過し、ガラスプレートセットアップ上に載せたガラスリム(直径5cm)上に注ぎ、約45℃に5時間及び約75℃に一晩保ったホットプレート上で乾燥した。ホットプレート上での乾燥後、フィルムをガラスプレートから取り外し、70℃で一晩真空乾燥した。後に、フィルムを真空オーブン内において70℃で2日間乾燥した。
【0075】
実施例2
ジクロロエタン/塩化メチレン溶媒混合物(15g、体積比2:8)を溶媒として、ポリビニルシンナメート(PVCm)主鎖(XIV)に2wt%のホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−グルタリルフェノキシド誘導体(X)を付加したものを溶解した。0.45μmフィルターを用いて溶液を濾過し、ガラスプレートセットアップ上に載せたガラスリム(直径5cm)上に注ぎ、約45℃に5時間及び約75℃に一晩保ったホットプレート上で乾燥した。ホットプレート上での乾燥後、フィルムをガラスプレートから取り外し、70℃で一晩真空乾燥した。後に、フィルムを真空オーブン内において70℃で2日間乾燥した。
【0076】
実施例3
マイクロホログラム記録
405nmの波長で動作する波長可変光パラメトリック発振器システムを、マイクロホログラムの記録及び読出し用パルス光源として使用した。0.16の開口数(NA)を有する光学系を用いて光を媒体試料に集束した結果、記録体積の概略寸法は1.6×1.6×17μmとなった。マイクロホログラム記録のために使用したパルスエネルギーは数十乃至数百ナノジュールであって、これはかかる集束記録ビームの焦点スポットの位置で数百MW/cm2乃至数GW/cm2の光強度値の達成を可能にした。マイクロホログラムから反射された光の読出しは、記録パワーに対して約100〜1000倍だけ減衰させた同じビームを用いて行った。
【0077】
光データ記憶媒体へのマイクロホログラムの記録は、2つの高強度対向伝播型記録用パルスビームを記録媒体の内部に集束しかつ重ね合わせて明領域及び暗領域(干渉縞)からなる強度干渉縞パターンを生み出すことで行った。干渉パターンの照明領域は上述したような変化を受けて材料の局部的に変更された屈折率を生じる一方、暗領域は未変化のままに保たれ、かくして体積ホログラムが生み出される。本発明の閾値型光データ記憶媒体は高強度光に対して感受性を有するが、低強度放射に対しては比較的不活性である。記録用ビームのパワーは、ビームの焦点領域付近の光強度が記録閾値(変化が容易に起こるようになる値)を上回る一方、ビームの焦点スポットから離れた記録可能領域の外側では低く保たれ、かくして意図されない媒体の変更(記録又は消去)が排除されるように調整された。
【0078】
マイクロホログラム記録時には、一次記録ビームは半波長板(λ/2)及び第1の偏光ビームスプリッターを用いて信号ビーム及び参照ビームに分割された。2つの二次ビームは対向伝播構成で試料に向けて導かれ、0.4までの開口数(NA)を有する同一の非球面レンズによって光データ記憶媒体の内部で重なり合うように集束された。ビームが干渉して高コントラストの干渉縞パターンを生み出すことを保証するため、両ビームの偏光は2つの四分の一波長板(λ/4)を用いて円偏光に変換した。試料及び信号ビームレンズは、25nmの分解能を有する閉ループ式の三軸位置決めステージ上に取り付けた。試料の参照側の位置感受性検出器を用いて、媒体中で集束信号ビーム及び参照ビームの最適重ね合わせ、したがって最適記録が達成されるように信号ビームの位置合わせを行った。
【0079】
記録及び/又は読出し時には、可変減衰器及び半波長板/PBSアセンブリを用いてパワーレベルを制御した。これにより、光データ記憶媒体のマイクロホログラフィック記録特性を記録パワー及び/又はエネルギーの関数として測定できる。このような関数依存性は、記録ホログラムの強度が主として媒体によって受け取られる光エネルギーの総量で画定されるが光強度には無関係である線形の光データ記憶媒体/記録と、記録効率が光の強度に大きく依存する非線形の閾値型光データ記憶媒体/記録とを区別する。線形媒体では、少量の露光は低強度のホログラムを生じ、これが露光量の増加に伴って徐々に増強する。それとは対照的に、非線形の閾値型媒体では、強度が閾値を超える場合にのみ記録が可能である。
【0080】
読出し時には、信号ビームは遮断され、参照ビームはマイクロホログラムによって入射方向と反対の方向に反射された。四分の一波長板及び第2の偏光ビームスプリッターを用いて反射ビームを入射ビーム路からアウトカップリングし、共焦点構成で較正フォトダイオード上に集めて回折効率の絶対尺度を得た。読出し光学系に対して試料を並進させることで、マイクロホログラム回折応答の3Dプロファイルを求め、マイクロホログラムの寸法を評価することが可能である。
【0081】
図12は、本開示に従って製造された光データ記憶媒体に関し、読出しビームに対する一連のマイクロホログラムの実験的に測定された反射率を試料の横方向位置に対して示している。ピークは、参照ビームがアレイの1つのマイクロホログラムの中心に配置された場合に試料の位置で生じる。図13は、本開示に従って製造された光データ記憶媒体において、フルエンスは同じだが強度は異なる条件下で記録されたマイクロホログラムの反射率の依存性を示しており、材料の閾値型機能性を実証している。即ち、材料の記録感度は強度が閾値(約100〜200MW/cm2)を超えた場合に劇的に増加する一方、閾値未満の強度では記録ホログラムの反射率は本質的にゼロ(系の検出限界内)である。
