説明

光ビーコン

【課題】所望サイズのダウンリンク領域を、低コストでかつ適切に形成することができる光ビーコンを提供する。
【解決手段】本発明のビーコンヘッド2は、透過性のある窓板15を有する筐体2aと、筐体2aの内部に収納された基板9と、窓板15を通過する光軸方向にダウンリンク光DOを発光する複数のLED7aを基板9に面状に配列してなる投光部7と、筐体2a内における投光部7の照射側に配置された透過性のある光学板20とを備えたビーコンヘッド2を有している。光学板20は、複数のLED7aが光学板20に向けて発光することで入射するダウンリンク光DOの一部又は全部の向きを変えて所望サイズのダウンリンク領域を道路R側に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を走行する車両に搭載された車載機との間で光信号による双方向通信を行うための光ビーコンに関する。
【背景技術】
【0002】
路車間通信システムを利用した交通情報サービスとして、光ビーコン、電波ビーコン又はFM多重放送を用いたVICS(Vehicle Information and Communication System:なお、「VICS」は、財団法人道路交通情報通信システムセンターの登録商標)が既に展開されている。このうち、光ビーコンは近赤外線を通信媒体とした光通信を採用しており、車載機との双方通信が可能となっている。
具体的には、車両の保持するビーコン間の旅行時間情報等を含むアップリンク情報が車載機からインフラ側の光ビーコンに送信され、逆に、渋滞情報、区間旅行時間情報、事象規制情報及び車線通知情報等を含むダウンリンク情報が光ビーコンから車載機に送信されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記光ビーコンは、車載機との間で双方向通信を行う投受光器を備えており、この投受光器は、ダウンリンク情報を含んだダウンリンク光を出射するための投光部と、車載機からのアップリンク情報を含んだアップリンク光を受光するための受光部とを備えている。
光ビーコンの投受光器(ビーコンヘッド)は、支柱等に支持されて道路上方に設置されており、その下方を通過する車載機との間で通信を行うための通信領域を、その直下よりも上流側よりに設定する。
前記通信領域は、車載機からのアップリンク光を受光可能なアップリンク領域と、車載機がダウンリンク光を受光するためのダウンリンク領域とからなり、これら領域は、光ビーコン(光学式車両感知器)の「近赤外線式インターフェース規格」によって規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−268925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記光ビーコンの投光部は、基板に実装された複数の発光ダイオード(LED)により構成されている。これら複数のLEDは、基板上に整列配置されており、道路上に向けて面状のダウンリンク光を照射し、ダウンリンク領域を形成する。
【0006】
ここで、上記LEDには、通常、当該LEDが発光する光ビームを集光するためのレンズが一体的に設けられており、LEDが発光する照射光は、ある程度の指向性を有している。このため、例えば、図11に示すように、複数のLEDの配置によっては、道路R上におけるダウンリンク光の照射領域(線図da2で囲まれる領域)が、上記規格により規定された道路R上におけるダウンリンク領域DA(ハッチングされた矩形の領域)よりも狭い領域にしか照射されないことがあった。
この場合、実際に設定されるダウンリンク領域が、規格上のダウンリンク領域DAよりも狭い領域となってしまい、上記規格を満たさないこととなる。
【0007】
そこで、例えば、図12(a)及び(b)に示すように、リード型のLED100を用い、基板101に実装する際に、LED100から延びるリード102を折り曲げる等することによって個々のLED100の実装角度を所定の角度に設定してLED100の照射光の光軸方向を調整するといったことが行われていた。これにより、ダウンリンク光の道路上における照射領域が、規格上のダウンリンク領域DAを包含するように調整し、実際に設定されるダウンリンク領域が規格上のダウンリンク領域DAを満たすように設定することができる。
【0008】
