説明

光パルス試験方法及び光パルス試験装置

【課題】本発明は、短いダミーファイバを用いて長距離の被測定光ファイバのOTDR測定を精度よく行うことのできる光パルス試験方法及び光パルス試験装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、パルス幅の狭い第1のパルス光PF1がダミーファイバ13で散乱された第1の戻り光PB1の光レベルを測定する第1の測定手順S101と、パルス幅の広い第2のパルス光PF2がダミーファイバ13及び被測定光ファイバ100で散乱された第2の戻り光PB2の光レベルを測定する第2の測定手順S102と、第1のパルス幅、第2のパルス幅及び第1の戻り光の光レベルPB1を用いて、第2のパルス光PF2がダミーファイバ13で散乱された被測定光ファイバが接続される側のダミーファイバ13の端である入出力端の戻り光の光レベルを算出する入出力端戻り光レベル算出手順S103と、を順に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OTDR(Optical Time Domain Reflectometry)測定を行う光パルス試験方法及び光パルス試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送路の損失等を測定するために、OTDR測定が行われている。OTDR測定では、光源からのパルス光を被測定光ファイバに出力し、被測定光ファイバでの後方散乱光の光パワーを測定する。光源からのパルス光は、装置内のダミーファイバを介して被測定光ファイバに出力される。このダミーファイバでの後方散乱光レベルを測定することによって、OTDR測定の精度を高める方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の方法は、ダミーファイバでの後方散乱光の光レベルと被測定光ファイバを接続後の後方散乱光の光レベルを用いて被測定光ファイバの後方散乱光の光レベルを算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−160197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長距離の被測定光ファイバのOTDR測定を精度よく行いたい場合、SN比を高めるために、パルス幅の広いパルス光を用いる。このとき、ダミーファイバを長くしなければ、ダミーファイバでの後方散乱光の光レベルを測定することはできない。つまり、被測定光ファイバが接続される、光パルス試験装置の入出力端(ダミーファイバの末端)における後方散乱光の光レベルを測定することはできない。
【0005】
特許文献1に記載の方法では、パルス光のパルス幅まで考慮されていない。このため、特許文献1に記載の方法を用いると、ダミーファイバが長くなり、光パルス試験装置が大型化してしまうとともにコストが増大するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、短いダミーファイバを用いて長距離の被測定光ファイバのOTDR測定を精度よく行うことのできる光パルス試験方法及び光パルス試験装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明の光パルス試験方法は、デッドゾーンがダミーファイバ長に相当する時間以下になる第1のパルス幅を有する第1のパルス光を前記ダミーファイバに入射し、前記第1のパルス光が前記ダミーファイバで散乱された第1の戻り光の光レベルを測定する第1の測定手順(S101)と、前記ダミーファイバに被測定光ファイバが接続された状態で、前記第1のパルス幅よりもパルス幅の広い第2のパルス幅を有する第2のパルス光を前記ダミーファイバに入射し、前記第2のパルス光が前記ダミーファイバ及び前記被測定光ファイバで散乱された第2の戻り光の光レベルを測定する第2の測定手順(S102)と、前記第1のパルス幅、前記第2のパルス幅及び前記第1の戻り光の光レベルを用いて、前記第2の戻り光の光レベルのうちの前記第2のパルス光が前記ダミーファイバで散乱された前記被測定光ファイバが接続される側の前記ダミーファイバの端である入出力端の戻り光の光レベルを算出する入出力端戻り光レベル算出手順(S103)と、を順に有する。
