説明

光ネットワークのエネルギー効率のよい再最適化のための方法

【課題】光ネットワークにおいて、ネットワークの増大するトラフィック需要を満たす新たなリンクが経時的にノード間に加えられる。既存のリンクは通常変更されず、その結果、最低エネルギー消費を有しないネットワークが生じる。
【解決手段】すべての時点において必要とされるトラフィック需要をサポートしながら、全体ネットワークのエネルギー消費を低減する方法を提供する。ネットワークは、複数のソースノードと、複数の宛先ノードとを含む。ネットワークは、エッジによって接続されたノードのグラフによって表される。各ノードは光ネットワーク要素を表し、各エッジは2つの光ネットワーク要素を接続するパスを表す。各エッジは需要でラベル付けされる。最も低い需要を有する非ブリッジエッジがグラフから除去され、最も高い需要を有する非ブリッジエッジにその最も低い需要が加えられる。これらのステップは終了条件に達するまで繰り返される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、包括的には光ネットワークに関し、より詳細には、光ネットワークにおけるリンクをエネルギー効率のよい方式で再最適化することに関する。
【背景技術】
【0002】
光ネットワークは、インタネットの規模の増大を受け、高速に拡大を続けている。光ネットワークの拡大とともに、光ネットワークのエネルギー消費が増大し、それによって、データネットワークのエネルギー消費を合わせると、一国の総エネルギー消費のかなりの割合となっている。たとえば、2005年のTelecom Italia社のネットワークの消費は、2TWhを超え、これはイタリアの総エネルギー需要のほぼ1%である。したがって、光ネットワークのエネルギー消費を低減する方法を見つけることが重要である。
【0003】
光ネットワークは、完全に計画されて一度に構築されるのではなく、新たなリンクを追加して容量を増大させることによって拡大する傾向があり、混乱を最小限にするために、現在のリンクへの変更は最小にされる。光トランスポートネットワーク(OTN)において、より小さな光データユニット(ODU)と比べてはるかに低いエネルギーを用いて、より大きなODUをトランスポートしスイッチングすることができることが知られている。したがって、大量のトラフィックを有する光リンクは、より小量のトラフィックを有するリンクよりもビット当たりに消費するエネルギーが小さい。これは、元の設計が最適に近いエネルギー消費を有していた場合であっても、経時的に、光ネットワークのエネルギー効率が最適から離れていくことを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リンクが追加または除去されるとともに、ネットワークトポロジを部分的にまたは全体的に変更することによって、ネットワークのエネルギー消費を低減することが可能である。しかしながら、これは、ネットワーク機器の変更をともなうのでコストが高く、また、ネットワーク動作がインタラプトされるので混乱が生じる(disruptive)。ほとんどの場合、エネルギー消費に対し最も大きな影響を有するリンクのみを変更することによってトラフィックにおける混乱を最小限にすることが重要である。トラフィック再分配の量を最小にしてネットワークエネルギー消費を低減する方法を教示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の実施の形態は、光ネットワークの全体エネルギー消費を改善するために、光ネットワークを再最適化する方法を提供する。この発明の実施の形態は、ネットワーク内のリンク上の大きなトラフィック束を優先して選ぶ(favor)ことによって、わずかな数の変更のみでエネルギー効率の良好な改善を提供する、ネットワークに対する変更を確定する。
【発明の効果】
【0006】
このようにして、エネルギー効率は、現在のトラフィックに対する混乱を最小にして大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】データレートの関数としてのエネルギーおよびエネルギーの導関数のグラフである。
【図2】トラフィック需要の例を有する15個のノード間のネットワーク接続のグラフの概略図である。
【図3】図2のネットワークにおけるエッジ需要の例の概略図である。
【図4】この発明の実施の形態によるネットワークのエネルギー効率を再最適化する方法の流れ図である。
【図5】この方法の第1のステップ後のネットワークグラフの概略図である。