上記のように複数のLEDそれぞれの光軸方向を個々に調整して規格上のダウンリンク領域DAを確保可能に実装する場合、より少ないLEDで効率よくダウンリンク光の照射領域を確保するとともに、各LEDそれぞれの照射領域の個体差等も考慮しつつ、個々のLEDの角度や位置を詳細に設定する必要がある。
【0009】
このため、基板にLEDを実装する際における、当該LEDの設置角度や配置が複雑になるとともに配置精度の要求が高くなり、組み立てが困難になることからコスト高になるという問題を有していた。さらに、組み立てが困難なことに加えて高い要求精度によって、品質的なばらつきが生じてしまうという問題も有していた。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、所望サイズのダウンリンク領域を、低コストでかつ適切に形成することができる光ビーコンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、走行中の車両の車載機との間で、所定の通信領域で光通信を行う光ビーコンであって、透過性のある窓板を有する筐体と、前記筐体の内部に収納された基板と、前記窓板を通過する光軸方向に照射光を発光する複数の発光源を前記基板に面状に配列してなる面状発光部と、前記筐体内における前記面状発光部の照射側に配置された透過性のある光学部品であって、前記複数の発光源が当該光学部品に向けて発光することで入射する前記照射光の一部又は全部の向きを変えて所望サイズのダウンリンク領域を道路側に形成する光学部品と、を備えていることを特徴としている。
【0012】
(2)さらに、上記光ビーコンにおいて、前記面状発光部を構成するすべての前記発光源が、その光軸方向が揃った状態で前記基板に配列されていることが好ましい。
【0013】
上記のように構成された光ビーコンによれば、複数の発光源からの照射光の一部又は全部の向きを変えて所望サイズのダウンリンク領域を道路側に形成する光学部品を備えているので、道路上における照射領域を調整するために、上記従来例のように複数の発光源それぞれの照射光の光軸方向を個別に調整することなく、所望サイズのダウンリンク領域を道路側に形成することができる。この結果、当該複数の発光源の実装が容易となり、コストの低減を図ることができる。さらに、高い精度で発光源を配置する必要性がなくなるので、品質的なばらつきも抑制でき、所望サイズのダウンリンク領域を適切に形成することができる。
以上により、本発明による光ビーコンによれば、所望サイズのダウンリンク領域を、低コストでかつ適切に形成することができる。
なお、上記「その光軸方向が揃った状態」とは、例えば、製造誤差や組み立て誤差等を許容する程度に各発光源の光軸方向がほぼ揃っている状態も含む概念である。
【0014】
(3)上記光ビーコンにおいて、前記光学部品は、前記窓板に積層することによって当該窓板に固定されていることが好ましい。
この場合、ダウンリンク光が必ず通過する窓板に光学部品が固定されているので、例えば、光学部品を固定するための固定部材等を設けた場合と比較して、当該光学部品を簡易な構造で容易に配置することができる。
【0015】
(4)また、前記光学部品は、当該光学部品と前記基板とを繋ぐ固定部材によって前記基板に固定してもよく、この場合、光学部品と、基板の発光部との位置調整が容易となる。
【0016】
(5)また、発光源の照射光の光軸方向等を調整する必要がないので、前記発光源は、前記基板との接触面が密着している表面実装型のLEDであってもよく、この場合、リード型のLEDと比較して、発光源が発光することにより生じる熱を基板側に効果的に逃がすことができ、発光源の早期劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光ビーコンによれば、所望サイズのダウンリンク領域を、低コストでかつ適切に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る道路上に設置された光ビーコンの側面図である。
【図2】ビーコンヘッドの斜視図である。
【図3】ビーコンヘッドの内部を示す斜視図である。
【図4】ビーコンヘッドの内部に配置された状態の投光部と、光学板との位置関係を示す図である。
【図5】(a)は、光学板の正面図であり、(b)は、(a)中、I−I線矢視断面図である。
【図6】本実施形態のビーコンヘッドによる、道路上におけるダウンリンク光の照射領域を示す図である。
【図7】光学板の他の例を示す断面図である。
【図8】光学板のさらに他の例を示す断面図である。
【図9】本発明の第二の実施形態に係るビーコンヘッドの内部に配置された状態の投光部と、光学板との位置関係を示す図である。