【0008】
第1の測定手順を実行することで、第1のパルス幅のときのダミーファイバからの戻り光の光レベルを測定することができる。第1のパルス幅を狭くすることで、短いダミーファイバであっても入出力端における第1の戻り光の光レベルを測定することができる。第2の測定手順を実行することで、パルス幅の広い第2のパルス幅のときの被測定光ファイバからの戻り光の光レベルを測定することができる。第2のパルス幅のときにダミーファイバで散乱された戻り光の光レベルは、第1のパルス光と第2のパルス光のパワー比に応じて大きくなっている。このため、入出力端戻り光レベル算出手順を実行することで、入出力端の戻り光の光レベルを算出することができる。このように、本願発明の光パルス試験方法は、入出力端の戻り光の光レベルを算出することができるため、短いダミーファイバを用いた場合であっても、被測定光ファイバのOTDR測定を精度よく行うことができる。したがって、本願発明の光パルス試験方法は、短いダミーファイバを用いて長距離の被測定光ファイバのOTDR測定を精度よく行うことができる。
【0009】
本願発明の光パルス試験方法では、前記第2の測定手順で測定した第2の戻り光の光レベル及び前記入出力端戻り光レベル算出手順で算出した前記入出力端の戻り光の光レベルを用いて、前記被測定光ファイバでの光の損失値を算出する全損失値算出手順(S111)を、前記入出力端戻り光レベル算出手順の後にさらに有していてもよい。
【0010】
本願発明の光パルス試験方法では、前記全損失値算出手順で算出した前記被測定光ファイバでの光の損失値を表示する全損失値表示手順(S112)を、前記全損失値算出手順の後にさらに有していてもよい。
【0011】
本願発明の光パルス試験方法では、前記全損失値算出手順で算出した前記光の損失値が予め定められたしきい値を超えているか否かを判定し、判定結果を表示するしきい値判定手順(S113)を、前記全損失値算出手順の後にさらに有していてもよい。
【0012】
本願発明の光パルス試験方法では、前記入出力端戻り光レベル算出手順で算出した前記入出力端の戻り光の光レベルにマーカを表示するマーカ表示手順(S121)を、前記入出力端戻り光レベル算出手順の後にさらに有していてもよい。
【0013】
本願発明の光パルス試験方法では、前記第2の測定手順で測定した前記第2の戻り光の光レベルを用いて、前記被測定光ファイバの前記第2のパルス光の入射端における前記第2の戻り光の光レベルを算出する被測定光ファイバ入射光レベル算出手順(S131)を、前記第2の測定手順の後にさらに有し、前記入出力端戻り光レベル算出手順で算出した光レベル及び前記被測定光ファイバ入射光レベル算出手順で算出した光レベルを用いて、前記ダミーファイバと前記被測定光ファイバとの間の接続損失値を算出する接続損失値算出手順(S132)を、前記入出力端戻り光レベル算出手順の後にさらに有していてもよい。
【0014】
本願発明の光パルス試験方法では、前記接続損失値算出手順で算出した前記接続損失値を表示する接続損失値表示手順(S133)を、前記接続損失値算出手順の後にさらに有していてもよい。
【0015】
本願発明の光パルス試験方法では、前記第2の測定手順で測定した第2の戻り光の光レベルと前記被測定光ファイバ入射光レベル算出手順で算出した光レベルをつなぐ直線を表示する第2の戻り光推定直線表示手順(S134)を、前記入出力端戻り光レベル算出手順の後にさらに有していてもよい。
【0016】