【図6】この方法の第2のステップ後のネットワークグラフの概略図である。
【図7】この方法の第3のステップ後のネットワークグラフの概略図である。
【図8】この方法が完了した後のネットワークグラフの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
概して、ネットワークのエネルギー消費は、スイッチング機能およびルーティング機能が大半を占める。ODUクロスコネクト(XC)は、レイヤ3(L3)ルータ、イーサネットスイッチ、またはSONET/SDH XCと比較して、ビット当たり低減したエネルギー消費を有する。加えて、より大きなODUサイズは、より小さなODUサイズよりも、スイッチングおよびトランスポートに必要とするエネルギーが少ない。ODUサイズは連続的に調整可能ではなく、現在規定されているサイズは、1.25Gbps(ODU0)、2.5Gbps(ODU1)、10Gbps(ODU2)、40Gbps(ODU3)、および100Gbps(ODU4)である。しかしながら、この方法の説明のために、データレートRの関数としてのエネルギー消費Eが、図1に示すように、勾配が減少していく連続した凹関数であると仮定する。特に、提示される値について、E(R)=2*sqrt(R)を仮定する。すべてのリンクが最大容量を有することに留意されたい。
【0009】
は勾配が減少していく凹関数であるので、限界エネルギー消費(marginal energy consumption)E’(ここで、シンボルE’は、Eの導関数を表す)は、連続減少関数(continuously reducing function)となる。このため、提示される値について、E’(R)=1/sqrt(R)を仮定する。
【0010】
次に、図2に示す、1,2,・・・15をラベル付けされた15個のノードと、ノード間を接続する線によって表される光リンクとを含むネットワーク例を検討する。ノードは、光ネットワーク要素、たとえばルータ、スイッチ、およびクロスコネクト(cross−connect)を表す。概して、ネットワークのエネルギー消費は、スイッチング機能およびルーティング機能が大半を占める。ODUクロスコネクト(XC)は、レイヤ3(L3)ルータ、イーサネットスイッチ、またはSONET/SDH XCと比較して、ビット当たり低減したエネルギー消費を有する。加えて、より大きなODUサイズは、より小さなODUサイズよりも、スイッチングおよびトランスポートに必要とするエネルギーが少ない。2つの隣接ノード間の光リンクは「エッジ」と呼ばれる。「パス」を、2つのノードをリンクする一連の接続されたエッジとして定義する。ソースノードiと所与の宛先ノードjとの間のトラフィック需要は「需要」と呼ばれ、D(i,j)によって表される。
【0011】
エネルギー低減方法を説明するために、14個の宛先ノードj、2,・・・15を有する単一のソースノードi=1を有する図2のネットワークを仮定する。需要D(1,j)は、ノードの隣の値によって与えられる。たとえば、需要D(1,2)は、22のトラフィックユニットに等しく、D(1,3)は、12のトラフィックユニットに等しく、D(1,4)は、8のトラフィックユニットに等しい。
【0012】
一般的な場合、2つのノードをリンクする2つ以上のパスが存在する場合があり、このため、需要は各パスにわたって共有される(is shared)。ノードiとノードjとの間で定義されるM個のパスが存在する場合、パスk(ここで、k=1,・・・,M)に対するトラフィック需要は「パス需要」と呼ばれ、PD(i,j,k)によって表される。需要はパス需要の和に等しく、すなわち、以下であることに留意されたい。
【0013】
【数1】

【0014】
多くのソースノードおよび宛先ノードが存在するので、所与のエッジは、複数の異なるパスと関連付けられたトラフィックを有する。エッジにおけるトラフィック需要は「エッジ需要」と呼ばれる。
【0015】
以下で例として説明するように、任意の特定のリンク(i,j)におけるエッジ需要は、すべてのソースと宛先との間の総需要と、エッジ(i,j)を含むソース間のパス数との関数である。需要の任意の部分を搬送する各エッジの容量は、最初に、基本制約が満たされるように、すなわちすべての需要が満たされ、エッジが該エッジの容量を超えた需要を割り当てられないように、割り当てる(be allocated)ことができる。このため、需要は複数の方法で割り当てることができる。エッジ需要を図3に示すように仮定し、初期エッジ需要割当てに対し、エネルギー消費を下げる新たな割当てをどのように見つけることができるかを説明する。