【図10】複数の光学板を配置した場合のビーコンヘッドの内部を示す図である。
【図11】従来の光ビーコンによる、道路上におけるダウンリンク光の照射領域を示す図である。
【図12】(a)は、リードを折り曲げることで、LEDの実装角度が調整された投光部の一部を示す図であり、(b)は、リードを折り曲げたLEDの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第一の実施形態について〕
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る道路上に設置された光ビーコンの側面図である。
本実施形態の光ビーコン1は、道路Rを走行する車両Cに搭載された車載機Sとの間で、所定の通信領域で光信号による双方向通信を行うものであり、図に示すように、道路Rの上方に配置され車両Cに搭載された車載機Sと通信を行うためのビーコンヘッド2と、このビーコンヘッド2を制御するための制御機(図示せず)とを備えている。
前記制御機は、前記支柱等に設置され、電話回線等の通信回線を介して交通管制システム等の図示しない中央装置と接続されており、ビーコンヘッド2による通信等の制御を行う。
【0020】
ビーコンヘッド2は、近赤外線よりなるダウンリンク光DO(ダウンリンク情報を構成する光信号)を出射(送信)する投光部7と、車載機Sからの近赤外線よりなるアップリンク光UO(アップリンク情報を構成する光信号)を受光(受信)するための受光部8とを備えている。これら、投光部7、及び、受光部8は、当該ビーコンヘッド2の筐体の内部に収納されている。
ビーコンヘッド2は、投受光部7,8によって、車載機Sからのアップリンク光UOを受信するとともに、ダウンリンク光DOを送信し、車載機Sとの間で双方向通信を行う。
【0021】
投受光部7,8は、図1に示すように、車載機Sとの間で路車間通信が可能な領域である通信領域Aを、道路R上において、ビーコンヘッド2の直下よりも車両進行方向の上流側寄りに設定する。
通信領域Aは、車載機Sがビーコンヘッド2からのダウンリンク光DOを受信可能なダウンリンク領域(図1において実線のハッチングを設けた領域)DAと、ビーコンヘッド2が車載機Sからのアップリンク光UOを受信可能なアップリンク領域(図1において破線のハッチングを設けた領域)UAとからなる。
投光部7は、ダウンリンク光DOを道路上の所定の領域に向けて出射することで、ダウンリンク領域DAを道路上に設定している。
【0022】
光ビーコンの「近赤外線式インタフェース規格」によれば、ダウンリンク領域DA及びアップリンク領域UAの正式な領域寸法が規定されている。
図1において、上記規格上のダウンリンク領域DAは、ビーコンヘッド2の投受光位置d、道路面から1.0mレベルの位置a及びcを頂点とする△dacで示された範囲であり、アップリンク領域UAは、投受光位置d、道路面から1.0mレベルの位置b及びcを頂点とする△dbcで示された範囲として規定されている。
従って、ダウンリンク領域DAとアップリンク領域UAの上流端cは互いに一致し、アップリンク領域UAは、ダウンリンク領域DAの車両進行方向の上流部分(図1の右側部分)と重複している。また、ダウンリンク領域DAの車両進行方向長さは通信領域A全体の同方向長さと一致している。
【0023】
一般道向けの光ビーコンの場合には、ダウンリンク領域DAの上流端cは、路面から1mの高さ位置においてヘッド直下から約5.0mとされ、ダウンリンク領域DAの下流端aは、同高さ位置に置いてヘッド直下から1.3mとされている。従って、正式な通信領域Aの車両進行方向の全長(bc間の長さ)は約3.7mとなる。
また、図1では路面から1mの場合を示しているが、路面から2mの高さ位置においては、ダウンリンク領域DAの上流端cは、ヘッド直下から約4.7mとされ、ダウンリンク領域DAの下流端aは、同高さ位置に置いてヘッド直下から1.0mとされている。従って、この場合においても、正式な通信領域Aの車両進行方向の全長(bc間の長さ)は約3.7mとなる。
【0024】
図2は、ビーコンヘッド2の斜視図である。図1及び図2を参照して、ビーコンヘッド2は、内部機構を収納する筐体2aの両側面に固定されたブラケット32を介して、道路脇に立設された支柱等から道路Rを横切るように水平に架設された架設バー31に固定され、道路Rの車線の直上に配置されている。