上記目的を達成するために、本願発明の光パルス試験装置は、パルス光を出力する光源(11)と、被測定光ファイバ(100)に接続可能な入出力ポート(12)と、前記入出力ポートに接続され、前記光源からのパルス光を前記入出力ポートに接続されている前記被測定光ファイバに出力するダミーファイバ(13)と、前記パルス光が前記ダミーファイバで散乱された第1の戻り光又は前記パルス光が前記ダミーファイバ及び前記被測定光ファイバで散乱された第2の戻り光を受光する受光部(14)と、前記受光部の受光する前記第1の戻り光及び前記第2の戻り光の光レベルを用いて演算を行う演算部(15)と、前記演算部の演算結果を表示する表示部(16)と、を備え、前記光源は、デッドゾーンが前記ダミーファイバ長に相当する時間以下になる第1のパルス幅を有する第1のパルス光を出力するとともに、前記第1のパルス幅よりもパルス幅の広い第2のパルス幅を有する第2のパルス光を出力し、前記受光部は、前記第1のパルス光が前記ダミーファイバで散乱された第1の戻り光を受光するとともに、前記第2のパルス光が前記ダミーファイバ及び前記被測定光ファイバで散乱された第2の戻り光を受光し、前記演算部は、前記第1のパルス幅、前記第2のパルス幅及び前記受光部の受光する前記第1の戻り光の光レベルを用いて、前記第2の戻り光の光レベルのうちの前記第2のパルス光が前記ダミーファイバで散乱された前記被測定光ファイバが接続される側の前記ダミーファイバの端である入出力端の戻り光の光レベルを算出する入出力端戻り光レベル算出部(51)を備える。
【0017】
光源が第1のパルス光を出力し、受光部が第1の戻り光を受光するため、第1のパルス幅のときのダミーファイバからの戻り光の光レベルを測定することができる。第1のパルス幅を狭くすることで、短いダミーファイバであっても入出力端における第1の戻り光の光レベルを測定することができる。光源が第2のパルス光を出力し、受光部が第2の戻り光を受光するため、パルス幅の広い第2のパルス幅のときの被測定光ファイバからの戻り光の光レベルを測定することができる。第2のパルス幅のときにダミーファイバで散乱された戻り光の光レベルは、第1のパルス光と第2のパルス光のパワー比に応じて大きくなっている。このため、入出力端戻り光レベル算出部は、入出力端の戻り光の光レベルを算出することができる。このように、本願発明の光パルス試験装置は、入出力端の戻り光の光レベルを算出することができるため、短いダミーファイバを用いた場合であっても、被測定光ファイバのOTDR測定を精度よく行うことができる。したがって、本願発明の光パルス試験装置は、短いダミーファイバを用いて長距離の被測定光ファイバのOTDR測定を精度よく行うことができる。
【0018】
本願発明の光パルス試験装置では、前記演算部は、前記第2の戻り光の光レベル及び前記入出力端の戻り光の光レベルを用いて、前記被測定光ファイバにおける前記第2のパルス光の損失値を算出する全損失値算出部(52)を備えていてもよい。
【0019】
本願発明の光パルス試験装置では、前記表示部は、前記全損失値算出部の算出する損失値を表示する全損失値表示部(62)をさらに備えていてもよい。
【0020】
本願発明の光パルス試験装置では、前記演算部は、前記全損失値算出部の算出する損失値が予め定められたしきい値を超えているか否かを判定するしきい値判定部(53)を備え、前記表示部は、前記しきい値判定部の判定結果を表示する判定結果表示部(63)を備えていてもよい。
【0021】
本願発明の光パルス試験装置では、前記表示部は、前記入出力端の戻り光の光レベルにマーカを表示するマーカ表示部(61)を備えていてもよい。
【0022】
本願発明の光パルス試験装置では、前記演算部は、前記受光部の受光する前記第2の戻り光の光レベルを用いて前記被測定光ファイバの前記第2のパルス光の入射端における光レベルを算出し、算出した光レベル及び前記入出力端の戻り光の光レベルを用いて前記ダミーファイバと前記被測定光ファイバとの間の接続損失値を算出する接続損失値算出部(54)を備えていてもよい。
【0023】
本願発明の光パルス試験装置では、前記表示部は、前記接続損失値算出部の算出する接続損失値を表示する接続損失値表示部(64)を備えていてもよい。
【0024】
本願発明の光パルス試験装置では、前記演算部は、前記受光部の受光する前記第2の戻り光の光レベルを用いて前記入出力ポートから所定距離までの光レベルを算出する入出力端近傍光レベル算出部(55)を備え、前記表示部は、前記第2の戻り光の光レベルと前記入出力端近傍光レベル算出部の算出する光レベルをつなぐ直線を表示する入出力端近傍光レベル表示部(65)を備えていてもよい。