【0082】
これらの実施形態における回折効率は、記録フルエンスに応じて約0.03〜約0.26%であると予想される。実施例5は7.74%の測定回折効率を有していたのに対し、実施例5は1.55%の測定回折効率を有していた。
【0083】
実施例4 結合サブPC色素を有するポリビニルシンナメートの合成(XIV)
図14について述べると、ポリビニルアルコール(1.50g、31.3mmol、Aldrich社、88%加水分解)を80℃で25mLのNMPに溶解したが、完全な溶解には約2時間を要した。この溶液を50℃に冷却し、塩化シンナモイル(12.0g、72.2mmol)を少量ずつ3〜4時間かけて添加した。塩化シンナモイル添加のほぼ中間点で、色素の酸塩化物を固体又は塩化メチレン溶液として添加した。塩化シンナモイル添加の完了後、溶液を室温に放冷し、メタノール中で沈殿させた。得られた固体を塩化メチレンに再溶解して濾過した。この溶液をメタノール中で再沈殿させ、濾過によって集め、真空下において60℃で12時間乾燥した。組み込まれた色素のパーセントをGPCによって決定し、色素の正味重量パーセントをUV分光法によって決定した。
【0084】
実施例5 ホウ素サブフタロシアニンフェノキシドの一般的製造方法
ホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−ヒドロキシフェノキシド(VI):磁気撹拌棒及び凝縮器/窒素バイパスを備えた250ml丸底フラスコ内に、50mlのトルエン中の1.28g(0.003モル)のホウ素サブフタロシアニンクロリド及び2.80g(0.0119モル)の4−ヨードレソルシノールの混合物を配置した。次いで、混合物を冷却し、減圧下でトルエンを除去した。残留物に200mlの塩化メチレンを添加し、約15〜30分間撹拌した。残ったゴム状の固体を600mLの酢酸エチルに再溶解し、濾過して若干の不溶物を除去した。次いで濾液を水(各100ml)で3回洗浄し、無水マグネシウム上で乾燥した。濾過した溶液に15gのシリカゲルを添加し、溶媒を減圧下で蒸発させて乾燥した。粗生成物/シリカゲルをロードカラム上にロードし、粗生成物をCombiFlash Companion(Isco,Inc.製)上での分取LCによって精製した。使用したカラムは、120gm RediSep Silica Gel順相使い捨てカラム(Teledyne Isco,Inc.製)であった。ランレングス:85ml/分の流量で35分。溶離溶媒としてクロロホルム/EtOAcを使用し、100%CHCl3を33分間、以後は終了までに85%に達するEtOAc勾配とした。生成物のRTは25分であった。純粋な画分を合わせて濃縮した。収量:1.13g(59.8%)。1HNMR:4.72ppm(t,1H)、5.10ppm(t,1H)、6.39ppm(t,1H)、8.01ppm(m,6H)、8.85ppm(m,6H)、9.42ppm(s,1H)。
【0085】
ホウ素サブフタロシアニン3−ヒドロキシ−2(4)−ブロモフェノキシド(VIII):24時間撹拌した点を除き、上記と同じ手順を使用した。生成物は、2−ブロモ異性体及び4−ブロモ異性体の70:30混合物である。分取LCを用いて粗混合物を精製し、異性体を分離した。それはCombiFlash Companion(Isco,Inc.製)上で実施した。使用したカラムは、120gm RediSep Silica Gel順相使い捨てカラム(Teledyne Isco,Inc.製)であった。ランレングス:85ml/分の流量で28分。溶離溶媒としてクロロホルム/EtOAcを使用し、100%CHCl3を13分間、以後は操作終了までに10%に達するEtOAc勾配とした。生成物のRTは25分であった。ホウ素サブフタロシアニン3−ヒドロキシ−4−ブロモフェノキシド(主異性体、RT=14分)。収率:34.2%。1HNMR:4.90ppm(dd,1H)、5.16ppm(s,1H)、5.17ppm(d,1H)、6.81ppm(d,1H)、7.93ppm(m,6H)、8.87(m,6H)。
【0086】
ホウ素サブフタロシアニン3−ヒドロキシ−2−ブロモフェノキシド(副異性体、RT=24分)。収率:16.4%。1HNMR:4.72ppm(d,1H)、6.02ppm(dd,1H)、6.75ppm(d,1H)、8.03ppm(m,6H)、8.85ppm(m,6H)、9.30ppm(s,1H)。
【0087】
実施例6 グルタル酸−ホウ素サブフタロシアニンフェノキシドの一般的製造方法
ホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−グルタリルフェノキシド誘導体(X):磁気撹拌棒を備えかつゴム隔膜で蓋をした100ml丸底フラスコ内に、1.56g(0.00247モル)のホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−ヒドロキシフェノキシド(VI)、19.7g(0.173モル)の無水グルタル酸、40mlのDMF及び7.82g(0.0988モル)のピリジンの混合物を配置した。フラスコを80℃に予熱した油浴中に2.5時間浸した。反応混合物を冷却し、150mlの水中に注ぎ込み、約20分間撹拌した。水性混合物に200mlの塩化メチレンを添加して生成物を抽出した。塩化メチレン溶液を150mlの水(約10×)で繰返し洗浄し、希HClで1回洗浄し、次いで再び水で洗浄してDMF及びピリジンを除去した。塩化メチレン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。生成物をさらに真空オーブン内において室温で一晩乾燥した。収量:1.65g(89.8%)。1HNMR:2.15ppm(m,2H)、2.58ppm(t,2H)、2.64ppm(t,2H)、4.94ppm(t,1H)、5.82ppmt,1H)、6.68ppm(t,1H)、7.94ppm(m,6H),8.88ppm(m,6H)。
【0088】
UV−Vis:e@405nm:67.5、e@λmax:68000。
【0089】
ホウ素サブフタロシアニン2−ブロモ−5−グルタリルフェノキシド誘導体(XII):上記と同じ手順を使用した。収率:76.4%。1HNMR:2.16ppm(m,2H)、2.60ppm(t,2H)、2.65ppm(t,2H)、5.05ppm(d,1H)、6.27ppm(dd,1H),7.94ppm(m,6H)、8.88ppm(m,6H)。
【0090】
ホウ素サブフタロシアニン4−ブロモ−5−グルタリルフェノキシド誘導体(XI):反応混合物を室温で一晩撹拌した点を除き、上記と同じ手順を使用した。収率:86%。1HNMR:2.15ppm(五重線,2H)、2.61ppm(四重線,4H)、5.13ppm(d,1H)、5.26ppm(dd,1H)、6.93ppm(d,1H)、7.93ppm(m,6H)、8.87ppm(m,6H)。NMRは9.9%の出発原料も示した。
【0091】
ここに記載した説明は、実施例を使用することで、最良の実施形態を含めて本発明を開示すると共に、任意のデバイス又はシステムの作製及び使用並びに任意の組み込まれた方法の実行を含め、当業者が本発明を実施することを可能にする。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者に想起される他の実施例を包含し得る。かかる他の例は、特許請求の範囲の字義通りの表現と違わない構造要素を有する場合、或いは特許請求の範囲の字義通りの表現とわずかな違いしかない同等な構造要素を含む場合、特許請求の範囲内に含まれるものとする。本明細書には本発明の若干の特徴のみを例示し説明したが、当業者には数多くの修正及び変更が想起されるであろう。個々の実施形態が論議されているが、本発明はすべてのこれらの実施形態のあらゆる組合せを包含する。したがって、添付特許請求の範囲は本発明の真の技術思想の範囲内に含まれるすべてのかかる修正及び変更を包含することを理解すべきである。
【符号の説明】
【0092】
120 非線形増感剤
122 反応体
140 光データ記憶媒体
142 区画
144 焦点
146 レーザー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス、
ポリマーマトリックス中に配置され、励起時に光化学変化を受けることができる反応体(122)、及び
ポリマーマトリックスに化学結合した非線形増感剤(120)であって、1以上の波長の放射への暴露時に反応体(122)に屈折率変化を引き起こす非線形増感剤(120)
を含んでなる組成物。
【請求項2】
1以上の波長の放射が約380〜約450nmの波長を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
非線形増感剤(120)が1以上の波長の放射への暴露時に上位三重項エネルギー移動を引き起こし、上位三重項エネルギー移動に応答して屈折率変化が起こる、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
非線形増感剤(120)が1種以上のサブフタロシアニン逆可飽和吸収体を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
非線形増感剤(120)がエネルギー移動閾値型色素を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
非線形増感剤(120)が1以上の共有結合によってポリマーマトリックスに化学結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
反応体(122)がスチルベン誘導体、シンナメート、シンナメート誘導体、シンナムアミド誘導体又はこれらの組合せを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ポリマーマトリックスがポリビニル組成物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
反応体(122)がポリマーマトリックスに化学結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ポリマーマトリックス、
