説明

光ピックアップアクチュエータ

【課題】 ダンパベースから突出したサスペンションワイヤの一端のフォーカシング方向の変位を十分に抑制することができる光ピックアップアクチュエータを提供する。
【解決手段】 可動部11を揺動可能に支持するための複数のサスペンションワイヤ12aと、後壁を有し、前記複数のサスペンションワイヤを挿通させてその一端を前記後壁から突出させた状態で、前記サスペンションワイヤの振動を抑制するように保持するダンパベース13aとを備える光ピックアップアクチュエータに、ダンパベースと一体に形成された固定部材21a及び端部支持部材22aを設ける。固定部材は後壁の中央上方に位置し、端部支持部材は後壁に対して距離を置いて平行となるように、固定部材から下方に伸び左右に分かれている。支持固定部材は、複数のサスペンションワイヤの一端を、ダンパベースの後壁から離れた箇所で支持固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクドライブに用いられる光ピックアップアクチュエータに関し、特に、そのサスペンションワイヤの不要振動抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクドライブは、CD(オーディオCD,CD−R,CD−RW,CD−ROM)やDVD(DVD−ROM,DVD−RAM,DVD±RW)といった光ディスクに記録された情報を読み出し、また、書き込み可能な光ディスクに対して情報を書き込むための装置である。そのため、光ディスクドライブは、光ディスクにレーザビームを照射し、その反射光を検出するための光ピックアップを備えている。
【0003】
光ピックアップは、光ディスクの径方向に移動可能に設けられる光学ベースと、この光学ベースに搭載される発光部、受光部及び光学系を含む。また、光学系は、発光部からのレーザビームを光ディスク上に集光し、また、その反射光を受光部へと導くために、光ディスクに対向配置される対物レンズを備えている。
【0004】
光ディスクのトラック上にレーザビームを正確に集光させるために、即ち、対物レンズのフォーカシング制御及びトラッキング制御を行うために、対物レンズを上下左右方向に変位させる光ピックアップアクチュエータが用いられる。
【0005】
従来の光ピックアップアクチュエータは、図1に示すように、対物レンズ(図示せず)を保持するための可動部11と、この可動部11を上下左右方向(フォーカシング方向F及びトラッキング方向T)に変位可能に支持する4本の導電性サスペンションワイヤ12と、サスペンションワイヤ12を挿通させてその一端を後壁から突出させた状態で制振支持する絶縁性のダンパベース13と、ダンパベース13の後壁に固定ネジ14により固定された基板15と、基板15から両側方へ延びてサスペンションワイヤ12の一端にそれぞれ半田により接続固定される伝導板16とを有している。伝導板16は基板15内に形成された接続線(図示せず)を介して可撓性配線基板であるフレキシブルプリントサーキット(FPC)17に接続される。
【0006】
光ピックアップアクチュエータは、さらに、図示しないアクチュエータベースと電磁装置とを含む。ダンパベース13と電磁装置に含まれるマグネットとはアクチュエータベースに固定され、電磁装置に含まれるコイルは可動部11に設けられてサスペンションワイヤ12に電気的に接続される。
【0007】
以上の構成において、FPC17、伝導板16及びサスペンションワイヤ12を介して電磁装置のコイルに電流が供給されると、コイルとマグネットとの間に働く電磁力により、可動部11は上下及び/又は左右方向に駆動される。これにより可動部11に保持される対物レンズの光ディスクのトラックに対する位置が変化し、フォーカシング制御及びトラッキング制御が実現される。
【0008】
フォーカシング制御及びトラッキング制御の際に生じるサスペンションワイヤ12の振動を抑制吸収するために、ダンパベース13の前方は開放され内部にはゲル状の制振材(図示せず)が充填されている。それゆえ、サスペンションワイヤ12の振動は、ダンパベース13の後壁に接する部分を支点としたものになる。その結果、サスペンションワイヤ12の振動は、ダンパベース13の後壁から突出したサスペンションワイヤ12の一端をも変位させる。伝導板16は、このサスペンションワイヤ12の軸方向の剛性を小さくしてピッチング共振又はヨーイング共振の周波数を下げるように、弾性を有する金属板あるいは導電性弾性体などが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
【特許文献1】特開2003−272194号公報(特に、図1及び図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光ピックアップアクチュエータでは、そのフォーカシング制御の際に対物レンズの中心位置が変位しないように、即ち、中点位置変位やダイナミックチルト特性の低下がないように、ダンパベースの後壁から突出するサスペンションワイヤの一端をフォーカシング方向に変位しないようにすることが望まれる。
【0011】
しかしながら、従来の光ピックアップアクチュエータは、トラッキング方向に細長く延びる形状の導電性の材料からなる4個の伝導板を4本のサスペンションワイヤに各々対応するように用いているため、4個の伝導板が単独で動く構造であり上述したフォーカシング制御の際に対物レンズの中心位置が変位しダイナミックチルト特性の低下等を生じるという問題点がある。
【0012】