【0025】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、短いダミーファイバを用いて長距離の被測定光ファイバのOTDR測定を精度よく行うことのできる光パルス試験方法及び光パルス試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1に係る光パルス試験装置の一例を示す。
【図2】実施形態1に係る光パルス試験方法の一例を示す。
【図3】第1の戻り光PB1の光レベルの一例を示す。
【図4】第2の戻り光PB2の光レベルの一例を示す。
【図5】実施形態2に係る光パルス試験装置の一例を示す。
【図6】実施形態2に係る光パルス試験方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0029】
(実施形態1)
図1に、本実施形態に係る光パルス試験装置の一例を示す。本実施形態に係る光パルス試験装置101は、距離Dの被測定光ファイバ100にパルス光PF2を入射し、被測定光ファイバ100からの戻り光PB2を測定することでOTDR測定を行う。光パルス試験装置101は、光源11と、入出力ポート12と、ダミーファイバ13と、受光部14と、演算部15−1と、表示部16−1と、タイミング発生部17と、ADC(Analog to Digital Converter)18と、を備える。
【0030】
光源11は、パルス光を出力する。タイミング発生部17は、光源11を駆動し、パルス光のパルス幅を変更する。また、タイミング発生部17は、光源11がパルス光を出力したタイミングを演算部15−1に出力する。これにより、演算部15−1は、パルス光が出力されてから戻り光を受光するまでの時間を測定し、パルス光が散乱された距離を算出することができる。
【0031】
光源11からのパルス光は光カプラ19を介してダミーファイバ13に出力される。ダミーファイバ13は、光源11からのパルス光を入出力ポート12まで導く。入出力ポート12は、被測定光ファイバ100に接続可能である。入出力ポート12に被測定光ファイバ100が接続されている状態では、光源11からのパルス光は被測定光ファイバ100で散乱されて戻り光が発生し、その戻り光が入出力ポート12に入力される。入出力ポート12に入力された戻り光はダミーファイバ13に出力される。ダミーファイバ13を伝搬した戻り光は、光カプラ19を介して受光部14に出力される。
【0032】
受光部14は、戻り光を受光し、戻り光の光レベルを検出する。ADC18は、受光部14からの光レベルをサンプリングしてデジタル信号に変換する。演算部15−1は、受光部14の受光する戻り光の光レベルを用いて演算を行う。表示部16は、演算部15−1の演算結果を表示する。
【0033】
図2に、本実施形態に係る光パルス試験方法の一例を示す。本実施形態に係る光パルス試験方法は、第1の測定手順S101と、第2の測定手順S102と、入出力端戻り光レベル算出手順S103と、全損失値算出手順S111と、を順に有する。本実施形態に係る光パルス試験方法は、さらに、全損失値算出手順S111の後に、全損失値表示手順S112、しきい値判定手順S113及びマーカ表示手順S121を有する。本実施形態では、全損失値算出手順S111の後に、全損失値表示手順S112、しきい値判定手順S113及びマーカ表示手順S121を同時に行う例を示すが、これらの手順は任意の順に行ってもよい。
【0034】
第1の測定手順S101では、第1のパルス光PF1をダミーファイバ13に入射し、第1のパルス光PF1がダミーファイバ13で散乱された第1の戻り光PB1の光レベルを測定する。ここで、第1のパルス光PF1は、デッドゾーンがダミーファイバ13長に相当する時間以下になる第1のパルス幅を有する。これにより、ダミーファイバ13が短い場合であっても、入出力端における第1の戻り光PB1の光レベルを測定することができる。なお、ここで、入出力端とは、ダミーファイバ13のうちの被測定光ファイバ100が接続される側の端である。
【0035】
例えば、入出力ポート12には、被測定光ファイバ100を接続する。この状態で、光源11は、第1のパルス光PF1を出力する。パルス光PF1はダミーファイバ13及び被測定光ファイバ100で散乱されて第1の戻り光PB1が発生する。受光部14は、この第1の戻り光PB1を受光する。
【0036】