筐体2aは、下側に向く下面部2a1と、下面部2a1と繋がるように形成され当該ビーコンヘッド2が設置されている道路R上の直下の位置よりも車両進行方向上流側斜め下方に向く前面部2a2とを有している。
下面部2a1には、一対の下側窓部4が形成されており、筐体2aの内部に配置された後述の車両検知部11が当該ビーコンヘッド2直下を通過する車両Sを検知するための光信号を一対の窓部4を通じて送受信可能とされている。
【0025】
また、前面部2a2には、第一窓部5と、この第一窓部5よりも幅の狭い第二窓部6とが形成されている。第一窓部5の内部側には、上記投光部7が配置されており、第二窓部6の内部側には、受光部8が配置されている。
筐体2aの内部に配置された投光部7、及び受光部8は、これら両窓部5,6を通じて、道路R上を走行する車載機Sとの間の通信に係るダウンリンク光DO及びアップリンク光UOを送受信可能とされている。
【0026】
図3は、ビーコンヘッド2の内部を示す斜視図である。なお、図3では、図2中のビーコンヘッド2の下面部2a1を上側にして筐体2aを外したときの当該ビーコンヘッド2内部の外観を斜視図として示している。ビーコンヘッド2は、筐体2aの内部に、投光部7、及び受光部8が実装された基板9と、ビーコンヘッド2直下を通過する車両を検知する車両検知部11とを備えている。
【0027】
基板9は、投光部7が第一窓部5(図2)に、受光部8が第二窓部6(図2)に対応するように、筐体2aの前面部2a2の内側面に対向配置されている。従って、投光部7は、第一窓部5から筐体2aの外部を望むように前面部2a2に配置され、受光部8は、第二窓部6から筐体2aの外部を望むように前面部2a2に配置されている。
【0028】
受光部8は、集光レンズ10と、この集光レンズ10を介して光信号を受光する図示しない受光素子とを備えており、道路R上の車載機Sからのアップリンク光UOを、第二窓部6を通じて受光する。
【0029】
投光部7は、基板9上に面状に配列して実装された複数の発光源としてのLED7aによって面状発光部として構成されている。複数のLED7aは、第一窓部5を通過する光軸方向に向けて、ダウンリンク光DO(照射光)を出射(発光)する。
なお、本実施形態におけるLED7aは、基板9との接触面が密着している表面実装型のLEDが採用されている。従って、複数のLED7aは、すべて、その光軸方向がほぼ揃った状態で基板9に配列されている。
【0030】
ここで、本実施形態のビーコンヘッド2は、投光部7に対向配置され、当該投光部7からのダウンリンク光が入射される光学板を備えている。
図4は、ビーコンヘッド2の内部に配置された状態の投光部7と、光学板20との位置関係を示す図である。
【0031】
図4において、第一窓部5には、筐体2a内部を保護するための保護ガラスからなる透過性のある窓板15が設けられている。よって、投光部7は、第一窓部5及び窓板15を通過する光軸方向に向けて、ダウンリンク光DOを出射する。このため、投光部7は、ダウンリンク光DOを、窓板15を通過させた上で道路Rに向けて出射することができる。
【0032】
光学板20は、アクリル樹脂等を用いて形成された板状の透過性のある部材であり、投光部7に対向する窓板15の内側面15aに積層することによって固定されている。これにより、光学板20は、投光部7の照射側に配置されるとともに、窓板15との間に介在配置されている。よって、投光部7によるダウンリンク光DOは、光学板20に入射された後、窓板15を通過して道路Rに向けて出射される。
【0033】
なお、本実施形態では、基板9が、窓板15及び光学板20とほぼ平行となるように配置されている。従って、投光部7が出射するダウンリンク光DOは、窓板15及び光学板20に対してほぼ直交する方向で入射する。
【0034】
光学板20は、投光部7が当該光学板20に向けて発光することで入射するダウンリンク光DOの一部又は全部の向きを変えることで、ダウンリンク光DOの道路R上における照射領域が、「近赤外線式インタフェース規格」により規定されたダウンリンク領域DAを包含する領域となるようにダウンリンク光DOを成形し、所望サイズのダウンリンク領域を道路側に形成する機能を有している。
【0035】
図5(a)は、光学板20の正面図であり、図5(b)は、図5(a)中、I−I線矢視断面図である。光学板20は、アクリル樹脂を用いて、方形板状に形成されており、当該光学板20のほぼ中央に形成された方形状の平板部21と、平板部21の周囲を囲んで形成されたプリズム部22とを有している。
【0036】