【0016】
ほとんどのノードの場合、ノードjからノード1へ到達し需要を満たす、ネットワークを通じた複数の可能なパスが存在する。たとえば、ノード11から、(他の選択肢の中でも)ノード11⇔8⇔6⇔5⇔4⇔2⇔1を用いた、ノード1への1つの可能なパスが存在する。ここで、「⇔」はエッジを示す。エッジは一方向とすることもできるし、各方向に異なるエッジ需要を有して双方向とすることもできるし、各方向に等しいエッジ需要を有して双方向とすることもできることに留意されたい。簡単にするために、等しいエッジ需要を有する双方向エッジが示されている。
【0017】
図3において、説明の目的のために、ノード1からノードN(N=2,3,・・・,15)への需要が、1⇔7および1⇔5を除いて、1つのパスのみによってサポートされていると仮定する。1⇔7および1⇔5の需要はそれぞれ3つのパス間で分割されている。需要は以下のパスにわたって分割される。すなわち、1⇔7需要は、パス需要1を有するパス1⇔3⇔7と、パス需要2を有するパス1⇔2⇔4⇔5⇔7と、パス需要2を有するパス1⇔8⇔6⇔5⇔7とに分割され(合計5であり、これが1⇔7需要となる)、1⇔5需要は、パス需要7を有するパス1⇔3⇔7⇔5と、パス需要12を有するパス1⇔2⇔4⇔5と、パス需要4を有するパス1⇔8⇔6⇔5とに分割される(合計23であり、これが1⇔5需要となる)。上記で提供した仮定を用いるネットワークによって消費される総エネルギーは、2√(エッジ需要)によって与えられるすべてのエッジエネルギーの和である。この場合、消費される総エネルギーは、163.2のエネルギーユニットである。
【0018】
図4は、この発明の実施の形態による、各ステップにおいてすべての需要を満たしながら、光ネットワークにおけるエネルギー効率を改善するための方法を示している。この方法のステップ、および本明細書に記載される任意の他のプロセスは、当該技術分野において既知のメモリおよび入出力インタフェースに接続されたプロセッサにおいて実行することができる。
【0019】
第1に、ネットワークを表すグラフを構築する(410)。ネットワークは、エッジによって接続されたノードを含む。エッジは、ノード間のトラフィック需要と関連付けられる(are associated with)。
【0020】
グラフを用いてネットワークにけるブリッジエッジを特定し排除する(420)。ここで、「ブリッジエッジ」は、除去された場合、結果として接続されていないネットワークとなるエッジである。これは既知の手順を用いて実行することができる。
【0021】
次に、残りのエッジのうちのいずれが最も高い限界エネルギー(最も低い需要)を有するかを特定し、除去する(430)。このエッジはネットワークから除去され、この最も低い需要は、以下の条件、すなわち必要とされる需要をサポートし、かつ変更されたネットワークにおいていかなる所与のエッジの容量も超えない、を満たす最も低い限界エネルギーを有するエッジに加えられる(440)。2つ以上のエッジが同じ最も低い限界エネルギーを有する場合、1つが任意に選択される。
【0022】
次に、ネットワーク内のすべての残りのエッジがブリッジエッジであるか否かを知るために検査し(450)、yesである場合、終了する(455)。noである場合、許容される最大反復数を超えたか否かを検査し(460)、yesである場合、終了する(465)。そうでない場合、ステップ420において開始を繰り返す。
【0023】
図5は、ステップ420および430におけるネットワークグラフを示している。ステップ420において求められたブリッジエッジが破線によって示されている。ステップ430において最も高い限界エネルギー(最も低い需要)を有するとして特定されたエッジは、5⇔6(510)である。
【0024】
図6は、ステップ430および440におけるネットワークグラフを示している。5⇔6エッジはネットワークから除去され、ノード5を用いるパスをサポートする最も低い限界エネルギーエッジは5⇔4エッジであるので、除去されたエッジ需要(6)がエッジ5⇔4、4⇔2、2⇔1に加えられる。エッジ需要(6)はまた、6⇔8エッジおよび8⇔1エッジから除去される。なぜなら、もはやこれらのノードを用いるパスをサポートする必要がないためである。すべてのエッジがブリッジエッジではないので、この方法は継続する。次の反復において、除去されることになるエッジ610は3⇔7である。
【0025】