図3に、第1の戻り光PB1の光レベルの一例を示す。第1のパルス幅を有する第1のパルス光PF1を用いているため、ダミーファイバ13が短い場合であっても、ダミーファイバ13の入出力端での後方散乱光による光レベルLを測定することができる。ところが、第1のパルス光PF1では、被測定光ファイバ100の全長を測定するための十分な性能が得られない場合がある。このため、次の第2の測定手順S102を実行する。
【0037】
第2の測定手順S102では、ダミーファイバ13に被測定光ファイバ100を接続した状態で、第2のパルス光PF2をダミーファイバ13に入射し、第2のパルス光PF2がダミーファイバ13及び被測定光ファイバ100で散乱された第2の戻り光PF2の光レベルを測定する。ここで、第2のパルス光PF2は、第1のパルス光PF1の第1のパルス幅よりもパルス幅の広い第2のパルス幅を有する。
【0038】
例えば、被測定光ファイバ100を入出力ポート12に接続した状態で、光源11は、パルス光PF2を出力する。パルス光PF2はダミーファイバ13で散乱されるとともに、被測定光ファイバ100で散乱され、戻り光PB2が発生する。受光部14は、パルス光PF2がダミーファイバ13及び被測定光ファイバ100で散乱された第2の戻り光PB2を受光する。
【0039】
図4に、第2の戻り光PB2の光レベルの一例を示す。入出力ポート12からの距離Dにおける第2の戻り光PB2の光レベルがLであり、入出力ポート12からの距離Dおける第2の戻り光PB2の光レベルがLであり、入出力ポート12からの距離Dおける第2の戻り光PB2の光レベルがLである。第2のパルス幅が広いため、第2の戻り光PB2の光レベルのうちの第2のパルス光PF2がダミーファイバ13で散乱された入出力端の戻り光の光レベルL0Hは、パルス波形のなかに埋もれて判別できない。また、第2の戻り光PB2の光レベルのうちの被測定光ファイバ100に入射する地点における第2の戻り光PB2の光レベルL0Lも、パルス波形のなかに埋もれて判別できない。そこで、入出力端戻り光レベル算出手順S103を実行する。
【0040】
入出力端戻り光レベル算出手順S103では、演算部15−1の入出力端戻り光レベル算出部51は、第2の戻り光PB2の光レベルのうちの第2のパルス光PF2がダミーファイバ13で散乱された入出力端の戻り光の光レベルL0Hを算出する。
【0041】
例えば、演算部15−1の入出力端戻り光レベル算出部51は、第1のパルス幅、第2のパルス幅及び第1の戻り光PB1の光レベルを用いて、第1のパルス光PF1の光パワーに対する第2のパルス光PF2の光パワーの比を算出する。そして、入出力端戻り光レベル算出部51は、この比を第1の戻り光PB1の光レベルに積算する。これにより、入出力端戻り光レベル算出部51は、入出力端の戻り光の光レベルL0Hを算出することができる。
【0042】
全損失値算出手順S111では、演算部15−1の全損失値算出部52は、第2の測定手順S102で測定した第2の戻り光PB2の光レベルL及び入出力端戻り光レベル算出手順S103で算出した入出力端の戻り光の光レベルL0Hを用いて、被測定光ファイバ100での光の損失値ΔLを算出する。例えば、光レベルLと光レベルL0Hの差分を算出する。
【0043】
全損失値表示手順S112では、表示部16−1の全損失値表示部62は、全損失値算出手順S111で算出した被測定光ファイバ100での光の損失値ΔLを表示する。
【0044】
しきい値判定手順S113では、全損失値算出手順S111で算出した光の損失値ΔLが予め定められたしきい値を超えているか否かを判定し、判定結果を表示する。
【0045】
例えば、演算部15−1に任意の閾値を設定しておく。演算部15−1のしきい値判定部53は、全損失値算出部52の算出する損失値ΔLがしきい値を超えているか否かを判定する。表示部16−1の判定結果表示部63は、しきい値判定部53の判定結果を表示する。これにより、光線路の開通時に、被測定光ファイバ100に障害がないか否かを迅速に判定することができる。
【0046】
マーカ表示手順S121では、表示部16−1のマーカ表示部61が、入出力端戻り光レベル算出手順S103で算出した入出力端戻り光の光レベルL0Hにマーカを表示する。