平板部21は、入射面20a側及び出射面20b側の両方が平らに形成されており、光学板20本体に対してほぼ直交する方向で入射面20a側から導入されるダウンリンク光DOをほとんど屈折させることなく通過させることができる。
【0037】
プリズム部22は、入射面20a側に断面三角形状の凸条が平板部31を取り囲むように複数形成されている。これら凸条がそれぞれプリズムとしての機能を有しており、ダウンリンク光DOの光路を調整する。
プリズム部22は、光学板20本体に対してほぼ直交する方向で入射面20a側から導入されるダウンリンク光DOの光路を収束する方向に屈折させる。よって、プリズム部22を通過したダウンリンク光DOは、光学板20から所定距離の地点において中央線T上で交差した後、中央線Tから序々に離れるように斜め方向に出射され、光学板20からさらに離れるに従って発散する。
このため、光学板20は、導入されたダウンリンク光DOの照射領域が、当該光学板20を用いなかった場合のダウンリンク光DOの照射領域よりも広がるように、ダウンリンク光DOを成形する。
【0038】
図6は、本実施形態のビーコンヘッド2による、道路R上におけるダウンリンク光DOの照射領域を示す図である。図6では、路面から1mの高さ位置における照射領域を示している。図6中、ハッチングで示す領域が、光ビーコンの「近赤外線式インターフェース規格」によって定められている規格上のダウンリンク領域DAを示している。規格上のダウンリンク領域DAは、上述したように、その下流端からビーコンヘッド2の直下までの距離であるL1が1.3mとされ、車両進行方向の全長であるL2が3.7mと規定されている。また、ダウンリンク領域DAは、道路Rの幅方向寸法であるL3が3.5mと規定されている。
【0039】
本実施形態のビーコンヘッド2によるダウンリンク光DOの照射領域、すなわち、ビーコンヘッド2によって実際に設定されるダウンリンク領域は、図6中、線図da1によって囲まれる領域となる。この線図da1によって囲まれる領域は、規格上のダウンリンク領域DA全域を包含している。
【0040】
つまり、光学板20を用いなかった場合、投光部7によるダウンリンク光DOの照射領域は、線図da2によって囲まれる領域となるが、本実施形態のビーコンヘッド2では、ダウンリンク光DOを光学板20に入射させることでその一部の向きを変えることで発散させて、当該ダウンリンク光DOの照射領域が規格上のダウンリンク領域DA全域を包含する領域にまで広がるようにダウンリンク光DOを成形している。これによって、規格上のダウンリンク領域DA全域について確実にダウンリンク光DOを照射させることができる。
この結果、規格上のダウンリンク領域DAを満たした所望サイズのダウンリンク領域を形成することができる。
【0041】
〔効果について〕
上記のように構成された光ビーコン1は、透過性のある窓板15を有する筐体2aと、筐体2aの内部に収納された基板9と、窓板15を通過する光軸方向にダウンリンク光DOを発光する複数のLED7aを基板9に面状に配列してなる投光部7と、筐体2a内における投光部7の照射側に配置された透過性のある光学板20とを備えたビーコンヘッド2を有している。光学板20は、複数のLED7aが光学板20に向けて発光することで入射するダウンリンク光DOの一部又は全部の向きを変えて所望サイズのダウンリンク領域を道路R側に形成する。
また、投光部7を構成するすべてのLED7aが、その光軸方向が揃った状態で基板9に配列されている。
【0042】
この光ビーコン1によれば、上記光学板20を備えているので、ダウンリンク光DOの道路R上における照射領域を調整するために、上記従来例のように複数のLED7aそれぞれの光軸方向を個別に調整することなく、所望サイズのダウンリンク領域を道路R側に形成することができる。この結果、複数のLED7aの実装が容易となり、コストの低減を図ることができる。さらに、高い精度でLED7aを配置する必要性がなくなるので、品質的なばらつきも抑制でき、所望サイズのダウンリンク領域を適切に形成することができる。
以上により、本発明による光ビーコン1によれば、所望サイズのダウンリンク領域を、低コストでかつ適切に形成することができる。
【0043】