そこで、本発明は、サスペンションワイヤの軸方向の剛性を小さくしてピッチング共振又はヨーイング共振の周波数を下げ、且つダンパベースから突出したサスペンションワイヤの一端のフォーカシング方向の変位を十分に抑制することができる光ピックアップアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、可動部(11)を揺動可能に支持するための複数のサスペンションワイヤ(12a)と、後壁を有し、前記複数のサスペンションワイヤ(12a)を挿通させてその一端を前記後壁から突出させた状態で、前記サスペンションワイヤ(12a)の振動を抑制するように保持するダンパベース(13a)と、前記複数のサスペンションワイヤ(12a)の一端を、前記ダンパベース(13a)の後壁から離れた箇所で支持固定する絶縁性弾性体からなる端部支持部材(22a)と、前記端部支持部材(22a)を前記ダンパベース(13a)の後壁に対して距離を置いて平行となるように支持する固定部材(21a)とを備え、前記固定部材(21a)及び前記端部支持部材(22a)は前記ダンパベースと一体に形成され、前記固定部材(21a)は前記後壁の中央上方に位置し、前記端部支持部材(22a)は前記固定部材(21a)から下方に伸び左右に分かれていることを特徴とする光ピックアップアクチュエータが得られる。
【0014】
なお、上記カッコ内の数字は、単に本発明の理解を容易にするために用いられており、何ら本発明を限定するものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サスペンションワイヤの一端をダンパベースの後壁から離れた箇所で支持固定する絶縁性弾性体からなる端部支持部材を設けたことで、複数のサスペンションワイヤを端部支持部材で共通に支持固定することができる。これにより、サスペンションワイヤの軸方向の剛性をより小さくしてピッチング共振又はヨーイング共振の周波数を下げ、且つダンパベースの後壁から突出するサスペンションワイヤの一端のフォーカス方向の変位を十分に抑制することができる。また、フォーカシング時の中点位置変位及びダイナミックチルト特性の低下を抑制でき、トラッキング時の不要振動を吸収抑制することができる。さらに部品点数を削減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
まず、図2を参照して参考例に係る光ピックアップアクチュエータについて説明する。図2において、従来と同一のものには同一の参照符号を付してある。
【0018】
図2の光ピックアップアクチュエータは、従来と同様、可動部11、4本のサスペンションワイヤ12、ダンパベース13、及び図示しないアクチュエータベースと電磁装置とを有している。
【0019】
また、この光ピックアップアクチュエータは、ダンパベース13の後壁に固定ネジ14により固定される固定部材21と、この固定部材21から両側方へ突出する一対の端部支持部材(略耳状部材)22と、その一部が端部支持部材22に重ねられるフレキシブルプリントサーキット(FPC)23とを有している。
【0020】
固定部材21は、絶縁性材料からなる長方形の板状で、その中央部に固定ネジ14を挿通させるためのネジ穴が形成されている。従来の基板15とは異なり、固定部材21は、その内部に接続線を持たない。この固定部材21は、固定ネジ14によりダンパベース13の後壁の中央部に固定される。そして、固定部材21は、その両側から突出する端部支持部材22をダンパベース13の後壁に対し、距離を置いて略平行となるように支持する。これにより、端部支持部材22とダンパベース13との間には、所定の隙間が形成される。
【0021】
端部支持部材22は、例えば液晶ポリマー、ナイロン及びポリカーボネイト等の、絶縁性弾性体より構成される。この端部支持部材22は、固定部材21と一体成形されてもよい。各端部支持部材22には、ダンパベース13の後壁から突出するサスペンションワイヤ12の一端を、挿入するための穴221が2個形成されている。サスペンションワイヤ12の一端は、この穴221に挿入、固定され、ダンパベース13の後壁より離れた箇所で端部支持部材22により支持される。
【0022】
FPC23は、端部支持部材22と同様に、サスペンションワイヤ12の一端を挿通させるための穴231を有している。そして、FPC23は、少なくともその穴231の周辺部を端部支持部材22に重ねることができる形状を有している。本参考例では、FPC23は、端部支持部材22と同一形状の部分を有している。サスペンションワイヤ12の一端は、端部固定部材22の穴221を通してFPC23の穴231に挿入され、FPC23に形成された配線に、例えば半田を用いて、電気的に接続される。なお、サスペンションワイヤ12の端部支持部材22への機械的固定は、このFPC23への電気的接続(及び機械的固定)と同時に同一工程により行われてよい。
【0023】
上記構成を有する光ピックアップアクチュエータの動作は、従来のものとほぼ同じである。即ち、図示しないコイルと磁石との間に働く電磁力により可動部11が上下方向(フォーカシング方向F)及び/又は左右(トラッキング方向T)に変位する。このとき、サスペンションワイヤ12は、ダンパベース13の後壁で支持された点を支点として振動する。その結果、ダンパベース13の後壁から突出したのサスペンションワイヤ12の一端も変位する。端部支持部材22は、サスペンションワイヤ12の軸方向の剛性を小さくしてピッチング共振又はヨーイング共振の周波数を下げ、且つこのサスペンションワイヤ12のフォーカシング方向の一端の変位を抑制、吸収する。ここで、端部支持部材22のフォーカス方向Fの幅は、従来の伝導板16の幅に比べて大きい。これは、端部支持部材22を絶縁性材料で構成することで、上下の2本のサスペンションワイヤを単一の端部支持部材22で支持固定できるようにしたからである。このように端部支持部材22は、上下2本のサスペンションワイヤを単一で支持固定できるようにしたので、サスペンションワイヤ12と一対一対応の従来の伝導板16に比べてフォーカス方向へ単独で変位し難く、それによって、サスペンションワイヤの12の一端のフォーカス方向Fの変位を十分に抑制しフォーカス制御の際の対物レンズの中点位置変位が生じることがなくダイナミックチルト特性の低下を防止することができる。