【0047】
(実施形態2)
図5に、本実施形態に係る光パルス試験装置の一例を示す。本実施形態に係る光パルス試験装置102は、実施形態1で説明した演算部15−1及び表示部16−1に代えて、演算部15−2及び表示部16−2を備える。
【0048】
図6に、実施形態2に係る光パルス試験方法の一例を示す。本実施形態に係る光パルス試験方法は、実施形態1で説明した入出力端戻り光レベル算出手順S103の後に、被測定光ファイバ入射光レベル算出手順S131と、接続損失値算出手順S132と、接続損失値表示手順S133と、第2の戻り光推定直線表示手順S134と、を有する。
【0049】
被測定光ファイバ入射光レベル算出手順S131では、第2の測定手順S102で測定した第2の戻り光PB2の光レベルを用いて、被測定光ファイバ100の第2のパルス光PF2の入射端における第2の戻り光PB2の光レベルを算出する。
【0050】
このとき、演算部15−2の接続損失値算出部54は、受光部14の受光する第2の戻り光PB2の光レベルを用いて入出力ポート12での光レベルL0Lを算出する。例えば、距離Dにおける光レベルLと距離Dにおける光レベルLとを通る直線を用いて、被測定光ファイバ100の入射端における光レベルL0Lを算出する。
【0051】
接続損失値算出手順S132では、入出力端戻り光レベル算出手順S103で算出した光レベルL0H及び被測定光ファイバ入射光レベル算出手順S131で算出した光レベルL0Lを用いて、ダミーファイバ13と被測定光ファイバ100との間の接続損失値ΔLを算出する。
【0052】
このとき、演算部15−2の接続損失値算出部54は、算出した入出力ポート12での光レベルL0L及び入出力端の戻り光の光レベルL0Hを用いて入出力ポート12の接続損失値を算出する。例えば、光レベルL0Hから光レベルL0Lを減算する。
【0053】
接続損失値表示手順S133では、接続損失値算出手順S132で算出した接続損失値を表示する。例えば、表示部16−2の接続損失値表示部64は、接続損失値算出部54の算出する接続損失値を表示する。
【0054】
第2の戻り光推定直線表示手順S134では、第2の測定手順S102で測定した第2の戻り光PB2の光レベルと被測定光ファイバ入射光レベル算出手順S131で算出した光レベルをつなぐ直線(図4の符号91)を表示する。
【0055】
このとき、演算部15−2の入出力端近傍光レベル算出部55は、受光部14の受光する第2の戻り光PB2の光レベルを用いて入出力ポート12から所定距離までの光レベルを算出する。例えば、距離Dにおける光レベルLと距離Dにおける光レベルLとを通る直線を用いて、入出力ポート12から距離Dまでの光レベルを算出する。所定距離は、任意であるが、例えば第2の戻り光PB2の光レベルが明確になっている距離Dである。入出力端近傍光レベル表示部65は、入出力端近傍光レベル算出部55の算出する光レベルを表示する。
【0056】
なお、本実施形態に係る光パルス試験装置102は、実施形態1に係る光パルス試験装置101と組み合わせてもよい。例えば、演算部15−2は、図1に示す入出力端戻り光レベル算出部51、全損失値算出部52、しきい値判定部53をさらに備えていてもよい。この場合、表示部16−2は、図1に示すマーカ表示部61、全損失値表示部62及び判定結果表示部63をさらに備える。
【0057】
また、本実施形態に係る光パルス試験方法は、実施形態1に係る光パルス試験方法と組み合わせてもよい。例えば、本実施形態に係る光パルス試験方法は、図2に示す全損失値算出手順S111、全損失値表示手順S112、しきい値判定手順S113及びマーカ表示手順S121をさらに実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
11:光源
12:入出力ポート
13:ダミーファイバ
14:受光部
15−1、15−2:演算部
16−1、16−2:表示部
17:タイミング発生部
18:ADC
19:光カプラ
51:入出力端戻り光レベル算出部
52:全損失値算出部
53:しきい値判定部
54:接続損失値算出部
55:入出力端近傍光レベル算出部
61:マーカ表示部
62:全損失値表示部