また、本実施形態では、光学板20が、窓板15に積層することによって当該窓板15に固定されているため、例えば、光学板20を固定するための固定部材等を設けた場合と比較して、当該光学板20を簡易な構造で容易に配置することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、上記光学板20を用いることで、複数のLED7aそれぞれの光軸方向を調整する必要がないことから、基板9との接触面が密着している表面実装型のLEDを採用することが可能となった。表面実装型のLEDは、リード型のLEDと比較して、基板との間の接触面積が大きいので、LEDが発光することにより生じる熱を基板側に効果的に逃がすことができ、LEDの早期劣化を抑制することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、光学板20を窓板15に積層した場合を示したが、光学板20をガラスによって形成するとともに直接筐体2aに固定することで、光学板20が窓板15を兼ねる構成とすることもできる。
この場合、部品点数を少なくできるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0046】
また、本実施形態の光学板20において、平板部21の周囲を囲んで形成されたプリズム部22が、光学板20本体に対してほぼ直交する方向で入射面側から導入されるダウンリンク光DOの光路を、収束する方向に屈折させるように構成されている場合を示したが、例えば、図7に示すように、プリズム部22が、ダウンリンク光DOの光路を発散する方向に屈折させる構成としてもよい。
この場合においても、光学板20は、導入されたダウンリンク光DOの照射領域が、当該光学板20を用いなかった場合のダウンリンク光DOの照射領域よりも広がるように、ダウンリンク光DOを成形することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、平板部21とプリズム部22とが形成された光学板20を用いた場合を示したが、図8に示すように、凸レンズが形成された光学板20を用いることもできる。
図8(a)は、凸レンズを構成している光学板20の断面図である。図8(a)において、入射面20aは、当該入射面20aの中央部を頂部とする凸状の湾曲面に形成されており、光学板20が一つの凸レンズを構成している。
基板9上の投光部7を構成する複数のLED7aは、それぞれ、凸レンズを構成する光学板20に向けてダウンリンク光DOを出射する。
光学板20による凸レンズの焦点距離は、光学板20と基板9との間の距離よりも長く設定されており、各LED7aから出射されるダウンリンク光DOは、図に示すように、光学板20から離れるに従って発散するように屈折する。
【0048】
この場合においても、プリズム部22を有する光学板20を用いた場合と同様、各LED7aの設置位置や角度について、個々に詳細に設定配置する必要がなく、複数のLED7aの実装が容易となる。さらに、高い精度でLED7aを配置しなくても、規格上のダウンリンク領域DAの全域に対してダウンリンク光DOを確実に照射することができ、所望サイズのダウンリンク領域を適切に形成することができる。
【0049】
なお、光学板20は、当該光学板20を通過したダウンリンク光DOの道路R上における照射領域が、規格上のダウンリンク領域DAを包含する領域となるように発散しうる凸レンズ形状に形成される。
【0050】
さらに、図8(b)に示すように、複数のLED7aそれぞれに対して個別に凸レンズ部23を、光学板20の入射面20a側に設けてもよい。これら凸レンズ部23は、複数のLED7aそれぞれに対向する位置に設けられており、各LED7aから出射されるダウンリンク光DOそれぞれを、光学板20から離れるに従って発散するように屈折させる。
本例においても、規格上のダウンリンク領域DAの全域に対してダウンリンク光DOを確実に照射することができ、所望サイズのダウンリンク領域を適切に形成することができる。
【0051】
上記実施形態では、光学板20を用いなかった場合の投光部7によるダウンリンク光DOの照射領域(線図da2で示される領域)が、所望サイズよりも小さい場合を示したが、光学板20を用いなかった場合の投光部7によるダウンリンク光DOの照射領域が、所望サイズよりも大きくなるように発散する場合もありうる。
このような場合においても、光学板20のプリズム部22によるダウンリンク光DOの光路調整の度合を適宜調整し、導入されるダウンリンク光DOの光路を収束する方向に屈折させることで、所望サイズのダウンリンク領域を適切に形成することができる。
【0052】
〔第二の実施形態について〕
図9は、本発明の第二の実施形態に係るビーコンヘッド2の内部に配置された状態の投光部7と、光学板20との位置関係を示す図である。