図7は、第2の反復のステップ420および430の後のネットワークグラフを示している。エッジ710および720は、ブリッジエッジとして特定され、検討から外されている。3⇔7エッジも除去され、該エッジの需要は上述したように他のエッジに加えられている。この段階において、すべてのエッジがブリッジエッジであり、このため、この方法は終了する。
【0026】
図8は、この方法が完了した後のネットワークグラフを示している。新たなネットワークについて、上述したように総エネルギーが計算され、154.2であると分かり、この例では(163.2−154.2)/163.2=5.5%の節減である。
【0027】
複数のソースで複数の宛先の場合、アルゴリズムは単一ソースの場合と類似している。上述したようにエッジ需要が求められるが、ルートノードからの需要、すなわち提示された例ではD(1,j)のみでなく、N個のノード間のすべての需要D(i,j)を検討する。ブリッジエッジが除去され、説明した2つの条件をサポートする最も高い限界エネルギーを有するエッジが見つけられる。次にこのエッジは除去され、該エッジのエッジ要求が、このエッジによってサポートされているパスのそれぞれについて、他のエッジに再分配される。この手順は、最大反復数に達するか、またはブリッジエッジがこれ以上なくなるまで、上述したように継続する。
【0028】
他のプロトコルへの拡張
上記の説明は、OTNのみを扱ったが、同じアルゴリズムを、OTNによってトランスポートされるプロトコルを含む他のプロトコルに適用することができることに留意することが重要である。例として、MPLS(マルチプロトコルラベルスイッチング)におけるラベルスイッチパス(LSP)を検討する。LSPはOTNが保有することができ、本質的に準静的とすることができる。したがって、LSPは再最適化することができ、それによって、LSPはより高いレートのODUによって保有され、このため、より低いレートのODUを解放し、エネルギー効率を改善する。これは説明したのと同じアルゴリズムを用いる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のソースノードと、複数の宛先ノードとを含む光ネットワークにおいてエネルギー転送効率を改善するための方法であって、
前記ネットワークを、エッジによって接続されたノードのグラフとして表すステップであって、各ノードは光ネットワーク要素を表し、各エッジは2つの光ネットワーク要素を接続するパスを表す、表すステップと、
前記各エッジを需要でラベル付けするステップと、
非ブリッジエッジを特定するステップと、
前記グラフから、最も低い需要を有する前記非ブリッジエッジを除去するステップと、
前記最も低い需要を、最も高い需要を有する前記非ブリッジエッジに加えるステップと、
前記ラベル付けするステップと、前記特定するステップと、前記除去するステップと、前記加えるステップとを、終了条件に達するまで繰り返すステップと、
を含む、複数のソースノードと、複数の宛先ノードとを含む光ネットワークにおいてエネルギー転送効率を改善するための方法。
【請求項2】
前記最も低い需要は最も高い限界エネルギーに対応し、前記最も高い需要は最も低い限界エネルギーに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記限界エネルギーはエネルギー消費の導関数である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記最も低い需要は、前記非ブリッジエッジの容量を超えない場合にのみ加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数のエッジが前記最も高い需要を有し、該複数のエッジのうちの1つに前記最も低い需要が任意で加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記終了条件は、すべてのエッジが非ブリッジエッジであることである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記終了条件は、最大反復回数である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−46414(P2013−46414A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−151551(P2012−151551)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】