63:判定結果表示部
64:接続損失値表示部
65:入出力端近傍光レベル表示部
100:被測定光ファイバ
101、102:光パルス試験装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッドゾーンがダミーファイバ長に相当する時間以下になる第1のパルス幅を有する第1のパルス光を前記ダミーファイバに入射し、前記第1のパルス光が前記ダミーファイバで散乱された第1の戻り光の光レベルを測定する第1の測定手順(S101)と、
前記ダミーファイバに被測定光ファイバが接続された状態で、前記第1のパルス幅よりもパルス幅の広い第2のパルス幅を有する第2のパルス光を前記ダミーファイバに入射し、前記第2のパルス光が前記ダミーファイバ及び前記被測定光ファイバで散乱された第2の戻り光の光レベルを測定する第2の測定手順(S102)と、
前記第1のパルス幅、前記第2のパルス幅及び前記第1の戻り光の光レベルを用いて、前記第2の戻り光の光レベルのうちの前記第2のパルス光が前記ダミーファイバで散乱された前記被測定光ファイバが接続される側の前記ダミーファイバの端である入出力端の戻り光の光レベルを算出する入出力端戻り光レベル算出手順(S103)と、
を順に有する光パルス試験方法。
【請求項2】
前記第2の測定手順で測定した第2の戻り光の光レベル及び前記入出力端戻り光レベル算出手順で算出した前記入出力端の戻り光の光レベルを用いて、前記被測定光ファイバでの光の損失値を算出する全損失値算出手順(S111)を、
前記入出力端戻り光レベル算出手順の後にさらに有することを特徴とする請求項1に記載の光パルス試験方法。
【請求項3】
前記全損失値算出手順で算出した前記被測定光ファイバでの光の損失値を表示する全損失値表示手順(S112)を、
前記全損失値算出手順の後にさらに有することを特徴とする請求項2に記載の光パルス試験方法。
【請求項4】
前記全損失値算出手順で算出した前記光の損失値が予め定められたしきい値を超えているか否かを判定し、判定結果を表示するしきい値判定手順(S113)を、前記全損失値算出手順の後にさらに有する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の光パルス試験方法。
【請求項5】
前記入出力端戻り光レベル算出手順で算出した前記入出力端の戻り光の光レベルにマーカを表示するマーカ表示手順(S121)を、
前記入出力端戻り光レベル算出手順の後にさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光パルス試験方法。
【請求項6】
前記第2の測定手順で測定した前記第2の戻り光の光レベルを用いて、前記被測定光ファイバの前記第2のパルス光の入射端における前記第2の戻り光の光レベルを算出する被測定光ファイバ入射光レベル算出手順(S131)を、前記第2の測定手順の後にさらに有し、
前記入出力端戻り光レベル算出手順で算出した光レベル及び前記被測定光ファイバ入射光レベル算出手順で算出した光レベルを用いて、前記ダミーファイバと前記被測定光ファイバとの間の接続損失値を算出する接続損失値算出手順(S132)を、前記入出力端戻り光レベル算出手順の後にさらに有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光パルス試験方法。
【請求項7】
前記接続損失値算出手順で算出した前記接続損失値を表示する接続損失値表示手順(S133)を、前記接続損失値算出手順の後にさらに有する
ことを特徴とする請求項6に記載の光パルス試験方法。
【請求項8】
前記第2の測定手順で測定した第2の戻り光の光レベルと前記被測定光ファイバ入射光レベル算出手順で算出した光レベルをつなぐ直線を表示する第2の戻り光推定直線表示手順(S134)を、前記入出力端戻り光レベル算出手順の後にさらに有する
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の光パルス試験方法。
【請求項9】
パルス光を出力する光源(11)と、
被測定光ファイバ(100)に接続可能な入出力ポート(12)と、