本実施形態は、光学板20が基板9側に固定されている点において、第一の実施形態と相違している。
【0053】
光学板20は、基板9に立設された棒状の固定部材30によって基板9側に固定されている。この固定部材30は、光学板20の四隅に配置され、当該光学板20と基板9とを繋いで固定している。
固定部材30は、基板9の平面方向及び直交方向に光学板20を移動させることができるように設けられており、光学板20と投光部7(LED7a)との間の寸法、及び光学板20と投光部7との間における平面方向の位置関係の調整が可能であり、光学板20と投光部7との位置関係を調整することができる。
【0054】
このように、本実施形態のビーコンヘッド2によれば、光学板20が、当該光学板20と基板9とを繋ぐ固定部材30によって基板9に対して一体に固定されているので、光学板20と、基板9の投光部7との位置調整が容易となる。
【0055】
〔その他の変形例について〕
本発明は、上記実施形態に限定されることはない。上記各実施形態では、1枚の光学板20を配置した場合を示したが、例えば、図10に示すように、複数の光学板24,25(図例では2枚)を配置してもよい。
図10では、投光部7から出射されるダウンリンク光DOは、第一光学板24、及び第二光学板25を通過して、道路R上に照射される。第一光学板24は、凸レンズを構成しており、第二光学板25は、上記第一の実施形態で示した光学板20と同様に、平板部26とこの平板部26の周囲を囲むプリズム部27とが形成されている。
【0056】
第二光学板25は、筐体に設けられた保護ガラスに重ねて固定することができる。この場合、第一光学板24は、基板9との間に設けられる固定部材によって固定することができる。
【0057】
第一光学板24は凸レンズを構成しているので、第一光学板24の端部を通過したダウンリンク光DOは、凸レンズとしての収差が大きくなり、第一光学板24の中央部と比較してより発散する方向に屈折される。
これに対して、本例のプリズム部27は、第一の実施形態のプリズム部22と同様、ダウンリンク光DOの光路を収束する方向に屈折させるように構成されており、これによって、第一光学板24の端部を通過することで収差の影響を大きく受けたダウンリンク光DOが発散しすぎないように調整することができる。
【0058】
なお、図10では、2枚の光学板を配置した場合を例示したが、より多数の光学板を配置することもできる。
さらに、上記各実施形態では、光学板として方形板状に形成された場合を示したが、三角形状、五角形状といったように多角形状とすることもできるし、円形状とすることもできる。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 光ビーコン
2a 筐体
5 第一窓部
7 投光部
7a LED
9 基板
15 窓板
20 光学板
24 第一光学板
25 第二光学板
30 固定部材
DO ダウンリンク光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両の車載機との間で、所定の通信領域で光通信を行う光ビーコンであって、
透過性のある窓板を有する筐体と、
前記筐体の内部に収納された基板と、
前記窓板を通過する光軸方向に照射光を発光する複数の発光源を前記基板に面状に配列してなる面状発光部と、
前記筐体内における前記面状発光部の照射側に配置された透過性のある光学部品であって、前記複数の発光源が当該光学部品に向けて発光することで入射する前記照射光の一部又は全部の向きを変えて所望サイズのダウンリンク領域を道路側に形成する光学部品と、を備えていることを特徴とする光ビーコン。
【請求項2】
前記面状発光部を構成するすべての前記発光源が、その光軸方向が揃った状態で前記基板に配列されている請求項1に記載の光ビーコン。
【請求項3】
前記光学部品は、前記窓板に積層することによって当該窓板に固定されている請求項1又は2に記載の光ビーコン。
【請求項4】
前記光学部品は、当該光学部品と前記基板とを繋ぐ固定部材によって前記基板に固定されている請求項1又は2に記載の光ビーコン。
【請求項5】
前記発光源は、前記基板との接触面が密着している表面実装型のLEDよりなる請求項1〜4に記載の光ビーコン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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