励起時に光化学変化を受けることで屈折率変化を引き起こすことができる反応体(122)、及び
反応体(122)が1以上の波長の放射に暴露された場合に反応体(122)の励起を引き起こすことができる非線形増感剤(120)であって、ポリマーマトリックスに化学結合している非線形増感剤(120)
を含んでなる光データ記憶媒体(140)。
【請求項11】
反応体(122)及び非線形増感剤(120)の一方又は両方がポリマーマトリックスに化学結合している、請求項10記載の光データ記憶媒体(140)。
【請求項12】
非線形増感剤(120)が1種以上のサブフタロシアニン逆可飽和吸収体を含む、請求項10記載の光データ記憶媒体(140)。
【請求項13】
光データ記憶媒体(140)がマイクロホログラフィックデータを記憶できる、請求項10記載の光データ記憶媒体(140)。
【請求項14】
ポリマーマトリックスが、1種以上のポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(酢酸ビニル)又はこれらの組合せを含む、請求項10記載の光データ記憶媒体(140)。
【請求項15】
非線形増感剤(120)がポリマーマトリックス中で3wt%を超える添加量レベルで誘導体化されている、請求項10記載の光データ記憶媒体(140)。
【請求項1】
ポリマーマトリックス、
ポリマーマトリックス中に配置され、励起時に光化学変化を受けることができる反応体(122)、及び
ポリマーマトリックスに化学結合した非線形増感剤(120)であって、1以上の波長の放射への暴露時に反応体(122)に屈折率変化を引き起こす非線形増感剤(120)
を含んでなる組成物。
【請求項2】
1以上の波長の放射が約380〜約450nmの波長を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
非線形増感剤(120)が1以上の波長の放射への暴露時に上位三重項エネルギー移動を引き起こし、上位三重項エネルギー移動に応答して屈折率変化が起こる、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
非線形増感剤(120)が1種以上のサブフタロシアニン逆可飽和吸収体を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
非線形増感剤(120)がエネルギー移動閾値型色素を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
非線形増感剤(120)が1以上の共有結合によってポリマーマトリックスに化学結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
反応体(122)がスチルベン誘導体、シンナメート、シンナメート誘導体、シンナムアミド誘導体又はこれらの組合せを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ポリマーマトリックスがポリビニル組成物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
反応体(122)がポリマーマトリックスに化学結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ポリマーマトリックス、
励起時に光化学変化を受けることで屈折率変化を引き起こすことができる反応体(122)、及び
反応体(122)が1以上の波長の放射に暴露された場合に反応体(122)の励起を引き起こすことができる非線形増感剤(120)であって、ポリマーマトリックスに化学結合している非線形増感剤(120)
を含んでなる光データ記憶媒体(140)。
【請求項11】
反応体(122)及び非線形増感剤(120)の一方又は両方がポリマーマトリックスに化学結合している、請求項10記載の光データ記憶媒体(140)。
【請求項12】
非線形増感剤(120)が1種以上のサブフタロシアニン逆可飽和吸収体を含む、請求項10記載の光データ記憶媒体(140)。
【請求項13】
光データ記憶媒体(140)がマイクロホログラフィックデータを記憶できる、請求項10記載の光データ記憶媒体(140)。
【請求項14】
ポリマーマトリックスが、1種以上のポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(酢酸ビニル)又はこれらの組合せを含む、請求項10記載の光データ記憶媒体(140)。
【請求項15】
非線形増感剤(120)がポリマーマトリックス中で3wt%を超える添加量レベルで誘導体化されている、請求項10記載の光データ記憶媒体(140)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−53974(P2012−53974A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184200(P2011−184200)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】
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