前記入出力ポートに接続され、前記光源からのパルス光を前記入出力ポートに接続されている前記被測定光ファイバに出力するダミーファイバ(13)と、
前記パルス光が前記ダミーファイバで散乱された第1の戻り光又は前記パルス光が前記ダミーファイバ及び前記被測定光ファイバで散乱された第2の戻り光を受光する受光部(14)と、
前記受光部の受光する前記第1の戻り光及び前記第2の戻り光の光レベルを用いて演算を行う演算部(15)と、
前記演算部の演算結果を表示する表示部(16)と、
を備え、
前記光源は、デッドゾーンが前記ダミーファイバ長に相当する時間以下になる第1のパルス幅を有する第1のパルス光を出力するとともに、前記第1のパルス幅よりもパルス幅の広い第2のパルス幅を有する第2のパルス光を出力し、
前記受光部は、前記第1のパルス光が前記ダミーファイバで散乱された第1の戻り光を受光するとともに、前記第2のパルス光が前記ダミーファイバ及び前記被測定光ファイバで散乱された第2の戻り光を受光し、
前記演算部は、前記第1のパルス幅、前記第2のパルス幅及び前記受光部の受光する前記第1の戻り光の光レベルを用いて、前記第2の戻り光の光レベルのうちの前記第2のパルス光が前記ダミーファイバで散乱された前記被測定光ファイバが接続される側の前記ダミーファイバの端である入出力端の戻り光の光レベルを算出する入出力端戻り光レベル算出部(51)を備える
光パルス試験装置。
【請求項10】
前記演算部は、前記第2の戻り光の光レベル及び前記入出力端の戻り光の光レベルを用いて、前記被測定光ファイバにおける前記第2のパルス光の損失値を算出する全損失値算出部(52)を備えることを特徴とする請求項9に記載の光パルス試験装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記全損失値算出部の算出する損失値を表示する全損失値表示部(62)をさらに備えることを特徴とする請求項9又は10に記載の光パルス試験装置。
【請求項12】
前記演算部は、前記全損失値算出部の算出する損失値が予め定められたしきい値を超えているか否かを判定するしきい値判定部(53)を備え、
前記表示部は、前記しきい値判定部の判定結果を表示する判定結果表示部(63)を備える
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の光パルス試験装置。
【請求項13】
前記表示部は、前記入出力端の戻り光の光レベルにマーカを表示するマーカ表示部(61)を備えることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の光パルス試験装置。
【請求項14】
前記演算部は、前記受光部の受光する前記第2の戻り光の光レベルを用いて前記被測定光ファイバの前記第2のパルス光の入射端における光レベルを算出し、算出した光レベル及び前記入出力端の戻り光の光レベルを用いて前記ダミーファイバと前記被測定光ファイバとの間の接続損失値を算出する接続損失値算出部(54)を備えることを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載の光パルス試験装置。
【請求項15】
前記表示部は、前記接続損失値算出部の算出する接続損失値を表示する接続損失値表示部(64)を備えることを特徴とする請求項14に記載の光パルス試験装置。
【請求項16】
前記演算部は、前記受光部の受光する前記第2の戻り光の光レベルを用いて前記入出力ポートから所定距離までの光レベルを算出する入出力端近傍光レベル算出部(55)を備え、
前記表示部は、前記第2の戻り光の光レベルと前記入出力端近傍光レベル算出部の算出する光レベルをつなぐ直線を表示する入出力端近傍光レベル表示部(65)を備える
ことを特徴とする請求項9から15のいずれかに記載の光パルス試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−8076(P2012−8076A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146056(P2010−146056)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】