【0024】
次に、本発明の一実施の形態について図3を参照して説明する。
【0025】
図3の光ピックアップアクチュエータは、ダンパベース13aと一体的に形成された固定部材21a及び端部支持部材22aを有している。
【0026】
固定部材21aは、ダンパベース13aの後壁の中央部上方に位置し、端部支持部材22aがダンパベース13aの後壁に対し距離を置いて略平行となるように端部支持部材22aを支持する。端部支持部材22aは、固定部材21aから下方へ延び、左右に分かれている。
【0027】
参考例と同様、本実施の形態においても、サスペンションワイヤ12aに電気的に接続される配線が形成されたFPC(図示せず)が、端部支持部材22aに重ねて配置される。サスペンションワイヤ12aは、端部支持部材22a及びFPCに形成された穴に挿入され、端部支持部材22aに固定され、また、FPCの配線に電気的に接続される。
【0028】
本実施の形態においても、端部支持部材22を上下2本のサスペンションワイヤを単一で支持固定できるようにしたので、サスペンションワイヤ12と一対一対応の従来の伝導板16に比べてフォーカス方向へ単独で変位し難く、サスペンションワイヤ12aの端部の変位を十分に抑制することができる。その結果、本実施の形態に係る光ピックアップアクチュエータは、フォーカシング時の中点位置変位及びダイナミックチルト特性の低下を抑制でき、トラッキング時の不要振動を吸収抑制することができる。また、部品点数を減少させることができる。
【0029】
また、本実施例は、端部支持部材22aを固定部材21aから下方へ延び、左右に分かれる構造とすることで、サスペンションワイヤ12aの軸方向の剛性を更に小さくでき、ピッチング共振又はヨーイング共振の周波数を更に下げることができる。
【0030】
本実施の形態に係る光ピックアップアクチュエータは、公知の構成を持つ光ピックアップに適用することができる。また、上記光ピックアップアクチュエータが適用された光ピックアップは、公知の構成を持つ光ディスクドライブに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来の光ピックアップアクチュエータの分解斜視図である。
【図2】参考例に係る光ピックアップアクチュエータの分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る光ピックアップアクチュエータの斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
11 可動部
12,12a サスペンションワイヤ
13,13a ダンパベース
14 固定ネジ
15 基板
16 伝導板
17 プリントケーブル
21,21a 固定部材
22,22a 端部支持部材
221 穴
23 フレキシブルプリントケーブル
231 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を揺動可能に支持するための複数のサスペンションワイヤと、
後壁を有し、前記複数のサスペンションワイヤを挿通させてその一端を前記後壁から突出させた状態で、前記サスペンションワイヤの振動を抑制するように保持するダンパベースと、
前記複数のサスペンションワイヤの一端を、前記ダンパベースの後壁から離れた箇所で支持固定する絶縁性弾性体からなる端部支持部材と、
前記端部支持部材を前記ダンパベースの後壁に対して距離を置いて平行となるように支持する固定部材とを備え、
前記固定部及び前記端部支持部材は前記ダンパベースと一体に形成され、前記固定部材は前記後壁の中央部上方に位置し、前記端部支持部材は前記固定部材から下方に伸び左右に分かれていることを特徴とする光ピックアップアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載された光ピックアップアクチュエータにおいて、
前記複数のサスペンションワイヤに電気的に接続される配線が形成され、前記端部支持部材の少なくとも一部に重ねられて配置される可撓性配線基板と備えていることを特徴とする光ピックアップアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された光ピックアップアクチュエータを備えたことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項4】
請求項3に記載された光ピックアップを備えたことを特徴とする光ディスクドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−287876(P2008−287876A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191744(P2008−191744)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【分割の表示】特願2004−83999(P2004−83999)の分割
【原出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】